特許第6115087号(P6115087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115087
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20170410BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20170410BHJP
【FI】
   H02J50/10
   H02J50/80
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-249468(P2012-249468)
(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-99963(P2014-99963A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】新妻 素直
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−268311(JP,A)
【文献】 特表2010−522534(JP,A)
【文献】 特開2010−093482(JP,A)
【文献】 特開2003−087898(JP,A)
【文献】 特開2012−200056(JP,A)
【文献】 特開2011−030404(JP,A)
【文献】 米国特許第06127942(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0204845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電コイルを有する給電装置と、受電コイルを有する受電装置とを具備し、前記給電コイルから前記受電コイルに非接触給電を行う非接触給電システムであって、
前記給電装置と前記受電装置との間で音響信号を用いて通信する複数の発信器と複数の受信器を備え、
前記複数の発信器は、前記給電コイル及び前記受電コイルの一方を覆うカバーの外周に沿って当該カバーに等間隔で配置され、
前記複数の受信器は、前記給電コイル及び前記受電コイルの他方を覆うカバーの外周に沿って当該カバーに等間隔で配置されていることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
前記給電コイル及び前記受電コイル各々を覆うカバーの少なくとも一方の一部に発信用振動板を設けると共に前記カバーと前記発信用振動板との境界に可撓性を有するシール材を設け、前記発信用振動板を用いて音響信号を発信することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記発信用振動板は、音響信号に指向性を持たせる形状であることを特徴とする請求項2に記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記給電コイル及び前記受電コイル各々を覆うカバーの少なくとも一方を用いて音響信号を受信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項5】
前記給電コイル及び前記受電コイル各々を覆うカバーの少なくとも一方の一部に受信用振動板を設けると共に前記カバーと前記受信用振動板との境界に可撓性を有するシール材を設け、前記受信用振動板を用いて音響信号を受信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項6】
前記受電装置は、非接触給電時に周期的に音響信号を発信し、
前記給電装置は、非接触給電時に周期的な音響信号を受信できない場合には給電を停止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項7】
前記受電装置は、非接触給電の必要がない場合には、周期的な音響信号の発信を停止することを特徴とする請求項6に記載の非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触給電システムにおいて、受電側が必要とする電力を過不足なく給電するためには、受電側から給電側へ通信によって情報を送信して、給電側を適切に制御することが必要になることがある。例えば、受電側からは、受電側に搭載された蓄電池の充電状態(SOC:State Of Charge)、受電側の受電コイル両端に生じる電圧や電流、受電している電力量などを給電側に送信する。