特許第6114641号(P6114641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6114641インクジェット用硬化性組成物、硬化物及び電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114641
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】インクジェット用硬化性組成物、硬化物及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20170403BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20170403BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20170403BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   C09D11/38
   B41M5/00 120
   B41J2/01 501
   B41J2/01 129
   B41J2/01 125
   H05K3/28 D
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-123661(P2013-123661)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-240468(P2014-240468A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴志
(72)【発明者】
【氏名】上田 倫久
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝徳
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−001538(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/140360(WO,A1)
【文献】 特開2012−166373(JP,A)
【文献】 特開2012−087298(JP,A)
【文献】 特開2012−087284(JP,A)
【文献】 特開2010−222492(JP,A)
【文献】 特開2010−066757(JP,A)
【文献】 特開2010−026468(JP,A)
【文献】 特開2009−203440(JP,A)
【文献】 特開2012−062470(JP,A)
【文献】 特表2011−522931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B41J 2/01
B41M 5/00
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式により塗工され、かつ光の照射により硬化可能であるインクジェット用硬化性組成物であって、かつ、ソルダーレジストパターンを形成するためのインクジェット用硬化性組成物であって、
(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物と、
光重合開始剤と、
アルコキシド化合物とを含み、
インクジェット用硬化性組成物100重量%中、前記アルコキシド化合物の含有量が10重量%以上である、インクジェット用硬化性組成物。
【請求項2】
前記アルコキシド化合物が、ケイ素原子、チタン原子又はジルコニア原子を有する、請求項1に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項3】
前記アルコキシド化合物が、窒素原子及び硫黄原子を有する、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項4】
JIS K2283に準拠して測定された25℃での加熱前の粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項5】
酸素が存在しない環境下で80℃で24時間加熱した後の粘度の、加熱前の粘度に対する比が、1.1以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項6】
インクジェット方式により塗工され、かつ光の照射と熱の付与とにより硬化可能であるインクジェット用硬化性組成物であって、かつ、ソルダーレジストパターンを形成するためのインクジェット用硬化性組成物であって、
熱硬化剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項7】
アルコキシド化合物とは異なる環状エーテル基を有する化合物を含む、請求項6に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物の硬化物であり
線膨張率が80ppm以下であり、かつガラス転移温度が120℃以上である、硬化物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画する工程と、
パターン状に描画された前記インクジェット用硬化性組成物に光を照射し、硬化させて、ソルダーレジストパターンである硬化物層を形成する工程とを備える、電子部品の製造方法。
【請求項10】
請求項6又は7に記載のインクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画する工程と、
パターン状に描画された前記インクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、ソルダーレジストパターンである硬化物層を形成する工程とを備える、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式により塗工されるインクジェット用硬化性組成物に関し、基板上にレジストパターンなどの硬化物層を形成するために好適に用いられるインクジェット用硬化性組成物に関する。また、本発明は、上記インクジェット用硬化性組成物を硬化させた硬化物に関する。また、本発明は、上記インクジェット用硬化性組成物により形成された硬化物層を有する電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線が上面に設けられた基板上に、パターン状のソルダーレジスト膜であるソルダーレジストパターンが形成されたプリント配線板が多く用いられている。電子機器の小型化及び高密度化に伴い、プリント配線板では、より一層微細なソルダーレジストパターンが求められている。
【0003】
微細なソルダーレジストパターンを形成する方法として、インクジェット方式によりソルダーレジスト用組成物を塗工する方法が提案されている。インクジェット方式では、スクリーン印刷方式によりソルダーレジストパターンを形成する場合よりも、工程数が少なくなる。このため、インクジェット方式では、ソルダーレジストパターンを容易にかつ効率的に形成することができる。
【0004】
インクジェット方式によりソルダーレジスト用組成物を塗工する場合、塗工時の粘度がある程度低いことが要求される。一方で、近年、50℃以上に加温して印刷することが可能なインクジェット装置が開発されている。インクジェット装置内でソルダーレジスト用組成物を50℃以上に加温することにより、ソルダーレジスト用組成物の粘度が比較的低くなり、インクジェット装置を用いたソルダーレジスト用組成物の吐出性をより一層高めることができる。
【0005】
また、インクジェット方式により塗工可能なソルダーレジスト用組成物が、下記の特許文献1に開示されている。下記の特許文献1には、(メタ)アクリロイル基と熱硬化性官能基とを有するモノマーと、重量平均分子量が700以下である光反応性希釈剤と、光重合開始剤とを含むインクジェット用硬化性組成物が開示されている。このインクジェット用硬化性組成物の25℃での粘度は、150mPa・s以下である。また、特許文献1では、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を用いてもよいことが記載されている。
【0006】
また、インクジェット方式により塗工することを意図したものではないが、下記の特許文献2には、エポキシ樹脂と、1以上の架橋形成性部位を有するアクリル系モノマーと、末端ビニル系シランカップリング剤と、光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物が開示されている。この感光性樹脂組成物は、フォトリソグラフィ技術により樹脂パターンを形成するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2004/099272A1
