(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル、メタクリル」、「(メタ)アクリロ」との表記は「アクリロ、メタクリロ」、「(メタ)アクリレート」との表記は「アクリレート、メタクリレート」の双方の表記を意味している。以下、同様である。
【0022】
[電気泳動粒子]
本実施形態に係る電気泳動粒子は、少なくとも表面に、一般式(I)で示される反応性化合物を少なくとも重合成分とする高分子(以下「特定高分子」と称する)を有する。
本実施形態に係る電気泳動粒子は、上記構成により、帯電量が高い電気泳動粒子となる。この理由は、定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0023】
まず、一般式(1)で示される反応性化合物は、一方の末端に(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイル基)を有し、且つ他方の末端にカルボニル基又はそのエステル基(カルボン酸エステル基)を有する反応性化合物であって、例えば、(メタ)アクリル酸とジオールとジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとの反応生成物である。なお、一般式(1)で示される反応性化合物の合成原料は上記に限られるわけではない。
つまり、一般式(1)で示される反応性化合物は、重合反応に寄与する(メタ)アクリレート基と帯電性基として機能するカルボニル基又はそのエステル基とが、回転可能で柔軟なエーテル結合を有する部位を介して連結した反応性化合物である。また、このエーテル結合を有する部位は、電気泳動粒子を分散する分散媒(例えばシリコーンオイルやパラフィン系炭化水素溶媒)に対して親和性を有すると考えられる。
そして、一般式(1)で示される反応性化合物は、エーテル結合を有する部位により、重合反応に寄与する(メタ)アクリレート基と帯電性基として機能するカルボニル基又はそのエステル基とが離間している。
このため、一般式(1)で示される反応性化合物を少なくとも重合成分とする特定高分子が電気泳動粒子の表面に有すると、分散媒中において、帯電性基として機能するカルボニル基又はそのエステル基が、粒子の外側に且つ高分子の主鎖から離間して配向された状態になり易いと考えられる。これにより、カルボニル基又はそのエステル基が帯電性基としての機能が発揮され易くなると考えられる。
【0024】
以上から、本実施形態に係る電気泳動粒子は、帯電量が高い電気泳動粒子となる。加えて、上記特定高分子の量により、帯電量の制御が容易に行える。その結果、電界により移動を開始する電圧(以下、この電圧を「閾値電圧」と称する)も高められる。
そして、本実施形態に係る電気泳動粒子を採用した表示媒体及び表示装置では、電気泳動粒子の帯電量低下に起因する表示欠陥(例えば、表示濃度の低下、混色表示)が抑制された表示が実現される。
【0025】
なお、本実施形態に係る電気泳動粒子は、異なる帯電極性の電気泳動との共存化においても分散性がよく、また、分離特性もよくなる傾向がある。また、分散媒に分散させたとき、粘度上昇も抑制される傾向がある。
【0026】
一方、本実施形態に係る電気泳動粒子において、表面に有する特定高分子として、一般式(1)で示される反応性化合物とシリコーン鎖又はアルキル鎖を持つ反応性化合物とを少なくとも重合成分とする高分子を適用すると、繰り返し表示による帯電量の変化が抑制される。この理由は定かではないが、一般式(1)で示される反応性化合物により、シリコーン鎖又はアルキル鎖を粒子の外側へ配向し易くなると考えられるためである。また、シリコーン鎖又はアルキル鎖を粒子の外側へ配向し易くなることから、電気泳動粒子の分散安定性も向上し易くなると考えられる。
【0027】
以下、本実施形態に係る電気泳動粒子の詳細を説明する。
【0028】
本実施形態に係る電気泳動粒子としては、例えば、コア粒子と、コア粒子の表面に被覆又は付着した特定高分子と、を有する構成が挙げられる。つまり、本実施形態に係る電気泳動粒子としては、例えば、コア粒子の表面を特定高分子で表面処理した構成が挙げられる。特に、特定高分子によりコア粒子の表面を被覆又は表面に付着する構成では、一般式(1)で示される反応性化合物が末端を含め(C=O)基を少なくとも3つ有するため、吸着部位として発揮し易く、特定高分子の均一な被覆又は付着が実現される易くなる。
ここで、特定高分子は、コア粒子の表面(その官能基)に結合した状態で被覆又は付着していてもよいし、コア粒子の表面(その官能基)とは未結合の状態で被覆又は付着していてもよい。
なお、本実施形態に係る電気泳動粒子は、一般式(I)で示される反応性化合物を少なくとも重合成分とする特定高分子に着色剤が分散した粒子、又は当該特定高分子で着色剤の表面を被覆又は付着した粒子であってもよい。
【0029】
(コア粒子)
コア粒子は、例えば、樹脂(以下、「コア粒子の樹脂」と称する)と、着色剤と、を含んで構成されている。
【0030】
−コア粒子の樹脂−
コア粒子の樹脂としては、例えば、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類;、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン;、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体、又はこれらの共重合体からなる樹脂が挙げられる。
コア粒子の樹脂としては、例えば、ジビニルベンゼンを主成分とする架橋共重合体や架橋ポリメチルメタクリレート等の架橋樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等も挙げられる。
【0031】
コア粒子の代表的な樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ヒドロキシアルキル‐アンモニウム樹脂、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0032】
なお、コア粒子の樹脂は、帯電性樹脂(帯電性基(例えば分極性の官能基:極性基)を有する樹脂)であっても、非帯電性樹脂(帯電性基を有していない樹脂)であってもよいが、帯電量向上の観点から、帯電性樹脂であることがよい。
帯電性樹脂は、例えば、帯電性基を持つ反応性化合物を少なくとも重合成分とするものがよい。帯電性基を持つ反応性化合物については、コア粒子の表面を被覆又は表面に付着する特定高分子の重合成分として説明する反応性化合物と同様なものが好適に挙げられる。
【0033】
コア粒子の樹脂において、帯電性基を持つ反応性化合物は、例えば、全重合成分に対して占めるモル比で1モル%以上98モル%以下が望ましく、より望ましくは5モル%以上95モル%以下である。
【0034】
コア粒子の樹脂の重量平均分子量としては、1000以上100万以下が望ましく、より望ましくは1万以上20万以下である。
コア粒子の樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0035】
−着色剤−
着色剤としては、有機若しくは無機の顔料や、油溶性染料等が挙げられ、例えば、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、着色剤としては、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.Iピグメント・レッド257C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして例示される。これらの着色剤は、表面に親水性処理や疎水性処理をしてもよい。
【0036】
着色剤の配合量としては、コア粒子の樹脂に対して5質量%以上99質量%以下が望ましく、望ましくは20質量%以上70質量%以下である。
【0037】
−その他の配合材料−
コア粒子には、その他の配合材料を含んでいてもよい。
その他配合材料としては、例えば帯電制御材料、磁性材料が挙げられる。
帯電制御材料としては、電子写真用トナー材料に使用される公知のものが使用でき、例えば、セチルピリジルクロライド、BONTRON P−51、BONTRON P−53、BONTRON E−84、BONTRON E−81(以上、オリエント化学工業社製)等の第4級アンモニウム塩、サリチル酸系金属錯体、フェノール系縮合物、テトラフェニル系化合物、酸化金属粒子、各種カップリング剤により表面処理された酸化金属粒子を挙げられる。
【0038】
磁性材料としては、必要に応じてカラーコートした無機磁性材料や有機磁性材料を使用する。また、透明な磁性材料、特に、透明有機磁性材料は着色顔料の発色を阻害し難く、比重も無機磁性材料に比べて小さく、より望ましい。
着色した磁性材料(カラーコートした材料)として、例えば、特開2003−131420公報記載の小径着色磁性粉が挙げられる。核となる磁性粒子と該磁性粒子表面上に積層された着色層とを備えたものが用いられる。そして、着色層としては、顔料等により磁性粉を不透過に着色する等選定して差し支えないが、例えば光干渉薄膜を用いるのが好ましい。この光干渉薄膜とは、SiO
