(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置であって、
前記入力コンデンサの充電経路上に設けられ、前記直流入力が投入された際に前記充電経路に発生する突入電流を抑制するための抵抗と、
前記抵抗と並列接続された半導体素子と、
b接点であり、前記半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチと、
前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる制御部と
を備え、
前記半導体素子は寄生容量を有する、電力変換装置。
第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置における突入電流抑制回路であって、
前記入力コンデンサの充電経路上に設けられ、前記直流入力が投入された際に前記充電経路に発生する突入電流を抑制するための抵抗と、
前記抵抗と並列接続された半導体素子と、
b接点であり、前記半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチと、
前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる制御部と
を備え、
前記半導体素子は寄生容量を有する、突入電流抑制回路。
第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置において、前記入力コンデンサの充電に伴って発生する突入電流を抑制するための突入電流抑制方法であって、
前記入力コンデンサの充電経路上に設けられた抵抗により前記充電経路に発生する突入電流を抑制する段階と、
前記抵抗と並列接続された半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチを前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる段階と、
を含み、
前記半導体素子は寄生容量を有する、突入電流抑制方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、スイッチング電源などの電力変換装置は、そのスイッチング素子のスイッチング動作による入力電圧の変動を抑えるために平滑用の入力コンデンサを備えている。この入力コンデンサは電力変換装置の電源投入時に短時間で充電され、このときの充電電流が突入電流となって現れる。この突入電流が、例えば、電力変換装置の入力部に設けられた短絡障害保護用のヒューズの定格電流を超えると、このヒューズが溶断される。これにより入力電圧が遮断され、電力変換装置が機能しなくなる。そこで、このような突入電流による障害を防止するため、この種の電力変換装置は、電源投入時の突入電流を抑制する突入電流抑制回路を備えるのが通例となっている(特許文献1参照)。
【0003】
図4に、従来の電力変換装置3の構成例を示す。
同図に示す電力変換装置3は、直流入力電源Eから供給される直流入力電圧Vinを所望の直流出力電圧Voutに変換するものであり、入力端子TIH,TIL、短絡障害保護用のヒューズF1,F2、電源スイッチSW、EMI(ElectroMagnetic Interference)フィルタ10、力率改善回路(PFC)20、入力コンデンサCin、DC−DCコンバータ30、突入電流抑制回路40、および出力端子TOH,TOLから構成される。
【0004】
このうち、突入電流抑制回路40は、直流入力電源Eの負電極に接続された入力端子TILに繋がるグランドラインDLに介挿された抵抗41と、この抵抗41と並列接続された電界効果トランジスタ42と、この電界トランジスタ42の導通/非導通を制御するための制御部43から構成される。
【0005】
この従来の電力変換装置3によれば、電源スイッチSWが閉じられる前の状態では、制御部43により電界効果トランジスタ42が非導通状態に制御される。この状態から電源スイッチSWが閉じられると、直流入力電源Eから供給される直流入力電圧Vinにより入力コンデンサCinが充電される。このときの充電電流が突入電流Irush’となって入力コンデンサCinの充電経路を流れるが、突入電流Irush’は、この充電経路上に存在する抵抗41により抑制される。
【0006】
一方、制御部43は、電源スイッチSWが閉じられて電源が投入されてから一定時間が経過して突入電流Irush’が消失すると、電界トランジスタ42を導通させる。これにより、抵抗41の端子間が電界効果トランジスタ42により短絡され、抵抗41の抵抗値が顕在化しなくなる。この後、DC−DCコンバータ30が所定のスイッチング動作を開始し、直流入力電源Eから供給される直流入力電圧Vinを所望の直流出力電圧Voutに電力変換する。
