(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114933
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】針用ホルダ及び針装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/15 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
A61B5/14 300H
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-552255(P2013-552255)
(86)(22)【出願日】2012年1月6日
(65)【公表番号】特表2014-510566(P2014-510566A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】GB2012050023
(87)【国際公開番号】WO2012104595
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年1月5日
(31)【優先権主張番号】1101718.3
(32)【優先日】2011年2月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508349702
【氏名又は名称】オルベロン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】バクティアーリ‐ネジャド‐エスファハーニー アラシュ
【審査官】
佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−167578(JP,A)
【文献】
特開2000−084079(JP,A)
【文献】
特開2003−275310(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0200078(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0259143(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0148942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用の針用ホルダであって、
第1の端から第2の端への軸方向に延び、前記第1の端は内部に針を受容する形状となっている中空の本体であって、前記第2の端は開放されていて、前記軸は使用時に前記本体の前記第1の端に配置された針に実質的に整列していることを特徴とする中空の本体と、
把持部であって、前記軸とは角度的にずれた方向に前記把持部が前記本体の外に向かって延伸している第1の状態と、前記把持部が前記針用ホルダによって保持されている針を覆うように、前記把持部が前記本体の前記第1の端より実質的に前方へ配置されている第2の状態との間で前記本体に対して操作可能である把持部と、
と、前記針の使用中にユーザによって前記把持部を介して前記針用ホルダが安定して保持されるように、前記第1の状態で前記把持部が無用の移動をしないようにするための取り外し自在なファスナ
を備える、針用ホルダ。
【請求項2】
前記把持部は、前記第1の状態で前記軸に対して斜交している、請求項1に記載の針用ホルダ。
【請求項3】
前記軸と、前記第1の状態での前記把持部の先端とが成す角度は、30度と80度の間である、請求項1又は2に記載の針用ホルダ。
【請求項4】
前記把持部は、前記第2の状態において前記軸の両サイドに前記本体の前記第1の端から突出し、少なくとも部分的に前記針用ホルダ内の前記針を取り囲む、向かい合った側壁を有し、
前記把持部は、前記本体に対して、前記第1の状態と前記第2の状態との間を枢動可能である、
請求項1に記載の針用ホルダ。
【請求項5】
前記針用ホルダは、反転防止機構を有し、前記第2の状態から前記第1の状態への移動を防止するようになっている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の針用ホルダ。
【請求項6】
前記把持部に一体形成され且つ操作可能な保護部材であって、前記第1の状態において前記軸に対して斜交し、使用時に患者の皮膚上に載って前記本体を所望の角度で支持できるように配置された保護部材を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の針用ホルダ。
【請求項7】
前記把持部は、前記本体の前記第1の端の付近から吊り下がり、前記第1の状態で前記本体の前記第2の端に向かって傾斜し、
