(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114902
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】軽鎖架橋二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20170410BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20170410BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
C12N15/00 AZNA
C07K16/46
C07K16/28
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-550457(P2014-550457)
(86)(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公表番号】特表2015-508400(P2015-508400A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】US2012071780
(87)【国際公開番号】WO2013101909
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】61/580,491
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507275235
【氏名又は名称】ディヴェロップメント センター フォー バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100113402
【弁理士】
【氏名又は名称】前 直美
(72)【発明者】
【氏名】スー, ユ−シェン
(72)【発明者】
【氏名】シェウ, ショウ−シャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ミン−アイ
(72)【発明者】
【氏名】ロ−, チェン−カイ
【審査官】
福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/047180(WO,A1)
【文献】
Int J Mol Med, 2010, vol.25, no.2, p.209-215
【文献】
Protein Eng Des Sel, 2010, vol.23, no.4, p.221-228
【文献】
MAbs, 2010, vol.2, no.3, p.309-319
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の第一の標的に対する特異性を有する第一の標的指向化ドメイン;
免疫グロブリンの軽鎖の定常部に由来する架橋ドメインであって、全長軽鎖定常ドメインを含む架橋ドメイン;及び
目的の第二の標的に対する特異性を有する第二の標的指向化ドメイン
を含む単一のポリペプチドからなる、二重特異性融合タンパク質。
【請求項2】
前記架橋ドメインのN末端又はC末端に融合されたリンカーをさらに含む、請求項1記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項3】
前記第一の標的指向化ドメインが、前記架橋ドメイン又は前記リンカーに融合され、前記第二の標的指向化ドメインが、前記架橋ドメイン又は前記リンカーに融合されている、請求項1又は2記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項4】
前記免疫グロブリンがヒト免疫グロブリンである、請求項1〜3のいずれか1項記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項5】
前記架橋ドメインがカッパ鎖又はラムダ鎖である、請求項4記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項6】
前記リンカーがGGGGS配列を含む、請求項2〜5のいずれか1項記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項7】
前記第二の標的指向化ドメインがTリンパ球活性化ドメインである、請求項1〜6のいずれか1項記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項8】
前記目的の第一の標的がCD20、Her2/neu又はEpCAMである、請求項1〜7のいずれか1項記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項9】
前記第一の標的指向化ドメインが、前記目的の第一の標的に対する特異性を有する第一のScFvを含み、前記第二の標的指向化ドメインが、前記目的の第二の標的に対する特異性を有する第二のScFvを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項10】
前記第一のScFv及び前記第二のScFvの各々がヒト配列を含む、請求項9記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項11】
前記第一のScFvが、第一の抗原に対する結合特異性を有するVH−リンカー−VL又はVL−リンカー−VHを含み、前記第二のScFvが、第二の抗原に対する結合特異性を有するVH−リンカー−VL又はVL−リンカー−VHを含む、請求項9又は10記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項12】
前記リンカーがGGGGS配列を含む、請求項11記載の二重特異性融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年12月27日に出願された仮出願第61/580,491号の利益を請求するものであり、同出願の開示はその全体が参照によりここに包含される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、二重特異性抗体のような二重特異性又は多重特異性生体分子を製造する方法、及びその生成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
