特許第6114671号(P6114671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6114671タッチパネル用導電性粒子、タッチパネル用導電材料及びタッチパネル用接続構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114671
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】タッチパネル用導電性粒子、タッチパネル用導電材料及びタッチパネル用接続構造体
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170403BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20170403BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20170403BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20170403BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   G06F3/041 400
   H01B5/00 C
   H01B1/00 C
   H01B1/22 A
   H01R11/01 501E
   H01R11/01 501A
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-198426(P2013-198426)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-81928(P2014-81928A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-211284(P2012-211284)
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 康彦
(72)【発明者】
【氏名】王 暁舸
【審査官】 円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/119788(WO,A1)
【文献】 特開2001−028280(JP,A)
【文献】 特開2011−103307(JP,A)
【文献】 特開2007−012378(JP,A)
【文献】 特開2012−248531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
H01B 1/00
H01B 1/22
H01B 5/00
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルに用いられる導電性粒子であって、
樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、
最大試験荷重90mNでの第1の圧縮回復率が、5%以上、18%以下であり、
最大試験荷重200mNでの第2の圧縮回復率が、5%以上、18%以下であり、かつ
最大試験荷重500mNでの第3の圧縮回復率が、5%以上、18%以下である、タッチパネル用導電性粒子。
【請求項2】
タッチパネルにおけるフレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられるか、又はタッチパネルにおける樹脂フィルム上に配置された電極の電気的な接続に用いられる導電性粒子である、請求項1に記載のタッチパネル用導電性粒子。
【請求項3】
前記第1の圧縮回復率と前記第2の圧縮回復率と前記第3の圧縮回復率との3つの値のうち、最大値と最小値との差の絶対値が8%以下である、請求項1又は2に記載のタッチパネル用導電性粒子。
【請求項4】
前記導電性粒子を10%圧縮したときの第1の圧縮弾性率が、2000N/mm以上、5000N/mm以下であり、
前記導電性粒子を30%圧縮したときの第2の圧縮弾性率が、500N/mm以上、2000N/mm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電性粒子。
【請求項5】
前記導電性粒子の平均粒子径が8μm以上、100μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電性粒子。
【請求項6】
タッチパネルに用いられる導電材料であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、タッチパネル用導電材料。
【請求項7】
タッチパネルに用いられる接続構造体であって、
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタッチパネル用導電性粒子により形成されているか、又は前記タッチパネル用導電性粒子とバインダー樹脂とを含むタッチパネル用導電材料により形成されており、
前記第1の電極と前記第2の電極とが前記タッチパネル用導電性粒子により電気的に接続されている、タッチパネル用接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに用いられる導電性粒子であって、樹脂粒子の表面上に導電層が配置されているタッチパネル用導電性粒子に関する。また、本発明は、上記タッチパネル用導電性粒子を用いたタッチパネル用導電材料及びタッチパネル用接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。上記異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
フレキシブルプリント基板(FPC)、ガラス基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間の電気的な接続に、上記異方性導電材料が用いられている。例えば、タッチパネルでは、フレキシブルプリント基板の電極が他の電極と、異方性導電材料により電気的に接続されている。
【0004】
上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された導電層とを有する導電性粒子が開示されている。基材粒子を形成するために、ジビニルベンゼン−エチルビニルベンゼン混合物が単量体の一部として用いられている。この導電性粒子では、粒子径の10%が変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が2.5×10N/m以下、圧縮変形回復率が30%以上、かつ、破壊歪みが30%以上である。特許文献1には、上記導電性粒子を用いて基板の電極間を電気的に接続した場合に、接続抵抗が低くなり、接続信頼性が高くなることが記載されている。
