(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主体金具の先端孔の内径Xと、前記絶縁体の部位のうち前記先端孔に対向する部位の外径Yとは、0mm<X−Y≦1.0mmを満たす、請求項1に記載の点火プラグ。
前記中心電極は、前記軸線方向において前記絶縁体の前記先端から長さH/2までの範囲に、自身の前記後端側より外径が大きい部位を有する、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の点火プラグ。
前記絶縁体は、前記軸線方向において前記絶縁体の前記先端から長さH/2までの範囲に、前記先端側に向かうに従って外径が小さくなる部位を有する、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の点火プラグ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の点火装置では、非平衡プラズマの生成量を増加させることによって着火性を向上させる観点から、点火プラグの絶縁体が燃焼室へとより長く突出していることが効果的である。しかしながら、点火プラグの絶縁体が燃焼室に突出するほど燃焼熱によって絶縁体が加熱されやすくなり、絶縁体の温度が過剰に上昇した場合、その絶縁体の熱により混合気が着火することによって、意図する燃焼タイミングより早く混合気が着火する過早着火(プレイグニッション)が発生するという課題があった。過早着火は、内燃機関を損傷させる要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態は、先端側から後端側へと軸線方向に延びた中心電極と;有底筒状を成し、前記中心電極の先端を内包する絶縁体と;前記軸線方向に延びた筒状を成し、前記先端側に前記絶縁体が突出する状態で前記絶縁体を保持する主体金具とを備える点火プラグを提供する。この点火プラグにおいて、前記絶縁体の部位のうち前記主体金具から前記先端側に突出する部位の体積V1は、45mm
3以上であり;前記軸線方向において前記絶縁体が前記主体金具から前記先端側に突出する長さHを基準とするとき、前記絶縁体の部位のうち前記軸線方向において前記絶縁体の先端から長さH/2までの部位の体積V2は、0.18≦V2/V1≦0.37を満たす。この形態によれば、0.18≦V2/V1を満たすことによって絶縁体の先端からの熱引きを十分に確保できるため、絶縁体の熱による過早着火の発生を防止できる。また、V2/V1≦0.37を満たすことによって、カーボンの堆積を防止できる程度に絶縁体の温度を維持できるため、絶縁体へのカーボンの堆積による非平衡プラズマの生成量の低下を防止できる。これらの結果、過早着火を防止しつつ着火性を向上させることができる。
【0007】
(2)上記形態の点火プラグにおいて、前記主体金具の先端孔の内径Xと、前記絶縁体の部位のうち前記先端孔に対向する部位の外径Yとは、0mm<X−Y≦1.0mmを満たしてもよい。この形態によれば、絶縁体から主体金具を通じた熱引きを向上させることができる。したがって、絶縁体の熱による過早着火の発生をいっそう防止できる。
【0008】
(3)上記形態の点火プラグにおいて、前記長さHは、9.7mm以下であり、前記絶縁体は、前記主体金具から突出し、第1の外径を有する第1の外径部と;前記第1の外径より小さな第2の外径Dを有し、前記絶縁体における前記第1の外径部より前記先端側を構成する第2の外径部と;を含み、前記軸線方向における前記第2の外径部の長さLは、D/L≦0.75を満たしてもよい。この形態によれば、振動による絶縁体の損傷を防止できる。言い換えると、絶縁体の耐振動性を向上させることができる。
【0009】
(4)上記形態の点火プラグにおいて、前記中心電極は、前記軸線方向において前記絶縁体の前記先端から長さH/2までの範囲に、自身の前記後端側より外径が大きい部位を有してもよい。この形態によれば、絶縁体の先端側において非平衡プラズマの生成量を増加させることができる。
【0010】
(5)上記形態の点火プラグにおいて、前記絶縁体は、前記軸線方向において前記絶縁体の前記先端から長さH/2までの範囲に、前記先端側に向かうに従って外径が小さくなる部位を有してもよい。この形態によれば、絶縁体の耐振動性を向上させることができる。
【0011】
