特許第6115057号(P6115057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115057
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/147 20060101AFI20170410BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20170410BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20170410BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H01F1/147 158
   H01F1/26
   H01F17/04 F
   H01F27/24 D
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-204830(P2012-204830)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-60284(P2014-60284A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100127199
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 等
(72)【発明者】
【氏名】殿山 恭平
(72)【発明者】
【氏名】森田 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 知一
(72)【発明者】
【氏名】伊東 秀人
(72)【発明者】
【氏名】前田 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】太田 学
(72)【発明者】
【氏名】要 優也
(72)【発明者】
【氏名】川原 崇宏
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−273564(JP,A)
【文献】 特開平07−102350(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/053439(WO,A1)
【文献】 特開平05−299232(JP,A)
【文献】 特開2007−200962(JP,A)
【文献】 特開2005−354001(JP,A)
【文献】 特開2008−218724(JP,A)
【文献】 特開2008−135674(JP,A)
【文献】 特開2006−179621(JP,A)
【文献】 特開2001−250709(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/007345(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00−8/00
C22C1/04−1/05
33/02
H01F1/12−1/375
3/00−3/14
17/00−27/02
27/06−27/08
27/23−27/29
27/36
27/42
38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有するコイル導体と、
前記コイル導体が設けられた基板と、
金属磁性粉含有樹脂からなり、前記基板のおもて面側から前記中空部を含む前記コイル導体の全面を覆う第1の磁性層と、
前記金属磁性粉含有樹脂からなり、前記基板のうら面側から前記中空部を含む前記コイル導体の全面を覆う第2の磁性層とを備え、
前記コイル導体は、平面スパイラル導体であり、
前記平面スパイラル導体の中空部には前記金属磁性粉含有樹脂からなる第1のスルーホール磁性体が設けられており、
前記平面スパイラル導体の外側には前記金属磁性粉含有樹脂からなる第2のスルーホール磁性体が設けられており、
前記第1及び第2のスルーホール磁性体は前記基板を貫通して前記第1の磁性層と前記第2の磁性層とを連結しており、
前記金属磁性粉含有樹脂は、
第1の平均粒径を有する第1の金属磁性粉と、
前記第1の平均粒径よりも小さな第2の平均粒径を有する第2の金属磁性粉と、
前記第2の平均粒径よりも小さな第3の平均粒径を有する第3の金属磁性粉とを含み、
前記第1の平均粒径は15〜100μmであり、
前記第3の平均粒径は2μm以下であり、
前記第3の金属磁性粉に対する前記第2の金属磁性粉の重量比は、0.33〜3であることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1の金属磁性粉はパーマロイを主成分とし、前記第2及び第3の金属磁性粉は鉄を主成分とする、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第2の平均粒径は3〜10μmである、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2の平均粒径は3〜5μmであり、