【0007】
このように、電力変換装置3において、突入電流Irush’が消失した後に電界効果トランジスタ42を導通させて抵抗41の端子間を短絡することにより、電源投入時に抵抗41により突入電流Irush’を抑制しつつ、電力変換動作時に抵抗41による電力損失の発生を防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年、例えば204〜400Vの高電圧入力仕様の電力変換装置に対する要請が高まっている。このような仕様に対応するためには、電力損失を抑制する観点から、上述の電力変換装置3が備える電界効果トランジスタ42として、オン抵抗の小さなトランジスタが必要とされる。一般に、オン抵抗の小さな電界効果トランジスタは、その構造に起因して、比較的大きなゲート・ソース間寄生容量Cgsおよびゲート・ドレイン間寄生容量Cgdを有している。
【0010】
しかしながら、電界効果トランジスタ42の上述の寄生容量Cgs,Cgdが大きくなると、以下に説明するように、電源投入時に電界効果トランジスタ42が一時的に導通して突入電流Irush’が電界効果トランジスタ42に流れ込み、この電界効果トランジスタ42が破損するおそれがあるという問題がある。
【0011】
図5の波形図を参照しながら、上記問題を説明する。
図5において、時刻t1で前述の
図4に示す電力変換装置3の電源スイッチSWが閉じられると、直流入力電圧Vinによる入力コンデンサCinの充電が開始され、この入力コンデンサCinの端子間電圧Vcinが徐々に上昇する。この充電の際に直流入力電源Eから供給される電流Iinが突入電流Irush’となる。この突入電流Irush’が抵抗41を流れると、抵抗41の端子間電圧が急激に上昇し、この抵抗41に並列接続された電界効果トランジスタ42のドレイン電圧が上昇する。
【0012】
このとき、仮に、電界効果トランジスタ42の寄生容量Cgs,Cgdが十分に小さければ、これらの寄生容量Cgs,Cgdにおける変位電流は小さいので、電界効果トランジスタ42のドレイン電圧が上昇したとしても、このドレイン電圧は寄生容量Cgs,Cgdを介して電界効果トランジスタ42のゲート電圧Vgsを押し上げない。従ってこの場合、電界効果トランジスタ42のゲート電圧Vgsは、制御部43によりゲート閾値電圧Vt以下に維持され、電界効果トランジスタ42は導通しない。
【0013】
しかしながら、電界効果トランジスタ42の寄生容量Cgs,Cgdが大きい場合、突入電流Irush’により電界効果トランジスタ42のドレイン電圧が急激に上昇すると、電界効果トランジスタ42のドレイン電圧が、制御部43から電界効果トランジスタ42のゲートに印加される信号レベルに抗して、寄生容量Cgsと寄生容量Cgdとの比に応じて電界効果トランジスタ42のゲート電圧Vgsを押し上げる。このとき、電界効果トランジスタ42のゲート電圧Vgsが、
図5に示すようにゲート閾値電圧Vtを超えると、この電界効果トランジスタ42が導通する。電界効果トランジスタ42が導通すると、抵抗41を流れるべき突入電流Irush’が電界効果トランジスタ42に流れ込む。
【0014】
ここで、電界効果トランジスタ42が導通すると、この電界効果トランジスタ42に並列接続された抵抗41の抵抗値が顕在化しなくなるため、入力端子TIH,TILから見た入力インピーダンスZinは、抵抗41を除く配線等のインピーダンスZsによって与えられる。従って、この場合の突入電流Irush’のピーク値Ipeak’は、次式(1)のように表される。
Ipeak’=Vin/Zs …(1)
【0015】
通常、配線等のインピーダンスZsは極めて小さいため、式(1)で表されるピーク値Ipeak’が大きくなる。従って、導通した電界効果トランジスタ42に過大な突入電流Irush’が流れ込み、この突入電流Irush’により電界効果トランジスタ42が発熱して破損するおそれが生じることになる。
【0016】
なお、仮に突入電流Irush’により電界効果トランジスタ42が損傷を受けないとすれば、
