(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリブタジエン(イ)5〜90重量部と、前記その他のゴム(ロ)95〜10重量部とからなるゴム成分(イ)+(ロ)100重量部に対し、前記ゴム補強材(ハ)が1〜100重量部が配合されてなる請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ポリブタジエン)
本発明で使用するポリブタジエンは、以下の特性を有する。
【0015】
(A)ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)が43以上である。本発明で使用するポリブタジエンにおいて、ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は45〜74であることが好ましく、48〜70であることがより好ましく、50〜65であることがさらに好ましい。ML
1+4,100℃を43以上とすることで、耐摩耗性がより向上する。一方、ML
1+4,100℃を74以下とすることで、加工性がより向上する。なお、ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、後述する実施例に記載された方法により測定したものである。
【0016】
(B)5重量%トルエン溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の比(Tcp/ML
1+4,100℃)が0.9〜2.3である。Tcp/ML
1+4,100℃は、1.2〜1.9であることが好ましく、1.4〜1.7であることがより好ましい。Tcp/ML
1+4,100℃は分岐度の指標となるものであり、Tcp/ML
1+4,100℃が0.9より小さいと、分岐度が大きすぎて耐摩耗性が低下する。一方、Tcp/ML
1+4,100℃が2.3より大きいと、分岐度が低すぎてコールドフローが生じやすくなり、製品の保存安定性が低下する。なお、5重量%トルエン溶液粘度(Tcp)及びムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、後述する実施例に記載された方法により測定したものである。
【0017】
(C)ML
1+4,100℃測定終了時のトルクを100%としたとき、その値が80%減衰するまでの応力緩和時間(T80)が10.0〜40.0秒である。T80は、11.0〜26.0秒であることが好ましく、12.0〜20.0秒であることがより好ましい。T80が10.0秒より小さいと、ゴム分子の絡み合いが少なく剪断応力の保持力が不十分なため、良好なフィラーの分散状態が得られにくい。一方、T80が40.0秒より大きいと、成形加工時の残留応力が増大するため、寸法安定性が劣り加工性が低下する。なお、応力緩和時間(T80)は、後述する実施例に記載された方法により測定したものである。ゴムの応力緩和の推移は、弾性成分と粘性成分の組み合わせにより決まるものであり、応力緩和が遅いことは弾性成分が多いことを示し、応力緩和が速いことは粘性成分が多いことを示す。
【0018】
(D)分子量分布(Mw/Mn)が2.50〜4.00である。Mw/Mnは、2.60〜3.60であることが好ましく、2.70〜3.20であることがより好ましい。Mw/Mnが2.50より小さいと、加工性が低下する。一方、Mw/Mnが4.00より大きいと、耐摩耗性が低下する。なお、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載された方法により測定したものである。
【0019】
さらに、本発明で使用するポリブタジエンにおいて、(E)重量平均分子量(Mw)が40.0×10
4〜75.0×10
4であることが好ましく、46.0×10
4〜65.0×10
4であることがより好ましく、52.0×10
4〜62.0×10
4であることがさらに好ましい。Mwを40.0×10
4以上とすることで、耐摩耗性がより向上する。一方、Mwを75.0×10
4以下とすることで、加工性がより向上する。
【0020】
さらに、本発明で使用するポリブタジエンにおいて、(F)ミクロ構造分析におけるシス構造の割合が98モル%以下であることが好ましく、94.0〜97.8モル%であることがより好ましく、95.0〜97.6モル%であることがさらに好ましい。ミクロ構造分析におけるシス構造の割合を98モル%以下とすることで、十分な分岐状ポリマー鎖を有し、必要とする応力緩和時間が得られやすい。ただし、ミクロ構造分析におけるシス構造の割合が小さすぎると、耐摩耗性が低下する傾向を示す。なお、ミクロ構造の割合は、後述する実施例に記載された方法により測定したものである。
【0021】
本発明のポリブタジエンにおいて、トルエン溶液粘度(Tcp)は42〜160であることが好ましく、55〜135であることがより好ましく、68〜120であることがさらに好ましい。Tcpを42以上とすることで、耐摩耗性がより向上する。一方、Tcpを160以下とすることで、加工性がより向上する。
【0022】
本発明で使用するポリブタジエンにおいて、数平均分子量(Mn)は12.5×10
4〜30.0×10
4であることが好ましく、16.0×10
4〜23.0×10
4であることがより好ましく、17.0×10
4〜20.3×10
4であることがさらに好ましい。Mnを12.5×10
4以上とすることで、耐摩耗性がより向上する。一方、Mnを30.0×10
4以下とすることで、加工性がより向上する。
【0023】
