(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1および特許文献2記載の引き戸用の錠装置は、いずれも扉の開閉を操作するための手掛け凹部(開口)を有するものであって、手掛け凹部内の空間を上下に分断するような形で、施錠および解錠用のレバー(施錠片、操作体)を設けている。したがって、扉の開閉を行う際に手掛け凹部に指を掛けると指先が前記施錠および解錠用のレバーに当たることもあり、当該レバーを避けるように注意しながら指を掛ける必要があった。
本願発明は上記課題に鑑み発明されたものであって、施錠、解錠操作が可能な指掛け用の凹部を有する引き戸用の取手装置であって、指掛け用の凹部内に施錠、解錠用の操作部を有するものでありながら、指先掛けを阻害することのない取手装置を提供することを課題とするものである。
また、装置として必要な指掛け用の凹部(手掛け凹部)をやや上回る程度の大きさに形成可能であり、肉厚の異なる扉にも装着できるように構成した取手装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有するものである。
すなわち、
扉の内面側に装着する内側フレームと扉の外面側に装着する外側フレームを有し、
前記内側フレームは、
扉に設けた穴の外周囲に接するフランジ部と、
当該フランジ部の内側に設けた長溝状の指掛け凹部と、
当該指掛け凹部の長手方向の上端部において出没する操作ボタンおよび当該指掛け凹部の下端部において出没する操作ボタンと、
当該指掛け凹部の上下に設けた操作ボタンを連結するとともに、扉の施錠および解錠機構を有した鈎ユニットを駆動する突出体を設けた連動部材を有し、
前記外側フレームは、
扉に設けた穴の外周囲に接するフランジ部と、
当該フランジ部の内側に設けた長溝状の指掛け凹部を有していることを特徴とする引き戸用の取手装置
【0007】
また、前記取手装置において、前記連動部材を平板状に形成するとともに、前記指掛け凹部の背面に沿って往復移動可能に配置したことを特徴とする。
【0008】
また、前記取手装置において、前記外側フレームが有する指掛け凹部の内面に表裏貫通する小孔を設けるとともに、当該指掛け凹部の背面において
、前記連動部材に連動して往復移動する略板状の作動体を設け、前記小孔を介して前記作動体の位置を視認できるように形成したことを特徴とする。
【0009】
また、前記取手装置において、前記内側フレームと外側フレームにはそれぞれ対向して互いに係合する結合手段を設け、当該内側フレームと外側フレームを、扉の肉厚に応じて任意の距離で結合するように形成したことを特徴とする。
【0010】
また、前記取手装置において、前記結合手段の一方には摩擦力を高める凹凸部を設けた板状の突出部材を設けるとともに、前記結合手段の他方には前記突出部材を収容可能な受容部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、扉の表裏に装着する一対の内側フレームと外側フレームを有し、扉の施錠および解錠機構を有した鈎ユニットを駆動するための操作ボタンを設けたものである。そして、当該操作ボタンを指掛け凹部の内面である上下の両端において連動して出没するように形成したものである。すなわち、上部操作ボタンを押し上げると下部操作ボタンが指掛け凹部内に突出し、下部操作ボタンを押し下げると上部操作ボタンが指掛け凹部内に突出するようになっている。そして、各操作ボタンが出没する場合であっても、対向する上部操作ボタンと下部操作ボタンの距離は常に一定であることから指掛け凹部として機能する凹所の幅および長さは常に一定であり、当該凹部内の中間に突出させた操作手段を設けていない。したがって、鈎ユニットを駆動するための操作ボタンを有するにも関わらず、当該操作ボタンが凹部内に差し込む指先の挿入を阻害することが無いという効果を有している。
【0012】
また、本発明は、前記上部操作ボタンと下部操作ボタンを連動させる連動部材を平板状に形成するとともに、前記指掛け凹部の背面に沿って往復移動するように配置している。これによって、内側フレームと外側フレームの間に連動部材が配置される構造でありながら、内側フレームと外側フレームの間隔を短くすることができ、装置を薄く形成することができるという効果がある。また指掛け凹部を避けた位置に駆動機構を設ける必要がなく、指掛け凹部の形成に必要な最小限の大きさ程度に装置を形成することができるという効果を有している。
【0013】
また、外側フレームが有する指掛け凹部の内面に表裏貫通する小孔を設け、当該指掛け凹部の背面において前記
連動部材に連動して往復移動する略板状の作動体を設けることで、小孔を介して
前記作動体の位置を視認でき、扉が施錠状態であるか、解錠状態であるかを視認させることができる。すなわち、指掛け凹部内に視認可能な小孔を設けることで、指掛け凹部から離れた場所に施錠状態等を視認させる手段を設ける必要がない。これにより、指掛け凹部の形成に必要な最小限の大きさ程度に装置を形成することができるという効果を有している。これにより、扉に設ける取り付け用の穴も小さくすることができるという効果を有している。
【0014】
