(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示されているような熱交換器構成にあっては、下水の流れを遮断した状態で施工することが前提とされており、作業期間中における周辺建物や地上の交通への影響が避けられないという問題点がある。新設管ではなく、既設の地中埋設管に対して新たに採熱構造を付設するには、埋設管の更生とともに実施することができて、供用下にある埋設管内の下水の流れを遮断することなく短時間で作業を済ませられ、精度よく施工できるものであることが望まれる。
【0007】
このような点で、前記従来の帯状部材を埋設管内で螺旋状に構築し、ライニング管を形成した後、ライニング管の内周側に採熱用の管状体を取り付けていく方法も考えられる。しかしながら、埋設管内に下水が流れている状況にあっては、ライニング管の底部を視認することができず、ライニング管に採熱用管状体を取り付ける作業が極めて困難なものとなる。また、採熱用管状体を嵌め込むための凹溝を帯状部材に設けると、下水中に含まれる異物が凹溝に入り込んでしまい、凹溝が塞がれることも懸念される。異物を除去せずに採熱用管状体を嵌め込むとすれば、採熱用管状体が損傷したり変形したりするおそれがあり、施工不良となってしまう。
【0008】
したがって、下水の流れを遮断することなく埋設管に採熱構造を付設するには、帯状部材に対してあらかじめ採熱用管状体を組み付けておくことが要求された。しかし、帯状部材の一方の面にはリブ間に補強材が装着され、施工前の段階で、帯状部材に対して採熱用管状体を効率よく好適に組み付ける具体的な手法はなく、次のような解決すべき問題点があった。
【0009】
まず、帯状部材は、工場で押出成形により製造された後、輸送用ドラムに巻き重ねられ、工場内に保管され、または施工現場に送られる。施工現場においては、帯状部材は、輸送ドラムから引き出されて、埋設管内または埋設管に接続するマンホール内に設置された製管機に対してマンホールを経由して供給される。このような帯状部材に対して、施工現場の狭小なスペースで補強材と採熱用管状体とを順次装着することは容易ではなく、作業性が悪いという問題点があった。
【0010】
加えて、長尺の帯状部材だけでなく、補強材および採熱用管状体も、それぞれ輸送ドラムに巻き取られて用意されており、これらには、異なる曲率の巻き癖が生じている。そのため、巻き癖を有する帯状部材に対して、異なる曲率の巻き癖を有する補強材と、さらに異なる曲率の巻き癖を有する採熱用管状体を精度よく組み付け、補強材や採熱用管状体の変形や脱落等を生じさせることなく一体化することは非常に困難なものであった。
【0011】
本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、埋設管が供用下にあっても短時間で作業性よく円滑に施工することができて下水熱を有効に利用し得る製管用部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、補強材
と管状体とを長尺の帯状部材に一体に備える製管用部材の製造方法を前提とする。前記帯状部材は、長尺帯状の基板と、前記基板の一方の面に長手方向に立設された複数条のリブと、前記基板の他方の面に長手方向に形成された凹溝とを備えて、ドラムの巻取軸に巻き取られている。前記製造方法として、帯状部材の長手方向を搬送方向とし、搬送経路にピンチローラを配設し、帯状部材を前記ピンチローラの各ローラ間に挿通し、ピンチローラを駆動させて帯状部材を搬送経路の前方へ送るとともに、ピンチローラと帯状部材との間に、補強材を供給して帯状部材のリブ間に補強材を順次嵌合させつつ、管状体を供給して帯状部材の凹溝に管状体を順次嵌合させる構成としている。
【0013】
この特定事項により、帯状部材に対して補強材
と管状体とを、一つの搬送経路上で精度よく組み付け、補強材
や管状体における変形や脱落等を生じさせることなく製管用部材を形成することができる。このように製造された製管用部材を用いることで、埋設管を更生する場合には、ライニング管の形成と同時に採熱構造を付与することが可能となり、作業性が格段に高められ、埋設管内の流水を遮断せずとも、短時間で精度よく施工することができる。