図5の例では、時刻t1で電源が投入された後に入力コンデンサCinの充電が進むにつれて、突入電流Irush’が徐々に減少する。これにより時刻t2で電界効果トランジスタ42のゲート電圧Vgsがゲート閾値電圧Vtを下回ると、電界効果トランジスタ42が非導通状態に回復する。従って、時刻t2からは、抵抗41のみを突入電流Irush’が流れる。この後、突入電流Irush’が消失した時刻t3で、制御部43が電界効果トランジスタ42を導通させて抵抗41の端子間を短絡させる。時刻t4以降では、直流入力電源Eからの入力電流Iinとして、電力変換動作に伴って電流Inormalが発生するが、このとき、抵抗41の端子間は電界効果トランジスタ42により短絡されているので、この抵抗41による電力損失は発生しない。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電源投入時の突入電流を抑制するための抵抗に並列接続された電界効果トランジスタなどの寄生容量を有する半導体素子を、上記突入電流から保護することができる電力変換装置、突入電流抑制回路、及び突入電流抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る電力変換装置は、第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置であって、前記入力コンデンサの充電経路上に設けられ、前記直流入力が投入された際に前記充電経路に発生する突入電流を抑制するための抵抗と、前記抵抗と並列接続された半導体素子と、b接点であり、前記半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチと、前記直流入力の投入から
前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に
、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる制御部とを備え、前記半導体素子は寄生容量を有する。
【0019】
例えば、前記制御部は、前記直流入力の投入を検知する検知部と、前記検知部により前記直流入力の投入が検知された場合、前記所定期間の計時を開始する計時部と、前記計時部による前記所定期間の計時が終了した場合、前記スイッチを開放させるための第1制御信号を前記スイッチに供給すると共に、前記半導体素子を導通させるための第2制御信号を前記半導体素子の制御端子に供給する信号発生部とを備える。また、前記スイッチは
、例えばフォトモスリレーから構成される。さらに、前記半導体素子は電界効果トランジスタである。
【0020】
本発明に係る突入電流抑制回路は、第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置における突入電流抑制回路であって、前記入力コンデンサの充電経路上に設けられ、前記直流入力が投入された際に前記充電経路に発生する突入電流を抑制するための抵抗と、前記抵抗と並列接続された半導体素子と、b接点であり、前記半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチと、前記直流入力の投入から
前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に
、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる制御部とを備え、前記半導体素子は寄生容量を有する。
【0021】
本発明に係る突入電流抑制方法は、第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置において、前記入力コンデンサの充電に伴って発生する突入電流を抑制するための突入電流抑制方法であって、前記入力コンデンサの充電経路上に設けられた抵抗により前記充電経路に発生する突入電流を抑制する段階と、前記抵抗と並列接続された半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチを前記直流入力の投入から
前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に
、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる段階と、を含み、前記半導体素子は寄生容量を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電源投入時に、突入電流を抑制するための抵抗に並列接続された電界効果トランジスタなどの半導体素子の入力端子と制御端子をスイッチにより短絡するので、電源投入時に上記半導体素子を非導通状態に維持し、上記半導体素子への突入電流の流入を防止することができる。従って、上記半導体素子を突入電流から保護することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態による電力変換装置1の構成例を示す。