一方、給電側では、受電側から受信した情報に基づいて給電電力、給電周波数、給電回路のPWM(Pulse Width Modulation)制御のデューティあるいは駆動周波数を調整する。例えば、下記特許文献1には、受電側からの情報に基づいて給電側がPWM制御を行う非接触電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−348776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、一般的に通信として電波や光波を用いているが、電波や光波には以下に述べる問題がある。つまり、電波は、数m以上の範囲に届くため、近接して複数の受電装置や給電装置を使用する場合、混信の防止に細心の注意を払う必要あり、また数百MHz以上の帯域がよく使用されるが、水中では通信することが困難である。また、光波は、異物や汚れによって光が遮られた場合に通信することができない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電波及び光波を用いることなく受電側と給電側との間で情報を伝達して非接触給電を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、給電コイルを有する給電装置と、受電コイルを有する受電装置とを具備し、給電コイルから受電コイルに非接触給電を行う非接触給電システムであって、給電装置と受電装置との間で音響信号を用いて通信する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、給電コイル及び受電コイル各々を覆うカバーの少なくとも一方を用いて音響信号を発信する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、給電コイル及び受電コイル各々を覆うカバーの少なくとも一方の一部に発信用振動板を設けると共にカバーと発信用振動板との境界に可撓性を有するシール材を設け、発信用振動板を用いて音響信号を発信する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、発信用振動板は、音響信号に指向性を持たせる形状である、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、給電コイル及び受電コイル各々を覆うカバーの少なくとも一方を用いて音響信号を受信する、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、第6の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、給電コイル及び受電コイル各々を覆うカバーの少なくとも一方の一部に受信用振動板を設けると共にカバーと受信用振動板との境界に可撓性を有するシール材を設け、受信用振動板を用いて音響信号を受信する、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、第7の解決手段として、上記第1〜第6のいずれか1つの解決手段において、受電装置は、非接触給電時に周期的に音響信号を発信し、給電装置は、非接触給電時に周期的な音響信号を受信できない場合には給電を停止する、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、第8の解決手段として、上記第7の解決手段において、受電装置は、非接触給電の必要がない場合には、周期的な音響信号の発信を停止する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、給電装置と受電装置との間で音響信号を用いて通信することによって、電波及び光波を用いることなく受電側と給電側との間で情報を伝達して非接触給電を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の本実施形態に係る非接触給電システムAの機能構成を示すブロック図である。
図2】本発明の本実施形態における受信器6及び発信器17の断面図(a)及び受信器6の平面図(b)である。
図3】本発明の本実施形態に係る非接触給電システムAの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る非接触給電システムAは、図1に示すように、地面に埋設された給電装置S及び該給電装置Sから給電を受ける移動車両M(受電装置)を備えている。このような非接触給電システムAは、非接触給電方式の1つである磁界共鳴方式に基づいて給電装置Sから移動車両Mに電力を非接触給電する。