【0005】
下記の特許文献2には、高弾力性定形粒子の表面に導電層が形成されている導電性粒子が開示されている。上記高弾力性定形粒子を10%圧縮変位したときの圧縮弾性率(10%K値)は500〜2500N/mmであり、かつ圧縮率が50%以上において、圧縮荷重の解除後の圧縮変形回復率が20〜45%の範囲内である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−313304号公報
【特許文献2】特開2003−238622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フレキシブルプリント基板の電極を他の電極と導電接続する際には、比較的低い圧力で、導電接続が行われる。このような比較的低い圧力での導電接続において、特許文献1,2に記載のような従来の導電性粒子を用いた場合には、接続抵抗を充分に低くすることが困難なことがある。
【0008】
一方で、フレキシブルプリント基板の電極を他の電極と導電接続する際には、導電接続時の圧力にばらつきが生じやすい。このような圧力のばらつきによって、得られる接続構造体において、複数の導電性粒子の圧縮状態が異なりやすく、更に圧縮後の導電性粒子の反発力(形状回復力)にばらつきが生じやすい。このため、複数の導電性粒子と電極との接触状態がばらつきやすく、電極間の接続抵抗にばらつきが生じやすい。さらに、導電性粒子を含む導電材料を用いた場合に、導電材料の硬化物にボイドが生じやすい。
【0009】
本発明の目的は、タッチパネルにおける電極間を電気的に接続した場合に、電極間の接続抵抗を低くし、かつ電極間の接続抵抗のばらつきを少なくすることができるタッチパネル用導電性粒子、並びに該タッチパネル用導電性粒子を用いたタッチパネル用導電材料及びタッチパネル用接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、タッチパネルに用いられる導電性粒子であって、樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、最大試験荷重90mNでの第1の圧縮回復率が、5%以上、18%以下であり、最大試験荷重200mNでの第2の圧縮回復率が、5%以上、18%以下であり、かつ最大試験荷重500mNでの第3の圧縮回復率が、5%以上、18%以下である、タッチパネル用導電性粒子が提供される。
【0011】
本発明に係るタッチパネル用導電性粒子は、タッチパネルにおけるフレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられるか、又はタッチパネルにおける樹脂フィルム上に配置された電極の電気的な接続に用いられる導電性粒子であることが好ましい。
【0012】
本発明に係るタッチパネル用導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の圧縮回復率と前記第2の圧縮回復率と前記第3の圧縮回復率との3つの値のうち、最大値と最小値との差の絶対値が8%以下である。
【0013】
本発明に係るタッチパネル用導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子を10%圧縮したときの第1の圧縮弾性率が、2000N/mm以上、5000N/mm以下であり、前記導電性粒子を30%圧縮したときの第2の圧縮弾性率が、500N/mm以上、2000N/mm以下である。
【0014】
本発明に係るタッチパネル用導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子の平均粒子径が8μm以上、100μm以下である。
【0015】
本発明の広い局面によれば、タッチパネルに用いられる導電材料であって、上述したタッチパネル用導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、タッチパネル用導電材料が提供される。
【0016】
本発明の広い局面によれば、タッチパネルに用いられる接続構造体であって、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部が、上述したタッチパネル用導電性粒子により形成されているか、又は前記タッチパネル用導電性粒子とバインダー樹脂とを含むタッチパネル用導電材料により形成されており、前記第1の電極と前記第2の電極とが前記タッチパネル用導電性粒子により電気的に接続されている、タッチパネル用接続構造体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るタッチパネル用導電性粒子では、樹脂粒子の表面上に導電層が配置されており、最大試験荷重90mN、200mN又は500mNでの第1,第2,第3の圧縮回復率がいずれも5%以上、18%以下であるので、上記導電性粒子を用いてタッチパネルにおける電極間を電気的に接続した場合に、電極間の接続抵抗を低くし、かつ電極間の接続抵抗のばらつきを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパネル用導電性粒子を示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係るタッチパネル用導電性粒子を示す断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパネル用導電性粒子を用いたタッチパネル用接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0020】
本発明に係るタッチパネル用導電性粒子(本明細書において、導電性粒子と略記することがある)は、タッチパネルに用いられる。本発明に係る導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有する。本発明に係る導電性粒子の最大試験荷重90mNでの第1の圧縮回復率は、5%以上、18%以下である。本発明に係る導電性粒子の最大試験荷重200mNでの第2の圧縮回復率は、5%以上、18%以下である。本発明に係る導電性粒子の最大試験荷重500mNでの第3の圧縮回復率は、5%以上、18%以下である。
【0021】
本発明に係る導電性粒子では、上述した構成が備えられているので、導電性粒子を用いてタッチパネルにおける電極間を電気的に接続した場合に、接続抵抗を低くし、かつ接続信頼性を高めることができる。タッチパネルにおける電極を導電接続する際には、比較的低い圧力で、導電接続が行われる。本発明に係る導電性粒子では、比較的低い圧力で導電接続を行ったとしても、接続抵抗を充分に低くし、更に電極間の接続信頼性を充分に高めることができる。
