(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下端に副車輪を備えると共に上端に吊り下げ部が取り付けられる支柱フレームと、下端に左右一対の主車輪を備えると共に上端にハンドルが取り付けられ且つフレーム軸心直交方向の連結軸によって前記支柱フレームに中間位置において揺動可能に連結される操作フレームとを有し、前記ハンドルが前記支柱フレームに向けて押されて前記操作フレームが起こされたときには前記副車輪及び前記主車輪が接地した状態で走行し、前記ハンドルが前記支柱フレームから離れる向きに引かれたときには前記操作フレームが傾動して前記連結軸の軸心位置と前記主車輪の回転中心とを結ぶ線分の傾斜が鉛直方向に近づくことによって前記連結軸を介して前記支柱フレームを持ち上げ前記副車輪を持ち上げた状態で前記主車輪のみで走行することを特徴とする点滴スタンド。
前記ハンドルが前記支柱フレームに向けて押されて前記操作フレームが起こされた状態において、前記副車輪と前記主車輪との間であってこれら副車輪及び主車輪の上方に前記連結軸が位置することを特徴とする請求項1記載の点滴スタンド。
前記ハンドルが前記支柱フレームから離れる向きに引かれて前記操作フレームが傾動した状態において、前記主車輪の回転軸の真上若しくはその近傍に前記支柱フレームが位置することを特徴とする請求項1記載の点滴スタンド。
前記ハンドルが前記支柱フレームに向けて押されて前記操作フレームが起こされた状態における前記支柱フレームの前記操作フレーム,前記ハンドル側への傾動を規制するためのフレーム傾動規制機構、又は、前記ハンドルが前記支柱フレームから離れる向きに引かれて前記操作フレームが傾動した状態における前記支柱フレームと前記操作フレームとの位置関係を固定するためのロック機構のうちの少なくともどちらか一方を更に有することを特徴とする請求項1記載の点滴スタンド。
前記操作フレームの下側部分を前記副車輪がくぐれる二股構造とすると共に当該二股それぞれの下端に前記主車輪を取り付けることを特徴とする請求項1記載の点滴スタンド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の点滴スタンドでは、支柱とハンドルとの位置関係及び配置・取り付け関係並びにハンドルの構造は点滴スタンドを押して移動させることが前提であり、押して移動させる場合には台車を押す原理と同じくスムーズに進むものの、支柱の鉛直方向姿勢を維持しながら曳くことに適切な構造とは言えないために曳いて移動させることが容易とは言えない。
【0007】
また、点滴スタンドである以上はたとえ移動中であっても点滴バッグを支持する支柱は鉛直方向姿勢で安定していることが求められるが、特許文献2の点滴スタンドのように水平方向に放射状に張り出した複数の枝脚・キャスターの位置関係が相互に固定されている構造の場合には、床面の凹凸によって容易に脚部が傾き、且つ、脚部の傾きは小さくても当該脚部に下端が固定された上下方向に長い支柱の揺れ幅(傾斜角度)は大きくなり、安定性があるとは言えず、したがって移動操作の慎重さが要求され、更には、点滴スタンドがバランスを失って患者に倒れかかったり点滴バッグがフックから外れて落下したり点滴チューブ及び針に力がかかったりするなどの事故が起こり得るという問題がある。
【0008】
また、点滴スタンドを曳いて移動させるときに、患者等は自身の側方斜め後方位置に点滴スタンドを引き付けようとするところ、特許文献2の点滴スタンドのように複数の枝脚が水平方向に放射状に張り出している構造の場合には、放射状に面的に拡がった枝脚が患者等の足に当たって歩行の邪魔になったり、場合によっては患者等や点滴スタンドが転倒してしまうという問題がある。さらには、放射状に拡がった全ての車輪が接地した台車のような構成を有するものは曳いて歩行することに適していないことに加え、軽快に動くことができなかったり、小回りができなかったりするという問題がある。
【0009】
さらに、身体の前に腕を構えて点滴スタンドを押しながら歩行する場合に最適なハンドルの高さと、身体の側方やや後ろに腕を下ろして点滴スタンドを曳きながら歩行する場合に最適なハンドルの高さとは異なり、それぞれに適したハンドル高さでない場合には、歩行姿勢が不自然になったり、押したり曳いたりの力加減の調整や把持・支持に差し支えが生じたりして事故が起こり得るという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、点滴中の患者等が移動する際に、歩行に適した姿勢での歩行を可能にして歩行を容易にすることができ、且つ、床面の凹凸などによる支柱の傾きを防止して移動時の安定性を確保することができる点滴スタンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために本発明の点滴スタンドは、下端に副車輪を備えると共に上端に吊り下げ部が取り付けられる支柱フレームと、下端に左右一対の主車輪を備えると共に上端にハンドルが取り付けられ且つフレーム軸心直交方向の連結軸によって支柱フレームに中間位置において揺動可能に連結される操作フレームとを有し、ハンドルが支柱フレームに向けて押されて操作フレームが起こされたときには副車輪及び主車輪が接地した状態で走行し、ハンドルが支柱フレームから離れる向きに引かれたときには操作フレームが傾動して連結軸の軸心位置と主車輪の回転中心とを結ぶ線分の傾斜が鉛直方向に近づくことによって連結軸を介して支柱フレームを持ち上げ副車輪を持ち上げた状態で主車輪のみで走行するようにしている。
