特許第6114510号(P6114510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114510
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】不整地走行用の空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/11 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   B60C11/11 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-152822(P2012-152822)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-15095(P2014-15095A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2013年12月19日
【審判番号】不服2015-19341(P2015-19341/J1)
【審判請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】山岡 宏
【合議体】
【審判長】 和田 雄二
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−30615(JP,A)
【文献】 特開平06−143939(JP,A)
【文献】 特開2008−120351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、複数個のブロックが設けられたブロックパターンを有する不整地走行用の空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、トレッド端からタイヤ赤道と前記トレッド端との間のトレッド展開長さであるトレッド展開半幅の20%の領域である端部領域を有し、
前記ブロックは、タイヤ半径方向の外側を向く踏面と、該踏面のエッジからタイヤ半径方向内側にのびる壁面とを含み、
前記ブロックは、前記トレッド端に沿って前記端部領域に踏面の面積の60%以上が配されたショルダーブロックを含み、
前記ショルダーブロックは、タイヤ周方向の長さの略中間部に、トレッド端側の前記壁面からタイヤ赤道側にのびて途切れる凹溝を具えた横向きのU字状ブロックと、タイヤ赤道側の前記壁面から前記トレッド端側にのびて途切れる凹溝を具えた逆U字状ブロックとを含むことを特徴とする不整地走行用の空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記U字状ブロックの前記踏面は、タイヤ周方向の最大長さがタイヤ軸方向の最大長さよりも大きい縦長状である請求項1記載の不整地走行用の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記U字状ブロックの前記踏面は、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側エッジと、トレッド端側の外側エッジと、
前記内側エッジと前記外側エッジとの間をブロックのタイヤ周方向の両端部側でのびる第1周方向端部エッジ及び第2周方向端部エッジとを有し、
前記外側エッジは、前記凹溝から前記第1周方向端部エッジに向かってタイヤ赤道側に傾斜する第1外側エッジ部と、前記凹溝から前記第2周方向端部エッジに向かってタイヤ赤道側に傾斜する第2外側エッジ部とを含む請求項1又は2記載の不整地走行用の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記U字状ブロックの前記踏面は、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側エッジと、トレッド端側の外側エッジと、
前記内側エッジと前記外側エッジとの間をブロックのタイヤ周方向の両端部側でのびる第1周方向端部エッジ及び第2周方向端部エッジとを有し、
前記第1周方向端部エッジ及び前記第2周方向端部エッジは、タイヤ赤道側からトレッド端側に向かって互いに離間する向きに傾斜している請求項1乃至3のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記U字状ブロックの前記踏面は、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側エッジと、トレッド端側の外側エッジと、
前記内側エッジと前記外側エッジとの間をブロックのタイヤ周方向の両端部側でのびる第1周方向端部エッジ及び第2周方向端部エッジとを有し、
