(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビルセンサデータは、実在のビルからのデータと、前記ビルのシミュレートされたモデルからのデータとを備え、前記方法は、実在のビルのセンサデータから取得された少なくとも1つのコープマンモード振幅または位相を、シミュレートされたモデルのセンサデータから取得された少なくとも1つのコープマンモード振幅または位相と比較することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記ビルセンサデータは、実在のビルからのデータと、前記ビルのシミュレートされたモデルからのデータとを備え、前記方法は、実在のビルのセンサデータから取得された少なくとも1つのコープマンモード振幅または位相を、シミュレートされたモデルのセンサデータから取得された少なくとも1つのコープマンモード振幅または位相と比較することをさらに含む、請求項7に記載の電子装置。
前記複数の経時的な値は、温度値、湿度値、空気流値、圧力値、人口占有率値、プラグ負荷密度値、および光強度値のうちの1つを備えている、請求項7に記載の電子装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
現代のビルは、ビルの環境およびエネルギー利用を監視するために、種々のセンサを含み得る。これらのセンサが提供する多くの情報にもかかわらず、この膨大な量のデータを首尾一貫して整理することは、骨の折れる作業となり得る。既存のビルまたはこれから建設されることになっているビルのコンピュータシミュレーションは、同様に、膨大な量のデータを含む場合があり、その有用な情報は抽出するのが困難である。これらのシミュレーションが、実在およびコンピュータシミュレーションしたビルのセンサの両方からのデータを組み込む場合、センサ結果から有意義な情報を抽出することは特に困難であり得る。
【0010】
本実施形態のうちのいくつかは、ビルセンサデータにおける関連特徴の効率的な決定を促進する、複数のデータ分析ツールを備えている、センサデータ分析一式を検討する。具体的には、本実施形態は、時間、計算能力を向上させ、エネルギー効率に影響を及ぼす要因を決定するために必要なユーザ関与のレベルを低減する。この全体的ビルエネルギー管理システムのある実施形態は、問題とするビルの全てのパラメータおよび出力の分析を実行可能にし、ビルの挙動の一般的理解のみでさえも以前は不可能であったかもしれない、ビル全体の最適化結果を提供する。
【0011】
図1は、複数の環境およびエネルギーに影響を及ぼす構成要素、ならびにビルの挙動を監視するように構成される種々のビルセンサを備えている、ビル101の切断斜視
図100を図示する。具体的には、ビルは、電気、ガス、および暖房構成要素102と、冷却塔104と、照明103と、水道システム109と、他の設備とを備え得る。冷却コイル105、ファン106、ならびに冷却装置およびボイラ107等のいくつかの構成要素が、ビル101の種々の部屋の内部温度を調整するように動作させられ得る。サーモスタットおよび恒湿器等のセンサが、ビル内で局所的に存在し、動作し得る。いくつかのセンサは、中央オフィスまたは制御システムにデータを伝送し、かつそこから起動され得る。
【0012】
図2は、ビル101等のビルの間取り
図201を図示する。ここでは単一階の2次元トップダウン図として示されているが、多階建築の3次元描写を含む、複数の他の可能な表現が認識されるであろう。間取り
図201の上には、いくつかのセンサ202a−cの場所が図示されている。これらのセンサの各々は、それらの特定の場所で、本明細書で「物理場」と呼ばれる、ビルの複数の特性を測定し得る。「物理場」は、温度または湿度等の環境的側面を備え得るが、また、電力消費または電気流量等のシステム側面も備え得る。物理場センサ測定値は、分析を促進するように適切な形態に変換され得る。例えば、センサは、温度の変化または湿度の変化を記録し得、あるいは代わりに、ある期間にわたってこれらの値の全体を記録し得る。代替として、コンピュータシステムは、未加工センサデータに対してこの後処理を実施することができる。センサは、例えば、温度、湿度、空気流、電力、占有率、光、煙、および/または、個別に、あるいは組み合わせて使用される、任意の他のセンサ等の物理場を測定し得る。各センサは、局所的に情報を記憶し得るが、また、情報を中央システムに伝送し得る。それらの情報を通信するセンサは、無線または有線であり得る。ある実施形態は、中央システムへの測定値の伝送を促進するアドホックインフラストラクチャを備えている、センサを検討する。無線センサを備えている、ある実施形態では、ローカルセンサからデータを収集し、それらを中央システムに伝えるために、ルータが使用され得る。
【0013】
間取り
図201およびセンサ202a−cは、物理的な実在のビルおよびセンサレイアウトを反映するのではなく、代わりに、ソフトウェアモデル等のビルの合成モデルを反映し得る。そのようなモデルは、建築される予定のビル、またはすでに建設されているビルを備え得る。合成間取り図では、異なるシミュレーションサイクルにわたって、モデルからシミュレーション値を抽出することによって、各センサがシミュレートされ得る。いくつかのシステムでは、複合物理および合成システムが使用され得る。例えば、
図2では、実在の物理データが、実在のセンサ202aおよび202bから取り出され得る。しかしながら、センサ202cは、現実世界に存在しなくてもよく、合成ソフトウェアセンサと置換され得る。同様に、センサ202a−cは、全て物理的に存在し得るが、異なるデータ、または異なる標準を介したデータを獲得し得る。次いで、センサ間のデータを補完し、均一なセンサ測定値を達成するために、ソフトウェアシミュレーションを使用することができる。
【0014】
いったんデータがセンサ202a−cから獲得されると、測定された物理場に基づいて、ビルの挙動の側面を推測することが望ましいであろう。建築士またはビル運営者等のユーザは、データを直接分析することができるが、データ処理を行わずに重要な挙動を理解することは非常に困難であり得る。データ処理システムは、プロセッサおよびメモリを有する、コンピュータデバイスを備え得る。このシステムは、パーソナルコンピュータまたはクラスタコンピュータの形態であり得、およびコンピューティングクラウドの中のコンピュータデバイスを伴い得るか、または埋め込みシステムとして、あるいは基本処理およびメモリユニットを含む他の形態で実装され得る。ある実施形態は、データ処理ハードウェア上で作動し得る、データ処理ソフトウェアを検討する。このソフトウェアは、以下でさらに詳細に説明される、空間・スペクトル情報モジュールと、グラフ分解情報モジュールと、感度分析モジュールとを備え得る。このソフトウェアを使用するオペレータは、そうでなければセンサデータの複雑性によって隠されたままとなる、ビルの挙動を理解することが可能であり得る。
【0015】
図3は、ビルセンサデータの視覚化をユーザに提示するために、実施形態のうちのいくつかのビルセンサデータ分析が、どのようにして使用され得るかを図示する、一般化論理フロー図を描写する。システムは、ビルから、物理的な、または合成生成された、センサデータを獲得すること302から始める。次いで、システムは、センサデータを分析する303。センサデータを分析すること303は、以下でさらに詳細に説明されるように(直交分解、周波数ベースの分析等を使用して)、データをより分析を施しやすい形態に変換することを必要とし得る。次いで、システムは、1つ以上の測定された物理場に基づいたビルの挙動の明確な概念をユーザに提供するために、分析に基づいて視覚表現304を生成し得る。次いで、この視覚表現304を精査するユーザは、より望ましいビル挙動を達成するために、ビル設計またはビル運営を手動で調整し得る。
【0016】
図4は、実施形態のうちのいくつかのビルセンサデータ分析が、フィードバックシステムにおいてどのようにして使用され得るかを今回は図示する、別の一般化論理フロー図を描写する。ここで、分析は、ビルの挙動を自動的に調整するために、フィードバック過程の一部として使用される。例えば、合成センサを使用するビルを設計する場合に、
図4のシステムは、ビルの挙動のシミュレーションを行い、結果を分析し303、次いで、監視制御過程404の一部としてより最適な設計に対してビル構成を調整し得る。この過程は、所望の停止条件に達するまで、反復して行われ得る。実在のシステムでは、過程は代わりに、1つ以上のアクチュエータを備え得るビル制御システムを使用して、ビル制御システムパラメータを調整し得る。例えば、分析後に、システムは、特定の部屋の中の空調に対する新しい起動パターンを確立し得る。ある実施形態が、視覚化(