【0014】
また、前記製造方法として、前記帯状部材の長手方向を搬送方向とし、搬送経路に複数組のピンチローラを配設し、前記ドラムから引き出して巻き癖を有する帯状部材を前記ピンチローラの各ローラ間に挿通し、一組のピンチローラを駆動させて帯状部材を搬送経路の前方へ送るとともに、残りのピンチローラを従動回転させ、回転駆動する前記ピンチローラと帯状部材との間に補強材を供給し、帯状部材のリブ間に補強材を順次嵌合させつつ、従動回転する前記ピンチローラと帯状部材との間に管状体を供給して、帯状部材の凹溝に管状体を順次嵌合させる構成とすることも本発明の技術的思想の範疇である。
【0015】
このような特定事項により、巻き癖を有する帯状部材に対して、異なる曲率の巻き癖を有する補強材と、さらに異なる曲率の巻き癖を有す
る管状体とを、一つの搬送経路上で精度よく組み付け、補強材
や管状体における変形や脱落等を生じさせることなく製管用部材を形成することができる。このように製造された製管用部材を用いることで、埋設管を更生する場合には、ライニング管の形成と同時に採熱構造を付与することが可能となり、作業性が格段に高められ、埋設管内の流水を遮断せずとも、短時間で精度よく施工することができる。
【0016】
本発明に係る製管用部材の製造方法のより具体的な構成としては、搬送経路の前方に回転駆動する前記ピンチローラを設け、搬送経路の後方に従動回転する前記ピンチローラを設けることが好ましい。
【0017】
これにより、帯状部材に対して管状体を先行して嵌合し、帯状部材に管状体を装着した状態で搬送経路の前方に帯状部材を送り、補強材を嵌合していくことができる。このように管状体を補強材に先立って帯状部材に装着することで、管状体および補強材をともに帯状部材に対して精度よく組み付けることができる。
【0018】
また、前記製造方法において、補強材は金属製であってもよい。補強材が金属製であって巻き癖を有する場合にも、本製造方法によって、帯状部材のリブ間に精度よく補強材を嵌合して製管用部材を形成することができる。
【0019】
また、前記製造方法において、巻き癖を有する帯状部材の曲率に沿わせた搬送経路を設定し、この搬送経路上に複数組のピンチローラを相互に間隔を設けて配設するようにしてもよい。
【0020】
これにより、複数組のピンチローラが帯状部材を搬送経路の前方へ円滑に送り、帯状部材に対して補強材と管状体とを精度よく確実に嵌合させて信頼性の高い製管用部材を形成することができる。
【0021】
また、前記製造方法において、搬送経路上の複数箇所に帯状部材を案内する回転自在なガイドローラを配設することが好ましい。
【0022】
これにより、帯状部材を搬送経路に沿って前方へスムーズに送ることができ、より一層効率よく製管用部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、帯状部材の長手方向を搬送方向とし、搬送経路にピンチローラを配設し、巻き癖を有する帯状部材を前記ピンチローラのローラ間に挿通し、ピンチローラを駆動させて帯状部材を搬送経路の前方へ送るとともに、ピンチローラと帯状部材との間に補強材を供給し、帯状部材のリブ間に補強材を順次嵌合させる。また、ピンチローラと帯状部材との間に管状体を供給して、帯状部材の凹溝に管状体を順次嵌合させることしている。このため、帯状部材に補強材
と管状体とを精度よく装着させて、下水熱を有効に利用し得る製管用部材を製造することができ、施工現場ではこの製管用部材を施工するだけで採熱構造を設けることが可能となる。したがって、埋設管が供用下にあってもライニング施工と同時に短時間で作業性よく採熱構造を付設することができ、品質と信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る製管用部材の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
本発明では、老朽化した下水道管等の埋設管の更生に際し、埋設管内に施工するライニング管を形成するための製管用部材を製造する。
