(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
【0014】
(実施形態1)
図1において、1は事業所・集合住宅・一般家庭に設置される分電盤、2は主幹ブレーカ、3は母線、4は分岐ブレーカ、5は分岐線、6は開閉器を示している。母線3は主幹ブレーカ側に位置する母線31と、その反対側には母線32が配置されている。
【0015】
開閉器6は、一方の母線32と他方の母線31とを接続し、母線3を途中で電気的に切り離し可能とするものである。すなわち各分岐回路は、この開閉器6を境に、開閉器6より他方(主幹ブレーカ側)の母線31から分岐された回路からなる第一分岐群7と、一方の母線32から分岐された回路からなる第二分岐群8とに区分される。
【0016】
第一分岐群7には、家庭等で使用する一般負荷(TV・エアコン・冷蔵庫など)を接続し、第二分岐群8には、少なくとも車両9の充電に使用する車両用充電装置10、および、分散電源装置15(太陽光発電・燃料電池)と蓄電池28を接続している。なお第二分岐群8に非常時に使用する非常用負荷(電灯など)を接続してもよい。
【0017】
車両用充電装置10は、
図2に示す制御部11を備え、制御部11内に、車両9の接続を検出する接続検出手段12と、開閉器6に向けて開閉制御信号を送信する開閉制御手段13を有している。
【0018】
接続検出手段12は、CPLT信号の変化あるいは車両電力計測手段で検出される充電電流値により、車両9の接続を検出することができる。なおCPLT信号とは、車両用充電装置の定格電流の大きさに応じて設定されるデューティを有するパイロット信号であり、車両9と車両用充電装置10との間で接続状態や車両用充電装置10の定格電流を車両9に通知するものである。接続検出手段12が車両9の接続を検出すると、開閉制御手段13は、開閉器6に向けて開路信号を送信する。
【0019】
開路信号を受けて開閉器6が開くと、母線3が開閉器6の一方と他方で電気的に切り離される。開閉器6はリレーが好ましいが自動投入装置を備えたブレーカでもよい。
【0020】
第一分岐群7では、母線31が系統電源14に接続した状態が維持されているため、開閉器6の開路の影響を受けることなく、電力供給が継続される。
【0021】
第二分岐群8では、母線32と系統電源14との電気的接続が解除されるが、前記のように、分散電源装置15を備えているため、車両用充電装置10には分散電源装置15で発電した電力が供給される。
【0022】
この状態において、常時、十分な充電電流を確保するため、第二分岐群8には、複数の分散電源装置15を接続しておくことが好ましい。なお、分散電源装置15から十分な充電電力を確保できない場合には、デューティ比の変調による車両9への充電電流が制限(充電制限)される。また、車両9の充電が完了した場合、あるいは中断された場合には、開閉制御手段13から開閉器6に向けて閉路信号が送信され、一方と他方の双方の母線が、再度電気的に接続される。
【0023】
本実施形態の充電システムによれば、車両が接続されていない場合には、開閉器は閉路されているため、第1分岐群の一般負荷は系統電源と分散電源装置の双方から電力の供給を受けることができる。一方、車両が接続された場合には開閉器は開路され専ら、分散電源装置15で発電した電力を用いて車両9の充電を行うことができるため、車両9と他の一般負荷を同一の分電盤1に接続して使用する際、車両9の充電時における他の一般負荷の使用制限を回避することができる。
【0024】
(実施形態2)
上記実施形態1では、車両用充電装置10内の制御部11に、開閉器6に向けて開閉制御信号を送信する開閉制御手段13を有していたが、
図3に示す本実施形態では、分電盤1内に制御ユニット16を設け、
図4に示すように、この制御ユニット16内に、開閉器6に向けて開閉制御信号を送信する開閉制御手段22を有している。また、第二分岐群8に複数の分散電源装置15(
図3では、燃料電池と太陽光発電装置)と蓄電池28を接続している。なお第二分岐群8に非常時に使用する非常用負荷(電灯など)を接続してもよい。
【0025】
ただし、制御ユニット16の設置個所は、分電盤1内に限定されず、分電盤1外に別ユニットとして配置したり、車両用充電装置10の内部に設けることもできる。更に、制御ユニットの一部の機能を分電盤内と分電盤外(例えば車両用充電装置10)に分離して設けてもよい。