図3)または自動制御(
図4)のいずれか一方のみを行うことを検討する一方で、他の実施形態は、おそらく同じデータ分析303を再利用して、両方を行うことを検討する。
【0017】
本実施形態のうちのいくつかは、
図3および4で描写される観察および操作のうちのいくつかを促進する、統一ソフトウェアパッケージを検討する。
図5は、Global Building Energy Management System(GloBEMS)と呼ばれる、このソフトウェアシステムの一実施形態を描写する。参照されるエネルギーは、ビルの挙動を評価することに関する、センサによって提供される、熱、電気、または任意の他の物理場データを備え得る。さらにシステムによって考慮される、いくつかのデータは、カレンダー情報、ビル会合スケジュール、および天気情報等のセンサ以外のソースから導出され得る。GloBEMSシステムは、ビルエネルギー利用を効率的に分析し、視覚化し、制御するため、およびより効率的なエネルギー利用を可能にするビルを設計する方法及び装置を含み得る。そのようなシステムは、以下でさらに詳細に説明されるように、ソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアで実装され得る。
【0018】
図5のソフトウェアシステムの図表示は、概して、3つのモジュールに分割され得る。以下で論議されるように、データ処理は、実在の物理場センサ511から、または合成ビルエネルギーモデル510を使用することによって、または2つの組み合わせを使用することによって、データを収集することを伴い得る。センサデータおよびビルエネルギーモデルデータは、モデル情報の質を向上させるデータ同化法を使用して統合することができる。次いで、第2のモジュールである、データ処理モジュール502は、データ収集モジュール501から獲得されたデータを、より分析を施しやすい形態に変換し得る。次いで、データ処理モジュール502は、データを分析し得る。次いで、分析されたデータは、それぞれ、
図3および4に関して上記で説明されるように、データを視覚化する531、またはあるビルシステムを作動させる532、視覚化および/または作動モジュール503に提示され得る。
【0019】
効果的な視覚化またはシステム修正は、データが適正に分析されることを要求する。ある実施形態は、以下でさらに詳細に説明されるように、コープマンモード方法およびエネルギーベースの(いくつかの実施形態では固有直交分解[POD])方法を含む、グラフ分解モジュール521、感度分析モジュール523、スペクトル・空間分解モジュール522のうちの1つ以上を使用することを検討する。これらのモジュールの結果は、視覚化および作動モジュール503に直接提供され得、またはシステム統合モジュール524を介して最初に統合され得る。具体的には、システム統合モジュール524を使用して、グラフ分解521からの情報、コープマンモード方法およびPOD方法を含むスペクトル・空間方法522、または感度分析ならびに不確実性および感度分析モジュール523を統合し、精緻化することができる。データ処理モジュールからの情報は、データ分析の結果を視覚化するために、またはそれに基づいて措置を講じるために、それぞれ、視覚化および/または作動モジュールによって使用され得る。
【0020】
ある実施形態は、グラフ分解モジュール521、スペクトル・空間分解モジュール522、および感度分析モジュール523の間のさらなる相互作用を検討する。具体的には、システムまたはユーザがスペクトル・空間分解モジュール522を使用して分析を行った後に、ある実施形態は、その結果を、感度分析モジュール523を使用した感度分析またはグラフ分解モジュール521を使用したグラフ分解を行うために使用することを検討する。いくつかの実施形態では、システムは、複数のパラメータ値にわたってスペクトル・空間分析を実施することによって、感度分析またはグラフ分解を反復して行い得る。つまり、物理的なビルが検討されている場合、午後の窓の日よけの長さ等のパラメータが、複数の値のうちの1つに設定され得、後に、スペクトル・空間分析が、その値の各々に対して行われ得る。次いで、感度分析が、結果として生じたモードに対して行われ得る。同様の過程が、合成モデルからのシミュレートしたビルのデータに生じ得る。システムまたはユーザも、同様にスペクトル・空間分解モジュール522およびグラフ分解モジュール521を使用して、反復分析を行い得る。図に示されるように、ある実施形態は、グラフ分解モジュール521と直接相互作用することによって分析を行う、感度分析モジュール523も検討する。
【0021】
これらのモジュールの全てが、単一のシステムに存在する必要があるわけではなく、ある実装は、示されているもの以外の追加のモジュールを省略することも含み得ることも容易に認識されるであろう。例えば、処理ソフトウェアモジュールはまた、エネルギーモデル、フローモデル、またはビルにおける物理的変数の将来の状態を計算する任意の他の物理モデルを含むこともできる。処理ソフトウェアは、本明細書で説明されるソフトウェアモジュールの中の情報のうちの任意のものを連結し、組み合わせ、さらに処理するモジュールを含むことができる。
【0022】
ある実施形態は、システム500を、コンピュータ端末等の視覚化デバイスを含むユーザインターフェースと一体化することを検討する。そのようなコンピュータ端末は、ロビー、オフィス等のビルの事業部分、店、データセンター、および他のオフィスまたはビル運営者オフィス等のビルの公共領域に位置することができる。作動システムは、システムの質量、エネルギー、または照明状態等のシステムの物理的変化を作動させること、またはビルの中のエネルギー制御のための重要なメッセージを表示する視覚化システム等のビルシステムの物理的変化を発生させることを可能にする情報を居住者または運営者に提供することを可能にする少なくとも1つのアクチュエータを含むことができる。
【0023】
(センサデータ分析−概説)
図6は、複数のセンサのデータセット例601を図示する。各センサについて、経時的604にセンサの値603を描写する、データプロファイル602a−cが生成され得る。この特定の実施例では、センサは、周期的間隔で温度値を記録する。異なる期間で、または相対位相オフセットを伴って、センサがサンプルを取る場合に、連続データセットを促進するために、点がセンサデータ間で補間され得ることが認識されるであろう。同様に、センサがまばらなデータセットを提供する場合等の他の理由で、データが補間され得る。描写されるような未加工センサデータ603を目視することによって、ユーザがビル挙動を分析することが可能であるが、ある重要な特徴を見落とす可能性がある。
【0024】
図7は、センサデータが、ユーザによる、または自動システムによる分析をより施しやすい形態に変換され得る、一般過程を図示する。最初に、未加工センサデータ702が、データ操作のための形態に整理され得る。いくつかの実施形態では、関心期間にわたる個々のセンサ値の記録が、行列に整理され、完全データセットを達成するために必要な、値の間での補間が行われ得る。次いで、このデータセットは所望の分析形態704に変換703され得る。いくつかの実施形態では、この変換703は、フーリエ変換、コープマン、またはスペクトルベースの技法を含み得る。一般的に言えば、フーリエ変換およびArnoldi法等の方法は、コープマン演算子の固有値および固有ベクトルの一部のみが所望される場合に使用され得る。より完全な一式の固有値および固有ベクトルが所望される場合、Mezic法等の方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、変換703はまた、POD(例えば、主成分分析)、または他のエネルギーベースの分析法(当業者であれば、Mori−Zwanzig形式、最適予測、および他の予測方法を認識するであろう)を含み得る。
【0025】
次いで、変換されたデータセット704は、
図3に関して上記で説明されるように、センサデータ結果の視覚化706を生成705するために使用され得る。視覚化706の生成705は、関心領域のユーザ指定選択と関連して生じ得る。いくつかの実施形態では、視覚化は、
図7で描写されるようなオーバーレイを備え得る。視覚化を生成するよりもむしろ、システムは代わりに、修正されたデータ704を分析し、
図4に関して上記で論議されるように制御挙動を調整し得る。
【0026】
(センサデータ分析−方法の概説)
本実施形態のうちのいくつかは、ユーザまたは制御システムが選択し得る、一式のデータ分析法を提供する。
図8は、
図7の一般的に説明された過程に従ってデータを生成する方法のうちのいくつかを描写する。具体的には、
