特許第6114600号(P6114600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6114600-鉄筋コンクリート構造物 図000002
  • 特許6114600-鉄筋コンクリート構造物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114600
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20170403BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   E04G23/02 J
   E04B1/41 502N
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-65086(P2013-65086)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-189994(P2014-189994A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐輔
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−124107(JP,U)
【文献】 特公昭45−013016(JP,B1)
【文献】 特開2012−057314(JP,A)
【文献】 実開昭49−101507(JP,U)
【文献】 特開昭47−032619(JP,A)
【文献】 米国特許第04095389(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04B 1/41
E04B 1/21
E04C 5/18
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造の柱の上端部に増設用の柱の下端を接続するための柱下端接合部を備え、
柱下端接合部が、増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋と接続するための柱主筋接続部を備え
柱主筋接続部は、増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋を挿入するために柱下端接合部の上端面に開口して下方に延長する有底穴と、鉄筋コンクリート構造物の柱の内部に上下方向に延長するように設けられた柱主筋の上端より上方に延長して上端が有底穴の底からコンクリートを挟んで下方に位置されるように設けられた接続用鉄筋と、有底穴の周囲及び接続用鉄筋の周囲を上下方向にスパイラル状に延長するように柱の内部に設けられたスパイラル筋とを備えて構成されたことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物。
【請求項2】
筋コンクリート構造物の柱の内部に上下方向に延長するように設けられた柱主筋の上端には、定着部が形成されたことを特徴とする請求項に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増設用の柱を接合するための接合部を備えた鉄筋コンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
上部に増築予定がある建物の構築方法として、既設部分の最上階の本設床を構築せずに、当該本設床よりも少し下った位置に軽量材を使用して仮屋根を設けるようにし、増築予定部分を構築する際には、仮屋根を残したまま上記本設床を構築する方法が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−171819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような上部に増築予定がある建物の構築方法では、既設の柱の上に増設用の柱をどのように接続するのか不明であり、既設の柱の上に増設用の柱を簡単かつ確実に接続することができない。
本発明は、柱の上に増設用の柱を簡単かつ確実に接続することができる鉄筋コンクリート構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る鉄筋コンクリート構造物は、鉄筋コンクリート構造の柱の上端部に増設用の柱の下端を接続するための柱下端接合部を備え、柱下端接合部が、増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋と接続するための柱主筋接続部を備え、柱主筋接続部は、増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋を挿入するために柱下端接合部の上端面に開口して下方に延長する有底穴と、鉄筋コンクリート構造物の柱の内部に上下方向に延長するように設けられた柱主筋の上端より上方に延長して上端が有底穴の底からコンクリートを挟んで下方に位置されるように設けられた接続用鉄筋と、有底穴の周囲及び鉄筋の周囲を上下方向にスパイラル状に延長するように柱の内部に設けられたスパイラル筋とを備えて構成されたので、増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋を有底穴に挿入して、当該有底穴内、及び、増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋の周囲にコンクリートやモルタル等の接合手段を充填することによって、当該鉄筋コンクリート構造の柱の上端部に増設用の柱を簡単かつ確実に接続することができ、当該鉄筋コンクリート構造物に増設用の柱を簡単に増設できるようになる。