【0012】
したがって、この点滴スタンドによると、ハンドルを押して操作フレームを起こした場合には点滴スタンドが歩行器のような形態となるので、患者等はハンドルを掴んで押し進むことができ、また、ハンドルを引き下げて操作フレームを傾斜させた場合には点滴スタンドがキャリーバッグのような形態となるので、患者等はハンドルを掴んで自身の側方斜め後方位置に点滴スタンドを引き付けて曳くことができ、押して移動するときと曳いて移動するときとのどちらにおいても自然の姿勢で且つスムーズに歩行することができる。特に、ハンドルを引いて操作フレームを傾動させた状態で点滴スタンドを曳くので、操作フレーム上端のハンドルと下端の主車輪との水平間隔が大きくなり、ハンドルを掴んで点滴スタンドを曳いて移動する際に主車輪が歩行の邪魔になることがない。さらには、操作フレームを起こした状態と傾斜させた状態とでハンドルの高さが変わるので、押しながら歩行する場合と曳きながら歩行する場合とのそれぞれに最適なハンドル位置にすることができる。
【0013】
また、この点滴スタンドによると、操作フレームが傾動する一方で支柱フレームは傾動しないので、すなわち、支柱フレームの鉛直若しくは略鉛直方向姿勢を保持したままで主車輪のみで走行するので、支柱フレームが傾いて点滴バッグがフックから外れたり点滴チューブや針に力がかかったりするなどの事故が防止される。
【0014】
さらに、この点滴スタンドによると、点滴スタンドを曳く際には支柱フレーム下端の副車輪が持ち上がって操作フレーム下端の左右一対の主車輪のみで走行するので、放射方向に面的に拡がる車輪を有する場合と比べて床面の凹凸による影響を受け難く、支柱フレームの傾斜が抑えられて走行が安定する。また、主車輪のみで走行することにより、軽快に動いたり小回りをしたりすることができる。
【0015】
そして、本発明の点滴スタンドは、ハンドルが支柱フレームに向けて押されて操作フレームが起こされた状態において、副車輪と主車輪との間であってこれら副車輪及び主車輪の上方に連結軸が位置するようにしても良い。この場合には、本発明を具現化する具体的な構成を簡潔でありながら適切なものにすることができる。
【0016】
また、本発明の点滴スタンドは、ハンドルが支柱フレームから離れる向きに引かれて操作フレームが傾動した状態において、主車輪の回転軸の真上若しくはその近傍に支柱フレームが位置するようにしても良い。この場合には、支柱フレームの荷重が主車輪の回転軸に対して真上或いはその近傍から作用して余計なモーメントが発生することがないので、支柱フレームの姿勢を安定させることが容易になり、点滴スタンドの移動を楽に行うことができる。また、支柱フレームにかかる荷重を主車輪が受けることになるので、点滴スタンドを移動させる際の患者の負担が軽減されて点滴スタンドの移動を楽に行うことができる。
【0017】
また、本発明の点滴スタンドは、ハンドルが支柱フレームに向けて押されて操作フレームが起こされた状態における支柱フレームの操作フレームやハンドル側への傾動を規制するためのフレーム傾動規制機構、又は、ハンドルが支柱フレームから離れる向きに引かれて操作フレームが傾動した状態における支柱フレームと操作フレームとの位置関係を固定するためのロック機構のうちの少なくともどちらか一方を更に有するようにしても良い。この場合には、支柱フレームがたとえ傾いたとしてもそれ以上倒れることがないので、操作フレームを傾斜させて点滴スタンドを移動させている際における支柱フレームの不意の傾倒が防止される。
【0018】
また、本発明の点滴スタンドは、副車輪と主車輪とのうちの少なくともどちらか一方がキャスターであるようにしても良い。この場合には、点滴スタンドを押したり曳いたりする際の方向転換が容易になる。
【0019】
また、本発明の点滴スタンドは、操作フレームの下側部分を副車輪がくぐれる二股構造とすると共に当該二股それぞれの下端に主車輪を取り付けるようにしても良い。この場合には、複数の点滴スタンドの間を詰めて水平方向にスタッキングさせることが可能になり、点滴スタンドの保管に必要なスペースが小さくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の点滴スタンドによれば、歩行器のような形態にしてハンドルを掴んで押し進むことができると共にキャリーバッグのような形態にしてハンドルを掴んで自身の側方斜め後方位置に点滴スタンドを引き付けて曳くこともでき、すなわち、押して移動するときと曳いて移動するときとのどちらにおいても自然の姿勢で且つスムーズに歩行することができるので、点滴スタンドと一緒に移動する際の身体的負担を軽減することが可能であると共に移動の快適性の向上が可能である。また、点滴スタンドを曳いて移動する際に主車輪が歩行の邪魔になることを防止することができるので、点滴スタンドと一緒の移動の快適性の向上と安全性の向上とが可能である。さらには、押しながら歩行する場合と曳きながら歩行する場合とのそれぞれに最適なハンドル位置にすることができるので、この点からも、点滴スタンドと一緒の移動の快適性の向上が可能である。
【0021】
本発明の点滴スタンドによれば、また、操作フレームのみを傾動させて支柱フレームの鉛直若しくは略鉛直方向姿勢を保持したままで主車輪のみの走行形態になり、加えて、支柱フレームの傾斜を抑えて走行を安定させることができるので、この点からも、点滴スタンドと一緒の移動の快適性の向上と安全性の向上とが可能である。
【0022】