前記第3の平均粒径は1μm以下である、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1乃至前記第3の金属磁性粉の全体に対する前記第1の金属磁性粉の重量比は、0.7〜0.8である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の金属磁性粉、前記第2の金属磁性粉、及び前記第3の金属磁性粉の重量比は、6:1:1である、請求項5に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品及びこれに用いる金属磁性粉含有樹脂に関し、特に、コイルの磁路を構成する金属磁性粉含有樹脂の組成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
民生用又は産業用の電子機器分野では、電源用のインダクタとして表面実装型のコイル部品を用いることが多くなっている。表面実装型のコイル部品は、小型・薄型で電気的絶縁性に優れ、しかも低コストで製造できるためである。
【0003】
表面実装型のコイル部品の具体的構造のひとつに、プリント回路基板技術を応用した平面コイル構造がある。製造工程の観点からこの構造を簡単に説明すると、まずプリント回路基板上に平面スパイラル形状のシードレイヤ(下地膜)を形成する。そして、めっき液中に浸してシードレイヤに直流電流(以下、「めっき電流」という)を流すことにより、めっき液中の金属イオンをシードレイヤ上に電着させる。これにより平面スパイラル導体が形成され、その後、形成した平面スパイラル導体を覆う絶縁樹脂層と、保護層及び磁路としての金属磁性粉含有樹脂層とを順次形成し、コイル部品が完成する。この構造によれば、寸法及び位置の精度を非常に高い値に維持でき、また、小型化及び薄型化が可能になる。特許文献1には、このような平面コイル構造を有する平面コイル素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−66830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルのインダクタンスを向上させる方法の一つに磁路の透磁率を高める方法がある。上記のコイル部品において磁路の透磁率を高めるためには、金属磁性粉含有樹脂層中の金属粉の充填率を高める必要がある。金属粉の充填率を高めるためには、大きい粒径の金属粉の隙間を小さい粒径の金属粉で埋めることが効果的である。しかし、細密充填が進んで金属粉どうしの接触が多くなりすぎると、コアロスが増加して直流重畳特性が悪化するという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、コアロスの増加を抑えながらインダクタンスの向上を図ることが可能なコイル部品及びこれに用いる金属磁性粉含有樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によるコイル部品は、コイル導体と、前記コイル導体を覆う金属磁性粉含有樹脂とを備え、前記金属磁性粉含有樹脂は、第1の平均粒径を有する第1の金属粉と、前記第1の平均粒径よりも小さな第2の平均粒径を有する第2の金属粉と、前記第2の平均粒径よりも小さな第3の平均粒径を有する第3の金属粉とを含み、前記第1の平均粒径は15〜100μmであり、前記第3の平均粒径は2μm以下であることを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明による金属磁性粉含有樹脂は、第1の平均粒径を有する第1の金属粉と、前記第1の平均粒径よりも小さな第2の平均粒径を有する第2の金属粉と、前記第2の平均粒径よりも小さな第3の平均粒径を有する第3の金属粉とを含み、前記第1の平均粒径は15〜100μmであり、前記第3の平均粒径は2μm以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、金属磁性粉含有樹脂に含まれる金属粉として、互いに平均粒径が異なる3種類の金属粉を用いているので、コアロスの増加を防止しながら高い透磁率を得ることができる。
【0010】
本発明において、前記第1の金属粉は前記第2及び第3の金属粉よりも高い透磁率を有することが好ましい。この場合において、前記第1の金属粉はパーマロイを主成分とし、前記第2及び第3の金属粉は鉄を主成分とすることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記第2の平均粒径は3〜10μmであることが好ましい。この場合において、前記第2の平均粒径は3〜5μmであり、前記第3の平均粒径は1μm以下であることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記第3の金属粉に対する前記第2の金属粉の重量比は、0.33〜3であることが好ましい。また、前記第1〜第3の金属粉全体に対する前記第1の金属粉の重量比は、0.7〜0.8であることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記第1の金属粉、前記第2の金属粉、及び前記第3の金属粉の重量比は、6:1:1であることが好ましい。これによれば、コアロスの増加防止と透磁率の向上とをバランスよく達成することができる。
