特許第6114441号(P6114441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6114441
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】塗布器具及び包体
(51)【国際特許分類】
   A45D 24/22 20060101AFI20170403BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   A45D24/22 C
   A45D34/04 535Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-102932(P2016-102932)
(22)【出願日】2016年5月24日
【審査請求日】2016年5月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516136594
【氏名又は名称】安田 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 真美
【審査官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−023734(JP,A)
【文献】 実開昭60−050912(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 19/00
A45D 19/02
A45D 19/16
A45D 24/00
A45D 24/08
A45D 24/22
A45D 24/28
A45D 34/00
A45D 34/04
A45D 40/26
A46B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部材と塗布部材とを備え、
前記把持部材と前記塗布部材とが結合されることにより内部空間が形成され、
前記塗布部材は、前記内部空間から外部に通ずる流出孔を複数備え、
前記把持部材及び/又は前記塗布部材は前記内部空間に向けて鋭利に突設された内突起部を複数備え、
前記内部空間にそれぞれ異なる種類の薬剤が封入された2つの包体が収容されると、前記内突起部が2つの前記包体を刺突して前記薬剤が流出し、各薬剤が当該内部空間内で混合されて前記流出孔から前記外部に流出する塗布器具において、
前記包体に加圧することにより前記薬剤の流出を促す加圧手段を更に備え、
前記加圧手段は、
前記外部から前記内部空間内に前記把持部材を貫通する軸部と、
前記軸部が前記外部から前記内部空間に向けて押されることにより、前記包体に万遍なく加圧する加圧部と、
を備える
ことを特徴とする塗布器具。
【請求項2】
前記2つの包体に封入されたそれぞれ異なる種類の薬剤が混合されることにより生じた化学反応による生成物が前記流出孔から前記外部に流出することを特徴とする請求項1に記載の塗布器具。
【請求項3】
前記加圧手段は、前記軸部を段階的に押下することで、前記包体内の前記薬剤を段階的に流出させるように前記包体に加圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布器具。
【請求項4】
前記塗布部材は、前記外部に向けて突設された外突起部を複数備え、
前記流出孔は、前記内部空間から前記外突起部の先端に通じている
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の塗布器具。
【請求項5】
前記塗布部材は、被塗布対象に接触させる部分がゲル状であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の塗布器具。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の塗布器具の前記内部空間に収容可能な、前記薬剤が封入された包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮などに薬剤を塗布する際に用いる塗布器具及び包体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から顔のパック等として利用されてきた炭酸パックは、例えば、炭酸を発生させるためにゾル状のA剤(例えば、重曹、グリセリン、キサンタンガム、及び水の混合物)とB剤(例えばクエン酸)とが分包され、これらを混合しA剤とB剤との接触により酸とアルカリとの中和反応を生じさせることで、ゾル状の混合物から炭酸ガスを発生させる。
【0003】
