(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114493
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】光硬化可能な組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/14 20060101AFI20170403BHJP
C08F 290/00 20060101ALI20170403BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
C08G59/14
C08F290/00
G03F7/027 515
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-528265(P2011-528265)
(86)(22)【出願日】2009年6月12日
(65)【公表番号】特表2012-503690(P2012-503690A)
(43)【公表日】2012年2月9日
(86)【国際出願番号】EP2009057269
(87)【国際公開番号】WO2010034531
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2012年4月9日
【審判番号】不服2015-3661(P2015-3661/J1)
【審判請求日】2015年2月26日
(31)【優先権主張番号】08165135.8
(32)【優先日】2008年9月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】デュッデ,カイ
(72)【発明者】
【氏名】ピーロウ,サビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ロート,マルティン
【合議体】
【審判長】
加藤 友也
【審判官】
上坊寺 宏枝
【審判官】
大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開平6−166843(JP,A)
【文献】
特開平3−188123(JP,A)
【文献】
特開平7−207206(JP,A)
【文献】
特開平5−163328(JP,A)
【文献】
特開平4−366125(JP,A)
【文献】
特開平5−214048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 式(I)
【化1】
[式中、R
1は、HまたはCH
3から独立的に選ばれ;R
2は、C
1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;xは0〜2の整数であり;nは2〜12の整数である]で示されるノボラック型エポキシ樹脂(A)と式(II)
【化2】
[式中、R
3は、HまたはCH
3から独立的に選ばれ;R
4は、C
1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;zは0〜2の整数であり;mは0〜10の整数であり;oは0〜2の整数である]で示されるジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)との混合物を、1分子当たり2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を含有するアドバンスメント成分(C)と反応させる工程;
(2) 不飽和モノカルボン酸(D)と反応させる工程;および
(3) (1)〜(2)の工程から得られる不飽和基含有樹脂を、ポリカルボン酸無水物またはカルボン酸無水物(E)でエステル化する工程;
を含む反応によって光硬化可能な樹脂を製造する方法であって、
ノボラック型エポキシ樹脂(A)とジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)との重量比が5:1〜2:1である、上記方法。
【請求項2】
工程(1)と(2)を同時に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(1) 式(I)
【化3】
[式中、R1は、HまたはCH3から独立的に選ばれ;R2は、C1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;xは0〜2の整数であり;nは2〜12の整数である]で示されるノボラック型エポキシ樹脂(A)と式(II)
【化4】
[式中、R3は、HまたはCH3から独立的に選ばれ;R4は、C1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;zは0〜2の整数であり;mは0〜10の整数であり;oは0〜2の整数である]で示されるジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)との混合物を、不飽和モノカルボン酸(D)と反応させる工程;
(2) 1分子当たり2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を含有するアドバンスメント成分(C)と反応させる工程;および
(3) (1)〜(2)の工程から得られる不飽和基含有樹脂を、ポリカルボン酸無水物またはカルボン酸無水物(E)でエステル化する工程;
を含む反応によって光硬化可能な樹脂を製造する方法であって、
ノボラック型エポキシ樹脂(A)とジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)との重量比が5:1〜2:1である、上記方法。
【請求項4】
アドバンスメント成分(C)が、(A)と(B)を含む混合物からのエポキシ基の1化学当量を基準として0.01〜0.10モルの量にて存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ノボラック型エポキシ樹脂(A)がエポキシクレゾールノボラックである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