前記把持部は、前記本体の前記第1の端の方向に面する1つ又は複数の把持構造を有する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の針用ホルダ。
【請求項8】
前記把持部は、前記本体の両側から吊り下がった、向かい合った側壁を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の針用ホルダ。
【請求項9】
前記本体の前記第1の端を越えて突出し且つ使用時に患者の皮膚上に載るようになった案内面を有する保護部材を備え、前記案内面は、前記軸に対して斜めとなっている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の針用ホルダ。
【請求項10】
前記案内面は、10度から30度の間の角度だけ前記軸から外れている、請求項9に記載の針用ホルダ。
【請求項11】
前記把持部の各側壁は、前記保護部材を提供するような形状となっている、請求項9又は10に記載の針用ホルダ。
【請求項12】
前記本体の内方向を向いた面上に1つ又は複数の制御構造を有し、前記制御構造は、使用時に前記本体の中に挿入される流体容器の上の1つ又は複数の対応する構造と協働する形状となっている、請求項1〜11いずれか一項に記載の針用ホルダ。
【請求項13】
前記軸の周りに配置された複数の細長い制御構造を備え、1つの構造の先端が隣接する構造の後端と重なり合うようになっており、前記制御構造は、前記軸に対して斜めに配置され、前記本体内での前記流体容器の軸方向移動可能角度を制限するようになっている、請求項12に記載の針用ホルダ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の針用ホルダと、
前記針用ホルダの長さ方向の途中に取り付けられ、前記本体の外側である自由端から前記本体の内部にある対向する端部へ向かう軸方向に前記針が実質的に延びるようになった針アセンブリと、
を備える、針装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は針のホルダに関し、特に、これに限定するものではないが、患者の体内の管に針を挿入するために使用される医療用の針ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内の管に挿入する針を支持するために、針ホルダが提供されることは周知である。針ホルダは、1つ又は複数の更なる部材が針を介して血管と流体連通を保持し得るような、支持構造も提供する。
【0003】
そのような針ホルダは、例えば患者から血液を採取する場合に使用される。従来のホルダは概ね筒状の構造をして一端が開放端となっており、その反対側の端部に針を受容する構造を持っている。針は通常長さの一部をホルダに保持され、ホルダの筒状部分の中に部分的に延在するようになっている。
【0004】
この構造を利用すると、筒状構造の開放端の中に別の部材を挿入することが可能であり、ホルダ内部で針と流体接続することができる。そのような構造は、例えば国際出願PCT/US2007/026111号明細書(国際公開第2008/085393号パンフレットとして刊行)に記載されている。
【0005】
患者から採血する場合、採血士(phlebotomist)は通常、針の自由端を静脈などの血管に挿入し、その次にホルダの開放端の中に真空排気されたチューブ又はバイアル(ガラス小瓶)を挿入して針の反対側端部と連通させる。回収チューブ内の負圧により、血液が針を経由して吸引される。次にチューブを取り外して密封し、血液サンプルとする。吸引する流体の個別のサンプル数又は容量に応じて、更なるチューブが接続されてもよい。
【0006】
採血士は一般的に、右利きか左利きかによって、自分の利き手を使って針を挿入する、ということに本発明者らは気が付いた。これは、所望の血管に挿入するために針を注意深く位置決めしなければならないからである。しかし、採血士は、血液回収用のチューブを掴んで挿入する際には、違う方の手で針ホルダを支持するために、手を持ち替えることが多い。そのような手順は厄介であって、針の位置を動かしてしまう可能性がある。
【0007】
その上、チューブを針に接続するためには普通、チューブを針の軸方向に押しつけて、チューブ上のシールを穿刺することが必要である。一般的に予想できるように、そのような手動で掛けた力に対してシールは通常、降伏点までは持ちこたえようとし、降伏点に達すると、シールからの抵抗力が突然減少する。ここでも針が動く可能性があって、針の自由端が血管から外れてしまうことがある。
【0008】
所望のサンプルを回収し終えた後、採血士は針ホルダを支持した状態でチューブをそこから取り外すことが要求される。この動作は、ホルダが適切に支持されていない場合には針の位置をずらしてしまう可能性がある。