【0022】
さらに、タッチパネルにおける電極を導電接続する際には、導電接続時の圧力にばらつきが生じやすい。このような圧力のばらつきによって、得られるタッチパネル用接続構造体において、複数の導電性粒子の圧縮状態が異なりやすく、更に圧縮後の導電性粒子の反発力(形状回復力)にばらつきが生じやすい。このため、複数の導電性粒子と電極との接触状態がばらつきやすい。
【0023】
これに対して、本発明に係る導電性粒子では、上述した構成が備えられているので、複数の導電性粒子と電極との接触状態を均一にすることができ、電極間の接続抵抗のばらつきを少なくすることができる。さらに、本発明に係る導電性粒子を含むタッチパネル用導電材料を用いた場合に、導電材料の硬化物にボイドを生じ難くすることができる。
【0024】
また、タッチパネル用途の場合、導電材料は、一般的に、樹脂基板同士の接合に用いられる。タッチパネルにおける接合工程では、基板の熱圧着時に、ITO電極の割れの原因となる基板の熱変形をなるべく抑制するため、低温低圧の条件下で圧着が行われる。この場合において導電性粒子が十分に変形して基板と十分に接触し、導電性粒子と基板との接触面積を確保するために、導電性粒子が柔軟であることが求められる。また、電極が銀の場合においても、柔らかい銀電極を変形させないために、導電性粒子が柔軟であることが求められる。
【0025】
本発明に係る導電性粒子における上述した物性を満足することで、導電性粒子がタッチパネル用途に好適に使用可能になる。
【0026】
比較的低い圧力で導電接続を行っても接続抵抗を充分に低くし、電極間の接続信頼性を充分に高めることができることから、上記導電性粒子は、タッチパネルにおけるフレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられるか、又はタッチパネルにおける樹脂フィルム上に配置された電極の電気的な接続に用いられる導電性粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、タッチパネルにおけるフレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられる導電性粒子であることが好ましく、タッチパネルにおける樹脂フィルム上に配置された電極の電気的な接続に用いられる導電性粒子であることが好ましい。
【0027】
また、上記第1,第2,第3の圧縮回復率が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜をより一層効果的に排除でき、更に電極と導電性粒子との間の樹脂成分をより一層効果的に排除できる結果、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。さらに、導電材料の硬化物及び接続部の導電性粒子を除く部分と導電性粒子及び接続対象部材との界面で剥離がより一層生じ難くなる。さらに、電極間の接続に用いられた導電性粒子の過度の反発力を抑制できる結果、導電材料が基板等から剥離し難くなる。このことによっても、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
【0028】
接続抵抗をより一層低くし、電極間の接続信頼性をより一層高める観点からは、上記第1の圧縮回復率は好ましくは8%以上、好ましくは15%以下である。電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記第2の圧縮回復率は好ましくは8%以上、好ましくは15%以下である。電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記第3の圧縮回復率は好ましくは8%以上、好ましくは15%以下である。
【0029】
電極間の接続抵抗をより一層低くし、かつ電極間の接続抵抗のばらつきをより一層少なくする観点からは、上記第1の圧縮回復率が8%以上、15%以下であり、上記第2の圧縮回復率が8%以上、15%以下であり、かつ上記第3の圧縮回復率が8%以上、15%以下であることが好ましい。
【0030】
電極間の接続抵抗をより一層低くし、かつ電極間の接続抵抗のばらつきをより一層少なくする観点からは、電極間の最大試験荷重90mNでの第1の圧縮回復率と最大試験荷重200mNでの第2の圧縮回復率と最大試験荷重500mNでの第3の圧縮回復率との3つの値のうち、最大値と最小値との差の絶対値は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下である。
【0031】
接続抵抗をより一層低くし、電極間の接続信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子を10%圧縮したときの第1の圧縮弾性率(10%K値)は、好ましくは2000N/mm以上、より好ましくは2500N/mm以上、更に好ましくは3000N/mm以上、好ましくは5000N/mm以下、より好ましくは4000N/mm以下である。接続抵抗をより一層低くし、電極間の接続信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子を30%圧縮したときの第2の圧縮弾性率(30%K値)は、好ましくは500N/mm以上、より好ましくは700N/mm以上、好ましくは2000N/mm以下、より好ましくは1800N/mm以下である。
【0032】
電極間の接続抵抗をより一層低くし、かつ電極間の接続抵抗のばらつきをより一層少なくする観点からは、上記第1の圧縮弾性率(10%K値)が2000N/mm以上、5000N/mm以下であり、上記第2の圧縮弾性率(30%K値)が500N/mm以上、2000N/mm以下であることが好ましい。電極間の接続抵抗をより一層低くし、かつ電極間の接続抵抗のばらつきを更に一層少なくする観点からは、上記第1の圧縮弾性率(10%K値)が2500N/mm以上、4000N/mm以下であり、上記第2の圧縮弾性率(30%K値)が700N/mm以上、1800N/mm以下であることが好ましい。
【0033】
上記圧縮回復率は、以下のようにして測定できる。
【0034】