【0027】
本発明方法においては、更生ライニング管の補強材と採熱用の管状体とを長尺の帯状部材に一体に備えさせて製管用部材を製造する。このような製管用部材の製造方法の説明に先立ち、製管用部材の構成について説明する。
【0028】
[製管用部材]
図1は、本発明により製造する製管用部材の一例を示す断面図であり、
図2は、製管用部材を螺旋状に巻き回して管状に形成する様子を模式的に示す説明図である。また、
図3は、本発明により製造する製管用部材の他の例を示す断面図である。
【0029】
製管用部材1は、長尺の帯状部材10を有する。帯状部材10は、長尺の基板100に、長手方向に沿って断面略T字状の複数条のリブ(長リブ103および短リブ107)が立設されている。帯状部材10のリブ103,107を有する面の反対側には、長手方向に沿って凹溝110が設けられている。以下、帯状部材10において、リブ103,107を有する面を表面、反対側の面を裏面と称する。
【0030】
帯状部材10には、基板100の一側縁に、長手方向に沿って接合凹部102が設けられ、基板100の他側縁には、長手方向に沿って接合凸部101が設けられている。
【0031】
接合凸部101は、基板100の表面に立設され、支柱部104と、支柱部104の先端に形成された断面略円形状の嵌入部105とを備える。接合凹部102は、基板100の裏面に開口する被嵌入部106と、基板100の幅方向外側に向かって延設され、途中で表面方向に屈折された傾斜片108とを備える。被嵌入部106の反対側(帯状部材10の表面側)には短リブ107が立設されている。接合凸部101と接合凹部102との間には、複数条の長リブ103が長手方向に沿って配設されている。
【0032】
かかる帯状部材10は、硬質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種合成樹脂系材料を用いて、連続押出成形により長尺状に形成されている。
【0033】
製管用部材1として、帯状部材10には補強材20が装着されている。補強材20は、鉄材、鋼材等の金属材料により形成されるほか、例えば、ガラスや炭素等の繊維補強材とポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂(熱可塑性、熱硬化性)による複合材料からなるものであってもよい。また補強材20として、補強効果を有する金属材料に、合成樹脂、ゴム等の被覆材または塗料が積層されたり、クロムや亜鉛等によるメッキが施されたりして形成された積層材料であってもよい。補強材20の断面形状は、更生対象管路に要求される強度に応じて、W字状、I字状、T字状、コ字状、矩形状、円形状等に形成され、どのような形状であってもよい。例示する補強材20は、帯板状の鋼板を断面略W字状に折曲して形成されている。
【0034】
補強材20は、帯状部材10の隣り合う長リブ103間に嵌め込まれて、略W字状の両端縁がそれぞれ長リブ103のT字状部分に係止されている。これによって、補強材20は帯状部材10の長手方向に連続的に配設されている。
【0035】
帯状部材10の凹溝110には、採熱用の管状体30が装着されている。凹溝110は帯状部材10の裏面側に開口しており、断面略U字状の形状にて形成されている。凹溝110の開口縁部には、溝の内側に向かって突出する突条111が設けられている。管状体30は、可撓性を有する中空パイプ(丸パイプ)からなり、帯状部材10の裏面側の凹溝110に嵌入されている。嵌入された管状体30は、凹溝110の突条111に係止して抜け止めが図られている。帯状部材10の凹溝110の反対側(帯状部材10の表面側)には短リブ107が一体に立設されている。
【0036】
図2に示すように、製管用部材1は、螺旋状に巻き回されることにより、先行する製管用部材1の一側縁と周回遅れで後続する製管用部材1の他側縁とが接合されてライニング管200が形成される。すなわち、製管用部材1は、螺旋状に巻き回すことによって隣接した製管用部材1のうち、先行する製管用部材1の接合凹部102に、後続する製管用部材1の接合凸部101を嵌め込むことで接合される。このとき、先行する製管用部材1の傾斜片108は押圧され、後続する製管用部材1の長リブ103の先端部下面に嵌め込まれる(