【0009】
上記のような理由で針を移動させたり、及び/又はその後再度位置決めしたりすることは一般的に望ましくなく、患者に不快感を与える可能性がある。
【0010】
また、静脈などの血管は、血液を吸引する際に潰れてしまうことがあり、これにより血管の深さが減少してしまう。このために、針をより精度よく位置決めして血管中に保持するようにしなければならない。そのような場合には針の位置決めをし直すことが必要となることもある。
【0011】
患者から抜いた後の露出された針は、採血士又はその後の操作をする人にとって危険要因にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2008/085393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記の1つ又は複数の問題点を軽減するための改良された針ホルダを提供することである。本発明の目的は、使用時に不要な動きを受け難い針ホルダを提供することと考えてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、針をその中に受容するような形状となった第1の端部から、開放された第2の端部へ向かう方向に延伸する概ね中空の本体を有する針ホルダが提供される。ここで使用時には第1の軸は本体の第1の端部に配置された針と実質的に整列している。また、針ホルダは把持部を備え、これは、第1の軸とは角度的にずれた第2の軸の方向に向かって本体から外方向に延伸している。
【0015】
この種の把持部を備えることで、患者に対する針ホルダの手動保持、位置決めが改良されることが分かっている。この保持具合の改善は、使用時に他の部材を針ホルダの開放端に対して接続したり移動させたりすることが要求される場合に、特に有益である。そのような針ホルダの1つの応用は、患者からの流体吸引への適用である。
【0016】
第1の軸は中空本体の回転軸であってもよい。第1の軸と第2の軸の角度のずれは、30度より大きく、一般的には45度より大きくてもよい。第2の軸は第1の軸に対して実質的に直交していてもよい。把持部は第1の軸から実質的に半径方向外向きに延伸していてもよい。一実施形態によれば、把持部は、本体の第2の端部に向かって傾斜又は角度が付くような形状又は配向となっていてもよい。把持部は本体の第1の端部領域から吊り下がっていてもよい。把持部は、例えば、本体の第1の端部の方向に面するか向かっている、1つ又は複数の窪みなどの把持構造を有していてもよい。この把持部は、対向する把持端構造を有する、対向する両側面を持っていてもよい。把持部はその先端に傾斜が付いていてもよい。
【0017】
使用時に把持部は、ホルダの前方(すなわち針の側)から、例えば使用者の親指と他の指との間に快適に保持できるように配置される。このようにホルダは、患者への針の挿入点の近くに手で保持して、ホルダの第2の後側の端部を開放して容易にアクセスできるようにしておくことが可能である。このように針を保持することで、使用時に針の軸方向にかかる力に対して自然に抵抗することができる。把持部の後ろ方向の傾斜は、針ホルダを一般的に患者の皮膚に対してある角度で保持するのに有益である。こうして、針ホルダを使用方向に向けると、保持部が針の挿入点近傍で患者の体に対してほぼ垂直に延伸する。
【0018】
保持部と本体との間のずれの角度は、針又は針ホルダの通常の使用方向の角度に対する余角となっていてもよい。この使用角度は、使用によって異なる可能性があるが、一般的には10度から40度の間であり、第1と第2の軸の間の角度のずれは50度から90度の間である。
【0019】
把持部は実質的に中空、及び/又は側面が開放となっていてもよい。把持部は本体の第1の端部に向かって開放となっていてもよい。
【0020】
一実施形態において、針ホルダは患者の皮膚上に静止するように適合された案内面を持つ保護部材を備えている。本体の第1の端部は、案内面に対して固定された方向に針を保持する、針の保持構造を提供するように構成されていてもよい。保護部材は本体から吊り下がっていてもよい。保護部材は本体から、把持部の方向とは異なる、又は反対の方向に突き出ていてもよい。案内面は第1の軸とは10度から40度の間のずれがあってもよい。保護部材、及び/又は案内面は、本体の長さの4分の1から4分の3の間の長さであってもよい。保護部材、及び/又は案内面は、本体の第1の端部から前方に突き出ていてもよい。保護部材は複数あってもよい。一対の保護部材が、本体の第1の端部の針の保持構造の両側に設けられていてもよい。
【0021】
保護部材は、針の挿入に役立ち、又挿入後に針を所望の方向に支持する。保護部材と把持部の組合せによって、使用時に無用の動きをすることが少ない、針ホルダが提供される。