試料台上に導電性粒子を散布する。散布された導電性粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、導電性粒子の中心方向に、25℃、及び最大試験荷重90mN(上記第1の圧縮回復率を測定する場合)、200mN(上記第2の圧縮回復率を測定する場合)又は500mN(上記第3の圧縮回復率を測定する場合)で、導電性粒子に負荷(反転荷重値)を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重−圧縮変位を測定し、下記式から圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度はそれぞれの初期荷重から最大荷重値までを30秒かける速度とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
【0035】
圧縮回復率(%)=[(L1−L2)/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでのまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位
【0036】
上記導電性粒子における上記圧縮弾性率(10%K値、30%K値)は、以下のようにして測定できる。
【0037】
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、最大試験荷重90mNを30秒かけて負荷する条件下で導電性粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、上記圧縮弾性率を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
【0038】
K値(N/mm)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:導電性粒子が10%又は30%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:導電性粒子が10%又は30%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:導電性粒子の半径(mm)
【0039】
上記圧縮弾性率は、導電性粒子の硬さを普遍的かつ定量的に表す。上記圧縮弾性率の使用により、導電性粒子の硬さを定量的かつ一義的に表すことができる。
【0040】
樹脂粒子における単量体の組成により、上記第1,第2,第3の圧縮回復率、並びに上記第1,第2の圧縮弾性率を上記の範囲に制御することが可能である。上記第1,第2,第3の圧縮回復率、並びに上記第1,第2,第3の圧縮弾性率を上記の範囲に制御するために、樹脂粒子における架橋割合を一定量以下にすることが好ましい。
【0041】
以下、樹脂粒子、タッチパネル用導電性粒子、タッチパネル用導電材料及びタッチパネル用接続構造体の他の詳細を説明する。
【0042】
(樹脂粒子)
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が用いられる。エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させることにより、導電材料に適した任意の圧縮時の物性を有する樹脂粒子を設計及び合成することができる。
【0043】
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させて得る場合、上記エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0044】
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
【0045】
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸骨格トリ(メタ)アクリレート等の等の多官能(メタ)アクリレート類;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
【0046】
本発明の物性を有する導電性粒子を得るには、上記架橋性単量体の割合を一定量以下にすることが望ましい。一般に架橋性単量体の割合が多くなると、回復率、10%K値及び30%K値が大きくなり、本発明の物性範囲から外れやすくなる。上記樹脂粒子を得るために用いる架橋性単量体と非架橋性単量体との合計100重量%中、架橋性単量体の含有量は好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0047】
また、架橋性単量体の構造は官能基間の分子量が長く、架橋点間分子量が大きいほど、低いK値で一定の回復率を得られるため好ましい。架橋性単量体の好ましい例としては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記樹脂粒子を形成するために用いる上記架橋性単量体は、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、又は1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0048】
また、上記非架橋性単量体は、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。非架橋性単量体に関しては、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基に結合する官能基は、直鎖状アルキル基であることが好ましく、芳香族や脂環式の環状構造を有さない官能基であることが好ましい。直鎖状アルキル基の場合には、荷重値による回復率のばらつきが効果的に小さくなり、結果として抵抗値のばらつきがより一層抑えられる。非架橋性単量体の好ましい例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。上記樹脂粒子を形成するために用いる上記非架橋性単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート又はステアリル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0049】
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
【0050】
上記樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。樹脂粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が充分に大きくなり、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が樹脂粒子の表面から剥離し難くなる。また、樹脂粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子をタッチパネル用途に好適に使用可能である。
【0051】