【0017】
上記給電装置Sは、例えば交差点または踏切における停車位置、あるいは駐車場の駐車位置等に埋設され、これら駐停車位置に駐停車した移動車両Mに対して非接触給電を行う。このような給電装置Sは、図1に示すように、電源1、整流回路2、給電回路3、給電コイル4、給電コイルカバー5、受信器6、受信アンプ7及び給電用制御部8を備えている。
【0018】
電源1は、出力端が整流回路2の入力端に接続されており、移動車両Mへの給電に必要となる交流電力を整流回路2に供給する交流電源である。このような電源1は、例えば200Vまたは400V等の三相交流電力、あるいは100Vの単相交流電力を供給する系統電源や発電装置である。
整流回路2は、入力端が電源1に接続され、出力端が給電回路3に接続されている。このような整流回路2は、電源1から供給される交流電力をダイオード等の整流素子により整流して直流電力に変換し、該直流電力を給電回路3に出力する。なお、電源1として太陽電池等の直流電源を使用し、整流回路2を省略(つまり直流電源から給電回路3に直流電力を供給)してもよい。
【0019】
給電回路3は、入力端が整流回路2に接続され、出力端が給電コイル4の両端に接続されている。このような給電回路3は、給電コイル4と給電側共振回路を構成する共振用コンデンサを備え、給電用制御部8から入力される制御指令に基づいて上記整流回路2から供給された直流電力を電源1の交流電力よりも周波数が高い交流電力(高周波電力)に変換して給電コイル4に供給する一種のインバータである。
【0020】
給電コイル4は、所定のコイル径を有するヘリカルコイルであり、コイル軸を上下方向(垂直方向)とした姿勢、かつ、地表面直上ないし地表面直下の高さで上述した駐停車位置に設置されている。このような給電コイル4は、両端が給電回路3の出力端に接続されており、上記給電回路3から高周波電力が供給されることにより磁界を発生することによって移動車両Mに対して非接触で給電を行う。給電コイル4は磁界を妨げないプラスチック等の非磁性材料によってモールドされていてもよい。
【0021】
給電コイルカバー5は、給電コイル4が発生する磁界を遮らないエンジニアリングプラスチックやFRP(Fiber Reinforced Plastics)等の磁界透過性材料からなり、上記給電コイル4を内包する状態で地面に設置されている。この給電コイルカバー5は、給電コイル4の端面に対向する円形の平面カバー5aと、給電コイル4の側面を覆う側面カバー5bとからなり、密閉されている。
【0022】
受信器6は、図2(a)に示すように、受信用振動板6a、シール材6b及びピックアップコイル6cから構成され、移動車両Mから発信される音響信号を受信するマイクロホンである。このような受信器6は、図2(b)に示すように、給電コイルカバー5の平面カバー5aの外周に沿って平面カバー5aに等間隔で4つ配置されている。
【0023】
受信用振動板6aは、例えば、円形の樹脂性の板材や金属製のダイヤフラム等であり、シール材6bに密着すると共にシール材6bを介して給電コイルカバー5に設けられ、内面側にピックアップコイル6cが固定されている。このような受信用振動板6aは、移動車両Mから発信されて空気を介して伝播される音響信号によって振動する。ピックアップコイル6cは、この信号に対応した起電力を電磁誘導によって発生し、該起電力によって発生した電力を音響信号として受信アンプ7に出力する。
【0024】
平面カバー5aは、非接触給電を行うために給電コイル4が発生して受電コイル11に作用する磁界が通過するエリアよりも大きくし、ピックアップコイル6cが磁界の影響を受けたり、磁界に影響したりしないような位置に配置されるようにする。すなわち、非接触給電を行うために給電コイル4が発生して受電コイル11に作用する磁界は平面カバー5aの中央付近を通過し、ピックアップコイル6cが配置されている平面カバー5aの外周部では、磁界は十分小さくなっているように平面カバー5aの大きさを設定する。これにより、ピックアップコイル6cを構成する金属部品(コイルの電線など)の影響を受けて非接触給電の効率が低下したり、非接触給電を行うための磁界の影響を受けてピックアップコイル6cが誤信号を検出することが防止される。
平面カバー5aの外周部よりもさらに外側に位置する側面カバー5bは、給電コイル4が発生する磁界が通過しない位置にあるので、側面カバー5bは磁界透過性材料で構成する代わりに金属製であってもよい。
【0025】