エポキシ樹脂(B)が、ジシクロペンタジエンとフェノールのグリシジル化付加物である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アドバンスメント成分(C)が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、およびレゾルシノールからなる群から選ばれる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
不飽和モノカルボン酸(D)が、クロトン酸、ケイ皮酸、メタクリル酸、およびアクリル酸からなる群から選ばれる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
カルボン酸無水物(E)が、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、および無水エチルテトラヒドロフタル酸からなる群から選ばれる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
光硬化可能な樹脂の酸価が0.7〜0.9当量/kgである、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法で得られた光硬化可能な樹脂、光重合開始剤、および希釈剤を配合することを含む、光硬化可能な組成物の製造方法。
【請求項12】
(a)請求項11に記載の方法で光硬化可能な組成物を供給する工程;(b)該光硬化可能な組成物をプリント回路基板上に施す工程;(c)該光硬化可能な組成物を熱乾燥し、基板上にフォトレジスト層を形成させる工程;(d)該フォトレジスト層を選択的に露光して、露光部分を硬化させる工程;および(e)非露光部分を除去することによってフォトレジスト層を現像する工程;を含むレジストパターンの作製方法。
【請求項13】
光硬化した組成物を製造する方法であって、
請求項1〜10のいずれかに記載の方法で得られた光硬化可能な樹脂を光硬化させること、または、請求項11に記載の方法で得られた光硬化可能な組成物を光硬化させること、を含む上記方法。
【請求項14】
ソルダーレジスト;エッチングレジスト;追加のめっき、コーティング、もしくは接着剤のためのレジストとしての、または、ステレオリソグラフィー用樹脂としての、請求項1〜10のいずれかに記載の方法で得られた光硬化可能な樹脂の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法およびその製造方法によって得られる光硬化可能な樹脂組成物に関する。本発明はさらに、光硬化可能な組成物を、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、または追加のめっき、コーティング、もしくは接着剤のためのレジストとして使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路の製造においては、電気回路を保護するために、そしてプリント回路基板上に電気部品をはんだ付けするときに、望ましくない部位におけるはんだ材料の接着を防ぐために、プリント回路基板に保護フィルムが貼られる。高密度の回路を有する光回路基板に対する需要が高まっていることから、優れた接着性、化学安定性、および電気特性を有する組成物が求められている。
【0003】
従来の熱硬化可能で光重合可能な組成物は、エポキシ化合物と感光性プレポリマーを含むことが多い。このような組成物を、乾燥と露光の後にアルカリ溶液中にて現像すると、感光性プレポリマーの非露光部分だけが難溶性になる。さらに、エポキシ化合物は、乾燥工程時と同じくらいの速さでエポキシド硬化剤と反応することが多く、このことが現像の能力を低下させ、現像されにくい層を銅表面上にもたらす。
【0004】
EP−A1−587 189は、光重合開始剤;希釈剤;および4つ以上のベンゼン核を有するノボラック型エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸ならびにヒドロキシル基および/またはエポキシ基と反応しうる2つ以上の官能基を有する連鎖延長剤とを反応させることによって得られる光重合可能な樹脂;を含む、光硬化可能な液体ソルダーレジストインク組成物を開示している。
【0005】
米国特許第6,077,879号は、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、アルコール性ヒドロキシ基(このヒドロキシ基をさらに、不飽和一塩基酸および多塩基酸の無水物と反応させる)を有するフェノール化合物との反応によって得られるラジカル重合可能で硬化可能な樹脂を開示している。
【0006】
WO−A1−2004/081621は、感光性組成物が、シクロペンタジエン−ノボラックエポキシ樹脂と不飽和カルボン酸との反応によって得られるバインダー樹脂および多塩基酸の無水物を含む、というカラーフィルター用感光性樹脂組成物を開示している。
【0007】
EP−A1−556 429は、シクロペンタジエン−ノボラックエポキシ樹脂;1種以上のフェノール性ヒドロキシル含有化合物;およびジシクロペンタジエン−ノボラックエポキシ樹脂とは異なるエポキシ含有成分;を含むエポキシ樹脂組成物を開示している。
【0008】
JP−10−001596は、(i)シクロペンタジエン−ノボラックエポキシ樹脂と(ii)エチレン性不飽和一塩基酸とを反応させ、次いで生成するエポキシビニルエステル樹脂と(iii)多塩基酸無水物とを反応させて、生成する樹脂のOHを変性することによって得られる酸基含有エポキシビニルエステル樹脂を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP−A1−587 189