上記樹脂粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。樹脂粒子の平均粒子径は、任意の樹脂粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0052】
(タッチパネル用導電性粒子)
図1に、本発明の第1の実施形態に係るタッチパネル用導電性粒子を断面図で示す。
【0053】
図1に示す導電性粒子1は、タッチパネルに用いられる。導電性粒子1は、樹脂粒子2と、樹脂粒子2の表面上に配置された導電層3とを有する。導電性粒子1は、樹脂粒子2の表面が導電層3により被覆された被覆粒子である。
【0054】
図2に、本発明の第2の実施形態に係るタッチパネル用導電性粒子を断面図で示す。
【0055】
図2に示す導電性粒子11は、タッチパネルに用いられる。導電性粒子11は、樹脂粒子2と、樹脂粒子2の表面上に配置された導電層12とを有する。導電層12は、内層である第1の導電層12Aと外層である第2の導電層12Bとを有する。樹脂粒子2の表面上に、第1の導電層12Aが配置されている。第1の導電層12Aの表面上に、第2の導電層12Bが配置されている。
【0056】
上記導電層を形成するための金属は特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。なかでも、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができるので、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムが好ましい。
【0057】
導電性粒子1のように、上記導電層は、1つの層により形成されていてもよい。導電性粒子11のように、導電層は、複数の層により形成されていてもよい。すなわち、導電層は、2層以上の積層構造を有していてもよい。導電層が複数の層により形成されている場合には、最外層は、金層、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は錫と銀とを含む合金層であることが好ましく、金層であることがより好ましい。最外層がこれらの好ましい導電層である場合には、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、最外層が金層である場合には、耐腐食性がより一層高くなる。
【0058】
上記樹脂粒子の表面に導電層を形成する方法は特に限定されない。導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを樹脂粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電層の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
【0059】
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。導電性粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が充分に大きくなり、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が樹脂粒子の表面から剥離し難くなる。また、導電性粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子をタッチパネル用途に好適に使用可能である。
【0060】
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0061】
上記導電層の厚み(導電層が多層である場合には導電層全体の厚み)は、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。導電層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、充分な導電性が得られ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎずに、電極間の接続の際に導電性粒子が充分に変形する。
【0062】
上記導電層が複数の層により形成されている場合に、最外層の導電層の厚みは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。上記最外層の導電層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、最外層の導電層による被覆が均一になり、耐腐食性が充分に高くなり、かつ電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、上記最外層が金層である場合の金層の厚みが薄いほど、コストが低くなる。
【0063】
上記導電層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
【0064】
上記導電性粒子は、上記導電層の外表面に突起を有していてもよい。該突起は複数であることが好ましい。導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。突起を有する導電性粒子を用いた場合には、電極間に導電性粒子を配置して圧着させることにより、突起により上記酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子の導電層とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁性物質を備える場合に、又は導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の絶縁性物質又はバインダー樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0065】
上記導電性粒子の表面に突起を形成する方法としては、樹脂粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電層を形成する方法、並びに樹脂粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。また、突起を形成するために、上記芯物質を用いなくてもよい。
【0066】