【特許文献2】特開2009−294620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物の粘度は比較的低い。このため、特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物は、インクジェット方式にて基板上に塗工することが可能である。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物では、保存中にゲル化が進行することがある。すなわち、インクジェット用硬化性組成物の保存安定性が低いことがある。
【0010】
さらに、特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基と熱硬化性官能基とを有するモノマーを含むので、50℃以上の環境下でのポットライフが短いという問題がある。
【0011】
例えば、インクジェット用硬化性組成物をインクジェット装置により吐出する場合には、一般に、インクジェット用硬化性組成物は、インクジェット装置内に供給された後、インクジェット装置内で一定時間留まる。一方で、吐出性を高めるために、インクジェット装置内の温度は50℃以上に加温されることがある。特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物では、50℃以上に加温されたインクジェット装置内で組成物の硬化が進行したりして、組成物の粘度が高くなり、組成物の吐出が困難になることがある。
【0012】
さらに、従来のインクジェット用硬化性組成物を硬化させた硬化物では、熱によって寸法が変化することがある。硬化物の寸法が変化すると、硬化物に積層されている部材の反りが生じることがある。さらに、従来のインクジェット用硬化性組成物を硬化させた硬化物では、耐熱性が低いことがある。
【0013】
本発明の目的は、保存安定性を高めることができ、硬化物の熱による寸法変化を小さくすることができ、かつ硬化物の耐熱性を高めることができるインクジェット用硬化性組成物、並びに該インクジェット用硬化性組成物を用いた硬化物及び電子部品の製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の限定的な目的は、環状エーテル基を有する化合物を含む場合であっても、50℃以上に加温されるインクジェット装置内の環境下でポットライフが長いインクジェット用硬化性組成物、並びに該インクジェット用硬化性組成物を用いた硬化物及び電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の広い局面によれば、インクジェット方式により塗工され、かつ光の照射により硬化可能であるインクジェット用硬化性組成物であって、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物と、光重合開始剤と、アルコキシド化合物とを含み、インクジェット用硬化性組成物100重量%中、前記アルコキシド化合物の含有量が5重量%以上である、インクジェット用硬化性組成物が提供される。
【0016】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のある特定の局面では、前記アルコキシド化合物が、ケイ素原子、チタン原子又はジルコニア原子を有する。
【0017】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のある特定の局面では、前記アルコキシド化合物が、窒素原子及び硫黄原子を有する。
【0018】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のある特定の局面では、JIS K2283に準拠して測定された25℃での加熱前の粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下である。
【0019】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のある特定の局面では、酸素が存在しない環境下で80℃で24時間加熱した後の粘度の、加熱前の粘度に対する比が、1.1以下である。
【0020】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のある特定の局面では、インクジェット方式により塗工され、かつ光の照射と熱の付与とにより硬化可能であるインクジェット用硬化性組成物であって、前記インクジェット用硬化性組成物は、熱硬化剤とを含む。
【0021】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のある特定の局面では、前記インクジェット用硬化性組成物は、アルコキシド化合物とは異なる環状エーテル基を有する化合物を含む。
【0022】
本発明の広い局面によれば、上述したインクジェット用硬化性組成物を硬化させることにより得られ、線膨張率が80ppm以下であり、かつガラス転移温度が120℃以上である、硬化物が提供される。
【0023】
本発明の広い局面によれば、上述したインクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画する工程と、パターン状に描画された前記インクジェット用硬化性組成物に光を照射し、又は、パターン状に描画された前記インクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備える、電子部品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物と、光重合開始剤と、アルコキシド化合物とを含み、上記インクジェット用硬化性組成物100重量%中、上記アルコキシド化合物の含有量が5重量%以上であるので、上記硬化性組成物の保存安定性を高めることができ、硬化物の熱による寸法変化を小さくすることができ、かつ硬化物の耐熱性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0026】
(インクジェット用硬化性組成物)
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、アルコキシド化合物(E)とを含む。
【0027】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物100重量%中、上記アルコキシド化合物の含有量は5重量%以上である。
【0028】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、上述した構成を備えるため、インクジェット用硬化性組成物において、保存安定性を高めることができ、さらに、インクジェット用硬化性組成物を硬化させた硬化物の熱による寸法変化を小さくすることができ、かつ上記硬化物の耐熱性を高めることができる。
【0029】
本発明では、上記アルコキシド化合物は、単に密着性付与などの目的で単に配合しているのではなく、上記硬化性組成物の保存安定性を高め、上記硬化物の熱による寸法変化を小さくし、かつ上記硬化物の耐熱性を高める目的で配合している。このため、本発明では、上記アルコキシ化合物の含有量は比較的多い。
【0030】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、アルコキシド化合物とは異なる環状エーテル基を有する化合物(C)と、熱硬化剤(D)とを含むことが好ましい。
【0031】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、上述した組成を備えるため、環状エーテル基を有する化合物(C)と熱硬化剤(D)とを用いたとしても、50℃以上に加温されるインクジェット装置内の環境下でもポットライフを十分に長くすることができる。また、インクジェット方式による塗工前のインクジェット用硬化性組成物は、50℃以上に加温されても、粘度が上昇し難くなり、熱硬化が進行し難くなる。このため、インクジェット用硬化性組成物は、高温下での安定性に優れており、インクジェットノズルから安定して吐出することができる。
【0032】
本発明に係る硬化物は、上述したインクジェット用硬化性組成物を硬化させた硬化物である。
【0033】
上記硬化物の線膨張率は好ましくは90ppm以下、より好ましくは80ppm以下である。上記線膨張率が低いほど、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。
【0034】
上記線膨張率は、線膨張率測定装置(Seiko insstruments社製「SS6000」)を用いて、室温(25℃)から250℃まで昇温速度10℃の条件で測定可能である。
