特許第6114959号(P6114959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114959
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】多極電動機のリプルカウンタ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/21 20160101AFI20170410BHJP
   H02K 13/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H02K11/21
   H02K13/00 P
【請求項の数】22
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-231416(P2012-231416)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2013-90569(P2013-90569A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】10 2011 116 652.5
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512271125
【氏名又は名称】ニデック モーターズ アンド アクチュエーターズ(ジャーマニー) ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】NIDEC MOTORS & ACTUATORS (GERMANY) GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100111866
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ブルーン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フェゲル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ エベル
(72)【発明者】
【氏名】チ サクリ ビン シャムソル
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−336709(JP,A)
【文献】 特開昭62−230340(JP,A)
【文献】 特開2010−207000(JP,A)
【文献】 特開2008−088647(JP,A)
【文献】 特開2006−288112(JP,A)
【文献】 特表2009−521202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/21
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のブラシおよび第2のブラシと、
転子と共に回転するように配列された整流子とを備える電動機を含む非同期カウンタであって、
前記整流子は、周辺表面を有する少なくとも1つの円筒部分を含み、前記周辺表面の上に複数の片が配列され、絶縁部分が前記複数の片の間に介在し、
前記複数の片の総数は、前記電動機の極の総数の倍数ではなく、
前記第1のブラシは、前記周辺表面の第1の部分をカバーするように配列された第1の幅を有し、前記第2のブラシは、前記周辺表面の第2の部分をカバーするように配列された第2の幅を有し、
前記第1の幅および前記第2の幅は相互に異な
前記回転子のフル回転の任意の時点において、全部で2つまたは3つの片が、前記第1のブラシおよび前記第2のブラシと電気接触するように、前記複数の片、前記第1のブラシ、および前記第2のブラシが配列された、
電流リプルのピークを検出する非同期カウンタ
【請求項2】
第1のブラシおよび第2のブラシと、
回転子と共に回転するように配列された整流子とを備える電動機を含む非同期カウンタであって、
前記整流子は、周辺表面を有する少なくとも1つの円筒部分を含み、前記周辺表面の上に複数の片が配列され、絶縁部分が前記複数の片の間に介在し、
前記複数の片の総数は、前記電動機の極の総数の倍数ではなく、
前記第1のブラシは、前記周辺表面の第1の部分をカバーするように配列された第1の幅を有し、前記第2のブラシは、前記周辺表面の第2の部分をカバーするように配列された第2の幅を有し、
前記第1の幅および前記第2の幅は相互に異なり、
前記回転子のフル回転の任意の時点において、全部で3つまたは4つの片が、前記第1のブラシおよび前記第2のブラシと電気接触するように、前記複数の片、前記第1のブラシ、および前記第2のブラシが相互に対して配列された、
電流リプルのピークを検出する非同期カウンタ。
【請求項3】
前記電動機の極の総数は4であり前記電動機のブラシの総数は2または4である、請求項1または請求項2に記載の非同期カウンタ。
【請求項4】
前記第1のブラシと前記第2のブラシとの間で規定されるブラシ角度が、前記片の第1の系列によって規定される第1の片角度より大きいこと、および更に、片の前記第1の系列に、該片の第1の系列に隣接する追加の片を加えたものによって規定される第2の片角度よりも小さいこと、の双方であるように、前記複数の片、前記第1のブラシ、および前記第2のブラシが相互に対して配列された、請求項1または請求項2に記載の非同期カウンタ。
【請求項5】
前記第1のブラシと前記第2のブラシとの間で規定されるブラシ角度が、2つの前記片の任意の組み合わせによって規定される片角度と等しくないように、前記複数の片、前記第1のブラシ、および前記第2のブラシが相互に対して配列された、請求項1または請求項2に記載の非同期カウンタ。
【請求項6】
