特許第6114545号(P6114545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114545
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】車室搭載型の配光可変灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20170403BHJP
   B60Q 3/74 20170101ALI20170403BHJP
【FI】
   B60Q1/14 A
   B60Q3/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-277936(P2012-277936)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-121895(P2014-121895A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】望月 光之
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−338487(JP,A)
【文献】 実開昭59−065850(JP,U)
【文献】 特開2001−088610(JP,A)
【文献】 特開2009−113747(JP,A)
【文献】 特開2011−162080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00−1/56
B60Q 3/00−3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設置されるハウジング、車両周辺に照明光を出射するランプと、車両周辺を撮像するカメラと、カメラの撮像データに従ってランプの配光を変化させる配光制御機構とを備え、
前記ランプおよびカメラがハウジングの内側に収納され、前記配光制御機構がハウジングの内側でランプの配光を変化させるアクチュエータを含むことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記ハウジングの内側に、ランプとカメラを隣接する状態で別々に収納する収納室が形成されている請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ハウジングの内側に、ランプカメラよりも車幅方向の外側に配置されている請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記ハウジングの内側に、ランプ収納室とカメラ収納室とを仕切る遮光板が設けられている請求項2または3記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記ハウジングに、車室内を照明する室内灯装備されている請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの撮像データに基づいてランプの配光を変化させる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前方をカメラで撮像し、道路形状に応じて前照灯の配光を変化させるAFS(Adaptive
Front-lighting System)機能を備えた車両用灯具が知られている。また、カメラで先行車や対向車の位置を検知し、対向車のドライバーにグレアを与えないように、ハイビームの向きを制御するADB(Adaptive Driving Beam)機能を備えた車両用灯具も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ADB機能を備えた車両用前照灯において、カメラで検出した車両が先行車であるか対向車であるかを判別し、判別結果に従って配光を切り替えるタイミングを調整する技術が記載されている。特許文献2には、カメラをフロントグリルに取り付ける技術が記載されている。特許文献3には、前照灯のハウジング内部にランプとカメラを収納する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−166633号公報
【特許文献2】特開2005−199837号公報
【特許文献3】特開2001−60403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カメラがフロントグリルやサイドミラー等のランプから離れた位置に設置されている場合、ランプとカメラの光軸にズレが発生するため、配光制御にあたっては、光軸のズレを考慮してランプを駆動する必要がある。例えば、従来のADB制御では、図8に示すように、対向車Vの左右にマージンMを設定し、自車両のハイビームがマージン外側の領域(照明領域A)を照射するように、左右のランプを駆動していた。
【0006】
ところが、マージンMを大きく設定すると、対向車Vを含む遮光領域Bが広くなり、反対に照明領域Aが狭くなるため、対向車Vの影から現れた歩行者Wや路面上の落下物などの発見が遅れるという問題点があった。また、部品交換やエイミング等によってランプとカメラの相対位置が変化すると、ハイビームの一部がマージン設定域よりも内側に侵入し、対向車Vのドライバーにグレアを与えることもあった。
【0007】
