特許第6115078号(P6115078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115078
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20170410BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20170410BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H01F17/04 Z
   H01F41/00 G
   H01F41/04 B
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-240633(P2012-240633)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-90143(P2014-90143A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100127199
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川崎 仁寛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 信雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−326274(JP,A)
【文献】 特開平03−132007(JP,A)
【文献】 特開平10−172832(JP,A)
【文献】 実開昭60−153510(JP,U)
【文献】 特開平09−055321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/00−27/02
27/06−27/08
27/23
27/28−27/29
27/36
27/42
38/42−41/04
41/08
41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部及び前記巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部を有するドラムコアと、
前記巻芯部に巻回された1又は複数のワイヤと、
前記一対の鍔部のうちの一方に設けられ、前記1又は複数のワイヤそれぞれの一端が接続された第1の端子電極と、
前記一対の鍔部のうちの他方に設けられ、前記1又は複数のワイヤそれぞれの他端が接続された第2の端子電極と、
前記一対の鍔部のうちの少なくとも一方の表面に設けられ、少なくとも1つの導体ループを構成する導電性部材であって、前記第1及び第2の端子電極とは接続されない導電性部材と、を備え、
前記一対の鍔部のうちの前記一方は第1乃至第6の表面を有する略直方体の磁性体であり、
前記一対の鍔部のうちの前記他方は第7乃至第12の表面を有する略直方体の磁性体であり、
前記第1の表面と前記第6の表面、前記第2の表面と前記第5の表面、前記第3の表面と前記第4の表面はそれぞれ互いに反対側に位置し、
前記第7の表面と前記第12の表面、前記第8の表面と前記第11の表面、前記第9の表面と前記第10の表面はそれぞれ互いに反対側に位置し、
前記巻芯部は、前記第1の表面で前記一対の鍔部のうちの前記一方に接続されるとともに、前記第7の表面で前記一対の鍔部のうちの前記他方に接続され、
前記第2の表面には、前記第1の端子電極が形成され、
前記第8の表面には、前記第2の端子電極が形成され、
前記導電性部材は、少なくとも前記第5及び第6の表面に形成され、
前記導電性部材は、前記第5の表面に形成された部分と、前記第6の表面に形成された部分とによって1つの導体ループを構成することを特徴とするコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特にドラムコアを用いて構成した表面実装型のコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラムコアを用いて構成した表面実装型のコイル部品が知られている。ドラムコアは、巻芯部及びその両端に形成された一対の鍔部を有し、これらが一体形成された磁性体である。コイルを構成する1又は複数のワイヤは巻芯部に巻回され、一対の鍔部の各一表面に形成された端子電極にそれぞれ継線される。
【0003】
