(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6114811
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ねじ締め機
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
B23P19/06 J
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-247811(P2015-247811)
(22)【出願日】2015年12月18日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂根 圭
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−035945(JP,A)
【文献】
特開平01−177932(JP,A)
【文献】
実開昭62−088534(JP,U)
【文献】
特開昭57−168875(JP,A)
【文献】
国際公開第83/002246(WO,A1)
【文献】
特開昭57−102727(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/000858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00 − 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークへ螺入するねじに係合可能なビットを所定の回転速度で駆動可能なビット回転モータと、このビット回転モータを上部に固定したプレートを前記ビットの延びる方向へ往復移動自在な往復移動手段と、前記プレートの下部に固定され前記ビットを挿通したスライドハウジングと、前記ビットを挿通しかつ前記スライドハウジング内を摺動自在に配されたスクリューガイドと、このスクリューガイドの軸周りに配されたストッパ部材を連結して成りこのストッパ部材を押圧して前記スクリューガイドの移動を停止可能なストッパ手段とを備えたねじ締め機において、
前記スクリューガイドを前記ビットに対して相対的に移動させる相対移動手段を備えて成り、
前記相対移動手段は、圧縮エアを前記スライドハウジングの内部へ供給して成ることを特徴とするねじ締め機。
【請求項2】
前記スクリューガイドは、これを常時ビット回転モータ側へ付勢して前記ビットを突出させる弾性部材に係合して成り、
前記相対移動手段は、前記弾性部材の付勢力に抗する方向へ前記スクリューガイドを摺動し、前記ビットをスクリューガイド内へ相対移動して成ることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【請求項3】
前記相対移動手段は、圧縮エアを供給することで前記ビットの延びる方向へ往復移動する直動シリンダとし、この直動シリンダに前記スクリューガイドを接続して構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のねじ締め機。
【請求項4】
前記相対移動手段、前記ストッパ手段、前記往復移動手段は、それぞれの駆動を制御する制御装置へ接続されており、
前記制御装置は、前記相対移動手段を作動してスクリューガイドの先端を前記ビットよりも前方へ位置させた後、前記往復移動手段を作動してスクリューガイドおよび前記ビットを一体に移動させるとともに往復移動手段の位置情報に基づいて前記スクリューガイドの先端がワークと当接する前に前記ストッパ手段を作動して前記スクリューガイドの移動を停止させるよう制御して成ることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のねじ締め機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークにねじを締め付けるねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のねじ締め機は、特許文献1に示すように、ねじに係合するビットを備えたねじ締めツールと、このねじ締めツールをビットの軸方向へ往復移動可能に支持した往復移動手段とを備えて成る。前記ねじ締めツールは、前記ビットを接続し所定の速度で回転駆動可能なビット回転モータと、前記ビットを挿通しかつ前記ねじをエア吸引可能なスクリューガイドと、このスクリューガイドをビットの軸方向へ摺動自在に支持したスライドハウジングと、このスライドハウジング内に配置され前記スクリューガイドをビットの先端側へ常時付勢するスプリングとを備えて成る。また、前記往復移動手段は、前記ビットを予め設定した推力となるように往復移動可能に構成される。