【0035】
上記硬化物のガラス転移温度は好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。上記ガラス転移温度が高いほど、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0036】
上記ガラス転移温度は、線膨張率測定装置(Seiko insstruments社製「SS6000」)を用いて、室温(25℃)から250℃まで昇温速度10℃の条件で線膨張率を測定し、得られる線膨張率の変曲点から測定可能である。
【0037】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物が、多官能化合物(A)と光重合開始剤(B)とを含むので、光の照射により硬化可能である。従って、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、光の照射により硬化可能であり、インクジェット用光硬化性組成物である。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物が、環状エーテル基を有する化合物(C)と熱硬化剤(D)とを含む場合には、熱の付与により硬化可能である。本発明に係るインクジェット用硬化性化合物は、光の照射と熱の付与とにより硬化可能であり、インクジェット用光及び熱硬化性組成物であることが好ましい。
【0038】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物が、環状エーテル基を有する化合物(C)と熱硬化剤(D)とを含む場合には、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、光の照射により一次硬化物を得た後、一次硬化物に熱を付与することにより本硬化させ、硬化物であるレジストパターンなどの硬化物層を得ることができる。このように、光の照射により一次硬化を行うことで、基板等の塗工対象部材上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物の濡れ拡がりを抑制することができる。従って、微細なレジストパターンなどの硬化物層を高精度に形成することができる。
【0039】
また、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物が環状エーテル基を有する化合物(C)を含む場合には、環状エーテル基を有する化合物(C)を硬化させて用いることで、硬化後の硬化物の耐熱性を高めることができる。
【0040】
熱硬化剤(D)は、粒子などの固体ではなく、粘稠物であることが好ましい。例えば、熱硬化剤(D)は、ジシアンジアミド又はヒドラジド化合物と、ジシアンジアミド又はヒドラジド化合物と反応しうる官能基を有する官能基含有化合物とを反応させた反応粘稠物であることが好ましい。上記反応粘稠物を用いた場合には、インクジェット吐出性がより一層高くなる。
【0041】
以下、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0042】
[多官能化合物(A)]
光の照射により硬化性組成物を硬化させるために、上記インクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A)を含む。多官能化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有していれば特に限定されない。多官能化合物(A)として、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する従来公知の多官能化合物を用いることができる。多官能化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するため、光の照射により重合が進行し、硬化する。このため、硬化性組成物を塗工した後に光を照射することにより硬化を進行させることができ、塗工された形状を保持することができ、光が照射された硬化性組成物の一次硬化物及び硬化物が過度に濡れ拡がるのを効果的に抑制することができる。多官能化合物(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
多官能化合物(A)としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸付加物、多価アルコールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリル酸付加物、ウレタン(メタ)アクリレート類、及びポリエステル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、及びペンタエリスリトール等が挙げられる。上記「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。上記「(メタ)アクリル」の用語は、アクリルとメタクリルとを示す。
【0044】
多官能化合物(A)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A1)であることが好ましい。多官能化合物(A1)の使用により、上記インクジェット用硬化性組成物の硬化物の耐湿熱性を高くすることができる。従って、上記インクジェット用硬化性組成物を用いたプリント配線板を長期間使用でき、かつ該プリント配線板の信頼性を高めることができる。
【0045】
多官能化合物(A1)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有していれば特に限定されない。多官能化合物(A1)として、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する従来公知の多官能化合物を用いることができる。多官能化合物(A1)は、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するため、光の照射により重合が進行し、硬化する。多官能化合物(A1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
多官能化合物(A1)としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸付加物、多価アルコールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリル酸付加物、ウレタン(メタ)アクリレート類、及びポリエステル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0047】
多官能化合物(A1)の具体例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジメタノールジ(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、硬化物の耐湿熱性をより一層高める観点からは、多官能化合物(A1)は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。上記「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0048】
多官能化合物(A1)及び後述する単官能化合物(F)における上記「多環骨格」とは、複数の環状骨格を連続して有する構造を示す。多官能化合物(A1)及び単官能化合物(F)における上記多環骨格としてはそれぞれ、多環脂環式骨格及び多環芳香族骨格等が挙げられる。
【0049】
上記多環脂環式骨格としては、ビシクロアルカン骨格、トリシクロアルカン骨格、テトラシクロアルカン骨格及びイソボルニル骨格等が挙げられる。
【0050】
上記多環芳香族骨格としては、ナフタレン環骨格、アントラセン環骨格、フェナントレン環骨格、テトラセン環骨格、クリセン環骨格、トリフェニレン環骨格、テトラフェン環骨格、ピレン環骨格、ペンタセン環骨格、ピセン環骨格及びペリレン環骨格等が挙げられる。
【0051】
多官能化合物(A)の配合量は、光の照射により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、多官能化合物(A)の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、好ましくは95重量%未満、より好ましくは94.9重量%以下、より一層好ましくは90重量%以下、更に好ましくは85重量%以下、更に一層好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下、最も好ましくは75重量%以下である。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、多官能化合物(A)の含有量の上限は、成分(B)〜(F)及び他の成分の含有量などにより適宜調整される。
