(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る医療用マニピュレータについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る医療用マニピュレータ10を示す一部省略斜視図である。医療用マニピュレータ10は、先端に設けられたエンドエフェクタ12で針や糸あるいは生体の一部を把持し又は生体に触れて、所定の処置を行うための医療機器である。医療用マニピュレータ10は、先端に設けられるエンドエフェクタ12の種類に応じて、ニードルドライバ、把持鉗子、モノポーラ電気メス、バイポーラ電気メス等として構成され得る。
【0019】
以下では、先ず、ニードルドライバの実施形態とした医療用マニピュレータ10の構成を概略的に説明し、その後、各部の構成を詳細に説明する。
【0020】
医療用マニピュレータ10は、エンドエフェクタ12を含む先端動作部14と、エンドエフェクタ12を駆動するハンドル16と、エンドエフェクタ12とハンドル16とを連結するシャフト18とを備える。エンドエフェクタ12は、外科的処置を行う部分であり、図示例では、第1及び第2グリッパ部材60、61を有し、所定の開閉動作軸を基準に開閉動作するグリッパ機構として構成されている。エンドエフェクタ12は、グリッパ機構に限らず、鋏や、電気メス用の電極として構成されてもよい。
【0021】
エンドエフェクタ12を含む先端動作部14は、シャフト18に対して複数の自由度で姿勢変更が可能である。本実施形態では、先端動作部14は、シャフト18の軸線に対して左右に傾動する「傾動動作」(首振り動作)と、当該先端動作部14の長手方向の軸線を中心に回転する「ロール動作」とを行うことができる。傾動動作は、左右方向への首振りに代えて、シャフト18の軸線に対して上下に傾動する動作であってもよい。
【0022】
シャフト18は、長尺で細径の管状部材であり、その中空部には、エンドエフェクタ12の開閉動作、先端動作部14のロール動作及び傾動動作をするのに必要な動力を、ハンドル16側から先端動作部14に伝達するための動力伝達機構を構成する複数の部材が挿通及び配置されている。
【0023】
ハンドル16は、複数の操作部を含むハンドル本体20と、ハンドル本体20に着脱可能でありモータ38を含む駆動ユニット22とを備え、ハンドル本体20に駆動ユニット22が装着された状態でモータ38が駆動した際、モータ38の駆動力が先端動作部14に伝達されるように構成される。このため、この医療用マニピュレータ10は、ハンドル本体20、シャフト18及び先端動作部14を含むマニピュレータ本体については、所定回数使用した後に廃棄し、一方、駆動ユニット22については、接続するマニピュレータ本体を変えて何度も使用する、という利用形態を取ることができる。
【0024】
ハンドル本体20は、シャフト18の基端が連結された胴体部23と、胴体部23に設けられたレバー24(開閉操作部)と、胴体部23に設けられた傾動用ホイール26(傾動操作部)と、胴体部23に設けられたロール用スイッチ28(ロール操作部)とを備える。
【0025】
胴体部23は、医療用マニピュレータ10の使用時に使用者が握る部分であり、本実施形態では、シャフト18の軸線方向にやや長く延在するスティック状に構成されている。胴体部23は、上部カバー29aと下部カバー29bとからなる筐体29を有し、当該筐体29内に、プーリ、歯車、ワイヤ等の駆動部品が配置される。
【0026】
胴体部23の下部には、エンドエフェクタ12の開閉操作を行うためのレバー24が、その先端側を支点として上下に揺動自在に設けられる。本実施形態では、レバー24は、手動操作部として構成されており、レバー24に対する操作力が機械的に先端動作部14のエンドエフェクタ12に伝達されることで、エンドエフェクタ12の開閉動作が行われる。具体的には、レバー24を開いた状態でエンドエフェクタ12が開き、レバー24を閉じるとエンドエフェクタ12が閉じるように構成されている。
【0027】
先端動作部14を傾動動作させるための傾動用ホイール26は、胴体部23の長手方向の中央付近に設けられる。当該傾動用ホイール26は、手動操作部として構成されており、周方向の一部が筐体29から露出している。傾動用ホイール26を回転操作すると、その操作力が、ハンドル16及びシャフト18内に設けられた傾動動作用の動力伝達系を介して機械的に先端動作部14に伝達され、先端動作部14がシャフト18の軸線に対して非平行な方向(左右方向又は上下方向)に傾動する。
【0028】
先端動作部14をロール動作させるためのロール用スイッチ28は、胴体部23の先端寄りの上部に設けられる。本実施形態では、ロール用スイッチ28は、コントローラ44を介してモータ38に対して操作指令を与える電動操作部として構成される。
【0029】
ロール用スイッチ28を押圧操作すると、押圧した位置に応じた信号が、コネクタ54及びケーブル42を介してコントローラ44に送信され、当該コントローラ44の制御作用下にモータ38が駆動し、モータ38の駆動力が先端動作部14に伝達されることで、先端動作部14が当該先端動作部14の長手方向の軸線を中心として回転する。本実施形態では、ロール用スイッチ28の右寄りの部分を押すと先端動作部14が右回りに回転し、ロール用スイッチ28の左寄りの部分を押すと先端動作部14が左回りに回転する。
【0030】
図2に示すように、駆動ユニット22は、ハウジング36と、ハウジング36内に配置されたモータ38(駆動原)と、モータ38の出力軸38aに固定された駆動歯車40(ピニオンギヤ)とを有し、ハンドル本体20の後部に着脱可能である。ハウジング36は、駆動ユニット22がハンドル本体20に装着(接続)された状態で、ハンドル本体20とともにハンドル16の筐体29を構成する部分であり、本実施形態では、ハンドル本体20の長手方向にやや長く延在する形状を有する。
【0031】
駆動ユニット22は、動力線及び信号線を含むケーブル42を介してコントローラ44に接続されている。コントローラ44は、モータ38への電力供給と駆動制御を行うものであり、外部電源から電力を受ける。ロール用スイッチ28を操作すると、その操作に応じた信号がコントローラ44に送信され、コントローラ44がモータ38の駆動を制御する。なお、コントローラ44の機能の一部又は全部は、駆動ユニット22に一体的に搭載され得る。
【0032】
駆動ユニット22をハンドル本体20の胴体部23に装着すると、モータ38の出力軸38aに固定された駆動歯車40と、胴体部23内に設けられた従動歯車128とが噛み合う。この状態で、モータ38が回転すると、モータ38の回転駆動力が、駆動歯車40と従動歯車128を介してハンドル本体20側へと伝達される。
【0033】
図2に示すように、ハンドル本体20に駆動ユニット22が装着された状態で、ハンドル本体20に設けれたハンドル側コネクタ50と、駆動ユニット22に設けられたユニット側コネクタ52とが相互に電気的に接続される。ハンドル側コネクタ50とユニット側コネクタ52とが接続された状態で、ロール用スイッチ28を操作すると、コントローラ44の制御作用下に、駆動ユニット22に搭載されたモータ38が駆動する。
【0034】
図3は、シャフト18の先端に連結された先端動作部14を示す斜視図である。
図4は、先端動作部14の分解斜視図である。
図5Aは、先端動作部14の縦断面図である。
図3〜
図5Aに示すように、先端動作部14は、開閉動作可能なエンドエフェクタ12と、エンドエフェクタ12が固定された中空円筒状の回転スリーブ56(回転体)と、内周部で回転スリーブ56を軸線回りに回転可能に支持する回転支持筒58とを有する。
【0035】
エンドエフェクタ12は、第1グリッパ部材60と、第2グリッパ部材61とからなる。第1グリッパ部材60と第2グリッパ部材61とは、ピン63により、グリッパ軸線Ogを中心として回転可能に連結される。第1グリッパ部材60の基部60cに、第2グリッパ部材61の基部61cがピン63により回動可能に連結される。第1グリッパ部材60の把持面60bと、第2グリッパ部材61の把持面61bとにより、例えば針等の把持対象物が把持される。
【0036】
第2グリッパ部材61の基部61cは、リンク部材62を介して、伝達部材64に連結される。当該基部61cとリンク部材62、及び、リンク部材62と伝達部材64は、それぞれピン65a、65bにより回転可能に連結される。伝達部材64は、ガイド管部64aと、ガイド管部64aの先端に設けられたフランジ64bと、フランジ64bの縁部から先端方向に互いに平行に延出する支持アーム64cとを有し、回転スリーブ56内に軸線方向に移動可能に配置される。支持アーム64cに設けられたピン孔64dに、ピン65bが嵌合される。