本発明の点滴スタンドによれば、さらに、主車輪のみの走行形態をとることによって軽快に動くことや小回りをすることができるので、この点からも、点滴スタンドと一緒の移動の快適性の向上が可能である。
【0023】
また、本発明の点滴スタンドは、支柱フレームを主車輪の回転軸の真上若しくはその近傍に位置させて支柱フレームに余計なモーメントが発生しないようにして支柱フレームの姿勢の安定を容易にすると共に支柱フレームにかかる荷重を主車輪が受けるようにして患者の負担を軽減することもできるので、点滴スタンドと一緒の移動の快適性及び安全性の更なる向上が可能である。
【0024】
また、本発明の点滴スタンドは、支柱フレームの傾動を規制するフレーム傾動規制機構や支柱フレームと操作フレームとの位置関係を固定するロック機構を設けて支柱フレームの不意の傾倒を防止することもできるので、点滴スタンドを押したり曳いたりしての一緒の移動の快適性及び安全性の更なる向上が可能である。
【0025】
また、本発明の点滴スタンドは、車輪をキャスターにして点滴スタンドの移動の際の方向転換を容易にすることもできるので、点滴スタンドと一緒の移動の快適性の更なる向上が可能である。
【0026】
また、本発明の点滴スタンドは、点滴スタンドを水平方向にスタッキングさせて保管スペースを小さくすることもできるので、点滴スタンドの広い意味での使用の快適性の向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の点滴スタンドの実施形態の一例を示す図であり、自立状態を示す図である。(A)は正面斜視図である。(B)は背面斜視図である。
【
図2】実施形態の点滴スタンドの自立状態を示す図である。(A)は側面図である。(B)は正面図である。(C)は背面図である。
【
図3】実施形態の点滴スタンドの自立状態を示す平面図である。
【
図4】本発明の点滴スタンドの実施形態の一例を示す図であり、牽引状態を示す図である。(A)は正面斜視図である。(B)は背面斜視図である。
【
図5】実施形態の点滴スタンドの牽引状態を示す図である。(A)は側面図である。(B)は正面図である。(C)は背面図である。
【
図6】実施形態の点滴スタンドの牽引状態を示す平面図である。
【
図7】実施形態の点滴スタンドの自立状態での人体モデルによる移動態様を示す側面図である。
【
図8】実施形態の点滴スタンドの人体モデルによる牽引状態を示す側面図である。
【
図9】実施形態の点滴スタンドの自立状態での水平スタッキングの態様を示す側面図である。
【
図10】実施形態の点滴スタンドの自立状態での水平スタッキングの態様を示す平面図である。
【
図11】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、自立状態を示す正面図(一部断面図)である。
【
図12】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、自立状態を示す側面図である。
【
図13】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、牽引状態(ただし、ロックされていない状態)を示す側面図である。
【
図14】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、牽引状態でロックされた状態を示す側面図である。
【
図15】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、
図17のA−A'断面の縦断面図である。
【
図16】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、
図17のF−F'断面の縦断面図である。
【
図17】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、
図15のB−B'断面の縦断面図である。
【
図18】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、
図15のC−C'断面の縦断面図である。
【
図19】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、
図15のD−D'断面の縦断面図である。
【
図20】本実施形態の連結機構とフレーム傾動規制機構とロック機構とを説明する図であり、
図15のE矢視図である。
【
図21】本発明の点滴スタンドの他の実施形態を示す図であり、自立状態を示す図である。(A)は側面図である。(B)は正面図である。
【
図22】本発明の点滴スタンドの他の実施形態を示す図であり、牽引状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1から
図20に、本発明の点滴スタンドの実施形態の一例を示す。なお、本実施形態では、本発明を
図1〜6に全体構造を示す点滴スタンドに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0030】
なお、
図1〜3,7はハンドル5が支柱フレーム1に向けて押されて操作フレーム4が起こされ点滴スタンドが押されて移動する状態であると共に自立可能な状態(以下、自立状態とも呼ぶ)を示し、
図4〜6,8はハンドル5が支柱フレーム1から離れる向きに引かれて操作フレーム4が傾動し点滴スタンドが曳かれて移動する状態(以下、牽引状態とも呼ぶ)を示す。なお、牽引状態の点滴スタンドを、ハンドル5を掴んで押して走行させるようにしても勿論良い。
【0031】