2やTiO
2等の無彩色材料を光の波長と同等な厚みを有する薄膜にしたものであり、薄膜内の光干渉により光の波長を選択的に反射するものである。
【0039】
−コア粒子の好適な構成−
以上説明したコア粒子は、コア粒子の樹脂として、窒素含有基(例えばアミノ基、アミド基)及びヒドロキシル基の少なくとも一方を有する樹脂を含む構成が好適である。この樹脂を適用すると、特定高分子の均一な被覆又は付着が実現され易くなる。
この樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル樹脂、ヒドロキシアルキル‐アンモニウム樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミノ樹脂(例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等)等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0040】
(特定高分子)
特定高分子は、一般式(I)で示される反応性化合物を少なくとも重合成分とする高分子である。特に、特定高分子は、一般式(I)で示される反応性化合物とシリコーン鎖又はアルキル鎖を持つ反応性化合物とを少なくとも重合成分とする高分子であることがよい。
特定高分子の重合成分としては、その他、帯電性基を持つ反応性化合物、帯電性基を持たない反応性化合物、反応性基(架橋性基)を持つ反応性化合物等の他の重合成分も挙げられる。
【0041】
ここで、特に、他の重合成分として、ヒドロキシル基を持つ反応性化合物を用いると、逆極性の電気泳動粒子の発生が低減される点で好適である。
また、他の重合成分として、フッ素基を持つ反応性化合物を用いると、コア粒子の表面への特定高分子の均一な被覆又は付着が実現され易くなる点で好適である。加えて、フッ素基を持つ反応性化合物は、一般式(I)で示される反応性化合物の重合成分が、電気泳動粒子の外側へ配向し易くなる点、及び電気泳動粒子間の凝集が抑制される点でも好適である。
【0042】
−一般式(I)で示される反応性化合物−
一般式(I)で示される反応性化合物は、下記式で示される重合性単量体である。
【0044】
一般式(I)中、Raは、水素原子、又はメチル基を示す。Xは、置換又は未置換の2価の炭化水素基を示す。Yは、置換又は未置換の2価の炭化水素基を示す。Zは、水素原子、又は置換若しくは未置換の1価の炭化水素基を示す。
【0045】
Xが示す2価の炭化水素基としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、又はこれらを組み合わせた基が挙げられる。
2価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、例えば、炭素数1以上50以下(望ましくは2以上20以下)の基が挙げられる。具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソペンチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、エチルへキシレン基、イソノニレン基、デシレン基、ペンタデカニレン基、イコサニレン基、テトラコンテニレン基等が挙げられる。
2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数5以上20以下(望ましくは5以上12以下)の基が挙げられる。具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキレン基、シクロヘプチレン基、シクロペンテニレン基、シクロウンデカニレン基、シクロドデカニレン基、シクロイコサニレン基等が挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6以上22以下(望ましくは6以上14以下)の基が挙げられる。具体的には、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
Xが示す2価の炭化水素基に置換する置換基としては、例えば、ハロゲン基、水酸基、アミノ基、アルキル基等が挙げられる。
【0046】
Yが示す2価の炭化水素基としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、又はこれらを組み合わせた基が挙げられる。Yが示す炭化水素基は、Xが示す2価の炭化水素基と同様の炭化水素基が挙げられる。また、Yが示す2価の炭化水素基に置換する置換基も、Xが示す2価の炭化水素基に置換する置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0047】
Zが示す1価の炭化水素基としては、例えば、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基、又はこれらを組み合わせた基が挙げられる。
1価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、例えば、炭素数1以上40以下(望ましくは1以上22以下)の基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソペンチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、エチルへキシル基、イソノニル基、デシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、テトラコンチル基等が挙げられる。
1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数5以上12以下の基が挙げられる。具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6以上22以下(望ましくは6以上14以下)の基が挙げられる。具体的には、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ナフタセニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。
Zが示す1価の炭化水素基に置換する置換基としては、例えば、ハロゲン基、水酸基、アミノ基、アルキル基等が挙げられる。
【0048】
一般式(I)で示される反応性化合物としては、Raが水素原子又はメチル基を示し、Xがエチル基又はプロピル基を示し、Yがエチル基又はプロピル基を示し、Zが水素原子又はメチル基を示す反応性化合物が好適に挙げられる。
【0049】
以下、一般式(I)で示される反応性化合物の具体例を示すが、これに限られるわけではない。
・2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、
・2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、
・2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート、
・2−メタクリロイルオキシプロピルサクシネート
【0050】
一般式(I)で示される反応性化合物は、例えば、原料として、(メタ)アクリル酸とジオールとジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとの反応させることで合成される。
【0051】
−シリコーン鎖又はアルキル鎖を持つ反応性化合物−
・シリコーン鎖を持つ反応性化合物
シリコーン鎖を持つ反応性化合物(シリコーン鎖を持つ重合性単量体)としては、直鎖型のシリコーン化合物、分岐型のシリコーン化合物等の周知の化合物が挙げられる。特に、分岐型のシリコーン化合物を適用すると、電気泳動粒子の固着が抑えられ易い点で好適である。
なお、シリコーン鎖を持つ反応性化合物は、モノマーを用いてもよいし、マクロモノマーを用いてもよい。この「マクロモノマー」とは、重合性官能基を持ったオリゴマー(重合度2以上300以下程度)あるいはポリマーの総称であり、高分子と単量体(モノマー)との両方の性質を有するものである。また、シリコーン鎖を持つ反応性化合物は単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
【0052】
直鎖型のシリコーン化合物としては、例えば、片末端に(メタ)アクリレート基を持ったジメチルシリコーン化合物(下記構造式(1)で表されるシリコーン化合物。例えば、JNC社製:サイラプレーン:FM−0711,FM−0721,FM−0725等、信越化学工業社製:X−22−174DX,X−22−2426,X−22−2475等)が挙げられる。
分岐型のシリコーン化合物としては、例えば、下記構造式(2)〜(7)で表されるシリコーン化合物等が挙げられる。
【0054】
構造式(1)中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。R
1’は、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。mは自然数(例えば1以上1000以下、望ましくは3以上100以下)を表す。xは1以上3以下の整数を示す。