図1参照)。
【0037】
なお、製管用部材1は、
図3に示すように、採熱用の管状体30が可撓性を有する角パイプからなるものであってもよい。この場合、帯状部材10の凹溝110は、断面略矩形状に形成されている。帯状部材10の凹溝110の反対側(帯状部材10の表面側)には、2条の短リブ107が一体に立設されている。
【0038】
また、製管用部材1としては、一側縁に沿って設けられた接合凹部102に、他側縁に設けられた接合凸部101を嵌め込まれることによって製管されるものに限られず、例えば、螺旋状に巻き回すことによって隣接させた長尺の帯状部材の一側縁と他側縁とが、帯状部材とは別体の別体の接合部材(ジョイナー)にて接合される構成であってもよい。また製管用部材1は、帯状部材10の複数の凹溝にそれぞれ管状体が嵌め込まれた構成であってもよい。
【0039】
[製造方法]
次に、実施の形態に係る製管用部材1の製造方法について図面を参照しつつ説明する。
図4は、製管用部材1の製造方法を模式的に示す説明図であり、
図5は、帯状部材10に対して各部材を嵌合する様子を示す説明図である。
【0040】
製管用部材1を製造するに際し、あらかじめ帯状部材10を連続押出成形により長尺状に形成する。形成した帯状部材10は、ドラム41の巻取軸に巻き重ねて保管し、製管用部材1の製造工程へ送る。補強材20および管状体30も同様に、あらかじめ形成しておき、それぞれドラム42、43の巻取軸に巻き重ねて保管し、製管用部材1の製造工程へ送る。
【0041】
製造工程においては、帯状部材10をドラム41から引き出し、帯状部材10の長手方向を搬送方向として設定し、補強材嵌合工程、および管状体嵌合工程へと、順次、帯状部材10を送る。
【0042】
帯状部材10の搬送経路は、巻き癖を有する帯状部材10の曲率に沿わせて規定する。搬送経路には、複数組のピンチローラを配設している。例示の形態では、帯状部材10の搬送経路に、2組のピンチローラ51、52を相互に間隔を設けて配置している。また、搬送経路上には、図示しない回転自在なガイドローラを複数箇所に配設して、帯状部材10を搬送経路の前方へ送るように構成している。
【0043】
2組のピンチローラ51、52のうち、搬送経路の前方に配置したピンチローラ51はモータ等の回転駆動手段を備えて回転駆動される駆動ローラである。搬送経路の後方に配置したピンチローラ52は、回転駆動手段を備えない回転自在なフリーローラである。これらのピンチローラ51、52は、図示しない昇降手段により昇降可能に設けられている。
【0044】
ドラム41から引き出した帯状部材10を各ピンチローラ51、52の各ローラ間に挿通して、ピンチローラ51、52にて挟持する。前方のピンチローラ51の直近には、ドラム42に巻き取った補強材20を用意する。次いで、ピンチローラ51と帯状部材10との間に、ドラム42から引き出した補強材20を供給する。具体的には、
図5に示すように、帯状部材10の表面の2条の長リブ103間に補強材20を嵌入していく。
【0045】
後方のピンチローラ52の直近には、ドラム43に巻き取った管状体30を用意する。次いで、ピンチローラ52と帯状部材10との間に、ドラム43から引き出した管状体30を供給する。これにより、
図5に示すように、帯状部材10の裏面の凹溝110に管状体30を嵌入していく。
【0046】
帯状部材10に対する補強材20の嵌合および管状体30の嵌合は、ピンチローラ51の回転駆動によって進める。
図4に示すように、前方のピンチローラ51を回転駆動させることで、帯状部材10をドラム41から引き出し、ピンチローラ51、52に引き込み、搬送経路の前方へ送っていく。これとともに、ピンチローラ51に挟持された帯状部材10には、表面側の長リブ103間に補強材20が押し込まれ、嵌合する(補強材嵌合工程)。
【0047】