【0037】
伝達部材64と回転スリーブ56との間には圧縮スプリング66が配置される。圧縮スプリング66は、一端が伝達部材64のフランジ64bに当接し、他端が回転スリーブ56の内周部に設けられた段差部56aに当接し、伝達部材64を先端方向に弾性的に常時付勢する。
【0038】
伝達部材64には、エンドカラー68が先端側から挿通される。エンドカラー68の先端部は、伝達部材64のガイド管部64aの先端面に当接して係合する係合膨出部68aとして構成される。エンドカラー68は、先端動作部14とシャフト18との間の関節部17(
図5A及び
図6参照)に通されたプルワイヤ70の先端に固定される。
【0039】
プルワイヤ70は、ハンドル16のレバー24に対する操作に応じてシャフト18内及び先端動作部14内を進退移動する部材であり、プルワイヤ70が基端方向に変位すると、当該プルワイヤ70に固定されたエンドカラー68により伝達部材64が基端方向に押圧され、これにより圧縮スプリング66の付勢力に抗して、伝達部材64が基端方向に変位する。この伝達部材64の基端方向への変位に伴い、リンク部材62に連結された第2グリッパ部材61が、第1グリッパ部材60に対して閉じる方向に回動させられる。
図5Aでは、第2グリッパ部材61の把持面61bと第1グリッパ部材60の把持面60bとが接触する位置まで閉じた状態の第
2グリッパ部材6
1を仮想線で示している。
【0040】
第2グリッパ部材61の把持面61bと第1グリッパ部材60の把持面60bとが接触する位置まで閉じた状態から、プルワイヤ70及びエンドカラー68が前進すると、圧縮スプリング66の弾発力により伝達部材64が前進するため、リンク部材62を介して第
2グリッパ部材6
1が第
1グリッパ部材6
0に対して開く方向に回動し、元の状態に復帰する。この動作が、エンドエフェクタ12の開閉動作である。
【0041】
なお、本実施形態において、エンドエフェクタ12は、第1グリッパ部材60が固定部として構成され、第2グリッパ部材61が可動部として構成されているが、両方のグリッパ部材が可動部として構成されてもよい。
【0042】
回転スリーブ56は、先端の縮径部56bにおいて、第1グリッパ部材60の基部60cに嵌合し固着されている。回転スリーブ56において、基端には傘歯車部56cが設けられ、この傘歯車部56cよりも先端側には、360°の範囲で周方向に延在する環状凹部56dが設けられる。エンドエフェクタ12、回転スリーブ56、伝達部材64、エンドカラー68及び圧縮スプリング66は、先端動作部14の長手方向のロール軸線Orを中心として、回転支持筒58に対して一体的に回転可能である。
【0043】
回転支持筒58は、シャフト18の軸線方向に対して姿勢変更可能に設けられるとともに円筒状に形成された円筒部58aを有し、円筒部58aの内周部で回転スリーブ56を回転自在に支持する。回転支持筒58の外径は、3mm〜8mmであることが好ましい。回転支持筒58の内径は、2mm〜7mmであることが好ましい。
【0044】
図5A及び
図5Bに示すように、回転支持筒58には、当該回転支持筒58の内外を貫通する側孔71が設けられる。本図示例において、側孔71は、回転支持筒58の円筒部58aの壁部を半径方向に貫通する円形のピン孔であるが、周方向に所定角度範囲で延在する長孔であってもよい。また、本図示例において、側孔71は、回転支持筒58の軸線を基準として互いに反対位置に2つ設けられているが、1つだけ設けられてもよく、あるいは、周方向に間隔をおいて3つ以上設けられてもよい。
【0045】
側孔71には係合部材72が配設される。具体的には、係合部材72は側孔71に挿入されるとともに、回転支持筒58に固定される。本図示例において、係合部材72の外端72a(回転支持筒58側の端部)は、回転支持筒58に対して、例えば溶接、接着等の適宜の接合手段により強固に固定される。係合部材72の内端72b(回転スリーブ56側の端部)は、回転支持筒58の内周面から内方に突出し、回転スリーブ56に設けられた環状凹部56dに挿入されている。
【0046】
本図示例の係合部材72は、ピン形状であり、その内端72b側の外径R1は、環状凹部56dの幅W1(回転スリーブ56の軸線方向に関する環状凹部56dの寸法)と略同じか、僅かに小さい。係合部材72の形状は、ピン形状に限られず、例えば、回転支持筒58の周方向に所定角度範囲で延在する円弧形状であってもよい。
【0047】
図5Bに示すように、係合部材72の外端72aには、環状のフランジ部72cが設けられ、当該フランジ部72cが、側孔71の外端に設けられた環状の拡径部71aに配置されている。これにより、回転支持筒58に対して係合部材72を精度よく位置決めすることができ、回転支持筒58の内周面からの係合部材72の突出長さを所望長さに設定することができる。この場合、本図示例のように、係合部材72の内端72bと、環状凹部56dの底部との間に若干の隙間が設けられると、係合部材72と環状凹部56dとの摺動抵抗を効果的に抑制できる。
【0048】
回転スリーブ56に設けられた環状凹部56dと、回転支持筒58に固定された係合部材72とが係合することにより、回転スリーブ56が回転支持筒58に対して回転可能且つ軸線方向に移動不可能な状態で、回転スリーブ56と回転支持筒58とが連結されている。従って、回転スリーブ56は、環状凹部56dと係合部材72との係合により、回転支持筒58からの抜け止めがなされている。
【0049】
先端動作部14の組立においては、回転支持筒58の先端側から回転スリーブ56の基端を挿入する工程(挿入工程)と、回転支持筒58に設けられた各側孔71に、回転支持筒58の外側から係合部材72を挿入するとともに、係合部材72の内端72bを回転スリーブ56の環状凹部56d内に配置する工程(係合部材配置工程)と、回転支持筒58と各係合部材72とを、例えば溶接、接着等により接合する工程(接合工程)とを順次行う。これにより、回転支持筒58の内周部で回転スリーブ56が回転可能に支持され、且つ回転支持筒58に対して回転スリーブ56の抜け止めがなされた状態に組み立てることができる。
【0050】
なお、回転支持筒58と各係合部材72とを溶接により接合する場合には、係合部材72を外端72a側から見た
図5Cに示すように、1つの係合部材72あたりの回転支持筒58との接合部75(溶接部)を1箇所(1ショット)だけ設けてもよい。係合部材72に対しては、側孔71から抜ける方向の荷重がほとんど作用しないため、1つの係合部材72あたりの回転支持筒58との接合部75が1箇所だけであっても、接合強度が不足することはない。従って、回転支持筒58と係合部材72とを溶接により接合する構成を採用した場合でも、回転支持筒58において、溶接による熱変形が生じることはほとんどなく、高い円筒精度を好適に維持することができる。
【0051】
回転支持筒58と支点ブロック59とは、関節ピン73、74により、傾動軸線Oyを中心に互いに回動可能に連結される。支点ブロック59は、シャフト18の胴体部分を構成する中空状のシャフト本体19の先端に固定される。支点ブロック59とシャフト本体19とにより、シャフト18が構成される。
【0052】
本実施形態において、傾動軸線Oyは、上下方向に設定されているが、シャフト本体19の軸線に対して交差する他の方向に設定されてもよい。回転支持筒58には、円筒部58aの基端の上部及び下部から互いに平行に基端方向に突出する舌片部58b、58cが設けられる。支点ブロック59は、筒部59aと、筒部59aの先端の上部及び下部から互いに平行に先端方向に突出する舌片部59b、59cとを有する。回転支持筒58の舌片部58b、58cと、支点ブロック59の舌片部59b、59cとに関節ピン73、74が嵌合される。
【0053】
図4、
図5A及び
図6に示すように、支点ブロック59の筒部59aの先端には、支持ブロック76が装着される。
図4に示すように、支持ブロック76は、互いに平行に対向する上下の支持プレート77、78と、支持プレート77、78の左右両端後部を連結する連結部79とを有する。上側の支持プレート77には、上側の関節ピン73が挿入されるピン孔77aと、2つのピン84の上端がそれぞれ挿入される左右のピン孔77bとが設けられる。下側の支持プレート78には、従動プーリ90の縮径上端部90aが挿入される孔部78aと、2つのピン84の下端がそれぞれ挿入される左右のピン孔78bが設けられる。
【0054】