【0022】
一実施形態において、本体は流体容器を受容するような形状となっている。本体は、解放可能な押し込み又は摩擦嵌合で流体容器と接続するような形状となっていてもよい。本体には、1つ又は複数の容器を受容する構造があってもよい。本体はほぼ筒形の形状であってもよい。
【0023】
本体の第1の端部は、針を受容するための開口を持った端壁を備えていてよい。端壁はその開口のまわりに、ネック又はカラーから成る接続構造を備えていてもよい。
【0024】
一実施形態によれば、把持部は、把持部が第2の軸方向に延伸する第1の状態と、把持部が第1の軸の周りに配置される第2の状態との間で、本体に対して操作可能であってよい。第1の状態は使用状態であってよい。第2の状態は、保管又は廃棄状態であってよい。
【0025】
針ホルダは、把持部を第二の状態に向けることで使用前後における安全が図られていてもよい。把持部は本体部に対して、枢動又は摺動可能に取り付けられていてよい。把持部又は本体の内の一方が、1つ又は複数の枢動構造を備えていてもよい。保持部と本体のもう一方が、枢動構造を受容するための対応する凹部となっていてもよい。
【0026】
把持部は対向する側壁とその間の接続壁とを備えていてもよい。把持部の片側は開放されていてもよい。把持部は使用時には本体に対して移動可能であって、針が把持部の開放側を貫通できるようになっていてもよい。本体に取り付けられる針は第2の位置において、把持部の両側壁の間に配置されてもよい。
【0027】
針ホルダは把持部を第1の状態に維持するための、取り外し自在なファスナを備えていてもよい。把持部又は本体が、留め具又はラッチを備えていてもよい。
【0028】
針ホルダは把持部を第2の状態に維持するための、ファスナを備えていてもよい。このファスナは、反転防止型ファスナであって、把持部又は本体上の構造となっていてもよい。その構造は、把持部と本体との間の第1の方向への相対運動を可能とする第1の傾斜面と、かつ把持部が第2の状態を達成すると、戻りの動作を防止するように配置された第2の面とを有する凹部又はストップ部材を備えていてもよい。第2の面はストップ面であってもよい。
【0029】
一実施形態において、針ホルダは1つ又は複数の制御構造を有する。その、あるいはそれぞれの制御構造は、本体の内面上に形成されていてもよい。制御構造は、使用時に本体内部に挿入される流体容器上の1つ又は複数の対応する構造と協働する形状となっていてもよい。制御構造は第1の軸に対して斜めに配置されていてもよい。制御構造は、流体容器が本体内部で軸方向に可動な範囲を制限するように配置されていてもよい。制御構造は流体容器に掛かる回転力、すなわちトルクを、本体に対して第1の軸方向へ移動する流体容器の運動に変換してもよい。
【0030】
制御構造はほぼ螺旋形の形状であって、螺旋の一部を構成していてもよい。制御構造はねじ形状又は部分ねじ形状となっていてもよい。複数の制御構造は、本体の内周壁の周りに備えられていてもよい。1つの制御構造の始点は、隣接する制御構造の終点の周方向に重なっていてもよい。
【0031】
そのような制御構造を利用することで、容器のシールを穿刺するために、例えば真空排気されたチューブなどのような流体容器を、針の軸方向に押し付ける必要がないようにできる。その代わりに、容器を回転方向に作動させてシールを破ることができ、これにより使用時の軸方向への針の無用の移動を回避するか最小化することができる。制御構造の配向は、第1の軸の方向の外力成分を対応する反力によって少なくとも部分的に本体内部で分解して、針に伝達されないようにしている。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による針ホルダと、本体の外側にある自由端から本体の内部にある対向する端部へ向かう第1の軸の方向に実質的に延伸するように針ホルダに取り付けられた針又は針アセンブリと、から成る針装置が提供される。
【0033】
針又は針アセンブリは、本体の第1の端部によってその長さの一部を支持されていてもよい。
【0034】
流体容器は使用時に針ホルダの本体の第2の端部に挿入可能となっていてもよい。流体容器は、真空排気、又は部分真空排気されてもよい。あるいは、流体容器が患者に投与する流体を含んでいて、正に加圧されていてもよい。流体容器は一般的にシールを有し、使用時に針の端部で穿刺されるように配置されている。シールは弾性材料でできていて、穿刺された後に針と接合して、穿刺した針の周りが密封されるようになっていてもよい。
【0035】
流体容器は、針ホルダ本体の制御構造と協働するための対応する制御構造を有していてもよい。
【0036】