前記複数の片は、不均等サイズであり、および/または相互から不均等の距離だけ間隔を空けられている、請求項1または請求項2に記載の非同期カウンタ。
【請求項7】
前記第1のブラシおよび前記第2のブラシは、相互に対して約90°よりも小さい角度で前記整流子の周りに配列された、請求項1または請求項2に記載の非同期カウンタ。
【請求項8】
4つの極および10の片を含み、前記第1のブラシと前記第2のブラシとの間の角度が約86°である、請求項1または請求項2に記載の非同期カウンタ。
【請求項9】
固定子の中に配列された第1のブラシおよび第2のブラシと、
回転子と共に回転するように配列された整流子とを備える電動機を含む非同期カウンタであって、
前記整流子は、周辺表面を有する少なくとも1つの円筒部分を含み、前記周辺表面の上に複数の片が配列され、絶縁部分が前記複数の片の間に介在し、
前記複数の片の総数は、前記電動機の極の総数の倍数ではなく、
前記固定子は不規則な磁化を有し、
複数の磁石が前記回転子の周りで非一様に配列された、
電流リプルのピークを検出する非同期カウンタ。
【請求項10】
固定子の中に配列された第1のブラシおよび第2のブラシと、
回転子と共に回転するように配列された整流子とを備える電動機を含む非同期カウンタであって、
前記整流子は、周辺表面を有する少なくとも1つの円筒部分を含み、前記周辺表面の上に複数の片が配列され、絶縁部分が前記複数の片の間に介在し、
前記複数の片の総数は、前記電動機の極の総数の倍数ではなく、
前記固定子は不規則な磁化を有し、
複数の磁石が前記回転子の周りに配列され、前記複数の磁石の少なくとも1つが非対称形状を有する、
電流リプルのピークを検出する非同期カウンタ。
【請求項11】
固定子の中に配列された第1のブラシおよび第2のブラシと、
回転子と共に回転するように配列された整流子とを備える電動機を含む非同期カウンタであって、
前記整流子は、周辺表面を有する少なくとも1つの円筒部分を含み、前記周辺表面の上に複数の片が配列され、絶縁部分が前記複数の片の間に介在し、
前記複数の片の総数は、前記電動機の極の総数の倍数ではなく、
前記固定子は不規則な磁化を有し、
複数の磁石が前記回転子の周りに配列され、前記複数の磁石の中の少なくとも1つの磁界が非対称に配列された、
電流リプルのピークを検出する非同期カウンタ。
【請求項12】
前記回転子のフル回転の任意の時点において、全部で2つまたは3つの片が前記第1のブラシおよび前記第2のブラシと電気接触するように、前記複数の片、前記第1のブラシ、および前記第2のブラシが配列された、請求項9から請求項11のいずれかに記載の非同期カウンタ。
【請求項13】
前記電動機は固定子を含み、該固定子は、少なくとも1つの第1の磁石要素および少なくとも1つの第2の磁石要素を含み、前記少なくとも1つの第1の磁石要素および前記少なくとも1つの第2の磁石要素は、永久磁石およびコイルの少なくとも1つを含む、請求項9から請求項11のいずれかに記載の非同期カウンタ。
【請求項14】
固定子を含み、該固定子は4つの磁石要素を含み、該4つの磁石要素は、それぞれ前記回転軸の周りに約180°の角度でペアとして配列された、請求項9から請求項11のいずれかに記載の非同期カウンタ。
【請求項15】
固定子を含み、該固定子は4つの磁石要素を含み、該4つの磁石要素は、それぞれ前記回転軸の周りに約180°の角度でペアとして配列され、前記4つの磁石要素の各々は非対称形状を有する、請求項9から請求項11のいずれかに記載の非同期カウンタ。
【請求項16】
前記電動機の極の総数が4であり、前記電動機のブラシの総数が2または4であり、前記整流子は10の片を含む、請求項9から請求項11のいずれかに記載の非同期カウンタ。
【請求項17】
前記電動機は固定子を含み、該固定子は4つの磁石要素を含み、該4つの磁石要素の第1の磁石要素および第2の磁石要素が、相互に対して略100°もしくはそれ以上の角度で前記回転軸の周りに配列された、請求項9から請求項11のいずれかに記載の非同期カウンタ。
【請求項18】
前記固定子は前記第1のブラシおよび前記第2のブラシを含み、前記第1のブラシと前記第2のブラシとの間の角度が約90°である、請求項9から請求項11のいずれかに記載の非同期カウンタ。
【請求項19】
請求項1から請求項18に記載の非同期カウンタにより位置または回転方向を決定する方法であって、前記第1のブラシおよび前記第2のブラシが電気接触する多数の片の系列および/または持続時間を測定するステップを備える方法。
【請求項20】
前記多数の片の前記系列および/または持続時間に基づいて、前記電動機が回転しているかどうか、および前記電動機がどの位置にあるかに関して決定を行うステップを更に備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記電動機が、隣接する2つの片の間の角度と等しい角度で回転するときに生成される検出可能なピークを1つだけ含むリプル電流曲線を更に備える、請求項1から請求項18に記載の非同期カウンタ。
【請求項22】
前記第1のブラシは、前記周辺表面の第1の部分をカバーするように配列された第1の幅を有し、前記第2のブラシは、前記周辺表面の第2の部分をカバーするように配列された第2の幅を有し、前記第1の幅および前記第2の幅は相互に異なる、請求項1から請求項18に記載の非同期カウンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機、および電動機の位置または回転速度を決定する方法に関し、更に具体的には、電動機のブラシおよび整流子が回転子の回転運動および位置を検出する電動機および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小さい電動機を関与させる多くの応用において、回転運動を引き起こすことに加えて、もし電動機が、その現在の状態または位置に関する情報を供給し得るならば有利である。これを達成するため、たとえば、電動機の励磁回路を「リプルカウンタ」または非同期カウンタとして使用することは公知である。