シール材6bは、ゴム等の可撓性の部材を環状に成形したOリングであり、給電コイルカバー5と受信用振動板6aとの境界に設けられる、つまり給電コイルカバー5と受信用振動板6aとの間に介装されている。このようなシール材6bは、給電コイルカバー5及び受信用振動板6aと密着することによって、音響信号による受信用振動板6aの振動を妨げることなく給電コイルカバー5を密閉状態にする。
【0026】
受信アンプ7は、ピックアップコイル6cから入力された音響信号を増幅して給電用制御部8に出力する。
給電用制御部8は、マイクロプロセッサやメモリ等を備え、所定の給電用制御プログラムに基づいて機能するソフトウエア型制御装置であり、給電装置Sを全体的に統括制御する。詳細については後述するが、このような給電用制御部8は、例えば内部の不揮発性記憶装置に記憶された制御プログラムと、受信アンプ7からの音響信号に基づいて給電回路3を制御する。
【0027】
移動車両Mは、運転者によって運転されて道路上を走行する自動車であり、例えば電力を動力源として走行する電気自動車やハイブリッド自動車である。このような移動車両Mは、図1に示すように、受電コイル11、受電回路12、充電回路13、バッテリ14、受電コイルカバー15、発信アンプ16、発信器17及び受電用制御部18を備えている。なお、図1では省略しているが、移動車両Mは、走行モータ、エンジン、操作ハンドル及びブレーキ等の走行に必要な構成要素を当然に具備する。
【0028】
受電コイル11は、上記給電装置Sの給電コイル4と略同一のコイル径を有するヘリカルコイルであり、給電コイル4と対向可能なようにコイル軸が上下方向(垂直方向)となる姿勢で移動車両Mの底部に設けられている。このような受電コイル11は、両端が受電回路12の入力端に接続されており、給電コイル4が発生する磁界が作用すると電磁誘導によって起電力を発生し、当該起電力を受電回路12に出力する。
【0029】
受電回路12は、入力端が受電コイル11の両端に接続され、出力端が充電回路13の入力端に接続されている。このような受電回路12は、受電コイル11と受電側共振回路を構成する共振用コンデンサを備え、受電コイル11から供給された交流電力をダイオード等の整流素子により直流電力に変換して充電回路13に供給する一種の整流回路である。なお、受電回路12の共振用コンデンサの静電容量は、上記給電側共振回路の共振周波数と受電側共振回路の共振周波数とが同一周波数になるように設定されている。
【0030】
充電回路13は、入力端が受電回路12の出力端に接続され、出力端がバッテリ14の入力端に接続されており、受電回路12から供給される電力(直流電力)をバッテリ14に充電する。バッテリ14は、移動車両Mに搭載された再充電が可能な電池(例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池)であり、図示しない走行モータ等に駆動電力を供給する。
【0031】
受電コイルカバー15は、受電コイル11に作用する磁界を遮らないエンジニアリングプラスチックやFRP(Fiber Reinforced Plastics)等の磁界透過性材料からなり、上記受電コイル11を内包する状態で移動車両Mの底部に設置されている。この受電コイルカバー15は、受電コイル11の端面に対向する円形の平面カバー15aと、受電コイル11の側面を覆う側面カバー15bとからなり、密閉されている。
発信アンプ16は、受電用制御部18から入力される音響信号を増幅して発信器17に出力する。
【0032】
発信器17は、図2(a)に示すように、発信用振動板17a、シール材17b及びボイスコイル17cから構成され、給電装置Sに音響信号を発信するスピーカーである。このような発信器17は、受信器6と同様(図2(b)参照)に、受電コイルカバー15の平面カバー15aの外周に沿って平面カバー15aに等間隔で4つ配置されている。
【0033】
発信用振動板17aは、例えば、円形の紙、樹脂あるいは金属の板材等であり、シール材17bに密着すると共にシール材17bを介して受電コイルカバー15に設けられ、内面側にボイスコイル17cが固定されている。このような発信用振動板17aは、ボイスコイル17cによって振動して、音響信号を給電装置Sに発信する。
【0034】
平面カバー15aは、非接触給電を行うために給電コイル4が発生して受電コイル11に作用する磁界が通過するエリアよりも大きくし、ボイスコイル17cが磁界の影響を受けたり、磁界に影響したりしないような位置に配置されるようにする。すなわち、非接触給電を行うために給電コイル4が発生し受電コイル11に作用する磁界は平面カバー15aの中央付近を通過し、ボイスコイル17cが配置されている平面カバー15aの外周部では、磁界は十分小さくなっているように平面カバー15aの大きさを設定する。これにより、ボイスコイル17cを構成する金属部品(コイルの電線など)の影響を受けて非接触給電の効率が低下したり、非接触給電を行うための磁界の影響を受けてボイスコイル17cが誤信号を生じることが防止される。