特許文献1には、表面実装型のコイル部品ではないが、ドラムコアと同様の巻芯部及び鍔部(フランジ部)を有するコアを用いて構成されたインダクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−302321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コイル部品には、インダクタンスの規格値の範囲が決められているものがある。出荷前の試験でインダクタンスがこの範囲に含まれていないことが判明したコイル部品は、不良品として廃棄されることになる。不良品として廃棄されるコイル部品の数が少ない方がよいことは言うまでもなく、規格値の範囲に収まるインダクタンスを有するコイル部品の割合(歩留まり)を高めることが求められている。
【0006】
歩留まり向上を実現するための構成のひとつとして、特許文献1の図1にも示されるように、鍔部の端面(巻芯部が接続されている表面の反対側に位置する表面)に金属膜を形成することが考えられる。鍔部の端面に形成された金属膜は、コイル部品で発生する磁束が通過することによって渦電流を発生する。この渦電流はコイル部品で発生する磁束の変化を打ち消す方向に流れるので、金属膜の存在により、コイル部品のインダクタンスが抑制されることになる。
【0007】
歩留まり向上のためには、このようなコイル部品を、金属膜が形成されている状態でのインダクタンスが規格値の範囲内に含まれるように設計する。そして、コイル部品が一応完成した後(金属膜が完全な形で残存している状態)、インダクタンスを実測し、測定されたインダクタンスが規格値の範囲を下回っていた場合には、金属膜の一部又は全部を除去する。これにより、金属膜によるインダクタンスの抑制効果が緩和又は解除され、インダクタンスを上昇させることができるので、規格値の範囲に収まるインダクタンスを有するコイル部品の割合を高めることが可能になる。
【0008】
しかしながら、上記のような金属膜の除去によるインダクタンスの調整法には、金属膜の除去に要する作業時間が非常に長くなってしまう場合があるという問題がある。つまり、特許文献1の金属膜は、外形で囲む領域のすべてを覆っている(べた塗りされている)ため、インダクタンスの上昇度は削り取った面積に応じたものとなる。したがって、金属膜を除去する前のインダクタンスと規格値の範囲との差が大きいほど除去すべき金属膜の面積が大きくなるので、場合によっては、金属膜の除去に要する作業時間が非常に長くなってしまう。
【0009】
したがって、本発明の目的の一つは、外形で囲む領域のすべてを覆う(べた塗りされた)金属膜を用いる場合に比べ、インダクタンスの事後的な変更にかかる作業時間を短縮できるコイル部品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明によるコイル部品は、巻芯部及び前記巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部を有するドラムコアと、前記巻芯部に巻回された1又は複数のワイヤと、前記一対の鍔部のうちの少なくとも一方の表面に、少なくとも1つの導体ループを構成する導電性部材とを備えることを特徴とする。
【0011】
導体ループは、外形で囲む領域のすべてを覆う(べた塗りされた)金属膜と同様、インダクタンスの抑制効果を有しているが、その多くは、渦電流ではなく導体ループを周回するループ電流によるものとなる。導体ループの一部を切断すると、ループ電流が流れなくなることから、インダクタンスの抑制効果のほとんどが失われる。すなわち、本発明によれば、導体ループの一部を切断するだけでコイル部品のインダクタンスを大きく上昇させられるので、外形で囲む領域のすべてを覆う(べた塗りされた)金属膜を用いる場合に比べ、コイル部品のインダクタンスの事後的な変更にかかる作業時間を短縮できる。
【0012】
上記コイル部品において、前記一対の鍔部のうちの一方は第1乃至第6の表面を有する略直方体の磁性体であり、前記一対の鍔部のうちの他方は第7乃至第12の表面を有する略直方体の磁性体であり、前記第1の表面と前記第6の表面、前記第2の表面と前記第5の表面、前記第3の表面と前記第4の表面はそれぞれ互いに反対側に位置し、前記第7の表面と前記第12の表面、前記第8の表面と前記第11の表面、前記第9の表面と前記第10の表面はそれぞれ互いに反対側に位置し、前記巻芯部は、前記第1の表面で前記一対の鍔部のうちの一方に接続されるとともに、前記第7の表面で前記一対の鍔部のうちの他方に接続され、前記第2の表面には、前記1又は複数のワイヤそれぞれの一端が継線される少なくとも1つの第1の端子電極が形成され、前記第8の表面には、前記1又は複数のワイヤそれぞれの他端が継線される少なくとも1つの第2の端子電極が形成され、前記導電性部材は、前記第3、第5、第6、第11の表面のうちの少なくとも1つ以上に形成されることとしてもよい。これによれば、好適な導体ループを構成できる。
