特許第6114953号(P6114953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鈴木 健一の特許一覧

<>
  • 特許6114953-自走式養殖生簀 図000002
  • 特許6114953-自走式養殖生簀 図000003
  • 特許6114953-自走式養殖生簀 図000004
  • 特許6114953-自走式養殖生簀 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6114953
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】自走式養殖生簀
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/00 20170101AFI20170410BHJP
   B63B 35/26 20060101ALI20170410BHJP
   B63H 9/02 20060101ALI20170410BHJP
   B63B 35/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   A01K63/00 D
   B63B35/26 Z
   B63H9/02
   B63B35/00 T
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-165142(P2016-165142)
(22)【出願日】2016年8月8日
【審査請求日】2016年11月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595170867
【氏名又は名称】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−121586(JP,A)
【文献】 特開昭56−47393(JP,A)
【文献】 特開2009−179313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00
A01K 63/00
B63B 35/00−35/26
B63H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に概ね円形に配置される浮体によって海水面に浮かべて使用する構造であって、それぞれ制御機能を持たせた自転駆動用モーターを備えるマグナスローターを該浮体上のほぼ均等分割された少なくとも3個所に設けた養殖生簀
【請求項2】
マグナスローター自転駆動用モーターの電力を供給するため、生簀周囲に配置する浮体表面あるいは生簀周辺部に太陽電池パネルを設置することを特徴とする請求項1記載の養殖生簀
【請求項3】
電波による遠隔操作によって、マグナスローターの自転駆動用モーターを制御することを特徴とする請求項1及び2記載の養殖生簀
【請求項4】
前記円形に配置される浮体の均等分割する各位置の外側に小型浮体を着脱可能に設け、マグナスローターは前記の円形に配置される浮体上に代えて該小型浮体上に各一基を設けることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の養殖生簀
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水面に設置する魚養殖生簀の自走移動を可能にする駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水面に浮かべて利用する魚養殖生簀(以下「養殖生簀」という。)を移動する場合、魚が傷付くことを避けるため、養殖魚を取り出した後に曳航するか、又は解体して新たな設置海水面付近で改めて組み立て直すのが一般的である。養殖生簀は、環境汚染防止の観点から一定のサイクルで移動することが望ましく、養殖生簀の大幅な増加が予想される中でより効率的に移動するための技術開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平23−121586
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
養殖生簀に魚を泳がせたままの状態で海水面移動を可能にする養殖生簀の自走移動技術を提案する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の自走式養殖生簀は、外周に概ね円形に配置される浮体(5)によって海水面に浮かべて使用する構造であって、それぞれ出力制御機能を持たせた自転駆動用モーターを備えるマグナスローター(以下「ローター」という。)を該浮体部上のほぼ均等分割された少なくとも3個所に設けた養殖生簀である。
【0007】
請求項2に記載の自走式養殖生簀は、ローター自転駆動用電力を供給するため、養殖生簀周囲の円形に配置する浮体表面あるいは生簀周辺部に太陽電池パネルを設置することを特徴とする請求項1記載の養殖生簀である。
【0008】
請求項3に記載の自走式養殖生簀は、電波による遠隔操作によって、ローターの自転駆動を制御することを特徴とする請求項1及び2記載の養殖生簀である。