また、本明細書においては、点滴スタンドに関し、
図2,3及び
図5,6中のX軸方向を前後方向としてX(+)を前向き或いは前方とすると共にX(−)を後ろ向き或いは後方とし、また、Z軸方向を上下方向としてZ(+)を上向き或いは上方とすると共にZ(−)を下向き或いは下方とし、さらに、これらX軸及びZ軸の両方に直交するY軸方向を左右方向とする。
【0032】
本実施形態の点滴スタンドは、下端に左右一対の副車輪3,3を備えると共に上端に吊り下げ部2が取り付けられる支柱フレーム1と、下端に左右一対の主車輪6,6を備えると共に上端にハンドル5が取り付けられ且つフレーム軸心直交方向の連結軸24によって支柱フレーム1に中間位置において揺動可能に連結される操作フレーム4とを有し、ハンドル5が支柱フレーム1に向けて押されて操作フレーム4が起こされたときには副車輪3,3及び主車輪6,6が接地した状態(これは自立状態である)で走行し、ハンドル5が支柱フレーム1から離れる向きに引かれたときには操作フレーム4が傾動して連結軸24の軸心位置24aと主車輪6,6の回転中心6aとを結ぶ線分Rの傾斜が鉛直方向(即ち、Z軸方向)に近づくことによって連結軸24を介して支柱フレーム1を持ち上げ副車輪3,3を持ち上げた状態(これは牽引状態である)で主車輪6,6のみで走行するようにしている。
【0033】
なお、連結軸24は両フレーム1,4の中間に配設されるところ、ここでの「中間」とは、両フレーム1,4の「中央」のみを意味するものではなく、支柱フレーム1の支柱筒部1Aのいずれかの位置、及び、操作フレーム4の傾動部4Aのいずれかの位置を意味する。
【0034】
また、本実施形態の点滴スタンドは、支柱フレーム1と操作フレーム4との間に介在してハンドル5が支柱フレーム1に向けて押されて操作フレーム4が起こされたときに支柱フレーム1の副車輪3,3及び操作フレーム4の主車輪6,6が接地した状態(これは自立状態である)で支柱フレーム1の操作フレーム4側(言い換えると、ハンドル5側)への傾動を規制して鉛直方向姿勢を保持する機構10(以下、第一のフレーム傾動規制機構10と呼ぶ)と、支柱フレーム1と操作フレーム4との間に介在してハンドル5が支柱フレーム1から離れる向きに引かれて操作フレーム4が傾動したときに支柱フレーム1の操作フレーム4と反対側への(言い換えると、両フレーム1,4が開く)傾動を規制して鉛直方向姿勢を保持しつつ支柱フレーム1の副車輪3,3を持ち上げる(このときの状態は牽引状態である)機構20(以下、第二のフレーム傾動規制機構20と呼ぶ)とを有するようにしている。
【0035】
支柱フレーム1は、支柱筒部1Aと、当該支柱筒部1Aの下端から水平面内で左右斜め前方に延びる(即ち、平面視で前向き開口の概ねV字形をなす)枝脚1B,1Bと、支柱筒部1Aの上端から摺動可能に差し込まれる支柱ロッド1Cとを有する。なお、支柱筒部1Aと枝脚1B,1Bとは、本実施形態のように別部材で形成されるようにしても良いし、一部材で形成されるようにしても良い。また、支柱筒部1A及び支柱ロッド1Cの軸心が鉛直若しくは略鉛直である状態を支柱フレーム1が鉛直方向姿勢であると言う。
【0036】
支柱ロッド1Cは、支柱筒部1Aの周壁の上端寄り位置を貫通する軸部と前記周壁の外側に位置するグリップとを有する締め付けねじ9により、支柱筒部1Aに対して出し入れ自在且つ固定可能に設けられる。
【0037】
支柱ロッド1Cの上端には、点滴バッグなどを吊り下げるためのものであって左右に張り出すフック2a,2aを有する吊り下げ部2が設けられる。この吊り下げ部2は、上述の支柱ロッド1Cと支柱筒部1Aとの構成により、高さ調整が可能になっている。なお、吊り下げ部2のフック2aは左右に張り出す態様には限られるものではなく、前後に張り出すようにしても良いし、前後のうちの一方のみに張り出すようにしても良いし、前後左右に張り出すようにしても良い。
【0038】
左右の枝脚1B,1B各々の前端部の下端には副車輪3が、上下方向に配設された回転軸を介して取り付けられる。すなわち、副車輪3,3は、左右離間し一対のものとして、枝脚1Bに対して水平回転自在に取り付けられる。
【0039】
なお、本実施形態では、支柱筒部1Aの下端から水平面内で左右斜め前方に延びる二つの枝脚1B,1Bを設けて左右一対の副車輪3,3を備えるようにしているが、支柱フレーム1の下端に取り付けられる副車輪は一つでも構わない。
【0040】
なお、本実施形態のように枝脚1B,1Bを水平構造とすることにより、これら枝脚1B,1Bと支柱筒部1Aとによって囲まれるスペースを確保することができ、枝脚1B,1Bの上面にかごを取り付けて予備の点滴バッグや荷物などを入れるようにすることができる。あるいは、支柱筒部1Aの前面にフックなどを取り付けて予備の点滴バッグや荷物などを掛けるようにしても良い。
【0041】
また、副車輪3は、本実施形態のように全方向回転可能なキャスターである必要はなく、車軸が固定された車輪であっても良い。
【0042】
操作フレーム4は、上側部分を構成する傾動部4Aと、斜め下向きで傾動部4Aの軸心位置から左右斜め後方に延びて下側部分を構成する左右に分かれた二股の枝脚4B,4Bとを有する(平面視は後ろ向き開口のV字形)。なお、本実施形態では、傾動部4Aは筒状に形成され、また、操作フレーム4下側部分の左右の枝脚4B,4Bは支柱フレーム1下端の枝脚1B,1B全体の左右幅よりも広く左右に開脚している。また、本実施形態では、操作フレーム4の傾動部4Aと枝脚4B,4Bとの間に組み込まれる態様で第二のフレーム傾動規制機構20が設けられ、当該第二のフレーム傾動規制機構20を覆うカバー21に左右の枝脚4B,4Bが溶接やねじ止めなどによって固定されて取り付けられている。