【0013】
また、上記コイル部品において、前記導電性部材は、前記第6の表面に形成された部分によって1つの導体ループを構成することとしてもよい。これによれば、導体ループのループ内部面積を自由に調節できるので、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率を所望の値に調節することが可能になる。
【0014】
また、上記コイル部品において、前記巻芯部に巻回されるワイヤは1本であり、前記第1及び第2の端子電極はそれぞれ1つずつであり、前記第1の端子電極は前記導電性部材の一部を構成し、前記導電性部材は、前記第5の表面に形成された部分と、前記第6の表面に形成された部分と、前記第1の端子電極である部分とによって1つの導体ループを構成することとしてもよい。これによれば、比較的大きな導体ループを形成することができるので、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率を大きくすることが可能になる。また、端子電極を導体ループの一部として有効に活用できる。
【0015】
また、上記コイル部品において、前記導電性部材は、前記第5の表面に形成された部分と、前記第6の表面に形成された部分とによって1つの導体ループを構成することとしてもよい。これによれば、比較的大きな導体ループを形成することができるので、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率を大きくすることが可能になる。
【0016】
また、上記コイル部品において、前記導電性部材は、前記第5の表面に形成された部分によって1つの導体ループを構成することとしてもよいし、前記導電性部材は、前記第3の表面に形成された部分によって1つの導体ループを構成することとしてもよい。これによれば、第6の表面に導電性部材を形成する場合とは違ったインダクタンスの変化率を得ることが可能になる。
【0017】
また、上記コイル部品において、前記導電性部材は、前記第6の表面に形成された部分によって2つの導体ループを構成することとしてもよいし、前記導電性部材は、前記第5の表面に形成された部分によって1つの導体ループを構成するとともに、前記第11の表面に形成された部分とによって他の1つの導体ループを構成することとしてもよいし、前記巻芯部に巻回されるワイヤは1本であり、前記第1及び第2の端子電極はそれぞれ1つずつであり、前記第1の端子電極は前記導電性部材の一部を構成し、前記導電性部材は、前記第5の表面に形成された部分と、前記第6の表面に形成された部分とによって1つの導体ループを構成するとともに、前記第6の表面に形成された部分と、前記第1の端子電極である部分とによって他の1つの導体ループを構成することとしてもよい。これらによれば、インダクタンスを複数段階に調節することが可能になる。
【0018】
また、本発明によるコイル部品の製造方法は、巻芯部及び前記巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部を有するドラムコア、前記巻芯部に巻回された1又は複数のワイヤ、並びに、前記一対の鍔部のうちの少なくとも一方の表面に少なくとも1つの導体ループを構成する導電性部材を備えるコイル部品を生成する生成ステップと、前記コイル部品のインダクタンスを測定する測定ステップと、前記測定ステップでの測定により得られた前記インダクタンスが所定範囲内にあるか否かを判定する第1の判定ステップと、前記第1の判定ステップの判定結果が否定である場合に、前記導電性部材の一部を除去することにより前記導体ループを切断する切断ステップとを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、初めインダクタンスが規格値の範囲内になかったものであっても、切断ステップの処理を経て、インダクタンスを規格値の範囲内に入れることが可能になる。したがって、コイル部品を製造する工程の歩留まりが向上する。
【0020】
上記コイル部品の製造方法において、前記第1の判定ステップの判定結果が否定である場合に、前記少なくとも1つの導体ループのうちの少なくとも一部の切断により前記コイル部品のインダクタンスを調整可能か否かを判定する第2の判定ステップをさらに備え、前記切断ステップは、前記第2の判定ステップの判定結果が肯定である場合に実行されることとしてもよい。また、この製造方法においてさらに、前記第2の判定ステップでは、切断可能な導体ループが残っているか否かを判定するととともに、切断可能であると判定された1又は複数の導体ループを切断することによって変化した前記コイル部品のインダクタンスが前記所定範囲内に入るか否かを判定し、これら2つの判定の結果がともに肯定である場合に、調整可能であると判定することとしてもよい。