ピンチローラ51の回転駆動によって、後方のピンチローラ52は従動回転する。これにより、ピンチローラ52に挟持された帯状部材10の凹溝110に、管状体30が順次押し込まれていき、管状体30が嵌合する(管状体嵌合工程)。
【0048】
前述のとおり、形成した帯状部材10をドラムに巻き重ねていると、ドラムの巻取軸の曲率半径に沿って、または先に巻き重ねた帯状部材10に沿って帯状部材10に巻き癖が生じている。帯状部材10は、リブ103、107が立設された表面を外周側として螺旋状に巻回されライニング管200を構成することとなる。そのため、帯状部材10は、この螺旋状を考慮して表面側を外周に向けてドラム41に巻き取られており、曲線状の巻き癖がついている。
【0049】
また、補強材20および管状体30においても、ドラム42、43に巻き取られていることによって巻き癖が生じている。巻き癖の生じたこれらの長尺材は、その巻き癖を修正することが容易ではなく、巻き癖を保持したまま各工程へ搬送することとなる。
【0050】
しかしながら、長尺材を搬送する際、生じた巻き癖の曲げ形状の内側と外側とで、その長尺材の送り量にずれを生じてしまう。すなわち、
図6に例示するように、帯状部材10の曲げ形状の内側と外側とでは、帯状部材10の厚み分に対応して、曲率半径に内外差が生じている。このような帯状部材10をピンチローラで挟持して搬送するとき、帯状部材10の曲げ形状の外側に当接して回転するローラAと、帯状部材10の曲げ形状の内側に当接して回転するローラBとが同期回転していても、帯状部材10の曲げ形状の内側は、その外側よりも速く送られることとなる。
【0051】
仮に、一組のピンチローラを回転駆動させて、このピンチローラに挟み込んだ帯状部材10に対して、補強材20も管状体30も同時に嵌合しようとすると、帯状部材10の曲げ形状の内側から供給される管状体30に過大な負荷がかかる。そのため、管状体30は、変形したり破損したりするおそれがあり、帯状部材10に良好に嵌合されない。また、管状体30の嵌合状態に不良があると、ライニング管200の形成過程で、帯状部材10が螺旋状に巻き回されたときに、管状体30が波打ったり、帯状部材10から脱落したりするおそれがある。
【0052】
これに対し、実施の形態に係る製管用部材1の製造方法においては、
図7に示すように、搬送経路に複数組にピンチローラ51、52を離間して設け、そのうちの一組のピンチローラ51を回転駆動させることとし、回転駆動するピンチローラ51にて補強材20を嵌合し、従動回転するピンチローラ52にて管状体30を嵌合している。これにより、巻き癖を有する帯状部材10に対して、異なる曲率の巻き癖を有する補強材20および管状体30を円滑に嵌合することが可能となる。
【0053】
特に、帯状部材10の曲げ形状の内側に送り込む管状体30を、その送り量のずれによって変形させたり破損させたりすることを防ぐことができるので、精度よく帯状部材10の凹溝110に嵌合することが可能となる。
【0054】
管状体30としては、可撓性を有する丸パイプ(例えば、積水化学工業株式会社製、商品名:エスロペックス、又は、商品名:エスロメタックス。)を用いることができる。管状体30として丸パイプを用いた場合、管状体30を帯状部材10の凹溝110に嵌合する際の方向性に制限がなくなる。また、管状体30として丸パイプを用いることで、製管時において製管用部材1にねじれが生じたとしても、製管用部材1のねじれに対して管状体30が良好に追随し得るので、変形や脱落が生じ難いものとなる。
【0055】
上記のように帯状部材10に対して補強材20および管状体30をともに嵌合し、製管用部材1を形成することができる。形成した製管用部材1を、順次、搬送経路の前方へ送り、ドラム44の巻取軸に巻き取る。
【0056】
なお、製管用部材1の製造方法として、2組のピンチローラ51、52を搬送経路に設けるに限らず、さらにピンチローラの数を増やして搬送経路の複数箇所にピンチローラを設け、帯状部材10を搬送するように構成してもよい。このような場合にあっても、回転駆動させていないピンチローラにおいて管状体嵌合工程を行うことで、巻き癖を有する帯状部材10に対して精度よく円滑に管状体30を装着することができる。また、管状体嵌合工程と補強材嵌合工程は、上記形態に限られず、搬送経路上においてどちらの工程が先行するものであってもよい。