先端動作部14のシャフト18に対する傾動軸線Oyの近傍であって、プルワイヤ70の、先端動作部14の左右両側に、プルワイヤ70をガイドするガイドローラ83が設けられる。ガイドローラ83は、互いに平行に配置された2つのピン84により左右方向に間隔をおいて回転可能に支持される。2つのガイドローラ83の間には、上述したプルワイヤ70が通される。
【0055】
図5Aに示すように、先端動作部14とシャフト18との間の関節部17は、傾動軸線Oy上に配置された一対の関節ピン73、74を有し、開閉駆動伝達部80の一部であるプルワイヤ70は、一対の関節ピン73、74間に設けられた隙間を、関節ピン73、74の軸線方向と交差する方向に進退移動可能である。
【0056】
上側の支持プレート77と舌片部58bとの間には、傘歯車86が関節ピン73によって回転自在に支持される。傘歯車86は、支持プレート77及び舌片部58bとは独立に回転可能である。傘歯車86の歯部86aは、回転スリーブ56の基端に設けられた傘歯車部56cと、歯車部材88の先端に設けられた傘歯車部88aとに噛み合う。傘歯車部88aが設けられた歯車部材88は、中空円筒型の部材であり、その中空部内にプルワイヤ70が挿通される。
【0057】
歯車部材88が回転する際、歯車部材88の回転力は、傘歯車86と傘歯車部56cを介して回転スリーブ56に伝達され、回転スリーブ56及びこれに固定されたエンドエフェクタ12が回転支持筒58に対してロール軸線Orを中心に回転する。この動作が、先端動作部14のロール動作である。
【0058】
下側の支持プレート78と舌片部58cとの間には、従動プーリ90が関節ピン74によって回転自在に支持される。従動プーリ90は、回転支持筒58の舌片部58cの内面に固着される。従って、従動プーリ90と、舌片部58cを含む回転支持筒58とは、一体的に支点ブロック59に対して揺動可能である。従動プーリ90には、傾動動作用のワイヤ150が巻き掛けられる。このワイヤ150は、一部が従動プーリ90に固定され、シャフト18内を介してハンドル16側まで配設される。ワイヤ150の配設構造の詳細については後述する。
【0059】
ワイヤ150によって従動プーリ90が回転駆動されると、当該従動プーリ90に固定された回転支持筒58が従動プーリ90と一体的に回転する。これにより、回転支持筒58、回転スリーブ56及びエンドエフェクタ12を含む先端動作部14が、シャフト18に対して傾動軸線Oyを中心として回動する。この動作が、先端動作部14の傾動動作である。
【0060】
先端動作部14の傾動動作は、先端動作部14がシャフト18に対して真直ぐの状態を中立位置(基準位置)として、プラス側(右側)とマイナス側(左側)にそれぞれ可動範囲を有する。先端動作部14は、例えば、傾動動作に関して+70°〜−70°の可動範囲を有する。
【0061】
プルワイヤ70の基端部は、プルロッド91(
図2参照)の先端部に連結されている。プルワイヤ70とプルロッド91とは、歯車部材88の基端に連結された中空シャフト89(
図2参照)内で相対回転可能であり、且つプルロッド91の基端方向への引っ張り力がプルワイヤ70に伝達されるように連結されている。プルロッド91が軸線方向に変位した際には、プルロッド91に連結されたプルワイヤ70も軸線方向に変位することにより、エンドエフェクタ12の開閉動作が行われる。先端動作部14がロール動作する際には、プルワイヤ70がプルロッド91に対して回転することができるため、先端動作部14のロール動作に支障がない。
【0062】
図2に示すように、プルロッド91は、中空シャフト89内に挿通され、且つその基端が中空シャフト89の基端から突出する。一方、レバー24は、その先端部において、胴体部23の先端寄りの箇所で胴体部23に対して揺動可能に連結される。レバー24の先端部近傍には、レバーロッド96の先端が回動可能に連結されている。当該レバーロッド96は、胴体部23の下方に、胴体部23の長手方向と略平行に配置されるとともに、バネ98により先端方向に常時、弾性的に付勢される。レバー24からの駆動力は、レバーロッド96に伝達され、さらに中間伝達機構100を介して、プルロッド91及びプルワイヤ70(
図5A参照)へと伝達される。これにより、エンドエフェクタ12の開閉動作が行われる。
【0063】
次に、主として
図2及び
図5Aを参照し、先端動作部14のロール動作に関連する機構を説明する。本実施形態において、先端動作部14のロール動作は、モータ38の駆動力が先端動作部14に伝達されることにより行われる。先端動作部14をロール動作させるためのロール動作駆動系は、上述したモータ38と、モータ38に固定された駆動歯車40と、駆動歯車40に噛み合う従動歯車128と、従動歯車128が固定されたロール駆動伝達管130と、ロール駆動伝達管130の先端と噛み合う傘歯車86と、傘歯車86と噛み合う回転スリーブ56とを備える。本実施形態において、歯車部材88と中空シャフト89とにより、ロール駆動伝達管130が構成される。また、ロール駆動伝達管130と、傘歯車86と、回転スリーブ56とにより、ハンドル16側から先端動作部14側に回転駆動力を伝達する回転駆動伝達部132が構成される。
【0064】
駆動ユニット22がハンドル本体20に装着され、且つコントローラ44が電源に接続された状態で、
図1等に示すロール用スイッチ28を押圧操作すると、モータ38が回転し、その駆動力が、駆動歯車40、従動歯車128、ロール駆動伝達管130、傘歯車86及び回転スリーブ56を介して、先端動作部14に伝達される。これにより、先端動作部14のロール動作が行われる。
【0065】
医療用マニピュレータ10では、ハンドル16側から先端動作部14側への回転力の伝達を、ワイヤとプーリを介して行うのではなく、ロール駆動伝達管130等を介して行うため、先端動作部14を無制限の回転範囲でロール動作させることができる。また、開閉駆動伝達部80(プルワイヤ70及びプルロッド91)は、ロール駆動伝達管130の内側に挿通配置されるためロール駆動伝達管130の回転の影響を受けることなくエンドエフェクタ12に開閉駆動力を適切に伝達できる。
【0066】
さらに、開閉駆動伝達部80は、関節部17に対応する部分(プルワイヤ70)が可撓性を有するため、簡単な構成で、エンドエフェクタ12に開閉駆動力を適切に伝達できる。従って、先端動作部14の機構を複雑化することなく、先端動作部14の開閉動作と傾動動作を可能な構造を維持しつつ、回転範囲が無制限のロール動作を実現できる。
【0067】
次に、先端動作部14の傾動動作に関連する機構を説明する。ハンドル本体20内には、傾動用ホイール26の回転に連動して上下方向の軸線を中心に回転するウォームギヤ144と、ウォームギヤ144と噛み合うウォームホイール147を有し胴体部23の左右方向の軸線を中心に回転可能に配置された回転体146とが設けられる。
【0068】
回転体146は、ウォームホイール147と駆動プーリ148とを同軸上に有する。ウォームホイール147と駆動プーリ148とは一体的に回転する。駆動プーリ148には、ワイヤ150が巻き掛けられ、当該ワイヤ150は、シャフト18内に挿通され、シャフト18の先端側で従動プーリ90(
図5A等参照)に巻き掛けられる。
【0069】
ハンドル本体20において、駆動プーリ148の前方には、第1中間プーリ152と第2中間プーリ154とが配置され、第1中間プーリ152と第2中間プーリ154とにワイヤ150が巻き掛けられる。駆動プーリ148の後方には、第1テンション用プーリ159と第2テンション用プーリ165とが配置される。第1テンション用プーリ159と第2テンション用プーリ165とにワイヤ150が巻き掛けられる。第1テンション用プーリ159により、駆動プーリ148と従動プーリ90との間のワイヤ150の一方側部分に張力が付与される。第2テンション用プーリ165により、駆動プーリ148と従動プーリ90との間のワイヤ150の他方側部分に張力が付与される。
【0070】
シャフト18とロール駆動伝達管130との間には、シャフト18の軸線に沿って延在する環状空間が設けられ、ワイヤ150は、当該環状空間に挿通される。上述したように、ワイヤ150は、シャフト18の先端に配置された従動プーリ90(
図5A参照)に巻き掛けられる。
【0071】
図1及び
図2に示す傾動用ホイール26を手動により回転操作すると、その操作力が回転体146に伝達される。回転体146に伝達された回転力は、回転体146に設けられた駆動プーリ148に巻き掛けられたワイヤ150を駆動する。ワイヤ150の駆動は、シャフト18の先端で、従動プーリ90の回転となって出力され、これにより、先端動作部14のシャフト18に対する傾動動作が行われる。
【0072】
上述した本実施形態に係る医療用マニピュレータ10によれば、回転スリーブ56(回転体)が中空状であることにより先端動作部14の略中心に、エンドエフェクタ12に作用する作動手段21(
