(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1しきい値と前記第2しきい値との平均値を平均駆動電流、前記光源を駆動するのに必要な電圧の最小値を最小光源電圧、前記スイッチング素子のオンオフの周波数を駆動周波数と称すとき、前記キャパシタの静電容量は、平均駆動電流を駆動周波数と最小光源電圧との積で除した値よりも大きいことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光源制御装置。
前記第1インダクタの一端には直流の入力電圧が印加され、前記第1インダクタの他端と前記スイッチング素子の一端とは接続され、前記スイッチング素子の他端には固定電圧が印加され、前記キャパシタの一端は前記第1インダクタの他端と接続されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の光源制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、信号には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において説明上重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、電圧、電流あるいは抵抗などに付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値あるいは抵抗値を表すものとして用いることがある。
【0013】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bとの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0014】
実施の形態に係るLED点灯回路は、cukコンバータから出力段の平滑用キャパシタを除き、代わりに電流ヒステリシス制御によりコンバータのスイッチング素子のオンオフを制御する構成を有する。これにより、駆動対象のLEDのオンオフを個別に切り替える等により負荷が急変しても、平滑用キャパシタの充放電に起因する駆動電流の望まれない変化を抑制することができる。
【0015】
図1は、実施の形態に係るLED点灯回路10の構成を示す回路図である。LED点灯回路10は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit)20および直列に接続された複数(N個)の車載用のLED40−1〜40−Nと接続される。Nは2以上の自然数である。LED点灯回路10およびN個のLED40−1〜40−Nは前照灯などの車両用灯具に搭載される。LED点灯回路10は、光源であるN個のLED40−1〜40−Nを制御する光源制御装置である。
【0016】
電子制御ユニット20は、自動車などの車両の電気的な制御を総合的に行うためのマイクロコンピュータである。電子制御ユニット20はスイッチSWを介して車載バッテリ30と接続され、スイッチSWがオンされると車載バッテリ30からバッテリ電圧Vbatを受ける。電子制御ユニット20は、LED点灯回路10に入力電圧Vinとして直流のバッテリ電圧Vbatを供給する。電子制御ユニット20は、LED点灯回路10に入力電圧Vinよりも低い固定電圧すなわち接地電位V
GND(=0V)を供給する。
【0017】
LED点灯回路10は、入力電圧Vinを昇圧または降圧して負極性の出力電圧(=−Vout(Voutは正の値))を生成し、N個のLED40−1〜40−Nに印加する。LED点灯回路10はN個のLED40−1〜40−Nに駆動電流Ioutを供給し、それらを点灯させる。LED点灯回路10は、入力電圧Vinを受けて駆動電流Ioutを生成する電力変換部100と、電力変換部100を制御する制御部108と、バイパス駆動部112と、N個のバイパススイッチ110−1〜110−Nと、を備える。
【0018】
LED点灯回路10はN個のLED40−1〜40−Nの点灯・消灯を個別に制御できるよう構成されている。N個のバイパススイッチ110−1〜110−Nのそれぞれは対応するLEDと並列に接続され、例えばn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成される。バイパス駆動部112は、各バイパススイッチ110−1〜110−Nの制御端子に制御信号を供給する。バイパス駆動部112は、所望の輝度や配光パターンが得られるよう、各制御信号のレベルを個別に制御する。
【0019】