【0021】
また、上記各コイル部品の製造方法において、前記切断ステップによる切断の後、前記測定ステップ以降のステップを繰り返すこととしてもよい。これによれば、導電性部材が複数の導体ループを構成する場合に、段階的にインダクタンスを上げていくことが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、外形で囲む領域のすべてを覆う(べた塗りされた)金属膜を用いる場合に比べ、コイル部品のインダクタンスの事後的な変更にかかる作業時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態による表面実装型のインダクタの外観構造を示す略斜視図である。
図2】鍔部の表面に導体ループを構成する導電性部材を設けたことの効果を説明するための説明図である。
図3】本発明の実施の形態による表面実装型のインダクタの製造方法を示すフローチャートである。
図4図1に示す導電性部材によって構成される導体ループのループ内部面積(mm)と、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率(%)との関係を示すグラフである。
図5】(a)〜(f)はそれぞれ、導体ループを構成する導電性部材の形状及び配置のバリエーションを示す図である。
図6】(a)〜(f)はそれぞれ、導体ループを構成する導電性部材の形状及び配置のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1(a)(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態による表面実装型のインダクタ10(コイル部品)の外観構造を示す略斜視図である。図1(b)は、インダクタ10を図1(a)の下側から見た場合の図となっている。
【0026】
図1(a)(b)に示すように、インダクタ10は、ドラムコア11と、ドラムコア11に巻回された1本のワイヤ12とを備えて構成される。ドラムコア11は、棒状の巻芯部11aと、巻芯部11aの両端に設けられた一対の鍔部11b,11cとを備え、これらが一体化された構造を有している。ドラムコア11は、比較的透磁率が高く、かつ導電性を有しない磁性材料、例えばNi−Zn系フェライトの焼結体によって構成することが好ましいが、比較的透磁率の低い(μ=2〜10)Ni−Zn系フェライトによって構成してもよいし、非磁性であるNi−Zn系フェライト又はアルミナによって構成してもよい。
【0027】
鍔部11b,11cはそれぞれ、6つの表面を有する略直方体の磁性体である。以下では、図1に示すように、鍔部11bが有する6つの表面を第1乃至第6の表面S〜Sと称し、鍔部11cが有する6つの表面を第7乃至第12の表面S〜S12と称する。第1の表面Sと第6の表面S、第2の表面Sと第5の表面S、第3の表面Sと第4の表面Sはそれぞれ互いに反対側に位置する。同様に、第7の表面Sと第12の表面S12、第8の表面Sと第11の表面S11、第9の表面Sと第10の表面S10はそれぞれ互いに反対側に位置する。巻芯部11aは、第1の表面Sで鍔部11bに接続されるとともに、第7の表面Sで鍔部11cに接続される。また、第2の表面Sには端子電極Eb(第1の端子電極)が形成され、この端子電極Ebにワイヤ12の一端が熱圧着により継線される。同様に、第8の表面Sには端子電極Ec(第2の端子電極)が形成され、この端子電極Ecにワイヤ12の他端が熱圧着により継線される。端子電極Eb,Ecはそれぞれ、図1(b)に示すように、第2及び第8の表面S,Sの全面に形成される。インダクタ10は、第2及び第8の表面S,Sを図示しない基板に対向させた状態で、該基板に実装される。
【0028】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、一対の鍔部11b,11cの対向方向をy方向、インダクタ10が実装される基板の面内でy方向と垂直な方向をx方向、x方向とy方向の両方に垂直な方向をz方向と称する。
【0029】
ワイヤ12は被覆導線であり、巻芯部11aに巻回されてコイル導体を構成する。ドラムコア11は、このワイヤ12を流れる電流によって発生する磁界の磁路を構成する。
【0030】
