(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂よりなる非透水性基材、微粘着剤層、熱可塑性樹脂よりなるシート材及び粘着剤層が順次積層されており、打設されたコンクリート構造物に対する非透水性基材の付着強度及び粘着剤層の型枠に対する付着強度は微粘着剤層の非透水性基材又はシート材に対する付着強度より大きく、且つ、微粘着剤層のシート材に対する付着強度は非透水性基材に対する付着強度より大きいことを特徴とするコンクリート養生シート。
請求項1〜5のいずれか1項記載のコンクリート養生シートを粘着剤層がコンクリート打設用の型枠の内面に接するように貼付する貼付工程、コンクリート養生シートが貼付された状態でコンクリートの打設を行う打設工程、コンクリートの打設後にコンクリート養生シートの非透水性基材がコンクリート構造物側に残置するように、微粘着剤層、シート材及び粘着剤層と共に型枠を脱型する脱型工程並びに非透水性基材がコンクリート構造物の表面に残置した状態でコンクリート構造物を所定期間養生する養生工程よりなることを特徴とするコンクリート構造物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を製造するには、所定位置に設置した型枠内にコンクリートを打設し、所定日数養生した後に型枠を脱型し、型枠が脱型されたコンクリート表面に養生シートを所定期間貼付して水和反応が進むようコンクリートの湿潤養生を行うことが一般的であったが、合成樹脂シートよりなる養生シートのコンクリート構造物に対する付着力は小さく、コンクリート構造物の鉛直面に養生シートを密着させるのは困難であり、密着できても、経時により容易に剥離脱落してしまうという欠点があった。
【0003】
上記欠点を解消するために、コンクリートを打設する際に、予め、型枠内面に養生シートを貼付する方法が種々提案されている。例えば、「型枠の堰板に、その堰枠に対する付着力よりもコンクリートに対する付着力の方が大きく、コンクリートに対して養生効果のある材料(プラスチック材料)を前もって取り付け、コンクリート打設後、上記材料をコンクリート表面に付着残留させるコンクリートの養生方法」(例えば、特許文献1参照。)や「内面にポリプロピレン系樹脂又はポリエチレンテレフタレート系樹脂よりなり、線膨張係数が100×10
−6/℃以下であるシート材が積層されているコンクリート打設用の型枠の内面に、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレンテレフタレート系樹脂よりなり、線膨張係数が100×10
−6/℃以下である非透水性基材の一面に微粘着性の粘着剤層が積層されてなる養生シートを粘着剤層が該シート材に接するように貼付する貼付工程、該養生シートが貼付された状態でコンクリートの打設を行う打設工程、コンクリートの打設後に該養生シートがコンクリート構造物側に残置するように型枠を脱型する脱型工程及び養生シートがコンクリート構造物の表面に残置した状態でコンクリート構造物を所定期間養生する養生工程よりなり、コンクリートを打設した際の、上記養生シートと型枠内面との付着力が養生シートとコンクリート構造物との付着力より小さいことを特徴とするコンクリート構造物の製造方法。」(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、前者の養生方法で大型のコンクリート構造物を製造するには、大型鉄筋と共に型枠を組み立てる必要があり、その後コンクリートを打設するので、コンクリートに対して養生効果のある材料(養生シート)を型枠に取り付けた後、型枠にコンクリートが打設するまでの期間は、一般に数日から2週間程度かかり、その間、養生シートは直射日光や風雨にさらされると共に、温度変化にさらされるので養生シートにしわが発生し、それがコンクリート表面に転写されることにより、コンクリート表面に凹凸模様を形成してしまい美観が悪かった。
【0005】
又、後者の上記コンクリート構造物の製造方法においては、型枠の内面にシート材を積層しなければならず手間を要し、又、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレンテレフタレート系樹脂シート材の様な平滑なシートに粘着剤層を有する養生シートを気泡がはいらないように貼付することは困難であり、シート材と養生シートの間に気泡が形成されると、その気泡形状がコンクリート表面に転写されることにより、コンクリート表面に凹凸模様ができてしまい美観が悪かった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