図8によって図示される実施形態は、一式のエネルギーベースの方法810と、一式のスペクトルベースの方法820とを含む。エネルギーベースの一式は、固有直交分解(POD)等の技法を含み得る(主成分分析(PCA)、カルーネン・レーベ変換(KLT)、またはホテリング変換等のPODの種々の特性化が当技術分野で容易に認識されるであろう)。周波数ベースの分析は、おそらく、以下でさらに詳細に論議されるArnoldiまたはMezic(空間場の調和平均)アプローチを使用して実装される、フーリエ変換およびコープマン法を含み得る。
【0027】
システムは、おそらく前処理され、好適な形態に編成される、未加工センサデータを受信すること802から始まる801。いくつかの実施形態では、受信されたデータは、特定の瞬間におけるセンサ値が各列また行に配置される、マトリクスとして整理され得る。上記で論議されるように、センサ値の間の補間が行われ得る。同様に、より詳細なデータセットを整理するために、高次マトリクスまたはテンソルが使用され得るが、以下の説明は、例証の目的で2次元マトリクスに関する。
【0028】
ある実施形態は、一式810、820等の各々からの異なる方法を使用して、複数の分析を実施することを検討する。POD分析等のエネルギーベースの分析が選択され、行われ得る(概して以下でさらに詳細に説明されるように)。PODは、特定のエネルギーレベルにおける各センサに関連付けられている値を備えている、複数のベクトルを生成する。次いで、ユーザまたはシステムは、関心エネルギーレベルを選択し得る812。次いで、選択されたエネルギーレベルに関連付けられているベクトルは、それらのそれぞれのセンサの各々において、以下でさらに詳細に説明される
図12のオーバーレイと同様の視覚化830を生成するために、使用され得る。既述のように、システムは代わりに、とるべき適切な措置を決定するために、選択されたエネルギーレベルを分析し得る。
【0029】
(センサデータ変換−固有直交分解)
既述のように、ある実施形態では、センサデータは、PODを介して、より分析を施しやすい形態に変換され得る。PODが複数の分解技法を含むので、以下の説明は、説明目的のためのある実施形態の一般化にすぎない。
【0030】
POD中に、システムは最初に、実際の、シミュレートされた、または部分的に実際のシミュレートされたビルセンサデータから、物理場データを受信し得る。いくつかの実施形態では、次いで、データの平均値が差し引かれ、修正されたデータセットの共分散行列が計算され得る。次いで、この共分散行列RR06の固有値および固有ベクトルが計算され得る。行列分解(サポートベクトル分解)またはJacobi固有値アルゴリズム等の、固有値の計算または推定のための既知の技法が使用され得る。最高値を伴う固有値は、「主成分」と称され得、固有値の全順序付けが、それらのそれぞれの大きさに基づいて行われ得る。各固有値に対応する固有ベクトルが、同様に、固有値の大きさに基づいて順序付けられ得る。これらの固有ベクトルの各々は、モードと呼ばれ得る(第1のモードが「主成分」である等)。システム構成に応じて、いくつかの最大固有ベクトルが、「特徴ベクトル」を形成するように選択され得る。次いで、データは、POD特徴またはモードを導出するために、この特徴空間上に投影される。上記は、POD過程の一般概要にすぎず、当業者であれば、多数の種々の省略された詳細を容易に認識するであろう。
【0031】
したがって、PODは、複数の実ベクトル(すなわち、実成分を備えているベクトル)および関連エネルギー値(固有値または特異値)を生成する。次いで、これらのベクトルまたはモードは、センサデータの主要な動的エネルギーの空間的位置を視覚化するために使用され得る。明確にするために、センサデータの「動的エネルギー」または「スペクトルエネルギー」は、ここでは、信号処理の意味での信号の中の「エネルギー」を指している。このエネルギーは、ビルの中の熱、電気、または他の物理場エネルギーと関係付けられることも関係付けられないこともあり、またはそれと同じであり得る。
【0032】
次いで、システムまたはユーザは、外観が
図11と同様の視覚化を行うように、エネルギーレベルおよび関連固有ベクトルを選択し得る。具体的には、ベクトルからの各値は、間取り図の上の対応するセンサの空間的位置において、オーバーレイの中で描画され、必要に応じて適切に拡大縮小され得る。次いで、オーバーレイの上のセンサ位置の間の中間値を描画するために、値の間の補間が行われ得る。これは、ビル挙動特性を決定することと、特に、典型的でもなく(典型的な挙動が、ビルの運営の測定に基づいて、またはエネルギーモデルを実行することによって確立され得る場合)、ユーザ要求もされない、固有直交モードでの動的エネルギー成分を識別することによって、欠陥のある動作を欠陥のない動作と区別することとを、より容易にし得る。そのような情報は、監視コントローラを設計するために使用され得る。PODを使用して、欠陥のある動作が空間的位置で識別された場合に、その位置におけるアクチュエータが、是正措置を行うように命令され得る。
【0033】
残念ながら、PODは、データのいくつかの特徴を決定するために有用であるが、常にビル挙動の包括的理解に役立つわけではない場合がある。具体的には、上記のPOD分析の最大固有値は、変換されたデータセットの最高エネルギーモードを示す。最高モードに基づいてデータを整理することは、必ずしも有用ではない場合がある。これらのエネルギーは、代わりにビル運営の異常挙動を反映する、異なる情報の頻度を備え得る。さらに、PODの各固有ベクトルは、その同等物に直角であり得る。したがって、場合によっては、特に周波数成分を含む、データコンテンツのより多彩な反映を促進する形態にデータを変換した後に、データに基づいて視認する、または措置を講じることが、より好ましいことがある。ある実施形態では、フーリエまたはより一般化されたコープマンベースの分析等のスペクトル変換が、この多用性を提供する。
【0034】
(センサデータ変換−スペクトルベースのアプローチ−フーリエ変換)
データのスペクトルおよびモード成分は、特にその起源がビルセンサに由来する場合に、データのコンテンツに関する有用な情報を明らかにし得る。センサ故障、不適切に設置された、または作動させられた制御システム、および、機器の経年劣化または機能不全が検出され得る。コープマンおよびフーリエ法は、本書では別々に論議されているが、本明細書で参照される、より一般的なコープマンベースの方法の特定の事例を含むことが、容易に認識されるであろう。
【0035】
スペクトル分析は、ビルモデルの較正のためにも有用である。スペクトル分析は、ビルの性能を決定する迅速な方法を提供し、したがって、実在のデータで見られるような性能と比較したモデルの性能の差を決定する測定基準として使用され得る。スペクトル分析は、データのスペクトルモードに対してモデルのスペクトルモードを比較することによって、ビルシステムモデルを再較正するために使用され得る。例えば、モデルからの位相反応が、データで見られたものとは異なる場合、モデルは再較正され得る。
【0036】
ある実施形態では、高速フーリエ変換(FFT)が、センサデータの周波数特性を決定するために採用され得る。これらの実施形態では、システムは、データセットにおいて各センサを通して反復し821、選択された期間にわたるセンサ値に対するFFTを計算し得る。データの多次元FFTを実施することによって等、フーリエ変換を計算するための代替的な方法が、容易に認識されるであろう。いずれにしても、フーリエ変換は、ある実施形態では、(対応する位相および大きさを表す)複素数値入力を備えている、「モード」行列を生成する。これらの実施形態では、行列の第1の次元は、センサ値の各々(M個のセンサについて行列のM行)に対応し得る。行列の第2の次元は、同様にフーリエ変換によって生成される周波数のベクトル(N個の周波数について行列のN列)に対応し得る。したがって、M行およびN列を備えている行列(M×N行列)について、行列入力は、N番目の周波数に関連付けられているM番目のセンサの値を表す。再度、これらの入力の各々は、位相および大きさを表すための複素数である。そのような配列では、N列の各々は、「モード」と呼ばれ得る。
【0037】
また、M行の各々は、センサに対する「周波数ベクトル」を生成するために、行列から分離され得る。モードは、同様に行列から分離され得る。したがって、行列の各列は、周波数ベクトルにおけるi番目の周波数に関係するモードを備えている。この配列は、例証の目的のためにすぎず、同じデータを異なって整理できることが認識されるであろう。
【0038】