【特許文献2】米国特許第6,077,879号
【特許文献3】WO−A1−2004/081621
【特許文献4】EP−A1−556 429
【特許文献5】JP−10−001596
【発明の概要】
【0010】
先行技術における公知のソルダーレジスト組成物は現像能力が低く、さらにあまりにも脆いために熱変化条件下にて亀裂を生じてしまう。特に自動車用途に対しては、温度変化条件下にて安定なマスクが要求される。同様に、はんだマスクは、高い絶縁耐力と優れた防湿性を有し、電気化学的な腐食を受けにくい、ということが要求される。応用分野に応じて、ソルダーレジスト組成物はさらに、ニッケル/金およびスズの浸漬時に加えられる条件下で安定でなければならない。自動車産業における環境基準がより厳しくなってきていることから、鉛を含有しないはんだが要求されているが、こうしたはんだはより高い融点(最高で290℃)を有する。したがって、優れた耐はんだ性と高い耐熱性を有するソルダーレジスト組成物が求められている。
【0011】
驚くべきことに、先行技術における上記問題を解消する光硬化可能な組成物が見出された。特に、増大した耐熱性と耐はんだ性を示す光硬化可能な組成物が見出された。
(1) i)式(I)
【数1】
(式中、R1は、HまたはCH3から独立的に選ばれ;R2は、C1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;xは0〜2の整数であり;nは2〜12の整数である)
で示されるノボラック型エポキシ樹脂(A)と式(II)
【数2】
(式中、R3は、HまたはCH3から独立的に選ばれ;R4は、C1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;zは0〜2の整数であり;mは0〜10の整数であり;oは0〜2の整数である)
で示されるジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)との混合物と、ii)1分子当たり2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を含有する進行成分(C)とを反応させる工程;iii)不飽和モノカルボン酸(D)と反応させる工程;およびiv)i)〜iii)の工程から得られる不飽和基含有樹脂をポリカルボン酸無水物もしくはカルボン酸無水物(E)でエステル化する工程;を含む反応によって光硬化可能な樹脂を製造する方法。
(2) 工程ii)を工程iii)の後に行うこと、または、工程ii)とiii)を同時に行うことを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3) 進行成分(C)が、(A)と(B)を含む混合物からのエポキシ基の1化学当量を基準として0.01〜0.10モルの量にて存在する、(1)または(2)のいずれかに記載の方法。
(4) ノボラック型エポキシ樹脂(A)がエポキシクレゾールノボラックである、(1)〜(3)の少なくとも一項に記載の方法。
(5) エポキシ樹脂(B)が、ジシクロペンタジエンとフェノールのグリシジル化付加物である、(1)〜(4)の少なくとも一項に記載の方法。
(6) 進行成分(C)が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、およびレゾルシノールからなる群から選ばれる、(1)〜(5)の少なくとも一項に記載の方法。
(7) ノボラック型エポキシ樹脂(A)とジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)との重量比が9:1〜1:1である、(1)〜(6)の少なくとも一項に記載の方法。
(8) 不飽和モノカルボン酸(D)が、クロトン酸、ケイ皮酸、メタクリル酸、およびアクリル酸からなる群から選ばれる、(1)〜(7)の少なくとも一項に記載の方法。
(9) カルボン酸無水物(E)が、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、および無水エチルテトラヒドロフタル酸からなる群から選ばれる、(1)〜(8)の少なくとも一項に記載の方法。
(10) (1)〜(9)の少なくとも一項に記載の製造方法によって得られる光硬化可能な樹脂。
(11) 酸価が0.7〜0.9当量/kgである、(10)に記載の光硬化可能な樹脂。
(12) (10)または(11)に記載の光硬化可能な樹脂、光重合開始剤、および希釈剤を含む光硬化可能な組成物。
(13) (a)(12)に記載の光硬化可能な組成物を供給する工程;(b)該光硬化可能な組成物をプリント回路基板上に施す工程;(c)該光硬化可能な組成物を熱乾燥し、基板上にフォトレジスト層を形成させる工程;(d)該フォトレジスト層を選択的に露光して、露光部分を硬化させる工程;および(e)非露光部分を除去することによってフォトレジスト層を現像する工程;を含むレジストパターンの作製方法。
(14) (10)または(11)に記載の光硬化可能な樹脂を光硬化させること、または、(12)に記載の光硬化可能な組成物を光硬化させることによって得られる光硬化組成物。
(15) ソルダーレジスト;エッチングレジスト;追加のめっき、コーティング、もしくは接着剤のためのレジストとしての、または、ステレオリソグラフィー用樹脂としての、(10)または(11)に記載の光硬化可能な樹脂の使用。
本発明の第1の実施態様は、i)式(I):
【0013】
(式中、R
1は、HまたはCH
3から独立的に選ばれ;R
2は、C
1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;xは0〜2の整数であり;nは2〜12の整数である)で示されるノボラック型エポキシ樹脂(A)と式(II)
【0015】
(式中、R
3は、HまたはCH