図5A参照)を配置することができる。そしてこれにより、先端動作部14のロール動作の回転範囲を無制限とする構成を実現できる。本実施形態では、開閉駆動伝達部80は、エンドエフェクタ12に対して開閉駆動のための駆動力を伝達するものであり、エンドエフェクタ12に対して機械的作用を及ぼすものであるため、開閉駆動伝達部80が上記の作動手段21を構成する。
【0073】
また、回転スリーブ56の内側ではなく外側に、回転支持筒58が配置されるため、回転スリーブ56の中空部を作動手段21の配置スペースとして好適に確保することができるとともに、先端動作部14の構造を簡素化できる。従って、本発明によれば、構造を複雑化することなく、自由度の高い先端動作部14を備えた医療用マニピュレータ10が提供される。
【0074】
また、医療用マニピュレータ10では、回転支持筒58に設けられた側孔71に係合部材72が挿入され、当該係合部材72が回転支持筒58の内側で回転スリーブ56の環状凹部56dに挿入されているため、当該係合部材72と環状凹部56dとが軸線方向に係合する構造となっている。従って、このような係合構造により、回転支持筒58に対する回転スリーブ56の相対回転を許容しつつ、回転支持筒58に対する回転スリーブ56の軸線方向の移動が好適に規制される。
【0075】
ところで、上述した本実施形態の構成とは異なるが、回転支持筒58の内側に回転スリーブ56を回転可能且つ軸線方向
に移動
不可能に配置することは、以下の構造でも実現可能である。すなわち、回転支持筒58を半割れ状の2つの部材(以下、「セグメント部材」という)によって構成し、回転スリーブ56の外周部に周方向に延在する環状突起を設け、前記各セグメント部材の内周部に周方向に延在する円弧状溝を設ける。組立時において、環状突起を設けた回転スリーブ56を2つのセグメント部材で囲み、当該2つのセグメント部材を溶接により相互接合すると、回転スリーブ56が回転支持筒58の内周部で回転可能に支持される。また、前記環状突起と前記円弧状溝との係合により、回転支持筒58に対して回転スリーブ56の軸線方向の移動が規制される。
【0076】
しかしながら、回転支持筒58を2つのセグメント部材で構成した場合、次のようないくつかの問題が懸念される。すなわち、セグメント部材の内周部に円弧状溝を形成するための溝加工において、所望の寸法精度を得ることは工数の増大につながり易い。また、一体成形品で製作された回転支持筒58を分割加工して得られた2つのセグメント部材の内周部に対して円弧状の溝加工を実施した後に2つのセグメント部材同士を溶接により接合する、という製作工程を採用した場合、円弧状の溝加工時の内部応力によりセグメント部材の円弧形状が開き、円筒精度を維持することが困難となる。またこの場合、切削加工により所望の円筒度を達成した一体成形品の回転支持筒58を製作しても、セグメント部材同士を溶接する際の熱変形によって円筒精度が低下する可能性がある。さらに、セグメント部材同士の溶接は、連続溶接の長さが長くなり、工数増大の要因となる。また、バリデーション要素も多い。
【0077】
これに対し、本実施形態に係る医療用マニピュレータ10では、回転支持筒58は、2つのセグメント部材を溶接した部材ではなく、一体成形品であり、回転支持筒58に設けられた側孔71に係合部材72が挿入され、当該係合部材72が回転支持筒58の内側で回転スリーブ56の環状凹部56dに係合する構造となっている。このような係合構造によれば、回転支持筒58を2つのセグメント部材で構成し、各セグメント部材の内周部に円弧状溝を設け、回転スリーブ56の外周部に環状突起を設けることにより、回転支持筒58に対する回転スリーブ56の軸線方向の移動を規制する構造と比較して、溝加工がない分、精度管理が容易であり、製作工数を低減できる。また、溝加工時の内部応力による変形がなく、回転支持筒58の円筒精度を好適に維持できる。
【0078】
さらに、本実施形態によれば、回転支持筒58を円筒状にするための溶接が不要であることから、溶接時の熱変形による円筒精度の低下がないとともに、2つのセグメント部材を溶接する場合と比較して、工数を削減することができる。また、バリデーション要素も少ない。
【0079】
特に、本実施形態の場合、係合部材72はピン形状であるため、係合部材72と環状凹部56dとの接触面積を少なくすることで摩擦抵抗を低減でき、回転支持筒58に対する回転スリーブ56の回転抵抗を抑制することができる。従って、回転支持筒58に対する回転スリーブ56の軸線方向の移動を適切に規制しつつ、回転支持筒58に対する回転スリーブ56の回転をスムーズにすることができる。
【0080】
さらに、本実施形態の場合、係合部材72は、回転支持筒58の周方向に間隔をおいて複数設けられるため、回転支持筒58に対する回転スリーブ56の軸線方向の移動の規制力を好適に高めることができる。
【0081】
本実施形態に係る医療用マニピュレータ10においては、ロール動作をモータ38による電動駆動とし、傾動動作を手動駆動としたが、医療用マニピュレータ10の変形例では、これとは逆に、傾動動作をモータ38による電動駆動とし、ロール動作を手動駆動とする構成を採用してもよい。このように、傾動動作とロール動作の両方を電動駆動とするのではなく、いずれか一方だけを駆動源により動かす構成であるため、駆動源を一つにする分、両方を電動駆動とする構成と比較して、小型・軽量化を実現することができる。
【0082】
医療用マニピュレータ10の別の変形例では、傾動動作、ロール動作又は開閉動作のうち、いずれか1つ又は2以上の動作を電動駆動として構成されてもよく、あるいは、傾動動作、ロール動作及び開閉動作を手動駆動として構成されてもよい。
【0083】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態に係る医療用マニピュレータ200の一部省略斜視図である。この医療用マニピュレータ200は、内視鏡手術等の手技に用いられ、処置対象Xとなる生体組織に通電して所定の処置(例えば、熱による焼灼等)を行うように構成されている。処置対象Xとなる生体組織としては、例えば、腫瘍(病変部)、筋肉、血管、或いは神経等が挙げられる。すなわち、医療用マニピュレータ200のエンドエフェクタ212は、生体組織を挟み込むことで生体組織に通電するエンドエフェクタ212(電気メス)として構成されている。
【0084】
医療用マニピュレータ200は、
図7に示すように、生体組織に処置を行うエンドエフェクタ212を有する先端動作部214と、先端動作部214の基端側に接続され所定長さ(例えば、350mm程度)基端方向に延在するシャフト216と、シャフト216の基端側に設けられ人からの操作(入力)に基づき先端動作部214を動作させるハンドル218とを備える。ハンドル218には、先端動作部214に所定の動作をさせるための電力を供給するコントローラ220が接続されるとともに、エンドエフェクタ212に高周波電流を通電する高周波電源部222が接続される。
【0085】
医療用マニピュレータ200の使用時には、ユーザ(医師等の手技者)によりハンドル218が把持及び操作されて、医療用マニピュレータ200の先端側を構成する先端動作部214及びシャフト216が、トラカール224を介して患者の体内に挿入される。また、医療用マニピュレータ200の先端側が体内に挿入された状態では、内視鏡の監視下に、エンドエフェクタ212の姿勢変動及び開閉動作を適宜実施する。これによりエンドエフェクタ212を生体組織に送達して、この生体組織に通電する処置を行う。
【0086】
なお、エンドエフェクタ212の構成は、生体組織に通電する電気メスに限定されるものではなく種々の構成を取り得ることは勿論である。例えば、エンドエフェクタ212としては、生体組織を切断する鋏やメス(ブレード)を適用してもよく、また、鉗子、針等の医療機器を把持する把持器具として構成し、把持した医療機器により生体組織に処置を施すこともできる。
【0087】
エンドエフェクタ212を含む先端動作部214は、シャフト216に対して複数の自由度で姿勢変更が可能である。本実施形態では、先端動作部214は、姿勢変更動作として、シャフト216の軸線に対して左右方向に反るように傾動する「傾動動作」(首振り動作)と、エンドエフェクタ212の長手方向の軸線を中心に回転する「ロール動作」とを行うことができる。本実施形態において、先端動作部214の傾動動作は、左右方向に首振りを行うヨー動作であるが、このヨー動作に代えて、上下方向に首振りを行うピッチ動作であってもよい。
【0088】