【0058】
構造式(2)、(3)、(5)、(6)、(7)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
9及びR
10はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、又は炭素数1以上4以下のフルオロアルキル基を表す。R
8は、水素原子、又はメチル基を表す。p、q及びrはそれぞれ独立に、1以上1000以下の整数を表す。xは、1以上3以下の整数を表す。
【0059】
構造式(4)中、R
1’は、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。mは自然数(例えば1以上1000以下、望ましくは3以上100以下)を表す。xは1以上3以下の整数を示す。
【0060】
構造式(2)及び(5)で表されるシリコーン化合物は、R
1及びR
5がブチル基で、R
2、R
3、R
4、R
6及びR
7がメチル基で、R
8がメチル基で、p及びqがそれぞれ独立に1以上5以下の整数で、xが1以上3以下の整数である態様が望ましい。
【0061】
構造式(3)及び(6)で表されるシリコーン化合物は、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
9及びR
10がメチル基で、R
8が水素原子又はメチル基で、p、q及びrがそれぞれ独立に1以上3以下の整数で、xが1以上3以下の整数である態様が望ましい。
【0062】
構造式(7)で表されるシリコーン化合物は、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
9及びR
10がメチル基で、R
8が水素原子又はメチル基で、p及びqがそれぞれ独立に1以上5以下の整数で、xが1以上3以下の整数である態様が望ましい。
【0063】
構造式(2)で表されるシリコーン化合物としては、例えば、Gelest社製のMCS−M11、MFS−M15等が挙げられる。構造式(3)で表されるシリコーン化合物としては、例えば、Gelest社製のRTT−1011、信越化学工業社製のX22−2404等が挙げられる。構造式(4)で表されるシリコーン化合物としては、例えば、Gelest社製のMCR−V21等が挙げられる。構造式(5)で表されるシリコーン化合物としては、例えば、Gelest社製のMCS−V12等が挙げられる。構造式(6)で表されるシリコーン化合物としては、例えば、Gelest社製のVTT−106等が挙げられる。構造式(7)で表されるシリコーン化合物としては、例えば、Gelest社製のRMS−044、RMS−033、RMS−083等が挙げられる。以下にこれらのシリコーン化合物の代表的な構造式を示す。
【0065】
MCS−M11は、上記の構造式においてm及びnがそれぞれ独立に2以上4以下の整数であり、その分子量が800以上1000以下である。
【0067】
RTT−1011は、上記の構造式で表わされる化合物である。
【0069】
X22−2404は、上記の構造式で表わされる化合物である。
【0071】
MCR−V21は、上記の構造式においてmが72以上85以下の整数であり、その分子量が5500以上6500以下である。
【0073】
MCS−V12は、上記の構造式においてm及びnが6以上10以下の整数であり、その分子量が1200以上1400以下である。
【0075】
VTT−106は、上記の構造式で表わされる化合物である。
【0076】
・アルキル鎖を持つ反応性化合物
アルキル鎖を持つ反応性化合物(アルキル鎖を持つ重合性単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。中でも、長鎖アルキル鎖、具体的には例えば、炭素数4以上30以下のアルキル鎖を持つ(メタ)アクリル酸エステルが望ましい。
【0077】
−帯電基を持つ反応性化合物−
帯電基を持つ反応性化合物(帯電基を持つ重合性単量体)は、例えば、帯電性基(例えば極性基;分極性の官能基)として、塩基又は酸基を有する反応性化合物が挙げられる。
帯電性基としての塩基(以下、カチオン性基)は、例えば、アミノ基、4級アンモニウム基が挙げられる(これら基の塩も含む)。これらカチオン性基は、例えば、粒子に正帯電極性を付与する傾向がある。
帯電性基としての酸基(以下、アニオン性基)は、例えば、フェノール基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基及びテトラフェニルボロン基が挙げられる(これら基の塩も含む)。これらアニオン性基は、例えば、粒子に負帯電極性を付与する傾向がある。
帯電性基としては、その他、フッ素基、フェニル基(特にフェノキシ基)、ヒドロキシル基等も挙げられる。
ここで、本実施形態に係る電気泳動粒子は、負帯電性の電気泳動粒子であることがよいことから、負帯電極性を付与する傾向がある帯電性基(例えば、アニオン性基、フッ素基、ヒドロキシル基等)を有する反応性化合物を適用することがよい。
【0078】
カチオン性基を持つ重合成分(以下、カチオン性重合成分)としては、例えば、以下のものが挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−オ クチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族アミノ基を持つ(メタ)アクリレート類;、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジオクチルアミノスチレン等の含窒素基を持つ芳香族置換エチレン系単量体類;、ビニル−N−エチル −N−フェニルアミノエチルエーテル、ビニル−N−ブチル−N−フェニルアミノエチルエーテル、トリエタノールアミンジビニルエーテル、ビニルジフェニルアミノエチルエーテル、N−ビニルヒドロキシエチルベンズアミド、m−アミノフェニルビニルエーテル等の含窒素ビニルエーテル単量体類;、ビニルアミン、N−ビニルピロール等のピロール類;、N−ビニル−2−ピロリン、N−ビニル−3−ピロリン等のピロリン類;、N−ビニルピロリジン、ビニルピロリジンアミノエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリジン類;、N−ビニル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;、N−ビニルイミダゾリン等のイミダゾリン類;、N−ビニルインドール等のインドール類;、N−ビニルインドリン等のインドリン類;、N−ビニルカルバゾール、3,6−ジブロム−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール類;、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等のピリジン類;、(メタ)アクリルピペリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン等のピペリジン類;、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン等のキノリン類;、N−ビニルピラゾール、N−ビニルピラゾリン等のピラゾール類;、2−ビニルオキサゾール等のオキサゾール類;、4−ビニルオキサジン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等のオキサジン類;などが挙げられる。
なお、カチオン性重合成分は、重合前又は重合後に4級アンモニウム塩化して塩構造を形成してもよい。4級アンモニウム塩化は、例えば、カチオン性基をアルキルハライド類やトシル酸エステル類と反応させることで実現される。
【0079】
アニオン性基を持つ重合成分(以下、アニオン性重合成分)としては、例えば、カルボン酸基を持つ重合成分、スルホン酸基を持つ重合成分、リン酸基を持つ重合成分等が挙げられる。
カルボン酸基を持つ重合成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、それらの無水物、そのモノアルキルエステルやカルボキシエチルビニルエーテル、カルボキシプロピルビニルエーテルの如きカルボキシル基を持つビニルエーテル類、及びその塩等が挙げられる。
スルホン酸基を持つ重合成分としては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリックアシッドエステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコニックアシッドエステル等及びその塩が挙げられる。また、スルホン酸基を持つ重合成分としては、その他2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸の硫酸モノエステル及びその塩も挙げられる。
リン酸基を持つ重合成分としては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