【0014】
本発明において、前記コイル導体は、基板の表面にめっきにより形成された平面スパイラル導体を含むことが好ましい。この場合において、前記コイル導体は、前記基板の前記表面のうち、前記平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間に形成され、かつ少なくとも同一平面内で他の導体と接続されたダミー引出導体をさらに含むことが好ましい。
【0015】
本発明によるコイル部品は、前記平面スパイラル導体及び前記ダミー引出導体を覆う絶縁樹脂をさらに備え、前記金属磁性粉含有樹脂は、前記絶縁樹脂の上から前記基板の前記表面を覆うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コイルの磁路を構成する金属磁性粉含有樹脂の材料に大径と小径の金属粉に加えて中径の金属粉をも含むので、金属粉間の距離を広げることができ、これによりコアロスを低減することができる。また中径の金属粉によって充填密度が下がったとしても透磁率を下げることなく一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態によるコイル部品の分解斜視図である。
図2】金属磁性粉含有樹脂層の構造を示す顕微鏡写真である。
図3】実施例におけるサンプルA1〜A5のコアロスの測定結果を示すグラフである。
図4】実施例におけるサンプルA3の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品1の分解斜視図である。同図に示すように、コイル部品1は略矩形の基板2を有している。「略矩形」とは、完全な矩形の他、一部の角が欠けている矩形を含む意である。本明細書では矩形の「角部」という用語を用いるが、一部の角が欠けている矩形についての「角部」とは、欠けがないとした場合に得られる完全な矩形の角部を意味する。
【0020】
基板2の材料には、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させた一般的なプリント基板を用いることが好ましい。また、例えばBTレジン基材、FR4基材、FR5基材を用いてもよい。
【0021】
基板2のおもて面2tの中央部には、平面スパイラル導体10a(第1の平面スパイラル導体)が形成される。同様に、うら面2bの中央部には、平面スパイラル導体10b(第2の平面スパイラル導体)が形成される。また、基板2には導体埋込用のスルーホール12aが設けられ、その内部にスルーホール導体12(第1のスルーホール導体)が埋め込まれている。平面スパイラル導体10aの内周端と平面スパイラル導体10bの内周端とは、スルーホール導体12によって互いに接続される。
【0022】
平面スパイラル導体10a,10bは楕円スパイラル形状を有することが好ましい。楕円スパイラルによれば、基板の矩形形状に合わせてできる限り大きなループサイズを確保することが可能である。また、詳細は後述するが、基板2の四隅であって角部よりも幅方向の中央寄りにスルーホール磁性体22dを形成する場合、長円スパイラルよりもその形成領域を確保しやすいからである。
【0023】
平面スパイラル導体10aと平面スパイラル導体10bとは、互いに反対向きに巻回されている。つまり、おもて面2tの側から見た平面スパイラル導体10aは、内周端から外周端に向かって反時計回りに巻回されているのに対し、おもて面2tの側から見た平面スパイラル導体10bは、内周端から外周端に向かって時計回りに巻回されている。このような巻回方法を採用したことにより、コイル部品1では、平面スパイラル導体10aの外周端と平面スパイラル導体10bの外周端との間に電流を流した場合に、両平面スパイラル導体が互いに同一方向の磁場を発生して強め合う。したがって、コイル部品1は、1つのインダクタとして機能する。
【0024】
基板2のおもて面2tとうら面2bには、引出導体11a,11bがそれぞれ形成されている。引出導体11a(第1の引出導体)は、基板2の側面2Xに沿って形成される。一方、引出導体11b(第2の引出導体)は、側面2Xと対向する側面2Xに沿って形成される。引出導体11aは平面スパイラル導体10aの外周端と接続され、引出導体11bは平面スパイラル導体10bの外周端と接続される。
【0025】
基板2のおもて面2tには、平面スパイラル導体10aの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15a(第1のダミー引出導体)が形成される。より具体的に説明すると、ダミー引出導体15aは引出導体11bとほぼ同じ平面形状を有しており、平面的に見て引出導体11bと重なる位置に配置される。つまり、ダミー引出導体15aは、基板2の側面2Xと平面スパイラル導体10aの最外周との間に形成されている。ダミー引出導体15aは、同一平面内で他の導体と接続されていないが、基板2を貫通するスルーホール導体17(第2のスルーホール導体)を介して引出導体11bと接続されている。基板2には導体埋込用のスルーホール17aが設けられ、その内部にスルーホール導体17が埋め込まれている。
【0026】