【0003】
さらに、従来のねじ締め機は、前記ねじを吊り下げて保持可能なチャックユニットを備えて成り、前記チャックユニットは、前記スクリューガイドを挿通可能なチャック本体と、このチャック本体に取り付けられた揺動自在な一対のチャック爪とを備えて成る。前記チャック爪は、これらが閉じた状態となるように常時付勢されており、この閉じた状態でねじ供給機から供給されたねじを吊り下げて保持可能に構成される。
【0004】
このように構成した従来のねじ締め機は、前記往復移動手段によって往復移動するスクリューガイド先端が閉じた状態のチャック爪に当接すると、前記チャック爪は開く方向へ揺動する。これにより、前記スクリューガイドは、これに内包した状態のビットとともにワークへ接近する方向に移動しワークの表面に当接するため、前記スプリングが圧縮する方向に撓む。よって、ビットは、ワークに当接し停止したスクリューガイドに対して相対移動を始め、スクリューガイド内に吸引保持したねじを所定の推力により押圧してワークへのねじ締めを行う。
【0005】
また、特許文献2に示す従来のねじ締め機は、前記チャックユニットの上方にストッパ手段を配置して成り、このストッパ手段は、前記往復移動手段により往復移動するスクリューガイドをワークの表面に当接させる前に停止可能に構成されている。これにより、スクリューガイドの先端とワークの表面とが当接しないため、ワークを傷付けることがない。
【0006】
また、特許文献3に示す従来のねじ締め機は、前記スクリューガイドと前記ビットとの往復移動をそれぞれ個別に駆動制御可能に構成されており、前記スクリューガイドを固定したプレートを前記ビットの延びる方向へ往復移動可能な往復移動手段と、前記プレートに配されビットのみを往復移動可能なビット往復移動手段と、これら往復移動手段およびビット往復移動手段をそれぞれ制御する制御装置とを備えて成る。前記往復移動手段および前記ビット往復移動手段は、何れも所定の回転速度および回転角度によって回転駆動可能なACサーボモータを備えて成り、これら2つのACサーボモータは、それぞれ前記制御装置に接続されている。これにより、特許文献3に示す従来のねじ締め機は、前記往復移動手段を駆動制御してスクリューガイドおよびビットを一体に所定の位置まで移動させた後、前記ビット往復移動手段を駆動制御してビットのみをさらに所定の位置へ移動させることができる。よって、特許文献3に示す従来のねじ締め機は、スクリューガイドの停止位置を任意設定できるので、複数の段差を有するワークなどへのねじ締め作業に対応できるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5711550号公報
【特許文献2】特開2000-190142号公報
【特許文献3】特開2015-20245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
まず、上述した従来のねじ締め機は、何れもチャックユニットを備えるため、移動するスクリューガイドの先端により閉じた状態のチャック爪を押し開く必要がある。仮に前記スプリングのばね定数が低い場合、前記スクリューガイドが閉じた状態のチャック爪に当接しても開く方向へ揺動させることができず、スクリューガイドは、この位置に留まり前記スプリングが撓み始める。このスプリングの撓み開始に合わせて前記ビットは、スクリューガイドに対して相対移動を始めるため、往復移動手段の設定推力を発揮しつつスクリューガイド内に吸引したねじの頭部を前記チャック爪に押し当てる。これにより、閉じた状態のチャック爪は、スクリューガイドの先端から飛び出たねじの頭部によって開かれ、前記ねじをワークに落下させる。つまり、従来のねじ締め機は、スクリューガイドがチャックユニットを通過する際、前記ねじを弾き出すという問題があった。
【0009】
そこで、この問題を解決するには前記スプリングのばね定数を高く設定することが考えられる。しかし、この場合、スクリューガイドがワークに当接してからねじ締付け完了までの間、ワークにはスプリングの高い反発力と、前記往復移動手段によって付与されるビットの設定推力とを加えた高い押圧力が加わる。つまり、従来のねじ締め機は、上述した高い押圧力をワークに加えるため、押圧力に弱い樹脂製のワークなどのねじ締め作業に対応できないという問題もあった。
【0010】
また、特許文献2に示す従来のねじ締め機は、スクリューガイドの先端がワークの表面に当接する前に前記ストッパ手段により停止するので、ワークへ必要以上推力を付与することが無い。しかしながら、前記ストッパ手段は、前記スプリングによる高い反発力を螺子締め完了までの間、受け続けてしまうという問題もあった。さらに、特許文献2に示す従来のねじ締め機は、多段面のねじ締めポイントを備えたワークに対応するには、前記ストッパ手段をスクリューガイドの軸周りに数多く配置しなければならない。よって、小型化・軽量化が難いという問題もあった。