いったんフーリエ表現が獲得されると、次いで、ユーザまたはシステムは、関心周波数またはモードを選択し824(行列の列N)、対応するベクトルまたは周波数値を決定し得る825(その列に対するM個のセンサ入力の各々)。次いで、システムは、選択された行列の複素数入力に基づいて、各センサに対する大きさおよび位相を決定することができる826。これは、各センサと関連付けられ得る、一対の値を生成する。システムは、大きさに対する第1のプロット830、位相に対する第2のプロット830を生成し得る。
図11を参照して、大きさのプロットの論議が行われ、
図12を参照して、位相のプロットの論議が行われる。以前に論議されるように、システムは代わりに、分析に基づく措置を講じ得る。
【0039】
図9は、フーリエ変換等の方法によって決定されるようなセンサデータセットのスペクトル特性の1つの可能な視覚化900を描写する。ここでは、周波数よりもむしろ周期901が、各センサ値を整理するために使用されている。値の大きさは、垂直軸904によって描写される。各円902a−cは、特定の周期/周波数、この場合は42時間/サイクル903に対応するセンサ値を表す。
図9の表現900は正確であるが、人間のオペレータまたは自動システムが、そのような視覚化からビルの挙動を解明することは困難であり得る。
【0040】
図10は、例えば、フーリエ変換またはコーピマンベースのアプローチを使用して決定される、データセットのスペクトル特性の別の可能な視覚化を描写する。ここでは、センサ値は、生成された行列のM行に対応する、垂直軸に沿って整理される。周波数/周期は、生成された行列のN列に対応する、水平軸に沿って示される。概して、周波数分解能は、利用可能なデータによって制限され得る。しかしながら、FFT等のアルゴリズムは、計算が行われる周波数グリッドを特定するパラメータを提供し得る。利用可能なデータ点の間で補間するための追加の方法もまた、当業者に容易に分かるであろう。各入力1010については、センサ値の対応する大きさが、強度によって描写される。いくつかの実施形態では、強度は、入力の色相または光度で、または視覚化が3D表示で表された場合には高さによって、反映され得る。この3次元表現(センサ、周期、および大きさ)は、特定の周波数におけるセンサに関連付けられている値のユーザ選択を促進する。例えば、あるソフトウェア実装では、ユーザは、範囲1060内の周波数1050A−Cに沿ってスライダを動かし、選択された周波数1050A−Cの各々において、全てのセンサの対応する視覚化1051A−Cを生成し得る。視覚化1020の点検によって、ユーザは、入力1010において示されるもの等の異常なスペクトル挙動を識別することができる。ユーザは、対応する周波数1050Aを選択し、対応する視覚化1051Aを生成し得る。
【0041】
1つのそのような視覚化1110が
図11で描写されている。所望の周波数を選択すると、システムは、対応するベクトルの各センサ値の間で反復し得る。これらの値は、ビル間取り図上のオーバーレイの中の各センサ1120A−Dに割り当てられ得る。ここでは2次元間取り図として図示されているが、3次元表現も提供され得ることが認識されるであろう。次いで、システムは、近くのセンサを補間または平均することによって、ピクセル位置1140等におけるセンサ1120A−Dの値の各々の間で値を生成し得る。この実施例では、センサ1120Cおよび1120Dに対応する値は、極めて高い一方で、隣接値は、はるかに低い。これは、これらのセンサの場所における物理場が、選択された周波数において能動的であることを目的としない場合に、異常挙動特性を示し得る。温度変動、エネルギー利用変動、電気的活性変動等のビルの物理場と相関する特性であるものとして、識別された挙動特性が認識されるであろう。そのような挙動特性を決定することは、自動システムが上記で処理されたデータからの挙動特性を認識すること、または特性が視覚化の一部としてユーザに提示されることを伴い得る。いくつかの実施形態では、センサの影響は、ピクセル位置1140からセンサまでの距離によって重み付けされ得る。同様の補間オーバーレイが、POD分析の結果等の任意のセンサベースの値の集合に対して生成され得ることが、容易に認識されるであろう。いずれの物理場も、このようにして描画され得る。例えば、温度、湿度、空気流、圧力、人口占有率、プラグ負荷密度、光強度等が全て、ビルの間取り図の上に重ねられ得る。
【0042】
既述のように、行列の各複素数入力は、センサの大きさおよび位相情報の両方を促進する。これらのスペクトルベースの技法について、1110と同様の視覚化が、センサの位相情報に対して生成され得る。
図12は、再び間取り
図1200の上に重ねられた位相視覚化を描写する。ここでは、センサに関連付けられている各値は、センサのデータと選択された周波数1050Aにおける参照周波数との間の位相差を示す。フーリエ変換等のあるスペクトル技法は、概して、ゼロ、すなわち無位相という参照に関して位相を生成する。いくつかの実施形態では、センサデータ1230の位相は、代わりに、周囲外気温度1220の周波数に対して較正される。つまり、センサデータが30サイクルのゼロ位相に対する位相を有し、外気温度が20サイクルのゼロに対する位相を有する場合、視覚化1200を生成するために使用されるセンサ位相値は、10サイクルであり得る。ユーザまたはシステムは、ビルの運営時間に関連付けられている位相等の、周囲空気温度以外の代替的な参照を選択し得る。このようにして、視覚化1200は、関心のある基準に対するセンサの関係を描写する。
【0043】
フーリエ分析は、ビルセンサデータのスペクトル特性に関する重要な情報を提供するが、システムまたはユーザは、変換に固有の原則に従ってスペクトル特性を分析せざるを得ない。
【0044】
システムまたはユーザは、生成されたスペクトル成分の特性に対して、さらなる融通性および制御を有する場合、異常ビル挙動または関心領域をより良好に識別することが可能であり得る。ある実施形態は、コープマンベースのスペトル技法等の、フーリエ変換よりもより洗練された技法を適用することを検討する。概して、コープマン分析は、一式のセンサデータのスペクトル特性を評価するために、あまり制限的ではないツールの集合を提供する。いくつかの実施形態では、データのコープマン特性は、Arnoldi、Mezic、または同様の方法を適用することによって決定される。
【0045】
(センサデータ変換−スペクトルベースのアプローチ−コープマン演算子ベースのスペクトル方法)
コープマン演算子は、完全非線形システムに関連付けられている無限次元線形演算子である。具体的には、多様体M上で発展する動的システムを考え、x
k<Mについては、
x
k+1=f(x
k) (1)
であり、式中、fは、Mからそれ自体へのマップであり、kは、整数の指数である。例として、多様体Mは、センサの集合体に対する可能なセンサ値の領域全体を備え得る。システムは、全体として、時間kにおいて状態x
kを処理し、後に、時間k+1においてx
k+1を処理し得る。次いで、マップまたは関数fは、システムが、各連続状態から、すなわち、各組のセンサ値の間で遷移する手段を示す。コープマン演算子は、以下の方式でM上のスカラー値関数に作用する、線形演算子Uである。任意のスカラー値関数g:M−>Rについて、Uは、gを、以下によって求められる新しい関数Ugにマップする。
【0046】
Ug(x)=g(f(x)) (2)
このようにして、これらの関数を関係付ける演算子の能力により、演算子は、関数fの性質に関する重要な情報を所有する。演算子がビルに関連付けられている関数について決定された場合、そのビルの質に関する重要な情報をもたらす。残念ながら、動的システムは非線形であり、有限次元多様体M上で発展するが、コープマン演算子U自体は、無限次元である。したがって、コープマン演算子自体を正確に計算することは、概して困難である。さらに、ビルシステムは通常、大量のセンサデータx
k、x
k+1、x
k+2等を備え、この関係を説明する関数fは通常、極めて複雑かつ未知である。
【0047】
したがって、コープマン演算子に含まれるシステム情報を分析することが望ましいが、数値的かつ実験的に収集された利用可能なデータのみを使用し、演算子を明示的に計算する必要がない。本実施形態のうちのいくつかは、代わりに、コープマン演算子Uの固有関数および固有値を計算すること、およびこれらをシステムの分析のための基礎として使用することを検討する。さらに、これらの実施形態は、有限で既知の一式のデータのみから固有関数および固有値を導出する方法を採用する。φ
jが、コープマン演算子の固有ベクトルまたは固有関数(本明細書ではコープマン固有関数と呼ばれる)を示し、λ
jが、固有値(本明細書ではコープマン固有値と呼ばれる)を示すと、以下となる。
【0048】
Uφ
