(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態のロック装置12を取り付けた開閉部材10を説明するための図である。
図1(a)は、開閉部材10の外側を示す正面図であり、
図1(b)は、開閉部材10の内側を示す裏面図である。なお、
図1(b)にはロック装置12を覆う開閉部材10の内側カバーを省いて図示する。開閉部材10は2枚の板状部材を貼り合わせて形成される。ロック装置12の一部は開閉部材10の内側に配設される。
【0012】
開閉部材10は、たとえば車両のグローブボックス用のリッドである。グローブボックスはダッシュボードに設けられた収納空間である凹所を有する被取付部材であり、開閉部材10は凹所の開口を開閉する蓋として機能する。ロック装置12は、開閉部材10に取り付けられ、開閉部材10をロック状態にして閉状態を保持できる。ロック装置12は、第1ロッド26および第2ロッド28からなるロック部材と、ハウジングユニット20と、キーシリンダ22とを有する。
【0013】
開閉部材10は、長方形状に凹むように形成された凹部10aと、凹部10a内に形成された取付孔10bを有する。取付孔10bの縁にハウジングユニット20が取り付けられる。
【0014】
図1(a)に示すように開閉部材10の外側にハウジングユニット20の操作部材40が露出する。ユーザは操作部材40を引くことでロック解除をする。操作部材40にはキーシリンダ22が埋め込まれる。
【0015】
図1(b)に示すように第1ロッド26の一端はロータ部材34に連結され、他端側は第1リテーナ30に摺動可能に支持され、他端側の先端26aは第1リテーナ30から突き出る。第2ロッド28の一端はロータ部材34に連結され、他端側は第2リテーナ32に摺動可能に支持され、他端側の先端28aは第2リテーナ32から突き出る。
【0016】
第1ロッド26の先端26aおよび第2ロッド28の先端28aはそれぞれ、グローブボックスに形成されたロック用孔に挿入されて、開閉部材10をロック状態にする。ロータ部材34が回転すると、第1ロッド26および第2ロッド28も連動して軸方向に移動する。第2ロッド28は、段状に形成される。キーシリンダ22は、キーをかけると、すなわちオンするとロータ部材34の回転を規制して、ロック部材の移動を規制する。キーシリンダ22は、オフされるとロータ部材34を回転可能な状態にする。
【0017】
図2は、ロック装置12および開閉部材10の組み立て図である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0018】
キーシリンダ22が取り付けられたハウジングユニット20は、開閉部材10の外側から取付孔10bへ取り付けられる。ハウジングユニット20の第1取付部70および第2取付部71によって取付孔10bの縁へ係止する。ハウジングユニット20を一体化することで、取付孔10bへの取り付けが容易である。
【0019】
開閉部材10の内側に配置された第1ロッド26および第2ロッド28と、取付孔10bから出たロータ部材34が連結される。ロータ部材34の突部82は第1ロッド26の窪み部26bに連結され、突部84は第2ロッド28の窪み部28bに連結される。ハウジングユニット20について以下に詳細に説明する。
【0020】
図3は、ハウジングユニット20の組み立て図である。また、
図4(a)は、ハウジングユニット20の正面図であり、
図4(b)は、ハウジングユニット20の軸方向の側面図である。また、
図5(a)は、ハウジングユニット20の裏面図であり、
図5(b)は、ハウジングユニット20の側面図である。なお、軸方向とは操作部材40の回動軸の向きをいう。
【0021】
ハウジングユニット20は、アッパー部材42と、ロア部材36とを有する。ロア部材36は、開閉部材10に取り付けられ、アッパー部材42はロア部材36に取り付けられる。アッパー部材42はロア部材36から取り外し可能に設けられる。アッパー部材42は、アッパー本体部材38、操作部材40、付勢部材44およびクッション部材46を有する。
【0022】
操作部材40は、シリンダ孔50、シリンダ保持部52、軸支部54、取っ手部55、カバー部56、伝達部58およびバネ端支持部59を有する。操作部材40は、外部に露出し、ユーザによる操作に応じてロック部材のロック状態を解除させる。