【0011】
さらに、特許文献3に示す従来のねじ締め機は、前記往復移動手段およびビット往復移動手段にそれぞれACサーボモータを配置しているため、低コスト化が難しいという問題もあった。さらに、2つのACサーボモータを駆動制御しなければならないため、制御が煩雑になるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、ワークへ螺入するねじに係合可能なビットを所定の回転速度で駆動可能なビット回転モータと、このビット回転モータを上部に固定したプレートを前記ビットの延びる方向へ往復移動自在な往復移動手段と、前記プレートの下部に固定され前記ビットを挿通したスライドハウジングと、前記ビットを挿通しかつ前記スライドハウジング内を摺動自在に配されたスクリューガイドと、このスクリューガイドの軸周りに配されたストッパ部材を連結して成りこのストッパ部材を押圧して前記スクリューガイドの移動を停止可能なストッパ手段とを備えたねじ締め機において、前記スクリューガイド
を前記ビット
に対して相対的に移動させる相対移動手段
を備えて成り、前記相対移動手段は、圧縮エアを前記スライドハウジングの内部へ供給して成ることを特徴とする。なお、前記スクリューガイドは、これを常時ビット回転モータ側へ付勢して前記ビットを突出させる弾性部材に係合して成り、前記相対移動手段は、前記弾性部材の付勢力に抗する方向へ前記スクリューガイドを摺動し、前記ビットをスクリューガイド内へ相対移動して成ることが好ましい。また、前記相対移動手段は
、圧縮エアを供給することで前記ビットの延びる方向へ往復移動する直動シリンダとし、この直動シリンダに前記スクリューガイドを接続して構成してもよい。さらに、前記相対移動手段、前記ストッパ手段、前記往復移動手段は、それぞれの駆動を制御する制御装置へ接続されており、前記制御装置は、前記相対移動手段を作動してスクリューガイドの先端を前記ビットよりも前方へ位置させた後、前記往復移動手段を作動してスクリューガイドおよび前記ビットを一体に移動させるとともに往復移動手段の位置情報に基づいて前記スクリューガイドの先端がワークと当接する前に前記ストッパ手段を作動して前記スクリューガイドの移動を停止させるよう制御して成ることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のねじ締め機は、前記スクリューガイドをビットの先端側へ押し付けるよう摺動可能な相対移動手段を備えるため、チャックユニット内を通過するスクリューガイドに外力が加わっても、この外力に打ち勝つだけの押圧力をスクリューガイドは発揮している。これにより、本発明のねじ締め機は、前記スクリューガイドがチャックユニットを通過する際に生じる外力に打ち勝ち押し戻され難いため、スクリューガイド内にねじの頭部を収めた状態でチャックユニット内を通過できる。よって、従来のようにねじがチャックユニットから弾き飛ばされるような不具合の発生を低減できるという利点がある。
【0014】
また、本発明のねじ締め機は、スクリューガイドを常時ビット回転モータ側へ付勢して前記ビットを突出させる弾性部材と、この弾性部材の付勢力に抗する方向へ前記スクリューガイドを摺動させる相対移動手段とを備える。これにより、前記ストッパ手段によりスクリューガイドの移動を停止させた直後に、スクリューガイドの移動力を前記弾性部材の付勢力程度に軽減できる。よって、本発明のねじ締め機は、ストッパ手段によりスクリューガイドを停止させている状態において、ストッパ手段へ過剰な負荷を掛けることが無く従来に比べてストッパ手段の寿命を延長できるという利点もある。
【0015】
さらに、本発明のねじ締め機は、スクリューガイドの摺動動作(前述の相対移動)を圧縮エアの切り替えにより実現可能なため、特許文献3の従来のねじ締め機のように2つのACサーボモータを備える構成に比べて安価にできるという利点もある。しかも、本発明のねじ締め機は、前記相対移動手段を前記スライドハウジングの内部へ圧縮エアを供給する構成であるので、2つのACサーボモータを備える構成に比べて小型化・軽量化が可能になるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るねじ締め機の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の動作を説明する要部一部切欠き断面図であり、(a)は原位置状態、(b)はスライドハウジング内に圧縮エアを供給した状態、(c)は往復移動手段を作動してチャックユニットに保持したねじをエア吸引した状態、(d)はストッパ手段を作動してスクリューガイドを停止させた状態、(e)はビットによりワークにねじを締結している状態を示すものである。