異なる機能を有する生物学的分子を一緒にすることは、所望の特性又は改良された特性を有する新規な分子をもたらし得る。たとえば、二重特異性抗体及び二重特異性腫瘍標的指向化Tリンパ球エンゲージャー(engagers)を含む多重特異性抗体における最近の進歩により、免疫学的活性化特性を有する多重特異性分子はモノクローナル抗腫瘍治療と比較して強化された腫瘍治療効率をしばしばもたらすことが明らかにされている。
【0004】
たとえば、二重特異性抗体(BsAb)は、異なる抗体由来の二つの異なる結合ドメイン(すなわち可変領域)のフラグメントから構成されていてもよい。その二つの異なる結合ドメインは、二つの異なるタイプの抗原に結合することができる。これらの分子は、がんの免疫治療のような臨床治療において適用を見出す可能性がある。このような適用のために、BsAbsは、細胞傷害性細胞(レセプター様CD3(Kurby immunology. San Francisco:W.H. Freeman. ISBN 1−492−0211−4)を用いて)及びがん細胞のような標的(たとえば、がん細胞上の抗原)に同時に結合するように設計することができる。
【0005】
二重特異性又は多重特異性タンパク質の構築は、複数のタンパク質ドメインの融合を含む。しかし、このような融合は、融合パートナー間で異なる生化学的及び/又は生理学的特性のために融合パートナー間の不適合性を引き起こし得る。さらに、腎臓のろ過又は循環経路の透過性を含む生理学的限界もまた、医学的に利用可能な多重特異性腫瘍標的指向化分子の設計に挑戦するものとなり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明の実施態様は、臨床治療のような生物医学的適用のための免疫活性化特性を有する二重特異性又は多重特異性融合タンパク質の新規なフォーマットに関する。これらのタンパク質は、架橋ドメインによって連結された二つの特異的結合ドメイン(標的指向化ドメイン)を含み、一つ又は二つの任意のリンカーを含んでいてもよい。架橋ドメインは、融合タンパク質中の異なるパートナーが適合性であり、所望の生物学的特性を保持することができるように、抗体の免疫グロブリンドメイン由来でもよい。架橋として有用であり得る免疫グロブリンドメインは、軽鎖定常部又は重鎖定常部を含むことができる。このような融合タンパク質は、軽鎖架橋抗体又は重鎖架橋抗体と呼ばれることができる。
【0007】
たとえば、本発明の実施態様に従った二重特異性融合タンパク質は、CD20(Hybridoma. 1983 2;17)、Her2/neu(Am J Clin Pathol 2003 120 (suppl 1); S53)又はEpCAM(J. Immunol. 1992 148 (2); 590)のような抗腫瘍バイオマーカー、細胞標的指向化又は生体分子標的指向化ドメインとしての単鎖連結(linked)Fvフラグメント(ScFv)、架橋としての軽鎖定常部ドメイン、任意のリンカー(これは省略してもよい)、及びTリンパ球活性化ドメインとしての抗CD3 ScFvを含むことができる。このような軽鎖架橋二重特異性免疫活性化因子は、腫瘍発現細胞標的及びTリンパ球の両方に対して結合特異性を示す。両方の標的に対する結合は、腫瘍標的に対して特異的にTリンパ球媒介性細胞傷害性を誘導する。
【0008】
上記の抗腫瘍ScFvの例に加えて、他の細胞標的指向化ドメインも用いることができる。このような他の分子は、他の細胞標的に対する特異的結合能を有し得る。T細胞活性化ドメイン以外の他の細胞標的指向化ドメインの例としては、毒素ポリペプチド、酵素、ホルモン、サイトカイン、シグナル伝達分子又は所望の特異性のScFvが挙げられる。さらに、本発明の実施態様に従った融合タンパク質は、原核細胞又は真核細胞において発現させてもよい。それに加えて、ScFvの配向は、重鎖可変領域に連結された軽鎖可変領であってもよく、あるいはその逆であってもよい。このような二重特異性分子の適用は、医薬品の適用、たとえば特異的バイオマーカー担持細胞枯渇治療(specific biomarker−bearing cell depletion therapies)、たとえばがん治療を含む。さらに、このような分子は、診断の適用において使用してもよい。
【0009】
本発明の一つの側面は、二重特異性融合タンパク質に関する。本発明の一つの実施態様に従った二重特異性融合タンパク質は、目的の第一の標的に対する特異性を有する第一の標的指向化ドメイン;ヒト免疫グロブリンであってもよい免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖の定常部に由来する架橋ドメイン;及び目的の第二の標的に対する特異性を有する第二の標的指向化ドメインを含むことができる。標的指向化ドメインは、標的生体分子又は細胞に対して特異的であることができる。
【0010】
本発明のいくつかの実施態様に従えば、二重特異性融合タンパク質は、架橋ドメインのN末端又はC末端に融合したリンカーをさらに含むことができる。第一の標的指向化ドメインは、架橋ドメイン又はリンカーに融合され、第二の標的指向化ドメインは、架橋ドメイン又はリンカーに融合される。リンカーは、GGGGS配列を含んでいてもよい。目的の第一の標的は、CD20、Her2/neu、EpCAM又は同様のものであってもよく、第二の標的指向化ドメインは、Tリンパ球活性化ドメイン、たとえば抗CD3であってもよい。
【0011】
本発明のいくつかの実施態様に従えば、二重特異性融合タンパク質は、上記のリンカードメインを欠いていてもよく、すなわち、その場合においては、目的の第一の標的に対して特異性を有する第一の標的指向化ドメイン及び目的の第二の標的に対して特異性を有する第二の標的指向化ドメインは、架橋ドメインの二つの末端に直接融合される。
【0012】