【0043】
なお、本実施形態のように、支柱フレーム1下端に左右の枝脚1B,1Bを平面視で前向き開口の概ねV字形に設けると共に、操作フレーム4下側部分を構成する左右に開脚する二股の枝脚4B,4Bを設けることにより、
図9,10に示すように、後ろ側の点滴スタンドの支柱フレーム1下端の枝脚1B,1Bを前側の点滴スタンドの操作フレーム4下側部分の二股の枝脚4B,4Bをくぐらせることにより、複数の点滴スタンドを相互の間隔を詰めて水平方向にスタッキングさせることができる。
【0044】
傾動部4Aの上端には、平面視三角形に形成され、三角形の頂角部分が傾動部4Aの上端に固定されると共に三角形の底辺部分であるグリップ5aが後方に位置するように、ハンドル5が接着やねじ止めなどによって取り付けられる。
【0045】
左右の枝脚4B,4B各々の後端部の下端には主車輪6が、上下方向に配設された回転軸を介して取り付けられる。すなわち、主車輪6,6は、左右離間し一対のものとして、枝脚4Bに対して水平回転自在に取り付けられる。なお、主車輪6は、本実施形態のように全方向回転可能なキャスターである必要はなく、車軸が固定された車輪であっても良い。
【0046】
本実施形態では、操作フレーム4の傾動部4Aの上端寄り位置の前面に、平面視コ字形に形成されると共に閉口部分が傾動部4A前面にねじ止めなどによって固定されて前方に突出し(即ち、前向き開口)、両フレーム1,4が閉じた自立状態において支柱フレーム1の支柱筒部1Aが嵌まる第一のフレーム傾動規制機構10が取り付けられる。なお、第一のフレーム傾動規制機構10は、本実施形態では操作フレーム4の前面に前方突出の態様で設けられているが、この態様に限られるものではなく、支柱フレーム1の後ろ面に後方突出の態様で設けられるようにしても良い。
【0047】
第一のフレーム傾動規制機構10は、また、自立状態における支柱フレーム1の操作フレーム4やハンドル5側への傾動を規制し得るものであれば良く、本実施形態の平面視コ字形のように相手フレームが嵌まる凹部を有する形態でも良いし、凹部を有しない単なる突起状でも良い。あるいは、第一のフレーム傾動規制機構10を弾性部材で形成すると共に凹部の開口縁部寄り位置に突起を設けたり平面視C字形状にしたりすることにより、相手フレームが嵌まり込んで僅かな外力では外れないようにしても良い。この場合には、支柱フレーム1と操作フレーム4との一体性が増し、走行時における両フレーム1,4各々の細かな振動が抑制され、安定性及び快適性が向上する。
【0048】
本実施形態では、また、操作フレーム4を支柱フレーム1に対して前後揺動可能に連結する連結機構として機能する連結軸24を含む第二のフレーム傾動規制機構20が、操作フレーム4の上側部分である傾動部4Aと下側部分である枝脚4B,4Bとの間に組み込まれる態様で設けられる。すなわち、本実施形態では、第二のフレーム傾動規制機構20は、操作フレーム4の傾動部4Aと枝脚4B,4Bとの間に組み込まれる態様で支柱フレーム1と操作フレーム4との間に介在して設けられる。また、操作フレーム4は支柱フレーム1の真後ろに配置され、支柱フレーム1の軸心と操作フレーム4の軸心とが前後方向に揃ったままで支柱フレーム1に対して操作フレーム4が前後揺動する。
【0049】
そして、本実施形態の点滴スタンドは、具体的な構成として、操作フレーム4の傾動部4Aの軸心が、自立状態において鉛直になり、牽引状態において鉛直方向から30°後傾するように構成されている。なお、自立状態と牽引状態とにおける操作フレーム4の傾動部4Aの姿勢(傾斜角度)は、特定の姿勢(角度)に限定されるものではなく、例えば、自立状態において傾動部4Aが傾斜していても構わないし、牽引状態における後傾の傾斜角度が20°であったり40°であったりしても構わない。
【0050】
本実施形態の点滴スタンドは、また、自立状態における具体的な構成(配置関係)として、支柱フレーム1の支柱筒部1A及び支柱ロッド1Cは鉛直方向に配置され、支柱フレーム1に対する操作フレーム4の揺動中心(即ち、連結軸24の軸心位置24a)よりも前方で副車輪3が接地すると共に前記揺動中心よりも後方で主車輪6が接地し、また、ハンドル5のグリップ5aは前記揺動中心よりも後方に配置される。なお、支柱筒部1A及び支柱ロッド1Cの姿勢は、厳密に鉛直方向に限られるものではなく、略鉛直方向であれば良い。
【0051】
上述の構成(配置関係を含む)により、ハンドル5を押して操作フレーム4を起こした(立てた)自立状態において全ての車輪(3,6)を接地させての自立とハンドル5を掴んでの前向きの手押し移動とが可能であると共に(
図1〜3,7参照)、ハンドル5を引き下げて操作フレーム4を後傾させた牽引状態において主車輪6を接地させると共に支柱フレーム1ごと副車輪3を持ち上げての後ろ向きの牽引移動が可能である(
図4〜6,8参照)。すなわち、本発明においては、ハンドル5を引き下げた牽引状態での牽引移動の際には左右一対の主車輪6,6のみの二輪走行になる。
【0052】
また、牽引状態では操作フレーム4が後傾しているので、ハンドル5(グリップ5a)が操作フレーム4下端の主車輪6から離れた後方に位置するようになり、グリップ5aを掴んで点滴スタンドを曳く際に主車輪6が歩行の邪魔にならない(
図8参照)。
【0053】