請求項1記載のコンクリート養生シートは、熱可塑性樹脂よりなる非透水性基材、微粘着剤層、熱可塑性樹脂よりなるシート材及び粘着剤層が順次積層されており、打設されたコンクリート構造物に対する非透水性基材の付着強度及び粘着剤層の型枠に対する付着強度は微粘着剤層の非透水性基材又はシート材に対する付着強度より大きいことを特徴とする。
【0014】
上記非透水性基材は、熱可塑性樹脂よりなる非透水性のシートである。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する任意の樹脂が使用可能であり、例えば、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ABS系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂中、ポリプロピレン系樹脂シート及びポリエチレンテレフタレート系樹脂シートは共に線膨張が小さく、温度変化によりしわが発生しにくく剥がれにくいので好ましいが、ポリエチレンテレフタレート系樹脂シートはポリプロピレン系樹脂シートより剛性が高く、コンクリート構造物への付着強度が小さく剥離しやすいので、ポリプロピレン系樹脂シートがより好ましい。
【0015】
上記ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主体とする重合体であり、プロピレン単独重合体の他、ポリプロピレンを主体とする、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン等のα−オレフィンとの共重合体及びプロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、柔軟性が高く、コンクリート構造物の表面への付着強度が優れているプロピレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。又、これらポリプロピレン系樹脂は単独で使用されてもよいし、ポリエチレン系樹脂等と併用されてもよい。
【0016】
上記プロピレン系熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレン樹脂又はエチレン−プロピレン共重合体とエチレン−プロピレンゴムの溶融混合物又は重合反応物であり、例えば、プライムポリマー社製商品名「プライムTPO」、日本ポリプロ社製商品名「ニューコン」、サンアロマー社製商品名「キャタロイ」、三菱化学社製商品名「ゼラス」等が挙げられる。
【0017】
上記非透水性基材には、非透水性基材のコンクリート構造物に対する付着強度が大きくなるように、タルク、フライアッシュ、セメント等が添加されてもよい。
【0018】
上記タルクは、滑石を微粉砕した白色又は灰色の無機粉末であって、含水珪酸マグネシウムを主体とする。タルクの粒子径は大きくなるとシートの成形性が低下すると共にシートのコンクリート構造物の表面への付着強度が低下するので、平均粒子径は50μm以下が好ましく、より好ましくは25μm以下である。
【0019】
上記フライアッシュは、火力発電所等で微粉炭を燃焼する際に副産されるもので、2酸化珪素50〜70重量%及び酸化アルミニウム15〜30重量%を主成分として含有する混合物である。フライアッシュの粒子径は、大きくなるとシートの成形性が低下すると共にシートのコンクリート構造物の表面への付着強度が低下するので、平均粒子径は50μm以下が好ましい。
【0020】
上記セメントは、従来からコンクリートやモルタルの原料として一般に使用されている水硬性のセメントであり、ポルトランドセメント及びポルトランドセメントを主体とし、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュ等を混合した高炉セメント、低熱セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等が挙げられ、ポルトランドセメントが好ましい。
【0021】
上記ポルトランドセメントは、ケイ酸三カルシウム(エーライト、3CaO・SiO
2)、ケイ酸二カルシウム(ビーライト、2CaO・SiO
2)、カルシウムアルミネート(アルミネート、3CaO・Al
2O
3)、カルシウムアルミノフェライト(フェライト、4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3)、硫酸カルシウム(石膏、CaSO
4・2H
2O)等からなり、コンクリートの原材料として使用されている。
【0022】
上記ポルトランドセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等が挙げられ、最も汎用性の高い一般的な「普通のセメント」であり、一般的な工事・構造物に使用される普通ポルトランドセメントが好ましい。