本発明で使用するポリブタジエンにおいて、ミクロ構造分析におけるビニル構造の割合が2モル%以下であることが好ましく、1.8モル%以下であることがより好ましい。ミクロ構造分析におけるビニル構造の割合を2モル%以下とすることで、分子運動性が良好となり、加硫後の動的粘弾性特性のtanδが良好となる。なお、ミクロ構造分析におけるビニル構造の割合はできるだけ少ない方が好ましいが、例えば、1.0モル%以上でもよい。
【0024】
本発明で使用するポリブタジエンにおいて、ミクロ構造分析におけるトランス構造の割合が2.0モル%以下であることが好ましく、1.6モル%以下であることがより好ましく、1.3モル%以下であることがさらに好ましい。ミクロ構造分析におけるトランス構造の割合を2.0モル%以下とすることで、耐摩耗性がより向上する。なお、ミクロ構造分析におけるトランス構造の割合はできるだけ少ない方が好ましいが、例えば1.0モル%以上でもよい。
【0025】
本発明で使用するポリブタジエンにおいて、ポリブタジエンは、二塩化二硫黄、一塩化一硫黄、その他硫黄化合物、有機過酸化物、t−ブチルクロライド等で変性されていてもよく、変性されていなくてもよい。
【0026】
(ポリブタジエンの製造方法)
本発明で使用するポリブタジエンは、遷移金属触媒、有機アルミニウム化合物、及び水からなる触媒系により製造できる。
【0027】
遷移金属触媒としては、コバルト触媒が好適である。コバルト触媒としては、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、オクチル酸(エチルヘキサン酸)コバルト、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト、マロン酸コバルト等のコバルト塩;コバルトビスアセチルアセトネート、コバルトトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルコバルト、コバルト塩のピリジン錯体及びピコリン錯体等の有機塩基錯体又はエチルアルコール錯体などが挙げられる。なかでも、オクチル酸(エチルヘキサン酸)コバルトが好ましい。なお、上記の物性を持つポリブタジエンが得られるのであれば、ネオジム触媒やニッケル触媒等の他の触媒を用いることもできる
【0028】
遷移金属触媒の使用量に関しては、所望のムーニー粘度を有するポリブタジエンとするように適宜調整することができる。
【0029】
有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、アルキルアルミニウムジクロライド、アルキルアルミニウムジブロマイド等のハロゲン含有有機アルミニウム化合物;ジアルキルアルミニウムハイドライド、アルキルアルミニウムセスキハイドライト等の水素化有機アルミニウム化合物などが挙げられる。有機アルミニウム化合物は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0030】
トリアルキルアルミニウムの具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどが挙げられる。
【0031】
ジアルキルアルミニウムクロライドとしては、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。ジアルキルアルミニウムブロマイドとしては、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムブロマイドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムセスキクロライドとしては、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムセスキブロマイドとしては、メチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムジクロライドとしては、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムジブロマイドとしては、メチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドなどが挙げられる。
【0032】
ジジアルキルアルミニウムハイドライドとしては、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムセスキハイドライトとしては、エチルアルミニウムセスキハイドライド、イソブチルアルミニウムセスキハイドライドなどが挙げられる。
【0033】
有機アルミニウム化合物と水との混合比に関しては、所望のT80を有するポリブタジエンが得られやすいことから、アルミニウム/水(モル比)で1.5〜3であることが好ましく、1.7〜2.5であることがより好ましい。
【0034】
さらに、所望のムーニー粘度を有するポリブタジエンとするため、シクロオクタジエン、アレン、メチルアレン(1,2−ブタジエン)等の非共役ジエン類;エチレン、プロピレン、1−ブテン等のα−オレフィン類などの分子量調節剤を用いることもできる。使用することができる。分子量調節剤は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0035】