先端動作部214に連なるシャフト216は、直線状に延在し、その基端部にハンドル218が接続される。シャフト216は、長尺で細径の管状部材であり、その中空部には、エンドエフェクタ212の開閉動作、先端動作部214のロール動作及び傾動動作をするのに必要な動力をハンドル218側から先端動作部214に伝達するための動力伝達機構を構成する複数の部材が挿通及び配置されている。手技中は、シャフト216の基端側が患者の体外に露出されて、医療用マニピュレータ200の位置や角度が外部から操作されることで、体内に挿入された先端動作部214及びシャフト216の挿入角度や挿入量が変更される。
【0089】
ハンドル218は、複数の操作部を含みユーザが片手で把持し易いようにピストル型に形成されたハンドル本体240と、このハンドル本体240に着脱可能でありモータ246を含む駆動ユニット241とを備え、ハンドル本体240に駆動ユニット241が装着された状態でモータ246が駆動した際、モータ246の駆動力が先端動作部214に伝達されるように構成される。このため、この医療用マニピュレータ200は、ハンドル本体240、シャフト216及び先端動作部214を含むマニピュレータ本体については、所定回数使用した後に廃棄し、一方、駆動ユニット241については、接続するマニピュレータ本体を変えて何度も使用する、という利用形態を取ることができる。
【0090】
ハンドル本体240は、胴体部242と、胴体部242から下方に延出する把持部244とを有する。ハンドル本体240の筐体内の内部空間には上述した先端動作部214の動作(傾動動作、ロール動作、開閉動作)を実現する歯車、リンク等の多数の駆動部品が設けられる。また、胴体部242には、エンドエフェクタ212の開閉操作のためのトリガー252(開閉操作部)と、傾動操作のためのスイッチ248(傾動操作部)と、ロール操作のための回転ハンドル250(ロール操作部)が設けられる。
【0091】
本実施形態では、トリガー252は、手動操作部として構成されており、トリガー252に対する操作力が機械的に先端動作部214のエンドエフェクタ212に伝達されることで、エンドエフェクタ212の開閉動作が行われる。具体的には、トリガー252を前側に移動させた状態ではエンドエフェクタ212が開き、トリガー252を後側に移動させるとエンドエフェクタ212が閉じるように構成されている。
【0092】
本実施形態において、スイッチ248は、コントローラ220を介してモータ246に対して操作指令を与える電動操作部として構成されている。スイッチ248は、右側スイッチ248aと左側スイッチ248bとからなる。右側及び左側スイッチ248a、248bは、中央部がハンドル本体240に支持され、この中央部を支点に両端部(先端部及び基端部)がユーザの押し操作により変位するように構成されている。右側スイッチ248a又は左側スイッチ248bを押圧操作すると、押圧した位置に応じた信号がコントローラ220に送信され、コントローラ220の制御作用下にモータ246が駆動し、モータ246の駆動力が先端動作部214に伝達されることで、先端動作部214がシャフト216の軸線に対して非平行な方向(左右方向又は上下方向)に傾動する。
【0093】
本図示例の回転ハンドル250は、胴体部242の先端側に設けられる。本実施形態において、回転ハンドル250は、手動操作部として構成されている。回転ハンドル250を回転操作すると、その操作力が、ハンドル218及びシャフト216内に設けられた傾動動作用の動力伝達系を介して機械的に先端動作部214に伝達され、先端動作部214が当該先端動作部214の長手方向の軸線を中心として回転する。
【0094】
駆動ユニット241は、ハウジング239と、ハウジング239内に配置されたモータ246と、モータ246の出力軸に固定された図示しないピニオンギヤとを有し、ハンドル本体240の後部に着脱可能である。また、駆動ユニット241には、上述したコントローラ220及び高周波電源部222が接続されている。コントローラ220は、モータ246への電力供給と駆動制御を行うものであり、外部電源から電力を受ける。スイッチ248を操作すると、その操作に応じた信号がコントローラ220に送信され、コントローラ220がモータ246の駆動を制御する。なお、コントローラ220の機能の一部又は全部は、駆動ユニット241に一体的に搭載され得る。高周波電源部222は、ユーザの操作に基づき、エンドエフェクタ212に電力(高周波電圧)を供給する機能を有している。
【0095】
図8は、先端動作部214の要部斜視図である。
図9は、先端動作部214の分解斜視図である。
図10は、先端動作部214の縦断面図である。
図11Aは、
図10におけるXI−XI線に沿った縦断面図である。
図8〜
図11Aに示すように、先端動作部214は、開閉動作可能なエンドエフェクタ212と、エンドエフェクタ212が固定されたグリッパ保持部材230(回転体)と、グリッパ保持部材230を軸線回りに回転可能に支持する回転支持筒232と、回転支持筒232とシャフト216との間で湾曲変形可能な湾曲部234と、湾曲部234の内側に配置された中空チューブ282とを有する。
【0096】
エンドエフェクタ212は、第1グリッパ部材226と、第2グリッパ部材228とからなる。第1グリッパ部材226と第2グリッパ部材228とは、支点ピン254により、グリッパ軸線Og(
図8参照)を中心として回転可能に連結される。
【0097】
図9及び
図11Aに示すように、延出部291の先端寄りの部分には、支点ピン254が嵌挿された丸孔302が穿設され、支点ピン254はこの丸孔302に嵌め込まれる絶縁リング304に軸支される。延出部291の基端寄りの部分には、長孔292が穿設され、この長孔292に可動ピン296が絶縁筒306を介して挿入される。
【0098】
グリッパ保持部材230には、グリッパ保持部材230の先端及び両側面にて開口し且つグリッパ保持部材230の長手方向に沿って互いに平行に延在する2つの隙間308が形成される。この隙間308に、第1及び第2グリッパ部材226、228の各延出部291が挿入された状態で、支点ピン254によって回転可能に支持される。グリッパ保持部材230の基端側は、円筒状の回転支持筒232に回転可能に挿入されている。
【0099】
グリッパ保持部材230は、上述した隙間308を形成するように先端方向に延出する板状の3つの保持板310を有するグリッパ側三又部312と、グリッパ側三又部312の基端側に連なり基端方向に延出する係合筒部314とからなる。
【0100】
3つの保持板310の先端寄りの部分には、支点ピン254が挿入される支点ピン用孔316が形成される。支点ピン254は、第1及び第2グリッパ部材226、228の基端部が隙間308に配置された状態で、支点ピン用孔316に挿入され、端部がワッシャ324に固定される。グリッパ側三又部312において、支点ピン用孔316よりも基端側には、可動ピン296の両端部が挿入される可動ピン用長孔318が形成される。可動ピン296は、第1及び第2グリッパ部材226、228に設けられた長孔292と、グリッパ保持部材230に設けられた可動ピン用長孔318に挿入された状態で、これらの長孔292、318に沿って移動可能である。可動ピン296の端部には、ワッシャ326が固定される。
【0101】
係合筒部314の外面には、360°の範囲で周方向に延在する環状凹部320が設けられる。グリッパ側三又部312と係合筒部314の内部には、移動体294が挿入される摺動空間322(
図10参照)が連なるように形成されている。
【0102】
回転支持筒232は、円筒状に形成された円筒部232aを有し、円筒部232aの内周部でグリッパ保持部材230を回転可能に支持する。
図11A及び
図11Bに示すように、回転支持筒232には、当該回転支持筒232の内外を貫通する側孔354が設けられる。本図示例において、側孔354は、回転支持筒232の円筒部232aを構成する壁を半径方向に貫通する円形のピン孔であるが、周方向に所定角度範囲で延在する長孔であってもよい。また、本図示例において、側孔354は、回転支持筒232の軸線を基準として互いに反対位置に2つ設けられているが、1つだけ設けられてもよく、あるいは、周方向に間隔をおいて3つ以上設けられてもよい。
【0103】
側孔354には係合部材335が配設される。具体的には、係合部材335は側孔354に挿入されるとともに、回転支持筒232に固定される。本図示例において、係合部材335の外端335a(回転支持筒232側の端部)は、回転支持筒232に対して、例えば溶接、接着等の適宜の接合手段により強固に固定される。係合部材335の内端335b(グリッパ保持部材230側の端部)は、回転支持筒232の内周面から内方に突出し、グリッパ保持部材230に設けられた環状凹部320に挿入されている。本図示例の係合部材335は、ピン形状であり、その内端335b側の外径R2は、環状凹部320の幅W2(グリッパ保持部材230の軸線方向に関する環状凹部320の寸法)と略同じか、僅かに小さい。