前記第1周方向端部エッジと前記内側エッジとがなすコーナ部、及び、前記第2周方向端部エッジと前記内側エッジとがなすコーナ部には、それぞれ、面取部が設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記面取部は、前記踏面の中心側に向かって凸となる曲率半径が2mm以下の円弧状である請求項5に記載の不整地走行用の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記踏面において、前記凹溝の溝幅は、前記踏面のタイヤ周方向の最大長さの0.10〜0.30倍である請求項1乃至6のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記踏面において、前記凹溝のタイヤ軸方向長さは、前記踏面のタイヤ軸方向の最大幅の0.15〜0.50倍である請求項1乃至7のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ブロックは、前記トレッド部の中央部に配されたセンターブロックと、前記センターブロックと前記ショルダーブロックとの間の領域に配されたミドルブロックとを含み、
前記ミドルブロックは、前記U字状ブロックを含み、
前記トレッド部は、タイヤ赤道の両側において、前記U字状ブロックからなる前記ショルダーブロックと、前記U字状ブロックからなる前記ミドルブロックとがタイヤ周方向に交互に設けられている請求項1乃至8のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記ブロックは、前記トレッド部の中央部に配されたセンターブロックと、前記センターブロックと前記ショルダーブロックとの間の領域に配されたミドルブロックとを含み、
前記ミドルブロックは、前記U字状ブロックを含み、
前記逆U字状ブロックからなる前記ショルダーブロックと、前記U字状ブロックからなる前記ミドルブロックとは、タイヤ軸方向で互いに向き合っている請求項1乃至9のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回中のグリップ力及びトラクション性能を維持しつつ、角張り感を軽減してハンドリングの軽快性を向上させた不整地走行用の空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
モトクロスバイクやラリーカーのように不整地を走行する車両には、通常、トレッド部に複数個のブロックが設けられたブロックパターンの空気入りタイヤが使用される。このようなブロックパターンのタイヤは、ブロックが路面に食い込むことにより、軟弱な泥濘地での駆動力を確保できる。
【0003】
また、不整地での走行性能をより一層向上させるために、ブロックの踏面や壁面に凹部を設けた空気入りタイヤが提案されている(例えば下記特許文献1)。このような空気入りタイヤは、ブロックに設けられた凹部がエッジ成分を増加させ、グリップ力及びトラクション性能を向上させている。
【0004】
【特許文献1】特開2008−120351号公報
【0005】
しかしながら、上記のような空気入りタイヤは、例えば、ブロックのトレッド端側の剛性が相対的に大きい。このような剛性の偏りは、旋回時、ドライバーに、ごつごつとした感触の操作性である「角張り感」を与え、ハンドリングの軽快性を悪化させるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ミドルブロック又はショルダーブロックに、トレッド端側の壁面から、タイヤ赤道側にのびて途切れる凹溝を具える横向きのU字状ブロックを用いることを基本として、旋回中のグリップ力及びトラクション性能を維持しつつ、角張り感を軽減してハンドリングの軽快性を向上させ得る不整地走行用の空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち、請求項1記載の発明は、トレッド部に、複数個のブロックが設けられたブロックパターンを有する不整地走行用の空気入りタイヤであって、前記ブロックは、タイヤ半径方向の外側を向く踏面と、該踏面のエッジからタイヤ半径方向内側にのびる壁面とを含み、前記ブロックは、トレッド端に沿って配されたショルダーブロックを含み、前記ショルダーブロックは、タイヤ周方向の長さの略中間部に、トレッド端側の前記壁面からタイヤ赤道側にのびて途切れる凹溝を具えた横向きのU字状ブロックと、タイヤ赤道側の前記壁面から前記トレッド端側にのびて途切れる凹溝を具えた逆U字状ブロックとを含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記U字状ブロックの前記踏面は、タイヤ周方向の最大長さがタイヤ軸方向の最大長さよりも大きい縦長状である請求項1記載の不整地走行用の空気入りタイヤである。