図4(a)に示すように操作部材40の中央に筒状のシリンダ孔50が形成される。シリンダ孔50にキーシリンダ22が挿入されると、シリンダ孔50の径方向内向きに突出した複数のシリンダ保持部52によりキーシリンダ22の外周面が保持される。このようにキーシリンダ22はシリンダ孔50に収容され、固定される。キーシリンダ22はシリンダ保持部52に強固に嵌合され、操作部材40から取り外せない態様であってよい。
【0023】
板状のカバー部56は、操作部材40の裏面から立設するように形成される。カバー部56は所定の閉位置にて結合爪64を覆う。操作部材40の一端側に軸支部54が形成され、他端側にユーザが把持可能な取っ手部55が形成される。カバー部56は、シリンダ孔50より取っ手部55側に設けられる。
【0024】
伝達部58は、操作部材40の軸支部54側の裏面から立設するように形成される。伝達部58は、ロータ部材34の突部83に当接して、操作部材40の回転に応じてロータ部材34を回転させる。
【0025】
軸支部54は、操作部材40の側面に円弧状でかつ溝状に形成される。なお、軸支部54は貫通した溝に形成される。軸支部54の円弧は、操作部材40の回動軌跡に沿う。
図4(b)に示すように軸支部54はアッパー本体部材38の軸受部62に連結される。これにより操作部材40はアッパー本体部材38に回動可能に支持される。軸支部54を円弧状に形成することで、回動軸の中心を操作部材40の外部に設けることができる。これにより、回動軸の中心を設けた操作部材と比較して、伝達部58の移動軌跡を減らすことなく軸支部54を小さくでき、操作部材40を薄くできる。つまり、回動軸の中心を操作部材40の外部の離間した位置に設けることで、操作部材40の回転動作に応じた伝達部58の移動軌跡を大きくすることができる。
【0026】
付勢部材44の一端はバネ端支持部59に支持され、付勢部材44の他端はアッパー本体部材38に支持され、付勢部材44は操作部材40を閉じる方向に付勢する。クッション部材46は、緩衝部材であり、アッパー本体部材38に固定される。クッション部材46は、付勢部材44により閉じられた操作部材40がアッパー本体部材38に当接する際の衝撃を和らげる。
【0027】
アッパー本体部材38は、貫通孔60、軸受部62、結合爪64、第1引掛部66、第2引掛部68および挿入孔67を有する。アッパー本体部材38は、ロア部材36に結合され、操作部材40の台座として機能する。アッパー本体部材38の中央にはシリンダ孔50およびキーシリンダ22を受け入れる貫通孔60が設けられる。軸受部62は円弧状に形成され、アッパー本体部材38の側面から軸方向に突出する円弧状突部である。
【0028】
アッパー本体部材38の一端側には第1引掛部66および第2引掛部68が形成され、他端側には2つの結合爪64が形成される。結合爪64は、撓み可能に形成される弾性体である一方、第2引掛部68は剛体である。第1引掛部66も剛体である。第1引掛部66および第2引掛部68は、結合爪64より剛性は高い。挿入孔67は、操作部材40の伝達部58が挿入される。
【0029】
ロア部材36は、ロア本体部材37、ねじりバネ部材48およびロータ部材34を有する。ロア本体部材37は、第1取付部70、第2取付部71、ロータ取付孔72、バネ端受け部74、結合孔76、引掛用孔77および引掛用孔78を有する。
【0030】
第1取付部70および第2取付部71は、ロア本体部材37の側面に形成され、開閉部材10の取付孔10bに取り付けるために用いる。
図5(b)に示すように第1取付部70は取付孔10bに係止する。
【0031】
ロータ取付孔72には、ロータ部材34の一部が挿入され、中心軸支部81の先端が係合して、円盤形状のロータ部材34が取り付けられる。ロータ取付孔72内のバネ端受け部74には、ねじりバネ部材48の一端が支持される。ねじりバネ部材48の他端はロータ部材34の中心軸支部81に支持される。ねじりバネ部材48は、ロータ部材34を所定の回転方向に付勢する。所定の回転方向とは第1ロッド26および第2ロッド28を外側に張り出す方向、つまりロックさせる方向である。
【0032】
このように、アッパー部材42およびロア部材36が構成される。