本発明に係る取手装置は、扉の表裏からそれぞれ内側フレームと外側フレームを装着し、対向させた状態で両者を結合するようになっている。この結合は、内側フレームと外側フレームにそれぞれ設けた結合手段同士を嵌め合わせることで行われるようになっており、ネジなどの他の締結手段を必要としないという効果がある。また、扉の厚みに応じて内側フレームと外側フレームの間隔を変化させる必要があるが、本発明に係る取手装置は扉の表裏面に内側フレームと外側フレームを装着するたけで、特段の調整を必要とすることなく扉の厚みの変化に対応して両者が結合できるという効果を有している。
【0015】
本発明に係る取手装置は、前記結合手段として凹凸部を設けた板状の突出部材と、当該板状の突出部材に設けた凹凸部と接触して摩擦力を発揮する前記突出部材を収容する受容部を設けたものである。この構造により、摩擦抵抗に反して受容部に押し込んだ突出部材は、同程度以上の力で引き抜かなければ結合を解除できないものである。また、取付ける場合には両者を近接させるように両方のフランジ部を押すだけでよいが、引き離す場合には力を作用させる部位が表出していないため、バール等の工具をフランジ部と扉の間に差し込むなどの作業が必要になる。このように、本発明に係る取手装置は、取付けは簡単であるが通常の使用時において容易に外れることが無いという効果を有しているものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明に係る引き戸用取手装置(以下「取手装置」という)1の使用例を表した説明図を表している。取手装置1は、
図1(a)に示すように引き戸(扉)Dの端部に取り付けられるものであり、戸枠Wとの当接面Da近傍において扉Dの表裏(引き戸の内側および外側)に指掛け用の凹部を形成するものである。取手装置1は、扉Dの内側および外側に前記指掛け用の凹部を形成するため、それぞれ独立した構成体である室内側用の内側フレーム3と室外側用の外側フレーム2を有している。
図1(b)は、
図1(a)に示した取手装置1の周辺C1(二点鎖線で示した円)部分の拡大図であって扉Dの該当部分を透過させて表した説明図である。
【0018】
取手装置1が有する内側フレーム3と外側フレーム2は、扉の表面に表出するフランジ部を除き扉Dの内部に埋設するように収容されている。
内側フレーム3は、扉Dの表面に表出する長方形状の外形を有する板状のフランジ部4と、当該フランジ部4の略中央に設けた長方形状の開口を有する凹部5を有している。当該凹部5は、扉Dを移動させる際に指先をかける指掛部として使用される部位であるとともに、詳細には後述するロック機構を操作するための操作スイッチを配置する場所になっている。
また、外側フレーム2は、扉Dの表面に表出する長方形状の外形を有する板状のフランジ部6と、当該フランジ部6の略中央に設けた長方形状の開口を有する凹部7を有している。当該凹部7は、扉Dを移動させる際に指先をかける指掛部として使用される部位であるとともに、詳細には後述する鈎ユニット8の駆動に伴う施錠および解錠を視認させる表示部を配置する場所になっている。
【0019】
前記鈎ユニット8は、前記取手装置1と同様に扉Dの内部に埋設されるものであり、戸枠Wと当接する扉Dの当接面Daから出没する鈎体9を、取手装置1の操作に基づいて駆動するものである。鈎体9は、戸枠Wに取り付けた受金具(図示せず)と着脱可能に係合するものであり、当接面Daから鈎体9が出ている場合に前記受金具と係合して扉Dが開くのを制限し、当接面Daから鈎体9が出ていない場合には前記受金具と係合することなく自由に扉Dの開閉を行わせることができるものである。
【0020】
図2は、取手装置1の分解斜視図を表しており、内側フレーム3、外側フレーム2およびこれらに取り付けられる各手段をそれぞれ裏側方向から見た状態で示している。なお扉Dに装着される場合には、各フレーム3、4の裏面同士が対向するように配置されるものであり、各フレーム3、4の裏面側に設けた結合手段が互いに対向して係合し両フレームを結合するようになっている。
【0021】
内側フレーム3は、一例として硬質の合成樹脂によって一体的に形成された部材であり、前述した扉Dの表面に表出する長方形状のフランジ部4と、当該フランジ部4の略中央に設けた長方形状の開口を有する凹部5を有している。フランジ部4は肉厚が約1.5mm程度の板状に形成されている。前記凹部5はフランジ部4と同程度の肉厚を有する隔壁で囲まれた直方体状の空間として形成されており、裏面側に突出させた膨出部5aを設けることで形成されたものである。
一例として凹部5の大きさは、引き戸を操作する際に用いる指掛け部として、人差し指から小指に至る四指が余裕をもって差し入れることができる程度の大きさに形成されている。具体的には幅、長さ、深さがそれぞれ22mm、110mm、10mm程度となるように形成されている。
【0022】
また、前記膨出部5aの上端には凹部5内と連通する矩形の上部開口10が形成され、膨出部5aの下端には凹部5内と連通する矩形の下部開口11が形成されている。さらに、上部開口10を介して凹部5内に出没する上部操作ボタン12と、下部開口11を介して凹部5内に出没する下部操作ボタン13が設けられている。上部操作ボタン12および下部操作ボタン13は、凹部5内の上端と下端において出没する操作スイッチとして機能するものであり、膨出部5aの背面に上下動可能に配置した連動部材14によって連結されたものである。
【0023】