【0026】
制御ユニット16の内部には、
図4に示すように、前記の開閉制御手段22の他、接続検出手段17と、発電計測手段18と、電力計測手段19と、車両電力計測手段20と、判定手段21を備えている。
【0027】
接続検出手段17では、車両用充電装置10からの車両接続情報に基づいて車両9の接続を検出する。車両接続情報とは、車両用充電装置10がCPLT信号の変化あるいは車両電力計測手段で検出される充電電流値により、車両9の接続を検出し、車両が接続されたことを制御ユニット16に伝達する信号である。
【0028】
発電計測手段18では、各分散電源装置15における発電量を計測する。具体的には、各分散電源装置15のインバータ変換後の電圧と電流値を検出し、分散電源装置が複数ある場合には各分散電源装置15の発電量(電圧×電流値)を合算し総発電量を求める。
【0029】
電力計測手段19では、第一分岐群7に接続された負荷の使用電力(電圧×使用電流)を計測する。使用電流の計測は、他方の母線31の両端部にCT25a、CT25bをそれぞれ設けその差分を算出して行い、電圧はCT25を設けた線間より取得することができる。なお使用電流の計測は第一分岐群7の分岐回路の全てにそれぞれCT25を設け電流値を直接計測してもよい。また第二分岐群8の使用電力は個々の分岐回路に設けたCT(図示せず)により計測することができる。
【0030】
車両電力計測手段20では、接続された車両9の充電電力(電圧×充電電流)を計測する。具体的には、車両用充電装置10に計測装置(CT26など)を設け、車両用充電装置10が接続された分岐開路の電圧・充電電流を計測する。その他、車両用充電装置10と制御ユニット16を繋ぐ通信線を介して、充電電力の計測値を車両電力計測手段20に出力してもよい。
【0031】
判定手段21では、
図5に示すフローに従って、負荷の使用電力、分散電源装置15の発電量、車両判定に基づいて開閉器6の開閉要否の判定を行う。
【0032】
具体的には、まず、接続検出手段17で車両9の接続が検出を行う(ST1)。続いて、電力計測手段19で負荷の使用電力(電圧×使用電流)を計測し、第一分岐群7に接続された負荷の使用電力の総量が所定値(例えば定格の70%)未満であれば閉路維持判定を行う(ST2・ST4)。この場合、各分散電源装置15における発電量が多い時には、車両用充電装置への電力供給に加えて、一般負荷にも分散電源装置15の電力を供給することで、電気料金の削減を図ることができる。また、各分散電源装置15における発電量が少ない時には、分散電源装置15で不足する充電電力を系統電源14から補って車両用充電装置10に電力を供給することができる。
【0033】
一方、第一分岐群7に接続された負荷の使用電力の総量が所定値(例えば定格の70%)以上の場合、発電計測手段18から各分散電源装置15における発電量情報を取得し、更に、分散電源装置15の発電量を判定する(ST2・ST3)。
【0034】
分散電源装置15の発電量が車両9の充電電力に対して所定の割合(例えば120%)以上であれば閉路維持判定を行う(ST4)。この場合、分散電源装置15で発電した電力を車両9への充電電力として使用し、さらに余剰電力を一般負荷に供給することができる。
【0035】
分散電源装置15の発電量が車両9の充電電力に対して所定の割合(例えば120%)未満であれば、車両判定を行う(ST5)。具体的には車両用充電装置10に接続された車両9が充電電流の変更に対応する車両であれば、車両9の充電電流をCPLT信号により抑制し開閉器6は閉路を維持する(ST4)。車両用充電装置10に接続された車両が充電電流の変更に対応しない車両であれば、判定手段は開閉器6の開路判定を行う(ST6)。この場合、車両9の充電電力は分散電源装置15や蓄電池28からのみ供給される。
【0036】
なお、車両9の充電が完了・中断された場合や、第一分岐群7の使用電力が所定値(例えば定格の70%)未満となった場合、または、発電量が車両9の充電電力に対して所定の割合(例えば120%)以上となった場合には、開閉器6は閉路制御され分散電源装置15での発電による電力が一般負荷に供給される。
【0037】