重合方法には特に制限はなく、1,3−ブタジエンなどの共役ジエン化合物モノマーを重合溶媒としながらモノマーを重合する塊状重合(バルク重合)や、モノマーを溶媒に溶解させた状態で重合する溶液重合等を適用できる。溶液重合で用いる溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素;n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素;ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の石油系溶媒;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。なかでも、トルエン、シクロヘキサン、又はシス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合溶媒が好適に用いられる。
【0036】
重合温度は、−30〜150℃の範囲が好ましく、30〜100℃の範囲がより好ましく、所望のT80を有するポリブタジエンが得られやすいことから70〜80℃がさらに好ましい。重合時間は、1分〜12時間の範囲が好ましく、5分〜5時間の範囲がより好ましい。
【0037】
重合反応が所定の重合率に達した後、必要に応じて老化防止剤を添加することができる。老化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)等のフェノール系老化防止剤、トリノニルフェニルフォスファイト(TNP)等のリン系老化防止剤、並びに4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール及びジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)等の硫黄系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。老化防止剤の添加量は、ポリブタジエン100重量部に対して0.001〜5重量部とすることが好ましい。
【0038】
所定時間の重合を行った後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、さらに洗浄や乾燥工程等の後処理を行うことで、所望の特性を持ったポリブタジエンを製造することができる。
【0039】
(タイヤ用ゴム組成物)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記のポリブタジエン(イ)と、その他のゴム(ロ)と、ゴム補強材(ハ)とを含む。
【0040】
その他のゴム成分(ロ)としては、例えば、上記特性を有するポリブタジエン以外のジエン系ゴムを用いることができる。上記特性を有するポリブタジエン以外のジエン系ゴムとしては、上記特性を有しないポリブタジエンゴム、天然ゴム、ハイシスポリブタジエンゴム、ローシスポリブタジエンゴム(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン含有ブタジエンゴム(VCR)、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム等のジエン系モノマーの重合体;アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルクロロプレンゴム、ニトリルイソプレンゴム等のアクリロニトリル−ジエン共重合ゴム;乳化重合又は溶液重合スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンクロロプレンゴム、スチレンイソプレンゴム等のスチレン−ジエン共重合ゴム;エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。なかでも、上記特性を有しないブタジエンゴム、天然ゴム、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン含有ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムが好ましい。特に、溶液重合スチレンブタジエンゴム(s−SBR)、天然ゴム、又はイソプレンゴムが好適である。その他のゴム成分(ロ)は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0041】
ゴム補強材(ハ)としては、カーボンブラック、ホワイトカーボン(シリカ)、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム等の無機補強材;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂等の有機補強材などが挙げられる。なかでも、カーボンブラック又はシリカが好ましい。ゴム補強材は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0042】
カーボンブラックとしては、FEF、FF、GPF、SAF、ISAF、SRF、HAFなどが挙げられるが、耐摩耗性を向上させる観点から、粒子径の小さいISAFが好ましい。カーボンブラックの平均粒子径は、15nm以上90nm以下であることが好ましい。カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、70ml/100g以上140ml/100g以下であることが好ましい。シリカとしては、ニプシルVN3(商品名、東ソーシリカ社製)、Ultrasil7000GR(商品名、エボニック・デグサ社製)などが挙げられる。
【0043】
上記成分の配合割合は、本発明のポリブタジエン(イ)5〜90重量部と、その他のゴム(ロ)95〜10重量部とからなるゴム成分(イ)+(ロ)100重量部に対し、ゴム補強材(ハ)1〜100重量部であることが好ましい。ゴム成分(イ)+(ロ)は、ポリブタジエン(イ)10〜60重量部と、その他のゴム(ロ)90〜40重量部とからなることがより好ましく、ポリブタジエン(イ)20〜40重量部と、その他のゴム(ロ)80〜60重量部とからなることがさらに好ましい。ゴム補強材(ハ)は、ゴム成分(イ)+(ロ)100重量部に対し、30〜90重量部であることがより好ましく、50〜80重量部であることがさらに好ましい。