【0003】
そのような電動機は、たとえば、特許文献1で開示されている。この電動機では、整流子の6つの薄板または片と交互に接触するように2つのブラシが配列される。この場合、整流子の中のブラシは相互に対向して配列される、すなわち、180°だけずらされるので、ブラシは整流子のそれぞれの対向する片と接触する。整流子の回転運動の間、1つの片から隣接片への周期的変化が起こる。この時間の間、各ブラシは2つの片と同時に電気接触する。それゆえに、対応する切り換えまたは整流が双方のブラシで同時に起こる。したがって、常に全部で1つの片または2つの片がブラシの各々と接触する。電動機の電流を検出することによって、ブラシと接触する片の数が推定され、回転子の回転速度および位置が計算され得る。しかしながら、トルクを増加するため、4つの磁石を有する電動機が常に使用される。この状況において、もしコイルの数がブラシの数の整数倍であり、双方のブラシと接続する片の数が同時に変化するならば、電動機の振動および雑音は大きい。それゆえに、本発明は、振動および雑音を低減し、生成された電流信号を容易に検出して電動機の回転速度および位置を決定する仕事に基礎を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1316136号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の好ましい実施形態は、電動機によって作り出される振動または雑音の増加を引き起こすことなく、「リプルカウンタ」法と呼ばれる電動機の電流リプルの容易に計算される信号を使用することによって、回転子の回転速度および位置を検出する電動機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態によれば、電動機は、少なくとも1つの第1のブラシおよび1つの第2のブラシを含み、回転子と一緒に回転する整流子はこれらのブラシに対して回転している。具体的には、電動機は、好ましくは4つ以上の極を含む。整流子は、好ましくは、周辺表面を有する少なくとも1つの円筒部分を含み、周辺表面の上に複数の整流子片(以下「片」と呼ぶ)が配列され、絶縁部分が複数の片の間に介在する。第1のブラシは、好ましくは、周辺表面の第1の部分をカバーする第1の幅を有し、第2のブラシは、好ましくは、周辺表面の第2の部分をカバーする第2の幅を有し、第1のブラシおよび第2のブラシは、片との非対称接触配列を作り出すように配列される。非対称接触配列を達成するためには、第1のブラシの第1の幅は、好ましくは、第2のブラシの第2の幅とは異なる。代替または追加として、非対称接触配列は、好ましくは、第1のブラシおよび第2のブラシを回転軸の周りで不規則に配列することによって達成される。
【0007】
片に関する第1のブラシおよび第2のブラシの非対称接触配列は、第1のブラシの整流が、第2のブラシの整流と非同期的に遂行されることを可能にする。結果として、異なる数の片が、異なる回転角でブラシと接触する。したがって、回転子が回転するとき、第1のブラシおよび第2のブラシが、異なる数の片と接触する異なる長さの時間から成る時間的系列が創出される。この時間的系列は、リプルカウンタまたは非同期カウンタとして使用される。時間的系列は回転子の回転速度に依存し、2つは相互に関連させて理解されなければならない。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、非対称接触配列、および第1のブラシおよび第2のブラシに対する複数の片の配列は、第1のブラシが第2のブラシと一緒に規定するブラシ角度が、相互に隣接する2つの片によって規定される第1の片角度よりも大きいこと、および更に、2つの片の間に配列された他の1つの片を有する前記2つの片によって規定される第2の片角度よりも小さいこと、の双方である状況を含むことが可能である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1のブラシおよび第2のブラシに対する複数の片の非対称配列は、第1のブラシが第2のブラシと共に規定するブラシ角度が、2つの片の各々の組み合わせによって規定される片角度と等しくないように配列されることが更に可能である。この場合、どのような時点でも、第1および第2のブラシの同期整流は起こらない。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1のブラシおよび第2のブラシに対する複数の片の非対称配列は、回転子のフル回転中の任意の時点において、全部で2つ/3つ、または3つ/4つの片が、第1のブラシおよび第2のブラシと電気接触することを保証することが更に可能である。この配列は、非同期カウンタが機能するにあたって有利である。
【0011】