平面カバー15aの外周部よりもさらに外側に位置する側面カバー15bは、受電コイル11に作用する磁界が通過しない位置にあるので、側面カバー15bは磁界透過性材料で構成する代わりに金属製であってもよい。
【0035】
シール材17bは、ゴム等の可撓性の部材を環状に成形したOリングであり、受電コイルカバー15と発信用振動板17aとの境界に設けられる、つまり受電コイルカバー15と発信用振動板17aとの間に介装されている。このようなシール材17bは、受電コイルカバー15及び発信用振動板17aと密着することによって、発信用振動板17aの振動による音響信号の発信を妨げることなく受電コイルカバー15を密閉状態にする。
ボイスコイル17cは、発信用振動板17aの内面側に固定され、発信アンプ16から入力される音響信号によって駆動されて発信用振動板17aを振動させる。
【0036】
受電用制御部18は、マイクロプロセッサやメモリ等を備え、所定の受電用制御プログラムに基づいて機能するソフトウエア型制御装置であり、移動車両Mの受電機能を統括制御する。詳細については後述するが、このような受電用制御部18は、例えば内部の不揮発性記憶装置に記憶された制御プログラム等に基づいて発信アンプ16に音響信号を出力する。
【0037】
次に、このように構成された本非接触給電システムAの動作について説明する。
最初に、非給電時における移動車両M及び給電装置Sの動作について説明する。移動車両Mの受電用制御部18は、非給電時(例えば運転手による移動車両Mの通常運転時)に、充電回路13を停止させる。一方、給電装置Sの給電用制御部8は、非給電時、つまり給電対象である移動車両Mが駐停車位置に停車していない時に、給電回路3を停止する。
【0038】
その後、運転手は、移動車両Mを運転して、給電装置Sの設置場所まで移動車両Mを移動させて停車させ、図示しない充電指示ボタンを操作することにより充電指示を受電用制御部18に入力して、移動車両Mに充電動作を開始させる。移動車両Mの受電用制御部18は、上記のように充電指示が入力されると、充電回路13に充電動作を開始させる。加えて、受電用制御部18は、発信アンプ16に周期的に音響信号を出力する。すなわち、受電用制御部18は、発信器17から給電装置Sに向けて周期的に音響信号を発信するように制御する。
周期的な音響信号の例としては、たとえば、ある音響レベル以上で0.6秒間出力し、その後0.4秒間音響レベルが0(無音)である、というパターンを1秒周期でくり返すことがあげられる。
【0039】
一方、給電装置Sの給電用制御部8は、移動車両Mからの音響信号が受信アンプ7から入力される、つまり、受信器6が移動車両Mから音響信号を受信すると、給電回路3に給電動作を開始させる。一方、移動車両Mの受電用制御部18は、バッテリ14の充電状態を監視しながら充電回路13を制御することにより、バッテリ14を適切に充電し、また発信アンプ16に周期的に音響信号を出力することによって、発信器17に周期的な音響信号を発信させる。
【0040】
一方、給電装置Sの給電用制御部8は、受信器6が移動車両Mから音響信号を受信する、つまり受信アンプ7から移動車両Mからの音響信号が入力されると、給電回路3に給電動作を開始させる。その後、移動車両Mの受電用制御部18は、バッテリ14の充電状態、受電電力(受電回路12からバッテリ14に出力される電力)、受電コイル11両端に生じる電圧や電流などの情報を音響信号を用いて給電装置Sに発信する。一方、給電装置Sの給電用制御部8は、受電側から音響信号を用いて受信した情報に基づいて給電電力、給電周波数、給電回路3のPWM(Pulse Width Modulation)制御のデューティあるいは駆動周波数を調整することよって、最大伝送効率を実現する。
【0041】
その後、移動車両Mの受電用制御部18は、バッテリ14が満充電状態となったことを検知すると、発信アンプ16への周期的な音響信号の出力を停止する、すなわち、発信器17から給電装置Sに向けての周期的な音響信号を停止する。同時に、図示しない表示器等によってバッテリ14が満充電状態になったことを通知する。