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、前記U字状ブロックの前記踏面は、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側エッジと、該内側エッジに向き合うトレッド端側の外側エッジと、前記内側エッジと前記外側エッジとの間をブロックのタイヤ周方向の両端部側でのびる第1周方向端部エッジ及び第2周方向端部エッジとを有し、前記外側エッジは、前記凹溝から前記第1周方向端部エッジに向かってタイヤ赤道側に傾斜する第1外側エッジ部と、前記凹溝から前記第2周方向端部エッジに向かってタイヤ赤道側に傾斜する第2外側エッジ部とを含む請求項1又は2記載の不整地走行用の空気入りタイヤである。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、前記U字状ブロックの前記踏面は、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側エッジと、該内側エッジに向き合うトレッド端側の外側エッジと、前記内側エッジと前記外側エッジとの間をブロックのタイヤ周方向の両端部側でのびる第1周方向端部エッジ及び第2周方向端部エッジとを有し、前記第1周方向端部エッジ及び前記第2周方向端部エッジは、タイヤ赤道側からトレッド端側に向かって互いに離間する向きに傾斜している請求項1乃至3のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤである。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、前記U字状ブロックの前記踏面は、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側エッジと、該内側エッジに向き合うトレッド端側の外側エッジと、前記内側エッジと前記外側エッジとの間をブロックのタイヤ周方向の両端部側でのびる第1周方向端部エッジ及び第2周方向端部エッジとを有し、前記第1周方向端部エッジと前記内側エッジとがなすコーナ部、及び、前記第2周方向端部エッジと前記内側エッジとがなすコーナ部には、それぞれ、面取部が設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤである。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、前記面取部は、前記踏面の中心側に向かって凸となる曲率半径が2mm以下の円弧状である請求項5に記載の不整地走行用の空気入りタイヤである。
【0013】
また、請求項7記載の発明は、前記踏面において、前記凹溝の溝幅は、前記踏面のタイヤ周方向の最大長さの0.10〜0.30倍である請求項1乃至6のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤである。
【0014】
また、請求項8記載の発明は、前記踏面において、前記凹溝のタイヤ軸方向長さは、前記踏面のタイヤ軸方向の最大幅の0.15〜0.50倍である請求項1乃至7のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤである。
【0015】
また、請求項9記載の発明は、前記ブロックは、前記トレッド部の中央部に配されたセンターブロックと、前記センターブロックと前記ショルダーブロックとの間の領域に配されたミドルブロックとを含み、前記ミドルブロックは、前記U字状ブロックを含み、前記トレッド部は、タイヤ赤道の両側において、前記U字状ブロックからなる前記ショルダーブロックと、前記U字状ブロックからなる前記ミドルブロックとがタイヤ周方向に交互に設けられている請求項1乃至8のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤである。また、請求項10記載の発明は、前記ブロックは、前記トレッド部の中央部に配されたセンターブロックと、前記センターブロックと前記ショルダーブロックとの間の領域に配されたミドルブロックとを含み、前記ミドルブロックは、前記U字状ブロックを含み、前記逆U字状ブロックからなる前記ショルダーブロックと、前記U字状ブロックからなる前記ミドルブロックとは、タイヤ軸方向で互いに向き合っている請求項1乃至9のいずれかに記載の不整地走行用の空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の不整地走行用の空気入りタイヤは、ミドルブロック又はショルダーブロックの少なくとも一つが、タイヤ周方向の長さの略中間部に、トレッド端側の壁面からタイヤ赤道側にのびて途切れる凹溝を具えた横向きのU字状ブロックを含む。このようなブロックは、エッジ成分を大きく確保し、旋回中のグリップ力及びトラクション性能を維持する。また、このようなブロックは、凹溝により、トレッド端側の剛性が緩和されている。このため、本発明のタイヤは、旋回時、U字状ブロックのトレッド端側が適度に変形し、角張り感を軽減させ、ひいてはハンドリングの軽快性や旋回時の接地感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤの断面図である。