j(x)=λ
jφ
j(x),j=1,2,3...(3)
次いで、既知のデータセットは、ベクトル値の観察可能なq:M−>Rpとして特徴付けられ得る。つまり、可能な値の領域からの値の集合である。観察可能なqは、所望のスペクトル情報を取り出すように、コープマン固有ベクトル上に投影され得る。次いで、データセットは、コープマン固有スペースに対するその成分に関して表され、すなわち、以下のように表され得る。
【0049】
【数4】
式中、v
jは、コープマン固有ベクトルのその成分に沿った、q(x)の成分を表すベクトルの一次結合であり、または固有関数φ
jと呼ばれることもある。いくつかの実施形態では、これらのベクトルを、データの「コープマンモード」と呼ばれる。したがって、コープマン固有値λ
jは、対応するコープマンモードv
jの時間的挙動を特徴付ける。λ
jの位相は、周波数を決定し、大きさは、成長率を決定する。コープマン固有値は、対応するコープマンモードの時間的挙動を特徴付ける。コープマンモードは、
図11に関して論議されたようなフーリエ変換と同様に、視覚的に描画され得る。
【0050】
コープマン固有ベクトルおよび固有値の計算は、以下でさらに詳細に説明されるArnoldアルゴリズム、Jacobi法、およびMezic法を含む、種々の方法によって達成され得る。コープマン演算子のスペクトルの質は、コントローラ機能における非一貫性を迅速に強調するために使用され得る。フーリエ変換に関して論議されたように、コープマンモードを調べることは、概して、コープマン演算子のスペクトルを計算し、次いで、特定の関心周波数を選択することを含む。次いで、選択された周波数に関連付けられているコープマンモードが得られ、調べられ得る。コープマンモード情報はさらに、ビル動態のこれらの非常に重要な部分がモデルにおいて適正に設定されているかどうかを、ユーザが迅速に定量化することを可能にする。これは、予測と測定との間の差の識別を促進し、したがって、ビルに関連する性能問題を強調し得る。大きさおよび位相情報に基づく洞察もまた、対応するシミュレーションモデルを向上させるために使用され得る。コープマンベースの方法は、有意量の周期的成分を含む動態によく適している。コープマン法は、センサ機能に関する迅速な結論を促進し、また、モデルおよび実在のデータをより迅速に比較するために使用され得る。コープマン演算子の完全な説明は、参照することにより本明細書に組み込まれる、"Spectral Analysis of Nonlinear Flows" Rowley, et al, Journal of Fluid Mechanics (2009), 641: 115−127で見出され得る。
【0051】
図13は、データのコープマンベースの分析を行うための一般化フロー図を図示する。コープマンベースの演算821は、一式のスペクトル技法820のある実装で見られる通りである。概して、これらのコープマンベースの演算は、(以下でさらに詳細に論議される)複数の方法のうちの1つに基づいて、データセットのコープマン演算子の固有空間1301(固有関数の集合)を決定する。次いで、システムは、いくつかの実施形態では内積を得ることによって、元のデータセットを、この決定された固有空間上に投影し得る1302。これは、関心周波数824および関連視覚化が生成され得る、スペクトルデータを生成する。2つの別個のこととして
図13で描写されているが、計算実装は、これらの演算を同時に、または事実上他の演算を介して行い得ることが、容易に認識されるであろう。
【0052】
(コープマンモードの計算−Arnoldi法)
以下の開示は、定期的な時間にサンプリングされる特定の観察可能物(スナップショット)の値のみが与えられた、コープマンモードを計算するための1つの可能なアルゴリズムである、Arnoldi法を提示する。実在のセンサからのデータは、定期的に、これらのスナップショットの形態であり得る。我々は、任意の状態xについて、wが、ベクトル値の観察可能なg(x)e∈R
pを測定し得ると仮定する。具体的には、Arnoldiアルゴリズムは、非線形システムに適用された場合に、コープマン演算子の固有値に対する近似値、およびそれらの対応するモードを生成する。
【0053】
以下の論議は、線形システム上で動作するArnoldiアルゴリズムのバージョン例を提供し、基礎を成す演算子Aの明示的な知識を必要としない。しかしながら、ある実施形態は、非線形システムに適用され、コープマンモードと関連するアルゴリズムの代替的な解釈を検討する。非線形コンテキストでのArnoldi法の適用は、上記で参照することにより組み込まれた、"Spectral Analysis of Nonlinear flows" Rowley, et al, Journal of Fluid Mechanics (2009), 641: 115−127でも論議されている。
【0054】
(線形システム用のArnoldiアルゴリズム例)
以下は、実施形態のうちのいくつかで適用され得るようなArnoldiアルゴリズムのある側面の一般的論議である。以下の線形動的システムを考える。
【0055】
x
k+l=Ax
k (5)
式中、x
k∈R
nであり、nが非常に大きいので、Aの固有値を直接計算することができない。ある実施形態は、初期ベクトルx
0(しばしば確率ベクトルとなるように選択される)から始まって、x
0の反復を計算する、Krylov法を使用して、これらの固有値の推定値を計算する。m−1反復後に、範囲{x
0,Ax
0,...,A
m−1x
0}によって与えられるKrylov部分空間に及ぶ、m個のベクトルの集合がある。次いで、ある実施形態は、Aをこのm次元部分空間上に投影し、結果として生じる下位演算子の固有ベクトルおよび固有値を計算することによって、固有値および固有ベクトルを概算する。データベクトルは、n×m行列の中へ積み重ねられ得る。
【0056】
K=[x
0 Ax
0 A
2x
0・・・A
m−1x
0]
=[x
0 x
1 x
2 ・・・ x
m−1] (6)
次いで、Kの列の一次結合として、Aの近似固有ベクトルを求めることを希望する。Arnoldiアルゴリズムは、各ステップで反復を正規直交化する、一種のKrylov法であり、したがって、恣意的なベクトルへのAの作用を計算することを伴う。Aの明示的な知識を必要としない、このアルゴリズムの変形が以下に挙げられる。
【0057】
第1に、m番目の反復xmが以前の反復の一次結合である、特殊な場合を考える。以下のように書き得る。
【0058】
x
m=Ax
m−1=c
0x
0+...+c
m−1x
m−1=Kc (7)
ここで、c=(c
0,...,c
m−1)である。したがって、
AK=KC (8)
式中、Cは、以下によって挙げられるコンパニオン行列である。
【0059】
【数9】
次いで、Cの固有値は、以下の場合であれば、Aの固有値の一部であり、
Ca=λa (10)
(8)を使用して、v=Kaが、固有値λを伴うAの固有ベクトルであることを検証し得る。
【0060】
より一般的には、m番目の反復が以前の反復の一次結合ではない場合、次いで、等式(7)の代わりに、以下の剰余があり、
r=x
m−Kc (11)
これは、rが範囲{x
0,...,x
m−1}に直交であるようにcが選択された場合に最小限化される。この場合、関係(3.5)は、AK=KC+re
Tになり、式中、e=(0,...,1)∈R
mである。次いで、Cの固有値は、Ritz値とも呼ばれるAの固有値に対する近似値であり、対応する近似固有ベクトルは、Ritzベクトルと呼ばれるv=Kaによって求められる。完全Arnoldi法は、この方法よりも数値的に安定しており、Aを、コンパニオン行列よりもむしろ上位ヘッセンベルグマトリクスに換算することに留意されたい。
【0061】
図13に関して既述のように、上記のアルゴリズムの重要な特徴は、それが行列Aの明示的な知識を必要とせず、以下で要約されるように、一連のベクトルのみを必要とすることである。
【0062】
x
j⊂R
nである、列{x
0,...,x
m}を考える。以下のアルゴリズムに従うことによって、この列の経験的Ritz値λ
jおよび経験的Ritzベクトルv
jを定義する。
【0063】
(3.3)によってKを定義し、以下であるように定数C
jを求める。
【0064】
【数12】
(3.6)によってコンパニオン行列Cを定義し、その固有値および固有ベクトルを求める。
【0065】
C=T
−1ΛT,Λ=diag(λl,...,λm) (13)
式中、固有ベクトルは、T
−1の列である。
【0066】
V=KT
−1の列となるようにv
jを定義する。
【0067】
x
j=A
jx
0である場合、経験的Ritz値λ
jは、Arnoldi法のmステップ後のAの通常Ritz値であり、V
