特許第6115093号(P6115093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115093
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   F22B35/00 E
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-251625(P2012-251625)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-98529(P2014-98529A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】山田 和也
(72)【発明者】
【氏名】久保 嘉秀
(72)【発明者】
【氏名】三浦 浩二
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 康弘
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−48462(JP,A)
【文献】 特開2009−229030(JP,A)
【文献】 特開昭60−122803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷率を連続的に変更して燃焼可能な複数のボイラを備えるボイラ群と、要求負荷に応じて前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、
前記複数のボイラには、
ボイラ効率が最も高くなる負荷率であるエコ運転ポイントと、
ボイラ効率が第1閾値よりも高くなる負荷率の範囲であって前記エコ運転ポイントを含む負荷率の範囲であるエコ運転ゾーンと、
ボイラ効率が前記第1閾値よりも低くなる負荷率の範囲であって前記エコ運転ゾーンよりも負荷率の高い範囲に位置する上側通常運転ゾーンと、
ボイラ効率が前記第1閾値よりも低くなる負荷率の範囲であって前記エコ運転ゾーンよりも負荷率の低い範囲に位置する下側通常運転ゾーンと、が設定され、
前記制御部は、
燃焼状態にあるボイラのうちの少なくとも一台を、要求負荷の変動に応じて負荷率を変更して前記下側通常運転ゾーンの下限と前記上側通常運転ゾーンの上限との間の範囲で燃焼させる負荷追従ボイラに設定し、該負荷追従ボイラ以外のボイラを、前記エコ運転ゾーンで燃焼させるエコ運転ボイラに設定するボイラシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記エコ運転ボイラを前記エコ運転ポイントで燃焼させる請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記上側通常運転ゾーンは、
ボイラ効率が前記第1閾値と該第1閾値よりも低い第2閾値との間となる負荷率の範囲である第1上側通常運転ゾーンと、
ボイラ効率が前記第2閾値よりも低くなる負荷率の範囲である第2上側通常運転ゾーンと、を有し、
前記下側通常運転ゾーンは、
ボイラ効率が前記第1閾値と該第1閾値よりも低い第2閾値との間となる負荷率の範囲である第1下側通常運転ゾーンと、
ボイラ効率が前記第2閾値よりも低くなる負荷率の範囲である第2下側通常運転ゾーンと、を備え、
前記制御部は、
前記負荷追従ボイラの負荷率が前記第2上側通常運転ゾーンに位置する場合に、燃焼させるボイラの台数を増加させ、
前記負荷追従ボイラの負荷率が前記第2下側通常運転ゾーンに位置する場合に、燃焼させるボイラの台数を減少させる請求項1又は2に記載のボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラシステムに関する。より詳しくは、燃焼状態の制御を比例制御で行うボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のボイラを燃焼させて蒸気を発生させるボイラシステムとして、ボイラの燃焼量を連続的に増減させて蒸気の発生量を制御する、いわゆる比例制御方式のボイラシステムが提案されている。
例えば、特許文献1には、ボイラを、台数増加負荷ゾーン、最適運転負荷ゾーン及び台数減少負荷ゾーンの3つの負荷ゾーンに区分し、ボイラが台数増加負荷ゾーンで燃焼している場合に燃焼させるボイラの台数を増加させ、ボイラが台数減少負荷ゾーンで燃焼している場合に燃焼させるボイラの台数を減少させることで、ボイラ効率(ボイラによる熱の利用効率)を向上させる比例制御ボイラの制御方法が提案されている。そして、この特許文献1で提案された比例制御ボイラの制御方法では、燃焼させるボイラの台数の増減を行った後には、燃焼しているすべてのボイラを均等な負荷率で運転させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−132405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案された手法では、燃焼しているすべてのボイラを均等な負荷率(燃焼状態)で運転させるため、要求される負荷が変動するたびに、すべてのボイラの燃焼状態を変更させることとなる。そのため、この手法では、複数台のボイラの燃焼状態が頻繁に変更されることとなり、ボイラシステムにより出力される蒸気量の安定性が低下してしまう場合がある。