【
図3】本発明に係る別の実施形態を示す要部一部切欠き断面図であり、(a)は
図1の引っ張りばねを圧縮ばねにしたもの、(b)はスライドハウジング内へ圧縮エアを供給する構成にしたもの、(c)は直動シリンダを用いたものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のねじ締め機について、
図1ないし
図3に基づき説明する。本発明のねじ締め機1は、ワークWへ締結するねじSに係合可能なビットBを連結したビット回転モータ10と、このビット回転モータ10を固定したプレート21を昇降自在に移動可能な往復移動手段20と、前記ビットBを挿通して成るスクリューガイド50と、このスクリューガイド50を摺動自在に支持するスライドハウジング30とを備えて成る。
【0018】
前記ビット回転モータ10は、前記ビットBを連結した出力軸10cと、この出力軸10cを所定の回転数およびトルクにより回転駆動するモータ部10bと、このモータ部10bの上部に配置され前記出力軸10cの回転角度に応じたパルス信号を発信可能なエンコーダ部10aとから構成される。
【0019】
前記往復移動手段20は、前記ビット回転モータ10と同様の構成であるACサーボモータ(以下、昇降モータ22という)と、この昇降モータ22を固定したモータ固定板25と、このモータ固定板25の下方に並行に配置したチャック固定板26と、前記モータ固定板25および前記チャック固定板26とを連結する連結板27と、前記昇降モータ22の出力軸(図示せず)に連結したボールねじ軸23と、このボールねじ軸23に螺合してボールねじ軸23に沿って回転しつつ摺動自在な可動ナット24と、この可動ナット24を回転自在に支持する前記プレート21とから構成される。前記昇降モータ22は、前記ボールねじ軸23を所定の回転数およびトルクにより回転駆動するモータ部22bと、このモータ部22bの上部に配置され前記ボールねじ軸23の回転角度に応じたパルス信号を発信可能なエンコーダ部22aとを備えて成る。また、前記往復移動手段20は、前記連結板27を接続したロボットアーム110によりワークWの上空を移動することができる。このように構成された往復移動手段20は、前記ボールねじ軸23に沿ってプレート21が昇降可能なため、前記ビットBをその軸線に沿って往復移動可能にしている。
【0020】
前記スクリューガイド50は、その一端に形成した鍔部50aと、この鍔部50aよりも小径の軸部50bとを一体に備えて成る。また、スクリューガイド50は、その軸方向に前記ビットBを挿通可能な挿通穴50cと、この挿通穴50cよりも大径の通気穴50dとを備えて成り、前記通気穴50dが後述する吸引手段70に接続されている。
【0021】
前記スライドハウジング30は、前記スクリューガイド50の鍔部50aを前記ビットBに沿って摺動自在に支持するとともに前記軸部50bをその一端から下方へ常時突出させて成り、前記プレート21の下面に取り付けられている。
【0022】
また、本発明のねじ締め機1は、前記スクリューガイド50の外周を押圧可能なストッパ手段40と、前記スクリューガイド50をビットBに対して相対移動するよう移動可能な相対移動手段60と、締結部品の一例であるねじSを多数貯留しこれを1本ずつエア圧送可能なねじ供給機90と、このねじ供給機90によりエア圧送されたねじSの頭部を吊り下げ保持するチャックユニット80と、前記スクリューガイド50の先端からエア吸引可能な吸引手段70と、前記往復移動手段20、ストッパ手段40、相対移動手段60等の各機器を制御可能な制御手段100とを備えて成る。
【0023】
前記ストッパ手段40は、前記往復移動手段20に取り付けられており、前記スクリューガイド50の軸部50bの軸周りに配置したストッパ部材41を備えて成る。このストッパ部材41は、
図2に示すようにスクリューガイド50の延びる方向とは直交する方向へ往復移動可能に構成されており、スクリューガイド50の先端がワークWに当接する直前の位置でスクリューガイド50の外周を挟持可能に構成される。
【0024】
前記相対移動手段60は、所定圧の圧縮エアを充填したエアタンク63と、このエアタンク63に接続され前記圧縮エアの遮断・供給を切り替え可能な電磁弁61aとを備えて成り、前記電磁弁61aを介して供給される圧縮エアにより前記スクリューガイド50を前記ビットBの先端側へ摺動可能にしている。
【0025】
この相対移動手段60は、