jは、対応するRitzベクトルである。これらは、Aの固有値および固有ベクトルの良好な近似値を提供し得る。しかしながら、X
j=A
jx
0がない場合(例えば、列が非線形マップによって生成された場合)、この時点で、上記のアルゴリズムが何を生成するかは明確ではない。非線形システムについては、アルゴリズムは、コープマンモードおよび関連固有値の近似値を生成する。非線形システムの対応する説明は、参照することにより本明細書に組み込まれる、例えば、"Spectral Analysis of Nonlinear flows" Rowley, et al, Journal of Fluid Mechanics (2009), 641: 115−127で見出され得る。
【0068】
Arnoldi法に加えて、当業者であれば、Mezicらの方法等の、コープマン演算子を計算するための他の方法に精通しているであろう。Mezicアプローチの一般的論議は、参照することにより本明細書に組み込まれる、"Spectral Properties of Dynamical Systems, Model Reduction and Decompositions" Igor Mezic, Nonlinear Dynamics (2005) 41:309−325で見出され得る。
【0069】
(パラメータサンプリングおよび感度分析)
上記のスペクトルおよびエネルギーベースの方法は、センサデータセットの特性を決定するために使用され得るが、ビル挙動の効果的な特性化は、そこからデータを収集する、適切なセンサおよび適切な物理場を選択することにも依存し得る。したがって、独立して、または、データ変換および分析の上記の方法と併せて、本実施形態のうちのいくつかは、以下でさらに詳細に説明される、ビルのモデルおよびある分解方法を使用して、分析のための関連センサおよび物理場も識別するビル管理システムを検討する。複合コープマン分析・分解方法も、以下でさらに詳細に論議される。
【0070】
図14は、複数の入力1401A−Dを受信し、複数の出力1402A−Bを生成する、システム1403を図示する。システム1403は、ここでは、当業者に公知であるEnergy Plus、TRNSYS、またはEquestモデルのうちの1つを使用することによる等、ビルの合成コンピュータモデルを表す。入力1401A−Dを変化させ、出力1402A−Bへの影響を監視することによって、入力の間、および、入力と出力との間の関係が決定され得る。
【0071】
分解方法は、どのデータ構成要素が、互いに、または、1つ以上の関心物理場に最も大きく影響を及ぼすかを認識することによって、データの複雑な配列をより有用な形態に変換する方法を含む。ビル効率との関連で、エネルギー効率および環境保護の目標は、システムの中の多種多様な分散構成要素の影響を受け得る。ビルの構造要素、通信システム、感知システム、輸送システム、大気質システム、および電力システムは、極めて複雑に相互作用し得る。これらの構成要素の挙動は、ソフトウェアでモデル化され得る。これらのエネルギーシミュレーションツールは、(天気、人間、制御システム等からの)種々の障害がビルの熱力学的挙動に影響を及ぼす方法を表す、一式の詳細な物理的関係(微分、代数等)を含み得る。これらの方程式内に、数千ものパラメータまたは入力が存在し得る。時には、これらの値は、アナリストの最高の知識に基づいた推測によって供給され得る。残念ながら、パラメータ誤差は、実在の挙動を表すツールに、誤った結果を生じさせる場合がある。
【0072】
図14に関して、各入力1401A−Dの値の範囲および関連粒度を選択することが望ましい。次いで、コンピュータシミュレーションが、入力値反復の各々において実行され得、結果として生じる出力が観察され得る。例えば、日よけの長さを含む入力について、範囲は、日よけの延長なし(0フィート)から完全延長(4フィート)までのフィート単位の距離となる。0〜4の範囲が無数の中間値を備えているので、アナリストは、特定の粒度に対する離散値を選択し得る。例えば、考慮される入力値の集合が0、1、2、3、および4フィートであるように選択され得る。全ての入力について、アナリストは、これらの値の各々の間で反復し、対応する出力1402A−Bを生成するために、対応するシミュレーションを実行し得る。入力値のあらゆる可能な組み合わせを通して反復する場合の出力1402A−Bを観察することによって、アナリストは、入力の各々の間、および入力と出力との間の関係を推論し得る。いくつかのシミュレーションでは、全てのパラメータが個々に(1つずつ)変化するわけではない。他のシミュレーションでは、パラメータは、一度にそろって変化し得る(これは計算的により効率的であり得る)。あるシステムは、どのようにモデルが反応するかを決定するために、さらに別の入力として粒度を調整し得、この実施例の場合のように、範囲内の均等に分布した粒度を選択する必要はない。
【0073】
実際には、パラメータ範囲および分布の選択が、ビルモデルのサンプリングされた挙動に影響を及ぼすので、ある実施形態は、疑似ランダムおよびランダム技法を使用して、範囲および分布を選択することを考慮する。
図15は、モンテカルロ1502等のランダム技法の使用と比較した、従来のサンプリング技法1501を使用した決定論的サンプリング方法の結果を図示する。本実施形態のうちのいくつかは、いずれのサンプリング方法をも使用することを検討する。
【0074】
決定論的サンプリングでは、サンプリングする次の点をランダムに選択する代わりに、次のサンプリングポイントを見つけるために、方程式が使用され得る。そのような方程式は、以下のように書くことができる。
【0075】
x'=T(x) (14)
式中、x'は、次のサンプリング場所を示し、T(x)は、前のサンプリング場所xのマッピングを表す。そのようなマッピングTが均一なエルゴードである場合に、サンプリングの良好な収束特性が得られ得る。代わりに、ランダムサンプリング方法は、モンテカルロ等のランダム性アルゴリズムを使用して次の点を選択する。従来の方法(モンテカルロ)では、集中がサンプリングアプローチで起こる場合がある。これらの集中したサンプリングされた点は、サンプリングアプローチにおける非効率性を示し、ビル設計の分析において時間を無駄にする場合がある。この問題を回避するために、ランダムなサンプルを採取する前に、最初に空間を同等確率の領域に分割するために、ラテン超方格サンプリング(LHS)が使用され得る。
【0076】
ある実施形態は、モンテカルロ法と準モンテカルロ(すなわち、決定論的)法との使用を組み合わせ、これは、モンテカルロ法のみを使用するよりもはるかに高速でより正確であり得る。準ランダムサンプリング方法は、他の方法が提供する同じ精度を取得するために、より高速の収束およびより少ないシミュレーションを提供し得る。これは、より多くの不確実なパラメータが、同じ時間量で処理されることを可能にし得る。
【0077】
(不確実性および感度分析)
概して、アナリストは、所与の入力の値の正確な範囲を知らない場合があり、代わりに、不確実な推測を行わなければならない。不確実性分析は、入力1401A−Dの不確実性がどのように出力1403A−Bの不確実性に影響を及ぼすかという定量化を含む。感度分析は、プロセスまたはモデルにおいて、出力1403A−Bにおける不確実性を、入力パラメータ1401A−Dの不確実性にどのようにして割り付けることができるかを識別する。不確実性分析は、概して、データ特性の「ボトムアップ」評価と考えられ得る一方で、感度分析は、「トップダウン」評価を含む。アナリストは、
図14等の単純化したトポロジーから不確実性を測定することができるが、本実施形態のうちのいくつかは、互に対する、および、出力AA03A−Bに対するそれらの関係をより良好に決定するために、データ入力の階層配列を検討する。不確実性は、導関数、区間、分散等、または任意の他の様々な数量を使用して特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、不確実性および感度分析は、パラメータスクリーニング、局所感度方法、および包括的方法といった、3つのアプローチのうちの1つを含む。これらのアプローチの各々は、それらの複雑性および正確性が異なる。
【0078】
パラメータスクリーニングは、パラメータの極値を調べ、それらを重要性の順序でランク付けすることによって、それらがどのように出力に影響を及ぼすかを迅速に識別する、粗い1つずつのパラメータ(OAT)アプローチである。この方法は、いくつかの不確実なパラメータを伴うモデルを検討するために有効である。
【0079】