3から独立的に選ばれ;R
4は、C
1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;zは0〜2の整数であり;mは0〜10の整数であり;oは0〜2の整数である)で示されるジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)との混合物と、ii)1分子当たり2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を含有する進行成分(advancement component
:アドバンスメント成分ともいう)(C)とを反応させる工程;iii)不飽和モノカルボン酸(D)と反応させる工程;およびiv)i)〜iii)の工程から得られる不飽和基含有樹脂とポリカルボン酸無水物もしくはカルボン酸無水物(E)とでエステル化する工程;を含む反応によって光硬化可能な樹脂を製造する方法である。
【0016】
<成分(A)>
ノボラック型エポキシ樹脂(A)は式(I)
【0018】
(式中、R
1は、HまたはCH
3から独立的に選ばれ;R
2は、C
1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;xは0〜2の整数であり;nは2〜12の整数である)で示される。
【0019】
R
2は、メチルまたはBrから独立的に選ばれるのが好ましい。さらに、置換基R
2は、グリシジルエーテル部分に対してオルト位またはパラ位にあるのが好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂(A)はエポキシクレゾールノボラックであるのが好ましい。
【0020】
本発明の方法に適したノボラック型エポキシ樹脂が市販されており、例えば、ハンツマン社から市販のECN(エポキシクレゾールノボラック)樹脂や、日本化薬(株)から市販のEOCN(o−クレゾールノボラックエポキシ)樹脂などがある。
【0021】
<成分(B)>
本発明の方法で使用されるジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)は式(II)
【0023】
(式中、R
3は、HまたはCH
3から独立的に選ばれ;R
4は、C
1−4アルキルまたはハロゲンから独立的に選ばれ;zは0〜2の整数であり;mは0〜10の整数であり;oは0〜2の整数である)で示される。
【0024】
R
4は、メチルBrから独立的に選ばれるのが好ましい。好ましい実施態様によれば、R
4は、グリシジルエーテル部分に対してオルト位またはパラ位にある。式(II)で示されるジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂は、1つ以上の置換基R
4で置換されてもよいフェノールとジシクロペンタジエンとの重付加反応によって得ることができる。
【0025】
エポキシ樹脂(B)は、グリシジル化ジシクロペンタジエン−フェノール付加物であるのが好ましい。
ジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)は、ハンツマン社から、例えばタクティクス(TACTIX)(登録商標)556やタクティクス756として、あるいは大日本インキ化学工業(株)から、例えばエピクロン(EPICLON)(登録商標)HP−7200HHとして市販されている。
【0026】
ノボラック型エポキシ樹脂(A)とジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)との重量比は、9:1〜1:9であるのが好ましく、9:1〜1:1であるのがさらに好ましく、5:1〜2:1であるのが最も好ましい。
【0027】
光硬化可能な樹脂の製造方法において使用される進行成分(C)は、1分子当たり2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を含有する成分である。
進行成分(C)は、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、または以下の式(III)のビスフェノールから選択するのが好ましい:
【0029】
〔式中、R
5は独立して、水素、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、C
1−C
18アルキル、C
1−C
18アルケニル、C
1−C
18アルコキシ、C
1−C
18アルコキシ−C
1−C
18アルキレン、非置換であるか又は1つ以上のC
1−C
6アルキル基もしくはC
1−C
6アルコキシ基にで置換されたC
5−C
12シクロアルキル、非置換であるか又は1つ以上のC
1−C
6アルキル基もしくはC
1−C
6アルコキシ基で置換されたC
6−C
12アリール、あるいは、アリール部分が非置換であるか又は1つ以上のC
1−C
6アルキル基もしくはC
1−C
6アルコキシ基で置換された場合のC
6−C
12アリール−C
1−C
18アルキレンであり;X
1は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)
2−、−C(O)−、−NR
6−、−O−C(O)−、−O−C(O)−O−、−SO
2−O−、−O−SO
2−O−、C
1−C
18アルキレン、C
2−C
18アルケンジイル、C
3−C
12シクロアルキレン、C
5−C
12シクロアルケンジイル、−Si(OR
6)
2−、および−Si(R
6)
2−から選択される二価の架橋基であって、R
6は、H、C
1−C
12アルキル、C
5もしくはC
6シクロアルキル、あるいはメチル、エチル、フェニル、ベンジル、またはフェニル−2−エチルで置換されたC
5もしくはC
6シクロアルキルである〕。
【0030】
R
5は特に、水素またはC
1−C
4アルキル(メチルやエチル等)である。
X