更に、第1のブラシおよび第2のブラシは異なる幅を有し得る。本明細書で参照される「幅」の用語は、第1のブラシが、接触表面である第1の円弧を含み、第2のブラシが、同じく接触表面である第2の円弧を含み、第2の円弧の幅が第1の円弧とは異なるような配列を含む。これは、好ましくは、異なる回転角度および対応する相対接触時間の系列、たとえば、短い3つの接触、長い4つの接触、短い3つの接触、短い4つの接触、短い3つの接触、などを生じる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、複数の片は、同じサイズまたは幅であり、特に、円筒部分の等しい円弧をカバーして、同時に相互から等距離に間隔を空けられるように配列される。この場合、従来の整流子構造が本発明の好ましい実施形態と共に使用され、非同期配列は、ブラシの配列および設計によってのみ決定される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、複数の片は、異なるサイズである。代替または追加として、複数の片は、相互から不規則に間隔を空けられる。こうして、ブラシが所定の配列を有する場合でも、非同期配列を達成することが可能である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1のブラシおよび第2のブラシは、好ましくは、たとえば、相互から略90°の角度だけ離して整流子の周りに配列される。ブラシおよび片の非対称配列を提供することは、もし第1のブラシおよび第2のブラシが、たとえば、90°よりも小さい角度、具体的には、好ましくは、たとえば、略86°の角度で相互から離して間隔を空けられるならば、特に有利である。電動機は、少なくとも2つのブラシを含むが、追加のブラシを更に含み得る。具体的には、電動機は、好ましくは、たとえば、4極電動機の形態にレイアウトされる。もし2つを超えるブラシが提供されるならば、これらの追加のブラシは非同期カウンタのためにも使用され得るが、これは必須ではない。
【0015】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、電動機は、少なくとも1つの第1のブラシおよび1つの第2のブラシまたは複数のブラシを含む。これらのブラシは、回転子と一緒に回転する整流子に対して静止形に配列される。整流子は、好ましくは、周辺表面を有する少なくとも1つの円筒部分を含み、周辺表面の上に複数の片が配列され、絶縁部分が複数の片の間に介在する。この場合の複数の片は、好ましくは、第1のブラシおよび第2のブラシまたは複数のブラシに対して非対称に配列される。
【0016】
非対称接触配列/配列は、ブラシの異なる幅を介して達成される。非対称配列は、整流子の周りでブラシを非対称に配列することによっても達成される。
【0017】
第1のブラシおよび第2のブラシは、好ましくは、たとえば、同じ幅を有する。この場合、ブラシが片角度に対して相互に規定するブラシ角度を設定することによって、非同期配列が作り出される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、第1および第2のブラシは、好ましくは、第1の時間区間において全部で3つの片と電気接触し、第2の時間区間において全部で4つの片と電気接触する。第1の時間区間および第2の時間区間は、好ましくは、相互に異なり、回転子の回転速度に依存する。第2の時間区間の持続時間に対する第1の時間区間の持続時間の比は、好ましくは、回転子の回転速度から独立して一定であるが、第2の時間区間の持続時間に対する第1の時間区間の持続時間の絶対値は、回転子の回転速度に依存する。言い換えれば、第1の時間区間は回転子の第1の回転角度に対応し、第2の時間区間は、第1の回転角度とは異なる回転子の第2の回転角度に対応する。
【0019】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、電動機は、回転軸の上に配列された回転子および固定子を含み、固定子は非対称磁化または非対称磁界を有する。固定子は、好ましくは、少なくとも1つの第1の磁石要素および1つの第2の磁石要素を含み、これらは回転軸の周りで相互に関して非対称または不規則に配列または配分される。代替または追加として、固定子は非対称磁石要素を含み得る。結果として、磁界は、回転軸の周りで非対称または不規則に配分され、或る一定の整流信号は抑圧され得る。これは、電動機を非同期カウンタとして使用することを一層容易にする。この場合、ブラシは、好ましくは、回転軸の周りで対称に配列され、ブラシの全てが同じ幅を有する。この配列は、特に、ブラシの全てが、好ましくは、回転軸の周りで相互に約90°の角度で配列される4極電動機で使用される。
【0020】
本発明の様々な好ましい実施形態によれば、磁石要素は永久磁石であるか、電磁石として配列されるコイルを含む。具体的には、磁石要素は、非対称磁界を作り出すため非対称に配列される。
【0021】
本発明の更に他の好ましい実施形態によれば、第1のブラシおよび第2のブラシが電気接触する多数の片の系列および/または持続時間を測定することによって、自然数の系列を作り出し、電動機の位置または回転運動を決定する方法が、好ましくは、提供される。
【0022】
本発明の上記および他の要素、特徴、ステップ、特性、および利点は、添付の図面を参照して説明される好ましい実施形態の下記の詳細な説明から、一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の好ましい実施形態に従った電動機の平面図を示す。
図2】本発明の好ましい実施形態に従った2つのブラシおよび整流子の対応する片の配列を示す。
図3】本発明の第1の好ましい実施形態に従った整流子の様々な回転位置(a)〜(f)の配列を示す。
図4】本発明に従った様々な位置(a)〜(d)における整流子およびブラシの配列の他の好ましい実施形態を示す。
図5】本発明の好ましい実施形態に従って整流子と関係するブラシの例を示す。
図6】本発明に従って様々な位置(a)〜(d)における2つから3つの片の整流で生成される2つの主信号の生成の好ましい実施形態を示す。
図7】本発明の好ましい実施形態に従った電動機における磁石要素の形状の配列(a)〜(c)を示す。