本発明の第3の態様によれば、針を受容する形状となっている第1の端部から、開放された第2の端部に向かう軸方向に延伸する、ほぼ中空の本体を有する針ホルダが提供され、第1の軸は使用時には本体の第1の端部に位置する針と実質的に整列している。ここで本体は、制御構造を有する内面を備え、その制御構造は軸に対して斜めに配置されていて、使用時の本体の軸方向への流体容器の移動を制御するようになっている。
【0037】
本発明の第4の態様によれば、第3の態様による針ホルダの本体上の制御構造に対応する、1つ又は複数の制御構造をその上に有する流体容器が提供される。
【0038】
針ホルダ、針、及び/又は第3又は第4の態様の流体容器の内の任意のもの、あるいはそれらの任意の組合せが、第1又は第2の態様に関連して上記で規定した任意選択の特徴のいずれかを備えていてもよい。
【0039】
本発明の実行可能な実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】使用のために針と流体容器が取り付けられた、本発明の一実施形態による針ホルダの3次元図である。
【
図3】使用のために針と流体容器が取り付けられた、本発明の第2の実施形態による針ホルダの3次元図である。
【
図5】使用状態における
図3の実施形態の側面図である。
【
図6】廃棄状態における
図3の実施形態の側面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態による針ホルダの3次元図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態による、針ホルダと流体容器の3つの操作段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、使用時の改善された支持及び/又は操作のための構造を有する針ホルダと、関連する針装置とを提供する。この針ホルダ及び装置は、体内の血管に対する流体の吸引又は注入を含むその他の適用も包含されるが、瀉血用途に特に好適である。
【0042】
図1、2には、一般的に針ホルダ12と針アセンブリ14と流体容器16とを備えた、使用中の装置10が示されている。
【0043】
針ホルダ12は、第1の端部20とその反対側の端部22とを有する、ほぼ筒状の本体部18を備えている。第1の端部20は針アセンブリ14を挿入可能な中央開口を持った端壁を備えている。端壁にはそこから外方向に突き出たカラー構造24があり、使用時に針アセンブリが針ホルダ内に正しく整列して保持されるようになっている。
【0044】
反対側の端部22は開放されていて、ほぼ円形の平面形状をした開口を画定している。この開口は本体部内にある、長さ方向に実質的に一定の直径をした内部通路に繋がっている。端部22の開口のまわりにはフランジ26が設けられている。
【0045】
把持部28は本体部12から吊り下がり、本体部の端部22からは離間している。把持部28は、対向する両側壁30、32と上壁34と後壁36とを備えている。上壁と後壁は把持部の側壁に繋がり、把持部内に部分的に囲まれた空間を画定している。これに関して、把持部は針ホルダの先端すなわち第1の端部20方向に開放されている。
【0046】
側壁30、32はカラー24とその中にある針アセンブリ14の両側に配置されている。両側壁30、32は、対向する把持構造を持っており、それは各側壁内の窪みの形状をしている。それぞれの窪みは曲線形状であって、それぞれの側壁の先端から後方に向かって延び、後壁36の少し手前で終わっている。従って、各把持構造は前方(すなわち、装置の針側の端)に面していると見なすことができる。
【0047】
両側壁30、32は、本体部の端部壁20の前方に突き出るような形状となっている。側壁30、32は使用時には、本体部の上の位置から本体部18の両側をほぼ下方向に向かって延び、本体部の下方の案内面40で終わる。これらの本体部18の前方と下方に延伸している側壁部分は、保護部材38を構成していると考えることができ、その機能を以下に説明する。保護部材は、案内面40に材料の隆起を与えるような形状であって、案内面の幅が保護部材38の残りの部分よりも大きくなるようになっていてもよい。このような材料の隆起は、保護部材38の大部分の長さに沿って延びる脚部を構成するものと見なしてもよい。
【0048】
保護部材は、組み立てられた装置の長さの約3分の1が案内面40となるような形状である。保護面40の長さの4分の1から2分の1は、本体端部20から前方に突き出ていてもよい。
【0049】
側壁30、32及び対応する保護部材38を含む把持部28は、例えばモールドプロセスによって、本体部と一体で形成されてもよい。針ホルダ12は、一般にプラスチック材料で形成されている。これに替わる実施形態において、本体部18と把持部28は個別に形成された後に相互に結合されて使用される。