1は、直接結合であるか、あるいは−O−、−S−、−S(O)
2−、−C(O)−、−NR
6(式中、R
6は水素またはC
1−C
4アルキルであるのが好ましい)、C
1−C
4アルキレン(例えば、メチレンや1,2−エチレン)、C
2−C
6アルケンジイル(例えば、エテンジイル、1,1−もしくは2,2−プロペンジイル、1,1−もしくは2,2−ブテンジイル、1,1−、2,2−もしくは3,3−ペンテンジイル、または1,1−、2,2−もしくは3,3−ヘキセンジイル)、またはC
5−C
8シクロアルケンジイル(例えば、シクロペンテンジイル、シクロヘキセンジイル、またはシクロオクテンジイル)から選択される二価の架橋基であるのが好ましい。
【0031】
進行成分(C)は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、およびレゾルシノールからなる群から選択するのがさらに好ましい。
本発明の製造方法において使用される成分(C)の量は、成分(A)と(B)とを含む混合物からのエポキシ基の1化学当量を基準として、好ましくは0.01〜0.10モルであり、さらに好ましくは0.02〜0.09モルであり、最も好ましくは0.03〜0.07モルである。
【0032】
製造方法の工程ii)における、成分(A)と(B)を含む混合物と進行成分(C)との反応である進行反応は、80℃〜160℃の温度範囲にて行うのが好ましい。進行反応は、触媒の存在下にて行うのが好ましい。適切な触媒は、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、第三アミン、およびイミダゾール化合物からなる群から選ばれる。
【0033】
進行反応は、より高い分子量に向かって分子量分布の広がりをもたらし、したがって、樹脂の平均分子量の増大をもたらす。
本発明の光硬化可能な樹脂の製造方法における工程iii)は、不飽和モノカルボン酸(D)と、ノボラック型エポキシ樹脂(A)とジシクロペンタジエン−フェノールグリシジルエーテル樹脂(B)とを含む混合物のエポキシ基とを反応させる、および/または、不飽和モノカルボン酸(D)と、既に成分(C)と反応している(A)と(B)を含む進んだエポキシ樹脂混合物のエポキシ基とを反応させる、という反応工程である。
【0034】
不飽和モノカルボン酸(D)は、クロトン酸、ケイ皮酸、メタクリル酸、およびアクリル酸からなる群から選択するのが好ましい。
不飽和カルボン酸(D)と、(A)と(B)とを含む進行エポキシ混合物または非進行エポキシ混合物との反応は、80℃〜140℃の温度で行うのが好ましい。この反応は、クロム塩、トリフェニルホスフィン、アミン(トリエチルアミンやベンジルジメチルアミン等)、アンモニウム塩、およびホスホニウム塩からなる群から選択するのが好ましい触媒の存在下にて行うのが好ましい。
【0035】
さらに、反応工程iii)中に、反応混合物に重合触媒を加えるのが有利である。重合開始剤は、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、および2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールからなる群から選択するのが好ましい。
【0036】
不飽和モノカルボン酸(D)の量は、存在するエポキシ基に対してカルボキシル基の少なくとも等モル量が反応混合物中に使用されるように選定するのが好ましい。本発明の好ましい実施態様においては、無水物とのさらなる反応時におけるゲル化を避けるために、反応混合物中に存在する1.05〜1.2当量のエポキシ基について1モル過剰量が使用される。
【0037】
本発明の製造方法の好ましい実施態様によれば、工程ii)を工程iii)の後に行うか、あるいは工程ii)とiii)を同時に行う。
本発明の製造方法の工程iv)は、工程i)〜iii)から得られる不飽和基含有の光硬化可能な樹脂組成物と、ポリカルボン酸無水物もしくはカルボン酸無水物(E)とのエステル化反応である。
【0038】
カルボン酸無水物(E)は、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、および無水エチルテトラヒドロフタル酸からなる群から選択するのが好ましい。
【0039】
本発明の製造方法の反応工程iv)は、当業者に公知の一般的な方法によって行うことができる。反応工程i)〜iii)によって得られる光硬化可能な樹脂中に存在するヒドロキシル基とカルボン酸無水物との反応により、ハーフエステル化がもたらされる。工程iv)の後に含まれる、光硬化可能な組成物中に存在するカルボン酸基の量により、アルカリ水溶液に対する溶解性が決まり、カルボン酸基の量は、カルボン酸無水物(E)の個々のモル量を選択することによって調整することができる。この反応は、反応工程iii)と同じ温度条件下で行うことができる。この反応は、トリエチルアミン、ピリジン、およびジメチルアミノピリジン等のアミンからなる群から選ばれる触媒の存在下で行うのが好ましい。
【0040】
本発明のさらなる実施態様は、本発明の製造方法によって得られる光硬化可能な樹脂である。
酸価(本発明の製造方法において使用されるカルボン酸無水物(E)の量によって調節できる)は、0.7〜0.9当量/kgであるのが好ましい。
【0041】
本発明のさらなる実施態様は、本発明の光硬化可能な樹脂、光重合開始剤、および希釈剤を含む光硬化可能な組成物である。光硬化可能な組成物は、光硬化可能なレジストインク組成物として使用するのが好ましい。
【0042】
希釈剤(光重合可能なビニルモノマー、または光重合可能なビニルモノマーと有機溶媒との組み合わせ物)を、本発明の光硬化可能な組成物に加えるのが好ましい。