【0044】
タイヤ用ゴム組成物は、上記の各成分を、通常行われているバンバリー、オープンロール、ニーダー、二軸混練り機などを用いて混練りすることで得られる。
【0045】
タイヤ用ゴム組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸など、通常ゴム業界で用いられる配合剤を混練してもよい。
【0046】
シランカップリング剤としては、特に上記のポリブタジエン(イ)又はその他ゴム成分(ロ)と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0047】
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば、硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤、酸化マグネシウム等の金属酸化物などが用いられる。加硫剤は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0048】
加硫促進剤としては、公知の加硫助剤、例えば、アルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などが用いられる。加硫促進剤は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0049】
老化防止剤としては、アミン・ケトン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、燐系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0050】
充填剤としては、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、リサージュ、珪藻土等の無機充填剤;再生ゴム、粉末ゴム等の有機充填剤が挙げられる。充填剤は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0051】
プロセスオイルとしては、アロマティック系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイルのいずれを用いてもよい。また、低分子量の液状ポリブタジエンやタッキファイヤーを用いてもよい。プロセスオイルは、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明に基づく実施例について具体的に記載する。
【0053】
(5重量%トルエン溶液粘度(Tcp))
ポリブタジエンの5重量%トルエン溶液粘度(Tcp)は、ポリマー2.28gをトルエン50mlに溶解させた後、キャノンフェンスケ粘度計No.400を用いて25℃で測定した。なお、標準液としては、粘度計校正用標準液(JIS Z8809)を用いた。
【0054】
(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃))
ポリブタジエン及び配合物のムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、JIS−K6300に準拠して100℃にて測定した。なお、配合物のML
1+4,100℃については、比較例1又は比較例5を100とした指数を算出した(指数が大きいほど配合物のML
1+4,100℃が小さく、加工性が良好となる)。
【0055】
(応力緩和時間(T80))
ポリブタジエン及び配合物の応力緩和時間(T80)は、ASTM D1646−7に準じた応力緩和測定により算出した。具体的には、ML
1+4,100℃の測定条件下、測定4分後にローターが停止した時(0秒)のトルクを100%とし、その値が80%緩和するまで(すなわち20%に減衰するまで)の時間(単位:秒)を応力緩和時間T80として測定した。
【0056】
(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn))
ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC法(東ソー社製、商品名:HLC−8220)により、標準ポリスチレン換算により算出した。溶媒はテトラヒドロフランを用い、カラムはShodex製KF−805L(商品名)を2本直列に接続し、検出器は示唆屈折計(RI)を用いた。
【0057】
(ミクロ構造)
ポリブタジエンのミクロ構造は、赤外吸収スペクトル分析によって算出した。具体的には、ミクロ構造に由来するピーク位置(cis:740cm
−1、vinyl:910cm
−1、trans:967cm
−1)の吸収強度比から、ポリマーのミクロ構造を算出した。
【0058】
(耐摩耗性)
ゴム組成物の耐摩耗性の指標として、JIS−K6264に準拠したランボーン摩耗係数を、スリップ率20%で測定し、比較例1又は比較例5を100とした指数を算出した(指数が大きいほどランボーン摩耗係数が大きく、耐摩耗性が良好となる)。
【0059】
(実施例1)
窒素ガスで置換した内容1.5Lの撹拌機つきステンレス製反応槽中に、重合溶液1.0L(ブタジエン(BD):34.2重量%、シクロヘキサン(CH):31.2重量%、残りは2−ブテン類)を投入した。さらに、水(H