連動部材14は、所定形状に打ち抜いた金属板を折り曲げて形成したものであり、本体部分となる略長方形状の板状部15を有し、当該板状部15の上端に形成した折り返し部16と下端に形成した折り返し部17を形成したものである。
折り返し部16は、上部操作ボタン12の凹部5内に表出しない部位に形成した凹所12aに差し込むことができる爪として形成されており、凹所12aとの嵌め合いによって上部操作ボタン12を脱落させることなく係合する部位となっている。折り返し部17も同様に、下部操作ボタン13の凹部5内に表出しない部位に形成した凹所13aに差し込むことができる爪として形成されており、凹所13aとの嵌め合いによって下部操作ボタン13を脱落させることなく部位となっている。
【0024】
上記のように上部操作ボタン12と下部操作ボタン13は連動部材14によって連結されており、凹部5内において上部操作ボタン12を上昇させると下部操作ボタン13が上昇し、下部操作ボタン13を押し下げると上部操作ボタン12が下降するようになっている。すなわち、凹部5内おいて対向する上部操作ボタン12の操作面12bと下部操作ボタン13の操作面13bは常に同一の距離を保ったまま上下動するようになっている。
また、上部操作ボタン12の操作面12bが凹部5内に突出している時には下部操作ボタン13の操作面13bが凹部5の下側の開口縁58とほぼ同じ位置まで下降し、下の操作面13bが凹部5内に突出している時には上の操作面12bは凹部5の上側の開口縁57とほぼ同じ位置まで上昇するようになっている(
図8参照)。これにより、凹部5の実質的な開口面積および容積は、上部操作ボタン12もしくは下部操作ボタン13の操作に関係なくほぼ一定であり、上部操作ボタン12および下部操作ボタン13が何れの位置にあるかに係らず指の差し入れを阻害しないようになっている。
【0025】
上部操作ボタン12および下部操作ボタン13の操作に連動して上下動する前記連動部材14は、板状の本体部分の上下中間位置の両側に、外側フレーム2側に向けて突出させた2つの突出体18(18a、18b)を設けている。当該突出体18、18は、詳細には後述する前記鈎ユニット8を駆動する作動部材として機能するものとなっている。
【0026】
また、内側フレーム3が有するフランジ部4の裏面と外側フレーム2が有するフランジ部6の裏面には、互いに対向して係合することで両者を結合する結合手段が設けられている。
内側フレーム3には、当該結合手段として外側フレーム2に設けた板状の突出部(板状体30)を受け入れる受容部22が設けられている。当該受容部22(22a、22b、22c、22d)は、フランジ部4裏面の膨出部5aの側壁と一体に形成した4カ所の装着部20(20a、20b、20c、20d)と、当該装着部20に装着される4個の装着片21(21a、21b、21c、21d)によって形成されている。
上記4個の装着部の内の2個の装着部20a、20bは、膨出部5aの上方部分において膨出部5aを挟んで左右対称となる位置に設けられており、残りの2個の装着部20c、20dは、膨出部5aの下方部分において膨出部5aを挟んで左右対称となる位置に設けられている。
【0027】
図2において示したC2は、C2’として2点鎖線で示した円形部位に設けられている装着部20dに、装着片21dを装着して一つの受容部22を構成した状態を表している。
装着片21dは、上下両端に段差を伴うクランク状に屈曲させた縁部23を形成した矩形の板状部を有したものである。そして、当該縁部23を前記装着部20dに装着することによって両者は結合し受容部の一つを構成するようになっている。
また、装着片21dの上下に設けた縁部23には、それぞれくさび状の突起24が設けられており、装着部20dに形成した係合孔25と係合するようになっている。くさび状の突起24は、係合孔25に対して装着部20dに差し込む方向には緩やかで抜き去る方向には急な斜面が当接するように形成した突起であり、装着しやすく容易に抜け出るのを防止する手段となっている。
【0028】
また、装着片21dの上下の縁部23、23の間に設けられている板状部の内側面には、上下方向に沿った微細な凹凸条26が形成されている。当該凹凸条26は、外側フレーム2に設けた板状体30の側面と係合する部位となっている。
受容部22は、装着部20dに装着した装着片21dによって構成されるものであり、外側フレーム2に設けた板状体30を招き入れる開口と収容部を形成し、板状体30との嵌め合いによって両者の結合状態を維持するように形成されたものである。
以上説明した当該装着部20dが備える構造は、配置される向きが左右対称の形状であることを除き他の装着部20a、20b、20cと同じである。また、装着片21dが備える構造も、配置される向きによって左右対称の形状であることを除き他の装着片21a、21b、21cと同じであり、前述と同様の受容部を形成するものである。
【0029】
次に外側フレーム2について説明する。外側フレーム2は、一例として硬質の合成樹脂によって一体的に形成された部材であり、前述したように扉Dの表面に表出する長方形状のフランジ部6と、当該フランジ部6の略中央に設けた長方形状の開口を有する凹部7を設けたものである。
フランジ部6は肉厚が約1.5mm程度に形成されており、前記凹部7はフランジ部6と同程度の肉厚を有する隔壁によって囲まれた空間として形成されており、フランジ部6の裏面に突出させた膨出部7aの形成を伴うものである。