図2図1のトレッド部の展開図である。
図3図1のU字状ブロックの拡大斜視図である。
図4】U字状ブロックの拡大平面図である。
図5図4のB−B断面図である。
図6】(a)は比較例のブロックの拡大平面図であり、(b)は他の比較例のブロックの拡大平面図である。
図7】(a)は他の比較例の拡大平面図であり、(b)は(a)のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の不整地走行用の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1として、砂地や泥濘地等の軟弱路において最高の性能を発揮できるように設計されたモトクロス競技用(自動二輪車用)のタイヤが例示される。また、図1に示されるタイヤ1の断面図は、該タイヤ1が正規リム(図示省略)に装着されかつ正規内圧が充填されしかも無負荷である正規状態での図2のA−A断面である。
【0019】
ここで、前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。また、前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"を意味する。なお、本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法は、前記正規状態において特定される値とする。
【0020】
図1に示されるように、タイヤ1は、トレッド部2と、その両側からタイヤ半径方向の内方にのびる一対のサイドウォール部3、3と、各サイドウォール部3のタイヤ半径方向の内方端に位置しかつリム(図示省略)に装備されるビード部4、4とを有する。また、タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、該カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるトレッド補強層7とを含んで補強される。
【0021】
本実施形態のトレッド部2は、その外面が、タイヤ半径方向外側に凸で湾曲するとともに、該トレッド部2のトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向距離であるトレッド幅TWが、タイヤ最大幅をなしている。
【0022】
カーカス6は、一対のビードコア5、5間をトロイド状に跨る本体部6aと、この本体部6aの両側に連なりかつビードコア5の回りでタイヤ軸方向の内側から外側に折り返される折返し部6bとを有する1枚以上、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aから構成される。また、カーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向の外側にのびかつ硬質ゴムからなるビードエーペックス8が配され、ビード部4が適宜補強される。
【0023】
トレッド部2には、複数のブロック11と、それらの間のトレッド溝10とが形成される。トレッド溝10の溝底面10bは、カーカス6の外面に沿った滑らかな表面に形成される。また、トレッド溝10の溝深さD1は、例えば7〜19mm程度に設定される。
【0024】
ブロック11は、センターブロック12と、トレッド端Teに沿って配されたショルダーブロック13と、センターブロック12及びショルダーブロック13の間に配されたミドルブロック14とを含む。これら各ブロック12、13、14は、タイヤ半径方向の外側を向く踏面15と、該踏面15のエッジからタイヤ半径方向内側にのびる壁面16とを含む。
【0025】
図2に示されるように、センターブロック12は、トレッド部2の中央部Crに配される。中央部Crとは、タイヤ赤道Cを中心とするトレッド展開幅TWeの25%の領域を意味する。本実施形態のセンターブロック12は、その踏面15の表面積の60%以上が中央部Cr内に設けられている。
【0026】