【0005】
従って、本発明は、ボイラ効率を高く保ちつつ、出力される蒸気量の安定性を高められるボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、負荷率を連続的に変更して燃焼可能な複数のボイラを備えるボイラ群と、要求負荷に応じて前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、前記複数のボイラには、ボイラ効率が最も高くなる負荷率であるエコ運転ポイントと、ボイラ効率が第1閾値よりも高くなる負荷率の範囲であって前記エコ運転ポイントを含む負荷率の範囲であるエコ運転ゾーンと、ボイラ効率が前記第1閾値よりも低くなる負荷率の範囲であって前記エコ運転ゾーンよりも負荷率の高い範囲に位置する上側通常運転ゾーンと、ボイラ効率が前記第1閾値よりも低くなる負荷率の範囲であって前記エコ運転ゾーンよりも負荷率の低い範囲に位置する下側通常運転ゾーンと、が設定され、前記制御部は、燃焼状態にあるボイラのうちの少なくとも一台を、要求負荷の変動に応じて負荷率を変更して燃焼させる負荷追従ボイラに設定し、該負荷追従ボイラ以外のボイラを、前記エコ運転ゾーンで燃焼させるエコ運転ボイラに設定するボイラシステムに関する。
【0007】
また、前記制御部は、前記エコ運転ボイラを前記エコ運転ポイントで燃焼させることが好ましい。
【0008】
また、前記上側通常運転ゾーンは、ボイラ効率が前記第1閾値と該第1閾値よりも低い第2閾値との間となる負荷率の範囲である第1上側通常運転ゾーンと、ボイラ効率が前記第2閾値よりも低くなる負荷率の範囲である第2上側通常運転ゾーンと、を有し、前記下側通常運転ゾーンは、ボイラ効率が前記第1閾値と該第1閾値よりも低い第2閾値との間となる負荷率の範囲である第1下側通常運転ゾーンと、ボイラ効率が前記第2閾値よりも低くなる負荷率の範囲である第2下側通常運転ゾーンと、を備え、前記制御部は、前記負荷追従ボイラの負荷率が前記第2上側通常運転ゾーンに位置する場合に、燃焼させるボイラの台数を増加させ、前記負荷追従ボイラの負荷率が前記第2下側通常運転ゾーンに位置する場合に、燃焼させるボイラの台数を減少させることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のボイラシステムによれば、ボイラ効率を高く保ちつつ、出力される蒸気量の安定性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るボイラシステムの概略を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るボイラ群の概略を示す図である。
図3】ボイラシステムの動作の概略を示す図である。
図4】ボイラシステムの動作の概略を示す図であり、燃焼させるボイラの台数を増加させる状態を示す図である。
図5】ボイラシステムの動作の概略を示す図であり、燃焼させるボイラの台数を増加させる状態を示す図である。
図6】ボイラシステムの動作の概略を示す図であり、燃焼させるボイラの台数を減少させる状態を示す図である。
図7】ボイラシステムの動作の概略を示す図であり、燃焼させるボイラの台数を減少させる状態を示す図である。
図8】ボイラシステムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のボイラシステムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明のボイラシステム1の全体構成につき、図1を参照しながら説明する。
ボイラシステム1は、複数(5台)のボイラ20を含むボイラ群2と、これら複数のボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダ6と、この蒸気ヘッダ6の内部の圧力を測定する蒸気圧センサ7と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部4を有する台数制御装置3と、を備える。
【0012】
ボイラ群2は、負荷機器としての蒸気使用設備18に供給する蒸気を生成する。
蒸気ヘッダ6は、蒸気管11を介してボイラ群2を構成する複数のボイラ20に接続されている。この蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。
蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留することにより、複数のボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給する。