【0050】
流体容器16は本体部18の開放端22の中へ挿入されて使用される。この実施形態において、流体容器16は、一端42が閉鎖されたチューブ又はバイアルの形状を取り、その中に流体を保持することができる。針ホルダ28に挿入可能な流体容器16の末端43に向かってカラー44が備えられ、そこにはチューブ26の長手方向に整列したスプライン46状の複数の摩擦部材がある。
【0051】
末端43には、栓又はストッパ48の形をしたシール部材が備えられ、チューブの内部を外部から密閉する。栓48は、通常、ゴムのような物理特性を示す、弾力性のある弾性材料で形成される。
【0052】
この実施形態における流体容器は少なくとも部分的に真空排気されて、容器内の圧力が大気圧より低くなっている。そのような容器は流体、通常は血液を、静脈などの血管から吸引するために使用される。ただし本発明においては、真空排気されていない流体容器に接続して使用されてもよい。そのような代替の容器は、全体又は一部が患者に処方される流体で充填されていてもよく、カートリッジ、チューブ、バイアル、などの形状を取ってよい。そのような容器は正圧となっていてもよい。
【0053】
針アセンブリ14は、第1の端部51と第2の端部52とを持つ針50を備える。長さ方向の中間部において連結構造54が針50の周りに固定され、使用時にカラー24に当接するためのストップ部材56と、カラー24の内部に挿入するために配置された固定具58とを備えていて、使用時に針を本体18にしっかりと保持する。固定具は、カラー24の内表面に対応した、ねじ溝やその他の固定構造を備えていてよい。
【0054】
シース60が固定構造54の後ろに延伸し、構造54の背後の針部分を覆う。シースはポリマ材料で形成されている。針14の後方端部52は使用時には、針ホルダ12とチューブ16の中へ挿入可能である。
【0055】
組み立てた場合に、針51と関連する軸62は、案内面40とは通常10度から20度の間の角度を成す。本実施形態において、角度は略15度である。
【0056】
装置10が
図1に示すように組み立てられると、針アセンブリと本体部18と流体容器16はすべて共通軸62(
図2に示す)上に整列し、この軸は実質的に針50の長さに沿って延在し、大まかには本体部18の内部空洞と流体容器16の中心軸となっている。
【0057】
針の先端51は前方を向き、針ホルダ12と流体容器16のそれぞれの端部22と42は後方を向いていると考えられる。ここに示した方向では、上面34が装置の最上面であり、案内面40が装置の下面であると考えられる。そのような方向や向きに関する参照は1つの装置の好適な方向にのみ特有のものであって、単にその装置と使用法の相対的な特徴を読者が理解するための助けにすぎないことは理解されるであろう。そのような用語は、装置が異なる方向を向いている場合にはそれに応じて解釈されるべきである。
【0058】
使用時には、針アセンブリ14は本体部18に対して、針50の先端51が本体端部20及び保護部材38の最先端部から前方に突き出るようになっている。シース60内部にある針の後端52は、本体部18の内部に突き出ている。この段階では流体容器16は装置10に取り付けられていない。
【0059】
案内面40が注入位置に近い皮膚面上に載るようにして装置を患者の皮膚上に位置決めする。把持部28の両側壁30、32が使用者の親指と1つ又は複数のその他の指との間で把持される。装置は、2mm〜3mm程度の短い距離を前方に滑らされて針の先端51が所望の約15度の角度で皮膚を穿刺するようにする。
【0060】
針の先端は、こうして血管に入る。この位置において、案内面40で支持されているので、装置は使用者の皮膚上で安定する。
【0061】
次に流体容器6が本体部18に軸62にほぼ平行な方向に挿入され、針の後方端部52が栓48を貫通する。針の端部52が栓48内部に入ることにより、シース60は針50の上に引っ込む。従って針が栓48を貫通すると、針の端部52が露出され、血管内にある針の端部51とチューブ16の内部とが、針の反対側の端部52を介して流体連通される。栓48の材料特性により、針50のまわりが栓により密封される。
【0062】
チューブ16内が負圧であることにより、針50を経由して血管から流体が吸引される。チューブ内に流体が吸引されて、チューブと患者の血管との間の圧力差が無くなると、チューブ16をホルダ12の後端から引き抜くことができる。必要があれば更なるチューブを順々に取り付けて、より多くの流体を吸引してその後上記のように取り外すことが可能である。前述したように、正圧を掛けたチューブ16を装置10と共に使用してもよい。チューブ16を利用して血液を吸引した後、針ホルダはそのままで、チューブ16を取り外して、流体で充填された容器に取り換えることにより、患者に流体を投与することも可能である。