なお、特許文献3の前照灯では、ランプと接近するようにカメラを灯具ハウジング内に設置しているため、ランプとカメラの光軸ズレを抑えることができる。しかし、カメラの位置が低くなるうえ、前照灯の前面カバーに付着した汚れ、雨滴、氷雪等によってカメラの映像が不鮮明になるという別の問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、遮光領域を必要最小限に抑え、照明領域を拡張し、かつカメラの映像を鮮明にして、安全性の高い配光制御を行うことができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、車室内に設置されるハウジングに、車両周辺に照明光を出射するランプと、車両周辺を撮像するカメラと、カメラの撮像データに従ってランプの配光を変化させる配光制御機構とを設けたことを特徴とする。
【0010】
ここで、ハウジングは、車室内の適所に設置できるが、好ましくは、搭乗者の視界を妨げない点で、車体天井部に近い高所に設置できる。特に、本発明の車両用灯具を前照灯またはその補助灯具として機能させる場合は、ハウジングを車室前端部の天井付近に設置できる。
【0011】
また、本発明の車両用灯具は、ハウジングの内側に、ランプとカメラとを隣接する状態で別々に収納する収納室を形成したことを特徴とする。好ましくは、ハウジングの内側において、ランプをカメラよりも車幅方向の外側に配置するとよい。
【0012】
具体的には、ハウジングを車幅方向の端部に設置し、ハウジングの内側に一つのランプと一つのカメラとを別々に収納する2つの収納室を形成する。こうすれば、2台の車両用灯具を車幅方向の両端に設置し、ステレオカメラの撮像データに従って、左右のランプから車両前方に照明光を出射することができる。
【0013】
あるいは、ハウジングを車幅方向の中央部に設置し、ハウジングの内側に左右一対のランプと一つのカメラを別々に収納する3つの収納室を形成することもできる。これによれば、一台のカメラの撮像データに基づいて、左右のランプの配光を制御し、車両用灯具を単一のユニットでコンパクトに構成できる。
【0014】
また、ランプからの光がカメラに入射しないように、ハウジングの内側に、ランプ収納室とカメラ収納室とを仕切る遮光板を設けるのが好ましい。ハウジングに、車室内を照明する室内灯を設けたり、バックミラーを取り付けたり、ETC車載器、カーナビ・モニター、スピーカ等を設置したりするなど、ハウジングを車室装備品の支持部材として活用することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用灯具によれば、車室内に設置されるハウジングにランプ、カメラおよび配光制御機構を設け、カメラの撮像データに従ってランプの配光を変化させるように構成したので、遮光領域を必要最小限に抑え、照明領域を拡張し、かつカメラの映像を鮮明にして、安全性の高い配光制御を実施できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1を示す自動車の正面図である。
図2図1の車両用灯具のハウジング内部を示す斜視図である。
図3図1の車両用灯具の作用を示す模式図である。
図4】本発明の実施例2を示す自動車の正面図である。
図5図4の車両用灯具のハウジング内部を示す斜視図である。
図6】ハウジング背面側のバックミラーを示す車両用灯具の斜視図である。
図7】ハウジング下面側の室内灯を示す車両用灯具の斜視図である。
図8】従来の車両用灯具の問題点を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1図3は本発明の実施例1を示し、図4図7が本発明の実施例2を示す。各図において、同一の符号は同一の構成要素を示す。
【実施例1】
【0018】
図1に示す実施例1の車両用灯具1は、左右2台が車室2の内側に設置され、車室搭載型の前照灯として機能する。周知の前照灯は車体3の前端から省かれ、ここにサイドターン・シグナルランプ4とクリアランスランプ5とが設けられている。ただし、本発明の車両用灯具は、図1の適用例に限定されず、補助灯具として車体前端の前照灯と併用することもできる。
【0019】
左右の車両用灯具1のハウジング6は、それぞれ、車幅方向の端部において車体3の天井部7に取り付けられている。ハウジング6の内側には、車両前方へ照明光を出射するランプ8と、車両前方の光景を撮像するカメラ9とが収納されている。そして、ランプ8がカメラ9よりも車幅方向の外側に配置され、運転席から見て右側のランプ8が車両前方の右方向を照明し、左側のランプ8が車両前方の左方向を照明するようになっている。
【0020】
図2に示すように、ハウジング6の内側には、車幅方向に一対の収納室11,12が形成され、その前面開放部がフロントガラス10の内面と対向している。車幅方向外側のランプ収納室11にはランプ8が、車幅方向内側のカメラ収納室12にカメラ9が、互いに隣接する状態で別々に収納されている。ランプ8からの光がカメラ9に入射しないように、ランプ収納室11とカメラ収納室12は遮光板13によって仕切られ、遮光板13の後側に基板14が横設されている。基板14はハウジング6の内部を前後に分割し、基板14の後側に放熱室15が画定され、ハウジング6の側壁に換気用スリット16が形成されている。
【0021】