局所感度方法は、パラメータ感度を推定するために、出力と入力との間の局所微分の数値的近似値を使用する。この導関数を計算するためのいくつかの異なるアプローチ(有限差分、直接的方法、グリーン関数の使用等)があるが、各方法は、典型的には、OATサンプリングを必要とする。再度、この方法は、少数の不確実なパラメータを検討するために有効である。名前が暗示するように、局所方法は、サンプリングされた空間の中の異なる場所における近似感度結果のみを取得する。
【0080】
対照的に、包括的方法は、パラメータ空間のサンプリングされた範囲全体により、出力の分散がどのように変化するかを計算する。局所方法と違って、包括的方法は、データまたはそれを生成する過程の線形性または単調性を仮定しない。Morris法は、ランダム化行列が1つずつ変化するパラメータを伴って構築される、包括的SAアプローチの一実施例である。導関数ベースの全体的感度を、以下のような関数から計算することができる。
【0081】
【数15】
ここで、サンプリング点の全次元にわたって積分が行われる。分散分析(ANOVA)および他の感度が、不確実性を計算するために使用され得る。
【0082】
図16は、エネルギー効率変数「施設電気」1602の分解階層を図示する。出力は、代替として、温水エネルギー、空調利用、特定の部屋に対する電気利用、ポンプ、ファン、照明システム、冷却装置、冷却システム等の値を備え得る。中間変数1603A−Eは、エネルギー効率変数「施設電気」1602のエネルギー消費に寄与する構成要素を表し得る。システムはさらに、変数1604に分解され得、それらは順に、変数1603A−Eの各々に影響を及ぼす。図示された分解は、構成要素の関係の直観的理解およびビルの運営への期待に基づいて、アナリストまたはビル設計者によって作成され得る。右端の節点は、ビルレベルでの電気使用である。
【0083】
1つのレベルでの変数の値の範囲を通して反復し、より高いレベルでの変数への影響を評価する(例えば、変数1604の値を通して反復し、変数1603A−Eへの影響を評価する)ことによって、
図17に図示される感度ウェブが生成され得る。
図17のウェブは、
図17の3つよりもむしろ4つの分解レベルを備え、また、施設電気よりもむしろ温水消費に対処する。
【0084】
図17では、節点は、表1で説明されるサブシステムエネルギー変数であり、接続するワイヤは、感度指数である。
【0085】
【表1】
結節の各々の周囲に描かれた円は、変動係数を表す。いくつかの実施形態では、円の尺度は恣意的であり、代わりに、図中の他の円に対して視認されることを目的としている。節点の周囲の円が、各節点における不確実性を図示する一方で、節点の間のエッジ(edge)は、節点の間の影響を図示する。ワイヤの太さは、感度指数の大きさに対応する。より太いエッジが、より多くの影響を示す一方で、より細いエッジは、より少ない影響を示す。これらのエッジは、「感度指数」と呼ばれる。いずれのワイヤもない場合、感度指数はごくわずかであり、逆に、最も太いワイヤは、変数間の最も強い影響を表す。
【0086】
ある実施形態では、システムは、最初に(左から右へ)
図16の各分解レベルを通して反復し、入力の集合に基づいて各出力に対する不確実性分析を実施することによって、ウェブ1700を生成する(それにより、円1704A−Bを生成する)。不確実性分析が完成すると、次いで、システムは、感度指数1703A−Bを計算し得る。不確実性分析が各レベルに対して行われ、対応する円が生成されると、次いで、システムは、各構成要素の間のワイヤの太さを決定するために、感度分析を行い得る。
【0087】
ある実施形態は、種々の上記の技法を統合することによって、ビル動態をシミュレートするための向上したアプローチを検討する。これらの実施形態では、準ランダムサンプリングが、パラメータサンプルを生成するために使用され得る。次いで、ガウス核を使用したサポートベクトル回帰を使用して、応答表面が計算され得る。次いで、ANOVAおよびL2ノルム導関数ベースの感度が計算され得る。いくつかの実施形態では、L1ノルム(mm)導関数ベースの感度のみが提示される。
【0088】
(ある感度実施形態の概要)
図18は、ある実施形態で使用されるような感度分析を概して説明する、論理フロー図である。これらの実施形態では、システムは、ビルから物理場データを獲得すること1802から始まる1801。既述のように、ビルは、実物または合成のいずれか一方であり得、センサデータは、実際またはシミュレートしたデータであり得、あるいは2つの組み合わせを備えている。次いで、システムまたはユーザは、ビルの入力・出力マップを策定し得る1803。例えば、システムまたはユーザは、
図16に関して上記で説明される分解階層の構成要素を特定し得る。そのような選択は、ビル構造の特性、または仮定されたビル構成要素間の関係に基づいてもよい。ここではこの順序で説明されているが、獲得されるデータ1802は、生成される入力・出力マップ1803に基づいて選択され得ることは、容易に認識され得る。次いで、システムは、最適な入力パラメータ値を決定するために、上記で論議される準ランダム方法等のサンプリング方法を使用し得る1804。最適な入力パラメータ値は、停止条件1805が満たされたかどうかを決定するために使用され得る。例えば、選択された入力が、実在またはモデル化非効率性を特定レベル以下に低減する場合、システムは、停止し1806、またはさらなる措置を遅延し得る。逆に、ビルがまだ所望の動作に達成してない場合、過程は繰り返され得る。不確実性および感度分析のあらゆる論議は、参照することにより本明細書に組み込まれる、"Coupled Nonlinear Dynamical Systems: Asymptotic Behavior and Uncertainty Propagation", Igor Mezic, 43
rd IEEE Conference on Decision and Control. December 14−17, 2004、および参照することにより本明細書に組み込まれる、"Uncertainty Analysis and Sensitivity Decomposition of Building Energy Models" Eisenhower, et al., Journal of Building Performance Simulation, Vol. 4, May 10, 2011で見出され得る。
【0089】
(合併したコープマンベースの分解および視覚化)
上記で論議される階層分解の代わりに、またはそれと併せて、ある実施形態は、エネルギー810またはスペクトル820分析方法の側面をそれらの構成に統合する、分解階層を検討する。例えば、
図19を参照すると、ある実施形態は、コープマンベースの分析の結果に関して上記で論議される分解フレームワークを適用することを検討する。
図19に図示されるように、コープマン分析からの1次1901a、2次1901b、3次1901c、および4次1901d周波数成分が、階層的に整理され得、関心物理場に影響を及ぼす、それらの間の関係が、上記で論議される方法を使用して決定され得る。そのようなアプローチは、分解の階層レベルと周波数ベースの分析の構成要素との間の相関を決定するために、
図17の分解と併せて使用され得る。不確実性および感度分析との関連でのスペクトル技法の他の適用は、参照することにより本明細書に組み込まれる、"Spectral Balance: A Frequency Domain Framework for Analysis of Nonlinear Dynamical Systems", Banaszuk et al., 43
rd IEEE Conference on Decision and Control, December 14−17, 2004で見出され得る。
【0090】
(統合全ビル設計および運営−GloBEMS)
上記の方法は、好ましくは、ビルに対する統合全システム設計および運営方法を提供するように組み合わせられる。上記で論議されるように、スペクトル・空間分解は、運営しているビルからの未加工ビルシステムデータおよびモデルデータの両方に対して行われ得る。さらに、
図2で提示される伝搬は、モデルデータだけでなく、運営中のビルからのデータにも行われ得る。
【0091】
そのようなものとして、この方法の複合部分は、ビルに対する障害診断および全システム最適化のためのアプローチを提示し、利用可能な最もエネルギー効率的な設計および運営アプローチを提供する。
【0092】
全体的ビルエネルギー管理システムは、エネルギー利用および浪費の詳細な視覚化、ならびに結果として生じたエネルギー節約を伴い実装することができる明確な実用的情報を提供する。全体的ビルエネルギー管理システムは、全てのエネルギー決定のための投資に対する利潤のリアルタイムの即時決定、例えば、アップグレードされた機器、追加の管理ツール等を可能にし、単一のビルまたはビル内部の利用内で、有意なエネルギー節約も可能にする。