凹部7は、フランジ部6の表面に開口を有する直方体状の空間であり、扉Dを操作する際に用いる指掛け部として、人の人差し指から小指のまでの四指が余裕をもって差し入れることができる大きさに形成されている。具体的には、一例として幅、長さ、深さがそれぞれ22mm、110mm、10mmとなるように形成されている。
【0030】
外側フレーム2には、内側フレーム3に設けた前記4カ所の受容部22a、22b、22c、22dに挿入される突出部として4個の板状体30(30a、30b、30c、30d)が取り付けられている。当該4個の板状体30は、全て同一の形状に形成されている。
板状体30cを例として板状体の構造を説明すると、板状体30cは肉厚が1〜1.5mm程度の矩形体として形成されている。板状体30cの上下の両端縁には、くさび状の突起31が設けられており、膨出部7aの上下両側縁に設けた装着部32(32a、32b、32c、32d)に設けた係合孔33に係合させることによって、当該装着部32に差し込むように装着した各板状体30を抜け落ちないように保持している。くさび状の突起31は、係合孔33に対して差し込む方向には緩やかで抜き去る方向には急な斜面が当接するように形成されており、装着しやすく容易に抜け出るのを防止するようになっている。
なお、前記板状体30を外側フレーム2から分離したのは、金型が小さくすることができる等の製造上の利点と、長さの異なる板状体を扉の厚みに応じて使い分けることが可能であるからである。すなわち、厚みのある扉の場合には比較的長い板状体を使用し、厚みの薄い扉の場合には図示している程度の長さの板状体を使用する。
【0031】
図2に示したC3は、C3’として2点鎖線で示した円形部位に設けられている装着部32cと板状体30cによって形成される突出部の一つを表している。装着部32cは、前記膨出部7aの両側面に沿って一体的に形成された上下一対のガイドレール状の部位であり、前述したように矩形に形成された板状体30の上下両縁を保持する部位である。
また各装着部32は、前記膨出部7aの上方および下方において、対称となる配置でそれぞれ左右の側壁に設けられている。そして、各装着部32は、前記内側フレーム3に設けた前記4カ所の受容部22と対向する位置に設けられており、当該装着部32に装着した各板状体30の全てを同時に前記受容部22に挿入し結合させることができるようになっている。
【0032】
板状体30cの側面には、上下方向に沿った凹凸条34が形成されている。当該凹凸条34は、内側フレーム3に設けた受容部22(装着片21)の内面に形成した凹凸条26と噛み合う形状に形成されており、受容部22に挿入した板状体30との間で高い摩擦力を発揮し、通常の引き戸操作では容易に解除されない結合力で結合するようになになっている。なお、一定以上の力が加えられた場合には受容部22および板状体30や装着部32を破壊することなく両者の係合を解除するようになっている。
【0033】
また、指掛け部となる凹部7の形成によって背面側に突出した膨出部7aの表面(凹部7底面の裏面)には、上下方向に長い作動体35が上下動可能に配置されている。
作動体35は、略中央付近において左右方向に幅を広げた拡幅部36(36a、36b)と、当該拡幅部36の上下に設けた長方形状の延出部37(37a、37b)を有した板状の部材として形成されている。
前記長方形状の延出部37a、37bは、膨出部7aの長手方向に沿った直線状の側縁を有している。当該側縁は、膨出部7a表面の上下に設けられた、互いに対向して配置した2個一対の凸壁状のガイド38およびガイド39によって、膨出部7aの長手方向に沿った方向にのみ移動可能に保持されている。
当該凸壁状のガイド38、39は、対向する一対の壁の間で延出部37a、37bの幅方向の動きを制限し、内側へ突出させた爪状の小突起38a、39aによって延出部37a、37bが外れるのを防止している。当該小突起38a、39aは、作動体35を装着する方向には緩く離脱する方向には鋭角な当接面を有しており、作動体35を装着しやすく離脱しにくい形状となっている。
【0034】
なお、作動体35の上方に形成した長方形状の延出部37aと、下方に形成した長方形状の延出部37bの幅は異なっている。具体的には、一例として下方の延出部37bの幅が、上方の延出部37aの幅よりも狭く形成されている。これに応じて、前記膨出部7aの上方に設けた凸壁状のガイド38と下方に設けたガイド39では対向する壁の間隔が異なっている。これは、作動体35の上下を誤って装着することがないようにするためである。
作動体35の上方の延出部37aには、凹部7の底面(膨出部7aの表面)に設けた矩形の小孔7cを介して見ることができる印が設けられており、作動体35の上下移動に応じてその印が移動するようになっている。このため作動体35の印が小孔7cと適切に対応した配置となるように逆向きの取り付けができないようになっている。
【0035】
作動体35の略中央付近に形成した左右の前記拡幅部36a、36bには、拡幅方向に向かって開口したコ字状の凹部40(40a、40b)が形成されている。当該凹部40は、前記連動部材14に設けた突出体18(18a、18b)と係合する部位であって、連動部材14の上下移動に伴って作動体35を上下移動させるための係合部となっている。