なお、アニオン性重合成分は、重合前若しくは重合後にアンモニウム塩化して塩構造を形成させてもよい。アンモニウム塩化は、例えば、アニオン性基を3級アミン類若しくは4級アンモニウムハイドロオキサイド類と反応させることで実現される。
【0080】
フッ素基を持つ重合成分としては、例えばフッ素基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、具体的には、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルトリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0081】
フェニル基(特にフェノキシ基)を持つ重合成分としては、例えば、スチレン、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
ヒドロキシル基を持つ重合成分としては、例えば、ヒドリキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、アリルアルコール、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、その他、グリシジル基を持つモノマーを共重合させたのち開環させたものや、t−ブトキシキなどを持つモノマーを重合したのち加水分解させることでOH基を導入したものも挙げられる。
【0083】
−帯電性基を持たない反応性化合物−
帯電性基を持たない反応性化合物(帯電性基を持たない重合性単量体)としては、非イオン性重合成分(ノニオン性重合成分)が挙げられ、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、ビニルカルバゾール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、等が挙げられる。
【0084】
−反応性基(架橋性基)を持つ反応性化合物−
反応性基(架橋性基)を持つ反応性化合物(反応性基(架橋性基)を持つ重合性単量体)としては、例えば、エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレート、イソシアネート基を有するイソシアネート系モノマー(例えば、昭和電工:カレンズAOI(2−イソシアナトエチルアクリラート)、カレンズMOI(2−イソシアナトエチルメタクリレート))、ブロックされたイソシアネート基を有するイソシアネート系モノマー(例えば、昭和電工:カレンズMOI−BM(メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル)、カレンズMOI−BP(2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート))等が挙げられる。
なお、ブロックされたイソシアネート基とは、例えば、イソシアネート基が置換基と反応した状態となっており、イソシアネート基が加熱によって脱離する置換基と反応し状態となっているものである。これにより、イソシアネート基の反応性が抑制され、加熱により置換基が離脱すると反応する状態となる。
なお、特定高分子の重合成分として反応性基を持つ反応性化合物を用いると、特定高分子自体が架橋した状態で、コア粒子の表面に被覆又は付着されることとなる。また、反応性基を持つ反応性化合物の当該反応性基がコア粒子の表面の官能基と結合した状態で、特定高分子がコア粒子の表面に被覆又は付着されることなる。
【0085】
−特定高分子の重合成分の比率−
一般式(I)で示される反応性化合物の共重合比は、全重合成分に対するモル比で、1%以上50%以下が望ましく、より望ましくは3%以上30%以下である。
シリコーン鎖又はアルキル鎖を持つ反応性化合物の共重合比は、全重合成分に対するモル比で、0%以上99%以下が望ましく、より望ましくは10%以上85%以下である。
帯電基を持つ反応性化合物の共重合比は、全重合成分に対するモル比で、0%以上50%以下が望ましく、より望ましくは1%以上30%以下である。
帯電基を持たない反応性化合物の共重合比は、全重合成分に対するモル比で、0%以上80%以下が望ましく、より望ましくは0%以上50%以下である。
反応性基(架橋性基)を持つ反応性化合物の共重合比は、全重合成分に対するモル比で、0%以上50%以下が望ましく、より望ましくは3%以上40%以下である。
【0086】
ここで、特に、ヒドロキシル基を持つ反応性化合物の共重合比は、全重合成分に対するモル比で、0%以上50%以下が望ましく、より望ましくは5%以上30%以下である。
一方、フッ素基を持つ反応性化合物の共重合比は、全重合成分に対するモル比で、0%以上30%以下が望ましく、より望ましくは1%以上10%以下である。
【0087】
−特定高分子の特性−
特定高分子の重量平均分子量としては、500以上100万以下が望ましく、より望ましくは1000以上100万以下である。
特定高分子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0088】
特定高分子は、コア粒子の表面に対する被覆又は付着量が、例えば、コア粒子に対して、0.00001質量%以上50質量%以下、望ましくは0.0001質量%以上10質量%以下である。
【0089】
−特定高分子の好適な構成−
以上説明した特定高分子は、
1)一般式(I)で示される反応性化合物と、シリコーン鎖又はアルキル鎖を持つ反応性化合物と、ヒドロキシル基を持つ反応性化合物と、フッ素基を持つ反応性化合物と、を共重合した共重合体、
2)一般式(I)で示される反応性化合物と、シリコーン鎖又はアルキル鎖を持つ反応性化合物と、ヒドロキシル基を持つ反応性化合物と、フェノキシ基を持つ反応性化合物と、フッ素基を持つ反応性化合物と、を共重合した共重合体、
3)一般式(I)で示される反応性化合物と、シリコーン鎖又はアルキル鎖を持つ反応性化合物と、ヒドロキシル基を持つ反応性化合物と、フェノキシ基を持つ反応性化合物と、を共重合した共重合体、
4)一般式(I)で示される反応性化合物と、シリコーン鎖又はアルキル鎖を持つ反応性化合物と、ヒドロキシル基を持つ反応性化合物と、アミノ基を持つ反応性化合物と、フッ素基を持つ反応性化合物と、を共重合した共重合体、
等が特に好適である。
【0090】
(電気泳動粒子の特性)
本実施形態に係る電気泳動粒子の平均粒径(体積平均粒径)は、例えば、0.1μm以上10μm以下であるが、用途に応じて選択され、これに限定されない。
平均粒径は、大塚電子株式会社製Photal FPAR−1000(動的光散乱式粒径分布測定装置)を用いて測定され、MARQUARDT法により解析が行われる。
【0091】
(電気泳動粒子の製造方法)
本実施形態に係る電気泳動粒子の製造方法の一例としては、例えば、次の製法が挙げられるが、これに限られるわけではない。
まず、コア粒子の樹脂、着色剤、及びその他配合材料を、第1溶媒に混合し、コア粒子の樹脂が溶解した混合液を調製する。
ここで、第1溶媒は、後述する第2溶媒(連続相を形成し得る貧溶媒)中で分散相を形成し得る良溶媒であり、第2溶媒よりも沸点が低く且つ、コア粒子の樹脂を溶解する溶媒から選択する。
第1溶媒としては、例えば、水、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0092】
次に、得られた混合液を、第2溶媒と混合し、攪拌して、第2溶媒を連続相として混合液を乳化させ、乳化液を調製する。
そして、加熱等により、乳化液中の第1溶媒を除去(乾燥)して、コア粒子の樹脂を析出させ、これらと共に着色剤及びその他配合材料を含む粒状物として、コア粒子(第2溶媒に分散されたコア粒子)を得る。
ここで、第2溶媒は、分散相となる第1溶媒に対して連続相を形成し得る貧溶媒であり、第1溶媒よりも沸点が高く且つ、コア粒子の樹脂が不溶な溶媒から選択する。
第2溶媒としては、例えば、得られる電気泳動粒子を分散させるための分散媒が挙げられる。
【0093】
次に、特定高分子を、第3溶媒に混合し、特定高分子が溶解した混合液を調整する。
ここで、第3溶媒も、第2溶媒(連続相を形成し得る貧溶媒)中で分散相を形成し得る良溶媒であり、第2溶媒よりも沸点が低く且つ、特定高分子を溶解する溶媒から選択する。また、第3溶媒は、コア粒子の樹脂が不溶な溶媒から選択することがよい。
第3溶媒としても、例えば、水、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0094】
次に、得られた混合液を、コア粒子が分散した第2溶媒と混合し、攪拌して、第2溶媒を連続相として混合液を乳化させ、乳化液を調製する。
そして、加熱等により、乳化液中の第3溶媒を除去(乾燥)して、コア粒子の表面に特定高分子を析出させ、コア粒子の表面に被覆又は付着させる。
【0095】
このようにして、コア粒子の表面に特定高分子が被覆又は付着した電気泳動粒子を得ると共に、これを含む電気泳動粒子分散液が得られる。
ここで、得られた電気泳動粒子分散液に対し、必要に応じて、例えば、分散媒(溶媒)で希釈してもよい。なお、2種以上の電気泳動粒子を含む電気泳動粒子分散液を得るためには、それぞれの分散液を作製した後、これらを混合すればよい。
【0096】
[電気泳動粒子分散液]