(6)本発明の一形態は、点火装置を提供する。この点火装置は、上記形態の点火プラグと;交流電圧または複数回のパルス電圧を前記中心電極に印加することによって、前記絶縁体の表面に非平衡プラズマを発生させる電圧印加部とを備える。この形態によれば、過早着火を防止しつつ、非平衡プラズマによる着火性を向上させることができる。
【0012】
本発明は、点火プラグおよび点火装置とは異なる種々の形態で実現可能であり、例えば、点火プラグの部品、ならびに点火方法などの形態で実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態
A1.点火装置の構成
図1は、点火装置20の構成を示す説明図である。点火装置20は、内燃機関90の燃焼室92における混合気に点火する装置である。点火装置20は、点火プラグ10と、電圧印加部22とを備える。
【0015】
点火装置20の点火プラグ10は、内燃機関90に取り付けられている。点火プラグ10の先端は、燃焼室92の内側に露出している。点火プラグ10の後端は、電圧印加部22と電気的に接続されている。点火プラグ10の詳細についは後述する。
【0016】
点火装置20の電圧印加部22は、交流電圧または複数回のパルス電圧を点火プラグ10に印加する。これによって、点火プラグ10の先端において、非平衡プラズマが発生する。この非平衡プラズマによって、燃焼室92における混合気が着火する。本実施形態では、電圧印加部22は、鉛蓄電池から供給される電力を用いて、点火プラグ10に電圧を印加する。
【0017】
A2.点火プラグの構成
図2は、点火プラグ10の構成を示す説明図である。
図2には、点火プラグ10の軸線ALを境界として、紙面右側に点火プラグ10の外観形状が図示され、紙面左側に点火プラグ10の断面形状が図示されている。本実施形態の説明では、点火プラグ10における
図2の紙面下側を「先端側」といい、
図2の紙面上側を「後端側」という。
【0018】
図2には、XYZ軸が図示されている。
図2のXYZ軸は、互いに直交する3つの空間軸として、X軸、Y軸およびZ軸を有する。本実施形態では、Z軸は、点火プラグ10の軸線ALに沿った軸である。X軸に沿ったX軸方向のうち、+X軸方向は、紙面手前から紙面奥に向かう方向であり、−X軸方向は、+X軸方向に対する逆方向である。Y軸に沿ったY軸方向のうち、+Y軸方向は、紙面右側から紙面左側に向かう方向であり、−Y軸方向は、+Y軸方向に対する逆方向である。Z軸に沿ったZ軸方向(軸線方向)のうち、+Z軸方向は、先端側から後端側に向かう方向であり、−Z軸方向は、+Z軸方向に対する逆方向である。
図2のXYZ軸は、他の図におけるXYZ軸に対応する。
【0019】
点火プラグ10は、中心電極100と、絶縁体200と、主体金具300とを備える。本実施形態では、点火プラグ10の軸線ALは、中心電極100と、絶縁体200と、主体金具300などの各部材の軸線でもある。
【0020】
点火プラグ10の中心電極100は、導電性を有する部材である。本実施形態では、中心電極100は、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル合金(例えば、インコネル600(「INCONEL」は登録商標))から主に成る。中心電極100は、先端側から後端側へと軸線方向に延びた形状を成す。本実施形態では、中心電極100は、軸線ALを中心に延びた棒状を成す。
【0021】
中心電極100は、絶縁体200の内側に設けられている。本実施形態では、中心電極100は、シール材160および端子180を介して絶縁体200の後端側へと電気的に接続されている。シール材160は、絶縁体200の内側に設けられ、中心電極100と端子180との間を接続する導体である。端子180は、絶縁体200から後端側へ突出し、電圧印加部22へと接続される導体である。中心電極100は、シール材160および端子180を介して電圧印加部22から電圧の印加を受ける。
【0022】
点火プラグ10の絶縁体200は、電気絶縁性を有する部材である。本実施形態では、絶縁体200は、絶縁性材料(例えば、アルミナ)を焼成したセラミックスである。絶縁体200は、先端側に底を有する有底筒状を成す。絶縁体200は、中心電極100の先端を内包する。本実施形態では、絶縁体200は、軸線ALを中心に延びた軸孔290を有する。本実施形態では、軸孔290には、先端側から順に、中心電極100、シール材160および端子180が設けられている。