【0036】
取手装置1は、上記の通り各種の手段から構成されるものであって、主に内側フレーム3を主体とする内側組立体42と外側フレーム2を主体とする外側組立体41によって構成されることになる。
図3は、当該内側組立体42と外側組立体41、扉内に収容される内部側から表した説明図である。
外側組立体41は、外側フレーム2が有するフランジ部6の裏面に突出した膨出部7aの両側部の上下に、当該膨出部7aの突出方向と同方向に向かって突出した4個の板状体30を有している。膨出部7aの表面である凹部7の裏面7bは平坦面として形成されており、前記4個の板状体30は当該裏面7bよりも突出するように形成されかつ取り付けられている。また当該突出した部位の側面には前述の通り前記凹凸条34が形成されている。
また、上記裏面7bには、作動体35がガイド38、39によって上下方向(長手方向)の一定範囲(移動ストロークSの長さが1cm程度)内で往復移動が可能に装着されている。そして、作動体35の一側面には、裏面7bに開口した前記小孔7cを介して視認できる印が設けられており、当該印の有無によって作動体35の動作状態を知ることができるようになっている。
【0037】
前記作動体35は、膨出部7aの裏面7b上において上下どちらかに移動した場合であっても、膨出部7aの上端および下端を超えて突出しない形状と大きさに形成されている。すなわち作動体35の長手方向の全長は、引き手の指掛け部(凹部7)を構成するために設けた膨出部7aの長手方向全長から移動ストロークS分の長さを差し引いた長さよりも短くなるように形成されている。そして、小孔7cは常に作動体35によって覆われている必要があり、これにより小孔7cを介して作動体35の所定位置に設けた印の移動が視認できるようになっている。
【0038】
内側組立体42は、外側フレーム3が有するフランジ部4の裏面に突出した膨出部5aの両側部の上下に、4カ所の受容部22を設けている。受容部22は、前記外側組立体41の4個の板状体30を収容する空間であり、差し込まれた板状体30を保持することによって内側組立体42と外側組立体41との結合状態を維持するものである。
膨出部5aの表面となる凹部5の裏面5bは平坦面として形成されており、当該裏面5b上の長手方向両脇に設けたガイド部材44(44a、44b)と45(45a、45b)によって前記連動部材14を上下動可能となるように保持している。
ガイド部材44、45はともに裏面5b上に立設された長板状の部位であり、互いに対向するガイド部材44a、44bおよびガイド部材45a、45bの間に連動部材14を装着し保持するようになっている。各ガイド部材44a、44bおよびガイド部材45a、45bの内面側には、装着した連動部材14が脱落しないよう爪状の突起46,47がそれぞれ設けられている。当該突起46、47は、連動部材14を装着する方向には緩く離脱する方向には鋭角な当接面を有しており、連動部材14を装着しやすく離脱しにくい形状となっている。
【0039】
上記の構造によって、連動部材14の板状部15が膨出部5aの表面と僅かな隙間を介して近接するとともに、ガイド部材44と45によって往復移動方向以外の移動が制限されるようになる。
また、連動部材14が装着されると、連動部材14の上下両端に形成されている折り返し部16および折り返し部17が、それぞれ前記膨出部5a上端の上部開口10および膨出部5a下端の下部開口11から当該連動部材14の往復移動に応じて表出可能となる。そして、これら折り返し部16および折り返し部17には、凹部5の内面側から上部操作ボタン12および下部操作ボタン13が装着され、以後上部操作ボタン12および下部操作ボタン13の押圧操作に伴って連動部材14が往復移動可能となる。
【0040】
上記構成の内側組立体42と外側組立体41の結合する際、作動体35に形成した凹部40a、40b内に、連動部材14の突出体18a、18bを差し込むようになる。これにより、操作ボタン12および下部操作ボタン13の押圧操作に伴う連動部材14の往復移動に伴って作動体35が往復移動するようになる。
また、扉Dに装着する際、鈎ユニット8に設けられている駆動手段50に前記連動部材14に設けた突出体18を係合させる。駆動手段50は上下に揺動するレバーであり、連動部材14の上下移動に伴って上下に揺動することで、扉の端面から鈎体9を出没させるようになっている。
また、膨出部7aの表面のガイド38、39と膨出部5aの表面のガイド部材44と45は、内側組立体42と外側組立体41の対向時に互いに当接することが無いように配置されている。内側組立体42と外側組立体41の近接時の距離をできるだけ短くし、薄い扉であっても使用できるようにするためである。
【0041】
図4(a)および
図4(b)は、互いに接合させた外側組立体41と内側組立体42を側方から表した側面図である。
図4(a)は内側組立体42と外側組立体41を近接させて結合した状態を表している。この状態では、外側組立体41の板状体30が内側組立体42の受容部22の中にほぼ収容された状態となり、この状態で両者は引き離さないように固定されている。
また
図4(b)は外側組立体41と内側組立体42を離間させて結合した状態を表している。この状態では、外側組立体41の板状体30が全て受容部に入るわけではなく先端の一部が内側組立体42の受容部22の中に収容された状態となっている。このため前記