電力変換部100は、一次側回路102と、二次側回路104と、入力キャパシタ105と、伝達キャパシタ106と、抑制部130と、を含む。入力キャパシタ105の一端には入力電圧Vinが印加され、他端は接地される。入力キャパシタ105は第1インダクタ114の近傍に設けられており、第1スイッチング素子116のスイッチング動作に対する電圧平滑化の機能を果たす。
【0020】
伝達キャパシタ106は、一次側回路102と二次側回路104との間に設けられる。
一次側回路102は、第1スイッチング素子116と第1インダクタ114とを有し、第1スイッチング素子116がオンのとき第1インダクタ114がエネルギを蓄えるよう構成される。第1スイッチング素子116は例えば、n型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであってもよい。第1インダクタ114の一端は入力キャパシタ105の一端と接続され、第1インダクタ114の一端には入力電圧Vinが印加される。第1インダクタ114の他端は第1スイッチング素子116のドレインと接続される。第1スイッチング素子116のソースは接地される。第1インダクタ114の他端と第1スイッチング素子116のドレインとの第1接続ノードN1は、伝達キャパシタ106の一端と接続される。
【0021】
第1スイッチング素子116のゲートには、制御部108から変換駆動信号S1が入力される。変換駆動信号S1は、駆動電流Ioutの大きさに基づく電流ヒステリシス制御によりパルス変調された矩形波状の信号である。第1スイッチング素子116は変換駆動信号S1により定まるオンデューティでオンオフする。
【0022】
二次側回路104は、第1ダイオード118と第2インダクタ120と電流検出抵抗122とを有し、第2インダクタ120が駆動電流Ioutの変化の速さを制限するよう構成される。第2インダクタ120の一端は第1ダイオード118のアノードと接続される。第1ダイオード118のカソードは電流検出抵抗122の一端と接続される。第2インダクタ120の一端と第1ダイオード118のアノードとの第2接続ノードN2は、伝達キャパシタ106の他端と接続される。第1ダイオード118のカソードと電流検出抵抗122の一端との第3接続ノードN3は接地される。第2インダクタ120の他端はN個のLED40−1〜40−Nのカソード側と接続される。第2インダクタ120の他端の電圧が出力電圧(=−Vout)である。
【0023】
電流検出抵抗122は、N個のLED40−1〜40−Nを流れる駆動電流Ioutの経路上に配置される。本実施の形態では、電流検出抵抗122はN個のLED40−1〜40−Nのアノード側と接地端子との間に設けられる。電流検出抵抗122で生じる電圧降下は駆動電流検出電圧Vgとして制御部108に提供される。電流検出抵抗122に駆動電流Ioutが流れるので、駆動電流検出電圧Vgは駆動電流Ioutの大きさに応じた電圧となる。
【0024】
一次側回路102、二次側回路104および伝達キャパシタ106はcukコンバータから出力段の平滑用キャパシタを除いた構成に相当する。したがって、電力変換部100は入力電圧Vinの極性を反転して出力する反転型のコンバータであり、出力電圧は負極性(−Vout)となる。また、電力変換部100は、第1スイッチング素子116がオンのとき駆動電流Ioutが上昇するよう構成される。
【0025】
図2は、第1スイッチング素子116がオンのときの電流の流れを示す模式図である。
図3は、第1スイッチング素子116がオフのときの電流の流れを示す模式図である。LED点灯回路10が安定動作しているとき、伝達キャパシタ106はVin+Voutの電圧が充電された状態になる。第1スイッチング素子116がオンのときは、第1インダクタ114にエネルギが蓄えられると共に、第1ダイオード118のアノード電圧は−(Vin+Vout)となり、第2インダクタ120を流れる電流すなわち駆動電流Ioutは上昇し、伝達キャパシタ106は放電される。第1スイッチング素子116がオフのときは、第1インダクタ114が蓄えたエネルギで伝達キャパシタ106を充電すると共に、第1ダイオード118が導通してアノード電圧は0Vとなり、駆動電流Ioutは低下する。
【0026】
図1に戻り、制御部108は、駆動電流Ioutの大きさが所定の第1しきい値Ith1を上回ると第1スイッチング素子116をオフし、駆動電流Ioutの大きさが第1しきい値Ith1よりも小さい第2しきい値Ith2を下回ると第1スイッチング素子116をオンする。制御部108は、オンオフ制御部124と、電流検出部126と、ヒステリシス幅設定部128と、を含む。
【0027】