電力変換装置1は、第1入力端子TIH、第2入力端子TIL、ヒューズF1,F2、電源スイッチSW、フィルタ100、力率改善回路(PFC)200、入力コンデンサCin、DC−DCコンバータ300、突入電流抑制回路400、第1出力端子TOH、第2出力端子TOLを備える。
【0025】
第1入力端子TIHと第2入力端子TILとの間には直流入力電源Eが接続され、この直流入力電源Eから第1入力端子TIHおよび第2入力端子TILを介して直流入力電圧Vinが電力変換装置1に入力される。第1入力端子TIHには直流入力電源Eの正電極が接続され、第2入力端子TILには直流入力電源Eの負電極が接続され、この第2入力端子VILはグランドGNDに接続されている。本実施形態では、直流入力電源Eから供給される直流入力電圧Vinは、例えば210〜400Vの高電圧であるものとし、本実施形態による電力変換装置1は、このような高電圧に対応した高電圧入力仕様となっている。
【0026】
第1入力端子TIHとフィルタ100の一方の入力部との間には、ヒューズF1と電源スイッチSWとが直列接続され、第2入力端子TILとフィルタ10の他方の入力部との間にはヒューズF2が接続されている。これらヒューズF1,F2は、電力変換装置1で短絡障害が発生した場合に発生する短絡電流を遮断して装置を短絡電流から保護するためのものである。また、電源スイッチSWは、電力変換装置1の電源を投入するためのものであり、電源スイッチSWが閉じられると、直流入力電源Eから直流入力電圧Vinが電力変換装置1に投入される。なお、本実施形態において、ヒューズF1,F2は必須の構成要素ではなく、必要に応じて省略してもよい。
【0027】
なお、
図1において、ヒューズF2とフィルタ100の他方の入力部との間に記載した入力インピーダンスZinは、第1入力端子TIHおよび第2入力端子TILから見た本電力変換装置1の入力インピーダンスを表している。本実施形態では、入力インピーダンスZinは、第1入力端子TIHから入力コンデンサCinを経由して第2入力端子TILに至る入力コンデンサCinの充電経路のインピーダンスであり、この充電経路を構成する配線等のインピーダンスZs(不図示)と、突入電流抑制回路400内の抵抗410の抵抗値rを含む。
【0028】
フィルタ100は、DC−DCコンバータ300のスイッチング動作によって発生するスイッチングノイズの漏洩を防止するためのものであり、例えばコモンモードチョークコイルから構成される。なお、本実施形態において、突入電流を抑制する本発明の課題との関係では、フィルタ100は必須の構成要素ではなく、必要に応じて省略してもよい。
【0029】
フィルタ100の一方の出力部は、力率改善回路200を通じてDC−DCコンバータ300の一方の入力部に接続されており、フィルタ100の他方の出力部は、突入電流抑制回路400内の抵抗410と力率改善回路200を通じてDC−DCコンバータ300の他方の入力部に接続されている。力率改善回路200は、入力電力の力率を改善するためのものであるが、突入電流を抑制する本発明の課題との関係では、力率改善回路200は必須の構成要素ではなく、必要に応じて省略してもよい。
【0030】
入力コンデンサCinは、直流入力電源Eからフィルタ100等を介してDC−DCコンバータ300に供給される直流入力電圧Vinを安定化させるためのものであり、例えば電解コンデンサが用いられる。本実施形態では、入力コンデンサCinの一端は、力率改善回路200、フィルタ100、スイッチSW、ヒューズF1を介して第1入力端子TIHに接続されると共に、入力コンデンサCinの他端は、力率改善回路200、突入電流抑制回路400内の抵抗410、フィルタ100、ヒューズF2を介して第2入力端子TILに接続されている。即ち、入力コンデンサCinは、ヒューズF1,F2等を介して、第1入力端子TIHと第2入力端子TILとの間に接続されている。
【0031】
DC−DCコンバータ300は、直流入力電源Eから第1入力端子TIHと第2入力端子TILとの間に印加される直流入力電圧Vinを電力変換して所望の直流出力電圧Voutを発生させるものである。本実施形態では、DC−DCコンバータ300は、このDC−DCコンバータ300を構成するスイッチング素子(不図示)のスイッチング動作により直流入力電圧Vinを交流電圧に変換し、この交流電圧をトランス(不図示)により電圧変換して所望の直流出力電圧Voutを得るように構成されている。DC−DCコンバータ300により発生された直流出力電圧Voutは第1出力端子TOHおよび第2出力端子TOLを介して出力される。
【0032】