また、鉄筋コンクリート構造の柱の内部に上下方向に延長するように設けられた柱主筋の上端定着部より上方に延長した接続用鉄筋の上端は有底穴の底からコンクリート部を挟んで下方に位置されているので、接続用鉄筋の上端の露出が防止され、接続用鉄筋が雨水等から保護されるので、接続用鉄筋の劣化を防止できる。さらに、スパイラル筋が有底穴の周囲及び接続用鉄筋の周囲に跨がるように設けられており、コンクリートがスパイラル筋を形成する螺旋体の螺旋間に入り込むために、有底穴と接続用鉄筋との一体性が向上し、柱下端接合部の内部に設けられている接続用鉄筋と有底穴に挿入された増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋との連続性を間接的に確保できるので、接合度が向上する。
鉄筋コンクリート構造物の柱の内部に上下方向に延長するように設けられた柱主筋の上端には、定着部が形成されたので、柱主筋の上端を押さえ込んで、鉄筋コンクリート構造物のコンクリートにかかる引張りの力を柱主筋に負担させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】(a)は鉄筋コンクリート構造物の柱下端接合部の上側から柱下端接合部の上端面を見た図、(b)鉄筋コンクリート構造物の縦断面を示す図。
図2】増設用の柱と鉄筋コンクリート構造物の柱下端接合部とが接合された状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図2に示すように、鉄筋コンクリート構造物1は、鉄筋コンクリート構造の柱2の上端部に増設用の柱3の下端を接続するための柱下端接合部4を備え、当該柱下端接合部4が、増設用の柱3の下端面31より下方に突出する柱主筋5と接続するための柱主筋接続部10を備えた構成である。
【0008】
図1に示すように、鉄筋コンクリート構造物1の柱2は、柱2の上部に最上階の梁6と接合される柱梁接合部7を備え、当該柱梁接合部7よりも上方に突出する柱2の上端部に増設用の柱3の下端を接続するための柱下端接合部(柱脚接合部)4を備えた構成である。
柱下端接合部4は、柱主筋接続部10と当該柱主筋接続部10の周囲に打設されて固化したコンクリート9とにより形成された鉄筋コンクリート構造部である。
柱下端接合部4内に設けられた柱主筋接続部10は、接続用鉄筋11と、有底穴12と、スパイラル筋13とにより構成される。
接続用鉄筋11は、鉄筋コンクリート構造物1の柱2の内部に上下方向に延長するように設けられた柱主筋11Aの上端に形成された定着部15Aより上方に延長して上端43が有底穴12の底面42からコンクリート9を挟んで下方に位置されるように設けられた鉄筋である。例えば、鉄筋コンクリート構造物1の柱2の内部に上下方向に延長するように設けられる柱主筋を形成する鉄筋として柱梁接合部7よりも上方に突出する長さの鉄筋を用い、定着板15が当該鉄筋の上端よりも下方に位置されて柱梁接合部7の上部に位置するように設けられることで柱主筋11Aの上端に定着部15Aが形成され、この定着部15Aより上方に位置される部分の鉄筋を接続用鉄筋11とする。尚、定着板15は、柱主筋11Aの上端を押さえ込んで、柱梁接合部7のコンクリート9にかかる引張りの力を柱主筋11Aに負担させるための構成部品である。
有底穴12は、増設用の柱3の下端面31より下方に突出する柱主筋5を挿入するために柱下端接合部4の上端面41に開口し、下方に延長した下端が底面42となった有底穴である。有底穴12は、例えば円柱状にくり貫かれた形状の有底穴である。
有底穴12と接続用鉄筋11とがそれぞれ対応して上下に位置されるように構成される。例えば、例えば円柱状にくり貫かれた形状の有底穴12の中心軸と接続用鉄筋11の中心軸とが一致するように有底穴12と接続用鉄筋11とが上下に位置されて、有底穴12の底面42と接続用鉄筋11の上端43との間にコンクリート9が介在する間隔H1が設けられた構成である。
スパイラル筋13は、上下に位置された1組の有底穴12及び接続用鉄筋11の中心軸に沿って当該接続用鉄筋11及び有底穴12の外周面の外側を螺旋を描くように配置された鉄筋である。当該スパイラル筋13は、増設用の柱3の下端面31より下方に突出する柱主筋5と柱2の内部に設けられた接続用鉄筋11とを結び付けて力の伝達を確保するため構成部品である。
【0009】
このように上下に間隔H1を隔てて配置された有底穴12及び接続用鉄筋11と当該有底穴12及び接続用鉄筋11の周囲を中心軸に沿って上下方向に螺旋状に延長するように設けられたスパイラル筋13との組を複数組備える。
つまり、柱下端接合部4は、有底穴12と接続用鉄筋11とスパイラル筋13とにより構成された柱主筋接続部10を、複数備えた構成である。例えば、柱下端接合部4が断面四角形の鉄筋コンクリートブロックにより構成される場合、複数の柱主筋接続部10が四角形の4つの柱側面4a;4a…に沿って設けられる。
【0010】
即ち、柱下端接合部4に設けられた柱主筋接続部10は、増設用の柱3の下端面31より下方に突出する柱主筋5を挿入するために柱下端接合部4の上端面41に開口して下方に延長する有底穴12と、鉄筋コンクリート構造物1の柱2の内部に上下方向に延長するように設けられた柱主筋11Aの定着部15Aより上方に延長して上端43が有底穴12の底面42からコンクリート9を挟んで下方に位置されるように設けられた接続用鉄筋11と、例えば円柱状にくり貫かれた形状の有底穴42の中心軸回りの穴内周面の周囲及び接続用鉄筋11の周囲を中心軸に沿って上下方向に螺旋状に延長するように柱2の躯体となるコンクリート9の内部に設けられたスパイラル筋13とを備えて構成される。