電流検出部126は駆動電流Ioutを検出する。電流検出部126は駆動電流検出電圧Vgを取得することで駆動電流Ioutを検出する。電流検出部126は、検出された駆動電流Ioutの大きさに対応する検出電流電圧Vg’を生成し、オンオフ制御部124に提供する。検出電流電圧Vg’は、検出された駆動電流Ioutの大きさが目標値Imのとき所定値(例えば0.2V)となるよう駆動電流検出電圧Vgをスケールした電圧であってもよい。
【0028】
ヒステリシス幅設定部128は、入力電圧Vinおよび出力電圧に基づいて、第1しきい値Ith1と第2しきい値Ith2との差であるヒステリシス幅ΔIを示すヒステリシス幅電圧V
HYSを生成し、オンオフ制御部124に提供する。ヒステリシス幅ΔIと入力電圧Vinおよび出力電圧との関係は、理論的または実験的に定められてもよい。あるいはまた、目標電流設定部128はヒステリシス幅ΔIを、入力電圧Vinにも出力電圧にも依らない一定の値に設定してもよい。
【0029】
図4は、オンオフ制御部124の構成を示す回路図である。オンオフ制御部124は、ヒステリシス制御IC(Integrated Cicuit)132と、第1抵抗134と、第2抵抗136と、第1キャパシタ138と、波形変更部142と、スイッチドライバ144と、を有する。
【0030】
第1抵抗134の一端には検出電流電圧Vg’が印加される。第1抵抗134の他端は第1キャパシタ138の一端と接続される。第1キャパシタ138の他端は接地される。第1抵抗134の他端と第1キャパシタ138の一端との第4接続ノードN4の電圧V
N4は、後述の抑制部130に提供されると共に、第2抵抗136の一端に印加される。第2抵抗136の他端は波形変更部142と接続される。
【0031】
ヒステリシス制御IC132はヒステリシス制御を実現するICであり、例えばTexas Instruments社製のLM3401であってもよい。電流ヒステリシス制御ICであるLM3401は、SNS端子、HYS端子およびHG端子を有する。SNS端子には第4接続ノードN4の電圧V
N4が印加される。HYS端子にはヒステリシス幅電圧V
HYSが印加される。ヒステリシス制御IC132は、第4接続ノードN4の電圧V
N4の平均値が0.2VになるようHG端子の電圧レベルを制御する。
【0032】
ヒステリシス制御IC132は、後述の波形変更部142による作用がない場合、(Im+ΔI/2)を第1しきい値Ith1として設定し、(Im−ΔI/2)を第2しきい値Ith2として設定する。すなわち、ヒステリシス制御IC132は、検出された駆動電流Ioutの大きさが(Im+ΔI/2)を上回るとHG端子の電圧をハイレベルとし、検出された駆動電流Ioutの大きさが(Im−ΔI/2)を下回るとHG端子の電圧をローレベルとする。
【0033】
スイッチドライバ144は、ヒステリシス制御IC132のHG端子から出力される信号を反転し、変換駆動信号S1として第1スイッチング素子116のゲートに出力する。スイッチドライバ144は、例えばTexas Instruments社製のTPS2818であってもよい。
【0034】
波形変更部142は、第1スイッチング素子116のオン期間が長いほど第1しきい値Ith1を小さくするよう、第4接続ノードN4の電圧V
N4に作用する。波形変更部142はいわゆるスロープ補償を実行する。波形変更部142は、三角波を制御へ重畳して第1スイッチング素子116のデューティ比の変化を少なくすることで、制御の応答を遅くし、発振を抑制する。
【0035】
図5は、波形変更部142における変換動作を説明するための模式図である。波形変更部142は、矩形波である変換駆動信号S1を変換駆動信号S1がハイレベルの期間に電圧が上昇する三角波に変換してスロープ補償信号S2を生成し、スロープ補償信号S2を電流制御のラインへ第2抵抗136を介して接続する。三角波のピーク電圧を高くするか、第2抵抗136の抵抗値を小さくすると、発振を抑える方向になる。
【0036】
図6は、抑制部130の構成を示す回路図である。抑制部130は、駆動電流Ioutの大きさが第1しきい値Ith1よりも大きい第3しきい値Ith3を上回ると駆動電流Ioutを抑制する。特に抑制部130はN個のLED40−1〜40−Nと並列に設けられ、駆動電流Ioutの大きさが第3しきい値Ith3を上回ると駆動電流Ioutの一部をバイパスするよう構成される。
【0037】