図8】本発明の好ましい実施形態に従った電動機における磁石要素の配列および形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、シャフト29に沿った本発明の電動機10の例の平面図を示す。ブラシおよび整流子を良好に図示するため、電動機10の中で提供される前面保護キャップまたは前面部は図1で省略されている。複数の電機子巻き線を有する電機子を含む回転子は、円筒ハウジング50の中に収容される。可視性を良好にする目的で、電機子カバー20の背後に位置する電機子および電機子巻き線は図1で示されない。電機子および対応する電機子巻き線は、数およびタイプに関して標準の電機子に対応する。電機子は、好ましくは、永久磁石42、44から内部へ径方向に回転するように配列される。永久磁石42、44は、好ましくは、2つのN極磁石42および2つのS極磁石44を含む。これらの磁石は、それぞれ相互に対向して配列される。しかしながら、永久磁石、電磁石などの他の所望の配列、および他の所望の数の電機子要素および巻き線を使用することも可能である。
【0025】
本発明の現在の実施形態において、シャフト29は、好ましくは、その上に配列された整流子30を含む。整流子30は、導電材料から作られた複数の片(すなわち、薄板)32a〜32jを含む。片32a〜32jは、整流子30の周辺表面の上に位置し、片32a〜32jの表面は、整流子30の表面を規定する。この好ましい実施形態において、整流子30は、好ましくは、たとえば、10の片32a〜32jを含む。これらの片は、整流子30の外側周辺表面の上で、相互から等距離に間隔を空けられている。しかしながら、他の所望の数の片が使用され得る。片32a〜32jは、好ましくは、それぞれの絶縁溝、たとえば、絶縁溝33fによって相互から分離され、こうして相互から電気的に分離される。
【0026】
更に、少なくとも1つの第1のブラシ61および1つの第2のブラシ62が、整流子30の片と電気接触するように配列される。ブラシ61および62は、好ましくは、たとえば、カーボン、または他の導電材料から作られる。電気接触を達成するため、ブラシ61および62は、好ましくは、たとえば、バネを用いて径方向に内側へ押しつけられる。片に対面するブラシ61および62の側面は、絶縁溝、たとえば、絶縁溝33jの幅よりも大きい整流子30の円形の片をカバーするので、ブラシ61および62の各々は、特定の回転角度にわたって片32a〜32jの少なくとも1つと電気接触し、他の特定の回転角度にわたって片32a〜32jの2つと接触する。
【0027】
図1で示されるように、本願の1つの実施形態において、ブラシは、好ましくは、略90°よりも小さい角度、たとえば、約86°または約81°で配列される。しかしながら、ブラシは、約90°よりも大きい角度、たとえば、約94°または約99°で配置されることも可能である。
【0028】
これと対照的に、理解を良好にするため、図2は、2極電動機の2つのブラシ610および620および整流子30の配列を略図的に図示する。この場合の第1のブラシ610および第2のブラシ620は、相互から180°だけずらされる。すなわち、整流子30の上で相互に対向して配置される。偶数個の片32a〜32jが整流子30の上で均一に配置される場合、1つの片から隣接片への整流は、双方の側、すなわち、第1のブラシ610および第2のブラシ620で同期して起こる。言い換えれば、図2で示される例において、第1のブラシ610は片32aと電気接触し、同時に第2のブラシ620は対向する片32fと電気接触する。もし回転子、それゆえに整流子30が、たとえば、時計回りへ回転するならば、片32fにおける第2のブラシ620の整流が片32gへ移動する時間と同じ時間に、片32aにおける第1のブラシ610の整流が片32bへ移動する。この場合の整流は、ブラシ610および620が一緒に比較的短い区間にわたって2つの片と接触し、続いて比較的長い区間にわたって4つの片と接触する切り換え系列を生じる。「比較的短い」および「比較的長い」の表現は、ここでは相対的であって、それらの絶対値に関しては、明らかに電動機の回転速度に依存する。長い接触時間に対する短い接触時間の比は、片32a〜32jの幅に対するブラシ610および620の幅の比によって決定され、異なる長さの接触時間が確実に検出され得るように選択されねばならない。
【0029】
2つのブラシ610および620を有する上記の2極電動機の代わりに、もし全部で2つまたは4つのブラシを有する4極電動機が使用されるならば、ブラシは通常相互に90°の角度で配列される。たとえば、12パート整流子および90°のブラシ間の極角度を有する対称配列において、信号を作り出すことは容易である。切り換え系列は、双方のブラシの整流において対称であり、常に、全部で2つまたは4つの片が同時にブラシと接触する。2つの接触から4つの接触への変化は、比較的大きな雑音を伴う。更に、全部で4つのブラシおよび12の片を有する電動機では、同じ理由で雑音問題が存在する。
【0030】
10または14の片を対応的に提供された10パート(図3)または14パート整流子30は、より良好な音響整流性能を有し、4極電動機において、より少ない欠点の雑音および振動を作り出す。なぜなら、2つの極の間の角度は、2つの隣接する歯の間の角度の整数倍ではないからである。片/薄板の間の変化は、次のように起こる。すなわち、2つのブラシが一緒に、3つの薄板と接触する→4つの薄板と接触する→3つの薄板と接触する→4つの薄板または2つの薄板と接触する→3つの薄板と接触する→2つの薄板と接触する→3つの薄板と接触する、ように変化する。結果として、常に、2つの信号または薄板が変化する。これらの変化は、コイルの抵抗変化を生じ、これに従って電流が変化する。こうして、電動機が2つの片の間の角度に等しい角度で回転するとき、2つの信号または2つのピークが電流リプル曲線の中に作り出される。たとえば、片の数が10であるとき、角度は約36°であり、片の数が14であるとき、約26°(正確には180/7)である。ただ1つの信号を検出するため、または、電動機が回転するとき、ただ1つの信号を検出可能にするため、2つのピークを作り出して、それらが異なる振幅を有するようにするか、2つのピークの1つを作り出して、それが、2つのピークを相互の近くで作り出すことによって原初のピークの幅のほとんど2倍を有するようにすることが好ましい。