本発明のいくつかの実施態様に従えば、二重特異性融合タンパク質は、第一の標的指向化ドメインと架橋ドメインとの間ならびに架橋ドメインと第二の標的指向化ドメインとの間に介在する上記の一又はそれ以上のリンカーを含んでいてもよい。言い換えれば、第一の標的指向化ドメイン及び第二の標的指向化ドメインの両方は、リンカーと個別に融合され、それらは架橋ドメインの二つの末端と融合される。
【0013】
上記の実施態様のいずれにおいても、第一の標的指向化ドメインは、目的の第一の標的に対する特異性を有する第一のScFvを含んでいてもよく、第二の標的指向化ドメインは、目的の第二の標的に対する特異性を有する第二のScFvを含んでいてもよい。
【0014】
上記の実施態様のいずれにおいても、第一のScFv及び第二のScFvの各々は、ヒト免疫グロブリン配列を含んでいてもよい。上記の実施態様においては、第一のScFvは、第一の抗原に対して結合特異性を有するVH−リンカー−VL又はVL−リンカー−VHを含んでいてもよく、第二のScFvは、第二の抗原に対して結合特異性を有するVH−リンカー−VL又はVL−リンカー−VHを含んでいてもよい。
【0015】
上記の実施態様のいずれにおいても、リンカーは、一つ又はそれ以上のGGGGS(G4S)配列を含んでいてもよい。たとえば、リンカーは、一つのG4S配列、二つのG4S配列(反復)、三つのG4S配列 、などを含んでいてもよい。さらに、リンカーは、G4S配列と組み合わせて他のアミノ酸配列を含んでいてもよい。このような他のアミノ酸配列としては、たとえば、ヒンジ配列を含んでいてもよい(たとえばCPPCP)。
【0016】
本発明の他の側面及び利点は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A-1B】
図1A及び
図1Bは、本発明の実施態様に従った種々の二重特異性Tリンパ球活性化因子の構築物の模式図を示す。
【0018】
【
図2A-2B】
図2A及び
図2Bは、本発明の実施態様に従った原核及び真核発現系からの軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の発現及び精製の結果を示す。
図2Bは、クマシーブリリアントブルー染色(パネルA)及びBL−21(DE3)pLysSによって発現された可溶性タンパク質上のHis−タグ化LCBTAsに対するウェスタンブロッティング(パネルB)を示す。両パネルのレーン1及び3は、IPTG誘導前の抽出物である。両パネルのレーン2及び4は、IPTG誘導された抽出物である。レーン1及び2は、EpCAM標的指向化Ka LCBTA−1を表す。レーン3及び4は、Her2/neu標的指向化Ka LCBTA−1を表す。
【0019】
【
図3A】
図3Aは、選択された腫瘍標的指向化モノクローナル抗体及び軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の分子ふるい−高速液体クロマトグラフィ(SEC−HPLC)解析を示す。
【
図3B】
図3Bは、軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の均一性のSEC−HPLC解析ならびにその抗原結合活性及び収量の改良を示す。
【0020】
【
図4A-4B】
図4A及び
図4Bは、本発明の実施態様に従ったCD20
+ Rajiリンパ腫細胞、Her2/neu
+ BT474乳がん細胞、EpCAM
+ HT29大腸がん細胞(
図4A)、及びJurkatリンパ腫細胞のCD3(
図4B)に結合する異なる腫瘍標的指向化軽鎖架橋二重特異性抗体の例を示す。
【0021】
【
図5】
図5は、本発明の実施態様に従ったいくつかの二重特異性抗体のIg軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の一過性発現の比較を示す。
【0022】
【
図6】
図6は、La LCBTA及びKa LCBTAのインビトロ血清安定性解析を明らかにする。
【0023】
【
図7】
図7は、本発明の実施態様に従ったモノクローナル抗体及び腫瘍標的指向化二重特異性抗体(EpCAM及びHer2標的指向化の両方)の刺激後の末梢血単核球(PBMC)によるサイトカイン分泌プロフィールの例を示す。
【0024】
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施態様に従ったCD20
+ B−リンパ腫(Raji)に対するIg軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の細胞傷害性を示す。
【
図8B】
図8Bは、本発明の実施態様に従ったHer2/neu
+/EpCAM
+大腸がん(HT29)に対するIg軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の細胞傷害性を示す。
【
図8C】
図8Cは、本発明の実施態様に従ったHer2/neu
+/EpCAM
+膵臓がん(Capan−1)に対するIg軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の細胞傷害性を示す。
【0025】
【
図9A】
図9Aは、本発明の実施態様に従ったCD20標的指向化Ig軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子による腫瘍根絶の異種移植実験を示す。
【
図9B】
図9Bは、本発明の実施態様に従ったHer2/neu標的指向化Ig軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子による腫瘍根絶の異種移植実験を示す。
【
図9C】
図9Cは、本発明の実施態様に従ったEpCAM標的指向化Ig軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子による腫瘍根絶の異種移植実験を示す。
【0026】
(詳細な説明)
本発明の実施態様は、臨床治療のような生物医学的適用のための免疫活性化特性を有する二重特異性又は多重特異性融合タンパク質の新規なフォーマットに関する。本発明の実施態様に従った単量体の二重特異性又は多重特異性免疫活性化分子は、軽鎖架橋二重特異性免疫活性化因子(LCBTA)と、又はより一般的には免疫グロブリン架橋二重特異性又は多重特異性生体分子と、呼ばれることができる。本発明の実施態様に従った生体分子は、二重特異性又は多重特異性であることができる。しかし、明確さのために、以下の説明においては、これらの分子を「二重特異性」分子と呼ぶことになる。このような「二重特異性」に対する言及は、「二重特異性」及び「多重特異性」の両方を含むことを意図することは理解されるべきである。