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液は、本実施形態に係る電気泳動粒子を含む粒子群と、粒子群を分散するための分散媒と、を備える。
【0097】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液は、負帯電性の電気泳動粒子を含む粒子群と、正帯電性の電気泳動粒子を含む粒子群と、を備えた構成であってよい。この場合、負帯電性の電気泳動粒子は、本実施形態に係る電気泳動粒子であることがよい。
【0098】
一方、正帯電性の電気泳動粒子は、例えば、コア粒子と、コア粒子の表面に被覆又は付着した高分子と、を有する構成が挙げられる。
【0099】
コア粒子は、例えば、例えば、樹脂と、着色剤と、を含んで構成される。コア粒子の構成については、本実施形態に係る電気泳動粒子で説明したコア粒子と同様の構成が挙げられる。但し、樹脂として帯電性樹脂を適用する場合、当該帯電性樹脂は、例えば、帯電性基として、粒子に正帯電極性を付与する傾向がある基(例えば、カチオン性基、フェノキシ基等)を持つ反応性化合物を少なくとも重合成分とするものがよい。
【0100】
高分子としては、例えば、帯電基を持つ反応性化合物を少なくとも重合成分とする高分子が挙げられる。但し、帯電基を持つ反応性化合物は、帯電基として、粒子に正帯電極性を付与する傾向がある基(例えば、カチオン性基、フェノキシ基等)を持つ反応性化合物を適用することがよい。特に、フェノキシ基及びアミノ基の少なくとも一方を持つ反応性化合物が望ましく、フェノキシ基を持つ反応性化合物がより望ましい。このフェノキシ基を持つ反応性化合物を適用すると、各極性の電気泳動粒子の分散安定性が向上し易くなる。
【0101】
ここで、帯電基を持つ反応性化合物として、粒子に正帯電極性を付与する傾向がある基を持つ反応性化合物以外に、ヒドロキシル基を持つ反応性化合物を用いると、逆極性の電気泳動粒子の発生が低減される点で好適である。また、帯電基を持つ反応性化合物として、粒子に正帯電極性を付与する傾向がある基を持つ反応性化合物以外に、フッ素基を持つ反応性化合物を用いると、コア粒子の表面への特定高分子の均一な被覆又は付着が実現され易くなる点で好適である。加えて、フッ素基を持つ反応性化合物は、電気泳動粒子間の凝集が抑制される点でも好適である。なお、これらヒドロキシル基又はフッ素基を持つ反応性化合物は、正帯電性を阻害しない範囲で使用することがよい。
【0102】
高分子は、必要に応じて、シリコーン鎖又はアルキル鎖を持つ反応性化合物、帯電基を持たない反応性化合物、反応性基(架橋性基)を持つ反応性化合物を共重合成分とする高分子であってもよい。
【0103】
高分子における各反応性化合物は、本実施形態に係る電気泳動粒子で説明した各反応性化合物と同様のものが挙げられる。
【0104】
なお、正帯電性の電気泳動粒子の構成は、上記構成に限られるわけではなく、周知の構成であればよい。
【0105】
分散媒としては、特に制限はないが、低誘電溶媒(例えば誘電率5.0以下、望ましくは3.0以下)が選択されることがよい。分散媒は、低誘電溶媒以外の溶媒を併用してもよいが、50体積%以上の低誘電溶媒を含むことがよい。なお、低誘電率の誘電率は、誘電率計(日本ルフト製)により求められる。
低誘電溶媒としては、例えば、パラフィン系炭化水素溶媒、シリコーンオイル、フッ素系液体など石油由来高沸点溶媒が挙げられる。
低誘電溶媒としては、例えば、電気泳動粒子の特定高分子の重合成分の種類に応じて選択されることがよい。具体的には、例えば、特定高分子の重合成分としてシリコーン鎖を持つ反応性化合物を適用する場合、分散媒としてはシリコーンオイルを選択することがよい。また、特定高分子の重合成分としてアルキル鎖を持つ反応性化合物を適用する場合、分散媒としてはパラフィン系炭化水素溶媒を選択することがよい。
但し、これに限られるわけではなく、例えば、特定高分子の重合成分としてシリコーン鎖を持つ成分を適用する場合でも、分散媒としてはパラフィン系炭化水素溶媒を選択してもよい。
【0106】
シリコーンオイルとして具体的には、シロキサン結合に炭化水素基が結合したシリコーンオイル(例えば、ジメチルシリコーンオイル、ジエチルシリコーンオイル、メチルエチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル等)が挙げられる。これらの中も、ジメチルシリコーンが特に望ましい。
【0107】
パラフィン系炭化水素溶媒としては、炭素数20以上(沸点80℃以上)のノルマルパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素が挙げられるが、安全性、揮発性等の理由から、イソパラフィンを用いることが望ましい。具体的には、シェルゾル71(シェル石油製)、アイソパーO、アイソパーH、アイソパーK、アイソパーL、アイソパーG、アイソパーM(アイソパーはエクソン社の商品名)やアイピーソルベント(出光石油化学製)等が挙げられる。
【0108】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散剤、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加してもよい。また、本実施形態に係る電気泳動粒子分散液には、帯電制御剤を添加してもよい。
【0109】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液中の電気泳動粒子の濃度は、表示特性や応答特性あるいはその用途によって種々選択されるが0.1質量%以上30質量%以下の範囲で選択されることが望ましい。色の異なった粒子を混合する場合にはその粒子総量がこの範囲であると望ましい。
【0110】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液は、電気泳動方式の表示媒体、電気泳動方式の調光媒体(調光素子)、液体現像方式電子写真システムの液体トナーなどに利用される。なお、電気泳動方式の表示媒体、電気泳動方式の調光媒体(調光素子)としては、公知である電極(基板)面の対向方向に粒子群を移動させる方式、それとは異なり電極(基板)面に沿った方向に移動させる方式(いわゆるインプレーン型素子)、又はこれらを組み合わせたハイブリッド素子がある。
なお、本実施形態に係る電気泳動粒子分散液において、電気泳動粒子として色や帯電極性の異なる複数種の粒子を混合して使用すれば、カラー表示が実現される。
【0111】
[表示媒体、表示装置]
本実施形態に係る表示媒体、及び表示装置の一例について説明する。
【0112】
図1は、本実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
図2は、本実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【0113】
本実施形態に係る表示装置10は、その表示媒体12の分散媒50と粒子群34とを含む粒子分散液として、上記本実施形態に係る電気泳動粒子分散液を適用する形態である。つまり、分散媒50に、粒子群34として本実施形態に係る電気泳動粒子を分散させた形態である。具体的には、粒子群34は、粒子群34Aと、当該粒子群34Aとは異なる色を呈し、且つ帯電極性が異なる粒子群34Bと、を有しており、そのうち、負極に帯電している粒子群(本実施形態では粒子群34A)を構成する粒子として、本実施形態に係る電気泳動粒子を適用した形態である。
【0114】
本実施形態に係る表示装置10は、
図1に示すように、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18と、を含んで構成されている。
【0115】
表示媒体12は、画像表示面とされる表示基板20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板22、これらの基板間を特定間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との基板間を複数のセルに区画する間隙部材24、各セル内に封入された粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する反射粒子群36を含んで構成されている。
【0116】
上記セルとは、表示基板20と、背面基板22と、間隙部材24と、によって囲まれた領域を示している。セル中には、分散媒50が封入されている。粒子群34は、複数の粒子から構成されており、この分散媒50中に分散され、セル内に形成された電界強度に応じて表示基板20と背面基板22との基板間を反射粒子群36の間隙を通じて移動(泳動)する。
【0117】
なお、この表示媒体12に画像を表示したときの各画素に対応するように間隙部材24を設け、各画素に対応するようにセルを形成することで、表示媒体12を、画素毎の表示を行うように構成してもよい。
【0118】
また、本実施形態では、説明を簡易化するために、1つのセルに注目した図を用いて本実施形態を説明する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0119】
まず、一対の基板について説明する。