本実施形態のセンターブロック12は、タイヤ軸方向に長い略長方形の中央部に、タイヤ周方向にのびるスリット20が入った第1ブロック21と、タイヤ赤道Cの両側に左右対称に配置された第2ブロックとを含む。また、第1ブロック21と第2ブロック22との間には、トレッド溝10の溝底面10bを局部的に凹ませたセンター凹部34が配される。このような第1ブロック21、第2ブロック22、及びセンター凹部34が中央部Cr内でタイヤ周方向に隔設されることにより、トレッド部2の排土性が維持され、直進時及び制動時のグリップ力が向上する。
【0027】
ショルダーブロック13は、トレッド端Teに沿って配される。これにより、ショルダーブロック13は、トレッド端Teからトレッド展開半幅TWhの20%の領域である端部領域Shに、踏面15の表面積の60%以上が配される。なお、前記トレッド展開半幅TWhは、タイヤ赤道Cから、トレッド端Teまでのトレッド展開長さを意味する。
【0028】
ミドルブロック14は、中央部Crと端部領域Shとの間の領域である中間領域Mdに、ミドルブロック14の踏面15の表面積の60%以上が配される。
【0029】
ミドルブロック14又はショルダーブロック13の少なくとも一つは、トレッド端Te側の壁面16からタイヤ赤道C側にのびて途切れる凹溝17を具えた横向きのU字状ブロック18を含む。なお、「横向き」とは、タイヤ周方向を「縦」としたときの向きを意味している。
【0030】
図3には、U字状ブロック18の拡大斜視図が示され、図4には、その踏面の拡大平面図が示される。さらに、図5には、図4のB−B断面図が示される。図3乃至5に示されるように、U字状ブロック18は、タイヤ周方向の長さの略中間部に、トレッド端側の壁面16からタイヤ赤道側にのびて途切れる凹溝17を具える。
【0031】
このような凹溝17は、U字状ブロック18のエッジ成分を大きく確保する。このため、旋回中のグリップ力及びトラクション性能が維持される。また、このような凹溝17を具えたU字状ブロック18は、そのトレッド端側の剛性が緩和される。このため、U字状ブロック18は、旋回時にブロックのトレッド端側が変形し、角張り感を軽減させ、ひいてはハンドリングの軽快性や旋回時の接地感が向上する。
【0032】
凹溝17は、U字状ブロック18のタイヤ周方向の長さの略中間部に設けられる必要がある。このような凹溝17は、U字状ブロック18のブロック欠けを抑制しつつ、U字状ブロック18のトレッド端側の剛性を適切に緩和する。また、凹溝17が、U字状ブロック18のタイヤ周方向の長さの略中間部に設けられる態様とは、図4に示されるように、U字状ブロック18の軸方向中心線18cと凹溝17の溝中心線17cとのタイヤ周方向の距離である凹溝ずれ量L5が、踏面15のタイヤ周方向の最大長さL1の25%以内であることを意味する。また、U字状ブロック18の軸方向中心線18cは、U字状ブロック18のタイヤ周方向両側の外端18e、18eを通るタイヤ軸方向線18L、18L両方に等距離であるタイヤ軸方向線を意味する。本実施形態では、U字状ブロックの軸方向中心線18cと凹溝17の溝中心線17cとが重なる例、即ち、凹溝ずれ量L5が0の例が示される。なお、ブロック欠け等を抑制する観点から、凹溝ずれ量L5は、U字状ブロック18のタイヤ周方向の最大長さL1の5%以下が望ましい。
【0033】
図3及び図4に示されるように、U字状ブロック18の踏面15は、タイヤ赤道C側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側エッジ24と、U字状ブロック18のタイヤ周方向の両端部側でタイヤ軸方向にのびる軸方向エッジ35と、内側エッジ24に向き合うトレッド端側の外側エッジ25とを有する。
【0034】
内側エッジ24は、路面に対し、タイヤ軸方向の摩擦力を発揮し、旋回中のグリップを向上させる。このような観点から、内側エッジ24は、タイヤ周方向と平行にのびるのが望ましい。
【0035】
前記軸方向エッジ35は、内側エッジ24と外側エッジ25との間を、U字状ブロック18のタイヤ周方向の両端部側でタイヤ軸方向にのびる第1周方向端部エッジ26及び第2周方向端部エッジ27を含む。本実施形態では、第1周方向端部エッジ26及び第2周方向端部エッジ27は、タイヤ赤道C側からトレッド端側に向かって互いに離間する向きに傾斜している。このような第1周方向端部エッジ26及び第2周方向端部エッジ27は、外側エッジ25のタイヤ周方向の長さを大きく確保し、旋回中のグリップ力を向上させる。さらに、第1周方向端部エッジ26及び第2周方向端部エッジ27は、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに傾斜し、かつタイヤ軸方向に対して同角度で傾斜している。このような第1周方向端部エッジ26及び第2周方向端部エッジ27は、加速時及び減速時の接地感を一定にし、操縦安定性を向上させる。