また、自立状態において支柱フレーム1が鉛直方向姿勢であることに加え、牽引状態においても支柱フレーム1の鉛直方向姿勢が維持される(なお、略鉛直方向であれば良い)(
図1〜8参照)。
【0054】
ここで、自立状態における支柱フレーム1の姿勢維持は、自立状態において前側の支柱フレーム1下端の副車輪3と後ろ側の操作フレーム4下端の主車輪6との間であって両車輪3,6の上方に揺動中心(即ち、連結軸24の軸心位置24a)があるために両フレーム1,4が相手フレーム側に傾斜(具体的には、支柱フレーム1は後傾、操作フレーム4は前傾)しようとするところ、この傾斜が両フレーム1,4の間に介在して設けられている第一のフレーム傾動規制機構10によって制限されることによって実現される。なお、このとき同時に、自立状態における操作フレーム4の姿勢維持も実現されている。
【0055】
一方、牽引状態においては、支柱フレーム1に対する操作フレーム4の揺動中心(即ち、連結軸24の軸心位置24a)と主車輪6,6の回転中心6aとを結ぶ線分Rの傾斜が自立状態時の線分Rの傾斜と比べて鉛直方向に近づくため、揺動中心(24a)が上方に移動する。このとき、支柱フレーム1は副車輪3,3を接地させながら前傾して揺動中心である連結軸24が上方に移動することに対応しようとするところ、この傾斜が両フレーム1,4の間に介在して設けられている第二のフレーム傾動規制機構20によって制限される。
【0056】
以下、
図11〜20を特に参照しつつ、第二のフレーム傾動規制機構20について説明する。なお、
図11〜20においては、分かり易さを考慮し、左右方向に配設された軸部材(24,25,33,36)の抜け落ち防止や安定性・摺動性確保のための部材の図示を省略し、また、第二のフレーム傾動規制機構20を覆うカバー21の図示を省略している。
【0057】
支柱フレーム1の支柱筒部1Aの、操作フレーム4側の周面に、左右に離間し対向して操作フレーム4側に向けて突き出す一対のプレート22,22が溶接やねじ止めなどによって固定されて取り付けられる。
【0058】
一方、操作フレーム4の傾動部4Aの下端に、左右に離間して対向する側壁23a,23aを有するドラム23がねじ止めなどによって固定されて取り付けられる。なお、ドラム23の支柱フレーム1側及び下側は開口している。なお、カバー21は、傾動部4A下端に取り付けられるドラム23の上端部材23bにねじ止めなどによって固定されて取り付けられる。
【0059】
これら支柱フレーム1に固定の一対のプレート22,22と操作フレーム4に固定のドラム23とは、ドラム23の左右側壁23a,23aの間に一対のプレート22,22がともに差し込まれて配置され、且つ、一対のプレート22,22及び左右側壁23a,23a各々の概ね中心位置に設けられた貫通孔を貫通して左右方向に配設された連結軸24によって相互に前後回動可能に連結される。この連結軸24は、操作フレーム4を支柱フレーム1に対して前後揺動可能に連結する連結機構として機能するものである。
【0060】
また、一対のプレート22,22及びドラム23の左右側壁23a,23aを貫通する左右方向の傾動規制軸25が設けられる。この傾動規制軸25を貫通させるため、一対のプレート22,22には傾動規制軸25の軸心位置を固定して貫通させる貫通孔が設けられ、一方、ドラム23の側壁23aには連結軸24の軸心位置24aを中心とする円弧状の長孔26が設けられる。
【0061】
長孔26は、これを貫通する傾動規制軸25を介して、一対のプレート22,22に対するドラム23の回動範囲、即ち、支柱フレーム1に対する操作フレーム4の傾動範囲を制限するものである。このため、長孔26は、自立状態時の操作フレーム4の姿勢での側壁23aにおける傾動規制軸25の位置から(
図12参照)、牽引状態時の操作フレーム4の姿勢での側壁23aにおける傾動規制軸25の位置までの(
図13参照)、連結軸24の軸心位置24aを中心とする円弧状に形成される。
【0062】
上述の構成により、ハンドル5が引き下げられ操作フレーム4が傾斜したときに支柱フレーム1の操作フレーム4と反対側への(言い換えると、両フレーム1,4が更に開く)傾動が規制され(
図13参照)、支柱フレーム1の鉛直方向姿勢が保持されつつ、支柱フレーム1の副車輪3,3が持ち上げられて牽引状態になる。さらに言うと、牽引状態における支柱フレーム1の操作フレーム4と反対側への(言い換えると、両フレーム1,4が更に開く)傾動が規制される。
【0063】
また、長孔26は、自立状態時の操作フレーム4の姿勢での側壁23aにおける傾動規制軸25の位置(
図12参照)を一端として形成されるので、自立状態で支柱フレーム1の操作フレーム4側(言い換えると、ハンドル5側)への傾動を規制するものとしても機能する。つまり、本実施形態における傾動規制軸25及び長孔26は、第二のフレーム傾動規制機構20として機能すると共に第一のフレーム傾動規制機構10としても機能する。したがって、本実施形態においては、上述の、操作フレーム4の傾動部4A前面に取り付けられた第一のフレーム傾動規制機構10がたとえなくても、自立状態で支柱フレーム1の操作フレーム4やハンドル5側への傾動が規制されて鉛直方向姿勢が保持される。
【0064】
本実施形態では、さらに、牽引状態における支柱フレーム1の鉛直方向姿勢を保持する、言い換えると、牽引状態における支柱フレーム1と操作フレーム4との位置関係(言い換えると、両フレーム1,4の開きの程度)を固定するためのロック機構を有するようにしている。
【0065】