突入電流抑制回路400は、入力コンデンサCinの充電経路上に設けられた抵抗410と、この抵抗410と並列接続されたnチャネル型の電界効果トランジスタ(半導体素子)420と、この電界効果トランジスタ420のソース(入力端子)とゲート(制御端子)との間に接続されたスイッチとして機能するフォトモスリレー430と、これら電界効果トランジスタ420およびフォトモスリレー430を制御するための制御部440を備える。なお、本実施形態では、電界効果トランジスタ420を用いているが、これに限らず、IGBTなど寄生容量を有する半導体素子であれば、本発明において適用は可能である。
【0033】
ここで、抵抗410は、電源スイッチSWが閉じられて直流入力電圧Vinが投入された際(即ち電源投入時)に入力コンデンサCinの充電経路に発生する突入電流Irushを抑制するためのものである。本実施形態では、抵抗410の一端は、フィルタ100およびヒューズF2を通じて入力端子TILに接続されると共に、抵抗410の他端は入力コンデンサCinの他端に接続されている。即ち、抵抗410は、入力端子TIHと入力端子TILとの間に、入力コンデンサCinと直列に接続されている。
【0034】
なお、本実施形態では、入力コンデンサCinの充電経路をなす各ラインのうち、第2入力端子TIHから入力コンデンサCinに至るグランドラインDL上に抵抗410が設けられているが、この例に限定されず、抵抗410は、第1入力端子TIHから入力コンデンサCinに至る電源ラインDH上に設けられてもよく、入力コンデンサ410の充電経路上であれば、どこに設けられてもよい。
【0035】
電界効果トランジスタ420は、電源投入後の通常の電力変換動作の際に抵抗410の端子間を短絡するためのものである。本実施形態では、高電圧入力仕様に対応するため、電界効果トランジスタ420のオン抵抗は小さいものとする。前述したように、一般に、オン抵抗の小さな電界効果トランジスタは、その構造に起因して、ゲート・ソース間寄生容量Cgsおよびゲート・ドレイン間寄生容量Cgdの各容量値は比較的大きくなるが、本実施形態でも、そのような特性を有するデバイスを電界効果トランジスタ420として想定する。
【0036】
フォトモスリレー430は、直流入力電圧Vinの投入から所定期間、電界効果トランジスタ420を非導通状態に維持するためのスイッチとして機能するものである。本実施形態では、フォトモスリレー430は、受光しない状態ではオン状態を維持し、受光するとオフ状態になる。従って、フォトモスリレー430はb接点として機能する。ただし、直流入力電圧Vinの投入から所定期間にわたって電界効果トランジスタ420を非導通状態に維持することができる限度において、フォトモスリレー430をどのようなスイッチで置き換えてもよく、b接点に限定されない。例えば、フォトモスリレー430に代えて、各種のトランジスタを用いてもよい。
【0037】
制御部440は、直流入力電圧Vinの投入から所定期間が経過するまでフォトモスリレー430をオン状態に制御して、スイッチとしてのフォトモスリレー430を開成させるものである。また、制御部440は、上記所定期間の経過後、フォトモスリレー430をオフ状態に制御してスイッチとしてのフォトモスリレー430を開放させると共に、電界効果トランジスタ420を導通状態に制御するように機能するものである。
【0038】
制御部440の構成を具体的に説明する。
制御部440は、検知部441、計時部442、信号発生部443から構成される。このうち、検知部441は、電源スイッチSWが閉じられたことによる直流入力電圧Vinの投入、即ち電源の投入を検知するものである。本実施形態では、検知部441は、第1入力端子TIHに繋がる電源ラインDHとグランドGNDとの間に直列接続された抵抗R1,R2と、これら抵抗間の接続ノードN12の電圧V12と所定の参照電圧Vrefとを比較するコンパレータCOMから構成される。抵抗R1,R2の各値と参照電圧Vrefは、電源が投入された際の電源ラインDHの電圧上昇をコンパレータCOMで判別できるような適切な値に設定される。コンパレータCOMの入出力特性は、検知動作の安定化のため、ヒステリシス特性を有するものとしてもよい。
【0039】
計時部442は、検知部441により直流入力電圧Vinの投入が検知された場合、所定期間の計時を開始するものである。計時部442は、上記所定期間として、直流入力電圧Vinが投入されてから突入電流Irushが消失した状態になるまでの一定時間を計時する。本実施形態では、計時部4412は、上記所定期間の計時を終了した場合、即ち、電源投入から所定期間が経過した場合にハイレベルの信号を出力する。このハイレベルは、信号発生部443を構成するnpn型トランジスタQ1をオンさせることが可能なレベル(例えば電源電圧Vccのレベル)に設定されている。また、計時部442は、電源の投入が検知されない場合、ロウレベルの信号を出力する。このロウレベルは、信号発生部443を構成するnpn型トランジスタQ1をオフさせることが可能なレベル(例えばグランドレベル)に設定されている。