【0036】
外側エッジ25は、凹溝17から第1周方向端部エッジ26に向かってタイヤ赤道C側に傾斜する第1外側エッジ部28と、凹溝17から第2周方向端部エッジ27に向かってタイヤ赤道C側に傾斜する第2外側エッジ部29とを含む。第1外側エッジ部28及び第2外側エッジ部29は、U字状ブロック18の軸方向中心線18cに対して線対称であるのが望ましい。このような第1外側エッジ部28及び第2外側エッジ部29は、加速時及び減速時の接地感を一定にして操縦安定性を向上させる他、ブロックの耐久性を向上させる。
【0037】
U字状ブロック18の踏面15は、タイヤ周方向の最大長さL1が、タイヤ軸方向の最大長さW1よりも長い縦長状であるのが望ましい。このようなU字状ブロック18は、タイヤ周方向にのびるエッジ成分を多く含み、旋回時のグリップ力を発揮する。なお、U字状ブロック18の踏面15において、タイヤ周方向の最大長さL1は、例えば、9〜30mmに設定されるのが望ましい。また、踏面15のタイヤ軸方向の最大長さW1は、例えば、10〜30mmに設定されるのが望ましい。
【0038】
凹溝17の溝中心線17cは、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度であるのが望ましい。これによって、U字状ブロック18のトレッド端側の剛性をバランス良く緩和することができる。
【0039】
図4に示されるように、凹溝17の溝幅W2は、小さくなると、角張り感を十分に軽減できないおそれがあり、大きくなると、U字状ブロック18の剛性が低下して、ブロック欠け等が生じるおそれがある。このような観点から、凹溝17の溝幅W2は、好ましくは、踏面15のタイヤ周方向の最大長さL1の0.10倍以上に設定され、また好ましくは、0.30倍以下、より好ましくは0.20倍以下に設定される。なお、凹溝17の溝幅W2は、凹溝17の溝幅の最大幅を意味する。
【0040】
同様の観点から、凹溝17のタイヤ軸方向長さL2は、踏面15のタイヤ軸方向の最大幅W1の0.15倍以上、より好ましくは、0.30倍以上に設定され、また好ましくは0.50倍以下、より好ましくは0.35倍以下に設定される。
【0041】
また、凹溝17のタイヤ軸方向長さL2は、凹溝17のタイヤ軸方向の内端17oから内側エッジ24までのタイヤ軸方向の幅W3よりも小さいのが望ましい。このような凹溝17は、U字状ブロック18の剛性を確保し、旋回中のグリップ力及びトラクション性能を維持する他、ブロック耐久性を向上させうる。
【0042】
図5に示されるように、凹溝17の溝深さd1は、小さくなると、U字状ブロック18のトレッド端側の剛性が緩和されず、角張り感が抑制されないおそれがあり、大きくなると、U字状ブロック18のタイヤ周方向の剛性が低下して、トラクション性能が低下するおそれがある。このような観点から、溝深さd1は、トレッド溝10の溝深さD1の好ましくは0.60倍以上、より好ましくは0.70倍以上に設定され、また好ましくは0.90倍以下、より好ましくは0.80倍以下に設定される。
【0043】
図3に示されるように、凹溝17は、踏面15に、第1外側エッジ部28及び第2外側エッジ部29からタイヤ赤道C側にのびる横エッジ17s、17sを形成する。また、凹溝17は、トレッド端側の壁面16に、踏面15からタイヤ半径方向内側にのびる縦エッジ17vを形成する。このような横エッジ17s及び縦エッジ17vは、例えば、直線の場合、高いエッジ効果を発揮する他、凹溝17の石噛みを防止する。特に、横エッジ17s、17sは、トレッド端側に向かって互いに離間する向きに傾斜しているのが望ましい。同様に、縦エッジ17v、17vは、タイヤ半径方向外側に向かって互いに離間する向きに傾斜しているのが望ましい。
【0044】
横エッジ17s、17sは、タイヤ赤道C側に向かってのび、円弧エッジ17rと連なる。同様に、縦エッジ17v、17vは、タイヤ半径方向内側にのび、円弧エッジ17rと連なる。円弧エッジ17rは、U字状ブロック18の変形時に、応力を緩和するのに役立つ。
【0045】
U字状ブロック18は、壁面16に、タイヤ半径方向にのびるエッジ成分を有するのが望ましい。このような観点から、第1周方向端部エッジ26と内側エッジ24とがなすコーナ部30、及び第2周方向端部エッジ27と内側エッジ24とがなすコーナ部31には、それぞれ、面取部32が設けられている。このような面取部32は、U字状ブロック18のブロック欠けを抑制しうる。
【0046】
面取部32は、踏面15の中心側に向かって凸となる円弧状であるのが望ましく、その曲率半径rが2mm以下であるのが望ましい。また、U字状ブロック18には、面取部32からタイヤ半径方向内側にのびる円弧状のくぼみ部33が形成される。このような円弧状のくぼみ部33は、とりわけ軟弱な泥濘地でのグリップ力及びトラクション性能を向上させる。