【0027】
本発明の実施態様に従った二重特異性分子は、二つの標的指向化ドメインを連結する架橋ドメインを含んでいてもよい。本発明の実施態様に従った架橋ドメインは、タンパク質又はペプチドを含んでいてもよく、二つの標的指向化ドメインは、それぞれ、架橋ドメインのN末端及びC末端に連結されていてもよい。本発明の実施態様に従った二つの標的指向化ドメインは、抗体の特異的結合ドメイン(すなわち、可変領域)に由来してもよい。二つの標的指向化ドメインの一方は、Tリンパ球活性化ドメインであってもよく、他方の標的指向化ドメインは、腫瘍細胞、腫瘍抗原、ウイルス、細菌、などのような標的分子又は細胞に対して特異的であってもよい。
【0028】
本発明の二重特異性分子の例としては、以下の式(I)及び(VI)で示されるものを挙げることができ、それらにおいて、TgDは標的指向化ドメイン、BDは架橋ドメイン、TADはTリンパ球活性化ドメイン、及びLNKはリンカーである:
TgD−BD−TAD 式(I)
TAD−BD−TgD 式(II)
TgD−LNK−BD−TAD 式(III)
TAD−BD−LNK−TgD 式(IV)
TgD−LNK−BD−LNK−TAD 式(V)
TAD−LNK−BD−LNK−TgD 式(VI)
【0029】
いくつかの例は、標的指向化ドメイン及び架橋ドメインの間のリンカーを含んでいてもよい。いくつかの例は、Tリンパ球活性化ドメイン及び架橋ドメインの間のリンカーを含んでいてもよい。いくつかの例は、標的指向化ドメイン及び架橋ドメインの間のリンカー、及びTリンパ球活性化ドメイン及び架橋ドメインの間の別のリンカーを含んでいてもよい。
【0030】
本発明の実施態様に従えば、標的指向化ドメイン(TD)(たとえば、腫瘍標的指向化ドメイン、抗原標的指向化ドメイン、生体分子標的指向化ドメイン、など)は、抗体の可変領域に由来していてもよい。抗体由来の標的指向化ドメインは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の両方を含んでいてもよく、それは二つの立体配置(配向)で存在してもよい:(1)軽鎖可変領域はN末端に、かつ重鎖可変領域はC末端にある、又は(2)重鎖可変領域はN末端に、かつ軽鎖可変領域はC末端にある。
【0031】
標的指向化ドメイン(たとえば腫瘍標的指向化ドメイン)においては、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、リンカーで連結されていてもよく、リンカーは短いペプチドフラグメントのような任意の好適なリンカーを含んでいてもよい。たとえば、本発明の実施態様に従ったリンカーは、短いペプチドを含んでいてもよく、それは典型的には小さいアミノ酸残基又は親水性アミノ酸残基(たとえば、グリシン、セリン、スレオニン、プロリン、アスパラギン酸、アスパラギン、など)を含む。このようなペプチドの一例は、Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(G4S)である。他の例としては、配列中でのこれらのアミノ酸の並べ替え、たとえばGGGSG、GGSGG、GSGGG、又はSGGGGを挙げることができる。さらなる例としては、G又はS以外のアミノ酸残基を含むペプチド、たとえばGGTGS、GTSPGG、GNGGGS、などを挙げることができる。当業者は、多数の通常使用されるペプチドリンカーを本発明の実施態様において用いてもよいことを認めるであろう。
【0032】
本発明のいくつかの実施態様に従えば、このような短いペプチドリンカーは、リンカー長を増大させるために反復単位を含んでいてもよい。たとえば、いくつかのリンカーは、二回反復G4Sリンカー、三回反復G4Sリンカー、又は四回反復G4Sリンカーを含んでいてもよい。さらに、いくつかの「反復様」リンカーは、異なるペプチド配列の混合、たとえばG4S−GGSGG−G4S−SGGGGを含んでいてもよい。
【0033】
本発明の実施態様に従えば、架橋ドメインは、ペプチドフラグメント、好ましくは抗体由来のフラグメントを含んでいてもよい。好ましい実施態様においては、架橋ドメインは、重鎖、軽鎖、特に重鎖又は軽鎖の定常部から由来していてもよい。たとえば、本発明の実施態様に従った架橋は、カッパ(κ)鎖、ラムダ−2(λ−2)鎖、又はラムダ−5(λ−5)鎖(もしくは代替軽鎖)のような、軽鎖から由来していてもよい。いくつかの実施態様においては、架橋は、カッパ(κ)鎖、ラムダ−2(λ−2)鎖、又はラムダ−5(λ−5)鎖の定常部のような、軽鎖に由来する領域又はドメインを含んでいてもよい。同様に、架橋ドメインは、重鎖又は重鎖の領域(たとえば定常部)から由来していてもよい。本明細書において使用する場合、「〜から由来する」という用語は、架橋ドメインが軽鎖又は重鎖のドメイン(たとえば定常部)の全長配列と、実質的な相同性(たとえば、(50%、好ましくは(70%、より好ましくは(80%、最も好ましくは(90%)を共有するという事実を指す。
【0034】
さらに、本発明の実施態様に従えば、架橋ドメインは、軽鎖定常部を模倣したカッパ鎖、ラムダ鎖又はラムダ−5(もしくは代替軽鎖)の変異体、あるいはカッパ鎖、ラムダ鎖又はラムダ−5代替軽鎖の誘導体であってもよい。本明細書で使用される場合、「変異体」は、保存変異体又は非保存変異体を指す。本発明の実施態様に従った変異体は、本明細書において記載されているように、架橋ドメインとして役立つ機能を保持する。当業者は、保存変異体は類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換を含み、典型的には保存された生物学的活性又は構造を有するであろうことを認めるであろう。保存変異体は、1〜50個のアミノ酸の置換、好ましくは1〜30個のアミノ酸、より好ましくは1〜20個のアミノ酸、そして最も好ましくは1〜10個のアミノ酸を含むことができる。非保存変異体は、1又はそれ以上のアミノ酸残基、たとえば、1〜50個のアミノ酸、好ましくは1〜30個のアミノ酸、より好ましくは1〜20個のアミノ酸、そして最も好ましくは1〜10個のアミノ酸の欠失、置換、又は挿入を含むことができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施態様に従えば、架橋(もしくは架橋ドメイン)は、標的指向化ドメイン及びTリンパ球活性化ドメインに直接連結されていてもよい。本発明の他の実施態様に従えば、リンカーは、標的指向化ドメイン又はTリンパ球活性化ドメインと架橋との間に提供されていてもよい。本発明のさらに別の実施態様に従えば、リンカーは、架橋及び標的指向化ドメインの間に提供されていてもよく、そして第二のリンカーは架橋及びTリンパ球活性化ドメインの間に提供される。