なお、計時部442は、例えば、クロック信号をカウントすることにより所定期間を計時する回路、CR時定数を利用して所定期間を計時する回路、遅延回路を利用して所定期間を計時する回路など、種々の形式の回路により実現可能である。
【0040】
信号発生部443は、電界効果トランジスタ420およびフォトモスリレー430を制御するための制御信号を発生させるものである。本実施形態では、信号発生部443は、計時部442により所定期間が計時された場合、フォトモスリレー430からなるスイッチを開放させるための第1制御信号SPをフォトモスリレー430に供給する。本実施形態では、第1制御信号SPは光信号である。また、信号発生部443は、計時部442により所定期間が計時された場合、電界効果トランジスタ420を導通させるための第2制御信号SGを電界効果トランジスタ420のゲートに供給するように構成されている。本実施形態では、第2制御信号SGは電圧信号である。
【0041】
信号発生部443の具体的な構成を説明する。
信号発生部443は、フォトダイオードPD、抵抗R3,R4,R5,R6,R7、npn型トランジスタQ1、pnp型トランジスタQ2、コンデンサC1から構成されている。ここで、フォトダイオードPDのアノードには電源電圧Vccが供給され、このフォトダイオードPDのカソードは抵抗R3の一端に接続されている。抵抗R3の他端は、npn型トランジスタQ1のコレクタに接続され、このnpn型トランジスタQ1のエミッタはグランドGNDに接続されている。npn型トランジスタQ1のベースには計時部442の出力信号が供給される。本実施形態では、フォトダイオードPDは上述のフォトモスリレー430と光学的に結合されており、フォトダイオードPDが発光した場合、フォトモスリレー430がオン状態になり、フォトダイオードPDが発光していない場合、フォトモスリレー430はオフ状態を維持する。
【0042】
抵抗R4の一端には、電源電圧Vccが供給され、この抵抗R4の他端は、抵抗R5の一端と共にpnp型トランジスタQ2のベースに接続されている。抵抗R5の他端は、抵抗R3の他端と共にnpn型トランジスタQ1のコレクタに接続されている。pnp型トランジスタQ2のエミッタには電源電圧Vccが供給され、このpnp型トランジスタQ2のコレクタは抵抗R6の一端に接続されている。抵抗R6の他端は、抵抗R7の一端と共に電界効果トランジスタ420のゲートに接続されている。抵抗R7の他端は電界効果トランジスタ420のソースに接続されている。電界効果トランジスタ420のゲートとソースとの間には電圧安定化用のコンデンサC1が接続されている。
【0043】
次に、
図2に示す動作波形図を参照しながら、本実施形態による電力変換装置1の動作について、突入電流抑制回路400の動作(突入電流抑制方法)に着目して説明する。
時刻t1以前の電源投入前の初期状態では、電源ラインDHおよびグランドラインDLは共にグランドレベルにあり、入力コンデンサCinは放電された状態にある。
【0044】
この初期状態では、突入電流抑制回路400を構成する制御部440内の抵抗R1と抵抗R2との間の接続ノードN12の電圧V12はロウレベル(グランドレベル)となっており、これを入力するコンパレータCOMの出力信号はロウレベルとなっている。また、コンパレータCOMからロウレベルが入力される計時部442の出力信号もロウレベルになっており、このロウレベルがベースに供給されるnpn型トランジスタQ1はオフ状態になっている。このため、時刻t1以前の電源投入前の状態では、フォトダイオードPDには電流が流れず、フォトダイオードPDは発光していない状態にあり、第1制御信号SPは発生されていない。従って、フォトダイオードPDと光学的に結合されたフォトモスリレーPRはオフ状態にある。
【0045】
また、この初期状態において、npn型トランジスタQ1がオフ状態であれば、抵抗R4と抵抗R5との間のノードの電圧は電源電圧Vccのレベルに等しくなり、このレベルがベースに供給されるpnp型トランジスタQ2はオフ状態となっている。pnp型トランジスタQがオフ状態であれば、第2制御信号SGは発生されず、抵抗R6と抵抗R7との間のノードの電圧、即ち電界効果トランジスタ420のゲート電圧Vgsは、そのゲート閾値電圧Vtよりも低いグランドレベルになる。従って、時刻t1以前の電源投入前の状態では、電界効果トランジスタ420は非導通状態になっている。