給電装置Sの給電用制御部8は、移動車両Mからの周期的な音響信号を受信できなくなるので、給電回路3の制御を停止する。これにより、非接触給電による、給電装置Sから移動車両Mのバッテリ14への充電動作が終了する。先にあげた周期信号の例では、無音区間が0.4秒なので、0.4秒以上音響信号が受信できない場合に給電回路3の制御を停止する。
そして、運転手は、図示しない表示器等により満充電状態となったことを認識すると、移動車両Mを運転して、給電装置Sの設置場所から移動する。
【0042】
他方、バッテリ14が満充電状態となっていないが、受電回路12や充電回路13やバッテリ14に何らかの異常が発生し、非接触給電を停止しなければならない場合がある。移動車両Mの受電用制御部18は、異常を検知すると、発信アンプ16への周期的な音響信号の出力を停止する、すなわち、発信器17から給電装置Sに向けての周期的な音響信号を停止する。
給電装置Sの給電用制御部8は、移動車両Mからの周期的な音響信号を受信できなくなるので、給電回路3の制御を停止する。これにより、非接触給電による、給電装置Sから移動車両Mのバッテリ14への充電動作を終了する。先にあげた周期信号の例では、無音区間が0.4秒なので、0.4秒以上音響信号が受信できない場合に給電回路3の制御を停止する。
【0043】
さらに、バッテリ14が満充電状態となっていないが、運転手が、移動車両Mを運転して、給電装置Sの設置場所から移動する場合がある。この場合、移動車両Mの受電用制御部18は、発信アンプ16への周期的な音響信号の出力を継続しており、発信器17から給電装置Sに向けて周期的な音響信号が発信されている。しかし、移動車両Mが移動することにより、発信器17と受信器6が正対しなくなるので、音響信号は受信器6に到達しなくなり、給電装置Sの給電用制御部8は、移動車両Mからの周期的な音響信号を受信できなくなるので、給電回路3の制御を停止する。これにより、非接触給電による、給電装置Sから移動車両Mのバッテリ14への充電動作を終了する。先にあげた周期信号の例では、無音区間が0.4秒なので、0.4秒以上音響信号が受信できない場合に給電回路3の制御を停止する。
【0044】
また、本実施形態においては、発信器17及び受信器6を4個ずつ設けて同一の音響信号を伝えることにより、以下の効果が得られる。
(a)音響を遮るような異物が4個の受信器6のいずれかの上に存在しても、異物で遮られていない受信器6を用いて音響信号の受信を継続できる。
(b)移動車両Mが左に90°ないし右に90°回った向き、ないし180°逆向きに停車した場合でも、発信器17と受信器6が正対するので、音響信号を伝えることが可能である。
【0045】
このような本実施形態によれば、給電装置Sと移動車両Mとの間で音響信号を用いて通信することによって、電波及び光波を用いることなく受電側と給電側との間で情報を伝達して非接触給電を適切に制御することができる。つまり、本実施形態は、光を遮るような汚れがあっても通信可能である。また、本実施形態は、非接触給電及び音響信号を用いた通信を、給電コイル4及び受電コイル11(ないしそれらのカバー)どうしが正対する場合にもっとも効率よく良好に行うことができるので、位置がずれると非接触給電・音響信号を用いた通信のいずれも伝わりにくくなる。このように、非接触給電が行えない、つまり、給電コイル4と受電コイル11とがずれた位置関係にあるときには音響信号を用いた通信も困難であるので、複数組の給電コイル4及び受電コイル11が存在する場合でも混信の可能性が低い。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態において、移動車両Mでは、平面の発信用振動板17aを用いているが、図3(a)に示すように、音響信号に指向性を持たせる形状(湾曲したへこみ形状)の発信用振動板17aを用いるようにしてもよい。同様に、給電装置Sにおいて、図3(a)に示すように、湾曲したへこみ形状の受信用振動板6aを用いるようにしてもよい。また、移動車両Mにおいて、図3(b)に示すように、平面カバー15a全体の領域に発信用振動板17aを配置して、音響信号を発信するようにしてもよい。同様に、給電装置Sにおいて、図3(b)に示すように、平面カバー5a全体の領域に受信用振動板6aを配置して、音響信号を受信するようにしてもよい。さらに、移動車両Mにおいて、図3(c)に示すように、図3(b)に示した発信用振動板17aを音響信号に指向性を持たせる形状(湾曲したへこみ形状)にしてもよい。同様に、給電装置Sにおいて、図3(c)に示すように、図3(b)に示した受信用振動板6aを湾曲したへこみ形状にしてもよい。