光重合可能なビニルモノマーは、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、およびこれらの類似物等のヒドロキシアルキルアクリレート;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、これらの類似物、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、およびこれらの類似物等のグリコールのモノアクリレートもしくはジアクリレート;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリアクリルアミド、ビスアクリルアミドプロポキシエタン、ビスメタクリルアミドエチルメタクリレート、N−[(β−ヒドロキシエチルオキシ)エチル]アクリルアミド、およびこれらの類似物等のアクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートやこの類似物等のアミノアルキルアクリレート;ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、これらの類似物、およびこれら物質のエチレンオキシド付加物やプロピレンオキシド付加物等のポリオールの多価アクリレート;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらフェノール類のエチレンオキシド付加物とプロピレンオキシド付加物のアクリレート;グリセリルジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、およびこれらの類似物等のグリシジルエーテルのアクリレート;メラミンアクリレート;ならびに、上記アクリレートのメタクリレート;からなる群から選択するのが好ましい。
【0043】
有機溶媒は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、およびこれらの類似物等のケトン;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン、およびこれらの類似物等の芳香族炭化水素;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、およびこれらの類似物等のグリコールエーテル;エチルアセテート、ブチルアセテート、上記グリコールエーテルのアセテート、およびこれらの類似物等のエーテル;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびこれらの類似物等のアルコール;オクタン、デカン、およびこれらの類似物等の脂肪族炭化水素;ならびに、石油エーテル、石油ナフサ、水素化石油ナフサ、ナフサ溶媒、およびこれらの類似物等の石油系溶媒;からなる群から選択するのが好ましい。本発明の組成物の粘度を低下させるのに有機溶媒を使用することができ、これにより応用特性の改良がもたらされる。
【0044】
希釈剤は、単独でも、あるいは複数種の希釈剤の混合物としても使用することができる。本発明の組成物は、本発明の光硬化可能な組成物の総重量を基準として、最大で15重量%の希釈剤を含んでよい。
【0045】
ビニルモノマーを希釈剤として使用するのが好ましい。なぜなら、光硬化可能な組成物の粘度が低下するだけでなく、これと同時に光重合速度が増大するからである。
光重合可能な組成物は光重合開始剤をさらに含む。光重合開始剤の代表的な例は、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびこれらの類似物等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、およびこれらの類似物等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、およびこれらの類似物等のアセトフェノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、およびこれらの類似物等のチオキサントンとキサントン;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、およびこれらの類似物等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール、およびこれらの類似物等のケタール;エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、エチル−p−ジメチルアミノベンゾエート、およびこれらの類似物等の安息香酸エステル;フェニルジスルフィド、2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド、およびこれらの類似物;である。
【0046】
これらの化合物は、本発明の組成物中に、単独で存在しても、あるいは組み合わせ物の形で存在してもよい。光重合可能な開始剤は、本発明の組成物を基準として0.1〜10重量%の量にて存在するのが好ましい。
【0047】
本発明の光硬化可能な組成物はさらに、層の接着特性または硬度を改良するために、無機フィラーおよび/または有機フィラーを含んでよい。無機フィラーは、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、粉砕シリカ(pulverized silica)、微粉砕シリカ(finely pulverized silica)、非晶質シリカ、タルク、チョーク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、マイカ粉末、およびこれらの類似物からなる群から選択するのが好ましい。本発明の組成物は、本発明の光硬化可能な組成物を基準として最大で40重量%の、好ましくは5〜30重量%の無機フィラーを含む。
【0048】