【0023】
点火プラグ10の主体金具300は、導電性を有する部材である。本実施形態では、主体金具300は、低炭素鋼から主に成る。主体金具300は、軸線方向に延びた筒状を成す。主体金具300は、先端側に絶縁体200が突出する状態で絶縁体200を保持する。本実施形態では、主体金具300は、パッキン410を介して絶縁体200の先端側を保持する。本実施形態では、主体金具300は、リング420とリング440との間に充填された滑石粉末430を介して、絶縁体200の後端側を保持する。本実施形態では、主体金具300は、先端部310と、雄ねじ部320と、胴部330と、工具係合部340とを有する。
【0024】
主体金具300の先端部310は、主体金具300の先端を構成する。本実施形態では、先端部310は、X軸およびY軸に沿った+Z軸方向を向いた平面である。本実施形態では、先端部310は、中空円状の平面である。先端部310の中央からは、絶縁体200が先端側に突出する。
【0025】
主体金具300の雄ねじ部320は、先端部310より後端側に形成され、雄ねじが外周に形成された円筒状の部位である。雄ねじ部320が内燃機関90に形成された雌ねじ(図示しない)に嵌まり合うことによって、点火プラグ10は、内燃機関90に固定される。本実施形態では、雄ねじ部320の呼び径は、M14である。他の実施形態では、雄ねじ部320の呼び径は、M14より小さくてもよいし(例えば、M10,M12)、M14より大きくてもよい。
【0026】
主体金具300の胴部330は、雄ねじ部320より後端側に形成され、雄ねじ部320より外周方向に張り出した部位である。点火プラグ10を内燃機関90に取り付けた状態で、胴部330は、内燃機関90に対してガスケット500を押し当てる。
【0027】
主体金具300の工具係合部340は、胴部330より後端側に形成され、外周方向に多角形状に張り出した部位である。工具係合部340は、点火プラグ10を内燃機関90に取り付けるための工具(図示しない)に係合する形状を成す。本実施形態では、工具係合部340の外周形状は、六角形を成す。
【0028】
図3は、点火プラグ10の詳細構成を示す説明図である。
図3には、点火プラグ10の先端側における詳細構成が図示されている。
【0029】
図3に示す長さHは、軸線方向において絶縁体200が主体金具300から先端側に突出する長さである。非平衡プラズマの生成量を増加させる観点から、絶縁体200の部位のうち主体金具300から先端側に突出する部位の体積V1は、45mm
3以上であることが好ましい。
【0030】
絶縁体200の熱による過早着火の発生を防止する観点から、絶縁体200の部位のうち軸線方向において絶縁体200の先端から長さH/2までの部位の体積V2は、0.18≦V2/V1を満たすことが好ましい。また、絶縁体200へのカーボンの堆積による非平衡プラズマの生成量の低下を防止する観点から、体積V2は、V2/V1≦0.37を満たすことが好ましい。
【0031】
図3に示す内径Xは、主体金具300の先端孔390の内径である。
図3に示す外径Yは、絶縁体200の部位のうち先端孔390に対向する部位の外径である。絶縁体200から主体金具300を通じた熱引きを向上させる観点から、径差(X−Y)は、0mmより大きく、1.0mm以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態では、絶縁体200は、主体金具300から突出した突出部として、元部210と、先部220とを有する。絶縁体200の元部210は、外径Yを有する第1の外径部である。絶縁体200の先部220は、外径Yより小さな外径Dを有し、元部210より先端側を構成する第2の外径部である。
図3の長さLは、軸線方向における先部220の長さであり、元部210へと繋がる曲面Rまでの長さである。振動による絶縁体200の損傷を防止する観点から、長さHは9.7mm以下であるとともに、比D/Lは0.75以下であることが好ましい。
【0033】
図3に示すDcは、中心電極100の軸径である。
図3に示す長さLcは、軸線方向において中心電極100が主体金具300から先端側に突出する長さである。
【0034】
A3.評価試験
図4は、点火プラグの耐熱性および耐汚損性を評価した結果を示す表である。