図1および
図2に示す実施形態であれば、前記電磁弁61aが前記スライドハウジング30に接続されており、前記制御手段100の指令を受けて前記圧縮エアをスライドハウジング30内へ供給可能に構成されている。また、この相対移動手段60は、前記スライドハウジング30および前記スクリューガイド50を接続した弾性部材の一例である引っ張りばね62aを備えている。これにより、前記スクリューガイド50は、スライドハウジング30内へ供給された圧縮エアの圧力によって前記鍔部50aが下方へ押圧されるため、前記ビットBに対して相対移動して前記ビットBを内包する。また、スクリューガイド50は、常時は前記圧縮エアがスライドハウジング内に供給されていないので、前記引っ張りばね62aの付勢力によって前記鍔部50aが上方へ引き上げられ、その先端から前記ビットBが突出している。
【0026】
また、
図3(a)に示す別の実施形態の相対移動手段60は、前記引っ張りばね62aを圧縮方向に弾性変形可能な圧縮ばね62bとし、この圧縮ばね62bを前記鍔部50aの下面に常時当接するよう前記スライドハウジング30内に配置して成る。これにより、
図3(a)に示す相対移動手段60は、前記圧縮エアの圧力によって下方へ移動するスクリューガイド50の鍔部50aにより前記圧縮ばね62bが圧縮する方向へ押圧される。
【0027】
さらに、
図3(b)に示す別の実施形態の相対移動手段60は、上述した弾性部材を具備しない構成であり、前記スライドハウジング30の上部および下部にそれぞれ接続した電磁弁61bを備えて成る。前記電磁弁61bは、常時はスライドハウジング30の下部へ前記圧縮エアを供給する一方、スライドハウジング30の上方からスライドハウジング30内の圧縮エアを外部へ解放する経路を有効にしており、前記制御手段の指令を受けて前述の経路を逆方向へ切り替え可能に構成される。
【0028】
また、
図3(c)に示す別の実施形態の相対移動手段60は、前記電磁弁61bに接続した直動シリンダ65と、この直動シリンダ65の可動部65aおよび前記スクリューガイド50の軸部50bを連結した連結部材66とを備えて成る。また、この直動シリンダ65は、前記スライドハウジング30と同様に前記プレート21の下面に取り付けられて成り、常時は前記可動部65aがその本体内に引き込まれた状態となっている。よって、直動シリンダ65が前記電磁弁61bの作動を受けて前記可動部材65aを伸びる方向へ伸長するので、これに連結したスクリューガイド50をビットBに沿って昇降することができる。
【0029】
このように、本発明のねじ締め機1における相対移動手段60は、電磁弁61aまたは電磁弁61bの圧縮エアの経路切り替えにより前記スクリューガイド50をビットBに対して相対移動可能に構成されている。
【0030】
前記チャックユニット80は、前記チャック固定板26の下部に配され前記スクリューガイド50を挿通可能なチャック本体81と、このチャック本体81の先端に揺動自在に配置された一対のチャック爪82(82)と、前記チャック本体81に固定され前記ねじSを通過可能な継手83と、この継手83を通過したねじSを前記チャック爪82へ案内するとともに前記スクリューガイド50の先端に押されて揺動するスイングパイプ84とを備えて成る。
【0031】
前記チャック爪82(82)は、それぞれ常時閉じた状態となるように図示しない付勢部材により付勢されており、前記スクリューガイド50が通過することでそれぞれ開く方向へ揺動するように構成される。また、チャック爪82(82)は、それぞれ閉じた状態であれば、前記ねじSの頭部を支持してねじSの先端をチャック爪82から一部突出させて吊下可能に構成される。次に、前記スイングパイプ84は、常時は前記継手83および閉じた状態のチャック爪82を連通するよう図示しない付勢部材によって付勢されており、スクリューガイド50の先端あるいは外周と接触することで旋回可能に構成される。
【0032】
前記吸引手段70は、前記エアタンク63に接続され前記電磁弁61aと同構造の電磁弁71と、この電磁弁71とスクリューガイド50の前記通気穴50dとを接続したコンバム72とから構成される。前記コンバム72は、前記電磁弁71の圧縮エアを供給されることで前記スクリューガイド50の先端からエアを吸引するように構成されている。
【0033】
このように構成されたねじ締め機1の作用を
図1および
図2(a)ないし(e)に基づき説明する。本発明のねじ締め機1は、前記ロボットアーム110によって所定のねじ締めポイント上空へ移動した後、制御手段100がビット回転モータ10および昇降モータ22を予め設定した回転数およびトルクによってそれぞれ回転駆動すると同時に前記電磁弁61aおよび前記電磁弁71もそれぞれ作動させる。これにより、前記スクリューガイド50は、