【0093】
全体的ビルエネルギー管理システムの使用は、どのようにしてビルが「呼吸する」か、すなわち、エネルギーが壁から漏出する場所、熱が失われる場所、または維持される場所等の分析を可能にし、それは順に、そのようなエネルギー損失に対する是正措置につながる。さらに、全体的ビルエネルギー管理システムは、任意の是正措置がどのようにして機能しているかを確認し、(温度、湿度、空気流、圧力、人口占有率、プラグ負荷密度、光強度を含む)物理場の空間分布と、ビル利用パターン、概日周期、および制御システムサイクルによって引き起こされる時間周期的なパターンとの間の相関を抽出し、そのような相関に基づいて、構造内のエネルギーのより効率的な使用を可能にする分析のための方法を提供するために、リアルタイムで実装することができる。
【0094】
全体的ビルエネルギー管理システムは、多くのセンサベースの出力変数を含む、大型のパラメータ依存性システムの分析に合わせられているアルゴリズムによって可能にされる。これにより、アプローチは、本発明が最適化において現在展開されている試行よりも桁違いに高速となることを可能にする。さらに、全体的ビルエネルギー管理システムは、システムの精度が、ビル設計によって特定されるよりもむしろ顧客によって特定されることを可能にする、現在使用中の数よりも桁違いに大きい、いくつかのセンサ生成データ値を考慮する。本発明における感度分析の精度は、現在の標準および展開された分析ツールよりもはるかいに小さい、エネルギー単位の約100万分の1であることが示されている。
【0095】
全体的ビルエネルギー管理システムはまた、初期エネルギー監査、監査の毎月の更新、ビル管理システムを通した連続試運転を介するリアルタイム監視および制御を含む、大型ビルエネルギーシステムの包括的な状況分析も可能にし、ならびに、ビル管理、所有、工学技術、またはエネルギーコンサルティング会社が、商業用ビルおよび総合施設に対する解決策を分析して提供することを可能にする。
【0096】
本明細書で使用される場合、「命令」とは、システムにおいて情報を処理するためのコンピュータ実装ことを指す。命令は、ソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアで実装することができ、システムの構成要素によって行われる、任意の種類のプログラムされたことを含むことができる。
【0097】
「マイクロプロセッサ」または「プロセッサ」は、Pentium(登録商標)プロセッサ、Intel(登録商標)Core
TM、8051プロセッサ、MIPS(登録商標)プロセッサ、またはALPHA(登録商標)プロセッサ等の任意の従来の汎用単一またはマルチコアマイクロプロセッサであり得る。加えて、マイクロプロセッサは、デジタル信号プロセッサまたはグラフィックスプロセッサ等の任意の従来の専用マイクロプロセッサであり得る。「プロセッサ」は、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特殊用途向け集積回路(ASIC)、複合プログラム可能論理素子(CPLD)、プログラム可能論理アレイ(PLA)、マイクロプロセッサ、または他の同様の処理デバイスも指し得るが、それらに限定されない。
【0098】
システムは、以下で詳細に論議されるような種々のモジュールから成る。当業者によって理解することができるように、モジュールの各々は、サブルーチン、手順、定義命令文、およびマクロを備えている。モジュールの各々は、典型的には、別々にコンパイルされ、単一の実行可能プログラムの中へリンクされる。したがって、モジュールの各々の以下の説明は、便宜上、好ましいシステムの機能性を説明するために使用される。したがって、モジュールの各々によって行われる過程は、他のモジュールのうちの1つに恣意的に再分配され、単一のモジュールの中で一緒に組み合わせられ、または、例えば、共有可能な動的リンクライブラリの中で利用可能にされ得る。
【0099】
システムのある実施形態は、SNOW LEOPARD(登録商標)、iOS(登録商標)、LINUX(登録商標)、UNIX(登録商標)、またはMICROSOFT WINDOWS(登録商標)等の種々のオペレーティングシステムと関連して使用され得る。
【0100】
システムのある実施形態は、アセンブリ、C、C++、BASIC、Pascal、またはJava(登録商標)等の任意の従来のプログラミング言語で書かれ、従来のオペレーティングシステムの下で実行され得る。
【0101】
加えて、モジュールまたは命令は、FLASHドライブ、CD−ROM、ハードディスク、およびDVD等の1つ以上のプログラム可能な記憶デバイス上に記憶され得る。一実施形態は、その上に記憶された命令を有する、プログラム可能な記憶デバイスを含む。
【0102】
上記の過程および方法は、あるステップを含むものとして上記で説明され、特定の順序で説明されるが、これらの過程および方法は、追加のステップを含み得る、または説明されるステップのうちのいくつかを省略し得ることが認識されるべきである。さらに、過程のステップの各々は、必ずしもそれが説明される順序で行われる必要がない。
【0103】
上記の説明は、種々の実施形態に適用されるような本発明の新規の特徴を示し、説明し、指摘しているが、本発明の精神から逸脱することなく、図示されるシステムまたは過程の形態および詳細の種々の省略、置換、および変更が当業者によって行われ得ることが理解されるであろう。認識されるように、いくつかの特徴が、他の特徴とは別に使用または実践され得るので、本発明は、本明細書で説明される特徴および利益の全てを提供するわけではない形態内で具現化され得る。
【0104】
本明細書で開示される実施形態と関連して説明される方法またはアルゴリズムのステップは、ハードウェアで、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで、または2つの組み合わせで具現化され得る。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、可撤性ディスク、CD−ROM、または当技術分野で公知である任意の他の形態の記憶媒体の中に存在し得る。例示的な記憶媒体は、プロセッサが、記憶媒体から情報を読み取り、記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに連結され得る。代替案では、記憶媒体は、プロセッサと一体であり得る。プロセッサおよび記憶媒体は、ASICの中に存在し得る。ASICは、ユーザ端末の中に存在し得る。代替案では、プロセッサおよび記憶媒体は、ユーザ端末の中の離散構成要素として存在し得る。
【0105】
上記で説明される過程の全ては、1つ以上の汎用または専用コンピュータまたはプロセッサによって実行されるソフトウェアコードモジュールで具現化され、かつそれを介して完全に自動化され得る。コードモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読媒体または他のコンピュータ記憶デバイスあるいは記憶デバイスの集合体上に記憶され得る。方法のうちのいくつかまたは全ては、代替として、特殊コンピュータハードウェアで具現化され得る。
【0106】
本明細書で説明される方法およびタスクの全ては、コンピュータシステムによって行われ、完全に自動化され得る。コンピュータシステムは、場合によっては、説明された機能を行うように、ネットワーク上で通信および相互動作する、複数の明確に異なるコンピュータまたはコンピュータデバイス(例えば、物理的サーバ、ワークステーション、記憶アレイ等)を含み得る。そのようなコンピュータデバイスの各々は、典型的には、メモリまたは他の非一過性のコンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令またはモジュールを実行するプロセッサ(または複数のプロセッサ、あるいは回路または回路の集合体、例えば、モジュール)を含む。本明細書で開示される種々の機能は、そのようなプログラム命令で具現化され得るが、開示された関数のうちのいくつかまたは全ては、代替として、コンピュータシステムの特定用途向け回路(例えば、ASICまたはFPGA)で実装され得る。コンピュータシステムが複数のコンピュータデバイスを含む場合、これらのデバイスは、同一場所に位置し得るが、その必要はない。開示された方法およびタスクの結果は、固体メモリチップおよび/または磁気ディスク等の物理的記憶デバイスを異なる状態に変換することによって、持続的に記憶され得る。