【0023】
セメントの粒子径は、大きくなるとシートの成形性が低下すると共にシートのコンクリート構造物の表面への付着強度が低下するので、平均粒子径は40μm以下が好ましい。
【0024】
タルク、フライアッシュ及びセメントの添加量は、少なくなると非透水性基材のコンクリート構造物の表面への付着強度が低下し、多くなると非透水性基材の成形性が低下するので、熱可塑性樹脂100重量部に対し0.1〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜30重量部である。又、タルク、フライアッシュ及びセメントは、単独で使用されてもよいし、併用されてもよい。
【0025】
又、非透水性基材には、熱可塑性樹脂シートの成形の際に一般に添加されている配合剤、例えば、結晶核剤;加工助剤;改質剤;滑剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;耐候剤;顔料;着色剤;マイカ、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機充填剤;可塑剤等が添加されてもよい。
【0026】
非透水性基材の厚みは、特に限定されないが、薄くなりすぎると取扱いが困難になると共に使用中に破損しやすくなり、又、厚くなりすぎても取扱いが困難になると共にコストが高くなるので10〜1000μmが好ましく、より好ましくは100〜500μmである。
【0027】
又、非透水性基材の線膨張係数は、大きくなるとコンクリート構造物の表面へ貼付している間の温度変化によりしわが発生してコンクリート養生シート(非透水性基材)が剥離脱落したり、コンクリート構造物の表面性が低下するので、100×10
−6/℃以下が好ましい。
【0028】
又、コンクリート養生シートをコンクリート構造物の表面への貼付した際に、コンクリート構造物の表面状態を観察できるように、非透水性基材は透明又は半透明であるのが好ましいので、非透水性基材が透明又は半透明になるように、上記タルク、フライアッシュ、ポルトランドセメント及び配合剤の添加量が制御されるのが好ましい。
【0029】
上記非透水性基材の製造方法は、特に限定されず、従来公知のインフレーション法、Tダイ法等が挙げられ、例えば、上記熱可塑性樹脂、タルク、フライアッシュ、ポルトランドセメント、配合剤等よりなる樹脂組成物或はこれをスーパーミキサー等で均一に分散した混合物又はこの混合物を押出機で溶融押出した後ペレタイザーで切断して得られたペレットを押出機で押出し、インフレーション法、Tダイ法等により成形すればよい。尚、タルク、フライアッシュ、ポルトランドセメント、配合剤等は熱可塑性樹脂とのマスターバッチを作成して添加されてもよい。
【0030】
上記シート材は、熱可塑性樹脂よりなるシートである。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する任意の樹脂が使用可能であり、例えば、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ABS系樹脂等が挙げられる。この中で、ポリプロピレン系樹脂シート及びポリエチレンテレフタレート系樹脂シートは共に線膨張が小さく、温度変化によりしわが発生しにくく剥がれにくいので好ましい。
【0031】
シート材の線膨張係数は、大きくなると温度変化により型枠から剥離したり、非透水性基材に負荷をかけてコンクリート養生シートを変形させ、しわが発生するように作用するので、小さい方が好ましく、100×10
−6/℃以下が好ましい。
【0032】
上記シート材の線膨張係数を調整するために、シート材に、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、クレー等の無機充填剤が添加されてもよい。
【0033】
シート材の厚さは、特に限定されないが、薄くなると取扱いが困難になり、厚くなるとコストが高くなると共に重くなって作業性が低下するので、5〜500μmが好ましく、より好ましくは、10〜50μmである。又、シート材の製造方法は、特に限定されず、上記非透水性基材と同様にして製造されればよい。
【0034】
尚、型枠にコンクリート養生シートを貼付する工程から型枠の脱型の間、特に、型枠にコンクリート養生シートを貼付する工程からコンクリートの打設の間の温度変化により、シート材及び非透水性基材は膨張・収縮を繰り返し、しわが発生しやすいので、両者の線膨張係数はできるだけ近いのが好ましく、その差は80×10