【0104】
なお、係合部材335の形状は、ピン形状に限られず、例えば、回転支持筒232の周方向に所定角度範囲で延在する円弧形状であってもよい。
【0105】
係合部材335の外端335aには、環状のフランジ部335cが設けられ、当該フランジ部335cが、側孔354の外端に設けられた環状の拡径部354aに配置されている。これにより、回転支持筒232に対して係合部材335を精度よく位置決めすることができ、回転支持筒232の内周面からの係合部材335の突出長さを所望長さに設定することができる。この場合、本図示例のように、係合部材335の内端335bと、環状凹部320の底部との間に若干の隙間が設けられると、係合部材335と環状凹部320との摺動抵抗を効果的に抑制できる。
【0106】
グリッパ保持部材230に設けられた環状凹部320と、回転支持筒232に固定された係合部材335とが係合することにより、グリッパ保持部材230が回転支持筒232に対して回転可能且つ軸線方向に移動不可能な状態で、グリッパ保持部材230と回転支持筒232とが連結されている。従って、グリッパ保持部材230は、環状凹部320と係合部材335との係合により、回転支持筒232からの抜け止めがなされている。
【0107】
先端動作部214の組立においては、回転支持筒232の先端側からグリッパ保持部材230の基端を挿入する工程(挿入工程)と、回転支持筒232に設けられた各側孔354に、回転支持筒232の外側から係合部材335を挿入するとともに、係合部材335の内端335bをグリッパ保持部材230の環状凹部320内に配置する工程(係合部材配置工程)と、回転支持筒232と各係合部材335とを、例えば溶接、接着等により接合する工程(接合工程)とを順次行う。これにより、回転支持筒232の内周部でグリッパ保持部材230が回転可能に支持され、且つ回転支持筒232に対してグリッパ保持部材230の抜け止めがなされた状態に組み立てることができる。
【0108】
なお、回転支持筒232と各係合部材335とを溶接により接合する場合には、係合部材335を外端335a側から見た
図11Cに示すように、1つの係合部材335あたりの回転支持筒232との接合部357(溶接部)を1箇所(1ショット)だけ設けてもよい。係合部材335に対しては、側孔354から抜ける方向の荷重がほとんど作用しないため、1つの係合部材335あたりの回転支持筒232との接合部357が1箇所だけであっても、接合強度が不足することはない。従って、回転支持筒232と係合部材335とを溶接により接合する構成を採用した場合でも、回転支持筒232において、溶接による熱変形が生じることはほとんどなく、高い円筒精度を好適に維持することができる。
【0109】
グリッパ保持部材230の内部には、このグリッパ保持部材230に対して進退移動可能な移動体294が配設される。移動体294には可動ピン296が固定される。ロール動作時にはグリッパ保持部材230と移動体294が共に回転するが、開閉動作時にはグリッパ保持部材230が動作せずに、グリッパ保持部材230の内側で移動体294が進退移動する。
【0110】
図9に示すように、移動体294は、グリッパ保持部材230と同様に、隙間330を形成するように先端方向に延出する板状の3つの保持板328を有する移動体側三又部332と、移動体側三又部332の基端側に連なり基端方向に延出する挿入部334とを有する。3つの保持板328の先端寄りの部分には、可動ピン296が挿入される可動ピン用丸孔336が形成される。
【0111】
移動体294の3つの保持板328のうち中央に延出する保持板328aは、絶縁材料によって構成される。
図11Aに示すように、保持板328aは、挿入部334を貫通してその基端が挿入部334から突出する。保持板328aにおける、挿入部334の基端から突出した部分の上下両面には溶接部408が設けられている。溶接部408には、導線260の先端部から露呈された金属線材256が溶接材料によって溶接される。導線260は、先端部がコネクタ342により固定保持されて中空チューブ282内で軸方向に延在している。
【0112】
グリッパ保持部材230の係合筒部314の内側には、中空円筒状の円筒体338が係合筒部314に対して軸方向に移動可能に配置される。円筒体338の全長は、例えば、6mm程度である。円筒体338の先端部には上述した移動体294の挿入部334が挿入される。円筒体338の基端部にはコネクタ342が挿入される。
【0113】
図10に示すように、円筒体338の先端側及び基端側には、内側方向に向かって円筒体338の内周面から突出する接続ピン410a、410bが設けられている。先端側に配置された接続ピン410bの内端は、移動体294の挿入部334に設けられた移動体側係合溝414に挿入され、基端側に配置された接続ピン410aの内端は、コネクタ342に設けられたコネクタ側係合溝412に挿入される。これにより、コネクタ342、円筒体338及び移動体294は、軸方向の接続が接続ピン410a、410bにより補強され、中空チューブ282から伝達される進退移動の動作力が、円筒体338を介して動体に確実に伝達される。
【0114】
円筒体338の基端には、中空円筒状のコネクタ342が接続される。コネクタ342は、長手方向の中間部に設けられたフランジ部344と、このフランジ部344から先端方向に延出する先端接続突部346と、フランジ部344から基端方向に延出する基端接続突部348とを有する。コネクタ342は、先端接続突部346が円筒体338内に挿入され、基端接続突部348が中空チューブ282内に挿入されることで、円筒体338と中空チューブ282とを接続する。
【0115】
コネクタ342の基端には、軸方向に貫通する中空部282a(
図9参照)を有するとともに、湾曲部234の湾曲に追従可能な可撓性を有する中空チューブ282が接続される。この中空チューブ282は、湾曲部234の内側に配置され、その基端がシャフト216の内筒286(
図12参照)に連結固定されている。中空チューブ282は、湾曲部234に追従して湾曲しても回転可能なトルクチューブとしての機能を有する。中空チューブ282の内径は、例えば1.5mm程度である。
【0116】
このように構成された先端動作部214において、中空チューブ282の軸方向の移動は、コネクタ342及び円筒体338を介して、移動体294に伝達される。そして、グリッパ保持部材230内で移動体294が進出した位置(可動ピン296が長孔292の先端側に位置する状態)では、第1及び第2グリッパ部材226、228の延出部291が可動ピン296の箇所で交差するため、第1及び第2グリッパ部材226、228の先端部分が離間して開状態となる。グリッパ保持部材230内で移動体294が後退移動した位置(可動ピン296が長孔292の基端側に位置する状態)では、第1及び第2グリッパ部材226、228の長孔292がガイドされて各延出部291が互いに近接する(重なる)ことに伴い、第1及び第2グリッパ部材226、228の先端部分も互いに近接して閉状態となる。このように、エンドエフェクタ212では、中空チューブ282から先端及び基端方向の動作力が伝達されることで開閉動作が実施される。この開閉動作は、エンドエフェクタ212の姿勢変動に依らず、ユーザの操作に基づき所望のタイミングで実施可能となっている。
【0117】
図12に示すように、湾曲部234に接続されるシャフト216は、外筒284と、外筒284内に配置された内筒286とを有する二重管構造となっている。内筒286は、外筒284内で軸方向に移動可能且つ軸線回りに回転可能である。中空チューブ282の基端と内筒286の先端とは、相対回転不可能に連結されている。従って、内筒286が外筒284内で軸方向に移動すると、これに伴い中空チューブ282が湾曲部234の内側で軸方向に移動する。また、外筒284内で内筒286が軸線回りに回転すると、これに伴い中空チューブ282が湾曲部234の内側で回転する。
【0118】
内筒286の基端側にはハンドル218内の図示しない進退移動機構が接続されている。進退移動機構は、複数のリンクを有し、内筒286とトリガー252(