同様に、基板2のうら面2bには、平面スパイラル導体10bの最外周と基板2の端部との間の領域に、ダミー引出導体15b(第2のダミー引出導体)が形成される。より具体的に説明すると、ダミー引出導体15bは引出導体11aと同じ平面形状を有しており、平面的に見て引出導体11aと重なる位置に配置される。つまり、ダミー引出導体15bは、基板2の側面2Xと平面スパイラル導体10bの最外周との間に形成されている。ダミー引出導体15bは、ダミー引出導体15aと同様、同一平面内で他の導体と接続されていないが、基板2を貫通するスルーホール導体16(第3のスルーホール導体)を介して引出導体11aと接続されている。基板2には導体埋込用のスルーホール16aが設けられ、その内部にスルーホール導体16が埋め込まれている。
【0027】
平面スパイラル導体10aの最外周と対向するダミー引出導体15aの側面は、平面スパイラル導体10aの最外周の形状に合わせて湾曲している。平面スパイラル導体10bの対向するダミー引出導体15bの側面もまた、平面スパイラル導体10bの最外周に沿って湾曲している。ダミー引出導体15a,15bの側面をこのような湾曲形状とした場合には、後述する平面スパイラル導体10a,10bを構成するめっき層の横方向への成長を確実に抑制することができ、高精度なパターンを形成することができる。平面スパイラル導体とダミー引出導体の間のスペース幅は、平面スパイラル導体のピッチ幅とほぼ等しく設定されていることが好ましい。このようにした場合には、最外周のライン幅を内側のラインと等幅にすることができるので、より高精度な特性の制御が可能である。
【0028】
以上の平面スパイラル導体10a,10b、引出導体11a,11b、ダミー引出導体15a,15bはいずれも、無電解めっき工程によって下地層を形成した後、2度の電解めっき工程を経て形成される。下地層の材料及び2度の電解めっき工程で形成されるめっき層の材料は、いずれもCuとすることが好適である。2度目の電解めっき工程においては、隣接する他のシードレイヤがない箇所でめっき層が横方向に大きく成長するおそれがあるが、ダミー引出導体15a,15bを設けているので、平面スパイラル導体10a,10bの最外周が極端に太くなるおそれはなく、所望の配線形状を維持することができる。
【0029】
基板2のおもて面2t側に設けられた平面スパイラル導体10a、引出導体11a、及びダミー引出導体15aは、絶縁樹脂層21aに覆われている。この絶縁樹脂層21aは、各導体と金属磁性粉含有樹脂層22aとの電気的導通を防止するために設けられているものである。同様に、基板2のうら面2bに設けられた平面スパイラル導体10b、引出導体11b、及びダミー引出導体15bは、絶縁樹脂層21bに覆われている。この絶縁樹脂層21bは、各導体と金属磁性粉含有樹脂層22bとの電気的導通を防止するために設けられているものである。
【0030】
基板のおもて面2t及びうら面2bは、絶縁樹脂層21の上からさらに、金属磁性粉含有樹脂層22(22a,22b)によって覆われている。金属磁性粉含有樹脂層22a,22bは、樹脂に金属磁性粉を混入して作られる磁性材料(金属磁性粉含有樹脂)によって構成される。
【0031】
図2は、金属磁性粉含有樹脂層22の構造を示す顕微鏡写真である。同図に示すように、金属磁性粉含有樹脂層22は、金属磁性粉3と樹脂4とを含んでいる。図中、白い部分が金属磁性粉3であり、黒い部分が樹脂4である。
【0032】
金属磁性粉3としては、パーマロイ系材料を主成分として用いることが好適である。具体的には、Pb−Ni−Co合金とカルボニル鉄とを所定の比率、例えば70:30〜80:20の重量比、好ましくは75:25の重量比で含むことが好ましい。金属磁性粉含有樹脂層22における金属磁性粉3の含有率は90〜97重量%であることが好ましい。図2において、大径の金属磁性粉3aがパーマロイ粉であり、中径の金属磁性粉3bおよび小径の金属磁性粉3cがともにカルボニル鉄粉である。パーマロイ粉の平均粒径は15〜100μmであることが好ましく、カルボニル鉄粉の平均粒径は10μm以下であることが好ましい。
【0033】
一方、樹脂4としては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、金属磁性粉含有樹脂層22における樹脂4の含有率は3〜10重量%であることが好ましい。樹脂は絶縁結着材(バインダー)として機能する。以上の構成を有する金属磁性粉含有樹脂層22は、樹脂に対して金属磁性粉の量が少ないほど飽和磁束密度が小さくなり、逆に金属磁性粉の量が多いほど飽和磁束密度が大きくなるという性質を有している。
【0034】
本実施形態においては、平均粒径が異なる2種類のカルボニル鉄粉を用いることが好ましい。具体的には、平均粒径が3〜10μmである中径のカルボニル鉄粉3bと、平均粒径が2μm以下である小径のカルボニル鉄粉3cとを所定の比率、例えば0.5:1.5〜1.5:0.5の重量比の範囲内で含むことが好ましい。換言すれば、平均粒径が2μm以下であるカルボニル鉄粉3cに対する平均粒径が3〜10μmであるカルボニル鉄粉3bの重量比は、0.33〜3の範囲内であることが好ましい。
【0035】