炭酸パックは、顔のみならず頭皮にも適用しうる(特許文献1参照)。頭髪に薬剤を適用する場合、例えば、ブラシの内部に薬剤が充填された包体をセットしておき、ブラシの使用時にこの薬剤を包体から外部に圧出して塗布する方法がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−319187号公報
【特許文献2】実開昭51−16583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
A剤とB剤とを手作業で混合する場合、手に薬剤が付着して汚れる、A剤とB剤を保存・管理する必要がある、1回容量分の計量と混合が面倒である、といった問題がある。また、混合後の薬剤を頭皮に塗布する際の液垂れや薬剤が頭髪に触れることによる頭髪へのダメージの発生などの問題にも対処する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、2つの薬剤を手を汚すことなく混合し、かつ、混合した薬剤を頭皮などの被塗布対象に手を汚すことなく塗布することを可能とする塗布器具及び薬剤が封入された包体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の塗布器具は把持部材と塗布部材とを備える塗布器具であり、次のような特徴を有する。把持部材と塗布部材とが結合されることにより内部空間が形成される。塗布部材は内部空間から外部に通ずる流出孔を複数備える。把持部材及び/又は塗布部材は内部空間に向けて鋭利に突設された内突起部を複数備える。内部空間にそれぞれ異なる種類の薬剤が封入された2つの包体が収容されると、内突起部が2つの包体を刺突して包体内に封入されていた薬剤が当該内部空間内に流出する。更に、流出したそれぞれ異なる種類の薬剤は当該内部空間内で混合され、流出孔から外部に流出する。このとき、それぞれ異なる種類の薬剤を混合による化学反応により任意の生成物を発生させる組み合わせで選択し、この生成物が流出孔から外部に流出するようにしてもよい。
【0008】
利用者が、このように構成された塗布器具の把持部材を把持し、塗布部材の流出孔が設けられた部分を被塗布対象に接触させることにより、流出孔から流出した混合された薬剤を被塗布対象に塗布することができる。
【0009】
塗布器具をこのように構成することで、2つの薬剤を手を汚すことなく混合し、かつ、混合した薬剤を頭皮などに手を汚すことなく塗布することが可能となる。また、包体に1回容量分の薬剤が封入されていれば、塗布に際しこれを調達すれば足りるため、2つの薬剤を保存・管理し、塗布の都度1回容量分を計量して混合する必要がない。
【0010】
(2)包体に加圧することで薬剤の流出を促す加圧手段を更に設けてもよい。これにより包体からの薬剤の流出の滞りを解消することができ、また、余すことなく薬剤を使い切ることができる。加圧手段は例えば、外部から内部空間内に把持部材を貫通する軸部と、当該軸部が外部から内部空間に向けて押されることにより、包体に万遍なく加圧する加圧部と、から構成する。このとき、軸部を段階的に押下することで、包体内の薬剤を段階的に流出させるように構成してもよい。これにより、必要以上に薬剤を流出させることを防ぎ、適切な分量の薬剤を逐次流出させることができる。
【0011】
(3)塗布部材が、外部に向けて突設された外突起部を複数備え、流出孔が内部空間から外突起部の先端に通じるように構成してもよい。このような外突起部を設けることで、直接に頭皮に薬剤を塗布することができ、頭皮に有効成分を効果的に作用させることができる。また、塗布の際の液垂れや薬剤による頭髪へのダメージの発生を防ぐことができる。
【0012】
(4)塗布部材に外突起部を設けるのではなく、被塗布対象に接触させる部分をゲル状に構成してもよい。これにより、例えば薬剤を肌に塗布する場合に、肌を傷つけることなく塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の塗布器具100の構成の一例を示す図である。
図2】塗布部材120に包体A、Bをセットした状態を示す図である。
図3】把持部材110と包体A、Bをセットした塗布部材120とを結合させた状態を示す図である。
図4】把持部材110に加圧手段140を組み合わせた状態を示す図である。
図5】加圧手段140と組み合わせた把持部材110と、包体A、Bをセットした塗布部材120と、を結合させた状態を示す図である。
図6】加圧手段140を段階的に降下させるための把持部材110と加圧手段140の変形例を示す図である。
図7】加圧手段140を段階的に降下させる様子を示す図である。