−6/℃以下が好ましい。又、両者を同一の熱可塑性樹脂で構成するのが好ましい。
【0035】
上記微粘着剤層は、非透水性基材とシート材の間に粘着剤が積層された微粘着性の粘着剤層であり、又、粘着剤層は、シート材の他面に粘着剤が積層された粘着剤層である。打設されたコンクリート構造物に対する非透水性基材の付着強度及び粘着剤層の型枠に対する付着強度は微粘着剤層の非透水性基材又はシート材に対する付着強度より大きくなされている。
【0036】
即ち、型枠を脱型する際に、非透水性基材はコンクリート構造物に残置し、シート材は型枠内面に残置して脱型される。尚、微粘着剤層は、微粘着剤層の非透水性基材又はシート材に対する付着強度の高い方に残置する。
【0037】
上記粘着剤としては、従来公知の任意の粘着剤が使用可能であり、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられ、透明性、耐候性等の優れたアクリル系粘着剤が好ましい。
【0038】
上記微粘着剤層の粘着剤は、粘着剤層を構成する粘着剤より付着強度の小さい微粘着性粘着剤が使用されるが、粘着剤層を構成する粘着剤を使用し、粘着剤の塗布部分と非塗布部分を点状、線状、格子状等に形成したり、非透水性基材又はシート材の全面に積層した後、表面に点状、線状、格子状等の凹凸模様を形成して粘着性を低下してもよい。
【0039】
又、微粘着剤層の粘着剤として、微球体粘着剤は微粘着性なので非透水性基材又はシート材の全面に積層して好適に使用される。微球体粘着剤としては、従来公知の任意の微球体粘着剤が使用可能であり、例えば、アルキル炭素数が、4〜8のアクリル酸アルキルエステルとアクリル酸メチル、スチレン、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル等とを溶液重合し、次いで水中に分散させて縣濁液とすることにより得られる。
【0040】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、薄くなると型枠内面に貼付した際に型枠とシート材の線膨張係数の差によるシート材の皴の発生を防止する効果が低減するので、5〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。
【0041】
微粘着剤層の厚みも、特に限定されないが、薄くなるとシート材と非透水性基材の線膨張係数の差によるシート材と非透水性基材の皴の発生を防止する効果が低減し、厚くなると付着強度が高くなる傾向があるので、5〜50μmが好ましく、より好ましくは10〜40μmである。
【0042】
上記コンクリート養生シートの製造方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されればよいが、例えば、非透水性基材に微粘着剤層を積層すると共に、シート材に粘着剤層を積層し、次いで、微粘着剤層とシート材が接するように両者を積層する方法があげられる。このように、工場のインラインで製造すれば、シート材と微粘着剤層の間及び微粘着剤層と非透水性基材の間に気泡の無いコンクリート養生シートが得られる。
【0043】
シート材と微粘着剤層の間及び微粘着剤層と非透水性基材の間に気泡が無いと、コンクリートの打設工程から型枠の脱型の間の温度変化により、シート材及び非透水性基材が膨張・収縮を繰り返しても、しわの発生が抑制できる。又、上記コンクリート養生シートの粘着剤層には離型シートが積層されているのが好ましい。
【0044】
打設されたコンクリート構造物と非透水性基材の付着強度は、幅30mm、長さ200mmの非透水性基材上にコンクリートを打設し、打設後20日に、幅方向の一端部を把持し、鉛直方向に引張速度300mm/minで引張って全体を引き剥がした(Tピール)際の最大応力である。
【0045】
粘着剤層の型枠に対する付着強度は、粘着剤層が積層された、幅30mm、長さ200mmのシート材の粘着剤層を型枠に押し当て、1kgのゴムロールで3往復加圧し、15分後に、シ−ト材の幅方向の一端部を把持し、鉛直方向に引張速度300mm/minで引張って全体を引き剥がした(Tピール)際の最大応力である。
【0046】
微粘着剤層の非透水性基材又はシート材に対する付着強度は、幅30mm、長さ200mmの非透水性基材と幅30mm、長さ200mmのシート材の間に微粘着剤層を形成し、非透水性基材及びシート材の長さ方向の一端部を把持し、逆方向に引張速度300mm/minで引張って、非透水性基材とシート材を引き剥がした(Tピール)際の最大応力である。
【0047】
尚、微粘着剤層は非透水性基材又はシート材のいずれか1方に残り、微粘着剤層と微粘着剤層の残らなかった他方の層との付着強度が測定され、残った層と微粘着剤層の付着強度はそれ以上の強度である。