【0046】
このような初期状態から、時刻t1で電源スイッチSWが閉じられ、電源が投入されると、直流入力電源Eから電源ラインDHおよびグランドラインDLを介して直流入力電圧Vinが入力コンデンサ410の端子間に印加される。これにより、入力コンデンサCinの充電が開始され、入力コンデンサ410の端子間の電圧Vcinが上昇を開始する。このときの充電電流により、第1入力端子TIHから入力コンデンサCinを介して第2入力端子TILに至る充電経路に突入電流Irushが発生する。
【0047】
この突入電流Irushが抵抗410を流れると、抵抗410の端子間の電圧が上昇し、電界効果トランジスタ420のドレイン電圧が上昇する。電界効果トランジスタ420のドレイン電圧が上昇すると、この電界効果トランジスタ420の前述の寄生容量Cgs,Cgdを介してゲート電圧Vgsが押し上げられようとする。しかしながら、このとき、フォトモスリレー430がオン状態にあるので、このフォトモスリレー430により電界効果トランジスタ420のソースとドレインとの間が短絡されている。このため、電界効果トランジスタ420のゲート電圧Vgsがロウレベルに維持され、このゲート電圧Vgsがゲート閾値電圧Vgsを超えない。従って、突入電流Irushにより電界効果トランジスタ420のドレイン電圧が上昇しても、この電界効果トランジスタ420は非導通状態に維持される。
【0048】
電界効果トランジスタ420が非導通状態に維持されれば、突入電流Irushは、電界コンデンサ420には流れ込まず、抵抗410を流れ続ける。このときの突入電流Irushが流れる充電経路のインピーダンスZinは、前述の従来技術で述べた数式(1)における線路のインピーダンスZsに抵抗410の抵抗値rを加算したものになる。従って、突入電流Irushのピーク値Ipeakは、次式(2)により表される。
Ipeak=Vin/(Zs+r) …(2)
【0049】
ここで、前述の従来技術における式(1)により表される突入電流Irush’と、本実施形態における式(2)により表される突入電流Irushから理解されるように、本実施形態によれば、抵抗410の抵抗値rが顕在化するので、突入電流Irushのピーク値Ipeakが従来技術におけるピーク値Ipeak’よりも小さくなり、突入電流Irushが抑制される。
【0050】
このように、本実施形態によれば、電界効果トランジスタ420のゲート・ソース間寄生容量Cgsおよびゲート・ドレイン間寄生容量Cgdの各値が大きくなったとしても、フォトモスリレー430により電界効果トランジスタ420が非導通状態に維持されるので、突入電流Irushが電界効果トランジスタ420に流れ込まず、抵抗410により有効に抑制される。また、本実施形態によれば、電界効果トランジスタ420に突入電流Irushが流れ込まないので、この電界効果トランジスタ420が突入電流Irshにより損傷を受けることがない。
【0051】
上述の電源の投入により、直流入力電圧Vinによる入力コンデンサCinの充電が進むにつれ、入力コンデンサCinの端子間の電圧Vcinが上昇し、これに伴い、突入電流Irushが徐々に低下する。そして、入力コンデンサCinの充電が完了すると、突入電流Irushは消失する。
【0052】
一方、上述の電源の投入により、電源ラインDH上の電圧VDHが上昇を開始する。この電圧VDHの上昇に伴って、抵抗R1と抵抗R2との間の接続ノードN12の電圧V12が上昇する。この電圧V12が参照電圧Vrefを超えると、コンパレータCOMはハイレベルを計時部442に出力する。計時部442からのハイレベルを受けて、計時部442は、所定期間の計時を開始する。そして、上述の入力コンデンサCinの充電が完了して突入電流Irushが消失した後の時刻t3で所定期間の計時を終了すると、計時部442は、ハイレベルをnpn型トランジスタQ1のベースに出力する。
【0053】
計時部442からのハイレベルを受けて、信号発生部443のnpn型トランジスタQ1がオン状態になる。これにより、フォトダイオードPDのカソードが抵抗R3およびnpn型トランジスタQ1を介してグランドノードに電気的に接続されてフォトダイオードPDに電流が流れる。これによりフォトダイオードPDが発光し、この発光により光信号である第1制御信号SPが信号発生部443から出力される。フォトダイオードPDと光学的に結合されたフォトモスリレー430は、信号発生部443から第1制御信号SPとして出力された光信号を受光すると、オフ状態になる。これにより、電界効果トランジスタ420のソース・ドレイン間の短絡状態が解除される。