表示基板20は、支持基板38上に、表面電極40及び表面層42を順に積層した構成となっている。背面基板22は、支持基板44上に、背面電極46及び表面層48を積層した構成となっている。
【0120】
表示基板20、又は表示基板20と背面基板22との双方は、透光性を有している。ここで、本実施形態における透光性とは、可視光の透過率が60%以上であることを示している。
【0121】
支持基板38及び支持基板44の材料としては、ガラスや、プラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0122】
表面電極40及び背面電極46の材料としては、インジウム、スズ、カドミウム、アンチモン等の酸化物、ITO等の複合酸化物、金、銀、銅、ニッケル等の金属、ポリピロールやポリチオフェン等の有機材料等が挙げられる。表面電極40及び背面電極46は、これらの単層膜、混合膜又は複合膜のいずれであってもよい。表面電極40及び背面電極46の厚さは、例えば、100Å以上2000Å以下であることがよい。背面電極46及び表面電極40は、例えば、マトリックス状、又はストライプ状に形成されていてもよい。
【0123】
また、表面電極40を支持基板38に埋め込んでもよい。また、背面電極46を支持基板44に埋め込んでもよい。この場合、支持基板38及び支持基板44の材料を粒子群34の各粒子の組成等に応じて選択する。
【0124】
なお、背面電極46及び表面電極40各々を表示基板20及び背面基板22と分離させ、表示媒体12の外部に配置してもよい。
【0125】
なお、上記では、表示基板20と背面基板22の双方に電極(表面電極40及び背面電極46)を備える場合を説明したが、何れか一方にだけ設けるようにして、アクティブマトリクス駆動させるようにしてもよい。
【0126】
また、アクティブマトリックス駆動を実施するために、支持基板38及び支持基板44は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)を備えていてもよい。TFTは表示基板ではなく背面基板22に備えることがよい。
【0127】
次に、表面層について説明する。
表面層42及び表面層48は、表面電極40及び背面電極46各々上に形成されている。表面層42及び表面層48を構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ、ポリイソシアネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、共重合ナイロン、紫外線硬化アクリル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0128】
表面層42及び表面層48は、上記樹脂と電荷輸送物質を含んで構成されていてもよく、電荷輸送性を有する自己支持性の樹脂を含んで構成されてもよい。
【0129】
次に、間隙部材について説明する。
表示基板20と背面基板22との基板間の隙を保持するための間隙部材24は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化樹脂、ゴム、金属等で構成される。
【0130】
間隙部材24は表示基板20及び背面基板22の何れか一方と一体化されてもよい。この場合には、支持基板38又は支持基板44をエッチングするエッチング処理、レーザー加工処理、予め作製した型を使用してプレス加工処理又は印刷処理等を行うことによって作製する。
この場合、間隙部材24は、表示基板20側、背面基板22側のいずれか、又は双方に作製する。
【0131】
間隙部材24は有色でも無色でもよいが、無色透明であることがよく、その場合には、例えば、ポリスチレンやポリエステルやアクリルなどの透明樹脂等で構成される。
【0132】
また、粒子状の間隙部材24もまた透明であることが望ましく、ポリスチレン、ポリエステル又はアクリル等の透明樹脂粒子の他、ガラス粒子も使用される。
なお、「透明」とは、可視光に対して、透過率60%以上有することを示している。
【0133】
次に、反射粒子群について説明する。
反射粒子群36は、粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する反射粒子から構成され、粒子群34とは異なる色を表示する反射部材として機能するものである。そして、表示基板20と背面基板22との基板間の移動を阻害することなく、移動させる空隙部材としての機能も有している。すなわち、反射粒子群36の間隙を通って、背面基板22側から表示基板20側、又は表示基板20側から背面基板22側へ粒子群34の各粒子は移動される。この反射粒子群36の色としては、例えば、背景色となるように白色又は黒色を選択することがよいが、その他の色であってもよい。また、反射粒子群36は、帯電されていない粒子群(つまり電界に応じて移動しない粒子群)であってもよいし、帯電されている粒子群(電界に応じて移動する粒子群)であってもよい。なお、本実施形態では、反射粒子群36は、帯電されていない粒子群で、白色である場合を説明するが、これに限定されることはない。
【0134】
反射粒子群36の粒子は、例えば、白色顔料(例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)を、樹脂(例えばポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド縮合物等)に分散した粒子、又は、樹脂粒子(例えば、ポリスチレン粒子、ポリビニルナフタレン粒子、ビスメラミン粒子等)が挙げられる。また、反射粒子群36の粒子として、白色以外の粒子を適用する場合、例えば、所望の色の顔料、あるいは染料を内包した前記した樹脂粒子を使用してもよい。顔料や染料は、例えばRGBやYMC色であれば、印刷インキやカラートナーに使用されている一般的な顔料又は染料が挙げられる。
【0135】
反射粒子群36を基板間へ封入するには、例えば、インクジェット法などにより行う。また、反射粒子群36を固定化する場合、例えば、反射粒子群36を封入した後、加熱(及び必要があれば加圧)して、反射粒子群36の粒子群表層を溶かすことで、粒子間隙を維持させつつ行われる。
【0136】
次に、表示媒体のその他構成について説明する。
表示媒体12における上記セルの大きさとしては、表示媒体12の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な画像を表示する表示媒体12を作製することができ、通常、表示媒体12の表示基板20の板面方向の長さが10μm以上1mm以下程度である。
【0137】
上記表示基板20及び背面基板22を、間隙部材24を介して互いに固定するには、ボルトとナットの組み合わせ、クランプ、クリップ、基板固定用の枠等の固定手段を使用する。また、接着剤、熱溶融、超音波接合等の固定手段も使用してもよい。
【0138】
このように構成される表示媒体12は、例えば、画像の保存及び書換えがなされる掲示板、回覧版、電子黒板、広告、看板、点滅標識、電子ペーパー、電子新聞、電子書籍、及び複写機・プリンタと共用するドキュメントシート等に使用する。
【0139】
次に、表示装置について説明する。
上記に示したように、本実施形態に係る表示装置10は、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18とを含んで構成されている(
図1参照)。
【0140】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、表面電極40及び背面電極46の双方が、電圧印加部16に電気的に接続されている場合を説明するが、表面電極40及び背面電極46の一方が、接地されており、他方が電圧印加部16に接続された構成であってもよい。
【0141】
電圧印加部16は、制御部18に信号授受されるように接続されている。
【0142】
制御部18は、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、装置全体を制御する制御プログラム等の各種プログラムが予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、を含むマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。
【0143】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部18の制御に応じた電圧を表面電極40及び背面電極46間に印加する
【0144】
次に、表示装置10の作用を説明する。この作用は制御部18の動作に従って説明する。
ここで、表示媒体12に封入されている粒子群34のうち、粒子群34Bが負極性に帯電されており、粒子群34Bが正極性に帯電されている場合を説明する。また、分散媒50は透明であり、反射粒子群36が白色であるものとして説明する。すなわち、本実施形態では、表示媒体12は、粒子群34A及び粒子群34Bの移動によって、それぞれの呈する色を表示し、その背景色として白色を表示する場合を説明する。
【0145】