【0057】
[採熱構造]
次に、製管用部材1を用いて構築する採熱構造について説明する。
図8は、製管用部材1を用いて構築した採熱構造の一例を示す説明図であり、
図9は、製管用部材1を用いて製管されたライニング管200を模式的に示す斜視図である。
【0058】
ライニング管200は、下水が流通する埋設管300内において、製管用部材1を螺旋状に巻き回すことによって製管される。埋設管300の内壁とライニング管200の外周面との間の間隙には、モルタル等の裏込め材が充填される。
【0059】
管状体30としての中空パイプは、帯状部材10の凹溝110に嵌合された状態で製管用部材1に設けられているので、
図9に模式的に示すように、ライニング管200の内周面に部分的に露出した状態で螺旋状に配設される。
【0060】
ライニング管200には、かかる管状体30を含む採熱管路60が構成されている。採熱管路60の一端と他端には、配管Pが連結されている。各配管Pは、それぞれ埋設管300に通じる一次側マンホール301、または、二次側マンホール302のいずれかを通じて地上に導かれ、地上に配置されたヒートポンプ3に接続されている。採熱管路60および配管Pによって構築された循環路には、水、グリコール、または水‐グリコール混合液などの伝熱媒体が図示しないポンプによって通液されている。これにより、循環路は、採熱管路60を熱交換器とする二次回路(伝熱媒体回路)TCとなされる。
【0061】
以下、二次回路TCにおける、採熱管路60からヒートポンプ3に向かう伝熱媒体の流れを二次回路側往流TC1と称し、ヒートポンプ3から採熱管路60に向かう伝熱媒体の流れを二次回路側複流TC2と称する。
【0062】
ヒートポンプ3には、蒸発器31と、圧縮機(コンプレッサ)32と、凝縮器33と、膨張弁34とからなる冷媒回路RCが構築されている。冷媒回路RCには、作動媒体(冷媒)が循環される。蒸発器31には、二次回路TCが接続されており、二次回路TCにおける二次回路側往流TC1は、蒸発器31を経由して、二次回路側複流TC2となり、採熱管路60に返送される仕組みとなっている。
【0063】
ヒートポンプ3における凝縮器33には、一次回路(熱媒回路)HCが連結されている。一次回路HCには、水等の熱媒が通液されている。熱媒は、図示しないポンプによって、一次回路HCを循環し、凝縮器33から熱利用システムHSを経由して、凝縮器33に返送される。
【0064】
以下、一次回路HCにおける、凝縮器33から熱利用システムHSに向かう熱媒の流れを一次回路側往流HC1と称し、熱利用システムHSから凝縮器33に向かう熱媒の流れを二次回路側複流HC2と称する。
【0065】
熱利用システムHSを、例えば、家屋内の床下暖房やヒーター、或いは暖房エアコン等の暖房設備として利用する場合にあっては、ヒートポンプ3を加熱機として使用する。この場合、
図8に示すように、冷媒回路RCにおける作動媒体(冷媒)の流れは、図中矢印で示す方向に循環され、蒸発器31から、圧縮機32、凝縮器33、膨張弁34の順に経由して蒸発器31に戻る。
【0066】
このような構成を有する採熱構造において、熱源としての下水熱を利用するには、ヒートポンプ3を作動させて、冷媒回路RCにおいて作動媒体を循環させる。また、一次回路HCにおいて熱媒を循環させるとともに、二次回路TCにおいて伝熱媒体を循環させる。
【0067】
ライニング管200の上流側を流れる下水は一定の水温を有しており、ライニング管200を通過する際に、採熱管路60からなる熱交換器によって採熱される。これにより、下水の水温は低下し、二次回路TCにおける二次回路側往流TC1が昇温する。例えば、採熱構造の定常運転時において、ライニング管200の上流側を流れる下水の水温は、12〜20度程度であり、ライニング管200の下流側を流下する下水の水温は、9〜17度である。
【0068】