図5(b)に示すロア部材36の引掛用孔77および引掛用孔78に、第1引掛部66および第2引掛部68を引っ掛けた後、結合爪64を撓ませて結合孔76に係止させ、アッパー部材42およびロア部材36が互いに結合されてハウジングユニット20としてユニット化される。これによりハウジングユニット20において操作部材40の動作確認ができる。
【0033】
図6は、開閉部材10に取り付けたロック装置12の断面図を示す。
図6(a)は、
図1(a)に示すロック装置12の線分A−Aの断面であり、
図6(b)は
図1(a)に示すロック装置12の線分B−Bの断面である。
図6(b)では、キーシリンダ22、ロック部材および開閉部材10の内側カバー14を省いて示す。
【0034】
図6(a)に示すように内側カバー14に形成された挿通孔から第2ロッド28の先端28aが外部に張り出す。図示しない第1ロッド26の先端26aも同様に内側カバー14の外部に張り出す。結合孔76により結合爪64の係止部分が少なくとも露出する。その開口(結合孔76)は、操作部材40が閉じている場合にはカバー部56により覆われて外部に露出しないように構成されている。
【0035】
図6(b)に示すように操作部材40は回転する。ユーザは、凹部10aから取っ手部55の裏側に指を差し入れて、取っ手部55をユーザの手前側に引き、操作部材40を軸支部54で回転させる。操作部材40の回転動作はロータ部材34を介してロック部材に伝達され、ロック部材はグローブボックスのロック用孔から脱して開閉部材10のロック状態が解除される。開閉部材10は自重により開く。ユーザが操作部材40から手を離すと、操作部材40は付勢部材44により元の位置に戻り、ロック部材もねじりバネ部材48により元の位置に戻る。
【0036】
図7は、開閉部材10からアッパー部材42の取り外しについて説明するための図である。アッパー部材42を取り外す際に、操作部材40を開方向に回転させて結合孔76を露出させた後、結合孔76に所定の治具16を差し込んで結合爪64の結合孔76への係止を外す。つまり結合爪64の係止を外部に露出させる開口(結合孔76)が設けられ、開口から係止を解除可能である。
図7に示す操作部材40は全開状態である。
【0037】
このようにアッパー部材42を取り外すには操作部材40を開方向に回転させる必要がある。操作部材40はキーシリンダ22のキーがオンであれば回転できず、ロック部材の移動も規制される。つまり、結合孔76は、キーシリンダ22によりロック部材の移動を規制した場合、外部に露出しないように構成される。これにより、キーシリンダ22のキーをオンした場合に、アッパー部材42の取り外しを禁止させることができる。
【0038】
図8は、アッパー部材42の取り外しを説明するための断面図である。
図8(a)および
図8(b)は、
図6(a)と同じ位置の断面である。
図8(a)は、
図7に示す操作部材40と同じ状態を示す。
図8(b)は簡略化したアッパー部材42およびロア部材36を示す。
【0039】
図8(a)は、ユーザは操作部材40の取っ手部55を掴んで操作部材40を全開状態にし、開口した結合孔76へ治具16の先端を外部から差し入れる。結合孔76の内面は外側から内側に向かって開口が狭くなるようにテーパ状に形成されており、治具16を結合爪64へガイドする。
【0040】
結合爪64は、弾性を有するため、治具16で結合爪64の係止部分を押せば結合爪64が撓んで係止が外れる。剛体の第2引掛部68は、
図8(b)に示すように取っ手部55を引っ張ることで回転して引掛用孔78から外れる。このようにユーザは、操作部材40を全開状態にして治具16で結合爪64を押せば、ロア部材36とアッパー部材42の結合を解除してアッパー部材42を容易に取り外すことができる。アッパー部材42を取り外した後は、表面が傷ついた操作部材40を交換したり、キーシリンダ22を操作部材40から外してキーシリンダ22を交換することが可能となる。
【0041】
また、アッパー部材42に結合爪64を設けることで、治具16を結合孔76へ押し込んで結合爪64を撓ませた場合に、結合爪64が損傷したとしても、取り外す側であるアッパー部材42であるため、アッパー部材42を交換すれば済む。ロア部材36が損傷すると、ロア部材36を交換するには、開閉部材10の内側カバー14を外して第1ロッド26および第2ロッド28を取り外す必要がありコストがかかる。このように、解除用の結合爪64をアッパー部材42に設けることで損傷した場合のコストを抑えることができる。