上記導電性粒子は、上記導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を備えていてもよい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡を防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。導電性粒子が上記導電層の表面に突起を有する場合には、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質をより一層容易に排除できる。上記絶縁性物質は、絶縁性樹脂層又は絶縁性粒子であることが好ましい。上記絶縁性粒子は、絶縁性樹脂粒子であることが好ましい。
【0067】
(タッチパネル用導電材料)
本発明に係るタッチパネル用導電材料(本明細書において、導電材料と略記することがある)は、タッチパネルに用いられる。本発明に係る導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料として用いられることが好ましい。本発明に係る導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。
【0068】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0070】
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0071】
上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、上記導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記バインダー樹脂中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びに上記バインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0072】
本発明に係る導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。本発明に係る導電材料が、導電フィルムである場合には、該導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは異方性導電フィルムであることが好ましい。
【0073】
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
【0074】
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0075】
本発明に係る導電材料は、タッチパネルにおけるフレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられるか、又はタッチパネルにおける樹脂フィルム上に配置された電極の電気的な接続に用いられる導電材料であることが好ましい。本発明に係る導電材料は、タッチパネルにおけるフレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられる導電材料であることが好ましく、タッチパネルにおける樹脂フィルム上に配置された電極の電気的な接続に用いられる導電材料であることが好ましい。
【0076】
(タッチパネル用接続構造体)
上述したタッチパネル用導電性粒子を用いて、又は上述したタッチパネル用導電性粒子とバインダー樹脂とを含むタッチパネル用導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、タッチパネル用接続構造体(本明細書において、接続構造体と略記することがある)を得ることができる。
【0077】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、該接続部が上述した導電性粒子により形成されているか、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。導電性粒子が単独で用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。上記接続構造体を得るために用いられる上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。
【0078】
上記第1の接続対象部材は表面に第1の電極を有することが好ましい。上記第2の接続対象部材は表面に第2の電極を有することが好ましい。上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記導電性粒子により電気的に接続されていることが好ましい。
【0079】
図3は、図1に示す導電性粒子1を用いたタッチパネル用接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【0080】
図3に示す接続構造体51は、タッチパネルに用いられる。接続構造体51は、タッチパネル用部品である。接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1の接続対象部材52と第2の接続対象部材53とを接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている。図3では、図示の便宜上、導電性粒子1は略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子11などの他の導電性粒子を用いてもよい。
【0081】
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
【0082】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例として、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×10〜4.9×10Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。フレキシブルプリント基板の電極、樹脂フィルム上に配置された電極及びタッチパネルの電極を接続するための上記加圧の圧力は9.8×10〜1.0×10Pa程度である。
【0083】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記導電材料はペースト状であり、ペーストの状態で接続対象部材上に塗布されることが好ましい。上記導電性粒子及び上記導電材料は、タッチパネルに用いられる。従って、上記接続対象部材は、フレキシブルプリント基板であるか、又は樹脂フィルムの表面上に電極が配置された接続対象部材であることが好ましい。上記接続対象部材は、フレキシブルプリント基板であることが好ましく、樹脂フィルムの表面上に電極が配置された接続対象部材であることが好ましい。上記フレキシブルプリント基板は、一般に電極を表面に有する。