【0031】
相互に異なる振幅または相互に近い振幅を有するピークは、好ましくは、固定子の非一様な磁化、またはブラシまたは片の非対称配列によって生成される。ブラシの非対称配列は、好ましくは、ブラシの異なる周辺幅によって、および/またはブラシ間の角度の変更を意味する整流子の周りの非対称配置によって、または不均等サイズのブラシまたは片の非一様な配列によって達成される。非一様な磁化は、好ましくは、たとえば、非対称に配列されるか、少なくとも部分的に非対称形状を有する磁石によって達成される。
【0032】
図3は、本発明の好ましい実施形態に従ったブラシ配列の例を示す。この場合、第1のブラシ61および第2のブラシ63は、好ましくは、相互に略86°の角度で配列される。電動機の固定子は、好ましくは、複数の磁石を含み、磁石の数は、好ましくは、たとえば、4である。電動機が4つの極を含むとき、電動機は、好ましくは、4つのブラシを含み、この数は極の数と同じである。しかしながら、たとえば、図3で示されるように、2つのブラシを含むことも可能である。整流子30は、好ましくは、たとえば、10の片32a〜32jを含む。
【0033】
2つのブラシ61および63の周辺幅は、好ましくは、図3において異なる。第1のブラシ61の周辺幅は、好ましくは、1つの片の周辺幅、または1つの片に、相互に隣接する片の間の1つのギャップを加えたものの周辺幅と、ほとんど同じである。第2のブラシ63は、好ましくは、1つの片の周辺幅の約半分に、相互に隣接する片の間の1つのギャップを加えたものの周辺幅を有する。ブラシは、異なる周辺幅を有してもよいが、ブラシは、好ましくは、たとえば、約0.56の比である周辺幅を有する。この配列は、3つの薄板→4つの薄板→3つの薄板→4つの薄板の各持続時間を異なるものにし、これによって、電動機が2つの片の間の角度に等しい角度で回転するとき、電流リプルの2つのピークの異なる振幅、または相互に接近した2つのピークが生成されることを導く。それぞれのピークの振幅が異なるか、2つのピークが相互に接近しているので、2つのピークの1つだけを検出することが可能であり、このピークは、電動機の回転速度および位置を計算するためにカウントされ得る。2つのピークを1つのピークへ結合する方法が使用されることが好ましい。なぜなら、この方法を使用するとき、ピークは、より大きい幅を有し、信号は、より強くなって、検出が容易になり、また、電動機が、2つの片の間の角度に等しい角度で回転するとき、1つだけのピークが検出され、これは現在の機器によってピークの合理的な周波数を容易に検出させるからである。この場合、好ましくは、常に、全部で3つまたは4つの片32a〜32jが、第1のブラシ61および第2のブラシ63と接触する。たとえば、図3の(a)で示される開始位置において、第1のブラシ61は片32aだけに接触し、第2のブラシ63は片32cおよび片32dの双方と接触する。こうして、第1のブラシ61および第2のブラシ63は全部で3つの片と接触する。しかしながら、整流子30の時計回り回転の場合、この状況は、略1つの溝幅33aの運動中に続くだけである。こうして、片32bも第1のブラシ61と接触するようになり、そのとき片32aおよび片32bの双方が第1のブラシ61と接触し、片32cおよび片32dの双方は、図3の(b)で示されるように、依然として第2のブラシ63と接触する。したがって、この時点で、全部で4つの片が第1のブラシ61および第2のブラシ63と電気接触する。図3の(c)で示されるように、もし整流子30が短い距離だけ更に回転するならば、第1のブラシ61は片32aおよび32bとの接触を継続し、第2のブラシ63は片32dだけと接触する。これは、片32a〜32jに対して第2のブラシの幅が著しく小さいことに起因して起こる。結果として、再び、3つの片32a、32b、および32dだけが第1のブラシ61および第2のブラシ63と接触する。図3の(d)で示されるように、整流子30が時計回り方向へ更に回転するとき、全体的状況に関して何も変化しない。この場合、3つの片との接触は、比較的長い区間、すなわち、より大きい回転角度にわたって続く。図3の(e)で示されるように、更なる回転の後、次の片32dも、片32cに加えて第2のブラシ63と接触するようになる。この時点で、2つの片32aおよび32bは依然として第1のブラシ61と接触し、したがって、再び、第1のブラシ61および第2のブラシ63は、短い時間区間または小さい回転角度にわたって、すなわち、片32aが第1のブラシ61と最早接触しなくなるまで、4つの片と接触する。これは、図3の(f)で示されるように、図3の(a)で示される位置と同じ位置を引き起こすが、例外として、整流子30は1つの片だけ時計回りに回転しており、整流子は、再び、短い3つの接触、長い4つの接触、長い3つの接触、短い4つの接触の、図示されたリズムを開始する。短および長の接触時間の系列または切り換え変化は、ここでは、相対的な「長」および「短」である。短および長の接触時間の絶対的持続時間は、当然のことながら、回転子の回転速度に依存する。全部で10の片32a〜32jの場合、「短」回転は7.2°の回転角度に略対応し、「長」回転は、その量の略2倍に対応する。それゆえに、図3の位置(a)〜(e)の各々は、略7.2°の回転角度差に対応する。
【0034】
図3で示される配列は、好ましくは、特に有利および非常に正確な方途で検出される電流リプル信号を作り出す。加えて、図3で示される配列を用いる場合、大きい振幅が達成され、したがって非同期カウンタは、好ましくは、低速回転時でも非常に確実に機能する。図3で示される系列によれば、回転子は一回りの10分の1を回転しただけである。これは、もし10の片32a〜32jが使用されるならば、36°である。