また、受信用振動板16a及び発信用振動板17aについては、給電コイルカバー5や受電コイルカバー15と同じ素材(例えばエンジニアリングプラスチック)を用いてもよい。また、振動板ではなく、給電コイルカバー5や受電コイルカバー15をそのまま用いて音響信号を発信あるいは受信するようにしてもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、音響信号を発信あるいは受信するために、ピックアップコイル6cやボイスコイル17cを用いたが、ピックアップコイル6cやボイスコイル17cの代わりに圧電素子を用いるようにしてもよい。
【0048】
(3)上記実施形態において、移動車両Mは、非接触給電の必要がない場合には、周期的な音響信号の発信を停止するようにしてもよい。この結果、給電装置Sは、周期的な音響信号を受信できないので、移動車両Mへの給電を停止する。
【0049】
(4)上記実施形態において、音響信号の伝送効率を向上させるために、空気を伝送媒体として用いる場合には30kHzの振動帯域を使用してもよい。
【0050】
(5)上記実施形態において、受信器6及び発信器17はそれぞれ4つ配置したが、その数は1つであってもよいし、4つ以外の複数であってもよい。
【0051】
(6)上記実施形態において、受信器6や発信器17を用いて音響信号の発信あるいは受信を行ったが、受信器6や発信器17の代わりに、通常のスピーカーやマイクロホンを使用して音響信号の発信あるいは受信を行ってもよい。
【0052】
(7)上記実施形態において、音響信号を用いて発信する情報として、バッテリ14の充電状態、受電電力(受電回路12からバッテリ14に出力される電力)、受電コイル11両端に生じる電圧や電流としたが、発信する情報はこれらに限定されない。その他の情報、たとえば移動車両Mの積算走行距離やGPS(Global Positioning System)を用いて測定した位置を発信してもよい。
【0053】
(8)上記実施形態において、移動車両Mが発信側であり、給電装置Sが受信側であるが、移動車両Mに受信側の機能を、給電装置Sに発信側の機能を追加してもよい。
【0054】
(9)上記実施形態において、非接触給電された電力はバッテリ14に充電されたが、バッテリ14の充電以外の用途(照明やモータ駆動等)に使用してもよい。
【0055】
(10)上記実施形態では、非接触給電する方法として磁界共鳴方式を採用したが、電磁誘導方式を採用するようにしてもよい。
(11)給電コイル4や受電コイル11はヘリカルコイルに限定されない。給電コイル4と受電コイル11の間で非接触給電が可能であればソレノイド状など任意の形式や形状のコイルでよく、また両コイルの形式、形状、大きさが異なってもよい。
【0056】
(12)給電コイルカバーの形状は円形に限らず、給電コイルを内包できれば形状を問わない。同様に、受電コイルカバーの形状は円形に限らず、受電コイルを内包できれば形状を問わない。給電コイルカバーと受電コイルカバーの形状・大きさが異なっていてもよい。
(13)移動車両Mは、運転者を要しない無人搬送車や遠隔操縦車であってもよい。また、自動車に限らず各種の陸上移動体や、静止が可能な空中移動体であってもよい。
【0057】
(14)上記実施形態では、地面に埋設された給電装置Sから移動車両Mに対し、空気を伝送媒体として非接触給電および音響信号の伝送を行ったが、給電装置Sを水中に設け、水上ないし水中の移動体に対し、水を伝送媒体として非接触給電および音響信号の伝送を行ってもよい。水上ないし水中の移動体内部の構成は、図1に示す移動車両M内部の構成と同じである。水の浸入を防ぐため、給電コイルカバー5、受信用振動版6a、シール材6b、受電コイルカバー15、発信用振動版17a、シール材17b、は水に犯されない材料で構成し、さらに、装置を使用する深度での水圧に耐えうる防水構造および強度を有するようにする。水を伝送媒体として用いる場合には150kHzの振動帯域を使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
A…非接触給電システム、S…給電装置、M…移動車両、1…電源、2…整流回路、3…給電回路、4…給電コイル、5…給電コイルカバー、6…受信器、7…受信アンプ、8…給電用制御部、5a…平面カバー、5b…側面カバー、6a…受信用振動板、6b…シール材、6c…ピックアップコイル、11…受電コイル、12…受電回路、13…充電回路、14…バッテリ、15…受電コイルカバー、16…発信アンプ、17…発信器、18…受電用制御部、15a…平面カバー、15b…側面カバー、17a…発信用振動板、17b…シール材、17c…ボイスコイル

図1
図2
図3