図4の評価試験では、試験者は、相互に仕様が異なる複数の点火プラグである試料S1〜S12を用意した。試料S1〜S12は、各部の寸法が異なる点を除き、点火プラグ10と同様である。
図4に各試料の仕様として示す項目は、点火プラグ10として説明した同じ符号の項目に対応する。各試料の「金具呼び径」は、主体金具の雄ねじ部に形成されている雄ねじの呼び径である。
【0035】
試験者は、各試料に対して耐熱評価を行った。耐熱評価では、試験者は、排気量1.6リットルの4気筒DOHCエンジンに各試料を取り付けた後、標準の点火時期から所定角度ずつ点火時期を進角させながら、点火時期ごとに2分間、エンジンを運転した。エンジンを運転している間、試験者は、各試料に印加される電流の波形に基づいてプレイグニッション(過早着火)の有無を確認した。なお、プレイグニッションが発生する進角が大きいほど、その試料は、プレイグニッションが発生しにくい点火プラグ、すなわち、耐熱性に優れた点火プラグである。
【0036】
試験者は、次の評価基準に基づいて各試料の耐熱性を評価した。
<耐熱性の評価基準>
優(◎):進角+4°までプレイグニッション発生なし。
良(○):進角+2°までプレイグニッション発生なし。
不可(×):進角+2°までにプレイグニッション発生あり。
【0037】
体積比V2/V1が0.18未満である試料S1については、進角+2°でプレイグニッションが発生したことから、耐熱性が不十分であることがわかった。この結果は、絶縁体200の先端側の体積V2が、体積V1および燃焼熱との関係で小さすぎたために、絶縁体200の先端側が過剰に加熱されたことに起因すると考えられる。
【0038】
体積比V2/V1が0.18以上である試料S2〜S12については、進角+2°までにプレイグニッションが発生せず、さらに進角+4°までプレイグニッションが発生しないものもあり、耐熱性を確保できることがわかった。この結果は、絶縁体200の先端側の体積V2が、体積V1および燃焼熱との関係で適度に確保されていたために、絶縁体200の先端側が過剰に加熱される前に、後端側へと効果的に熱を逃すことができたことに起因すると考えられる。
【0039】
体積比V2/V1が0.18以上である試料S2〜S12のうち、径差(X−Y)が1.0mm以下である試料S2,S3,S5〜S10,S12については、進角+4°までプレイグニッションが発生せず、耐熱性を十分に確保できることがわかった。この結果は、絶縁体200と主体金具300との隙間が試料S4,S11と比較して狭かったために、絶縁体200から主体金具300へと効果的に熱を逃すことができたことに起因すると考えられる。
【0040】
試験者は、耐熱評価とは別に、各試料に対して耐汚損評価を行った。耐汚損評価では、−10℃の低温試験室に設置されたシャシダイナモメータに、排気量1.6リットルの4気筒DOHCエンジンを搭載した車両を配置し、そのエンジンに各試料を取り付けた。その後、試験者は、次の一連の運転パターンを1サイクルとして、その運転パターンを10サイクル繰り返した。
【0041】
<運転パターン>
運転1:3回の空吹かしを行った後、3速ギア・速度35km/時で車両を40秒間走行した後、90秒間のアイドリングを挟み、再度、3速ギア・速度35km/時で車両を40秒間走行。その後、エンジンを停止して冷却。
運転2:運転1に次いで、3回の空吹かしを行った後、1速ギア・速度15km/時で車両を20秒間走行することを、30秒間のアイドリングを挟みつつ合計3回実施。その後、エンジンを停止して冷却。
【0042】
試験者は、次の評価基準に基づいて各試料の耐汚損性を評価した。
<耐汚損性の評価基準>
良(○):エンジンの失火が発生することなく10サイクルの運転を達成。
不可(×):10サイクルの運転を達成する前にエンジンの失火が発生。
【0043】
体積比V2/V1が0.37超過である試料S12については、10サイクルの運転を達成する前にエンジンの失火が発生したことから、耐汚損性が不十分であることがわかった。この結果は、絶縁体200の先端側の体積V2が、体積V1および燃焼熱との関係で大きすぎたために、絶縁体200の先端側が十分に加熱されなかったことに起因すると考えられる。絶縁体200の先端側が十分に加熱されない場合、絶縁体200の表面にカーボンが堆積することによって、絶縁体200の表面における非平衡プラズマの生成量が低下する。その結果、エンジンの失火が発生しやすくなる。