図2(a)に示す位置から
図2(b)の位置へ移動し、ビットBの先端を内包し奥方へ引き込んだ状態とする。また、この時、引っ張りばね62aは所定の長さまで延びた状態となりスクリューガイド50を上方へ引き上げようとしているものの、スクリューガイド50は、この引っ張りばね62aの引き上げ力に勝る圧力の圧縮エアによって下方へ押圧されているので、前述のようにビットBを引き込んだ状態に保つ。
【0034】
次に、スクリューガイド50およびビットBが一体に下降すると、
図2(c)に示すようにスクリューガイド50の先端および外周に前記スイングパイプ84およびチャック爪82(82)が順に当接する。これにより、スイングパイプ84が旋回するとともに、チャック爪82(82)が開く方向へ揺動して
図2(d)に示す状態となる。つまり、前記スクリューガイド50は、スイングパイプ84を旋回およびチャック爪82(82)を開く方向へ揺動させる際、前記スイングパイプ84およびチャック爪82(82)の外力を受けてビット回転モータ10側へ押し戻される方向に押圧される。しかし、前記スライドハウジング30内に供給されている圧縮エアが、前述の外力に十分打ち勝つ圧力となっているため、従来のようにスクリューガイド50がチャックユニット80を通過する際に相対移動することが無い。
【0035】
また、スクリューガイド50によってスイングパイプ84が旋回すると、チャック爪82に吊下されたねじSは、前記電磁弁71に接続されたコンバム72が生成した負圧によりスクリューガイド50内へ吸引される。その後、スクリューガイド50およびビットBは、吸引したねじSとともに
図2(d)の位置まで下降する。ここで、前記ストッパ手段40が作動するので、前記ストッパ部材41が下降中のスクリューガイド50の外周を挟持してスクリューガイド50のみの下降を規制する。
【0036】
なお、制御手段100は、前記昇降モータ22から発信されたパルス信号と、予め設定されているボールねじ軸23のリード角とに基づいて前記制御手段100により算出したプレート21の昇降位置、つまり、ビットBの先端位置を都度算出しており、この算出したビットBの先端位置をストッパ手段40の作動タイミングとしている。この作動タイミングは、ねじ締めポイント毎に予め設定されており、前記スクリューガイド50の先端位置がワークWの上面に当接する直前になるように制御手段100に登録されている。
【0037】
また、前記制御手段100は、前記ストッパ手段40の作動を確認した後、前記電磁弁61aへ指令を送り前記スライドハウジング30内への圧縮エアの供給を停止する。よって、前記ストッパ手段40は、前記引っ張りばね62aの付勢力のみ受けた状態でスクリューガイド50を挟持できるので、前記圧縮エアの影響が除かれた比較的弱い押圧力しか受けない。なお、
図3(a)に示すねじ締め機1は、前述した
図1および
図2に示すねじ締め機とは構造が異なるものの、このような弾性部材のみが発揮する比較的弱い押圧力とする構造である。
【0038】
前記昇降モータ22は、上述のストッパ手段40によりスクリューガイド50の移動を規制した後も引き続き回転駆動しているため、前記ビット回転モータ10の駆動により回転しているビットBのみをさらに下降させ、前記ねじSをスクリューガイド50の先端から所定の推力によって押し出している。これにより、ねじSは、ワークWに接触して所定の推力および回転力を発揮するビットBによって締結される。
【符号の説明】
【0039】
1 ねじ締め機
20 往復移動手段
22 昇降モータ
30 スライドハウジング
40 ストッパ手段
50 スクリューガイド
60 相対移動手段
61a 電磁弁
61b 電磁弁
62a 引っ張りばね
62b 圧縮ばね
65 直動シリンダ
100 制御手段
【要約】
【課題】数多くの段差を有するワークへのねじ締め作業に対応できかつ安価なねじ締め機の提供。
【解決手段】ワークWへ螺入するねじSに係合可能なビットBを所定の回転速度で駆動可能なビット回転モータ10と、このビット回転モータ10を上部に固定したプレート21をビットBの延びる方向へ往復移動自在な往復移動手段20と、プレート21の下部に固定されビットBを挿通したスライドハウジング30と、ビットBを挿通しかつスライドハウジング30内を摺動自在に配されたスクリューガイド50と、スクリューガイド50の軸周りに配されたストッパ部材41を連結して成りこのストッパ部材41を押圧してスクリューガイド50の移動を停止可能なストッパ手段40とを備える。また、スクリューガイド50は、ビットBの先端を内包するよう摺動する相対移動手段60に接続されている。
【選択図】
図1