【0035】
図4は、本発明の好ましい代替の実施形態を示す。この実施形態において、異なる幅のブラシ61、63を使用する代わりに、整流子30に関して同じ幅の2つのブラシ61、62が相互に直角に配列される。片32a〜32jおよび溝33a〜33jを有する整流子30は、再び、先行する好ましい実施形態の整流子に対応する。しかしながら、先行する好ましい実施形態とは対照的に、第2のブラシ62は、好ましくは、第1のブラシ61と同じ幅を有する。この幅は、1つの片32a〜32jの幅に1つの溝幅を加えたものに対応する。
【0036】
ブラシ幅b(図5)は、同じ長さの対称切り換え変化が引き起こされるように、各ブラシについて選択される。
【0037】
図4の(a)において、第1のブラシ61および第2のブラシ62を相互に直角に配列することは、図3aの(a)からの著しい差を引き起こさない。第1のブラシ61は、好ましくは、片32aと接触し、第2のブラシ62は2つの片32cおよび32dと接触する。この状況は、整流子30が1つの溝幅だけ回転し、第1のブラシ61も片32bと接触するようになるまで、短い時間または短い角度回転にわたって続くだけである。こうして、第1のブラシ61および第2のブラシ62は、図4の(b)で示されるように、全部で4つの片と電気接触する。この状況は、更なる回転について続く。こうして、4つの片との接触は、3つの片との接触よりも著しく長い時間または著しく長い回転角度にわたって続く。図4の(c)で示されるように、更なる回転の後、片32cは第2のブラシ62との接触から離れる。次いで、これは片32dとだけ接触し、第1のブラシ61は依然として片32aおよび32bと接触し、全部で3つの片がブラシ61、62と接触する。しかしながら、この状態も、図4の(d)で示されるように、片32eが、片32dに加えて第2のブラシ62と接触するようになるまで、1つの溝幅にわたって続くだけである。第1のブラシ61は依然として片32aおよび32bと接触するので、この場合、全部で4つの片32a、32b、32d、および32eが、再び、より長い時間周期、および、より大きい回転角度にわたって、ブラシ61、62と接触する。3つの薄板から4つの薄板への切り換え変化は反復し、各々の3接触または4接触の周期は、それぞれ同じ持続時間を有する。図4の好ましい実施形態においても同様に、「短」および「長」の用語は、相対的に理解されねばならず、それらの絶対値は回転速度に依存する。10の片を有する整流子において、「短」の用語は、好ましくは、たとえば、略5.3°に対応し、これは図4の(a)と(b)との差に対応する。
【0038】
更に、この配列は、電動機を非同期カウンタとして作動することを有利に可能にし、こうして、好ましくは、電動機の運動および位置の検出を可能にする。図4で示される好ましい実施形態において、ブラシ幅は、好ましくは、対称切り換え系列が作り出されるように選択される。図3の好ましい実施形態と比較して、これは、より低い電流の大きさを有する2倍の周波数(2つの主信号)を達成する。これは感度への負のインパクトを有するが、好ましくは、対称パルスを作り出す。電流リプルの感度を増加するため、好ましくは、非対称磁化が採用される(図7を参照)。これは後に説明される。
【0039】
図5は、整流子30との関係で、どのようにブラシが配位および提供されるかを示す。そのような接続を行うため、上記の機能が確実に保証されるように、ブラシ61は、高さhおよび幅bを含めて、その全体の接触表面を横切って整流子30へ確実に接することが保証されねばならない。この場合、もしブラシ表面のブラシ半径が、好ましくは、整流子半径および片の外側半径に等しいか略等しく、または、必要であれば、ブラシ表面のブラシ半径が、代替として、整流子半径および片の外側半径よりも少し大きいならば、有利である。加えて、ブラシは、好ましくは、ブラシの振動を防止するため適当なサイズのスラスト領域を含み、この片幅に関する支持が保証される。これは、整流子30を横切って、それぞれのブラシ61の案内または疑似案内を提供し得るようにし、更に、ブラシ61の干渉振動数の発生を回避し得るようにする。
【0040】
図6および図7は、本発明の他の好ましい実施形態を示す。この実施形態において、電動機は非同期カウンタまたは「リプルカウンタ」として使用され得る。図6で示されるように、全部で4つの均一ブラシの90°配列と共に全部で10の片が使用される。雑音生成の見地から、図6の(a)〜(d)で示されるように、相互から90°に位置する2つのブラシが、2つの接触から3つの接触への2つの異なる接触変化を引き起こすことが有利である。これは、本質的に、異なるか類似する2つの信号を作り出す。第1の信号は2片接触から3片接触への整流に対応し、第2の信号は2片接触から3片接触への整流に対応する。この場合、第1および第2の信号は相互から区別され得ない。上記で説明された非対称接触配列時間の代替または追加として、本発明のこの好ましい実施形態は、第1または第2の信号の減衰または抑圧を含む。これは、好ましくは、たとえば、下記で説明される非対称配列磁化を使用することによって、他の信号から区別されることを可能にするためである。
【0041】