図8】塗布部材120の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1(a)は本発明の塗布器具100の構成の一例を示す図である。塗布器具100は、把持部材110と塗布部材120とを備える。把持部材110と塗布部材120とが図1(b)に示すように結合されることにより、内部空間130が形成される。塗布部材120は内部空間130から外部に通ずる流出孔121を複数備える。把持部材110は内部空間130に向けて鋭利に突設された内突起部111を複数備える。なお、内突起部111は塗布部材120に設けてもよいし、把持部材110と塗布部材120の両方に設けてもよい。
【0015】
図2に示すように、塗布部材120の凹部にそれぞれ異なる種類の薬剤が封入された包体Aと包体Bをセットする。薬剤はそれぞれ1回容量分ごとに、ビニールや紙など内突起部111により刺突可能で、かつ、封入する薬剤に耐性がある材質の包体に封入する。封入する各薬剤の態様は任意であるが、特に各薬剤を化学反応させたい場合には反応しやすい適度な速度で包体から流出し、かつ、混合しやすいようにするといった観点から、また、液垂れ防止や頭皮等への密着状態の維持といった観点から、ゾル状又はクリーム状の粘性がある態様であることが望ましい。また、図2では包体Aと包体Bとを積み重ねてセットしているが、塗布部材120を把持部材110と結合した際に内突起部111により両方の包体が刺突されれば、横に並べてセットするなどセットの仕方は任意である。
【0016】
把持部材110と包体A及びBをセットした塗布部材120とを結合することで、図3(a)に示すように把持部材110の内突起部111が包体A及び包体Bを刺突する。これにより各包体内に封入されていた薬剤が内部空間130の底部空間130aに流出する。流出した各薬剤は底部空間130aに流出する過程で、又は図3(b)に示すように底部空間130aに溜まった際に混合され、流出孔121から外部に流出する。このとき、それぞれ異なる種類の薬剤を、混合による化学反応により任意の生成物を発生させる組み合わせで選択し、この生成物が流出孔121から外部に流出するようにしてもよい。例えば、A剤として重曹、グリセリン、キサンタンガム、及び水の混合物を、B剤としてクエン酸を選択すると、両者の混合によりA剤とB剤とが接触して酸とアルカリとの中和反応により発生した炭酸ガスが流出孔121から外部に流出する。
【0017】
利用者が、このように構成された塗布器具100の把持部材110を把持し、塗布部材120の流出孔121が設けられた部分を被塗布対象に接触させることにより、流出孔121から流出した混合された薬剤を被塗布対象に塗布することができる。
【0018】
塗布器具100をこのように構成することで、2つの薬剤を手を汚すことなく混合し、かつ、混合した薬剤を頭皮などの被塗布対象に手を汚すことなく塗布することが可能となる。また、包体に1回容量分の薬剤が封入されていれば、塗布に際しこれを調達すれば足りるため、2つの薬剤を保存・管理し、塗布の都度1回容量分を計量して混合する必要がない。
【0019】
なお、ここではそれぞれ異なる薬剤が封入された2つの包体をセットする場合について例示したが、包体を1つだけセットした場合にも、手を汚さずに薬剤を被塗布対象に塗布することができるという効果や、薬剤の管理・保存及び計量の手間の回避という効果は得られる。例えば、包体に育毛剤、ローション、又は染髪剤などを封入して使用してもよい。また、それぞれ異なる薬剤が封入された3つ以上の包体をセットしても、3つ以上の薬剤を手を汚すことなく混合し、かつ、混合した薬剤を被塗布対象に塗布することができるという効果や、薬剤の管理・保存及び計量の手間の回避という効果が得られる。
【0020】
<第2実施形態>
各包体を内突起部111で刺突することにより薬剤は流出するが、重力に任せて流出させるだけでは流出が滞りやすい。第2実施形態は、第1実施形態の構成に包体からの薬剤流出を促す機構を追加したものである。
【0021】
具体的には、図4に示すように把持部材110に加圧手段140を組み合わせる。加圧手段140は、外部から内部空間130内に把持部材110を貫通する軸部140aと、外部からの軸部140aの押下により包体A及びBに万遍なく加圧し薬剤の流出を促す加圧部140bと、を備える。
【0022】
加圧手段140を組み合わせた把持部材110を、包体A及び包体Bをセットした塗布部材120と結合する。このとき、図5(a)に示すように把持部材110の内突起部111が包体A及びBを刺突するとともに、面的に構成された加圧部140bが包体Aの上部に乗るようにセットされる。また、加圧部140bが降下可能なように、内突起部111は加圧部140bを貫通させておく。この状態で、図5(b)に示すように軸部140aを押下することで加圧部140bにより包体A及びBが潰れるように圧がかかり、これにより各包体からの薬剤の流出が促進される。