【0036】
架橋ドメインと標的指向化又はTリンパ球活性化ドメインとの間のリンカーは、ドメイン内のリンカーについて上記したものと同様であってもよい。たとえば、架橋ドメインと標的指向化又はTリンパ球活性化ドメインとの間のリンカーは、G4Sリンカー又はG4S反復リンカー(それは二回反復、三回反復、などであることができる)を含んでいてもよい。さらに、上記のとおり、リンカーは、他のアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0037】
本発明の実施態様に従えば、Tリンパ球活性化ドメインは、介在性リンカーのある又はない状態で、Tリンパ球活性化のために架橋ドメインの一端に連結されていてもよい。種々のTリンパ球活性化分子が当該技術分野において知られており、それらには抗CD3抗体(モノクローナル又はポリクローナル)、又はそのような抗体のCD3結合フラグメント又は4−1BB分子に対するリガンド又は抗体が含まれる。たとえば、本発明の実施態様に従えば、Tリンパ球活性化ドメインは、CD3に対するモノクローナル抗体の可変領域を含んでいてもよい。このような実施態様においては、可変領域の重鎖及び軽鎖は、二つの配向で用いることができる:(1)軽鎖可変領域がN末端にあり、かつ重鎖可変領域がC末端にある、又は(2)重鎖可変領域がN末端にあり、かつ軽鎖可変領域がC末端にある。
【0038】
標的指向化ドメインについて記載したのと同様に、リンカーは、Tリンパ球結合ドメインの軽鎖可変領域と重鎖可変領域を連結してもよい。たとえば、このようなリンカーは、任意の好適なアミノ酸配列、たとえばG4S、又は二回、三回、もしくは四回(quadruple)G4S反復リンカーを含んでいてもよい。さらに、リンカーは、他のアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の二重特異性分子は、細胞又は分子を標的化するために、一方で同時にTリンパ球応答を活性化するために、使用することができる。これらの分子のいくつかの生物学的利用性は、以下の実施例によって説明されるであろう。
【実施例】
【0040】
免疫グロブリン軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の生成
第一のセットの例においては、抗CD20、抗Her2/neu、又は抗EpCAM ScFv(可変領域の単鎖フラグメント)を、細胞標的指向化ドメイン(CtD)として用い、抗CD3 ScFvをTリンパ球活性化ドメイン(TAD)として選択する。選択されたCtD及びTADは、架橋を介して連結されるが、この架橋は、たとえば、抗体軽鎖又は重鎖から由来する免疫グロブリンドメインを含んでいてもよい。このような架橋の例としては、ヒト免疫グロブリン定常部から選択されたものを挙げることができる。ヒト免疫グロブリン定常部から選択されるこのような免疫グロブリン鎖架橋の具体的な例としては、以下に示す配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4を挙げることができるが、これらに限らない:
【化1】
【0041】
本発明のいくつかの実施態様に従えば、CtDのC末端は、選択された架橋(たとえば、ヒト免疫グロブリン定常部に由来する架橋)のN末端に融合されてもよい。本発明の他の実施態様に従えば、CtDのC末端は、リンカー配列のN末端に融合されてもよく、このリンカーは、続いて、選択された架橋(たとえば、ヒト免疫グロブリン定常部に由来する架橋)のN末端に融合される。
【0042】
軽鎖架橋のC末端で、リンカーは、場合によっては架橋のC末端と融合されていてもよい。本発明の実施態様に従えば、リンカーは、上記の任意の好適なペプチド配列を含んでいてもよい。たとえば、リンカーは、一つ又はそれ以上のGGGGS配列(G4S)を、他の配列(たとえば、ヒンジ配列、CPPCP)と共に又は他の配列なしで、含んでいてもよい。この構築物は、その後TADと連結されて
図1に示す二重特異性分子を形成することができる。
【0043】
上記のように、本発明のいくつかの実施態様は、架橋のN末端にTADを、介在性リンカーと共に又はリンカーなしで、有していてもよく、そして、架橋のC末端にCtDを、介在性リンカーと共に又はリンカーなしで、有していてもよい。さらに、当業者は、CtDは他の標的分子に対する他の特異的結合ドメインで置き換えてもよいことを認めるであろう。
【0044】
図1に示すLCBTAは、二価(二重特異性)分子であり、細胞の標的に対して特異的な一価及びTリンパ球上のCD3分子に対して特異的なもう一価を有する。このLCBTAは、哺乳類、真核細胞又は原核細胞において発現させることができ、たとえば、軽鎖特異的アフィニティカラムを介して、均一性になるまで精製することができる(
図2)。SEC−HPLC (分子ふるいHPLC)解析により、精製された二重特異性分子のほとんどの部分が単量体形態であることが示された(
図3)。それにもかかわらず、ScFvの配向、ドメイン間リンカーの長さ、架橋ドメインに対するScFvドメインの適合性、及び/又は翻訳の効率は、二重特異性分子の翻訳及び翻訳後プロセッシングに影響を与えることができ、それは、上昇した多量体形成及び/又は変更された生物学的機能性をもたらし得る(I及びJ、
図3、表1)。
【表1】
【0045】