平均粒径が3〜10μmであるカルボニル鉄粉3bと平均粒径が2μm以下であるカルボニル鉄粉3cとの重量比は、1:1であることが特に好ましい。パーマロイ粉を含めた形で表すと、平均粒径が15〜100μmであるパーマロイ粉(第1の金属粉)3aと、平均粒径が3〜10μmであるカルボニル鉄粉(第2の金属粉)3bと、平均粒径が2μm以下であるカルボニル鉄粉(第3の金属粉)3cとを所定の比率、例えば70:15:15〜80:10:10の重量比、好ましくは75:12.5:12.5(6:1:1)の重量比で含む金属磁性粉を用いることが好ましい。小径のカルボニル鉄粉3cは、1μm以下であることが特に好ましい。また、第2の金属粉である中径のカルボニル鉄粉3bの平均粒径は、大径のパーマロイ粉の0.1〜0.3倍であることが好ましい。
【0036】
このように、本実施の形態によるコイル部品1は、金属磁性粉含有樹脂層22の材料として互いに平均粒径が異なる3種類の金属磁性粉を用い、大径の金属磁性粉3aと小径の金属磁性粉3cとの間の中径の金属磁性粉3bを加えているので、コアロスの増加を抑えながら透磁率を高くすることができ、これによりインダクタンスの向上を図ることができる。金属磁性粉含有樹脂の透磁率は、金属磁性粉の粒径と充填密度(嵩密度)に依存し、粒径の大きな金属磁性粉間の隙間を埋めるように小さな粒径の金属磁性粉を用いることで透磁率を高めることができる。しかし、金属磁性粉の細密充填が進んで金属磁性粉間の距離が近くなりすぎるとコアロスが大きくなってしまう。そこで、大径粒子と小径粒子との間の中径粒子を加えることにより、コアロスを増加させることなく透磁率を高めることができる。金属磁性粉の充填密度は、中径の金属磁性粉を用いることで少し下がると思われるが、粒径が大きくなる分だけ透磁率を維持することができる。
【0037】
基板2には、図1に示すように、基板2のうち平面スパイラル導体10a,10bに囲まれた中央部(中空部)を貫通するスルーホール14aと、平面スパイラル導体10a,10bの外側を貫通する4つのスルーホール14bが形成されている。4つのスルーホール14bは基板2の側面2Y,2Yに設けられた半円形状の開口であり、基板2の四隅に対応してそれぞれ設けられている。金属磁性粉含有樹脂はこの磁路形成用スルーホール14a,14b内にも埋め込まれており、埋め込まれた金属磁性粉含有樹脂は、図1に示すように、スルーホール磁性体22c,22dをそれぞれ構成している。スルーホール磁性体22c,22dはコイル部品1に完全な閉磁路を形成するためのものである。
【0038】
なお、図1には示していないが、金属磁性粉含有樹脂層22a,22bの表面には薄い絶縁層が形成される。この絶縁層の形成は、金属磁性粉含有樹脂層22a,22bの表面をリン酸塩で処理することによって行う。この絶縁層を設けたことにより、外部電極26aと金属磁性粉含有樹脂層22a,22bとの電気的導通が防止される。
【0039】
本実施の形態によるコイル部品1は、引出導体11aの上面にバンプ電極25a(第1のバンプ電極)が、ダミー引出導体15aの上面にバンプ電極25b(第2のバンプ電極)が、それぞれ形成されている。バンプ電極25a,25bは、引出導体11aの上面及びダミー引出導体15aの上面のみを露出させるレジストパターンを形成し、各導体をシードレイヤとして、さらに電解めっきを行うことにより形成される。絶縁樹脂層21a,21bを形成する工程並びに金属磁性粉含有樹脂層22a,22bを形成する工程は、バンプ電極25a,25bの形成後に実施される。
【0040】
バンプ電極25a,25bの平面形状は、引出導体やダミー引出導体の形状と同等か、それよりもひと回り小さな形状であり、引出導体やダミー引出導体の長手方向に延設されていることが好ましい。この構成によれば、バンプ電極の形成歩留りを向上させることができ、めっき成長の時短化を図ることができる。なお、本明細書において「バンプ電極」とは、フリップチップボンダーを用いてCu,Au等の金属ボールを熱圧着することにより形成されるものとは異なり、めっき処理により形成された厚膜めっき電極を意味する。バンプ電極の厚さは、金属磁性粉含有樹脂層22の厚さと同等かそれ以上である。
【0041】
コイル部品1の底面であって金属磁性粉含有樹脂層22aの主面には、一対の外部電極26a,26b(第1及び第2の外部電極)が形成されている。なお、図1は、コイル部品1の底面(実装面)が上向きの状態を示している。外部電極26a,26bは、上記のバンプ電極25a,25bを介して引出導体11a,11bにそれぞれ接続されている。外部電極26a,26bは、図示しない実装基板上に形成されたランドに半田実装される。これにより、実装基板上に形成された配線を通じて、平面スパイラル導体10aの外周端と平面スパイラル導体10bの外周端との間に電流を流すことができる。
【0042】
外部電極26a,26bは矩形パターンであり、バンプ電極25a,25bよりも広い面積を有しているが、その理由は以下の通りである。コイルのインダクタンスを大きくするためには、コイル形成領域をできるだけ大きくしなければならない。コイル形成領域を決められた寸法内でできる限り大きく設計するためには、コイルの外側に配置される引出導体やダミー引出導体はできるかぎり小さいほうがよい。しかし、引出導体やダミー引出導体を利用してバンプ電極を形成し、その露出面を外部電極とする場合において、引出導体やダミー引出導体の面積を小さくすると、その上に形成されるバンプ電極の面積も小さくなり、実装強度を保てない。そこで本実施の形態では、バンプ電極よりも大きな面積の外部電極(スパッタ電極)を設けて実装強度を確保している。