【0013】
蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(ボイラ群2で発生した蒸気の圧力)を測定し、測定した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0014】
台数制御装置3は、信号線16を介して、複数のボイラ20と電気的に接続されている。この台数制御装置3は、蒸気圧センサ7により測定される蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧に基づいて、各ボイラ20の燃焼状態を制御する。台数制御装置3の詳細については、後述する。
【0015】
以上のボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ6を介して、蒸気使用設備18に供給可能とされている。
ボイラシステム1において要求される負荷(要求負荷)は、蒸気使用設備18における蒸気消費量である。台数制御装置3は、この蒸気消費量の変動に対応して生じる蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧の変動を、蒸気圧センサ7が測定する蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(物理量)に基づいて算出し、ボイラ群2を構成する各ボイラ20の燃焼量を制御する。
【0016】
具体的には、蒸気使用設備18の需要の増大により要求負荷(蒸気消費量)が増加し、蒸気ヘッダ6に供給される蒸気量が不足すれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が減少することになる。一方、蒸気使用設備18の需要の低下により要求負荷(蒸気消費量)が減少し、蒸気ヘッダ6に供給される蒸気量が過剰になれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が増加することになる。従って、ボイラシステム1は、蒸気圧センサ7により測定された蒸気圧の変動に基づいて、要求負荷の変動をモニターすることができる。そして、ボイラシステム1は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧に基づいて、蒸気使用設備18の消費蒸気量(要求負荷)に応じて必要とされる蒸気量である必要蒸気量を算出する。
【0017】
ここで、本実施形態のボイラシステム1を構成する複数のボイラ20について説明する。図2は、本実施形態に係るボイラ群2の概略を示す図である。
本実施形態のボイラ20は、負荷率を連続的に変更して燃焼可能な比例制御ボイラからなる。
比例制御ボイラとは、少なくとも、最小燃焼状態S1(例えば、最大燃焼量の20%の燃焼量における燃焼状態)から最大燃焼状態S2の範囲で、燃焼量が連続的に制御可能とされているボイラである。比例制御ボイラは、例えば、燃料をバーナに供給するバルブや、燃焼用空気を供給するバルブの開度(燃焼比)を制御することにより、燃焼量を調整するようになっている。
【0018】
また、燃焼量を連続的に制御するとは、後述のローカル制御部22における演算や信号がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、ボイラ20の出力(燃焼量)が1%刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に出力を制御可能な場合を含む。
【0019】
本実施形態では、複数のボイラ20には、最小燃焼状態S1における負荷率である最小負荷率Rminが設定されている。そして、ボイラ20の燃焼停止状態S0と最小燃焼状態S1との間の燃焼状態の変更は、ボイラ20(バーナ)の燃焼をオン/オフすることで制御される。そして、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、燃焼量が連続的に制御可能となっている。
【0020】
また、本実施形態では、複数のボイラ20には、ボイラ効率が最も高くなる負荷率であるエコ運転ポイントEPが設定されると共に、所定の負荷率の範囲により区分された複数の運転ゾーンが設定される。
より具体的には、本実施形態では、複数の運転ゾーンとして、エコ運転ゾーンZ1と、上側通常運転ゾーンZ2と、下側通常運転ゾーンZ3と、が設定されている。
エコ運転ゾーンZ1は、ボイラ効率(ボイラ20の熱効率)が第1閾値(例えば、98%)よりも高くなる負荷率の範囲であり、エコ運転ポイントEPを含む。このエコ運転ゾーンZ1は、ボイラ20を燃焼させる上で、好ましい負荷率の範囲である。
【0021】
上側通常運転ゾーンZ2は、ボイラ効率が第1閾値よりも低くなる負荷率の範囲であってエコ運転ゾーンZ1よりも負荷率の高い範囲に位置する。この上側運転ゾーンZ2は、図2に示すように、ボイラ効率が第1閾値と、この第1閾値よりも低い第2閾値(例えば、97%)との間となる負荷率の範囲である第1上側通常運転ゾーンZ21と、ボイラ効率が第2閾値よりも低くなる負荷率の範囲である第2上側通常運転ゾーンZ22と、を備える。