【0009】
請求項4に記載の自走式養殖生簀は、前記の円形に配置される浮体の均等分割される各位置の外側に小型浮体を着脱可能に設け、円形に配置される浮体上に代えて、ローターを各一基、該小型浮体上に搭載することを特徴とする請求項1から3記載の養殖生簀である。
【発明の効果】
【0010】
養殖生簀の移動の際、スクリュー音による魚のストレス発生を防ぎ、微速移動によって養殖生簀の形状変化を防ぎ魚が網との接触を抑制できる。ローターに作用する風のエネルギーを利用するため燃費効率が高く、また太陽電池を備えれば外部からのエネルギー供給なしでの稼働が可能となる。さらにローターをそれぞれ制御することで養殖生簀に回転を加えながら移動させることができ、大幅に水の抵抗を減らした省エネ移動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】風によって回転円筒に推進力が生じるマグナス効果を説明する模式図
図2】本発明に係る一実施形態を示す移動式養殖生簀の斜視図
図3】本発明に係る他の実施形態を示す移動式養殖生簀の斜視図
図4】それぞれ制御可能なローターを3基設置した養殖生簀を自走させる際のローター制御の例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
養殖生簀に魚を泳がせたままの状態で海水面移動を可能にするには、魚にストレスを与えない工夫が不可欠である。つまり、移動に際しての水の抵抗による養殖生簀の形状の崩れや移動による水流の変化に十分配慮しなくてはならない。また、養殖生簀を移動する際には、網や浮体に生じる大きな水の抵抗に対処することも重要である。
【0013】
これらの課題に対処するために、本案は、既にローター船用ローターとして実用化されている(特許文献1参照)マグナス効果を利用して推進力を生み出すローターを、養殖生簀移動用の推進力を生む手段として用いるものである。
【0014】
該ローターは自転するための駆動力を必要とする他は自然界の風だけで推進力を生み出すため、自然界の潮流の流速以下の微速度移動も可能になり、さらにスクリューを持たないこともあって、移動時に養殖中の魚に余分なストレスが生じ難い特徴を有する。
【0015】
養殖生簀は、平面視の状態で概ね円形に配置される浮体から水中に円筒形状に下された網が底部において閉じられ、養殖生簀の内部と外部が仕切られた構造である必要がある。養殖生簀が海水面を移動する際に浮体の円形構造が崩れないよう浮体の各部分をワイヤー等によって繋ぐ構造であることも自走には有効である(図2
【0016】
ローター(6)は、浮体をほぼ均等に分割した少なくとも3個所に設置する。ローターの数を増やせば小型化が可能になり、浮体部に加わる重量を効果的に分散し、さらに浮体への着脱性も向上する。
【0017】
各ローターの回転が同じ場合、基本的に養殖生簀は向きを保った状態で移動することになり、この場合、網や浮体には大きな水の抵抗が生じ、移動には大きな推進力が必要になる。一方、ローターを個別に制御することで、養殖生簀全体をゆっくりと回転(10)させながら目的の方向に移動させることが可能となる(図4)。この養殖生簀の回転によって水の抵抗は効果的に縮減され、各ローターの回転をそれぞれ制御しない場合に比べ養殖生簀の移動はより容易になる。
【0018】
この養殖生簀の回転を効果的に生み出すには、少なくとも3基のローターを均等分割された浮体上に設置し、風向を基にして各ローターをそれぞれ回転制御することが必要である。(図4
【0019】
養殖生簀は微速のため移動には長時間を要する。したがってローターの制御を電波によって遠隔操作することで操作性が高まり、また複数の養殖生簀の同時移動も容易となる。
【0020】
各1基のローターをそれぞれ小型浮体(11)に乗せ、前記の浮体上のローターに代えて、養殖生簀に該小型浮体を接続して用いる構造とすることで、ローターを浮体上に設置する場合に比べてローターの維持管理が容易になる。また、外周に概ね円形に配置される浮体を有する養殖生簀にも自走機能の追加が容易となる。(図3
【0021】
効果的に養殖生簀を回転させることができれば、浮体の配置が多角形であっても自走移動における水の抵抗は一定程度縮減できる。この場合、少なくとも各内角が135度以上の多角形であることが望ましい。
【符号の説明】
【0022】
1 回転円筒
2 マグナス効果による出力
3 浮体構造
4 ワイヤー
5 浮体
6 ローター
7 網
8 回転しているローター
9 回転を停止しているローター
10 生簀の回転方向
11 小型浮体
【要約】
【課題】 生簀に魚を泳がせた状態で海水面移動を可能にする生簀の自走移動技術を提案する。
【解決手段】外周に概ね円形に配置される浮体(5)によって海水面に浮かべて使用する構造の魚養殖生簀であって、該浮体のほぼ均等分割された少なくとも3個所の浮体上に、それぞれ制御機能を持たせた駆動用モーターを備えるマグナスローター(6)を設ける。マグナスローターの自転駆動は電波による遠隔操作も可能とする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4