図7参照)とを機械的に接続している。ユーザが手動によりトリガー252の引き操作を行うと、トリガー252の操作力が基端側のハンドル218内に伝達され、進退移動機構を介して内筒286が基端方向に移動させられ、これにより中空チューブ282が基端方向に移動させられる。一方、ユーザが手動によりトリガー252の押し操作を行うと、トリガー252の操作力が基端側のハンドル218内に伝達され、進退移動機構を介して内筒286が先端方向に移動させられ、これにより中空チューブ282が先端方向に移動させられる。
【0119】
中空チューブ282は、先端動作部214の湾曲部234よりも軸方向長さが長く形成されており、中空チューブ282が進退移動しても湾曲部234に常に重なるように配設されている。従って、湾曲部234が湾曲し、これに追従して中空チューブ282が湾曲していても、中空チューブ282を湾曲に沿って進退移動させることができ、中空チューブ282の先端側に接続されている円筒体338に進退移動の動作力を伝達させることができる。
【0120】
医療用マニピュレータ200は、上述したようにエンドエフェクタ212による生体組織の把持にともない、生体組織に通電する機能を有している。このため、
図7等に示す第1及び第2グリッパ部材226、228は、導電性材料からなり、生体組織に通電する電極(プラス電極とマイナス電極)に構成されている。すなわち、本実施形態に係るエンドエフェクタ212はバイポーラ式の電気メスである。勿論、これに限定されるものではなく、エンドエフェクタ212をモノポーラ式の電気メスとして構成してもよい。
【0121】
図10及び
図11Aに示すように、移動体294の基端には導線260が接続される。この導線260は、例えば銅からなる2本の金属線材256と、2本の金属線材256を被覆する絶縁材257とにより構成され、シャフト216とともに基端方向に延在しハンドル218内に挿入されている。本実施形態では、この導線260が中空チューブ282及び内筒286の軸心を通るように配設されている。従って、先端動作部214やシャフト216の側面に、導線260を別途配線する必要がなくなるため、先端動作部214の動作による導線260の絡み合い等が回避され、通電を良好に行うことができる。
【0122】
図11Aに示すように、第1グリッパ部材226と第2グリッパ部材228は、絶縁リング304を介して1つの支点ピン254により軸支される。開閉動作の動作力を受けると、第1及び第2グリッパ部材226、228の先端部分は、支点ピン254を支点として近接又は離間する。そのため、第1及び第2グリッパ部材226、228の先端部分同士が離間した開状態では通電が遮断されるが、第1及び第2グリッパ部材226、228の先端部分同士が当接する閉状態(生体組織を挟んで間接的に閉状態となる状態も含む)では、第1及び第2グリッパ部材226、228間の通電がなされ、生体組織にも通電される。
【0123】
エンドエフェクタ212の閉状態では、上述したように、異なる極性からなる第1及び第2グリッパ部材226、228の接続により通電状態が形成される。すなわち、第1及び第2グリッパ部材226、228により生体組織が挟まれた状態では、高周波電源部222から導線260を介して第1及び第2グリッパ部材226、228に供給された高周波電流が生体組織に流れ、所定の処置(熱による焼灼等)がなされる。
【0124】
図12に示すように、ハンドル本体240内には、内筒286の回転時において導線260と高周波電源部222との電気的接続を継続的に行うためのスリップリングシステム470が設けられる。スリップリングシステム470は、ハンドル本体240内でシャフト216の内筒286に固定された一対の回転端子262a、262bと、当該一対の回転端子262a、262bにそれぞれ接触する一対の接触端子264a、264bとを有する。
【0125】
回転端子262a、262bの一方及び他方は、導線260における2本の金属線材256の一方及び他方にそれぞれ電気的に接続されている。回転端子262a、262bは、内筒286とともに回転する。一対の接触端子264a、264bは、ハンドル内で固定されるとともに、ハンドル218の外部に設けられた高周波電源部222(
図7参照)に接続されている。スリップリングシステム470では、回転端子262a、262bが回転した場合でも、回転端子262a、262bと接触端子264a、264bとの接触が維持されるため、高周波電源部222からの出力を導線260を介してエンドエフェクタ212に供給することができる。
【0126】
図10及び
図11Aに示すように、中空チューブ282の内部には、互いに異なる巻き方向に巻回された第1及び第2コイル490、492が、同心状に重なって配置されている。これにより、中空チューブ282が湾曲部234により湾曲した状態で回転しても容易に回転トルクを先端(エンドエフェクタ212)側に伝達させることができる。
【0127】
先端動作部214のロール動作は、グリッパ保持部材230を回転支持筒232に対して回転させることによってなされる。回転支持筒232は、湾曲部234に対して回転しないように連結されており、この回転支持筒232に対してグリッパ保持部材230が回転可能である。このため、エンドエフェクタ212もグリッパ保持部材230と一緒に回転する。
【0128】
図12に示すように、内筒286は、外筒284よりも基端方向に突出し、ハンドル218内部の回転機構288によって回転自在に軸支されている。ハンドル本体240内には、回転ハンドル250の基端側に固定され回転ハンドル250と一体的に回転可能な駆動ギヤ438と、内筒286に固定され内筒286と一体的に回転可能な従動ギヤ426と、駆動ギヤ438と従動ギヤ426との間の動力伝達を行う中間駆動軸439とが設けられる。中間駆動軸439は、一端側に設けられ駆動ギヤ438と噛み合う第1中間ギヤ436と、他端側に設けられ従動ギヤ426と噛み合う第2中間ギヤ430と、第1中間ギヤ436と第2中間ギヤ430とを連結する連結軸432とを有し、ハンドル本体240内で回転可能に支持される。
【0129】
ユーザが手動により回転ハンドル250を回転操作すると、その操作力(回転駆動力)は、駆動ギヤ438、中間駆動軸439及び従動ギヤ426を介して、内筒286に伝達される。内筒286に伝達された回転力は、中空チューブ282に伝達される。その結果、中空チューブ282の先端側に接続されたグリッパ保持部材230及びエンドエフェクタ212が、ロール軸線Or(
図8参照)を中心に回転する。この動作が、先端動作部214のロール動作である。この場合、移動体294、円筒体338、コネクタ342及び導線260も、グリッパ保持部材230とともに回転する。
【0130】
内筒286は、外筒284に対し無制限に回転自在であり、湾曲部234と重なる位置に配設される中空チューブ282も無制限に回転自在であり、グリッパ保持部材230及びエンドエフェクタ212も無制限に回転自在となっている。また、導線260は中空チューブ282及び内筒286内を延在するため、中空チューブ282及び内筒286と一体的に回転する。これにより、医療用マニピュレータ200では、先端動作部214のロール動作の可動範囲(エンドエフェクタ212の回転範囲)が無制限に設定されている。従って、エンドエフェクタ212は、ロール動作による姿勢の変動を何度でも行うことができる。
【0131】
医療用マニピュレータ200の傾動動作は、回転支持筒232の基端側に連結された湾曲部234によって実現される。湾曲部234は、硬質な材料で構成された複数(
図12では5つ)の関節部材236を軸方向に並設して構成される。
【0132】
図8及び
図9に示すように、湾曲部234を構成する5つの関節部材236A〜236Eのうち4つの関節部材236A〜236Dは、中央部において筒状に形成された中央筒部362(筒状部)と、中央筒部362から先端側に延出する先端ヒンジ片364と、中央筒部362から基端側に延出する基端ヒンジ片366とを備える。
【0133】
先端ヒンジ片364は、基端ヒンジ片366よりも内側に延出するように形成されている。隣り合う関節部材236同士は、先端ヒンジ片364と基端ヒンジ片366が重なり合った状態で、ヒンジ軸238により互いに回動可能に連結される。
図9及び
図11Aに示すように、回転支持筒232の基端側筒部352の上下位置には、基端方向に突出するヒンジ片356が形成され、このヒンジ片356は、最も先端側の関節部材236Aに回動可能に連結される。
【0134】
最も基端側の関節部材236Eは、シャフト216の先端部に連結固定される。最も基端側の関節部材236Eは、関節部材236A〜236Dと同じ中央筒部362及び先端ヒンジ片364を有しているが、中央筒部362の基端側に基端ヒンジ片366が設けられていない。関節部材236Eは、その基端部が外筒284に嵌合されることで、この外筒284に連結固定される。
【0135】