【0047】
図4から明らかなように、面取部32が大きくなると、タイヤ周方向と平行にのびる内側エッジ24の長さが小さくなり、旋回中のグリップ力が小さくなるおそれがある。他方、面取部32が小さいと、面取部32の効果が小さくなるおそれがある。このような観点から、内側エッジ24のタイヤ周方向の長さL4は、第1周方向端部エッジ26及び第2周方向端部エッジ27の延長線と、内側エッジ24の延長線との交点間のタイヤ周方向の距離である仮想内側エッジ長さL3の好ましくは0.60倍以上、より好ましくは0.65倍以上に設定され、また好ましくは0.80倍以下、より好ましくは0.75倍以下に設定されるのが望ましい。
【0048】
さらに、仮想内側エッジ長さL3は、踏面15のタイヤ周方向の最大長さL1の好ましくは0.75倍以上、より好ましくは0.80倍以上に設定され、また好ましくは1.00倍以下、より好ましくは0.90倍以下に設定される。このようなU字状ブロック18は、トレッド端側のゴムボリュームを適度に大きくすることができ、旋回時のグリップ力を向上させる。
【0049】
上述したU字状ブロック18の効果を、旋回初期から旋回終期まで確実に発揮させるために、図2に示されるように、ミドルブロック14は、全てU字状ブロック18で構成されるのが望ましい。
【0050】
本実施形態のショルダーブロック13は、U字状ブロック18と、タイヤ赤道C側の壁面16からトレッド端側にのびて途切れる凹溝17を具えた逆U字状ブロック19とを含んでいる。このようなショルダーブロック13は、フルバンク付近でのグリップ力を向上させながら、車体が起上がる際の接地感を向上させる。
【0051】
さらに、U字状ブロック18からなるショルダーブロック13と、U字状ブロック18からなるミドルブロック14とは、タイヤ周方向に交互に設けられているのが望ましい。このようなショルダーブロック13及びミドルブロック14は、泥濘地を走行する際、トレッド部2の排土性を向上させ、旋回中のグリップ力及びトラクション性能をバランス良く発揮する。
【0052】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0053】
図1に示す基本構造をなし、図2のトレッドパターンを基本パターンとした不整地走行用の自動二輪車用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づいて試作された。また、これら試作タイヤがテスト車両の前輪に装着され、性能がテストされた。
【0054】
また、比較例として、図1に示す基本構造をなし、ブロックの形状が異なる下記比較例1乃至3についても同様にテストされた。比較例1乃至3はそれぞれ、図2のトレッドパターンのU字状ブロックを、全て下記のブロック形状に変更している。ブロックの形状以外は、図2のトレッドパターンと同一である。
比較例1:図6(a)に示される、凹溝及び面取部を有しないブロックb1。
比較例2:図6(b)に示される、凹溝を有さず、面取部cを有するブロックb2。
比較例3:図7(a)及び(b)に示される、凹溝及び面取部を有さず、踏面に凹部(リセス)dを有するブロックb3。
【0055】
なお、実施例及び比較例の共通仕様は以下の通りである。
タイヤサイズ:
前輪:80/100−21
後輪:120/80−19
リムサイズ:
前輪:21×1.60
後輪:19×2.15
内圧:
前輪:80kPa
後輪:80kPa
テスト車両:排気量450cc モトクロス競技車両
テスト方法は、次の通りである。
【0056】
<旋回時のグリップ力、トラクション性能、角張り感、ハンドリングの軽快性>
上記条件にて、不整地路面のテストコースを実車走行したときの旋回時のグリップ力、トラクション性能、角張り感、及びハンドリングの軽快性が、運転者の官能評価によりテストされた。結果は、比較例3を100とする評点であり、数値が大きい程良好であることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0057】
【表1】
【0058】
テストの結果、実施例のタイヤは、旋回時のグリップ力、トラクション性能を維持しながら、角張り感が抑制され、ハンドリングの軽快性が向上しているのが確認できた。
【符号の説明】
【0059】
6 カーカス
12 センターブロック
13 ショルダーブロック
14 ミドルブロック
15 踏面
16 壁面
17 凹溝
18 U字状ブロック
24 内側エッジ
25 外側エッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7