【0048】
打設されたコンクリート構造物に対する非透水性基材の付着強度及び粘着剤層の型枠に対する付着強度は微粘着剤層の非透水性基材又はシート材に対する付着強度より大きければよいが、コンクリート構造物に対する非透水性基材の付着強度は2〜10N/30mm幅が好ましく、粘着剤層の型枠に対する付着強度は2〜10N/30mm幅が好ましい。又、微粘着剤層の非透水性基材又はシート材に対する付着強度0.1〜5N/30mm幅であって、コンクリート構造物に対する非透水性基材の付着強度及び粘着剤層の型枠に対する付着強度より小さいのが好ましい。
【0049】
又、非透水性基材とコンクリート構造物との付着強度を向上させるために、非透水性基材の他面(コンクリート構造物に接する面)に、上記粘着剤よりなる粘着剤層が積層されてもよく、粘着剤層は全面に積層されてもよいし、部分的に積層されてもよい。又、上記粘着剤から製造された両面粘着テープ又はシート等が積層されてもよい。
【0050】
請求項6記載のコンクリート構造物の製造方法は、請求項1〜5のいずれか1項記載のコンクリート養生シートを粘着剤層がコンクリート打設用の型枠の内面に接するように貼付する貼付工程、コンクリート養生シートが貼付された状態でコンクリートの打設を行う打設工程、コンクリートの打設後にコンクリート養生シートの非透水性基材又は非透水性基材と微粘着剤層がコンクリート構造物側に残置するように型枠を脱型する脱型工程並びに非透水性基材又は非透水性基材と微粘着剤層がコンクリート構造物の表面に残置した状態でコンクリート構造物を所定期間養生する養生工程よりなることを特徴とする。
【0051】
次に、請求項6記載のコンクリート構造物の製造方法を、図面を参照して説明する。
図1はコンクリート養生シートの一例を示す断面図であり、
図2は内面にコンクリート養生シートが貼付されているコンクリート打設用の型枠の一例を示す断面図であり、
図3は上記型枠内面にコンクリートを打設した状態の一例を示す断面図であり、
図4は型枠を脱型した後のコンクリート構造物の一例を示す断面図である。
【0052】
図1において、1はコンクリート養生シートであり、非透水性基材11の一面に微粘着剤層12が積層され、微粘着剤層12にシート材13が積層され、更に、シート材13に粘着剤層14が積層されている。尚、15は粘着剤層14に積層された離型シートである。
【0053】
請求項6記載のコンクリート構造物の製造方法の最初の工程は、コンクリート養生シートを粘着剤層がコンクリート打設用の型枠の内面に接するように貼付する貼付工程である。
【0054】
図2において、2は型枠であり、コンクリート養生シート1から離型シート15を剥離し、粘着剤層14が型枠2の内面に接するように貼付する。上記型枠2は従来公知の任意の型枠が使用可能であり、例えば、木材、合板、金属板等の型枠が挙げられ、表面に塗料が塗装されていてもよい。
【0055】
2番目の工程は、コンクリート養生シート1が貼付された状態でコンクリートの打設を行う打設工程である。
図3に示したように、内面に粘着剤層14側が接するようにコンクリート養生シート1が貼付されている型枠2の内面に、コンクリート3を打設する。コンクリートの打設後、コンクリート3が型枠内面の隅々まで流れ込むように、バイブレータ等により締固めてもよい。又、コンクリート養生シート1のコンクリート構造物への付着強度を向上させるために、非透水性基材11の他面にコンクリートに食い込むように凹凸部を形成してもよいし、端部を折り曲げて、コンクリート内に埋入するように折り返し部を形成してもよい。
【0056】
3番目の工程は、コンクリートの打設後にコンクリート養生シートの非透水性基材又は非透水性基材と微粘着剤層がコンクリート構造物側に残置するように型枠を脱型する脱型工程であり、コンクリートの打設後にコンクリートがある程度硬化しコンクリート構造物31が形成された後、コンクリート養生シート1の非透水性基材11がコンクリート構造物31側に残置するように型枠1を脱型する。
【0057】
非透水性基材11とシート材13の貼付強度は、非透水性基材11とコンクリート構造物31との付着強度及びシート材13と型枠2の貼付強度より小さいので、
図4に示したように、コンクリート構造物31の表面に非透水性基材11が残置した状態で、且つ、シート材13は型枠2に残置した状態で、型枠2とシート材13は容易に非透水性基材11から剥離することができる。
【0058】
尚、微粘着剤層12は、微粘着剤層12の非透水性基材11に対する付着強度とシート材13に対する付着強度の高い方に残置する。微粘着剤層12の非透水性基材11に対する付着強度とシート材13に対する付着強度を調整するには、例えば、微粘着剤層12を残したい層の表面に下塗り剤層を積層する方法、微粘着剤層12を残したくない層の表面に離型剤層を積層する方法等が挙げられる。