【0011】
図2を参照し、柱3の増設方法について説明する。
柱3を増設する場合、当該増設用の柱3の下端面31より下方に突出する複数の柱主筋5をそれぞれ対応する有底穴12に挿入し、柱3の下端面31と柱下端接合部4の上端面41との間にコンクリートやモルタル等の接合手段20を充填可能な隙間H2を設けるように図外のスペーサなどで柱3の下端面31を柱下端接合部4の上端面41に支持させた後、柱2の側方から隙間H2を介して柱3の下端面31と柱下端接合部4の上端面41間、及び、各有底穴12内に接合手段20を充填する。このように、接合手段20が、隙間H2を介して柱3の下端面31と柱下端接合部4の上端面41間、及び、各有底穴12内に充填され、固化することによって、柱下端接合部4の上端面41と柱3の下端面31とが接合され、柱下端接合部4の上方に柱3が増設される。
尚、隙間H2は接合手段20を充填できる隙間であれば良い。例えば10mm程度の隙間H2を設ければ良い。
【0012】
実施形態1によれば、鉄筋コンクリート構造の柱2の上端部に増設用の柱3を簡単かつ確実に接続することができ、鉄筋コンクリート構造物1に増設用の柱3を簡単に増設できるようになる。
また、鉄筋コンクリート構造物1の内部に設けられている接続用鉄筋11の上端43は有底穴12の底面42からコンクリート9を挟んで下方に位置されているので、接続用鉄筋11の露出が防止される。従って、接続用鉄筋11が雨水等から保護されるので、接続用鉄筋11の劣化を防止できる。
また、スパイラル筋13が有底穴12の周囲及び接続用鉄筋11の周囲に跨がるように設けられており、コンクリート9がスパイラル筋13を構成する螺旋体の螺旋間に入り込むために、有底穴12と接続用鉄筋11との一体性が向上する。従って、鉄筋コンクリート構造物1の内部に設けられている接続用鉄筋11と有底穴12に挿入された増設用の柱3の下端面31より下方に突出する柱主筋5との連続性を間接的に確保できるので、接合度が向上する。
【0013】
また、柱下端接合部4の上端面41が、増設用の柱3の下端面31に形成された凸面又は凹面に対応する凹面又は凸面を備えた構成とすれば、柱下端接合部4の上端面41と増設用の柱3の下端面31との間に充填するコンクリートやモルタル等の接合手段20の付着強度が向上するので、好ましい。
【0014】
尚、実施形態1においては、鉄筋コンクリート構造物1、増設用の柱3は、予め工場で製作したプレキャストコンクリートを用いて現場に運搬して現場で構築してもよいし、現場にて型枠を組んで鉄筋を配筋するとともに、有底穴12を形成するための抜き型枠(中子)を設置して型枠内に生コンクリートを打設することで構築しても良い。
【0015】
スパイラル筋13は、接続用鉄筋11及び有底穴12の外周側のほぼ全体に渡って設けられていることが好ましいが、少なくとも有底穴12の底部と接続用鉄筋11の上端部とに跨がるように設けられていればよい。
また、スパイラル筋13の代わりにフープ筋を用いてもよい。
また、上記では柱主筋11Aの上端に定着板15を設けて定着部15Aが形成された構成を示したが、柱主筋11Aの上端に定着板15を設けずに柱主筋11Aを定着させた構成としてもよい。
【0016】
実施形態2
尚、本発明の鉄筋コンクリート構造物は、鉄筋コンクリート構造の柱の上端部に増設用の柱を接続するための柱下端接合部を備え、柱下端接合部が、増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋と接続するための柱主筋を備えた構成であれば良い。
例えば、柱下端接合部が、増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋と接続するための柱主筋を柱の上端面より突出するように備えた構成であっても良い。この場合、柱を増設する工事を行うまでの間は、柱の上端面より突出する柱主筋が錆びないように当該柱主筋を覆い材で覆っておけばよい。そして、柱を増設する工事を行う場合に、覆い材を外して柱の上端面より突出した柱主筋と増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋とを接続することにより、柱を増設すればよい。この場合、柱主筋の上部に増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋との接続を容易にするための接続金具を取り付けておけば接続作業をより容易にできる。
また、柱下端接合部が、増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋と接続するための柱主筋を内部に備えた構成であっても良い。この場合、柱を増設する工事を行う場合に、柱下端接合部のコンクリートを斫って柱主筋を露出させてから、当該柱主筋と増設用の柱の下端面より下方に突出する柱主筋とを接続することにより、柱を増設すればよい。
【符号の説明】
【0017】
1 鉄筋コンクリート構造物、2 柱、3 増設用の柱、4 柱下端接合部、
5 増設用の柱の柱主筋、9 コンクリート、10 柱主筋接続部、11 接続用鉄筋、11A 鉄筋コンクリート構造物の柱の柱主筋、12 有底穴、13 スパイラル筋、
15A 定着部、41 鉄筋の上端、42 有底穴の底面(底)。
図1
図2