【0052】
多官能化合物(A1)と後述する単官能化合物(F)とを併用する場合に、多官能化合物(A1)と単官能化合物(F)と光重合開始剤(B)との合計100重量%中、多官能化合物(A1)の含有量は20重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、多官能化合物(A1)の含有量は、より好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以下である。多官能化合物(A1)の含有量が上記下限以上であると、光の照射により硬化性組成物をより一層効果的に硬化させることができる。多官能化合物(A1)の含有量が上記上限以下であると、硬化物の耐湿熱性がより一層高くなる。
【0053】
[光重合開始剤(B)]
光の照射により硬化性組成物を硬化させるために、上記インクジェット用硬化性組成物は、多官能化合物(A)とともに、光重合開始剤(B)を含むことが好ましい。光重合開始剤(B)としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤(B)は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
上記光ラジカル重合開始剤は特に限定されない。上記光ラジカル重合開始剤は、光の照射によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始するための化合物である。上記光ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、リボフラビンテトラブチレート、チオール化合物、2,4,6−トリス−s−トリアジン、有機ハロゲン化合物、ベンゾフェノン類、キサントン類及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
上記ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。上記アセトフェノン類としては、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン及び1,1−ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。上記アミノアセトフェノン類としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェン等が挙げられる。上記アントラキノン類としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン及び1−クロロアントラキノン等が挙げられる。上記チオキサントン類としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。上記ケタール類としては、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等が挙げられる。上記チオール化合物としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール及び2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。上記有機ハロゲン化合物としては、2,2,2−トリブロモエタノール及びトリブロモメチルフェニルスルホン等が挙げられる。上記ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン及び4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0056】
上記光ラジカル重合開始剤は、α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることがより好ましい。この特定の光ラジカル重合開始剤の使用により、露光量が少なくても、インクジェット用硬化性組成物を効率的に光硬化させることが可能になる。このため、光の照射によって、塗工されたインクジェット用硬化性組成物が濡れ拡がるのを効果的に抑制でき、微細なレジストパターンを高精度に形成することができる。さらに、上記光ラジカル重合開始剤がジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤である場合には、熱硬化速度を速くすることができ、組成物の光照射物の熱硬化性を良好にすることができる。
【0057】
上記α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤の具体例としては、BASF社製のIRGACURE907、IRGACURE369、IRGACURE379及びIRGACURE379EG等が挙げられる。これら以外のα−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤を用いてもよい。中でも、インクジェット用硬化性組成物の光硬化性と硬化物による絶縁信頼性とをより一層良好にする観点からは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE369)又は2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE379又はIRGACURE379EG)が好ましい。これらはジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤である。
【0058】
上記光ラジカル重合開始剤とともに、光重合開始助剤を用いてもよい。該光重合開始助剤としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン及びトリエタノールアミン等が挙げられる。これら以外の光重合開始助剤を用いてもよい。上記光重合開始助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
また、可視光領域に吸収があるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)のチタノセン化合物などを、光反応を促進するために用いてもよい。
【0060】
上記光カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、メタロセン化合物及びベンゾイントシレート等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
多官能化合物(A)100重量部に対して、光重合開始剤(B)の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、好ましくは30重量部以下、より好ましくは15重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。光重合開始剤(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光の照射により硬化性組成物がより一層効果的に硬化する。
【0062】
[環状エーテル基を有する化合物(C)]
上記インクジェット用硬化性組成物は、熱の付与によって硬化可能であるように、アルコキシド化合物とは異なる環状エーテル基を有する化合物(C)を含む。環状エーテル基を有する化合物(C)は、アルコキシ基を有さない。化合物(C)の使用により、熱の付与により硬化性組成物又は該硬化性組成物の一次硬化物をさらに硬化させることができる。このため、化合物(C)の使用により、レジストパターンを効率的にかつ精度よく形成することができ、更に硬化物の耐熱性及び絶縁信頼性を高めることができる。環状エーテル基を有する化合物(C)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
環状エーテル基を有する化合物(C)は、環状エーテル基を有していれば特に限定されない。化合物(C)における環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。なかでも、硬化性を高め、かつ耐熱性及び絶縁信頼性により一層優れた硬化物を得る観点からは、上記環状エーテル基はエポキシ基であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(C)は、環状エーテル基を2個以上有することが好ましい。