抑制部130は、第3抵抗150と、第4抵抗152と、第5抵抗154と、第6抵抗156と、第7抵抗158と、第8抵抗160と、第9抵抗162と、コンパレータ164と、第2ダイオード166と、npn型バイポーラトランジスタ168と、第2キャパシタ170と、抑制スイッチ172と、を含む。抑制スイッチ172は例えば、p型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであってもよい
【0038】
第3抵抗150および第4抵抗152は、5V程度の電源電圧Vccを所定の分圧比で分圧する分圧回路を構成する。この分圧回路は、第3しきい値Ith3に対応する分圧電圧Vdiv(例えば、0.25V)をコンパレータ164の非反転入力端子に印加する。コンパレータ164の反転入力端子には第4接続ノードN4の電圧V
N4が印加される。第5抵抗154の一端には電源電圧Vccが印加され、他端はコンパレータ164の出力端子および第2キャパシタ170の一端と接続される。第2キャパシタ170の他端は、第6抵抗156の一端、npn型バイポーラトランジスタ168のベースおよび第8抵抗160の一端と接続される。第6抵抗156の他端は第2ダイオード166のカソードと接続され、第2ダイオード166のアノードは抑制スイッチ172のゲートと接続される。抑制スイッチ172のドレインは第1LED40−1のカソードと接続される。抑制スイッチ172のソースは、第7抵抗158の一端、npn型バイポーラトランジスタ168のコレクタ、第8抵抗160の他端および第9抵抗162の一端と接続される。第9抵抗162の他端は第NLED40−Nのアノードと接続される。第7抵抗158の他端はnpn型バイポーラトランジスタ168のエミッタおよび第2ダイオード166のアノードと接続される。
【0039】
抑制部130では、第4接続ノードN4の電圧V
N4が分圧電圧Vdiv(駆動電流Ioutの大きさ=第3しきい値Ith3に相当)を超えると、抑制スイッチ172がオンされる。抑制部130を流れるバイパス電流は第9抵抗162によって制限される。抑制スイッチ172のゲートソース間電圧は、第2キャパシタ170および第8抵抗160で規定される時定数で低下し、抑制部130を流れるバイパス電流も低下する。
【0040】
以上の構成によるLED点灯回路10の動作を説明する。
図7は、LED点灯回路10の動作状態を模式的に示す波形図である。
図7は、上から順に、駆動電流Ioutの大きさ、変換駆動信号S1、を示す。
図7は波形変更部142がないかまたは波形変更部142の影響を無視できる場合の波形を示す。特に第1スイッチング素子116のオン期間が短いほど波形変更部142の影響は小さくなる。
【0041】
変換駆動信号S1がハイレベルのとき第1スイッチング素子116はオン状態であり、駆動電流Ioutは上昇する(
図2も参照)。駆動電流Ioutが上昇して第1しきい値Ith1に達すると、変換駆動信号S1はローレベルに遷移し、第1スイッチング素子116はオフ状態となる。第1スイッチング素子116のオフ状態では、駆動電流Ioutは減少する(
図3も参照)。駆動電流Ioutが減少して第2しきい値Ith2に達すると、変換駆動信号S1は再びハイレベルに遷移する。第1しきい値Ith1と第2しきい値Ith2との平均値I
AVEは目標値Imに設定される。
【0042】
なお、波形変更部142によるスロープ補償は、
図7に示される駆動電流Ioutの波形において、第1スイッチング素子116のオン期間中に第1しきい値Ith1を漸減させるかまたは駆動電流Ioutの見かけ上の上昇速度を大きくする作用を有する。この作用は、駆動電流Ioutと第1しきい値Ith1との相対的な関係では、第1スイッチング素子116のオン期間が長いほど第1しきい値Ith1を小さくする作用であると言うことができる。
【0043】
本実施の形態に係るLED点灯回路10では、N個のLED40−1〜40−Nへの出力段に平滑用のキャパシタが設けられていないので、第1スイッチング素子116のオンオフに対する駆動電流Ioutの追従性がより良くなる。特に、第1スイッチング素子116がオフされると駆動電流Ioutは小さくなり、第1スイッチング素子116がオンされると駆動電流Ioutは大きくなる。そして、駆動電流Ioutを目標値Im付近で安定化させるために、平滑化の代わりに駆動電流Ioutの電流ヒステリシス制御が採用されている。これらの結果、電流フィードバックにおける応答を高速化できる。例えば、バイパス駆動部112およびバイパススイッチの作用によりLEDの点灯数が変化したときに、駆動電流Ioutをそのような負荷の変動により速く追従させることができる。特に、LEDの点灯数を増やしたときの駆動電流Ioutのアンダーシュートや点灯数を減らしたときの駆動電流Ioutのオーバーシュートを抑制することができる。