【0054】
また、信号発生部443が上述の第1制御信号SPを出力する過程でnpn型トランジスタQ1がオン状態になると、抵抗R4と抵抗R5とにより電源電圧Vccを分圧して得られるロウレベルの信号がpnp型トランジスタQ2のベースに印加される。このロウレベルの信号を受けてpnp型トランジスタQ2がオン状態になり、このpnp型トランジスタQ2のコレクタから第2制御信号SGとしてハイレベル(電源電圧Vcc)が出力される。この第2制御信号SGのハイレベルの電圧は、抵抗R6と抵抗R7により分圧されて電界効果トランジスタ420のゲートに印加される。これにより、電界効果トランジスタ420は導通状態になる。
【0055】
このように、時刻t3で計時部442による所定期間の計時が終了すると、信号発生部443は、第1制御信号SPによりフォトモスリレー430をオフ状態に制御すると共に、第2制御信号SGとしてハイレベルを出力する。この第2制御信号SGにより、電界効果トランジスタ420のゲート電圧Vgsがゲート閾値電圧Vtを超え、この電界効果トランジスタ420が導通状態になる。なお、この例では、フォトモスリレー430をオフ状態に制御するタイミングと、電界効果トランジスタ420を導通状態に制御するタイミングはほぼ同じになるが、これに限定されることなく、これらのタイミングをずらしてもよい。例えば、フォトモスリレー430をオフ状態に制御した後に一定の時間をおいて制御信号SGにより電界効果トランジスタ420を導通させてもよい。
【0056】
電界効果トランジスタ420が導通すると、抵抗410の端子間が電界効果トランジスタ420により短絡され、この抵抗410の抵抗値rが、入力コンデンサCinの充電経路上に顕在化しなくなる。この後の時刻t4においてDC−DCコンバータ300がスイッチング動作を開始して電力変換動作が行われる。このとき、抵抗410の抵抗値rは顕在化していないので、グランドラインDLに電力変換動作に伴う電流Inormalが流れても、抵抗410による電力損失は発生しない。
【0057】
上述したように、本実施形態によれば、電源投入時にフォトモスリレー430により電界効果トランジスタ420のソース・ドレイン間を短絡し、この電界効果トランジスタ420を非導通状態に維持するようにしたので、突入電流Irushが電界効果トランジスタ420を流れることがなくなる。従って、突入電流Irushから電界効果トランジスタ420を保護することが可能になる。
また、上述の実施形態では、電界効果トランジスタ420のソース・ドレイン間を短絡するためのスイッチとしてフォトモスリレー430を用いたので、安価に装置を構成することができる。
【0058】
(変形例)
次に、上述の実施形態の変形例を説明する。
図3は、上述の実施形態の変形例による電力変換装置2の構成を示す。この変形例による電力変換装置2は、上述の実施形態による
図1に示す電力変換装置1の構成において、抵抗R5が省かれ、抵抗R4が電源電圧Vccの電源ノードとフォトダイオードPDとの間に移動され、pnp型トランジスタQ2のベースが抵抗R4とフォトダイオードPDとの間のノードに接続されている。その他の構成は、
図1に示すものと同一である。
【0059】
上述の
図1に示した電力変換装置1によれば、計時部442が所定期間の終了を計時するまで、第2制御信号SGは発生されないが、
図3に示す変形例では、第2制御信号SGとして、定常的に電源電圧Vccのレベルが抵抗R6の一端に印加されている。従って時刻t3で計時部442が計時を終了するまでの所定期間においても、電界効果トランジスタ420を導通させるための第2制御信号SGが発生された状態となっている。
【0060】
ここで、時刻t3までは前述のようにフォトモスリレーPRがオン状態にあるので、電界効果トランジスタ420のゲート・ソース間が短絡され、そのゲート電圧Vgsはグランドレベルに維持される。このため、第2制御信号SGが発生された状態にあっても、上述の電力変換装置1と同様に、時刻t3までは電界効果トランジスタ420が非導通状態に制御される。従って、上述の電力変換装置1と同様に電界効果トランジスタ420を突入電流Irushから保護することができる。
この変形例によれば、上述の電力変換装置1と比較して、抵抗R5を備えないので、構成を簡略化することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態では、電源ラインDHの電圧VDHから電源の投入を検知するものとしたが、この例に限定されず、スイッチSWの投入を検知することにより、電源の投入を検知するものとしてもよい。