【0064】
エポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ジグリシジルフタレート化合物、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ化合物、ビキシレノール型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、テトラグリシジルキシレノイルエタン化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ化合物、キレート型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、アミノ基含有エポキシ化合物、ゴム変性エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ化合物、シリコーン変性エポキシ化合物及びε−カプロラクトン変性エポキシ化合物等が挙げられる。
【0065】
オキセタニル基を有する化合物は、例えば、特許第3074086号公報に例示されている。
【0066】
環状エーテル基を有する化合物(C)は、芳香族骨格を有することが好ましい。芳香族骨格及び環状エーテル基を有する化合物の使用により、上記硬化性組成物の保管時及び吐出時の熱安定性がより一層良好になり、上記硬化性組成物の保管時にゲル化が生じ難くなる。また、芳香族骨格及び環状エーテル基を有する化合物は、芳香族骨格を有さずかつ環状エーテル基を有する化合物と比べて、多官能化合物(A)、単官能化合物(F)及び熱硬化剤(D)との相溶性に優れていので、絶縁信頼瀬性がより一層良好になる。
【0067】
環状エーテル基を有する化合物(C)は25℃で液状であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(C)の25℃での粘度は、300mPa・sを超えることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(C)の25℃での粘度は、80Pa・s以下であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(C)の粘度が上記下限以上であると、硬化物層を形成する際の解像度がより一層良好になる。環状エーテル基を有する化合物(C)の粘度が上記上限以下であると、上記硬化性組成物の吐出性がより一層良好になるとともに、環状エーテル基を有する化合物(C)と他の成分との相溶性がより一層高くなり、絶縁信頼性がより一層向上する。
【0068】
環状エーテル基を有する化合物(C)の配合量は、熱の付与により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、環状エーテル基を有する化合物(C)の含有量は好ましくは3重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。化合物(C)の含有量が上記下限以上であると、熱の付与により硬化性組成物をより一層効果的に硬化させることができる。化合物(C)の含有量が上記上限以下であると、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0069】
[熱硬化剤(D)]
上記インクジェット用硬化性組成物は、熱の付与によって効率的に硬化可能にするために、熱硬化剤(D)を含む。熱硬化剤(D)は、環状エーテル基を有する化合物(C)を硬化させる。熱硬化剤(D)は特に限定されない。熱硬化剤(D)として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。熱硬化剤(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。インクジェット用硬化性組成物のポットライフを長くする観点からは、熱硬化剤(D)は、潜在性熱硬化剤であることが好ましい。
【0070】
熱硬化剤(D)としては、有機酸、アミン化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、フェノール化合物、ユリア化合物、ポリスルフィッド化合物及び酸無水物等が挙げられる。熱硬化剤(D)として、アミン−エポキシアダクトなどの変性ポリアミン化合物を用いてもよい。これら以外の熱硬化剤(D)を用いてもよい。
【0071】
熱硬化剤(D)の具体例としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、トリアジン環を有する化合物、メチル(メタ)アクリレート樹脂又はスチレン樹脂等により形成されたシェルにより、トリフェニルホスフィン(熱硬化剤)が被覆されている潜在性熱硬化剤(例えば、日本化薬社製「EPCAT−P」及び「EPCAT−PS」)、ポリウレア系重合体又はラジカル重合体により形成されたシェルにより、アミンなどの熱硬化剤が被覆されている潜在性熱硬化剤、変性イミダゾールなどの熱硬化剤をエポキシ樹脂中に分散させて閉じ込め、粉砕することにより得られた潜在性熱硬化剤、熱可塑性高分子内に熱硬化剤を分散させ、含有させた潜在性熱硬化剤、並びにテトラキスフェノール類化合物などにより被覆されたイミダゾール潜在性熱硬化剤(例えば、日本曹達社製「TEP−2E4MZ」及び「HIPA−2E4MZ」)等が挙げられる。
【0072】
加温された際の粘度変化をより一層小さくし、ポットライフをより一層長くする観点からは、熱硬化剤(D)はジシアンジアミド、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物及びトリアジン環を有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種であるであることが好ましい。
【0073】
上記イミダゾール化合物の具体例としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0074】
上記トリアジン環を有する化合物の具体例としては、メラミン、メラミンシアヌレート、TEPIC−S(日産化学工業社製)及び2,4,6−トリ(6’−ヒドロキシ−1’−ヘキシルアミノ)トリアジン等が挙げられる。
【0075】
ジシアンジアミド粒子やヒドラジド化合物粒子の沈降やノズル詰まりを防止するため、ジシアンジアミド又はヒドラジド化合物粒子をあらかじめ、ジシアンジアミド又はヒドラジド化合物と反応しうる官能基を有する官能基含有化合物(環状エーテル基を有する化合物など)と反応させ、組成物中に溶解させてもよい。この場合でも、組成物のポットライフは良好である。
【0076】
ジシアンジアミド又は上記ヒドラジン化合物と反応させる環状エーテル基を有する化合物は、環状エーテル基を1個有する化合物であることが好ましい。
【0077】
上記ジシアンジアミド又は上記ヒドラジン化合物と反応させる環状エーテル基を有する化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オルトクレジルグリシジルエーテル、メタクレジルグリシジルエーテル、パラクレジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラt−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類や、グリシジル(メタ)アクリレート、及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0078】
ジシアンジアミドと上記官能基含有化合物との反応において、ジシアンジアミド1モルに対し、上記官能基含有化合物を0.2モル以上、4モル以下反応させることが好ましい。上記ヒドラジド化合物と上記官能基含有化合物との反応において、上記ヒドラジド化合物1モルに対し、上記官能基含有化合物を好ましくは0.2モル以上、より好ましくは2モル以上、好ましくは6モル以下、より好ましくは5モル以下反応させることが好ましい。上記官能基含有化合物の使用量が上記下限未満であると、未反応のジシアンジアミド又はヒドラジド化合物が析出するおそれがある。上記官能基含有化合物の使用量が上記上限を超えると、上記反応粘稠物の活性水素がすべて失活し、環状エーテル基を有する化合物(C)を硬化させることができなくなるおそれがある。なお、この反応では、必要に応じて溶媒又は反応促進剤の存在下、60℃〜140℃で反応させることが好ましい。
【0079】
ジシアンジアミド又は上記ヒドラジド化合物と上記官能基含有化合物との反応時に、ジシアンジアミド又は上記ヒドラジド化合物を溶解させるために溶剤を用いてもよい。該溶剤は、ジシアンジアミド又はヒドラジド化合物を溶解させることが可能な溶剤であればよい。使用可能な溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド及びメチルセロソルブ等が挙げられる。