【0044】
また、電力変換部100は1段構成のコンバータで入力電圧Vinの昇降圧を実現している。したがって、複数段構成のコンバータと比較して部品点数を少なくでき、電力効率を高めることができる。
【0045】
例えば公知のSEPICコンバータの形態では、スイッチング素子がオンのときに駆動電流が低下し、オフのときに上昇する。その場合、負荷や入力電圧の急変動により、万一駆動電流が2つのしきい値電流の間を外れると、駆動電流が低い方に外れた場合はスイッチング素子がオフし続け入力電圧からエネルギを蓄えられず、駆動電流は低下を続ける。駆動電流が高い方に外れた場合は駆動電流が低下するまでスイッチング素子がオンし続け、多大なエネルギを蓄えてしまう。これに対して、本実施の形態に係るLED点灯回路10は、第1スイッチング素子116がオフされると駆動電流Ioutが小さくなり、第1スイッチング素子116がオンされると駆動電流Ioutが大きくなるよう構成される。したがって、SEPICコンバータで生じうるような制御の暴走を防ぐことができる。
【0046】
以下、本発明者の独自の実験および検討に基づく、LED点灯回路10における駆動電流Ioutのオーバシュートおよびアンダーシュートの発生メカニズムおよびその対策について説明する。
【0047】
上述の通り、LED点灯回路10では出力段に平滑用キャパシタを設ける場合と比較してオーバシュートおよびアンダーシュートを抑制することができる。しかしながら、回路定数の設定等によって、オーバシュートやアンダーシュートが無視できるレベルの場合もあれば、オーバシュートやアンダーシュートが確認できる程度に発生する場合もある。本発明者は独自の検討により、LED点灯回路10において第2インダクタ120の誘導係数を大きくし、伝達キャパシタ106の静電容量を小さくする(すなわち、LC共振エネルギを小さくし、ピーク電流を低減する)ことによって、オーバシュートおよびアンダーシュートを抑制できることを見出した。
【0048】
検討のため、伝達キャパシタ106の静電容量を故意に大きくし、かつ第2インダクタ120の誘導係数を故意に小さくした比較例を考える。
図8は、比較例において接続しているLEDの数を急に少なくしてオーバシュートを発生させたときの波形図である。接続しているLEDの数を急に少なくすることは、N個のバイパススイッチ110−1〜110−Nのうちのいくつかをオンすることに対応する。
図9は、比較例において接続しているLEDの数を急に多くしてアンダーシュートを発生させたときの波形図である。接続しているLEDの数を急に多くすることは、N個のバイパススイッチ110−1〜110−Nのうちのいくつかをオフすることに対応する。
【0049】
図8および
図9において、LEDの数を変えたタイミングを太矢印で示す。太矢印前後で出力電圧(=−Vout)は階段状に変化している。太矢印以前では、第1ダイオード118のアノード電圧Vaは、−(Vin+Vout)と0Vとを繰り返しており、伝達キャパシタ106には(Vin+Vout)の電圧が充電されている。
【0050】
LEDの数を減らす
図8の波形では、破線丸印の領域で、(伝達キャパシタ106の充電電圧)>(Vin+Vout)、すなわち伝達キャパシタ106が過剰に充電された状態になり、伝達キャパシタ106は第1インダクタ114を介して入力電圧Vin側へ放電し、駆動電流Ioutがオーバシュートする。
【0051】
LEDの数を増やす
図9の波形では、破線丸印の領域で(伝達キャパシタ106の充電電圧)<(Vin+Vout)、すなわち伝達キャパシタ106の充電が不足している状態になり、駆動電流Ioutが上昇するのに充分な電圧を第2インダクタ120へ供給できず、駆動電流Ioutがアンダーシュートする。
【0052】
したがって、駆動電流Ioutのオーバシュート/アンダーシュートを抑制するには、伝達キャパシタ106の静電容量を小さくすることが有効である。さらに、オーバシュート時の駆動電流Ioutは、伝達キャパシタ106と第1インダクタ114および第2インダクタ120との共振電流なので、第2インダクタ120の誘導係数を大きくすることがオーバシュート抑制に有効である。ただし、第2インダクタ120の誘導係数が大きくなると駆動電流Ioutの変化の速さは小さくなるので、第2インダクタ120の誘導係数を大きくしすぎると第1スイッチング素子116のスイッチング動作やスイッチング周波数に不都合が生じうる。
【0053】