鍔部11bの第6の表面Sには、1つの導体ループを構成する導電性部材Lが形成される。導電性部材Lは矩形の部材であり、第6の表面Sのみに形成され、他の表面には形成されていない。
【0031】
導電性部材Lの形状及び配置について、より具体的に説明する。導電性部材Lは、互いに接続された4つの線状導電性部材L〜Lにより構成される。線状導電性部材Lは、第5の表面Sとの境界から少し離れたところに、該境界と平行に形成される。線状導電性部材Lは、第4の表面Sとの境界から少し離れたところに、該境界と平行に形成される。線状導電性部材Lは、第2の表面Sとの境界から少し離れたところに、該境界と平行に形成される。線状導電性部材Lは、第3の表面Sとの境界から少し離れたところに、該境界と平行に形成される。線状導電性部材Lの第4の表面S側の端部は、線状導電性部材Lの第5の表面S側の端部に接続される。線状導電性部材Lの第3の表面S側の端部は、線状導電性部材Lの第5の表面S側の端部に接続される。線状導電性部材Lの第4の表面S側の端部は、線状導電性部材Lの第2の表面S側の端部に接続される。線状導電性部材Lの第3の表面S側の端部は、線状導電性部材Lの第2の表面S側の端部に接続される。
【0032】
以上のような導電性部材Lを設けたことにより、インダクタ10のインダクタンスは、導電性部材Lを設けない場合に比べて抑制されている。以下、詳しく説明する。
【0033】
図2は、鍔部に導電性部材Lを設けたことの効果を説明するための説明図である。ワイヤ12に電流を流すと、同図に示すように、ドラムコア11を通過する磁界H0が発生する。この磁界H0は、ドラムコア11を主としてy方向に通過し、鍔部11bのy方向端面である第6の表面Sも通過する。導電性部材Lにより構成される導体ループはこの第6の表面Sに形成されているので、磁界H0は導体ループの内側を通過することになる。
【0034】
このような磁界H0が、ワイヤ12に流れる電流が変化するなどの理由によって変化すると、導体ループには、この変化を打ち消す方向の磁界H1を発生するループ電流iが流れる。これにより、磁界H0の変化が妨げられることから、インダクタ10のインダクタンスは、その分小さくなる。つまり、インダクタ10では、鍔部の表面に導体ループを構成する導電性部材Lを形成したことにより、導電性部材Lを設けない場合に比べてインダクタンスが抑制されていると言える。
【0035】
導電性部材Lは導体ループを構成しているので、インダクタ10では、導電性部材Lの一部(例えば、図1(a)に示したX部分)を除去することにより、導体ループを容易に切断できる。この除去は、例えば鑿のような工具で除去対象の部分を削り取ることによって行えばよい。導体ループが切断されれば、ループ電流によるインダクタンスの抑制効果が失われるので、インダクタ10のインダクタンスが大きく上昇することになる。つまり、インダクタ10では、導体ループの一部を削り取るという簡単な作業により、インダクタンスを事後的に大きく上昇させることが可能になっている。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によるインダクタ10によれば、導体ループの一部を削り取るという簡単な作業によりインダクタンスを事後的に大きく上昇させられるので、特許文献1に示されるような外形で囲む領域のすべてを覆う(べた塗りされた)金属膜を用いる場合に比べ、インダクタンスの事後的な変更にかかる作業時間を短縮できる。
【0037】
次に、本実施の形態によるインダクタ10の製造方法について説明する。
【0038】
図3は、本実施の形態によるインダクタ10の製造方法を示すフローチャートである。この製造方法では、まず初めに、図1に示したインダクタ10を生成する(ステップS1)。なお、インダクタ10の構成のうち導電性部材L以外の部分については、従来どおりの方法により形成すればよい。また、導電性部材Lの形成は、端子電極Eb,Ecの形成と同様の方法、すなわち、ドラムコア11の表面に導体パターン(導体膜)を印刷することによって行ってもよいし、ドラムコア11の表面に導電性の金属板を貼り付けることによって行ってもよい。なお、前者の場合、導電性部材L用の導体パターンの印刷を端子電極Eb,Ecの形成と同一の工程で行うようにすることが好適である。
【0039】