本発明の光硬化可能な樹脂組成物は、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、熱重合開始剤、または酸化防止剤等の添加剤をさらに含んでよい。使用可能な着色剤は、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ヨードグリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック、およびこれらの類似物である。使用可能な熱重合開始剤は、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン、およびこれらの類似物である。適切な増粘剤は、例えば、ベントン、モンモリロナイト、およびこれらの類似物である。適切な消泡剤は、例えば、フルオロシリコーン様消泡剤、フッ化物様消泡剤、またはポリマー様消泡剤である。
【0049】
本発明のさらなる実施態様は、(a)本発明の光硬化可能な組成物を供給する工程;(b)該光硬化可能な組成物をプリント回路基板上に施す工程;(c)光硬化可能な組成物を熱乾燥し、基板上にフォトレジスト層を形成させる工程;(d)該フォトレジスト層を選択的に露光して、露光部分を硬化させる工程;および(e)非露光部分を除去することによってフォトレジスト層を現像する工程;を含む、レジストパターンの作製方法である。
【0050】
層(例えばソルダーレジストマスク)を含む回路基板の製造では、先ずプリント回路基板を本発明の光硬化可能な組成物で被覆し、これを乾燥して希釈剤を蒸発除去すると層が形成される。次いでこの層を、パターン化されたネガティブマスクを使用することによって、選択的に露光する。露光後、層の非露光部分を除去するために、現像液で層を現像する。最後に、層を加熱により後硬化させることで、保護層として機能するソルダーレジストマスクが回路基板上に得られる。後硬化のための熱処理は、100〜180℃で、好ましくは130〜160℃で行うことができる。
【0051】
さらなる実施態様は、本発明の光硬化可能な樹脂または本発明の光硬化可能な樹脂組成物を光硬化させることによって得られる光硬化組成物である。
本発明のさらなる実施態様は、本発明の光硬化可能な樹脂を、ソルダーレジスト;エッチングレジスト;追加のめっき、コーティング、もしくは接着剤のためのレジスト;またはステレオリソグラフィー用途のための樹脂;として使用することである。
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。成分の量は、重量部として記載されている。
【実施例】
【0053】
(I)本発明の光硬化可能な組成物
(a1)進行反応(advancement reaction)
装置は、攪拌機、温度計、ガス注入口とガス出口、および熱浴を装備した1500mlの化学反応器である。反応は窒素雰囲気下で行った。
【0054】
300.00g(1.3704当量のエポキシ基)のエポキシクレゾールノボラックEOCN104S(I、日本化薬(株)から市販)、100.00g(0.3966当量のエポキシ基)のグリシジル化シクロペンタジエン−フェノール付加物タクティクス756(II、ハンツマン社から市販)、および21.60g(0.1079モル)のビスフェノールF(III、本州化学工業(株)から市販)を装入し、120℃に加熱することによって181.20gのジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(DEA)中に溶解した。次いで塩化テトラメチルアンモニウムの5%エタノール溶液0.40mlを加え、反応混合物を130℃に加熱し、130℃で7時間撹拌して、進行したエポキシ樹脂混合物を生成させた。算出固形分は70%ソリッドである。
【0055】
【化6】
【0056】
(a2)(a1)から得られた進行エポキシ樹脂混合物のアクリル化
装置は、(a1)と同じである。反応は、N
2中8%O
2のガス混合物の雰囲気下で行った。
【0057】
(a1)に従って得られた進行エポキシ樹脂混合物600g(1.5612当量のエポキシ基)に、50.10gのDEAと1.07gの2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを加え、105℃に加熱した。次いで114.75g(1.5924モル)のアクリル酸と1.07gのCr
IIIイソオクタノエート(Hexcem、Vasset社から市販)を加え、反応混合物を105℃〜110℃で4時間保持した。始めは発熱反応であり、温度を110℃未満に保持するのに冷却を必要とした。これによりアクリル化された樹脂が得られた。
【0058】
【化7】
【0059】
(a3)(a2)から得られたアクリル化樹脂のハーフエステル化
装置は、上記したとおりである。反応は、N
2中8%O
2のガス混合物の雰囲気下で行った。
【0060】
218.00gのDEAに、(a2)に従って得られたアクリル化反応生成物675g(アクリル酸付加からの1.5580当量のOH基)を加え、次いで135.05g(0.8876モル)の無水テトラヒドロフタル酸と0.33gのジメチルアミノピリジンを加えた。反応混合物を105℃で6.5時間撹拌し、次いで0.33gのヒドロキノンモノメチルエーテルを加えた。
【0061】
【化8】
【0062】
(II)先行技術による比較用の光硬化可能な組成物(シクロペンタジエンノボラック樹脂(B)を使用せず)
(b1)進行反応
装置は、攪拌機、温度計、ガス注入口とガス出口、および熱浴を装備した30リットルの化学反応器である。反応は窒素雰囲気下で行った。
【0063】
10957.60g(50.31当量のエポキシ基)のエポキシクレゾールノボラックEOCN104S(I、日本化薬(株)から市販)、と201.50g(1.01モル)のビスフェノールF(III、本州化学工業(株)から市販)を装入し、120℃に加熱することによって4782.00gのジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(DEA)中に溶解した。次いで塩化テトラメチルアンモニウムの5%エタノール溶液11.00mlを加え、反応混合物を130℃に加熱し、130℃で7時間撹拌して、進行したエポキシ樹脂を生成させた。算出固形分は70%ソリッドである。