【0044】
体積比V2/V1が0.37以下である試料S1〜S11については、エンジンの失火が発生することなく10サイクルの運転を達成できたことから、耐汚損性を確保できることがわかった。この結果は、絶縁体200の先端側の体積V2が、体積V1および燃焼熱との関係で適度に確保されていたために、絶縁体200の表面に付着したカーボンを焼き切ることが可能な程度にまで、絶縁体200の先端側が十分に加熱されたことに起因すると考えられる。耐汚損性に関しては、径差(X−Y)による影響は見られなかった。
【0045】
図5は、点火プラグの耐振動性を評価した結果を示す表である。
図5の評価試験では、試験者は、
図4の評価試験に用いた試料S1〜S12のうち、耐熱性に優れた試料S2,S3,S5〜S10,S12に対して耐振動評価を行った。耐振動評価では、試験者は、50Nと300Nと間の往復を1サイクルとして15Hzで周期的に変化させた力を、各試料における絶縁体の先端から軸線方向に1mmの位置に繰り返し加えた。
【0046】
試験者は、次の評価基準に基づいて各試料の耐振動性を評価した。
<耐振動性の評価基準>
優(◎):絶縁体に割れが発生することなく15万サイクルに到達。
良(○):10万サイクル以上15万サイクル未満で絶縁体に割れが発生。
不可(×):10万サイクル未満で絶縁体に割れが発生。
【0047】
耐振動評価の結果によれば、長さHが9.7mm以下、かつ、比D/Lが0.75以下である試料S2,S3,S5,S7,S8,S10については、絶縁体に割れが発生することなく15万サイクルに到達したことから、耐振動性を十分に確保できることがわかった。
【0048】
A4.効果
以上説明した第1実施形態によれば、体積V1が45mm
3以上であり、かつ、0.18≦V2/V1≦0.37を満たす。0.18≦V2/V1を満たすことによって絶縁体200の先端からの熱引きを十分に確保できるため、絶縁体200の熱による過早着火の発生を防止できる。また、V2/V1≦0.37を満たすことによって、カーボンの堆積を防止できる程度に絶縁体200の温度を維持できるため、絶縁体200へのカーボンの堆積による非平衡プラズマの生成量の低下を防止できる。これらの結果、過早着火を防止しつつ着火性を向上させることができる。
【0049】
また、0mm<X−Y≦1.0mmを満たすことによって、絶縁体200から主体金具300を通じた熱引きを向上させることができる。したがって、絶縁体200の熱による過早着火の発生をいっそう防止できる。
【0050】
また、長さHが9.7mm以下であり、かつ、D/L≦0.75を満たすことによって、振動による絶縁体200の損傷を防止できる。言い換えると、絶縁体200の耐振動性を向上させることができる。
【0051】
B.第2実施形態
図6は、第2実施形態における点火プラグ10Bの詳細構成を示す説明図である。
図6には、点火プラグ10Bの先端側における詳細構成が図示されている。第2実施形態の点火プラグ10Bは、中心電極100に代えて中心電極100Bを備える点、ならびに、絶縁体200に代えて絶縁体200Bを備える点を除き、第1実施形態の点火プラグ10と同様である。
【0052】
点火プラグ10Bの絶縁体200Bは、元部210および先部220に代えて突出部210Bを有する点、ならびに、軸孔290に代えて軸孔290Bを有する点を除き、第1実施形態の絶縁体200と同様である。絶縁体200Bの突出部210Bは、主体金具300から突出した部位である。本実施形態では、突出部210Bの外径Dは、絶縁体200Bの部位のうち先端孔390に対向する部位の外径Yに等しい。絶縁体200Bの軸孔290Bは、先端側で孔径が拡張した形状を成す点を除き、第1実施形態の軸孔290と同様である。
【0053】
点火プラグ10Bの中心電極100Bは、導電性を有する部材である。中心電極100Bは、絶縁体200Bの内側に設けられている。本実施形態では、中心電極100Bは、絶縁体200Bの軸孔290Bに導電性粉末を充填することによって形成されている。中心電極100Bは、先端側から後端側へと軸線方向に延びた形状を成す。本実施形態では、中心電極100Bは、第1実施形態と同様に、シール材160および端子180を介して絶縁体200の後端側へと電気的に接続されている。
【0054】