まず、電圧を、特定時間、表面電極40が負極となり背面電極46が正極となるように印加することを示す初期動作信号を、電圧印加部16へ出力する。基板間に負極で且つ濃度変動が終了する閾値電圧以上の電圧が印加されると、負極に帯電している粒子群34Aを構成する粒子が背面基板22側へと移動して、背面基板22に到る(
図2(A)参照)。一方で、正極に帯電している粒子群34Bを構成する粒子が表示基板20側へと移動して、表示基板20に至る(
図2(A)参照)。
このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、反射粒子群36の色としての白色を背景色とし、粒子群34Bの呈する色が視認される。なお、粒子群34Aは、反射粒子群36に隠蔽され、視認され難くなる。
【0146】
このT1時間は、初期動作における電圧印加における電圧印加時間を示す情報として、予め制御部18内の図示を省略するROM等のメモリ等に記憶しておけばよい。そして、処理実行のときに、この特定時間を示す情報を読み取るようにすればよい。
【0147】
次に、表面電極40と背面電極46との電極間に、基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を正極とし背面電極46を負極として電圧を印加すると、負極に帯電している粒子群34Aは表示基板20側へと移動し、表示基板20側に至る(
図2(B)参照)。一方で、正極に帯電している粒子群34Bを構成する粒子が背面基板22側へと移動して、背面基板22に至る(
図2(B)参照)。
このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、反射粒子群36の色としての白色を背景色とし、粒子群34Aの呈する色が視認される。なお、粒子群34Bは、反射粒子群36に隠蔽され、視認され難くなる。
【0148】
このように、本実施形態に係る表示装置10では、粒子群34(粒子群34A、粒子群34B)が表示基板20又は背面基板22に到達して、付着することで表示が行われる。
【0149】
なお、本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、表示基板20に表面電極40、背面基板22に背面電極46を設けて当該電極間(即ち基板間)に電圧を印加して、当該基板間を粒子群34を移動(泳動)させて表示させる形態を説明したが、これに限られず、電極間を移動する形態、例えば、表示基板20に表面電極40を設ける一方で、間隙部材に電極を設けて、当該電極間に電圧を印加して、表示基板20と間隙部材との間に粒子群34を移動させて表示させる形態であってもよい。
【0150】
また、本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、表示基板20に表面電極40、背面基板22に背面電極46を設けて、表示媒体12を構成した形態を説明したが、各電極を表示媒体12の外部に配した形態であってもよい。
【0151】
また、本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、粒子群34として2種種類(2色)の粒子群(34A、34B)を適用した形態を説明したが、1種類(1色)の粒子群を適用した形態であってもよいし、3種類(3色)以上の粒子群を適用した形態であってもよい。
【実施例】
【0152】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、特に断りがない限り、「部」「%」は、「質量部」「質量%」を意味する。
【0153】
[負帯電性のマゼンタ粒子の作製]
(マゼンタ粒子M1の作製)
1)コア粒子の作製−液中乾燥法−
コア粒子の樹脂(水溶性樹脂)としてスチレンアクリル系樹脂「X345(星光PMC社製)」6.48gと、メラミン樹脂「MX035(三和ケミカル社製)」0.72g(全樹脂の10質量%相当)と、マゼンタ顔料「Red3090(山陽色素株式会社製)」2.0gと、蒸留水24.1gと、分散混合し分散相を調製した。
次に、界面活性剤「KF−6028(信越化学工業社製)」3.5gをシリコーンオイル「KF−96L−2cs(信越化学工業社製)」に溶解して連続相350gを調整し、これに上記分散相50gを加えて内歯式卓上分散機ROBOMICS(特殊機化工業社製)を用いて、回転数9000rpm、温度30℃で10分間乳化を行った。
その結果、乳化液滴径が約1.6μmの乳化液を得た。これをロータリーエバポレーターにより真空度20mbar、水浴温度50℃で12時間乾燥を行って、粒子分散液を得た。
更に、この粒子分散液を遠心分離器による沈降工程と、超音波洗浄機による再分散工程を3回繰り返し、過剰な界面活性剤「KF−6028(信越化学工業社製)」を除き、濃縮して、コア粒子6gを得た。遠心分離の条件は6000rpmで15分とした。
得られたコア粒子をSEM観察して、画像解析した結果、平均粒径0.6μmで、C.V.値(単分散性を示す指標:Coefficient of Variation:CV[%]=(σ/D)×100(σ:標準偏差、D:平均粒径))33%であった。
【0154】
2)表面処理
シリコーンマクロモノマー「サイラプレーンFM−0721(JNC社製)」15gと、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート「SA(新中村化学社製)」2.3gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8gと、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート3.0gと、をイソプロピルアルコール120gに混合して溶解した。これに重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))0.5gを溶解し、窒素フロー下で60℃、6時間重合を行なって、メタノールにて精製し、50℃8時間減圧乾燥させて、表面処理用の高分子を生成した。
この高分子0.5gをノルマルブチルアルコール14.5gに溶解させ、表面処理溶液を得た。
次に、上記コア粒子1gを200mLのナスフラスコに取り、シリコーンオイル「KF−96L−2cs(信越化学工業社製)」29gを加え、25℃で超音波を加えながら撹拌分散して、コア粒子分散液を得た。これに、上記表面処理溶液10gを投入した。表面処理溶液の投入速度は0.5mL/sで行った。
次に、エバポレーターにて、50℃で減圧乾燥させ、コア粒子分散液からノルマルブチルアルコールを除去し、高分子がコア粒子の表面に析出した粒状物を得た。この粒状物が分散した粒子分散液を撹拌しながらオイルバス中で、100℃で1時間加温し、続けて130℃で1.5時間の加熱を行った。
そして、冷却後、この粒子分散液に対して、遠心分離器による沈降工程と、超音波洗浄機による再分散工程を3回繰り返し、過剰な高分子を除去した。得られた粒子は0.7gであった。
【0155】
以上の工程を経て、マゼンタ粒子M1得た。
【0156】
(マゼンタ粒子M2〜M10、CM1〜CM2の作製)
表面処理用の高分子の生成において、表1に従って、重合成分及びその量、重合開始剤及びその量、並びに、溶媒及びその量を変更した以外は、マゼンタ粒子M1と同様にして、マゼンタ粒子M2〜M10、CM1〜CM2を得た。
但し、マゼンタ粒子CM2の作製においては、窒素フロー下で70℃、6時間重合を行なって表面処理用の高分子を生成した。
【0157】
[正帯電性のシアン粒子の作製]
(シアン粒子C1の作製)
1)コア粒子の作製−液中乾燥法−
コア粒子の樹脂(水溶性樹脂)としてスチレンアクリル系樹脂「X345(星光PMC社製)」6.48gと、メラミン樹脂「MX035(三和ケミカル社製)」0.72g(全樹脂の10質量%相当)と、シアン顔料「PB15:3」を26重量%含む水分散液「Emacol SF Blue H524F(三洋色素社製)」18.8gと、蒸留水24.1gと、を60℃に加温しながら混合し、インク固形分濃度が15%、乾燥後の顔料濃度が50%となるように分散相を調製した。
次に、界面活性剤「KF−6028(信越化学工業社製)」3.5gをシリコーンオイ ル「KF−96L−2cs(信越化学工業社製)」に溶解して連続相350gを調整し、これに上記分散相50gを加えて内歯式卓上分散機ROBOMICS(特殊機化工業社製)を用いて、回転数8000rpm、温度30℃で10分間乳化を行った。
その結果、乳化液滴径が約2μmの乳化液を得た。これをロータリーエバポレーターに より真空度20mbar、水浴温度50℃で12時間乾燥を行って、粒子分散液を得た。
更に、この粒子分散液を遠心分離器による沈降工程と、超音波洗浄機による再分散工程を3回繰り返し、過剰な界面活性剤「KF−6028(信越化学工業社製)」を除き、濃縮して、コア粒子6gを得た。遠心分離の条件は6000rpmで15分とした。
得られたコア粒子をSEM観察して、画像解析した結果、平均粒径0.6μmで、C.V.値(単分散性を示す指標:Coefficient of Variation:CV[%]=(σ/D)×100(σ:標準偏差、D:平均粒径))30%であった。
【0158】
2)表面処理