【0064】
【化9】
【0065】
(b2)(b1)による樹脂のアクリル化
装置は、(b1)と同じである。反応は、N
2中8%O
2のガス混合物の雰囲気下で行った。
【0066】
1522.10gのDEAと29.40gの2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールに、(b1)に従って得られた反応生成物15.940g(48.15当量のエポキシ基)を加え、100℃に加熱した。次いで354.00g(4.91モル)のアクリル酸と29.40gの8%Cr
IIIイソオクタノエート(Hexcem、Vasset社から市販)を加え、反応混合物を105℃に加熱し、この温度にて発熱反応が始まった。緑色の溶液に3185.40g(44.20モル)のアクリル酸を1時間以内に加え、時々冷却することによって反応温度を110℃に保持した。緑色の反応混合物を加熱し、108℃〜110℃で4時間撹拌し、次いで周囲温度に冷却した。このアクリル化樹脂の分析特性は以下のとおりである。
【0067】
【化10】
【0068】
(b3)(b2)に従って得られた樹脂のハーフエステル化
装置は、前と同じである。反応は、N
2中8%O
2のガス混合物の雰囲気下で行った。
6107.00gのDEAに、(b2)に従って得られた反応生成物21.055g(アクリル酸付加からの48.14当量のOH基)を加え、次いで3662.50g(24.07モル)の無水テトラヒドロフタル酸と9.20gのジメチルアミノピリジンを加えた。反応混合物を108℃〜110℃に加熱し、この温度で4時間撹拌した。9.20gのヒドロキノンモノメチルエーテルを加えて、比較用のバインダーポリマーを生成させた。この物質は以下のような分析特性を示す。
【0069】
【化11】
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
本発明の組成物1と2は、温度変化に対して、先行技術の組成物(比較用実施例3〜5)よりもなり安定であることが明らかである。本発明の組成物はさらに、大幅に増大した耐熱性を示す。
【0074】
<現像試験>
各組成物を、フォトマスクを通して紫外線に、365nmの波長および200〜400mJ/cm
2の線量(ORC露出計により測定)にて露光した。現像は、アルカリ現像液(0.1%NaCO
3)を使用して、2kg/cm
2の噴霧圧にて60〜70秒行った。現像後、レジストを完全に除去するために、基板の非露光エリアをチェックした。
【0075】
Q: 現像後の完全な除去が達成される
R: 非露光エリア上に現像されない材料が残る
<露光・現像後のフィルム外観>
各試験基板を紫外線に、365nmの波長および200〜400mJ/cm
2の線量(ORC露出計により測定)にて露光した。アルカリ現像液(0.1%NaCO
3)を使用して、2kg/cm
2の噴霧圧にて60〜70秒現像した後、形成されたフィルムの状態を目視によりチェックした。
【0076】
Q: 変化は全く観察されず
R: 表面のわずかな変化が観察される
<DIN53151による接着試験>
各試験基板を、フォトマスクを通して紫外線に、365nmの波長および200〜400mJ/cm
2の線量(ORC露出計により測定)にて露光した。現像は、弱アルカリ現像液(0.1%NaCO
3)を使用して、2kg/cm
2の噴霧圧にて60〜70秒行った。現像した試験基板を、150℃で1時間熱キュアーした。このようにして得られた各試験基板をクロスハッチ試験にかけ、そしてセロファン粘着テープを使用して剥離試験にかけた。次いで試験基板を目視によりチェックし、得られた結果を下記の基準に従って評価した:
Q: 100/100 剥離は全く観察されず
R: 100/100 わずかな剥離が観察される
<鉛筆硬度試験>
接着試験において使用したのと同じ試験基板を、ASTM D3363、ESCA−T4−1、BS3900−E19、またはISO15184に従ったWolf−Wilbornの方法によって硬度試験にかけた。
【0077】
<耐はんだ性試験>
IPC SM840Rev.8ポイント3.7.1による。試験基板を、はんだバッチ中にて288℃で10秒にわたってはんだフロート試験にかけた。次いで、下記の基準にしたがってフィルムの状態を目視によりチェックした:欠損〔側面ごとのはんだクリーピング(solder creeping)〕が生じない状態での試験サイクルの数。
【0078】
<金属化安定性試験(Ni/Au安定性)>
試験基板は接着試験において使用したのと同じであった。ニッケルを4.0〜6.0μmの厚さにて施すためのニッケル浴中においてpH値5.0で85℃にて25分、試験基板を金属化した。引き続き、金を0.05〜0.08μmの厚さに施すために、金浴〔アクロテック(Acrotech)(登録商標)SF〕中においてpH値4.5で85℃にて12分、試験基板にめっきした。フィルムの状態を、耐溶剤性試験の場合と同じ基準にて評価した。
【0079】
Q: 変化は全く観察されず
R: 表面のわずかな変化が観察される
<熱サイクル試験>
各組成物を、フォトマスクを通して紫外線に、365nmの波長および200〜400mJ/cm
2の線量(ORC露出計により測定)にて露光した。現像は、アルカリ現像液(0.1%NaCO
3)を使用して、2kg/cm
2の噴霧圧にて60〜70秒行った。現像した試験基板を、150℃で1時間熱キュアーした。現像した試験基板を、温度変化にかけるための装置中に配置した。10秒未満の速やかな温度変化で20分のホールドタイムにて、温度を−40℃と125℃に交互に変化させた。100サイクル後の亀裂の形成をチェックした。亀裂が観察されたときに、試験を終了させた。