次に、インダクタ10のインダクタンスを測定する(ステップS2)。そして、ステップS2での測定により得られたインダクタンスが、所定範囲内(規格値の範囲内)にあるか否かを判定する(ステップS3)。その結果、インダクタンスが所定範囲内にあれば、他の必要な検査を行ったうえで、インダクタ10を出荷することになる。一方、インダクタンスが所定範囲内になければ、導体ループの切断によって調整可能であるか否かを判定する(ステップS4)。この判定には、未切断の導体ループが残っているか否かの判定と、その導体ループを切断することによって変化したインダクタンスが上記所定範囲内に入り得るか否かの判定とを含むことが好ましく、ステップS4では、これら2つの判定の結果がともに肯定である場合に限り、調整可能であると判定するようにすることが好ましい。なお、後者の判定のため、予め、複数のサンプルを用いて、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率(詳しくは後述する)を測定しておくことが好ましい。
【0040】
ステップS4で調整可能でないと判定された場合には、インダクタ10を破棄することになる。一方、調整可能であると判定された場合には、導電性部材Lの一部を上述した方法で除去することにより、導体ループを切断する(ステップS5)。その後、再度ステップS2以降の処理を繰り返すことにより、所定範囲内のインダクタンスを有するインダクタ10を得ることが可能になる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によるインダクタ10の製造方法によれば、ステップS2における最初の測定ではインダクタンスが規格値の範囲内になかったものであっても、ステップS5の処理を経て、インダクタンスを規格値の範囲内に入れることが可能になる。したがって、インダクタ10を製造する工程の歩留まりが向上する。
【0042】
ここで、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率と、導電性部材Lの形状との関係について説明する。
【0043】
図4は、導電性部材Lによって構成される導体ループのループ内部面積(mm)と、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率(%)との関係を示すグラフである。図4には、図1に示した形状の導電性部材Lを第6の表面Sと第12の表面S12の両方に有するインダクタ10を用い、図1に示した高さHと幅Wの異なる3パターンそれぞれについて、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率を測定した結果を示している。ただし、導電性部材Lの導体幅は一定値とした。表1には、図4に示したループ内部面積及びインダクタンス変化率の具体的な値を示している。この場合のループ内部面積は、表1に示すように、導電性部材Lによって囲まれる領域の面積(高さH×幅W)の2倍となる。
【0044】
【表1】
【0045】
図4から理解されるように、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率は、導体ループのループ内部面積によって異なる。これを利用すれば、導体ループのループ内部面積を適宜調整することにより、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率を所望の値に制御することが可能になる。同様のことは、導体ループのループ内部面積だけでなく、導体ループのその他の形状についても当てはまる。したがって、導電性部材Lの形状を具体的に決定するにあたっては、まず初めにインダクタンス変化率の値をいくつにするかを決定し、決定された値を実現できる形状を選択することが好ましい。
【0046】
図5(a)〜(f)及び図6(a)〜(f)はそれぞれ、導電性部材Lの形状及び配置のバリエーションを示す図である。以下、それぞれについて詳しく説明する。なお、これらの図はそれぞれ、図1(a)に対応する方向から、バリエーションにかかるインダクタ10を見た場合の略斜視図である。図示していないが、いずれのバリエーションにおいても、第2及び第8の表面S2,S8には、図1(b)に示したものと同様の端子電極Eb,Ecが形成される。
【0047】
図5(a)に示すバリエーションでは、第5の表面Sに形成される導電性部材L、第6の表面Sに形成される導電性部材L、及び第2の表面Sに形成される端子電極Eb(図1(b)参照)によって導電性部材Lが構成される。導電性部材Lは、これら導電性部材L,L及び端子電極Ebによって1つの導体ループを構成する。
【0048】