シリコーンマクロモノマー「サイラプレーンFM−0721(JNC社製)」15gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8gと、フェノキシエチレングリコールアクリレート「NKエステルAMP−10G(新中村化学社製)」2.3gと、ブロックイソシアネート基を含むモノマー「カレンズMOI−BP(昭和電工社製)」4.4gと、をイソプロピルアルコール150gに混合して溶解した。これに重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))0.7gを溶解し、窒素フロー下で60℃、6時間重合を行なった後、メタノールにて精製し、50℃8時間減圧乾燥させて、表面処理用の高分子を生成した。
この高分子0.5gをノルマルブチルアルコール14.5gに溶解させ、表面処理溶液を得た。
次に、上記コア粒子1gを200mLのナスフラスコに取り、シリコーンオイル「KF −96L−2cs(信越化学工業社製)」を29g加え、25℃で超音波を加えながら撹拌分散して、コア粒子分散液を得た。これに、上記表面処理溶液6gを投入した。表面処理溶液の投入速度は0.5mL/sで行った。
次に、エバポレーターにて、50℃で、減圧乾燥させ、コア粒子分散液からノルマルブチルアルコールを除去し、高分子がコア粒子の表面に析出した粒状物を得た。この粒状物が分散した粒子分散液を撹拌しながらオイルバス中で、100℃で1時間加温し、続けて130℃で1.5時間の加熱を行い、ブロックイソシアネート基のブロック基を脱離させ、高分子とコア粒子中のメラミン樹脂と反応を行った。
次に、冷却後、この粒子分散液に対して、遠心分離器による沈降工程と、超音波洗 浄機による再分散工程を3回繰り返し、過剰な高分子を除去した。最終的に得られた粒子は0.7gであった。
【0159】
以上の工程を経て、シアン粒子C1得た。
【0160】
(シアン粒子C2〜C5の作製)
表面処理用の高分子の生成において、表2に従って、重合成分及びその量、重合開始剤及びその量、並びに、溶媒及びその量を変更した以外は、シアン粒子M1と同様にして、シアン粒子C2〜C5を得た。
【0161】
[白色粒子の作製]
(白色粒子W1の作製)
還流冷却管を取り付けた500ml三口フラスコに、2−ビニルナフタレン(新日鉄住金化学社製)45gと、シリコーンマクロモノマー「サイラプレーンFM−0721(JNC社製)」45gと、シリコーンオイル「KF−96L−1cs(信越化学工業社製)」240gと、を加えた。65℃に昇温した後,窒素ガスによるバブリングを15分間行い ,開始剤として過酸化ラウロイル(アルドリッチ社製)2.3gを投入した。窒素雰囲 気下にて65℃、24時間の重合を行った。
得られた粒子懸濁液を8,000rpmで10分間遠心分離し,上澄み液を除去した後 尾,シリコーンオイル「KF−96L−2cs(信越化学工業社製)」を用いて再分散させる洗浄工程を3回繰り返した。最後にシリコーンオイルにて粒子固形分濃度40質量%に調製して、白色粒子W1の分散液を得た。白色粒子W1の体積平均粒径は450nmであった。
【0162】
[実施例1〜14、比較例1〜2]
(電気泳動粒子分散液の調製)
表3に従った組み合わせで、白色粒子25質量%と、マゼンタ粒子0.8質量%と、青色粒子0.8質量%となるように、各粒子を分散媒としてのシリコーンオイル(信越化学社製:KF−96L−2cs)に混合して、各電気泳動粒子分散液を調製した。
【0163】
(表示媒体の作製)
上記に調整した各電気泳動粒子分散液を、インジウムスズ酸化物(ITO)電極が形成された一対のガラス基板間(一対のガラス基板間に間隙部材として厚み50μmのテフロン(登録商標)シート)を介在させたセル内)に封入して、各表示媒体を作製した。
【0164】
[評価]
得られた表示媒体について、マゼンタ表示時及びシアン表示時の各々色の鮮明度、及び表示安定性ついて評価を行った。
その他、電気泳動粒子分散液の粒子の分散性についても評価した。
【0165】
(鮮明度の評価)
上記に作製した表示媒体の各々の電極基板間(基板間距離:50μm)に、電圧30VのDC(直流)を5秒間印加し、正負を入れ替えて粒子を移動させた。そして、表示側の電極に正極の電圧を20Vで3秒間印加したとき、マゼンタ粒子が表示側のガラス基板に移動してマゼンタ色が表示された。
一方、表示側の電極に負極の電圧を20Vで3秒間印加したとき、シアン粒子が表示側のガラス基板に移動してシアン色が表示された。
【0166】
−マゼンタ色の鮮明度−
マゼンタ色が表示された状態の表示媒体について、X−Rite社製のX939を用いて、表示基板側の表示色を測定することによって、マゼンタ色の鮮明度(M濃度)を評価した。評価基準は以下とした。評価結果を表3に示した。
G1:M濃度が0.8以上である場合。
G2:M濃度が0.6以上0.8未満である場合。
G3:M濃度が0.6未満である場合(又は色分離不良の場合)
【0167】
−シアン色の鮮明度−
シアン色が表示された状態の表示媒体について、X−Rite社製のX939を用いて、表示基板側の表示色を測定することによって、シアン色の鮮明度(C濃度)を評価した。評価基準は以下とした。評価結果を表3に示した。
G1:C濃度が0.8以上である場合。
G2:C濃度が0.6以上0.8未満である場合。
G3:C濃度が0.6未満である場合(又は色分離不良の場合)
【0168】
(表示安定性)
上記に作製した表示媒体の各々の電極基板間(基板間距離:50μm)に、電圧30VのDC(直流)を正負を入れ替えて印加し、マゼンタ色表示、シアン色表示を繰り返し表示して、200回表示毎にマゼンタ色及びシアン色の濃度をX−Rite社製のX−Rite939を用いて測定することによって測定した。
そして、各表示毎に測定した濃度について1回目の濃度に対する濃度変化を算出し、マゼンタ色及びシアン色の濃度のいずれかの濃度変化が0.2となったときの表示回数を調べた。評価基準は以下とした。評価結果を表3に示した。
G1:表示回数が10000回以上である場合
G2:表示回数が5000回以上10000回未満である場合
G3:表示回数が3000回以上5000回未満である場合
G4:表示回数が3000回未満である場合
【0169】
(粒子分散性の評価)
調製した電気泳動粒子分散液を、2mΦのガラス管に高さ50mmになるよう封入し、3日間室温(25℃)で静置する。静置後、ガラス管中に封入された電気泳動粒子分散液の着色していない上澄み液の高さをミリメートル単位で測定した。評価基準は以下とした。評価結果を表3に示した。
G1:上澄み液の高さが20mm未満である場合
G2:上澄み液の高さが20以上40mm未満である場合
G3:上澄み液の高さが40mm以上である場合
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、表示安定性について良好であることがわかる。これにより、本実施例は、比較例に比べ、マゼンタ粒子、及びシアン粒子の双方が高い帯電量を有していることがわかる。
また、本実施例では、比較例に比べ、良好な表示安定性を示した上で、各色の鮮明度、及び粒子の分散性についても良好であることがわかる。
【0174】
なお、表1〜表2中の略称等の詳細は、以下の通りである。
−重合成分−
・FM−0721: 「サイラプレーンFM−0721(JNC社製)」;重量平均分子量Mw=5000
・FM−0725:「サイラプレーンFM−0725(JNC社製)」;重量平均分子量10000
・SA: 2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート「SA(新中村化学社製)」、一般式(I)[Ra=メチル基、X=−CH
2CH
2−、Y=−CH
2CH
2−、Z=水素原子]
・A−SA: 2−アクリロイルオキシエチルサクシネート「A−SA(新中村化学社製)」;、一般式(I)[Ra=水素原子、X=−CH
2CH
2−、Y=−CH
2CH
2−、Z=水素原子]
・CB−1: 2−メタクリロイロキシエチルフタル酸「CB−1(新中村化学社製)」;一般式(I)[Ra=メチル基、X=−CH
2CH
2−、Y=フェニレン基、Z=水素原子]
・MAA: メタクリル酸;ヒドロキシル基を持つ反応性化合物
・HEMA: 2−ヒドロキシエチルメタクリレート;ヒドロキシル基を持つ反応性化合物
・OFPMA: 1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート;フッ素基を持つ異反応性化合物
・AMP−10G: フェノキシエチレングリコールアクリレート「NKエステルAMP−10G(新中村化学社製)」;フェノキシ基を持つ反応性化合物
・VSA−H: ビニルスルホン酸「VSA−H(旭日化成ファインケム社製)」;スルホニル基を持つ反応性化合物
・MOI−BP: 2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート「カレンズMOI−BP(昭和電工社製)」;ブロック化されたイソシアネート基を有する反応性化合物
【0175】
−重合開始剤−
・AIBIN: (2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))
【0176】
−溶媒−
・IPA: イソプロピルアルコール