【0023】
このように、把持部材110に加圧手段140を組み合わせることで、各包体からの薬剤の流出を単に自然に任せるのではなく、各包体に外力を付与して流出を促進することができ、また、余すことなく薬剤を使い切ることができる。
【0024】
加圧手段140は、軸部140aを段階的に押下することで、包体内の薬剤を段階的に流出させるように構成してもよい。例えば、加圧手段140の軸部140aに図6(a)に示すように突起140aaを設け、把持部材110の軸部140aが貫通する部分に図6(b)に示すように窪み110aを段階数設ける。ここでは窪み110aを3段設けた場合を例にとって説明する。このように構成した把持部材110と加圧手段140とを図7(a)に示すように、突起140aaが一番上の一段目の窪み110aとかみ合うように組み合わせる。軸部140aを押下することで、まず、突起140aaと一段目の窪み110aとのかみ合いが外れ、図7(b)に示すように加圧手段140が降下するとともに突起140aaと二段目の窪み110aとがかみ合って降下が停止する。この時点で加圧手段140が降下した分だけ各包体に加圧される。更に軸部140aを押下することで、突起140aaと二段目の窪み110aとのかみ合いが外れ、図7(c)に示すように加圧手段140が降下するとともに突起140aaと三段目の窪み110aとがかみ合って降下が停止する。この時点で加圧手段140が降下した分だけ各包体に更に加圧される。
【0025】
これにより、必要以上に薬剤を流出させることを防ぎ、適切な分量の薬剤を逐次流出させることができる。
【0026】
なお、ここでは加圧手段を包体に上から加圧して薬剤の流出を促すものとして構成した場合を例示したが、その他の方向から加圧するなど、包体が変形しそれによって薬剤の流出が促進されれば、いかなる方法を採っても構わない。加圧の方法も、上記の例のように面的に加圧することで実質的に内部空間を狭めて包体を変形させる方法に限らず、例えば複数点で加圧することで包体を変形させるなど、いかなる方法を採っても構わない。また、上記の例と同様に加圧手段を軸部と加圧部とから構成する場合も、上記の方法に限らず、例えば軸をネジ状に構成してネジを回すことにより加圧部が包体に加圧するようにするなどいかなる方法を採っても構わない。ネジを回して加圧する方法の場合、加圧する力を連続的に変化させることができ、より細かく薬剤の流出量を調節することができる。
【0027】
<第3実施形態>
図8(a)に示すように、塗布部材120が外部に向けて突設された外突起部122を複数備え、流出孔121が内部空間130から外突起部122の先端に通じるように構成してもよい。このような外突起部122を設けることで、直接に頭皮に薬剤を塗布することができ、頭皮に有効成分を効果的に作用させることができる。また、塗布の際の液垂れや薬剤による頭髪へのダメージの発生を防ぐことができる。
【0028】
<第4実施形態>
塗布部材120に外突起部122を設けるのではなく、図8(b)に示すように塗布部材120の被塗布対象に接触させる部分123をゲル状に構成してもよい。これにより、例えば薬剤を肌に塗布する場合に、肌を傷つけることなく塗布することができる。
【0029】
本発明に係る上記の実施形態はあくまで例示であり、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能である。そして、その様な変更又は改良を加えた形態も当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
100…塗布器具
110…把持部材
110a…窪み
111…内突起部
120…塗布部材
121…流出孔
122…外突起部
123…ゲル状部分
130…内部空間
130a…底部空間
140…加圧手段
140a…軸部
140aa…突起
140b…加圧部
A、B…包体

【要約】
【課題】2つの薬剤を手を汚すことなく混合し、かつ、混合した薬剤を被塗布対象に手を汚すことなく塗布することを可能とする塗布器具を提供する。
【解決手段】把持部材と塗布部材とを備える塗布器具において、把持部材と塗布部材とが結合されることにより内部空間が形成され、塗布部材は、内部空間から外部に通ずる流出孔を複数備え、把持部材及び/又は塗布部材は内部空間に向けて鋭利に突設された内突起部を複数備え、内部空間にそれぞれ異なる種類の薬剤が封入された2つの包体が収容されると、内突起部が2つの包体を刺突して薬剤が流出し、各薬剤が当該内部空間内で混合されて流出孔から外部に流出する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8