単量体及び多量体形成に対する、配向、ドメイン間リンカー、ドメイン間の適合性ならびに翻訳及び翻訳後修飾の効果に加えて、ドメイン内リンカーもまた、二重特異性分子の生物学的特性に影響し得る。
図3Bに示すように、たとえば、Ka Her2/neu標的指向化LCBTA−1はG4SG4SG4Sドメイン内リンカーを含み、これは、ドメイン内リンカーG4SG4S(Ka LCBTA−1−A)及びG4SG4SG4SG4S(Ka LCBTA−1−B)を含むように設計された。三種のフォーマットについてのSEC−HPLC及び標的結合解析は同様の結果を示したものの、最終的なタンパク質収量において有意な変動が見い出された。
【0046】
標準試料二重特異性抗体の構築
IgG−FL(免疫グロブリンG全長)二重特異性抗体(BsAb)を、標準試料として構築した(
図1を参照されたい)。このBsAbは、N末端に細胞標的指向化ドメイン(CtD)として全長抗CD20モノクローナル抗体を、及びC末端にTリンパ球活性化ドメイン(TAD)として二つの抗CD3 ScFvを含む。GGGGSGGGGSCPPCPGGGGSペプチドを含むリンカー/ヒンジドメイン(これは二つのリンカー(GGGGS又はG4S)配列及びヒンジ(CPPCP)配列を含む)は、この標準試料IgG−FL BsAbのCtD及びTADの間におそらく挿入されている(
図1)。このIgG−FL BsAbは、細胞の標的に対して特異的な二つの結合部位及びCD3分子に対して特異的な他の二つを有する四価の分子である。
【0047】
上記のIgG−FL BsAbに加えて、二つのタンデム反復BsAbもまた、標準試料として構築された。
図1に示すように、タンデム反復−1は、N末端にCtDとして抗CD20 ScFv、CtDのC末端にすぐに続いてGGGGSリンカー、及びこのリンカーのC末端と融合されたTADとして抗CD3 ScFvを有する。タンデム反復−2は、タンデム反復−1の逆の順番で、すなわちリンカーのN末端にTAD及びリンカーのC末端にCtDの順番で、CtD及びTADを有する。
【0048】
結合アッセイ
細胞の標的及びTリンパ球に対する結合特異性は、二重特異性分子のための治療上の指標の重要な部分である。上記の二重特異性抗体についての結果は、CtDとして一価の抗CD20、抗Her2/neu、又は抗EpCAM ScFvを有するLCBTAはそれぞれ実際にRaji発現CD20、BT474発現Her2/neu(ErbB2)、又はHT29発現EpCAMに結合できたことを示した。この結合は、モノクローナル抗CD20抗体、抗Her2/neu抗体又は抗EpCAM抗体と近い(
図4A)。LCBTAのC末端に対する一価のTAD(抗CD3 ScFv)の融合は、二価モノクローナル抗CD3抗体と比較して、Jurkat発現CD3分子に対する結合アフィニティを低減した(
図4B)。このような低減は、二価標準試料フォーマット(IgG−FL BsAb)に匹敵する(
図4B)。標準試料IgG−FL BsAbは、抗CD3 ScFvが共有結合的に各重鎖のC末端に融合していることを除き、全長抗体に似ている二重特異性抗体である(
図1)。
【0049】
免疫グロブリン軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の発現
哺乳類細胞株における一過性遺伝子導入されたLCBTAの発現は、
図2、3、及び5において説明されている。標準試料フォーマット(IgG−FL BsAb)は、1μg/mlを下回らない発現率を示したが、これは、ラムダ又はカッパ架橋LCBTAフォーマット及びそれらの誘導体と同様である。架橋ドメインの生理学的特性は、二重特異性T細胞活性化因子の発現及び安定性のために重要である。たとえば、ラムダ5は、代替軽鎖としても知られており、未成熟Bリンパ球によって発現される免疫グロブリン軽鎖様タンパク質である。哺乳類細胞によるラムダ5架橋LCBTAの一過性発現は、ラムダ又はカッパ架橋LCBTAと比較して低減される。さらに、ラムダ又はカッパ架橋の置換物としてのIgG1由来定常部重鎖ドメインのCH1もまた、標準試料、すなわちラムダ又はカッパ架橋LCBTAと比較して劣った発現率をもたらした。
【0050】
架橋LCBTAは、4つの主要なドメインを構成する;腫瘍標的指向化ドメイン、軽鎖架橋、リンカー、及びT細胞活性化ドメイン。これらのドメインの任意のものに対する変更は、ドメイン間干渉を誘導して全長分子と比較して低減した又は失われた機能をもたらし得る。表1に示すように、軽鎖−重鎖(Ka LCBTA−1)から重鎖−軽鎖への腫瘍標的指向化ScFvの配向/立体配置の変化は、T細胞活性化ドメインへの低減した結合、又はその逆をもたらし得る。このような配向の操作はまた、SEC−HPLC解析に基づく単量体生成の形成をも変更する(
図3A)。これらの例におけるリンカードメインは、反復性の4つのグリシン及び1つのセリンの短いストレッチを含む。それらの結果は、ドメイン間リンカーの長さ又はサイズは架橋LCBTA分子の生物学的特徴に強烈な影響を与えることを示した(表2)。
【表2】
【0051】
発現された架橋LCBTAは、多量体のLCBTAの混入を評価するためにSEC−HPLCによっても試験された。望ましくない多量体の二重特異性分子の上昇した混入は、成分としてScFvを用いる他のデベロッパー(developers)に問題を起こした。
図3に示すように、標的指向化分子に関わらず、精製された架橋LCBTAのほとんどの部分が単量体形態である。さらに、架橋されたとおりのカッパ又はラムダは、LCBTAの単量体の均一性に影響しない。
【0052】
ScFv抗体をN末端からC末端へ又はその逆へ反転させることはタンパク質発現率に劇的な変化をもたらし得るので、タンデム反復BsAbの発現は、高度にScFv依存性である。結果として、LCBTAは、タンデム反復BsAbフォーマットについての発現率よりも優れた発現率を呈し(たとえば、
図5のレーン1及び2を参照されたい)、このような差異は、TADが分子のC末端に置かれた場合にさらに増幅された。
【0053】
ScFv又はフラグメント化Ig分子の短い血清安定性は、生物製剤の社会においては共通の知見である(Cancer Res August 8、2000 60; 433)。架橋として軽鎖を用いて、ScFvを含有する二重特異性分子の安定性を