【0042】
図9は、第1変形例のロック装置112について説明するための図である。
図9(a)は、開閉部材10に取り付けたロック装置112であり、
図1に示すロック装置12と比べて、アッパー部材142およびロア部材136の結合構造が異なり、その他は同様である。
【0043】
第1変形例のロック装置112は、弾性を有する結合爪164および剛体の引掛部168の位置が、ロック装置12と逆である。すなわち、アッパー本体部材138は、操作部材40の回転軸側に結合爪164を有し、操作部材40の取っ手部55側に引掛部168を有する。
【0044】
結合孔176が開口しているため、開閉部材10内にて結合爪164の係止は露出する。さらに、開閉部材10の内側カバー14には解除用開口14aが設けられる。解除用開口14aは内側カバー14のうち結合孔176に近い位置に設けられ、ユーザが外側から解除用開口14aを介して結合孔176を視認できる位置に設けられる。
【0045】
解除用開口14aに治具16を差し込んで、結合爪164の係止部分を治具16で押せば、結合爪164が撓んで係止解除される。そしてユーザが取っ手部55を押せば、アッパー部材42が引掛部168を軸に回転して引掛部168が引掛用孔178から外れる。このように、ユーザは結合爪164を治具16で押しつつ取っ手部55を押すことで容易に解除することができる。
【0046】
ここで、解除用開口14aに治具16を差し込むには、開閉部材10を開いた状態であることが必要である。すなわち、開閉部材10を閉じて、キーシリンダ22によりロック部材の移動を規制した場合、解除用開口14aおよび結合孔176は外部に露出しないように構成される。これにより、開閉部材10を閉じてキーシリンダ22のキーをオンした場合に、アッパー部材42を取り外せないようにできる。
【0047】
図10は、第2変形例のロック装置212について説明するための図である。
図10(a)はロック装置212の正面図であり、
図10(b)は
図10(a)に示すロック装置212の線分D−Dの断面図である。
【0048】
ロック装置212は、アッパー部材242、ロア部材236およびロック部材226を有する。ロック部材226はロア部材236にスライド可能に設けられる。
図1に示すロック装置12のロック部材はサイドに移動するタイプであるが、第2変形例のロック部材226はアッパー部材242の動作に応じて上下に移動する。ロック部材226は、グローブボックスのロック用孔に挿脱される。
【0049】
ロア部材236は、開閉部材10に取り付けられる。アッパー部材242は、ユーザに操作される操作部材として機能し、ユーザによる操作に応じてロック部材226のロック状態を解除する。
【0050】
アッパー部材242は、ロア部材236に結合されて支持される。ロア部材236は、引掛用孔278および結合孔276を有する。アッパー部材242は、弾性を有する結合爪264、および剛体の引掛部268を有する。結合爪264は結合孔276に係止し、引掛部268は引掛用孔278に引っ掛けられて係止し、アッパー部材242がロア部材236に結合される。結合孔276は、結合爪264の係止を外部に露出させるよう開口する。
【0051】
アッパー部材242を取り外す際、ユーザは所定の治具で結合爪264を押して撓ませ、係止を解除させる。そしてユーザがアッパー部材242の下端の取っ手部255を引っ張れば、アッパー部材242が引掛部268を軸に回転して引掛部268が引掛用孔278から外れる。このように、ユーザは結合爪264を押しつつ取っ手部255を引っ張ることで容易に解除することができる。
【0052】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0053】
実施形態ではアッパー部材42に結合爪64を設け、ロア部材36に結合孔76を設ける態様を示したが、この限りではない。例えば、ロア部材36に結合爪を設け、アッパー部材42に結合孔を設けて、結合孔を外部に開口するよう露出させてよい。
【0054】
実施形態では軸受部62を円弧状突部として設ける態様を示したが、この態様に限られない。軸受部は、円柱状に形成され、アッパー本体部材38の側面から軸方向に突出する円柱状突部であってよい。軸受部は軸支部54に摺動可能に挿入される。