より具体的に説明すると、まず導電性部材Lは、互いに接続された3つの線状導電性部材L11〜L13からなるU字型の部材である。線状導電性部材L11はU字型部材の底部を構成し、第1の表面Sとの境界に沿って形成される。線状導電性部材L12はU字型部材の一方腕部を構成し、第3の表面Sとの境界に沿って形成される。線状導電性部材L13はU字型部材の他方腕部を構成し、第4の表面Sとの境界に沿って形成される。一方、導電性部材Lは、離れて設置された2つの線状導電性部材L21,L22により構成される。線状導電性部材L21は第3の表面Sとの境界に沿って形成され、一端で線状導電性部材L12の一端と接続され、他端で端子電極Ebと接続される。線状導電性部材L22は第4の表面Sとの境界に沿って形成され、一端で線状導電性部材L13の一端と接続され、他端で端子電極Ebと接続される。これにより、第5の表面Sの中ほどから第6の表面Sと第2の表面Sとの境界に至るループ内部領域を有する導体ループが形成される。
【0049】
本バリエーションによれば、図1の例に比べて広いループ内部領域を有する導体ループを形成することが可能になる。したがって、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率を大きくすることが可能になる。また、端子電極Ebを導体ループの一部として有効に活用することが可能になる。
【0050】
図5(b)に示すバリエーションでは、第5の表面Sに形成される導電性部材L、及び第6の表面Sに形成される導電性部材Lによって導電性部材Lが構成される。導電性部材Lは、これら導電性部材L,Lによって1つの導体ループを構成する。
【0051】
より具体的に説明すると、まず導電性部材Lは、互いに接続された3つの線状導電性部材L11〜L13からなるU字型の部材である。線状導電性部材L11〜L13はそれぞれ、図5(a)に示すバリエーションにおける線状導電性部材L11〜L13と同じ構成を有する。一方、導電性部材Lは、本バリエーションでは、互いに接続された3つの線状導電性部材L21〜L23からなるU字型の部材である。線状導電性部材L21はU字型部材の底部を構成し、第2の表面Sとの境界から少し離れたところに、該境界と平行に形成される。線状導電性部材L22はU字型部材の一方腕部を構成し、第3の表面Sとの境界に沿って形成される。線状導電性部材L22の第5の表面S側の端部は、線状導電性部材L12の一端と接続される。線状導電性部材L23はU字型部材の他方腕部を構成し、第4の表面Sとの境界に沿って形成される。線状導電性部材L23の第5の表面S側の端部は、線状導電性部材L13の一端と接続される。導電性部材Lは、第2の表面Sに形成される端子電極Ebとは接続されない。以上の構成により、第5の表面Sの中ほどから第6の表面Sの中ほどに至るループ内部領域を有する導体ループが形成される。
【0052】
本バリエーションによっても、図1の例に比べて広いループ内部領域を有する導体ループを形成することが可能になるので、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率を大きくすることが可能になる。
【0053】
図5(c)〜図5(f)に示すバリエーションでは、図1に示した例と同様、第6の表面Sのみに、矩形の導電性部材Lが形成される。図5(c)に示すバリエーションでは、図1に示した例と比べると、導体幅は同じである一方、導電性部材Lのループ内部領域の面積が大きくなっている。したがって外周も大きくなり、導電性部材Lの外周が第3,第4,第5の表面S,S,Sとの境界に接している。また、図5(d)に示すバリエーションでは、図1に示した例と比べると、導体幅は同じである一方、導電性部材Lのループ内部領域の面積が小さくなっている。図5(e)に示すバリエーションでは、図1に示した例と比べ、導体幅が太くなっている。一方、図5(f)に示すバリエーションでは、図1に示した例と比べ、導体幅が細くなっている。このように、導電性部材Lのループ内部領域の面積及び導体幅は自由に選択することができ、そうすることによって、導体ループ切断前後におけるインダクタンスの変化率を自由に調節することができる。
【0054】
図6(a)に示すバリエーションは、図1に示した例と同様の矩形の導電性部材Lを、第5の表面Sに形成した例である。また、図6(b)に示すバリエーションは、図1に示した例と同様の矩形の導電性部材Lを、第3の表面Sに形成した例である。このように、導電性部材Lは必ずしも第6の表面Sに形成しなければならないわけではなく、第3,第5の表面S,Sに形成してもよい。もちろん、第4の表面Sに形成してもよいし、第3〜第5の表面S〜Sのうちの複数に形成してもよい。第3〜第5の表面S〜Sと第6の表面Sとでは通過磁束の量が異なるので、このようにすることで、第6の表面Sに導電性部材Lを形成する場合とは違ったインダクタンスの変化率を得ることが可能になる。
【0055】