図1、および更に図7の(a)で示されるように、4つの固定子磁石または極磁片420、420、440、440を90°の角度で配列する代わりに、固定子磁石を非対称に配列するか、少なくとも部分的に非対称形態にすることが可能である。対称磁石は、図1および図7の(a)における電動機100で示され、非対称配列は、たとえば、図7の(b)および(c)における電動機101および102で示される。これらは、本発明の好ましい代替の実施形態を図示する。固定子磁石421、422、431、432、441、442、451、452は、好ましくは、第1および第2の信号の1つだけに対応するそれぞれのコイル巻き線の2つが、固定子磁石421、422、431、432、441、442、451、452の磁界の中に入らないように(または、それぞれのコイル巻き線の2つが、少なくとも縮小された磁界の中に入るように)配列される。この配列の結果として、第1または第2の信号は、好ましくは、弱められるか全く抑圧される。これは1つだけのピークを作る。このピークは、電動機が2つの隣接する片の間の角度にわたって回転するとき、検出される。
【0042】
図7の(b)で示されるように、固定子磁石は、ペア421、431および441、451としてそれぞれ提供され、これらのペアは、好ましくは、約180°の角度で相互に対向して対称配列されることが可能である。しかしながら、2つのペアは、標準の方途として相互に90°の角度で配列されず、その代わりに、そのような配列から著しくずらされて、たとえば、約70°〜約85°の角度にされる。
【0043】
図7の(c)で示されるように、固定子磁石422、432、442、452は、相互に90°以外の角度で提供されることも可能である。好ましくは、たとえば、第1の固定子磁石422と、隣接する固定子磁石452および/または442との間に、略100°もしくはそれ以上の角度が提供される。磁石452または442と第4の固定子磁石432との間の対応する角度は、それに対応して小さくなり、図示された好ましい実施形態では、好ましくは、たとえば、略80°である。したがって、第2のピークは第1のピークと共に出現し、検出されるのに十分大きい振幅および幅のピークが規定される。
【0044】
図7の(b)および(c)に関連して説明された固定子磁石の非対称配列の代替または追加として、図8の電動機103で示されるような固定子磁石の非対称形状を提供することも可能である。より良好な理解を目的として、図8では固定子だけが示される。回転子およびブラシに関連する要素の全ては省略されており、これらの要素の全ては上記で説明された好ましい実施形態に対応し得る。図7の(b)のように、固定子磁石423、433および441、453は、それぞれペアとして相互に対向して配列される。固定磁石のペア423、433は、好ましくは、第2の固定子磁石のペア441、453に対して非対称に位置する。これに加えて、図7の(b)に示される好ましい実施形態とは対照的に、個々の固定子磁石423、433、441、および453は、好ましくは、対称形状ではなく非対称形状を有し、これによって固定子磁界の非対称磁界パターンが達成される。図8で示される好ましい実施形態において、固定子磁石423、433、441、および453の各々は、好ましくは、正常な厚さを有する1つの端部4231、4331、4411、または4531、および扁平な端部4232、4332、4412、または4532を有する。扁平な端部4232、4332、4412、および4532は、磁界の非対称を増加するために、それぞれ相互にペアとして配列される。加えて、扁平な端部4232、4332、4412、および4532は、好ましくは、それぞれの扁平な端部4232、4332、4412、および4532の間の距離が、正常な厚さの端部4231、4331、4411、および4531の間の距離よりも大きいように配置される。これは、非対称形状の利点を非対称配列の利点と組み合わせる。非対称磁化が図6のブラシおよび整流子の配列へ適用されるとき、電動機が2つの片の間の角度(これは、好ましくは、この好ましい実施形態において約36°である)と等しい角度だけ回転すると、電流リプル曲線の中に2つのピークが作り出されるが、2つのピークの振幅および/または幅は異なる。非対称磁化に起因して、小さいピークは大きいピークの下に隠されるので、回転子が36°にわたって回転する間、好ましくは、大きいピークだけが検出される。ピークは、簡単に検出されるように十分な振幅および幅を有する。
【0045】
好ましい実施形態の説明では、「固定子磁石」の用語が使用されたが、たとえば、極磁片または当業者に公知の他の配列によっても、磁界が作り出され得る。電動機のタイプに依存して、固定子磁石は、たとえば、永久磁石または電磁石であり得る。
【0046】
上記で、本発明の少数の好ましい実施形態が説明されたが、当業者は、上記で言及された好ましい実施形態の他の修正または組み合わせを作り出すことが可能である。当業者は、更に、ブラシの厚さを変更する代わりに、整流子の片の幅を変更するか、異なるギャップ幅を片の間に提供することも可能であることを認識すべきである。
【0047】
当業者は、更に、要件に従って片の数が選択され、10片の図示された例へ限定される必要がないことを認識するであろう。更に、他の数のブラシによって、同様の効果が達成され得る。
【0048】
本明細書で使用される「非対称」の用語は、対称でない任意の配列を説明するために使用される。
【0049】
本発明の好ましい実施形態に従った電動機は、対応する電気接点を読み取って評価することを可能にするデバイスを更に含み得る。このため、特に、励磁回路における電圧または電圧変化を検出することが可能である。
【0050】
上記で、本発明の好ましい実施形態が説明されたが、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、変形および修正が当業者に明らかであることを理解すべきである。それゆえに、本発明の範囲は、後続する特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
図1
図2
図3
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図8