伝達キャパシタ106の静電容量を小さくすると電流フィードバック制御に発振が生じやすくなる。発振は、デューティ比が最大に近い状態とデューティ比が最小に近い状態とが所定の周波数で繰り返す現象である。本発明者は、このような発振の発生を抑制しつつ伝達キャパシタ106の静電容量を小さくする方法として、以下の2つの方法を見出した。
(1)伝達キャパシタ106の静電容量の減少分に応じて、第1インダクタ114の誘導係数を小さくする。
(2)制御の応答を遅くする。
【0054】
(1)に対応し、本実施の形態に係るLED点灯回路10では、伝達キャパシタ106の静電容量および第1インダクタ114の誘導係数を低く設定している。
図10は、実施の形態において接続しているLEDの数を急に少なくしてオーバシュートを発生させたときの波形図である。
図10の波形は、抑制部130の作用がない場合の波形に対応する。
図11は、実施の形態において接続しているLEDの数を急に多くしてアンダーシュートを発生させたときの波形図である。
図10および
図11のグラフのスケールはそれぞれ
図8および
図9のグラフのスケールに対応する。伝達キャパシタ106の静電容量および第1インダクタ114の誘導係数を低くすることにより、オーバシュートおよびアンダーシュートを抑制できることが分かる。
【0055】
(2)に対応し、本実施の形態に係るLED点灯回路10は波形変更部142によるスロープ補償機能を有する。スロープ補償機能は第1スイッチング素子116のオン期間を減らすよう作用する。したがって、デューティ比が最大に近い状態が発生しにくくなるので、発振を抑制することができる。また、このように発振の発生が抑制される分、伝達キャパシタ106の静電容量をさらに低減することができる。
【0056】
なお、伝達キャパシタ106を介してのエネルギの伝達に関して、負荷としてのLEDが1個になっても満足な伝達ができなければならないという要請がある。平均駆動電流I
AVEが1回のスイッチング周期(1/f)の間流れるときに移動する電荷によって、伝達キャパシタ106の電圧がLED1個の順方向降下電圧Vfを下回らない場合に、この要請は満たされる。この関係を数式で表すと以下の通りである。ここでは伝達キャパシタ106の静電容量をCsと表記する。
Cs×Vf>I
AVE×(1/f)
なお、単位は全てMKSA単位系に従う。
【0057】
Csは上記関係式を満たすよう設定される。なお、N個のLED40−1〜40−Nの順方向降下電圧が全て実質的に等しい場合、VfはLED1個の順方向降下電圧であるからN個のLED40−1〜40−Nを駆動するのに必要な電圧の最小値である。スイッチング周期の逆数(f)は、第1スイッチング素子116のオンオフの周波数である。
【0058】
本実施の形態に係るLED点灯回路10では、抑制部130は駆動電流Ioutの大きさが第3しきい値Ith3を上回ると駆動電流Ioutの一部をバイパスする。したがって、オーバシュートが発生したときに伝達キャパシタ106に蓄えられる余分な電荷を抑制部130において消費することができる。これにより、オーバシュートが発生したときの駆動電流Ioutの上昇量を抑制することができる。LEDの寿命の観点からは、最大定格の存在等により、アンダーシュートよりもオーバシュートのほうが影響が大きい。したがって、そのようなオーバシュートをより効果的に抑制することにより、LEDの寿命を延ばすことができる。
【0059】
図12は、実施の形態において接続しているLEDの数を急に少なくしてオーバシュートを発生させたときの波形図である。
図12の波形は、抑制部130の作用がある場合の波形に対応する。
図10の波形と比較して、オーバシュートが発生したときの駆動電流Ioutの上昇量が抑えられていることが分かる。
【0060】
以上、実施の形態に係るLED点灯回路10の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0061】
実施の形態では、cukコンバータから出力段の平滑用キャパシタを除き、代わりに電流ヒステリシス制御によりコンバータのスイッチング素子のオンオフを制御する構成を有するLED点灯回路10について説明したが、これに限られない。例えば、第1変形例に係るLED点灯回路は、zetaコンバータから出力段の平滑用キャパシタを除き、代わりに電流ヒステリシス制御によりコンバータのスイッチング素子のオンオフを制御する構成を有してもよい。
【0062】
図13は、第1変形例に係るLED点灯回路の電力変換部200の構成を示す回路図である。電力変換部200は、一次側回路202と、二次側回路204と、入力キャパシタ105に対応する入力キャパシタ205と、伝達キャパシタ206と、を含む。伝達キャパシタ206は、一次側回路202と二次側回路204との間に設けられる。