図6(c)に示すバリエーションは、楕円形の導電性部材Lを第6の表面Sのみに形成した例である。この例に示されるように、導体ループは必ずしも矩形でなくともよく、円形、楕円形、三角形等、所望のインダクタンス変化率に応じて最適な形状を選択することが好ましい。なお、本バリエーションでは、第6の表面Sに形成する導電性部材Lを楕円形にした例を示したが、第3〜第5の表面S〜Sなど、他の表面に形成される導電性部材Lの形状も同様に変更してよいことは言うまでもない。
【0056】
図6(d)に示すバリエーションでは、第6の表面Sに形成される矩形の導電性部材L、及び導電性部材Lの内側に形成した線状導電性部材Lによって導電性部材Lが構成される。導電性部材Lの具体的な形状及び配置は、図1に示した導電性部材Lと同様である。線状導電性部材Lは導電性部材Lの内側をz方向に横断している。したがって、本バリエーションによる導電性部材Lは、線状導電性部材Lによって分かたれた2つの導体ループを構成する。
【0057】
また、図6(e)に示すバリエーションでは、第5の表面Sに形成される矩形の導電性部材L、及び第11の表面S11に形成される矩形の導電性部材Lによって導電性部材Lが構成される。導電性部材Lの具体的な形状及び配置は、図6(a)に示した導電性部材Lと同様である。また、導電性部材Lの具体的な形状及び配置も、第5の表面Sではなく第11の表面S11に形成されるという点を除けば、図6(a)に示した導電性部材Lと同様である。したがって、本バリエーションによる導電性部材Lも、2つの導体ループを構成する。
【0058】
さらに、図6(f)に示すバリエーションでは、第5の表面Sに形成される導電性部材L、第6の表面Sに形成される導電性部材L、及び第2の表面Sに形成される端子電極Eb(図1(b)参照)によって導電性部材Lが構成される。導電性部材Lの具体的な形状及び配置は、図5(a)に示した導電性部材Lと同様である。一方、導電性部材Lは、図5(a)に示した導電性部材Lに、線状導電性部材L21,L22を第6の表面Sの中ほどでx方向に接続する線状導電性部材L23を加えた構造を有している。したがって、本バリエーションによる導電性部材Lは、導電性部材Lの一部及び導電性部材Lによって構成される導体ループと、導電性部材Lの一部及び端子電極Ebによって構成される導体ループとからなる2つの導体ループを構成する。
【0059】
図6(d)〜(f)に示すバリエーションによって示されるように、鍔部11b,11cの表面に形成する導電性部材Lは、2つ又はそれ以上の導体ループを構成するように形成されてもよい。こうすることで、導体ループごとに切断するかしないかを決定できるので、インダクタ10のインダクタンスを複数段階に調節することが可能になる。なお、このように2つ又はそれ以上の導体ループを利用する場合、上述したインダクタ10の製造方法によれば、ステップS5を通過するたびに1つの導体ループを切断していくことにより、段階的にインダクタンスを上げていくことが可能になる。
【0060】
また、図6(e)に示したように、鍔部11bだけではなく鍔部11cにも導電性部材Lを設けてもよく、この場合、鍔部11bに形成する部分の形状及び配置と鍔部11cに形成する部分の形状及び配置とは、図6(e)に示すように同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、鍔部11bには図5(a)に示すバリエーションにかかる導電性部材を形成し、鍔部11cには図5(b)に示すバリエーションにかかる導電性部材を形成する、というように、鍔部11bと鍔部11cとで形状及び配置の少なくとも一方が異なる導電性部材を形成することとしてもよい。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0062】
例えば、上記実施の形態では、インダクタであるコイル部品を例に取って説明したが、本発明は、ドラムコアを用いて構成した表面実装型であれば、コモンモードフィルタ、パルストランス、バルントランスなど、他の種類のコイル部品にも広く適用可能である。なお、一方の鍔部に複数の端子電極を形成する必要があるコイル部品では、図5(a)に示したバリエーションのように、端子電極を利用して1つの大きな導体ループを構成することは難しいが、端子電極ごとに導体ループを構成することは何ら差し支えない。
【符号の説明】
【0063】
Eb,Ec 端子電極
L,L,L,L11〜L13,L21〜L23 導電性部材
〜S12 第1〜第12の表面
10 インダクタ
11 ドラムコア
11a 巻芯部
11b,11c 鍔部
12 ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6