【0084】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0085】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0086】
(実施例1)
(1)樹脂粒子(重合体粒子)の作製
ポリテトラメチレングリコールジアクリレート150g(15重量部)と、メチルメタクリレート350g(35重量部)と、2−エチルヘキシルメタクリレート500g(50重量部)と、過酸化ベンゾイル40gとを混合し、均一に溶解させて、モノマー混合液を得た。5kgのポリビニルアルコール1重量%水溶液を作製し、反応釜にて入れた。この中に前述したモノマー混合液を入れ、2〜4時間攪拌することで、モノマーの液滴が所定の粒子径になるように、粒子径を調整した。この後85℃の窒素雰囲気下で9時間反応を行い、粒子を得た。得られた粒子を熱水にて数回洗浄した後、分級操作を行った。得られた重合体粒子の平均粒子径は20.1μm、CV値は3.1%であった。なお、下記の表1において、樹脂粒子を構成する単量体の組成は、単量体の合計が100重量部となる量で記載した。
【0087】
(2)導電性粒子の作製
得られた重合体粒子を洗浄し、乾燥した後、無電解めっき法により、重合体粒子の表面に、ニッケル層を形成し、導電性粒子を作製した。なお、ニッケル層の厚さは0.1μmであった。
【0088】
(実施例2〜17及び比較例1〜6)
重合体粒子の作製の際に用いたモノマー成分の種類及びその配合量(単量体の組成)を、下記の表1〜3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、重合体粒子及び導電性粒子を得た。
【0089】
(評価)
(1)導電性粒子の上記第1,第2,第3の圧縮回復率
得られた導電性粒子の上記第1,第2,第3の圧縮回復率を、上述した方法により、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて測定した。
【0090】
(2)導電性粒子の上記第1,第2の圧縮弾性率(10%K値、30%K値)
得られた導電性粒子の上記第1,第2の圧縮弾性率(10%K値、30%K値)を、上述した方法により、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて測定した。
【0091】
(3)接続構造体の作製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1009」)10重量部と、アクリルゴム(重量平均分子量約80万)40重量部と、メチルエチルケトン200重量部と、マイクロカプセル型硬化剤(旭化成ケミカルズ社製「HX3941HP」)50重量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニングシリコーン社製「SH6040」)2重量部とを混合し、導電性粒子を含有量が3重量%となるように添加し、分散させて、樹脂組成物を得た。
【0092】
得られた樹脂組成物を、片面が離型処理された厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃の熱風で5分間乾燥し、異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムの厚さは12μmであった。
【0093】
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断された異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有するITO(高さ0.1μm、L/S=20μm/20μm)が設けられたPET基板(幅3cm、長さ3cm)のITO電極側のほぼ中央に貼り付けた。次いで、同じ金電極が設けられた2層フレキシブルプリント基板(幅2cm、長さ1cm)を、電極同士が重なるように位置合わせをしてから貼り合わせた。このPET基板と2層フレキシブルプリント基板との積層体を、10N、180℃、及び20秒間の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。なお、ポリイミドフィルムに銅電極が形成され、銅電極表面がAuめっきされている、2層フレキシブルプリント基板を用いた。
【0094】
(4)接続抵抗
上記(3)接続構造体の作製で得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。また、10箇所の接続抵抗の平均値を下記の基準で判定した。
【0095】
[接続抵抗の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が2.0Ω以下
○:接続抵抗の平均値が2.0Ωを超え、3.0Ω以下
△:接続抵抗の平均値が3.0Ωを超え、4.0Ω以下
△△:接続抵抗の平均値が4.0Ωを超え、5.0Ω以下
×:接続抵抗の平均値が5.0Ωを超える
【0096】
(5)接続抵抗のばらつき
上記(3)接続構造体の作製で得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。また、10箇所の接続抵抗のCV値を求めた。接続抵抗のばらつきを下記の基準で判定した。
【0097】
[接続抵抗のばらつきの判定基準]
○○:接続抵抗のCV値が20%以下
○:接続抵抗のCV値が20%を超え、30%以下
△:接続抵抗のCV値が30%を超え、40%以下
△△:接続抵抗のCV値が40%を超え、50%以下
×:接続抵抗のCV値が50%を超える
【0098】
(6)接続信頼性(ボイドの有無)
上記(3)接続構造体の作製で得られた接続構造体の断面観察を行い、異方性導電材料の硬化物である接続部に、ボイドが発生しているか否かを観察した。接続信頼性を下記の基準で判定した。
【0099】
[接続信頼性の判定基準]
○:ホイドが発生していない
△:ボイドが発生しているものの、ボイドの最大径が5μm以下
×:ホイドが発生しており、ボイドの最大径が5μmを超える
【0100】
結果を下記の表1〜3に示す。なお、実施例3,6の接続構造体では、他の実施例と比べて、硬化物と接続対象部材とが良好に接着しており、接続信頼性により一層優れていた。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【符号の説明】
【0104】
1…導電性粒子
2…樹脂粒子
3…導電層
11…導電性粒子
12…導電層
12A…第1の導電層
12B…第2の導電層
51…接続構造体
52…第1の接続対象部材
52a…電極
53…第2の接続対象部材
53a…電極
54…接続部
図1
図2
図3