図4(a)に示した状態よりも内側組立体42と外側組立体41の距離が離れた状態で結合している。すなわち、前記
図4(a)に示した状態のフランジ部4、フランジ部6間の距離をL1、当該
図4(b)に示した状態のフランジ部4、フランジ部6間の距離をL2とすると、内側組立体42と外側組立体41はこのフランジ部4とフランジ部6間の距離がL1〜L2の範囲であれば結合可能となっている。すなわち、装着する扉の厚みが前記L1〜L2の範囲であれば、厚みが異なる扉であっても特段の加工や用具を必要とすることなく本実施の形態に係る取手装置1を使用することができるようになっている。
【0042】
図5は、鈎ユニット8の外観図を表している。鈎ユニット8は、前記取手装置1から独立した別個の機構体であって、前記取手装置1の操作に応じて扉の端面からフック状の鈎体9を出没させるものである。
当該鈎ユニット8は、主な構成として扉の端面に固定するためのフランジ部51と、当該フランジ部の背面に設けられた機構部52を有している。機構部52は、背面側に突出したレバー状の前記駆動手段50の上下動作に基づいて、フランジ部51前面部から鈎体9を出没させる機構を内蔵している。鈎体9には下向きに開口を有する凹部が設けられており、当該凹部が係合部位となって戸枠に設けられている被係合手段と係合するようになっている。このため、鈎体9は上方から下に向かって回動しながら表出するようになっている。
また、機構部52は、表出している鈎体9に力が加わった場合に鈎体9がフランジ部51内に没することができるように構成されている。これは、鈎体9が表出した状態で戸枠に設けられている被係合手段に衝突するような場合であっても、鈎体9が上方へ逃げることで機構部52の破壊を防止するためである。
【0043】
図6は、上部操作ボタン12および下部操作ボタン13の操作によって上下動する連動部材14と、当該連動部材14によって駆動される鈎ユニット8の状態を表した説明図である。
図6(a)に示した状態は、内側フレーム3の裏面に配置された連動部材14が下側に移動している状態である。連動部材14の下側移動は、下部操作ボタン13が下に向かって押し下げられることにより行われるものであり、この下部操作ボタン13の押し下げ操作によって連動部材14が下側に移動することで駆動手段50が押し下げられて鈎体9が表出する。
図6(b)に示した状態は、内側フレーム3の裏面に配置された連動部材14が上側に移動している状態である。連動部材14の上側移動は、上部操作ボタン12が上に向かって押し上げられることにより行われるものであり、この上部操作ボタン12の押し上げ操作によって連動部材14が上側に移動することで駆動手段50が押し上げられて鈎体9がフランジ部51表面か退去する。
【0044】
膨出部5aの上方両端付近には、当該膨出部5aの上部壁と一体的に接続された板状のリブ53が、フランジ部4の上端方向に向かってそれぞれ設けられている。当該リブ53はフランジ部4の裏面とも一体的に設けられており、上部操作ボタン12の移動範囲の側面を覆って保護するとともにフランジ部4を補強するようになっている。また、当該リブ53の先端とフランジ部4の上端との間には隙間が設けられており、当該リブ53の先端は、扉に開けられた穴との接触部位を果たすとともに、前記隙間を形成することでフランジ部4の外周に扉との接触領域60を形成する作用を有している。
また、膨出部5aの下方両端付近にも、当該膨出部5aの下部壁と一体的に接続された板状のリブ54が、フランジ部4の下端方向に向かってそれぞれ設けられている。当該リブ54はフランジ部4の裏面とも一体的に設けられており、下部操作ボタン13の移動範囲の側面を覆って保護するとともにフランジ部4を補強するようになっている。また、当該リブ54の先端とフランジ部4の下端との間には隙間が設けられており、前記リブ53と同様に、扉に開けられた穴との接触部位を果たすとともに、前記隙間を形成することでフランジ部4の外周に扉との接触領域60を形成する作用を有している。
また、膨出部5a両側部の上下には、それぞれ外側フレーム2との結合に用いる装着部20、装着片21からなる受容部22(22a、22b、22c、22d)が設けられている。そして、両側部に配置される受容部22aおよび受容部22b、受容部22cおよび受容部22dをむすぶ外形的な幅が、膨出部5aの側部における外形の最広部となっている。当該最広部を構成する各受容部22の側面からフランジ部4の側部端縁までの間には隙間が設けられており、当該両側部の隙間と前記上下に設けた隙間とともに扉との接触領域60を形成している。以上の構成によって、フランジ部4の外周部にほぼ均一幅の環状の接触領域60が形成される。
【0045】
図7は、前述した内側フレーム3の裏面に配置された連動部材14によって駆動される鈎ユニット8の状態と、外側フレームの背面に配置した作動体35の状態を表した説明図である。連動部材14の上下動に応じて作動体35が連動して上下動することは前述した通りである。また、作動体35に外側フレームに設けた矩形の小孔7cを介して見ることができる印35cを設けたことも前述した通りである(小孔7cは外側フレームの背面側からは見ることができないものであるが、
図7では説明のためにその位置を示している。)。