【0043】
本実施の形態において、外部電極26a,26bは金属磁性粉含有樹脂層22aの主面に選択的に形成されている。すなわち、コイル部品1の底面だけに形成されており、側面や上面には形成されていない。外部電極をコイル部品1の側面にも形成した場合、表面実装時に半田フィレットが形成されるので、チップの実装状態を目視にて確認でき、確実な実装が可能であるが、半田フィレットの分だけコイル部品の実装マージンを広くとらなければならない。また、コイル部品の上面に外部電極が形成されていると、実装基板の上方が金属カバーで覆われている場合に、コイル部品の外部電極と金属カバーとの接触が問題となる。しかしながら、外部電極26a,26bがコイル部品1の底面だけに形成されている場合には、上記問題を回避することができ、半田フィレットの省略による高密度実装を実現することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によるコイル部品1は、金属磁性粉含有樹脂層22の材料として互いに平均粒径が異なる3種類の金属磁性粉を用い、大径粒子と小径粒子との間の中径粒子を加えているので、細密充填が進んで粒子間の距離が近づきすぎることによるコアロスの増加を防止することができる。したがって、コアロスの増加を抑えながら金属磁性粉含有樹脂層22の透磁率を高くすることができ、これにより、直流重畳特性に優れた電源用チョークコイルを提供することが可能になる。
【0045】
また、本実施形態によるコイル部品1は、基板2の各角部と、平面スパイラル導体10a,10bの中央部に対応する部分とにスルーホール磁性体22c、22dを形成しており、スルーホール磁性体22c、22dが上記金属磁性粉含有樹脂層22と同じ材料で構成されているので、コイル部品の上記特性をさらに向上させることができる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0047】
例えば、上記実施形態によるコイル部品1は、コイル導体として絶縁基板上に設けられた平面スパイラル導体を用いているが、本発明は平面スパイラル導体に限定されるものではなく、金属磁性粉含有樹脂を用いる種々のコイル部品に適用可能である。また、金属磁性粉含有樹脂は、磁路を形成するためにコイル導体を覆っていればよく、どのような形で覆っていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、金属磁性粉含有樹脂を構成する第1の金属粉の主成分としてパーマロイを、また第2及び第3の金属粉の主成分としてカルボニル鉄を用いているが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、種々の材料を用いることができる。この場合、金属磁性粉含有樹脂を構成するためには、少なくとも第1の金属粉が磁性体であることが必要である。
【実施例】
【0049】
金属磁性粉含有樹脂のサンプルA1〜A5を用意し、それらの透磁率μi、タップ密度、及び3点曲げ強度を測定した。ここで、サンプルA1〜A5は、平均粒径が31μmであるパーマロイ粉と、このパーマアロイ粉よりも平均粒径が小さな1種類又は2種類のカルボニル鉄粉とを含み、カルボニル鉄粉の粒径及び重量比のみが異なるものであった。また、バインダーとして3重量%のエポキシ樹脂を使用した。
【0050】
サンプルA1は、平均粒径が31μmのパーマロイ粉と、平均粒径が4μmのカルボニル鉄粉を含み、その重量比を6:2とし、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉は用いなかった。サンプルA2は、平均粒径が31μmのパーマロイ粉と、平均粒径が4μmのカルボニル鉄粉と、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉を含み、その重量比を6:1.5:0.5とした。サンプルA3は、平均粒径が31μmのパーマロイ粉と、平均粒径が4μmのカルボニル鉄粉と、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉を含み、その重量比を6:1:1とした。サンプルA4は、平均粒径が31μmのパーマロイ粉と、平均粒径が4μmのカルボニル鉄粉と、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉を含み、その重量比を6:0.5:1.5とした。サンプルA5は、平均粒径が31μmのパーマロイ粉と、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉を含み、その重量比を6:2とし、平均粒径が4μmのカルボニル鉄粉は用いなかった。
【0051】