【0059】
尚、コンクリート養生シートの貼付工程から脱型工程に間、特に、コンクリート養生シートの貼付工程からコンクリートの打設工程の間の温度変化により、非透水性基材11及びシート材13は膨張・収縮を繰り返すが、非透水性基材11とシート材13の間に気泡はなく、微粘着剤層13によって緩和され、非透水性基材11及びシート材13のしわの発生が抑止される。
【0060】
4番目の工程は養生工程であり、
図3に示したように、非透水性基材11がコンクリート構造物31の表面に残置した状態でコンクリート構造物31を所定期間養生する。養生終了後、非透水性基材11を剥離することにより、コンクリート構造物31が得られる。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名「プライムポリプロE100GPL」,MFR=1.0g/10min、密度=0.9g/cm
3)30重量部とタルク(平均粒子径3.5μm、見かけ密度0.08g/cm
3)70重量部を押出機に供給し、溶融混練して押出し、切断してペレットを得た。
【0063】
プロピレン系熱可塑性エラストマー(プライムポリマー社製、商品名「プライムTPO E−2900」、MFR=2.8g/10min、密度=0.91g/cm
3)30重量部、得られたペレット70重量部、帯電防止剤(花王社製、商品名「エレストロマスター」)1重量部及び耐候剤(ヒンダードアミン系光安定剤)1重量部を混合し、押出機に供給し、溶融混練してTダイで押出した後、ゴムロールで押圧冷却して厚さ200μmの非透水性基材を得た。得られた非透水性基材の線膨張係数は61×10
−6/℃であった。
【0064】
得られた非透水性基材の一表面にアクリル系溶剤タイプ粘着剤を凸部の幅が10mm、凹部の幅が5mmの格子状に塗布乾燥して、厚さ15μmの微粘着剤層を形成して微粘着剤層が積層された積層シート(1)を得た。
【0065】
アクリル系溶剤タイプ粘着剤を離型シート上に塗布乾燥して、厚さ15μmの粘着剤層を形成し、次いで、ポリエチレンテレフタレート樹脂よりなる厚さ38μmのシート材(線膨張率35×10
−6/℃)を積層して粘着剤層が積層された積層シート(2)を得た。粘着剤層の下記木製型枠に対する付着強度は5.0N/30mm幅であった。
【0066】
得られた積層シート(1)の微粘着剤層が得られた積層シート(2)のシート材に接するように重ね合わせ、一対のロールに供給し、プレス成形して、
図1に示したコンクリート養生シート1を得た。尚、微粘着剤層のシート材に対する付着強度は1.0N/30mm幅であり、微粘着剤層の非透水性基材対する付着強度はそれ以上であった。
【0067】
内径が900×900×1800mmの木製型枠の内面に、得られたコンクリート養生シート1の離型シートを剥離して、粘着剤層が型枠に接するように貼付した。コンクリート養生シート1の貼付された型枠を野外に2週間放置したがコンクリート養生シート1にしわは発生しなかった。その後型枠内に、ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、商品名「普通ポルトランドセメント」、平均粒子径10μm、見かけ密度3.16g/cm
3)35重量部、水17.5重量部、山砂73.6重量部及び砕石10.2重量部を混合したコンクリート配合物を打設し、5日後に脱型した。脱型の際に、
図4に示した通り、コンクリート養生シートは非透水性基材と微粘着剤層の間で剥離した。非透水性基材はコンクリート構造物に付着しており、コンクリート構造物表面から脱落することはなかった。非透水性基材のコンクリート構造物に対する付着強度は4.0N/30mm幅であった。
【0068】
脱型の28日後に、非透水性基材に40×40mmの大きさのカッター目地をいれ、切断された非透水性基材のコンクリート構造物に対する付着状態を観察したところ、しっかりと付着していた。又、脱型の91日後において、非透水性基材はしわや気泡が発生することなく、コンクリート構造物表面に付着していた。更に、非透水性基材を手で剥離したところコンクリート構造物の表面から容易に剥離することができ、コンクリート構造物の表面に凹凸模様はなく、美麗であった。
【解決手段】熱可塑性樹脂よりなる非透水性基材、微粘着剤層、熱可塑性樹脂よりなるシート材及び粘着剤層が順次積層されており、打設されたコンクリート構造物に対する非透水性基材の付着強度及び粘着剤層の型枠に対する付着強度は微粘着剤層の非透水性基材又はシート材に対する付着強度より大きいことを特徴とするコンクリート養生シート。