【0063】
そのプロセスの間、把持部28を、採血士などの使用者により安定的かつ信頼性良く保持して、装置10が無用の移動をしないようにできる。針の位置を変える必要がある場合には、針50の所望の挿入角度を維持したまま針ホルダを案内面40上で前後に滑らせて、正確な調整をすることが可能である。
【0064】
充分な流体を吸引し終えると、針ホルダ12を案内面40上の後方に滑らせて、針50の端部51を患者の皮膚から抜き去る。そうして装置10を患者から完全に取り去ることができる。
【0065】
本発明の更なる実施形態を、
図3〜8を参照して以下に説明する。これらの実施形態は上記の
図1、2の実施形態と同様であり、簡潔のために類似の機能は繰り返して説明しない。従って、以下で述べる代替的又は相反的な機能を除き、これまでの説明は
図3〜8の実施形態にも当てはまる。
【0066】
図3〜6において、針ホルダ12は、把持部28Aと一体になっていない本体部18Aを有する。すなわち、本体部18Aと把持部28Aは、別々の部品の形態を取り、使用時に合体される。
【0067】
側壁30Aと32Aはそれぞれ、概して円形の平面形状をしたポート64の形の開口を持つ。ポート64付近では2つの側壁30Aと32Aは、本体部18Aの直径と大体同じ距離だけ離れている。これらの側壁30A、32Aは、関連の保護部材38Aとは、実質的なV字形の切込みでそれぞれ離間されている。ポート64はV字形の切込みの頂点又はその隣接場所に位置している。
【0068】
把持部28Aの側壁30A、32Aのそれぞれ、又は両方に、ラッチ構造が含まれている。本実施形態では、ラッチ構造は側壁内の刻み目66の形態となっている。刻み目66はV字形の切込みの端部に面する後側にある。
【0069】
本体部18Aには先端に向かって一対の突起があり、両側面に配置されている。2つの突起は整列していて、ピボット部材68の形態となっている。ピボット部材68は、組み立てて使用する際に、把持部のポート64内に来るように配置されている。
【0070】
本体構造18Aにはラッチ構造70があり、対応する把持部のラッチ構造66と協働するように配置されている。一対のラッチ構造70が本体18Aの対向する両側面に設けられていてもよい。本実施形態において、ラッチ構造は、傾斜面と丸まった先端とを有する突起の形をしている。
【0071】
図5、6は
図3、4の装置を違う状態で示したものである。
図3では装置は第1、すなわち使用時の状態で配置されている。本体18Aのピボット68は、把持部のポート64に配置されている。この状態では、
図1、2に関連して説明したように、把持部は実質的に本体部から立ち上がっている。本体部及び把持部はこの状態ではラッチ突起70が把持部の刻み目66に係合して保持されている。突起70と刻み目は、ぱちんと嵌って係合するか摩擦嵌合タイプの係合となるような形状である。この状態は、針を配置して患者に挿入する際に用いられる。
【0072】
装置が患者から取り外されると、把持部を前方向に矢印Aの方向に回動させてラッチ構造70の係合を解くことで、装置を“安全化”することが可能である。このためには、保護70と刻み目66とのラッチ係合を解放するだけの力を掛ける必要がある。把持部28Aを引き続いて矢印A方向に回動動作させると、保護部材38Aが突起70の傾斜面を乗り越える。それと同時に、側壁30A、32Aが針50の上に来て、
図6に示すように針が把持部28Aで覆われる。
【0073】
図6に示す状態は、装置の保管又は廃棄の状態を表している。把持部は、装置の軸62に概して整列している。この状態において、針は把持部28Aの内部に保持され、針50、特に針の先端51が露出されないようになる。これにより、この後で装置又は装置が入った容器を扱う人が誤って皮膚に針を刺す可能性が大幅に低減される。
【0074】
保護部材38が突起70を乗り越えると、保護面40が突起70の切り立った側面に当たることにより、戻り方向への動作が防止される。この構造により、非可逆の、1回切りの使用の装置が提供されると考えられ、装置は前述したように安全化した後に廃棄することができる。この観点で、ラッチ突起70と刻み目66の間の接続は壊れやすくてもよい。
【0075】
次に
図7、8を参照すると、本発明の更なる実施形態が示されている。
図7において、本実施形態の特徴が
図1、2に示した装置に関連して示されている。ただし、この実施形態は
図3〜6に示した装置と共に使用されてもよい。
【0076】
図7、8において、本体部18Bはその内面に複数の構造72を有している。各構造72は本体部18Bの壁から内側に向かって吊り下がっている。この構造は、細長く、実質的に螺旋形に配置されている。本実施形態において、各構造は部分的な螺旋である。