下水から採熱することによって昇温した伝熱媒体は、二次回路側往流TC1となって、蒸発器31に至り、蒸発器31内にて作動媒体に熱を放出する。この際、熱を受け取った作動媒体は気化する。一方、熱を放出した伝熱媒体は二次回路TCにおける二次回路側複流TC2となり、採熱管路60に戻る。すなわち、二次回路TCにおいて、伝熱媒体は、下水熱を受け取ることによる昇温と、作動媒体に熱を放出することによる降温を繰り返しながら、二次回路TCを循環する。採熱構造の定常運転時において、例えば、二次回路側往流TC1の液温は6〜14度程度であり、二次回路側複流TC2の液温は3〜11度程度である。
【0069】
伝熱媒体から熱を受け取って気化した作動媒体は、冷媒回路RCを通じて圧縮機32内に導入され、圧縮機32内で圧縮されることによって、更に昇温する。
【0070】
圧縮機32によって圧縮されて昇温した作動媒体は、冷媒回路RCを通じて凝縮器33に至り、凝縮器33内にて熱媒に熱を放出する。この際、熱を受け取った熱媒は昇温する。一方、熱を放出した作動媒体は液化し、膨張弁34にて減圧された上で、蒸発器31に戻る。すなわち、冷媒回路RCにおいて、作動媒体は気化と液化を繰り返しながら、冷媒回路RCを循環する。
【0071】
作動媒体から熱を受け取った熱媒は、一次回路HCにおける一次回路側往流HC1となって、熱利用システムHSに至り、熱利用システムHSにおいて熱利用される。これにより熱媒は降温し、一次回路側復流HC2となって、再度、凝縮器33に至る。すなわち、熱媒は、作動媒体から熱を受け取ることによる昇温と、熱利用システムHSにおいて熱利用されることによる降温とを繰り返しながら、一次回路HCを循環する。採熱構造の定常運転時において、例えば、一次回路側往流HC1の液温は35〜65度程度であり、一次回路側複流HC2の液温は25〜55度程度であった。
【0072】
このような採熱構造においては、埋設管300内において製管用部材1を巻き回すことによってライニング管200を形成するだけで、熱交換器として用いられる採熱管路60を埋設管300内に設置することができる。これにより、地面を掘り下げて埋設管300を露出させる作業を行うことなく、熱交換器を埋設管300内に配置することができる。
【0073】
採熱構造においては、熱交換器として機能する採熱管路60が、ライニング管200の管壁を周回するように螺旋状に配置されることから、ライニング管200内のいずれの箇所からも効果的に採熱することが可能であり、下水熱が最も生じるとされる管底部からも効果的に採熱することができる。
【0074】
また、ライニング管200の形成後に、管状体30を取り付けていく等の後工程が不要となり、埋設管300が通水状態であっても良好に施工することができ、短時間で作業を済ませることが可能となる。
【0075】
以上の採熱構造においては、埋設管300として下水道管を例示し、下水熱を熱源として利用しているが、採熱構造が構築される埋設管300としては、管内を水が流下しているものであれば良く、下水道管に限られない。埋設管300として、例えば、上水道管や農業用水管などの各種通水管を選択することができ、各種通水管内を流下する流水が保有する熱(水熱)を熱源として利用することができる。
【0076】
採熱構造を構築するための製管用部材1には、管状体30が1本設けられた構成であるが、これに限られず、管状体30が複数本設けられてもよい。その場合、複数の採熱管路60を備えるライニング管200が形成され、一ないし複数の採熱管路60を熱交換器として利用することができる。複数の採熱管路60を熱交換器として利用すれば、採熱効率をさらに向上させることができる。
【0077】
上記採熱構造においては、熱利用システムHSを暖房設備として利用すべく、ヒートポンプ3を加熱機として用いているが、下水の水温は、大気温と比較して夏季は冷たい一方で冬季は温かいことから、温熱利用のみならず冷熱利用も可能である。したがって、夏季においては、ヒートポンプ3を冷凍機として用いることによって、熱利用システムHSを冷房設備或いは年間を通じて利用される冷暖房システムとして利用することもできる。なお、ヒートポンプ3を冷凍機として用いる場合には、冷媒回路RCにおける作動媒体(冷媒)を、
図8の矢印で示す方向と逆方向に循環させればよい。