【0080】
ジシアンジアミド又は上記ヒドラジド化合物と上記官能基含有化合物との反応を促進するため、反応促進剤を用いてもよい。反応促進剤として、フェノール類、アミン類、イミダゾール類及びトリフェニルフォスフィンなどの公知慣用の反応促進剤を使用できる。
【0081】
インクジェット吐出性をより一層高める観点からは、上記反応粘稠物は、固体ではないことが好ましく、結晶ではないことが好ましく、結晶性固体ではないことが好ましい。上記反応粘稠物は、液状又は半固形状であることが好ましい。
【0082】
上記反応粘稠物は、透明又は半透明であることが好ましい。上記反応粘稠物が透明又は半透明であるか否かは、厚み5mmの上記反応粘稠物を介して物体をみたときに、該物体が視認可能であるか否かで判断できる。
【0083】
環状エーテル基を有する化合物(C)と熱硬化剤(D)との配合比率は特に限定されない。熱硬化剤(D)の配合量は、熱の付与により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。環状エーテル基を有する化合物(C)100重量部に対して、熱硬化剤(D)の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。
【0084】
[アルコキシド化合物(E)]
アルコキシド化合物(E)は、上記インクジェット用硬化性組成物の粘度を比較的低くする作用を有する。さらに、アルコキシド化合物は、硬化物の熱による寸法変化を抑え、かつ耐熱性を向上させることに大きく寄与する。アルコキシド化合物(E)はアルコキシ基を有する。アルコキシド化合物(E)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
上記硬化性組成物の保存安定性、上記硬化物の加熱下での寸法安定性、及び上記硬化物の耐熱性をバランスよく高める観点からは、アルコキシド化合物(E)は、ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子又はジルコニア原子を有することが好ましく、ケイ素原子、チタン原子又はジルコニア原子を有することが好ましい。上記硬化性組成物の保存安定性、上記硬化物の加熱下での寸法安定性、及び上記硬化物の耐熱性をバランスよく高める観点からは、アルコキシド化合物(E)は、有機金属化合物であることが好ましく、金属アルコキシド化合物であることが好ましい。なお、本明細書において、ケイ素原子は、金属に含まれる。
【0086】
上記有機金属化合物としては、有機シラン化合物、有機チタネート化合物、有機アルミネート化合物及び有機ジルコネート化合物等が挙げられる。上記硬化性組成物の保存安定性、上記硬化物の加熱下での寸法安定性、及び上記硬化物の耐熱性をバランスよく高める観点からは、アルコキシド化合物(E)は、有機シラン化合物、有機チタネート化合物、有機アルミネート化合物又は有機ジルコネート化合物であることが好ましく、有機シラン化合物、有機チタネート化合物又は有機ジルコネート化合物であることがより好ましい。
【0087】
好ましい有機シラン化合物としては、ビニルシラン化合物、エポキシシラン化合物、(メタ)アクリルシラン化合物、メルカプトシラン化合物及びアミノシラン化合物等が挙げられる。これら以外の有機シラン化合物を用いてもよい。
【0088】
好ましい上記有機チタネート化合物としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン及びチタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、並びにこれらの重合体等が挙げられる。これら以外の有機チタネート化合物を用いてもよい。
【0089】
好ましい上記有機アルミネート化合物としては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリn−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム及びアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、並びにこれらの重合体等が挙げられる。これら以外の有機アルミネート化合物を用いてもよい。
【0090】
好ましい上記有機ジルコネート化合物としては、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド及びジルコニウムテトラn−ブトキシド、並びにこれらの重合体等が挙げられる。これら以外の有機ジルコネート化合物を用いてもよい。
【0091】
アルコキシド化合物(E)は、エポキシ基を有していてもよい。
【0092】
上記硬化性組成物の保存安定性、上記硬化物の加熱下での寸法安定性、及び上記硬化物の耐熱性を高めるために、上記インクジェット用硬化性組成物100重量%中、アルコキシド化合物(E)の含有量は、5重量%以上である。上記インクジェット用硬化性組成物100重量%中、アルコキシド化合物(E)の含有量は、好ましくは10重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0093】
(単官能化合物(F))
上記インクジェット用硬化性組成物は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(F)を含むことが好ましい。さらに、上記インクジェット用硬化性組成物は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A1)と、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(F)とを含むことがより好ましい。これらの場合には、上記インクジェット用硬化性組成物の硬化物の耐湿熱性がかなり高くなる。従って、上記インクジェット用硬化性組成物を用いたプリント配線板などの電子部品をより一層長期間使用でき、かつ該電子部品の信頼性がより一層高くなる。また、単官能化合物(F)の使用により、硬化物の耐湿熱性が高くなるだけでなく、硬化性組成物の吐出性も高くなる。なお、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(F)を用いた場合には、多環骨格を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物を用いた場合と比べて、硬化物の耐湿熱性が高くなる。
【0094】
単官能化合物(F)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有していれば特に限定されない。単官能化合物(F)として、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する従来公知の単官能化合物を用いることができる。単官能化合物(F)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
単官能化合物(F)の具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びナフチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、硬化物の耐湿熱性をより一層高める観点からは、単官能化合物(F)は、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0096】
インクジェット用硬化性組成物100重量%中、単官能化合物(F)の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下である。
【0097】
多官能化合物(A1)と単官能化合物(F)と光重合開始剤(B)との合計100重量%中、単官能化合物(F)の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、更に好ましくは42重量%以下である。単官能化合物(F)の含有量が上記下限以上であると、硬化物の耐湿熱性がより一層高くなる。単官能化合物(F)の含有量が上記上限以下であると、光の照射により硬化性組成物をより一層効果的に硬化させることができる。
【0098】
上記インクジェット用硬化性組成物100重量%中、多官能化合物(A1)と単官能化合物(F)との合計の含有量の上限は、光重合開始剤(B)の含有量により適宜調整される。
【0099】
[他の成分]
上記インクジェット用硬化性組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0100】