ランプ8は、ランプ収納室11にLED光源18、リフレクタ19、投影レンズ20、アクチュエータ21を装備し、放熱室15に冷却フィン22が設けられている。リフレクタ19は、車幅方向内側の部位に縦形シェード23を備え、車両前方の配光パターンに垂直方向のカットラインVCL(図3参照)を形成する。投影レンズ20はアクチュエータ21の出力部(図示略)に連結され、アクチュエータ21、LED光源18およびカメラ9が灯具制御装置24に電気的に接続されている。
【0022】
灯具制御装置24には、カメラ9の映像を処理する映像処理部25と、LED光源18の光出力を制御する光源制御部26と、アクチュエータ21を駆動するアクチュエータ駆動部27と、CPUおよびプログラムメモリを備えた配光制御部28とが設けられている。そして、配光制御部28とアクチュエータ21とによって配光制御機構が構成され、配光制御部28がカメラ9の撮像データに従ってアクチュエータ21を制御し、アクチュエータ21が投影レンズ20を水平面内で回動して、ランプ8の配光を変化させるようになっている。
【0023】
なお、配光制御機構は、投影レンズ20を回動する機構に限定されず、LED光源18やリフレクタ19を回動することにより、ランプ8の光軸を傾動させる別のアクチュエータ機構、レべリング機構またはスイブル機構を採用することもできる。また、光源に複数のLEDを使用し、カメラ9の撮像データに基づいて各LEDを選択的に点消灯することで、ランプ8の配光を変化させる機構を採用することも可能である。
【0024】
上記構成の車両用灯具1によれば、ハウジング6の収納室11,12にランプ8とカメラ9が隣接する状態で収納されているので、ランプ8とカメラ9の光軸ズレをごく僅かとすることができる。このため、例えば、ADB機能を用いた配光制御にあたり、従来のように対向車Vの左右にマージンを設定する必要がなくなり、図3に示すように、自車両の左右のハイビームを対向車Vの間近(垂直カットラインVCL)まで照射し、左右の照明領域Aを拡張でき、反対に対向車Vを含む遮光領域Bを縮小することができる。
【0025】
したがって、対向車Vの影から現れた歩行者Wや路面上の落下物などを早期に発見することができる。さらに、ランプ8がカメラ9よりも車幅方向外側に配置されているので、対向車Vのドライバーにグレアを与えるおそれがなく、左右の歩道や路肩部分を明るく照明することもでき、もって、安全性の高い配光制御を行うことができる。また、この配光制御が、車室内の高所に設置されたカメラ9の撮像データに基づいて実施されるので、車体前端の前照灯やフロントグリルに設置された従来のカメラと比較し、汚れ、雨滴、氷雪等による影響を少なくし、カメラ9の映像を鮮明にし、高精度の配光制御を実施することができる。
【実施例2】
【0026】
図4図7に示す実施例2の車両用灯具31では、ハウジング32が車室2の前端において車幅方向の中央部に設置され、ハウジング32の内側に左右一対のランプ8と一つのカメラ9とが配設されている。カメラ収納室33はハウジング32の中央部に形成され、ランプ収納室34,35がカメラ収納室33の左右に形成されている。そして、左右のランプ8がカメラ9よりも車幅方向外側に配置され、右側のランプ8が車両前方の右方向を照明し、左側のランプ8が車両前方の左方向を照明するようになっている。
【0027】
ランプ収納室34,35とカメラ収納室33とは2枚の遮光板36,37によって仕切られ、遮光板36,37の後側に基板14が横設されている。実施例1と同様に、基板14はハウジング32の内部を前後に分割し、基板14後側の放熱室15に左右のランプ8の冷却フィン22が収められている。そして、カメラ9、LED光源18、アクチュエータ21が灯具制御装置24に電気接続され、配光制御部28が一台のカメラ9の撮像データに従って2台のアクチュエータ21を個別に制御し、左右のランプ8の配光を変化させるように構成されている。
【0028】
図6に示すように、ハウジング32の背面にはバックミラー39が取り付けられている。また、図7に示すように、ハウジング32の下面には、車室2内を照明する室内灯40が装備されている。したがって、実施例2の車両用灯具31によれば、ハウジング32の内側にランプ8とカメラ9を装備し、ハウジング32の外側にバックミラー39と室内灯40を装備し、車室内の各種装備品を一体に統合して、単一の配光可変灯具ユニットをコンパクトな形態で構成することができる。その他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0029】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、例えば、ハウジングを車室後部に設置し、車両後方を照明するリアコンビネーションランプとして、またはその補助灯具として機能させたり、あるいは、ハウジングにETC車載器、カーナビ・モニター、オーディオスピーカ等を装備したりするなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 車両用灯具(実施例1)
6 ハウジング
8 ランプ
9 カメラ
11 ランプ収納室
12 カメラ収納室
13 遮光板
21 アクチュエータ
28 配光制御部
31 車両用灯具(実施例2)
32 ハウジング
39 バックミラー
40 室内灯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8