2O)1.52mmol、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)2.08mmol、トリエチルアルミニウム(TEA)0.52mmol(全アルミニウム/水=1.71(混合モル比))、コバルトオクトエート(Co
cat)20.94μmol、及びシクロオクタジエン(COD)6.05mmolを加え、72℃で20分間撹拌することで、1,4シス重合を行った。その後、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾールを含むエタノールを加えて重合を停止し、未反応のブタジエン及び2−ブテン類を蒸発除去することで、ポリブタジエンを得た。その物性を表1に示す。
【0060】
次に、得られたポリブタジエンを用いてスチレンブタジエンゴム(SBR)を含むゴム組成物を作製した。具体的には、まず、30重量部のポリブタジエンと、70重量部のスチレンブタジエンゴム(SBR)とを、温度90℃、回転数68rpmに設定したラボプラストミル(東洋精機製作所社製、商品名:BR−250型)を用いて30秒間混合した。その後、規定量の半量である32.5重量部のシリカ(エボニック・デグサ社製、商品名:Ultrasil7000GR)と、5.2重量部のシランカップリング剤(エボニック・デグサ社製、商品名:si75)とを混合した。引き続き、残り32.5重量部のシリカと、25重量部のオイル(H&R社製、商品名:VivaTec400)と、3重量部のZnO(堺化学工業社製、商品名:Sazex1号)と、1重量部のステアリン酸(旭電化社製、商品名:アデカ脂肪酸SA−300)と、1重量部のAO(酸化防止剤、大内新興社製、商品名:ノクラック6C)とを投入し、計6分間混練した。
【0061】
次に、得られた混練物を6インチロールにより冷却・放冷した後、再度リミルを行った。さらに、混練物に、1.7重量部の第一の加硫促進剤(大内新興社製、商品名:ノクセラーCZ(CBS))と、2重量部の第二の加硫促進剤(大内新興社製、商品名:ノクセラーD(DPG))と、1.4重量部の加硫剤(粉末硫黄、鶴見化学工業社製)とを6インチロールにより混合することで、配合物を作製した。配合物の物性(ムーニー粘度)を表1に示す。
【0062】
そして、得られた配合物を金型に入れてプレス加硫することで、ゴム組成物を作製した。なお、加硫時間は、粘弾性測定装置(アルファテクノロジーズ社製、商品名:RPA2000)で求めた160℃の加硫特性t90の2倍の時間とした。得られたゴム組成物の物性(ランボーン摩耗係数)を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(実施例2〜9)
原料配合比及び重合温度を表2のように変更したこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。なお、実施例7及び8では、トリエチルアルミニウム(TEA)を使用しなかった。
【0065】
【表2】
【0066】
(比較例1)
市販のポリブタジエン(宇部興産社製、商品名:BR150L)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例2)
市販のポリブタジエン(宇部興産社製、商品名:BR150B)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例3)
試作ポリブタジエンを用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例4)
市販のポリブタジエン(宇部興産社製、商品名:BR710)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例10)
実施例1で得られたポリブタジエンを用いて天然ゴムを含むゴム組成物を作製した。具体的には、まず、50重量部のポリブタジエンと、50重量部の天然ゴム(RSS#1;ML
1+4,100℃=70に調整)とを、温度90℃、回転数68rpmに設定したラボプラストミル(東洋精機製作所社製、商品名:BR−250型)を用いて60秒間混合した。その後、50重量部のカーボンブラック(ISAF)と、3重量部のオイル(H&R社製、商品名:VivaTec400)と、3重量部のZnO(堺化学工業社製、商品名:Sazex1号)と、2重量部のステアリン酸(旭電化社製、商品名:アデカ脂肪酸SA−300)と、2重量部の酸化防止剤(住友化学社製、商品名:アンチゲン6C)とを投入し、計4分間混練した。
【0071】
次に、得られた混練物に、1重量部の加硫促進剤(大内新興社製、商品名:ノクセラーNS)と、1.5重量部の加硫剤(粉末硫黄、鶴見化学工業社製)とを6インチロールにより混合することで、配合物を作製した。配合物の物性(ムーニー粘度)を表3に示す。
【0072】
そして、得られた配合物を金型に入れてプレス加硫することで、ゴム組成物を作製した。なお、加硫時間は、粘弾性測定装置(アルファテクノロジーズ社製、商品名:RPA2000)で求めた150℃の加硫特性t90の2倍の時間とした。得られたゴム組成物の物性(ランボーン摩耗係数)を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
(実施例11〜14)
実施例3及び7〜9で得られたポリブタジエンを用いたこと以外は、実施例10と同様に実施した。結果を表3に示す。
【0075】
(比較例5〜7)
比較例1、2、及び4で用いたポリブタジエンを用いたこと以外は、実施例10と同様に実施した。結果を表3に示す。
【0076】
以上のように、所定の特性を持ったポリブタジエンを用いることで、より高度に耐摩耗性と加工性を両立させたタイヤ用ゴム組成物を得ることができる。