上記硬化促進剤としては、第三級アミン、イミダゾール、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、有機金属塩、リン化合物及び尿素系化合物等が挙げられる。
【0101】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で種々の添加剤を配合してもよい。該添加剤としては特に限定されず、着色剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤及び密着性付与剤等が挙げられる。また、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、少量であれば有機溶剤を含んでいてもよい。
【0102】
上記着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック及びナフタレンブラック等が挙げられる。上記重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール及びフェノチアジン等が挙げられる。
【0103】
上記消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤及び高分子系消泡剤等が挙げられる。上記レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤及び高分子系レベリング剤等が挙げられる。上記密着性付与剤としては、イミダゾール系密着性付与剤、チアゾール系密着性付与剤及びトリアゾール系密着性付与剤が挙げられる。
【0104】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物においては、JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度η1が160mPa・s以上、1200mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット用硬化性組成物の粘度η1が上記下限以上及び上記上限以下であると、インクジェット用硬化性組成物をインクジェットヘッドから容易にかつ精度よく吐出できる。さらに、インクジェット用硬化性組成物が50℃以上に加温されても、該組成物をインクジェットヘッドから容易にかつ精度よく吐出できる。
【0105】
上記粘度η1は、より好ましくは1000mPa・s以下、更に好ましくは500mPa・s以下である。上記粘度が好ましい上記上限を満足すると、上記硬化性組成物をヘッドから連続吐出したときに、吐出性がより一層良好になる。また、上記硬化性組成物の濡れ拡がりをより一層抑制し、硬化物層を形成する際の解像度をより一層高める観点からは、上記粘度は500mPa・sを超えることが好ましい。
【0106】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物を酸素が存在しない環境下で80℃で24時間加熱した後の粘度η2の加熱前の上記粘度η1に対する比(η2/η1)は好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下、特に好ましくは1.025以下である。上記比(η2/η1)が上記上限以下であると、硬化性組成物の保存安定性が高く、かつポットライフが十分に長い。また、上記比(η2/η1)は一般に1以上であるが、0.95以上であってもよい。上記粘度η2は、上記粘度η1と同様に測定される。
【0107】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、有機溶剤を含まないか、又は有機溶剤を含みかつ上記硬化性組成物100重量%中の上記有機溶剤の含有量は50重量%以下であることが好ましい。上記硬化性組成物100重量%中、上記有機溶剤の含有量はより好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。上記有機溶剤の含有量が少ないほど、硬化物層を形成する際の解像度がより一層良好になる。
【0108】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、有機溶剤を含まないか、又は有機溶剤を含みかつ熱硬化剤(D)100重量部に対して上記有機溶剤の含有量は50重量部以下であることが好ましい。熱硬化剤(D)100重量部に対して、上記有機溶剤の含有量はより好ましくは20重量部以下、更に好ましくは10重量部以下、特に好ましくは1重量部以下である。上記有機溶剤の含有量が少ないほど、硬化物層を形成する際の解像度がより一層良好になる。
【0109】
(電子部品の製造方法)
次に、本発明に係る電子部品の製造方法について説明する。
【0110】
本発明に係る電子部品の製造方法では、上述のインクジェット用硬化性組成物が用いられる。すなわち、本発明に係る電子部品の製造方法では、先ず、上記インクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターンを描画する。このとき、上記インクジェット用硬化性組成物を直接描画することが特に好ましい。「直接描画する」とは、マスクを用いずに描画することを意味する。上記電子部品としては、プリント配線板及びタッチパネル部品等が挙げられる。上記電子部品は、配線板であることが好ましく、プリント配線板であることがより好ましい。
【0111】
上記インクジェット用硬化性組成物の塗工には、インクジェットプリンタが用いられる。該インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを有する。インクジェットヘッドはノズルを有する。インクジェット装置は、インクジェット装置内又はインクジェットヘッド内の温度を50℃以上に加温するための加温部を備えることが好ましい。上記インクジェット用硬化性組成物は、塗工対象部材上に塗工されることが好ましい。上記塗工対象部材としては、基板等が挙げられる。該基板としては、配線等が上面に設けられた基板等が挙げられる。上記インクジェット用硬化性組成物は、プリント基板上に塗工されることが好ましい。
【0112】
また、本発明に係る電子部品の製造方法により、基板をガラスを主体とする部材に変え、液晶表示装置等の表示装置用のガラス基板を作製することも可能である。具体的には、ガラスの上に、蒸着等の方法によりITO等の導電パターンを設け、この導電パターン上に本発明に係る電子部品の製造方法により、インクジェット方式で硬化物層を形成してもよい。この硬化物層上に、導電インク等でパターンを設ければ、硬化物層が絶縁膜となり、ガラス上の導電パターンの中で、所定のパターン間にて電気的接続が得られる。
【0113】
次に、パターン状に描画されたインクジェット用硬化性組成物に光を照射し、硬化させて、硬化物層を形成する。パターン状に描画されたインクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、硬化物層を形成してもよい。このようにして、硬化物層を有する電子部品を得ることができる。該硬化物層は、絶縁膜であってもよく、レジストパターンであってもよい。該絶縁膜は、パターン状の絶縁膜であってもよい。該硬化物層はレジストパターンであることが好ましい。上記レジストパターンはソルダーレジストパターンであることが好ましい。
【0114】
本発明に係る電子部品の製造方法は、レジストパターンを有するプリント配線板の製造方法であることが好ましい。上記インクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画し、パターン状に描画された上記インクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、レジストパターンを形成することが好ましい。
【0115】
パターン状に描画された上記インクジェット用硬化性組成物に、光を照射することにより一次硬化させ、一次硬化物を得てもよい。これにより描画されたインクジェット用硬化性組成物の濡れ拡がりを抑制することができ、高精度なレジストパターンが形成可能となる。また、光の照射により一次硬化物を得た場合には、一次硬化物に熱を付与することにより本硬化させ、硬化物を得て、レジストパターンなどの硬化物層を形成してもよい。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、光の照射及び熱の付与により硬化可能である。光硬化と熱硬化とを併用した場合には、耐熱性により一層優れたレジストパターンなどの硬化物層を形成することができる。熱の付与により硬化させる際の加熱温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0116】