次に、サンプルA1〜A5の透磁率μi、タップ密度、及び3点曲げ強度を測定した。ここで透磁率μiの測定では、外径15mm、内径9mm、高さ3mmに成形されたトロイダルコアを用い、これに0.70mmφ(被膜厚0.15mm)の銅線を20ターン巻回し、室温、0.4A/m、0.5mA、100kHzとした。また、タップ密度の測定にはタップ密度測定テスターを用いた。3点曲げ強度の測定では、サンプルA1〜A5のサイズを20×10×1(mm)に成形し、その長手方向の両端部の下面を支持し、長手方向の中央部の上面に1mm/minで荷重を加え、サンプル破壊時の曲げ強度を測定した。以上の測定結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、サンプルA1の透磁率μiは32(H/m)、サンプルA2の透磁率μiは34(H/m)、サンプルA3〜A5の透磁率μiは35(H/m)となった。この結果から、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉の含有量の重量比が1よりも少ない場合には、透磁率μiが低下することが分かった。特に、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉をまったく含まないときの透磁率μiは32(H/m)と低いことから、金属磁性粉含有樹脂は、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉を重量比で0.5以上含むことが好ましいことが分かった。
【0054】
また表1に示すように、サンプルA1のタップ密度は5.23(g/cc)であり、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉の添加比率が増えるほどタップ密度は高くなり、サンプルA5のタップ密度(g/cc)は5.40となった。このように、タップ密度は、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉をより多く添加するほど高くなることが分かった。
【0055】
また表1に示すように、サンプルA1の3点曲げ強度は4.6(MPa)であり、平均粒径が4μmのカルボニル鉄粉に対する平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉の添加比率が増えるほど3点曲げ強度は小さくなり、サンプルA5の3点曲げ強度が最も小さくなり、3.3(MPa)となった。このように、3点曲げ強度は、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉をより多く添加するほど小さくなることが分かった。したがって、3点曲げ強度の観点では、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉よりも平均粒径が4μmのカルボニル鉄粉をより多く含むほうが好ましいことが分かった。
【0056】
次に、サンプルA1〜A5のコアロスPcv(kW/m)を測定した。コアロスの測定にはB−Hアナライザーを用い、10mTの磁束密度による磁力を印加した。その結果を表2に示す。また、図3は表2の結果をグラフ化したものであって、中径及び小径の鉄粉の重量比とコアロスとの関係を示すグラフである。
【0057】
【表2】
【0058】
表2及び図3に示すように、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉に対して平均粒径が4μmのカルボニル鉄粉を相対的に多く添加するほどコアロスが下がり、逆に平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉を相対的に多く添加するほどコアロスが上がることが分かった。したがって、平均粒径が1μmのカルボニル鉄粉に対して平均粒径が4μmのカルボニル鉄粉の重量比を大きくするほどコアロスの増加を抑制できることが分かった。
【0059】
次に、サンプルA3の金属磁性粉の粒度分布を測定した。ここでサンプルA3は上記のように、平均粒径が31μmである大径のパーマロイ粉と、平均粒径が4μmである中径のカルボニル鉄粉と、平均粒径が1μmである小径のカルボニル鉄粉とを75:12.5:12.5の重量比で含むものである。サンプルA3の粒度分布の測定結果を図4に示す。
【0060】
図4のグラフから明らかなように、サンプルA3の粒度分布には、3種類の金属磁性粉の平均粒径に合わせて3つピークがはっきりと現れた。このように、金属磁性粉含有樹脂層の材料として好適な平均粒径が互いに異なる3種類の金属磁性粉を用いる場合、その粒度分布は3つのピークを持つことが分かった。
【符号の説明】
【0061】
1 コイル部品
2 基板
3 金属磁性粉
3a 大径粉(パーマロイ粉)
3b 中径粉(カルボニル鉄粉)
3c 小径粉(カルボニル鉄粉)
4 樹脂
2b 基板2のおもて面
2t 基板2のうら面
10a,10b 平面スパイラル導体
11a,11b 引出導体
12,16,17 スルーホール導体
12a,16a,17a 導体埋込用スルーホール
13,15a,15b ダミー引出導体
14 磁路形成用スルーホール
20 めっき層
21 絶縁樹脂層
22 金属磁性粉含有樹脂層
22a スルーホール磁性体
23 絶縁層
25,26 外部電極
30,31 バンプ電極
図1
図2
図3
図4