具体的には、まず、傾動規制軸25を摺動可能に貫通させるロックリンク30が、一対のプレート22,22の間に配設される。すなわち、ロックリンク30は、一対のプレート22,22及びドラム23に対して回動可能である。
【0066】
ロックリンク30は傾動規制軸25を貫通させる貫通孔から操作フレーム4の傾動部4A側に延出する部分30aを有し、この傾動部4A側部分30aは前後方向(上下方向)に切り込まれて二股に形成され、この二股部分30aを構成する左右対向片の各々に対向して長孔31,31が形成される。
【0067】
ロックリンク30の二股部分30aには先端部分に左右方向の貫通孔が形成された解除リンク32が差し込まれ、解除リンク32先端部分の貫通孔及び二股部分30aの長孔31を貫通して左右方向に配置される連結軸33が設けられる。
【0068】
解除リンク32は、筒状に形成された操作フレーム4の傾動部4A内を貫通して設けられる。また、解除リンク32には、傾動部4A下端に取り付けられたドラム23寄りの位置に、ばね受け34が固定されて設けられる。そして、ドラム23の上端部材23bとばね受け34との間に、解除リンク32を貫通させて押し上げばね35が配設される。これにより、解除リンク32には、ハンドル5に向けて押し上げられる付勢力が常時加えられる。
【0069】
ロックリンク30は、また、傾動規制軸25を貫通させる貫通孔から支柱フレーム1の支柱筒部1A側に延出する部分30bを有し、この支柱筒部1A側部分30bには、左右方向の貫通孔が形成される。そして、支柱筒部1A側部分30bの貫通孔を貫通する左右方向のロック軸36が配設される。
【0070】
また、ドラム23の左右の側壁23a,23aには、ロック軸36が貫通する、円弧状部37aとロック部37bとが連続してなる長孔37が設けられる。
【0071】
長孔37の円弧状部37aは、自立状態時の操作フレーム4の姿勢での側壁23aにおけるロック軸36の位置から(
図12参照)、牽引状態時の操作フレーム4の姿勢での側壁23aにおけるロック軸36の位置までの(
図13参照)、連結軸24の軸心位置24aを中心とする円弧状に形成される。
【0072】
長孔37のロック部37bは、牽引状態時の操作フレーム4の姿勢での側壁23aにおけるロック軸36の位置から(
図13参照)、前記位置からロック軸36が移動して嵌まり込める位置までの(
図14参照)、傾動規制軸25の軸心位置を中心とする円弧状に形成される。ここで、円弧状部37aとロック部37bとは円弧の中心が異なるため、これらが連続してなる長孔37は屈曲した形状になる。
【0073】
また、一対のプレート22,22には、牽引状態時のドラム23の姿勢における長孔37のロック部37bと対向する(即ち、左右方向における位置を同じくする)長孔38が形成される。したがって、長孔38は、傾動規制軸25の軸心位置を中心とする円弧状に形成される。
【0074】
上述の、ドラム23に形成された、ロック軸36が貫通する長孔37の円弧状部37aによってドラム23の回動が許容されて自立状態と牽引状態との間での操作フレーム4の揺動が可能になる(
図12,13参照)。そして、牽引状態において円弧状部37aとロック部37bとの連接部分にロック軸36が位置すると(
図13参照)、押し上げばね35によって常時押し上げ付勢されている解除リンク32が押し上げられて連結軸33を介してロックリンク30が回動することにより、ロック軸36がドラム23に設けられた長孔37のロック部37bに入り込む(
図14参照)。
【0075】
なお、ロック軸36が貫通している一対のプレート22,22の長孔38は、連結軸24の軸心位置24aを中心とする円弧状部を有していないのでロック軸36が連結軸24を中心として旋回移動することは規制される一方で、傾動規制軸25の軸心位置を中心とする円弧状に形成されているのでロック軸36が傾動規制軸25を中心として旋回移動することは規制されない。
【0076】
そして、牽引状態においてロック軸36がロック部37bに入り込んだ状態では、ドラム23のロック部37b及び一対のプレート22,22の長孔38の円弧の中心は傾動規制軸25であって連結軸24ではないのでドラム23は回動不能であり、連結軸24を中心とする、操作フレーム4に対する支柱フレーム1の傾動は規制され、支柱フレーム1の鉛直方向姿勢が保持される。
【0077】
なお、牽引状態の点滴スタンドを、ハンドル5を引いて曳くようにしても良いし、ハンドル5を掴んで押すようにしても良い。
【0078】
また、点滴スタンドを牽引状態から自立状態へと変形させるときは、解除リンク32の上端に取り付けられてハンドル5の傾動部4A取り付け部分の上端面から突出している操作ボタン(図示省略)を下に押し込むことにより、解除リンク32が押し下げられて連結軸33を介してロックリンク30が回動し、ロック軸36が長孔37のロック部37bから出て円弧状部37aに移動してドラム23が回動可能になり(
図13参照)、支柱フレーム1に対する操作フレーム4の傾動が可能になる(
図12参照)。
【0079】