図7(a)に示した状態は、連動部材14が下側に移動して鈎体9が表出している状態を表しているが、この際作動体35も同様に下側に移動している。この時、作動体35に設けた印35cは小孔7c内の下側に位置している。また、後述するように印35cの上部に着色部35dが設けられており、当該着色部35dも小孔7cを介して視認することができるようになっている。
図7(b)に示した状態は、連動部材14が上側に移動して鈎体9が没している状態を表しているが、この際作動体35も同様に上側に移動する。この時、作動体35に設けた印35cは小孔7c内の上側に位置している。また、着色部35dは小孔7cからの視認できなくなっている。
【0046】
膨出部7aの上方には、当該膨出部7aの上部壁と一体的に接続された板状のリブ55が、フランジ部6の上端方向に向かって設けられている。当該リブ55はフランジ部6の裏面とも一体的に設けられておりフランジ部6を補強するようになっている。また、当該リブ55の先端とフランジ部6の上端との間には隙間が設けられており、当該リブ55の先端が扉に開けられた穴との接触部位を果たすとともに、前記隙間を形成することでフランジ部6の外周に扉との接触領域61を形成する作用を有している。
また、膨出部7aの下方にも、当該膨出部7aの下部壁と一体的に接続された板状のリブ56が、フランジ部6の下端方向に向かって設けられている。当該リブ56はフランジ部6の裏面とも一体的に設けられておりフランジ部6を補強するようになっている。また、当該リブ56の先端とフランジ部6の下端との間には隙間が設けられており、前記リブ55と同様に扉に開けられた穴との接触部位を果たすとともに、隙間を形成することでフランジ部6の外周に扉との接触領域61を形成する作用を有している。
また、膨出部7a両側部の上下には、それぞれ内側フレームとの結合に用いる装着部32(32a、32b、32c、32d)と当該装着部32に取り付けられる板状体30(30a、30b、30c、30d)が設けられている。この装着部32および板状体30を設けた部位が膨出部7aの側部における外形的の最広部となっている。そして、当該最広部を構成する各装着部32および板状体30の側面から、フランジ部6の側部端縁までの間には隙間が設けられており、当該両側部の隙間と前記上下に設けた隙間によって扉と接触する一定幅の環状の接触領域61を形成している。
【0047】
図8は、上記上部操作ボタン12と下部操作ボタン13の操作に伴う鈎ユニット8の状態を、取手装置1の内側(室内側)および外側(室外側)から表した説明図である。
図8(a)および
図8(b)は、ともに鈎ユニット8から鈎体9が表出した状態を示している。すなわち、扉がロックされた状態である。本実施の形態に係る取手装置1は、一例としてトイレ用の引き戸に使用することができる。この場合、室内側から取手装置1を操作して施錠および解錠を行うわけであるが、この操作として内側フレーム3の引き手として形成された凹部5内の上下に配置された上部操作ボタン12若しくは下部操作ボタン13の押圧操作を行う。上部操作ボタン12と下部操作ボタン13の操作面は凹部5内で互いに対向しており、かつ両者は裏側で連結されているのでどちらのボタンを操作しても対向面の距離は一定である。すなわち、上部操作ボタン12と下部操作ボタン13の上下に関係なく凹部5の長さ、幅、深さは常に一定であって、上部操作ボタン12と下部操作ボタン13の状態に応じて手指が差し入れにくくならないようになっている。
【0048】
また、本実施の形態では下部操作ボタン13を押下して上部操作ボタン12が表出することで施錠状態となるようにしているので、使用者から視認することができる上部操作ボタン12の表面に着色若しくは文字による施錠表示をするようになっている。
また、前述のように施錠状態の場合に、室外側に面した外側フレーム2の指掛け用の凹部7内に設けた小孔7cを介して表出する印として赤色等の着色部35dを表出するようにすることができる。これは、施錠にともなって降下する作動体35に前記印35cとともに着色部35dを設けることによって実施することができる。
【0049】
図8(c)および
図8(d)は、ともに鈎ユニット8内に鈎体9が没している状態を示している。すなわち、扉がロックされず自由に開閉できる状態である。
図示した例では、上部操作ボタン12を上方に押し上げて下部操作ボタン13が表出することで解錠するようにしている。そして、前述した上部操作ボタン12の表面の着色若しくは文字による施錠表示が使用者から視認することができなくなり、ロックが解除された状態であることを使用者に認識させるようになっている。
また、上記施錠を解除した状態では、室外側に面した外側フレーム2の指掛け用の凹部7内に設けた小孔7cを介して表出していた赤色等の着色部35dが上方に移動して視認できなくなり、上方に移動した前記印35cだけが見えるようになる。これにより、室外から扉が施錠されていないことを認識できるようになっている。
【0050】
扉表面に設ける凹部によって引き戸用の取手を形成する場合、当該凹部には指先の出し入れに支障が生じない程度の大きさの開口部が必要とされる。一方において、取手を形成するには扉の側面に取り付け用の穴開け加工を行わなければならないが、穴の大きさはなるべく小さく単純な形状であるのが望ましい。