図6に示す。これらの結果は、LBCTAの両方のフォーマットが、血清中で37℃で一週間のインキュベーション後でさえも、50%を超えるScFvを安定化し得たことを示唆する。
【0054】
Ka LCBTA及びモノクローナル抗体処理PBMCによる炎症性サイトカイン分泌プロフィール
抗CD3モノクローナル抗体処理は、Tリンパ球の活性化及び炎症性サイトカインの増強された分泌を誘導することが知られている(
図7)。
図7に示すように、IL−8を除き、架橋LCBTAは炎症性サイトカインの分泌を誘導しない。架橋LCBTAは、いかなる重鎖定常部配列も含まず、したがって、FcR媒介性活性化は、IL8の上昇について責任がない。低い炎症性サイトカイン分泌プロフィールは、Tリンパ球依存性治療についての副作用の低減されたリスクを示唆する。
【0055】
免疫グロブリン軽鎖架橋二重特異性Tリンパ球活性化因子の細胞傷害性
本発明の実施態様の生物学的機能性を明らかにするために、CD20標的化カッパ架橋LCBTA、抗CD20 mAb及びIgG−FL BsAbを、その抗腫瘍能について試験した(
図1及び8)。
図8に示すように、カッパ架橋LCBTAは、腫瘍根絶において大変有効であり、抗CD20 mAbについては22pM、又はIgG−FL BsAbについては一桁のpMであったのに対して、pM領域より低いEC50値を有していた。カッパ架橋LCBTAは、90%に上る最大腫瘍根絶率を示したが、一方、抗CD20 mAbについてはわずか35%及びIgG−FL BsAbについては75%であった。
【0056】
本発明の実施態様の生物学的機能性を明らかにするために、Her2/neu又はEpCAM標的化カッパ架橋LCBTAを、その腫瘍根絶能を評価するために、Her2/neu
+及びEpCAM
+HT29大腸がん細胞上で試験した(
図8B)。
図8Bに示すように、Her2/neu及びEpCAM標的指向化カッパ架橋LCBTAの両方が、腫瘍根絶において大変有効であり、最大細胞傷害性率は100%に上ったが、それに対し、抗Her2/neu及び抗EpCAM mAbsについての腫瘍殺傷率はそれぞれ28%から51%であった。
【0057】
本発明の実施態様の生物学的機能性を明らかにするために、Her2/neu又はEpCAM標的化カッパ架橋LCBTAを、その腫瘍根絶能を評価するためにHer2/neu
+及びEpCAM
+ Capan−1膵臓がん細胞上で試験した(
図8C)。
図8Cに示すように、Her2/neu及びEpCAM標的指向化カッパ架橋LCBTAの両方が、腫瘍根絶において大変有効であり、最大細胞傷害性率はHer2/neu及びEpCAM標的指向化カッパ架橋LCBTAについて、それぞれ、75%超及び100%であったが、それに対し、抗Her2/neu及び抗EpCAM mAbについては、それぞれ39%から34%の腫瘍殺傷率であった。
【0058】
腫瘍担持動物での異種移植片解析
本発明の実施態様の治療ポテンシャルを明らかにするために、CD20標的化カッパ架橋LCBTA及び抗CD20 mAbを、抗腫瘍能についてCD20
+ ヒトリンパ腫(Raji細胞)を担持するSCIDマウス上で試験した(
図1及び8)。治療の前に、SCIDマウスにRaji細胞及びPBMCを皮下接種した。
図9Aに示すように、治療剤としてKa LCBTAで処理された動物は、治療剤として抗CD20 mAbで処理された動物よりもはるかに小さい腫瘍を生じた。
【0059】
本発明の実施態様の治療ポテンシャルを明らかにするために、Her2/neu標的化カッパ架橋LCBTA及び抗Her2/neu mAbを、Her2/neu
+ヒト大腸がん(HT29細胞)を担持するSCIDマウス上で、抗腫瘍能について試験した(
図1及び8)。治療の前に、SCIDマウスに、予備活性化されたPBMC又はナイーブのPBMCのいずれかと予め混合されたHT29細胞を皮下接種した。
図9Bに示すように、治療剤としてHer2/neu標的指向化Ka LCBTAで処理された動物は、治療剤として抗Her2/neu mAbで処理された動物よりも有意に小さい腫瘍を生じた。
【0060】
本発明の実施態様の治療ポテンシャルを明らかにするために、EpCAM標的化カッパ架橋LCBTA及び抗EpCAM mAbを、EpCAM
+ヒト大腸がん(HT29細胞)を担持するSCIDマウス上で、抗腫瘍能について試験した(
図1及び8)。治療の前に、SCIDマウスに、予備活性化されたPBMCsと予め混合されたHT29細胞を皮下接種した。
図9Bに示すように、EpCAM標的指向化Ka LCBTAは、効果的に腫瘍の進行を阻害した。
【0061】
二重特異性抗体の構築
制限酵素は種々の売主から購入した。DNAポリメラーゼ、T4DNAリガーゼ クレノウ(Klenow)酵素及びT4DNAポリメラーゼは、インビトロジェン(Invitrogen(Grand Island、NY))から購入した。すべての酵素は、製造業者により推奨されているとおりに使用した。
【0062】
PCR増幅のためのすべてのプライマーは、売主から購入した。DNA増幅は、PCR機において、94℃で2分間の予備変性工程と、それに続いて35サイクルの、それぞれ50秒間の変性工程(94℃)、アニーリング工程(50℃)及び伸長工程(72℃)を実施した。
【0063】
すべての発現モジュールを、模式的に
図1に表す。
【0064】
抗CD20、抗Her2/neu及び抗EpCAM軽鎖及び切断型重鎖を、ベクターpGEMに、それぞれクローニングした。抗CD20、抗Her2/neu及び抗EpCAM VH及びVLの単鎖フラグメントは、ベクターTCAE8にクローニングし、後続する抗腫瘍ScFvのために使用した。
【0065】
細胞株の調製
本発明において使用されるRaji、BT474、Capan−1及びHT29細胞は、それぞれ、Bリンパ腫腫瘍細胞株、乳がん細胞株、膵臓細胞株、及び大腸がん細胞株であり、台湾中華民国(R.O.C.)のFood Industry Research and Development Institute(FIRDI)の一部門であるBioresource Collection and Research Center(BCRC)から入手した。Jurkat細胞はATCCからのTリンパ腫細胞株である。Raji及びJurkat細胞の両方は、10%ウシ胎児血清(Hyclone)、0.03%L−グルタミン及び0.4mMピルビン酸ナトリウムを添加したRPMI 1640培地(GibcoBRL Life Technologies、Paisly、UK)中で培養した。5%のCO