【0077】
らせん構造は、1つの形状の末端が隣接する形状の先端に重なる配置となっている。本実施形態ではそのような構造が4つ設けられている。構造の配列はねじとして記述されているが、雄部品と雌部品との締結に利用される従来ねじが一般的に1本の連続したねじ構造となっているのとは違う構造であることを理解されたい。また、本実施形態における構造72は、従来型のねじの普通のものより、軸62に対する角度が一般的により大きく配置されている。
【0078】
本体部18Bは又、2つの部分74と76で構成されている点が、
図1の本体部18とは異なる。部分74は後側の直径の大きい部分であり、部分74は前側のより小さな直径となっている部分である。部分74は本体部分の第1の端部20を包含している。部分74と76は、円周状の周縁の形状をした中間壁によって結合されている。部分74と76は一般的にモールドプロセスによって一体形成される。
【0079】
螺旋構造72は部分74内にある。そうして内側に吊り下がって、部分76の直径と同じか少し大きな内径となっている。
【0080】
この実施形態において、流体容器16Aは、カラー44Aの外表面に形成された対応する構造78を有している。4つの直立した螺旋構造78が備えられて、本体部分の構造72の形状に対応する角度となっている。ただし、この構造78は細長い形状であるが、個々の構造は構造72よりも長さが短く、その終端部は重複しないようになっている。構造72はカラー44Aの周縁に等間隔となっている。
【0081】
カラー44Aは部分80と82を持っている。部分80は、直径が大きく、部分82の後方にある。構造78は部分80上にある。部分82は使用時に本体部18Bに挿入される流体容器16Aの端部43の近くにある。部分82は
図2に関して前述したカラー44と同様であって、その周縁に軸方向のスプライン46を持っている。
【0082】
図8の上、中、下の図において、流体容器16Aと本体部18Bは異なる使用段階で表示されている。上の図においては、流体容器16Aのカラー端部が針50の端部52の中へ挿入され、針が栓48の直前にあって、まさに触ろうとしているところである。構造72、78は、両者の接触によりこの状態となるように配置されている。
【0083】
構造72と78の直径は、構造同士が干渉して、単純な軸方向の押込み力では、流体容器16Aがそれ以上本体部18Bの中に入り込まない様になっている。その代り、流体容器16Aを回転させることにより、本体部18Bに対して流体容器16Aを更に駆動させることができる。このようにして、構造78が構造72との間で摺動して、針ホルダの本体部18Bに沿って流体容器16Aをゆっくりと制御して軸方向に駆動させる。
【0084】
針52の終端52が栓の材料48の中に入り、そこを貫通するようになる。流体容器16Aをさらに回転させることにより、針の端部52が栓48を突き破り、針の自由端が栓48を貫通して流体容器の内部に入る。
【0085】
構造78が構造72の内部で摩擦係合することで、そうでない場合に経験し得る、直線的な押込み力を掛けて突き破ることによる痙動に抵抗することができる。
【0086】
本体部分74と76の直径が異なることで、本体18Bを、
図2、4の容器16のような従来型の流体容器にも、又は、
図7、8に示した改良型容器16Aにも接続して使用することが可能となる。従って、従来型容器16は螺旋構造72の内径内を、干渉なしで通過することができ、直径の小さい部分76と直線的に係合することができる。
【0087】
容器のカラーと針ホルダ本体との間の螺旋係合、すなわちねじによる係合は、流体容器の操作をより良く制御できるようにする。本実施形態において、流体容器を逆の、反時計方向に回転させることにより、カラーを構造72から引込めることができ、その地点から先は容器を直線的に本体18Bから引き出すことが可能である。
【0088】
図7と
図8の特徴は、把持構造28と保護部材38とを持つ本体部材に関連して既に説明したが、
図7、8で説明した操作構造は本体部材の内部形状に依存し、
図8に示すような、把持部28、28A、及び/又は保護部材、及び/又は本体部材のその他の外部特徴を持たない本体部材に対しても適用し得ることが理解されるであろう。
【0089】
以上述べた実施形態におけるいずれの特徴も、実行可能でさえあればその他の任意の実施形態に適用可能であるとみなされるべきである。
【0090】
更には、上記の実施形態は、ヒトへの瀉血用途に関連して説明したが、これらの実施形態は獣医学的用途にも利用し得ることを理解されたい。上記の装置は特に血液の吸引に適合されているが、体からの他の流体の吸引、及び/又は血管又はその他の管への流体の注入にも潜在的に使用可能である。