本実施の形態に係る取手装置1は、各フランジ部4、6の背面に設けている構造物が、各フランジ部4、6の全長および幅を超えないようになっている。また、扉に開ける穴の大きさは、フランジ部4、6の全長および幅よりも小さく形成される。そして、フランジ部4、6の背面に設けられている構造物が収容可能な最低限の大きさに形成されることになる。
当然ながら、扉に開ける穴の大きさがフランジ部4、6の全長および幅よりも大きいと取手装置1が扉内に脱落して取り付けができなくなり、フランジ部4、6の背面に設けられている構造物よりも小さいと扉内に収容できないからである。
【0051】
図9は取手装置1の表裏を表した外観図である。
図9(a)は取手装置1の外側フレーム2のフランジ部6および当該フランジ部6の中央に配置されている凹部7を表している。また、
図9(b)は取手装置1の内側フレーム3のフランジ部4および当該フランジ部4の中央に配置されている凹部5を表している。
外側フレーム2および内側フレーム3の各フランジ部6、4および凹部7、5の大きさは、多少の違いはあっても差し支えないが、特段に異ならせる理由が無いかぎり略同一に形成される。すなわち、フランジ部6、4の全長(V)および全幅(H)は同一であり、凹部7、5の長さ(V0)および幅(H0)も同一である。
【0052】
前記凹部7、5の長さ(V0)および幅(H0)は、使用者が操作しやすい大きさであることを考慮した寸法に決定される。本実施の形態では当該凹部の長さV0×幅Hは110mm×22mmに形成している。
また、当該凹部の形態に基づいて各フランジの裏面には前述した膨出部5a、膨出部7aが突出することになるが、当該膨出部5a、膨出部7aの外形的な大きさは、前述の凹所の形状に1mm〜1.5mm程度の肉厚を加えたものになる。すなわち、膨出部5a、膨出部7aの外形は、前記凹部7、5よりも外形が2mm〜3mm程度大きな112mm×24mm〜113mm×25mmとなる。
【0053】
また、
図9(a)は外側フレーム2のフランジ部7に設定された扉との接触領域61(二点鎖線で示した外周領域)を示しており、
図9(b)には内側フレーム3のフランジ部4に設定された扉との接触領域60(二点鎖線で示した外周領域)を示している。
言い換えると、これら接触領域60、接触領域61として示した領域の内側の形状が、扉にあける穴の形状であり、この穴の外周囲の一定幅(本実施の形態では約3mm)が、取手装置1との接触領域になる。なお、取手として機能させるには全周囲に3mmもの幅は必要無いのであるが、多少寸法精度の悪い穴が開けられた場合であっても穴を露出させることがないように、接触領域の幅に余裕を持たせている。
【0054】
上記のように、本実施の形態に係る取手装置1は、扉の開閉操作が不便とならない程度の大きさの指掛け用の凹部5,7を有している。そして、凹部5の大きさは、施錠操作のための上部操作ボタン12、下部操作ボタン13を内包しているにも関わらず一定であるので、施錠状態あるいは解錠状態によって指掛けの行いやすさに影響を及ぼすことがないようになっている。
また、上記のように施錠および解錠を行う上部と下部の操作ボタン12,13を指掛け用の凹部5内に収容するとともに、これらを凹部5の裏面(膨出部5a)に臨ませた連動部材14によって接続している。当該連動部材14は、鈎ユニットを駆動する突出体18を設けた板状体であって、膨出部5aの外形を著しく超えない大きさに形成されているため、装置として小型化が可能な構造を有している。
【0055】
取手装置1の横幅は、フランジ4,6の横幅Hが最大であり、かつこの横幅Hは、指掛け凹部として必要最低限の凹部の横幅H0の両脇に穴に対する取り付けしろを含めた幅部H1、H2を含めたものである。そして、この幅部H1、H2は、凹部の横幅H0の1/2程度若しくは、この寸法値よりも小さく形成することができるものである。したがって、取手装置1の横幅Hは、指掛け用の凹部の幅H0の2倍を超えない大きさで形成することができ、装置の小型化を実現できる構造になっている。
また、取手装置1の上下方向(長手方向)に亘る全長は、フランジ4,6の縦幅Vが最大である。この縦幅Vは、指掛け凹部として必要最低限の凹部の縦幅V0と、上下に穴に対する取り付けしろを含めた幅部V1、V2を含めたものである。
そして、この幅部V1、V2は、凹部内において出没する上部操作ボタン12と下部操作ボタン13の移動ストロークSの約2倍程度の長さに形成されている。実際には、取付穴の精度不良を見越して移動ストロークSの2倍をやや超える長さに形成しているが、構造的には移動ストロークSの2倍を下回る寸法値に形成することが可能であり、装置の小型化を実現できる構造になっている。
【0056】
以上説明した取手装置1は、
図1に示すように、室内側から見て扉の左端面に鈎ユニット8を装着する場合を例に説明したものである。この場合、連動部材14が有する一方の突出体18aが鈎ユニット8の駆動手段50に差し込まれることで鈎ユニット8を動作させることができるものである。
しかし、取手装置1は、
図1に示した室内側から見て扉の右端面に鈎ユニット8を装着することも可能な構造を有している。この場合、連動部材14が有するもう一方の突出体18bを鈎ユニット8の駆動手段50に差し込むよう構成することで鈎ユニット8を動作させることができるものである。すなわち、本実施の形態に係る取手装置1は、扉の左右何れの端部でも使用できるものとなっている。