上記光の照射は、描画の後に行われてもよく、描画と同時に行われてもよい。例えば、硬化性組成物の吐出と同時又は吐出の直後に光を照射してもよい。このように、描画と同時に光を照射するために、インクジェットヘッドによる描画位置に光照射部分が位置するように光源を配置してもよい。
【0117】
光を照射するための光源は、照射する光に応じて適宜選択される。該光源としては、UV−LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプ等が挙げられる。照射される光は、一般に紫外線であり、電子線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線等であってもよい。
【0118】
インクジェット用硬化性組成物の塗工時における温度は、インクジェット用硬化性組成物がインクジェットヘッドから吐出できる粘度となる温度であれば特に限定されない。インクジェット用硬化性組成物の塗工時における温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、好ましくは100℃以下である。塗工時におけるインクジェット用硬化性組成物の粘度は、インクジェットヘッドから吐出できる範囲であれば特に限定されない。
【0119】
また、印刷時に、基板を冷却するという方法もある。基板を冷却すると、着弾時に硬化性組成物の粘度が上がり、解像度が良くなる。この際には、結露しない程度に冷却をとどめるか、結露しないよう雰囲気の空気を除湿することが好ましい。また、冷却することで、基板が収縮するので、寸法精度を補正してもよい。
【0120】
熱硬化剤(D)として上記反応粘稠物などの粘稠物を用いる場合には、例えば、インクジェットヘッドにおいてインクジェット用硬化性組成物を加熱する場合であっても、インクジェット用硬化性組成物のポットライフが十分に長く、安定した吐出が可能である。さらに、インクジェット用硬化性組成物をインクジェット方式による塗工に適した粘度となるまで加熱できるため、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物の使用により、プリント配線板などの電子部品を好適に製造することができる。
【0121】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0122】
(実施例1)
多官能化合物(A)に相当するジプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・サイテック社製「DPGDA」)70重量部と、光重合開始剤(B)に相当するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤(BASFジャパン社製「イルガキュア 907」)3.5重量部と、アルコキシド化合物(E)に相当するビスフェノールA型エポキシシリカハイブリッド(荒川化学工業社製「E201」)10重量部と、熱硬化剤(D)に相当する2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製「2E4MZ」)0.5重量部とを混合し、インクジェット用硬化性組成物を得た。
【0123】
(実施例2〜11及び比較例1〜4)
配合成分の種類及び配合量を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット用硬化性組成物を得た。
【0124】
(実施例及び比較例の評価)
(1)粘度
JIS K2283に準拠して、粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、作製直後のインクジェット用硬化性組成物の25℃での粘度η1を測定した。インクジェット用硬化性組成物の粘度η1を下記の判定基準で判定した。
【0125】
[粘度の判定基準]
A:粘度η1が1200mPa・sを超える
B:粘度η1が1000mPa・sを超え、1200mPa・s以下
C:粘度η1が500mPa・sを超え、1000mPa・s以下
D:粘度η1が160mPa・s以上、500mPa・s以下
E:粘度η1が160mPa・s未満
【0126】
(2)貯蔵安定性
JIS K2283に準拠して、粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、作製直後のインクジェット用硬化性組成物の25℃での粘度η1を測定した。次に、作製直後のインクジェット用硬化性組成物を80℃で24時間加熱した。加熱後のインクジェット用硬化性組成物の粘度η2を粘度η1と同様にして測定した。粘度上昇を下記の判定基準で判定した。なお、加熱は、酸素が存在しない環境下で行った。
【0127】
[貯蔵安定性の判定基準]
○:比(η2/η1)が1以上、1.1以下
×:比(η2/η1)が1.1を超える
【0128】
(3)吐出安定性
紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、得られたインクジェット用硬化性組成物の吐出試験を行い、下記の判断基準で評価した。なお、粘度が500mPa・s以下である硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超える硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0129】
[吐出安定性の判断基準]
○:硬化性組成物をヘッドから10時間以上連続して吐出可能である
×:硬化性組成物をヘッドから10時間以上連続して吐出可能であるが、10時間連続吐出の間に僅かに吐出むらが生じる
【0130】
(4)解像度
銅箔が上面に貼り付けられている銅箔付きFR−4基板を用意した。この基板上に銅箔の表面の全体を覆うようにインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、ラインの幅80μmでライン間の間隔が80μmとなるように吐出して塗工し、パターン状に描画した。なお、粘度が500mPa・s以下であるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超えるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0131】
基板上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cmとなるように照射した。
【0132】
紫外線を照射して5分後に、パターンの濡れ拡がりを目視により観察し、濡れ拡がりを下記の基準で判定した。
【0133】
[解像度の判定基準]
○○:濡れ拡がりの状態が、狙いのライン幅+40μm以下
○:濡れ拡がりの状態が、狙いのライン幅+40μmを超え、+75μm以下
×:描画部分から組成物層が濡れ拡がっており、ライン間の間隔が無くなっているか、又は濡れ拡がりの状態が、狙いのライン幅+75μmを超える
【0134】
(5)線膨張率
銅箔上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み30μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cmとなるように照射した。更に160℃で1時間熱処理をした後、銅箔をエッチングで除去して、硬化膜サンプルを得た。得られたサンプルを用いて、カッターで切断することにより、測定に用いる3mm×30mm角の樹脂シートを得た。
【0135】
線膨張率測定装置(Seiko insstruments社製「SS6000」)を用いて、室温(25℃)から250℃まで昇温速度10℃の条件で、硬化物の線膨張率を測定した。
【0136】
(6)ガラス転移温度
銅箔上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み30μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cmとなるように照射した。更に160℃で1時間熱処理をした後、銅箔をエッチングで除去して、硬化膜サンプルを得た。得られたサンプルを用いて、カッターで切断することにより、測定に用いる3mm×30mm角の樹脂シートを得た。
【0137】
線膨張率測定装置(Seiko insstruments社製「SS6000」)を用いて、室温(25℃)から250℃まで昇温速度10℃の条件で線膨張率を測定し、得られた線膨張率の変曲点から、硬化物のガラス転移温度を測定した。
【0138】
結果を下記の表1に示す。なお、(1)粘度及び(2)貯蔵安定性の評価以外の評価では、80℃で12時間加熱していないインクジェット用硬化性組成物を用いた。
【0139】
【表1】