中心電極100Bは、軸線方向において絶縁体200Bの先端から長さH/2までの範囲に、自身の後端側の外径Dcより外径が大きい大径部110Bを有する。これによって、シール材の外径が先端側まで同じである場合と比較して、絶縁体200Bの先端側において非平衡プラズマの生成量を増加させることができる。
【0055】
非平衡プラズマの生成量を増加させる観点から、絶縁体200Bの部位のうち主体金具300から先端側に突出する突出部210Bの体積V1は、第1実施形態と同様に45mm
3以上であることが好ましい。絶縁体200Bの熱による過早着火の発生を防止する観点から、絶縁体200Bの部位のうち軸線方向において絶縁体200Bの先端から長さH/2までの部位の体積V2は、第1実施形態と同様に、0.18≦V2/V1を満たすことが好ましい。また、絶縁体200Bへのカーボンの堆積による非平衡プラズマの生成量の低下を防止する観点から、体積V2は、第1実施形態と同様に、V2/V1≦0.37を満たすことが好ましい。絶縁体200Bから主体金具300Bを通じた熱引きを向上させる観点から、第1実施形態と同様に、径差(X−Y)は、0mmより大きく1.0mm以下であることが好ましい。
【0056】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、体積V1が45mm
3以上であり、かつ、0.18≦V2/V1≦0.37を満たすため、過早着火を防止しつつ着火性を向上させることができる。また、0mm<X−Y≦1.0mmを満たすことによって、第1実施形態と同様に、絶縁体200Bの熱による過早着火の発生をいっそう防止できる。
【0057】
C.第3実施形態
図7は、第3実施形態における点火プラグ10Cの詳細構成を示す説明図である。
図7には、点火プラグ10Cの先端側における詳細構成が図示されている。第3実施形態の点火プラグ10Cは、絶縁体200に代えて絶縁体200Cを備える点を除き、第1実施形態の点火プラグ10と同様である。
【0058】
点火プラグ10Cの絶縁体200Cは、元部210および先部220に代えて突出部210Cを有する点を除き、第1実施形態の絶縁体200と同様である。絶縁体200Cの突出部210Cは、主体金具300から突出した部位である。突出部210Cは、軸線方向において絶縁体200の先端から長さH/2までの範囲に、先端側に向かうに従って外径が小さくなる部位を有する。本実施形態では、突出部210Cの外径は、先端側に向かうに従って外径Yから外径Dまで小さくなる。これによって、絶縁体200Cの耐振動性を向上させることができる。
【0059】
非平衡プラズマの生成量を増加させる観点から、絶縁体200Cの部位のうち主体金具300から先端側に突出する突出部210Cの体積V1は、第1実施形態と同様に45mm
3以上であることが好ましい。絶縁体200Cの熱による過早着火の発生を防止する観点から、絶縁体200Cの部位のうち軸線方向において絶縁体200Cの先端から長さH/2までの部位の体積V2は、第1実施形態と同様に、0.18≦V2/V1を満たすことが好ましい。また、絶縁体200Cへのカーボンの堆積による非平衡プラズマの生成量の低下を防止する観点から、体積V2は、第1実施形態と同様に、V2/V1≦0.37を満たすことが好ましい。絶縁体200Cから主体金具300を通じた熱引きを向上させる観点から、第1実施形態と同様に、径差(X−Y)は、0mmより大きく、1.0mm以下であることが好ましい。
【0060】
以上説明した第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、体積V1が45mm
3以上であり、かつ、0.18≦V2/V1≦0.37を満たすため、過早着火を防止しつつ着火性を向上させることができる。また、0mm<X−Y≦1.0mmを満たすことによって、第1実施形態と同様に、絶縁体200Cの熱による過早着火の発生をいっそう防止できる。
【0061】
D.他の実施形態
本発明は、上述した実施形態、実施例および変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、実施形態、実施例および変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えおよび組み合わせを行うことが可能である。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除することが可能である。