軸方向に並ぶ5つの関節部材236の両側には、一対のベルト(第1ベルト266、第2ベルト268)が湾曲部234に沿って挿通配置される。各関節部材236は、第1及び第2ベルト266、268を摺動自在に保持する。
図9に示すように、第1及び第2ベルト266、268の各先端部は、固定ピン360により、基端側筒部352に設けられた切り欠き部358に連結固定される。
【0136】
このように構成された医療用マニピュレータ200において、すなわち、モータ246が回転駆動することにより、その駆動力がハンドル218内及びシャフト216内に設けられた傾動動力伝達機構を介して第1ベルト266及び第2ベルト268に伝達され、第1ベルト266と第2ベルト268とが湾曲部234に対して互いに反対方向に進退移動する。これにより、回転支持筒232及び関節部材236A〜236Dが略同じ角度ずつ傾き、湾曲部234が右方向又は左方向に湾曲する。
【0137】
なお、傾動動力伝達機構の構成は、図示しないが、例えば、ラックアンドピニオン機構によりモータ246の回転駆動を直線駆動に変換する機構を用いたものでもよい。他の構成の傾動動力伝達機構では、プーリ、ベルト、ワイヤ等を用いた機構を用いてもよい。ベルトは、上記のように湾曲部234に一対(2本)設けられる構成に限定されるものではなく、1本又は3本以上設けられてもよい。
【0138】
以上説明したように、本実施形態に係る医療用マニピュレータ200によれば、ハンドル218側の回転駆動力を、湾曲部234の内側に配置された可撓性を有する中空チューブ282を介して、エンドエフェクタ212に伝達することにより、エンドエフェクタ212を無制限の回転範囲でロール動作させることができる。このため、湾曲部234の先端側においてエンドエフェクタ212のロール軸線Or回りの姿勢(角度)を自由に変更することができ、エンドエフェクタ212の向きを生体組織に合うように何度でも変更して的確な処置を施すことが可能となる。
【0139】
医療用マニピュレータ200によれば、グリッパ保持部材230(回転体)が中空状であることにより、先端動作部214の略中心に、エンドエフェクタ212に作用する作動手段221(
図10及び
図11A参照)を配置することができる。そしてこれにより、先端動作部214のロール動作の回転範囲を無制限とする構成を実現できる。本実施形態において、移動体294、円筒体338、コネクタ342、中空チューブ282及び導線260は、エンドエフェクタ212に対して機械的又は電気的作用を及ぼすものである。従って、本実施形態では、これらの部材によって、エンドエフェクタ212に作用する作動手段221が構成される。
【0140】
本実施形態の場合、グリッパ保持部材230の内側ではなく外側に、回転支持筒232が配置されるため、グリッパ保持部材230の中空部を作動手段221の配置スペースとして好適に確保することができるとともに、先端動作部214の構造を簡素化できる。従って、本実施形態によれば、構造を複雑化することなく、自由度の高い先端動作部214を備えた医療用マニピュレータ200が提供される。
【0141】
また、医療用マニピュレータ200では、回転支持筒232に設けられた側孔354に係合部材335が挿入され、当該係合部材335が回転支持筒232の内側でグリッパ保持部材230(回転体)の環状凹部320に挿入されているため、当該係合部材335と環状凹部320とが軸線方向に係合する構造となっている。従って、このような係合構造により、回転支持筒232に対するグリッパ保持部材230の相対回転を許容しつつ、回転支持筒232に対するグリッパ保持部材230の軸線方向の移動が好適に規制される。
【0142】
ところで、上述した本実施形態の構成とは異なるが、回転支持筒232の内側にグリッパ保持部材230を回転可能且つ軸線方向
に移動
不可能に配置することは、以下の構造でも実現可能である。すなわち、回転支持筒232を半割れ状の2つの部材(以下、「セグメント部材」という)によって構成し、グリッパ保持部材230の外周部に周方向に延在する環状突起を設け、回転支持筒232の各セグメント部材の内周部に周方向に延在する円弧状溝を設ける。組立時において、グリッパ保持部材230を2つのセグメント部材で囲み、当該2つのセグメント部材を溶接により相互接合すると、グリッパ保持部材230が回転支持筒232の内周部で回転可能に支持される。また、前記環状突起と前記円弧状溝との係合により、回転支持筒232に対してグリッパ保持部材230の軸線方向の移動が規制される。
【0143】
しかしながら、回転支持筒232を2つのセグメント部材で構成した場合、次のようないくつかの問題が懸念される。すなわち、セグメント部材の内周部に円弧状溝を形成するための溝加工において、所望の寸法精度を得ることは工数の増大につながり易い。また、一体成形品で製作された回転支持筒232を分割加工して得られた2つのセグメント部材の内周部に対して円弧状の溝加工を実施した後に2つのセグメント部材同士を溶接により接合する、という製作工程を採用した場合、円弧状の溝加工時の内部応力によりセグメント部材の円弧形状が開き、円筒精度を維持することが困難である。またこの場合、切削加工により所望の円筒度を達成した一体成形品の回転支持筒232を製作しても、セグメント部材同士を溶接する際の熱変形によって円筒精度が低下する可能性がある。さらに、セグメント部材同士の溶接は、連続溶接の長さが長くなり、工数増大の要因となる。また、バリデーション要素も多い。
【0144】
これに対し、本実施形態に係る医療用マニピュレータ200では、回転支持筒232は、2つのセグメント部材を溶接した部材ではなく、一体成形品であり、回転支持筒232に設けられた側孔354に係合部材335が挿入され、当該係合部材335が回転支持筒232の内側でグリッパ保持部材230の環状凹部320に係合する構造となっている。このような係合構造によれば、回転支持筒232を2つのセグメント部材で構成し、各セグメント部材の内周部に円弧状溝を設け、グリッパ保持部材230の外周部に環状突起を設けることにより、回転支持筒232に対するグリッパ保持部材230の軸線方向の移動を規制する構造と比較して、溝加工がない分、精度管理が容易であり、製作工数を低減できる。また、溝加工時の内部応力による変形がなく、回転支持筒232の円筒精度を好適に維持できる。従って、内側に回転体がありその外側に回転支持部がある構造を、精度よく簡易に構築することができる。
【0145】
さらに、本実施形態によれば、回転支持筒232を円筒状にするための溶接が不要であることから、溶接時の熱変形による円筒精度の低下がないとともに、2つのセグメント部材を溶接する場合と比較して、工数を削減することができる。また、バリデーション要素も少ない。
【0146】
特に、本実施形態の場合、係合部材335はピン形状であるため、係合部材335と環状凹部320との接触面積を少なくすることで摩擦抵抗を低減でき、回転支持筒232に対するグリッパ保持部材230の回転抵抗を抑制することができる。従って、回転支持筒232に対するグリッパ保持部材230の軸線方向の移動を適切に規制しつつ、回転支持筒232に対するグリッパ保持部材230の回転をスムーズにすることができる。
【0147】
さらに、本実施形態の場合、係合部材335は、回転支持筒232の周方向に間隔をおいて複数設けられるため、回転支持筒232に対するグリッパ保持部材230の軸線方向の移動の規制力を好適に高めることができる。
【0148】
本実施形態の場合、中空チューブ282の中空部282aに導線260が配設されることにより、バイポーラ式の電気メスとして構成されるエンドエフェクタ212に通じる通電経路を簡単に構築することができ、エンドエフェクタ212に安定的に電力を供給することができる。グリッパ保持部材230とエンドエフェクタ212が回転する際、中空チューブ282内に収容される導線260も一体的に回転するので、エンドエフェクタ212と導線260(通電経路)の断線を確実に防ぐことができる。
【0149】
本実施形態に係る医療用マニピュレータ200においては、ロール動作をモータ246による電動駆動とし、傾動動作を手動駆動としたが、医療用マニピュレータ200では、これとは逆に、傾動動作をモータ246による電動駆動とし、ロール動作を手動駆動とする構成を採用してもよい。医療用マニピュレータ200の別の変形例では、傾動動作、ロール動作又は開閉動作のうち、いずれか1つ又は2以上の動作を電動駆動として構成されてもよく、あるいは、傾動動作、ロール動作及び開閉動作を手動駆動として構成されてもよい。
【0150】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。