2を含む加湿されたインキュベーター中で37℃で培養した後、細胞は、継代培養されるか、又は滅菌された緩衝液で試験のために洗浄された。BT474、Capan−1及びHT29は、ATCCのガイドラインに従って培養した。
【0066】
末梢血単核球(PBMC)の調製
末梢血単核球(PBMC)は、Ficoll−Paque PLUSを用いて密度遠心によって正常な健常成人ドナーの全血から単離した。単離の後、PBMCは、10ng/mlの抗CD3 mAb、75IU/mlのインターロイキン−2(IL−2)、及び10%FBSを添加したRPMI−1640培地中で5〜10日間培養し、予備活性化した。
【0067】
細胞傷害性アッセイ(カルセインAM細胞傷害性)
標的細胞(Raji)は、5%FBSを添加したフェノールレッド無含有RPMI1640中で、37℃で30分間、10μMのカルセインで標識した。カルセインインキュベーションの最後に、5%FBSを含有するフェノールレッド無含有RPMI1640を用いて細胞を2回洗浄し、5%FBSを含有するフェノールレッド無含有RPMI1640を用いて細胞密度を3×10
5細胞/mlに調整した。反応混合物のために、3×10
4個の細胞を含む各培地の100μlのアリコートを、96ウェル培養プレートの各ウェルに入れた。エフェクター細胞(PBMC)培養物の細胞密度を算出し、5%FBSを含有するフェノールレッド無含有RPMI1640によって3×10
6細胞/mlに調整した。細胞傷害性アッセイのために、異なる量の異なるBsAb及び100μl(3×10
5細胞)のエフェクター細胞を、予めRajiを入れた96ウェル培養プレートに添加し、37℃の5%CO
2濃縮インキュベーター中で4時間培養した。インキュベーションの最後に、培養プレートを700gで5分間遠心分離した。次に、各反応ウェルからの130μlの上清を、個別に、新たなプレートに移し、放出された色素を、Fusion αマイクロプレートリーダーで定量した。細胞傷害性のパーセンテージを、以下の式に従って算出した:
[蛍光(サンプル)−蛍光(コントロール)]/[蛍光(総量−溶解)−蛍光(コントロール)]*100。
【0068】
この総量−溶解は、0.9%のTritonで10分間処理された標的細胞として定義された。
【0069】
フローサイトメトリーアッセイ
腫瘍標的(Bリンパ腫)に対する結合アフィニティ
Raji、BT474及びHT29細胞(1×10
6細胞/反応)を含む標的細胞を、異なる濃度の異なるBsAbを用いて室温で30分間処理した。インキュベーションの最後に、すべての反応を、2%FBSを含むPBSで2回洗浄した。洗浄後、細胞を、室温で30分間、1μlのFITC複合化アフィニティ精製F(ab’)2フラグメント、ヤギ抗ヒトIgG(Fab’)2フラグメント特異的抗体と再インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞を、2%FBSを添加した氷冷PBSで2回洗浄し、FACS装置でモニタリングした。
【0070】
Jurkat細胞(1×10
6細胞/反応)を、異なる濃度の異なるBsAbを用いて室温で30分間処理した。インキュベーションの最後に、すべての反応を、2%FBSを添加したPBSで2回洗浄した。洗浄後、細胞を、室温で30分間、1μlのFITC複合化アフィニティ精製F(ab’)2フラグメント、ヤギ抗ヒトIgG(Fab’)2フラグメント特異的抗体と再インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞を、2%FBSを添加した氷冷PBSで2回洗浄し、FACS装置でモニタリングした。
【0071】
免疫グロブリン軽鎖架橋二重特異性抗体の原核細胞へのクローニング及び発現
所望の腫瘍標的指向化軽鎖架橋二重特異性抗体に相当する合成遺伝子を、NcoI及びXhoI制限酵素部位を用いてpET20bベクターにクローニングした。約20ngの各組換え構築物をNovagen(登録商標) BL21(DE3)pLysS(EMD Millipore)に形質転換し、形質転換体を、アンピシリン(100μg/ml)を添加したLB寒天プレート上で選択した。
【0072】
組換え構築物を含む単一コロニーのBL21(DE3)pLysSを、アンピシリンを添加した5mlのLB中で、37℃で一晩生育させた。培養物は、振とう条件下で、37℃でインキュベートした。誘発剤(IPTG)は、 その後集団がOD
600値0.6〜0.7に達した時に添加した。アリコートは、0時間及び一晩の誘導の後、遠心分離(4000×g、15分間)によって回収した。標的特異的軽鎖架橋二重特異性抗体の発現を確認するために、可溶性画分の総タンパク質抽出物を、SDS−PAGE(4〜12%アクリルアミド)によって解析した。サンプルは、サンプル緩衝液を添加することによって調製し、5分間沸騰させた。分離の後、0.1%クマシーブリリアントブルーR−250を用いてゲルを染色した。ウェスタンブロットは、抗His mAbを用いて解析した。
【0073】
上記の例は、二重特異性又は多重特異性分子である本発明の実施態様の利用性を明らかにする。上記の例は、種々の標的指向化ドメインを、異なる分子又は細胞を標的化するために用いることができることをも説明する。したがって、当業者は、異なる標的に対する他の標的指向化ドメインを、本明細書において記載されている二重特異性分子と同じ枠組みにおいて使用することができることを認めるであろう。したがって、本発明の範囲は、実施例において示されている具体的な好ましい実施態様に限られない。
【0074】
本発明は、限られた数の実施態様に関して記載されているが、当業者は、本開示の利益をもって、本明細書において開示された発明の範囲を逸脱しない他の実施態様を考案することができることを認めるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]