なお、牽引状態における支柱フレーム1と操作フレーム4との開きの程度は固定される一方で、牽引状態で点滴スタンドを移動させる場合の操作フレーム4の傾斜角度には個人差があるので、支柱フレーム1の姿勢は厳密に鉛直方向であるとは限られないものの、支柱フレーム1が若干傾斜していても患者等の歩行の容易性と安定性とが確保されるという本発明の効果は損なわれない。また、牽引状態において支柱フレーム1が鉛直方向姿勢になるようにするため、操作フレーム4を伸縮可能に構成するようにしても良いし、或いは、操作フレーム4やハンドル5を取り替え可能な構造にして複数の寸法の操作フレーム4やハンドル5を予め準備しておいて患者に合わせて操作フレーム4やハンドル5を取り替えるようにしても良い。特に、牽引状態における両フレームのロックを解除するための解除リンク32を操作フレーム4の傾動部4A内に設けてハンドル5の傾動部4A取り付け部分の上端面から操作ボタンを突出させる場合には、ハンドル5の傾動部4Aへの取り付け部分の形状・寸法は同じでありながらその他の部分の前後や上下方向の寸法が異なる複数のハンドル5を予め準備してハンドル5のみを取り替えるようにすることが簡単であって好ましい。
【0080】
また、牽引状態での主車輪6,6のみの二輪走行では、左右の主車輪6,6の回転中心6aを結ぶ左右方向軸の真上或いはその近傍に支柱フレーム1が位置することが好ましい。そうすることにより、支柱フレーム1の荷重が主車輪6,6の回転軸に対して真上或いはその近傍から作用して余計なモーメントが発生することがないので支柱フレーム1の姿勢を安定させることが容易になり、また、支柱フレームにかかる荷重を主車輪6,6が受けて患者等の負担が軽減され、点滴スタンドを曳いたり押したりしての移動を楽に行うことができる。
【0081】
以上のように構成された本発明の点滴スタンドによれば、自立状態では点滴スタンドが歩行器のような形態となるので、患者等はハンドル5を掴んで押し進むことが可能であり、また、牽引状態では点滴スタンドがキャリーバッグのような形態となるので、患者等はハンドル5を掴んで自身の側方斜め後方位置に点滴スタンドを引き付けて自然の姿勢で歩行することが可能である。
【0082】
なお、上述の形態は本発明の実施の形態の好適な一例ではあるものの、本発明の実施の形態が上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では本発明を
図1〜6に全体構造を示す点滴スタンドに適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明が適用され得る点滴スタンドの具体的な構造や形状は上述の実施形態におけるものには限られない。
【0083】
また、上述の実施形態では、牽引状態における支柱フレーム1と操作フレーム4との位置関係(両フレーム1,4の開きの程度)を固定するためのロック機構を備えるようにしているが、本発明においてロック機構は必須の構成ではない。また、第一のフレーム傾動規制機構10や第二のフレーム傾動規制機構20の具体的な構造は上述の実施形態におけるものには限られない。例えば、
図21及び
図22に示す構造としても良い。
【0084】
以下に、
図21及び
図22に示す本発明の他の実施形態について説明する。ただし、上述の実施形態と同様の構造については同じ符号を付与して説明を省略する。この実施形態は、具体的には、操作フレーム4及びハンドル5が一体として正面視で下向き開口のコ字形に形成され、頂部(コ字形の閉口部分)をグリップ5aとして後方に延びるハンドル5が上端部分に形成されると共に、その下方が操作フレーム4の左右離間する傾動部4A,4Aとされ、これら傾動部4A,4A各々の下端から斜め下向きで後方に延びる脚部4B,4Bが形成される。この実施形態では、ハンドル5並びに操作フレーム4の傾動部4A及び脚部4Bは一部材で形成され、また、脚部4B,4Bに取り付けられる主車輪6,6は車軸が固定された車輪である。
【0085】
支柱フレーム1は、支柱筒部1Aと、当該支柱筒部1A上端に取り付けられる支柱ロッド1Cと、支柱筒部1A下端から斜め下向きで前方に延びる脚部1Bとを有する。なお、この実施形態では、支柱筒部1Aと支柱ロッド1Cとは固定されて連結されており、これらの長さ調整機構は備えられていない。また、脚部1Bは一本のみであり、したがって副車輪3は一つのみであり、即ちこの実施形態の点滴スタンドは三輪構造である。
【0086】
また、この実施形態では、支柱フレーム1の支柱筒部1Aの左右側方に操作フレーム4の左右の傾動部4A,4Aが位置し、これらが左右方向に配設された連結軸24によって揺動可能に連結される。
【0087】
そして、この実施形態では、ハンドル5と左右の傾動部4A,4Aとの接続部分近傍に架け渡される態様で、自立状態として支柱筒部1Aと左右の傾動部4A,4Aとが左右方向に揃ったときの支柱筒部1A後面と当接する位置に、左右方向の棒部材が第一のフレーム傾動規制機構10として溶接などによって固定されて取り付けられる。
【0088】
また、操作フレーム4の左右の脚部4B,4Bに架け渡される態様で、これら脚部4B,4Bの中間位置に、左右方向の棒部材が第二のフレーム傾動規制機構20として溶接などによって固定されて取り付けられる。
【0089】
上述で説明した、
図21,22に示す態様の第一のフレーム傾動規制機構10によっても、支柱フレーム1と操作フレーム4との間に介在し、ハンドル5が支柱フレーム1に向けて押されて操作フレーム4が起こされたときに支柱フレーム1の副車輪3及び操作フレーム4の主車輪6,6が接地した状態で支柱フレーム1の操作フレーム4やハンドル5側への傾動が規制されて鉛直方向姿勢が保持される(
図21(A)参照)。
【0090】
さらに、
図21,22に示す態様の第二のフレーム傾動規制機構20によっても、支柱フレーム1と操作フレーム4との間に介在し、ハンドル5が支柱フレーム1から離れる向きに引かれて操作フレーム4が傾動したときに支柱フレーム1の操作フレーム4と反対側への傾動を規制して鉛直方向姿勢を保持しつつ支柱フレーム1の副車輪3が持ち上げられる(
図22参照)。