本実施形態の充電システムによれば、第一分岐群7に接続された負荷の使用電力の総量および分散電源装置15での発電量に基づいて、必要時に開閉制御を行うことができるため、車両9の充電時における他方の母線31に接続された一般負荷の使用制限を極力回避することができるとともに、エネルギー効率を改善することができる。
【0038】
なお、本実施形態の母線は
図6に示すように、他方の母線31と一方の母線32とを並列に配置してもよい。この場合、開閉制御手段22は一方の母線32に接続した開閉器6bを開閉制御することにより、上記と同様の制御を行うことができる。
【0039】
(実施形態3)
上記実施形態1、2では、母線3を途中で電気的に切り離し可能とする開閉器6を1台使用して、各分岐回路を、この開閉器6を境に、他方(主幹ブレーカ側)の母線31から分岐された回路からなる第一分岐群7と、一方の母線32から分岐された回路からなる第二分岐群8とに区分したものであったが、
図7に示す本実施形態では、母線3を途中で電気的に切り離し可能とする開閉器(第一開閉器23、第二開閉器24)を2台使用して、各分岐回路を、第一分岐群7と、第二分岐群8と、第三分岐群27に区分している。すなわち、他方の母線31と一方の母線32との間に中間の母線33を配置し、第三分岐群27は中間の母線33から分岐されている。
【0040】
第一分岐群7は、第一開閉器23の他方の母線31(主幹ブレーカ側)から分岐された回路からなり、第二分岐群8は、第二開閉器24の一方の母線32から分岐された回路からなり、第三分岐群27は、第一開閉器23と第二開閉器24の間に位置する中間の母線33から分岐された回路からなるものとする。
【0041】
本実施形態において、第一分岐群7には、一般負荷を接続し、第二分岐群8には、車両9の充電に使用する車両用充電装置10、および、分散電源装置15(太陽光発電・燃料電池)と蓄電池28を接続し、第三分岐群27には、一時的な使用の制限を容認する一般負荷を接続している。すなわち、第三分岐群27の負荷は、第一分岐群の負荷に比べて使用制限を受け易くなる。なお第二分岐群8に非常時に使用する非常用負荷(電灯など)を接続してもよい。
【0042】
分電盤1内に制御ユニット16を設けた点、および、制御ユニット16内に開閉制御手段22の他、接続検出手段17と、発電計測手段18と、電力計測手段19と、車両電力計測手段20と、判定手段21を備える点は、上記実施形態2と同様である。
【0043】
ただし、本実施形態の電力計測手段19では、第一分岐群7に接続された負荷の使用電力(電圧×使用電流)を計測するほか、第三分岐群27に接続された負荷の使用電力(電圧×使用電流)も計測する。すなわち、
図7に示すように使用電流の計測は、他方の母線31の端部にCT25a、中間の母線33の端部にCT25bを設け、その差分を算出から第一分岐群7の使用電流を測定する。またCT25bと一方の母線32の端部に設けたCT25cとの差分から第三分岐群27の使用電流を測定する。なお使用電流の計測は第一分岐群7の分岐回路及び第三分岐群27の全ての分岐回路にそれぞれCTを設け電流値を直接計測してもよい。また第二分岐群8の使用電力は個々の分岐回路に設けたCT(図示せず)により計測することができる。
【0044】
本実施形態の判定手段21では、
図8に示すフローに従って、負荷の使用電力、分散電源装置15の発電量に基づいて開閉器(第一開閉器23、第二開閉器24)の開閉要否制御の判定を行う。なお、車両非接続時には、第一開閉器23、第二開閉器24が共に閉路している。
【0045】
図7に示すように、まず、接続検出手段17で車両9の接続が検出を行う(ST1)。続いて、電力計測手段19で負荷の使用電力(電圧×使用電流)を計測し、第一分岐群7および第三分岐群27に接続された負荷の使用電力の総量が所定値(例えば定格の70%)未満であれば第一開閉器23、第二開閉器24について共に閉路維持判定を行う(ST2・ST3)。この場合、各分散電源装置15における発電量が多い時には、車両用充電装置への電力供給に加えて、一般負荷にも分散電源装置15の電力を供給することで、電気料金の削減を図ることができる。また、各分散電源装置15における発電量が少ない時には、分散電源装置15で不足する充電電力を系統電源14から補って車両用充電装置10に電力を供給することができる。
【0046】