【0063】
一次側回路202は、第2スイッチング素子216と第3インダクタ214とを有し、第2スイッチング素子216がオンのとき第3インダクタ214がエネルギを蓄えるよう構成される。第2スイッチング素子216は例えば、p型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであってもよい。第2スイッチング素子216のソースは入力キャパシタ205の一端と接続され、第2スイッチング素子216のソースには入力電圧Vinが印加される。第2スイッチング素子216のドレインは第3インダクタ214の一端と接続される。第3インダクタ214の他端は接地される。第2スイッチング素子216のドレインと第3インダクタ214の一端との第5接続ノードN5は、伝達キャパシタ206の一端と接続される。第2スイッチング素子216は、第1スイッチング素子116と同様に、電流ヒステリシス制御に基づきオンオフされる。
【0064】
二次側回路204は、第3ダイオード218と第4インダクタ220と電流検出抵抗222とを有し、第4インダクタ220が駆動電流Ioutの変化の速さを制限するよう構成される。電流検出抵抗222は電流検出抵抗122に対応する。第4インダクタ220の一端は第3ダイオード218のカソードと接続される。第3ダイオード218のアノードは接地される。第4インダクタ220の一端と第3ダイオード218のカソードとの第6接続ノードN6は、伝達キャパシタ206の他端と接続される。
【0065】
一次側回路202、二次側回路204および伝達キャパシタ206はzetaコンバータから出力段の平滑用キャパシタを除いた構成に相当する。したがって、電力変換部200は入力電圧Vinの極性を反転せずに昇降圧して出力する非反転型のコンバータである。電力変換部200は、第2スイッチング素子216がオンのとき駆動電流Ioutが上昇するよう構成される。
【0066】
第1変形例に係るLED点灯回路によると、実施の形態に係るLED点灯回路10によって奏される作用効果と同様な作用効果が奏される。また、第1変形例に係るLED点灯回路は入力電圧の極性を反転させたくないアプリケーションに好適である。
【0067】
なお、第1変形例に係るLED点灯回路ではハイサイドのスイッチングとなる。ここで、スイッチング素子としてn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを使用した場合、ソース電圧が負極性になるため高周波スイッチングが困難となる。したがって、p型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを使用することとなる。しかしながら、一般に、p型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタはn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタよりも電力効率が悪い。したがって、スイッチング素子としてn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを使用可能な実施の形態に係るLED点灯回路10のほうが、第1変形例に係るLED点灯回路よりも電力効率の面で有利である。
【0068】
実施の形態では、抑制部130は駆動電流Ioutがオーバシュートを始めたら駆動電流Ioutの一部をバイパスする場合について説明したが、これに限られない。例えば、抑制部は駆動電流Ioutがオーバシュートを始めたら伝達キャパシタ106を強制的に放電させてもよい。この場合、抑制部を第1ダイオード118と並列に設ける。ただし、高周波で振動している第1ダイオード118のアノードへ強制放電する回路を付加することとなるので、回路構成が実施の形態の抑制部130よりも比較的複雑となりうる。
【0069】
あるいはまた、抑制部は、駆動電流Ioutがオーバシュートしないように駆動電流Ioutを制限またはクランプしてもよい。この場合、オーバーシュート時の駆動電流Ioutをより直接的に制限できるが、制限するための制御電圧を負電圧にする必要があるため、回路構成が実施の形態の抑制部130よりも比較的複雑となりうる。電力変換部の方式を「zeta(正極出力)」とすればクランプ回路を構成しやすいが、上記のようにスイッチング素子にp型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを用いる必要があるので、そのデメリットとの兼ね合いになる。