一方、第一分岐群7および第三分岐群27に接続された負荷の使用電力の総量が所定値(例えば定格の70%)以上の場合、発電計測手段18から各分散電源装置15における発電量情報を取得し、更に、分散電源装置15の発電量を判定する(ST2・ST4)。
【0047】
分散電源装置15の発電量が車両9の充電電力に対して所定の割合(例えば120%)以上であれば、第一開閉器23は開路判定及び第二開閉器24は閉路維持判定を行う(ST5)。この場合、第一分岐群7の一般負荷は系統電源14より安定的に電力が供給される。第三分岐群27の一般負荷、及び第二分岐群8の車両9には、分散電源装置15からの発電のみで電力供給が行われる。第三分岐群27の一般負荷には一時的な使用の制限を行う場合があるが、第二分岐群8の車両9に対しては充電制限は回避される。
【0048】
分散電源装置15の発電量が車両9の充電電力に対して所定の割合(例えば120%)未満であれば第一開閉器23は閉路維持判定及び第二開閉器24は開路判定を行う(ST6)。この場合、第一分岐群7および第三分岐群27の一般負荷には系統電源14から安定的に電力が供給される。第二分岐群8の車両9には、分散電源装置15からの電流のみで電力供給が行われるが、分散電源装置からの発電量では充電電力が不足し、契約容量までの余裕も少ないため、、車両9の充電制限判定も合わせて行われる(ST7)
【0049】
なお、車両9の充電が完了・中断された場合や、第一分岐群7および第三分岐群27の使用電力が所定値(例えば定格の70%)未満となった場合、または、発電量が車両9の充電電力に対して所定の割合(例えば120%)以上となった場合には、第一開閉器23及び第二開閉器24は閉路制御され分散電源装置での発電による電力が一般負荷に供給される。
【0050】
本実施形態においては、系統電源が停電した場合に、分散電源から電力を供給できる負荷を分岐群ごとに選択することができる。
制御ユニット16は、系統電源の停電を検出する停電検出手段(図示せず)を備え、系統電源が停電すると、分散電源装置15で発電した電力の逆潮流を防止するために、主幹ブレーカ2を遮断する。なお、停電前の各分岐群の使用電力は制御ユニット16に設けた記憶手段に記憶されている。
判定手段21は発電検出手段18で計測した分散電源装置15の総発電量と、停電前の各分岐群の使用電力とを比較し、総発電量に応じて第一開閉器23と第二開閉器24の開閉を判断する。すなわち、総発電量が十分であれば、第一開閉器23と第二開閉器24を閉路し全ての負荷に電力を供給する。総発電量と放電電力が不十分な場合には、第一開閉器23開路して第二開閉器24を閉路する。また、24開路を開路して、非常用負荷を長時間使用することも可能である。なお、総発電量には蓄電池28から供給される電力も含めることができる。
【0051】
さらに、系統電源が停電した場合には、車両用充電装置に接続した車両より分岐回路の負荷に向けて電力供給してもよい。この場合、制御ユニット16が系統電源14の停電を検出すると、接続検出手段17は車両用充電装置10に接続されている車両からの電力供給の可否を確認し、放電可能な電力量を上記総発電量に加えることができる。
【0052】
なお、本実施形態の母線は
図9に示すように、母線31、32、33を並列に配置してもよい。この場合、開閉制御手段22は各母線に接続した開閉器29a、29b、29cを選択して開閉制御することにより、上記と同様の制御を行うことができる。
【0053】
また、太陽光発電装置を中間の母線33の母線に接続し、燃料電池をほかの母線32に接続してもよい。車両9の接続時に第二開閉器24を開路することにより、太陽光発電で発電した電力の売電を継続することができる。これにより車両には燃料電池で発電した電力のみが充電され、時間帯により割高になる系統電源14から電力供給を受けることなく、一定のコストで充電を行うことができる。
【0054】
本実施形態の充電システムによれば、第一分岐群7および第三分岐群27に接続された負荷の使用電力の総量および分散電源装置15での発電量に基づいて、2段階の開閉制御を行うことができるため、必要に応じて、一時的な使用の制限を容認する一般負荷に対しては適宜デマンドコントロールも併用しつつ、車両9の充電時における他の一般負荷(特に一時的でも使用の制限を回避したい負荷)の使用制限を極力回避することができるとともに、エネルギー効率を改善することができる。