【0022】
下側通常運転ゾーンZ3は、ボイラ効率が第1閾値よりも低くなる負荷率の範囲であってエコ運転ゾーンZ1よりも負荷率の低い範囲に位置する。この下側通常運転ゾーンZ3は、図2に示すように、ボイラ効率が第1閾値と第2閾値との間となる負荷率の範囲である第1下側通常運転ゾーンZ31と、ボイラ効率が第2閾値よりも低くなる負荷率の範囲である第2下側通常運転ゾーンZ32と、を備える。
【0023】
また、複数のボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示を行うボイラ20を選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。図2に示すように、ボイラ20の1号機〜5号機のそれぞれに「1」〜「5」の優先順位が割り当てられている場合、1号機の優先順位が最も高く、5号機の優先順位が最も低い。この優先順位は、通常の場合、後述の制御部4の制御により、所定の時間間隔(例えば、24時間間隔)で変更される。
【0024】
以上説明したボイラ20は、図1に示すように、燃焼が行われるボイラ本体21と、ボイラ20の燃焼状態を制御するローカル制御部22と、を備える。
ローカル制御部22は、要求負荷に応じてボイラ20の燃焼状態を変更させる。具体的には、ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される台数制御信号に基づいて、ボイラ20の燃焼状態を制御する。
また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、ボイラ20の実際の燃焼状態、及びその他のデータが挙げられる。
【0025】
次に、台数制御装置3の詳細について説明する。
台数制御装置3は、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の必要燃焼量、及び必要燃焼量に対応する各ボイラ20の燃焼状態を算出し、各ボイラ20(ローカル制御部22)に台数制御信号を送信する。この台数制御装置3は、図1に示すように、記憶部5と、制御部4と、を備える。
【0026】
記憶部5は、台数制御装置3(制御部4)の制御により各ボイラ20に対して行われた指示の内容や、各ボイラ20から受信した燃焼状態等の情報、複数のボイラ20の運転ゾーンの設定に関する情報、複数のボイラ20の燃焼パターンの設定条件等の情報、複数のボイラ20の優先順位の設定の情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報等を記憶する。
【0027】
制御部4は、信号線16を介して各ボイラ20に各種の指示を行ったり、各ボイラ20から各種のデータを受信したりして、5台のボイラ20の燃焼状態や優先順位を制御する。各ボイラ20は、台数制御装置3から燃焼状態の変更指示の信号を受けると、その指示に従って当該ボイラ20を制御する。
【0028】
ここで、本実施形態のボイラシステム1による複数のボイラ20の燃焼状態の制御の詳細について説明する。図3図7は、それぞれ、本実施形態のボイラシステム1の動作の概略を示す図である。
本実施形態では、制御部4は、燃焼状態にあるボイラ20のうちの少なくとも1台を負荷追従ボイラ20Aに設定し、その他のボイラ20をエコ運転ボイラ20Bに設定する。
負荷追従ボイラ20Aとは、要求負荷の変動に応じて負荷率を変更して燃焼させるボイラを示す。また、エコ運転ボイラ20Bとは、要求負荷の変動の有無にかかわらず、エコ運転ゾーンZ1の範囲の負荷率で燃焼させるボイラを示す。
【0029】
尚、ボイラシステム1における負荷変動ボイラ20Aの台数は、予め規定値(例えば、1台)に設定してもよく、燃焼させるボイラ20の台数に応じて設定してもよい。本実施形態では、燃焼させるボイラ20のうち、優先順位の最も低いボイラ20を負荷追従ボイラ20Aに設定した場合について説明する。
【0030】
例えば、図3に示すように、3台のボイラを燃焼させる場合、制御部4は、優先順位の最も低い3号機ボイラを負荷追従ボイラ20Aに設定し、その他のボイラである1号機ボイラ及び2号機ボイラをエコ運転ボイラ20Bに設定する。そして、制御部4は、エコ運転ボイラ20Bである1号機ボイラ及び2号機ボイラを、エコ運転ゾーンZ1で燃焼させ、負荷追従ボイラ20Aである3号機ボイラの負荷率を要求負荷に応じて変更し、ボイラ群2の燃焼状態を調整する。
この場合、制御部4は、図3に示すように、エコ運転ボイラ20Bを、エコ運転ポイントEPで燃焼させることが好ましい。
【0031】
また、制御部4は、負荷追従ボイラ20Aの負荷率を、第1下側通常運転ゾーンZ31と第1上側通常運転ゾーンZ21との間の範囲で変更させてもよい。
この場合、制御部4は、負荷追従ボイラ20Aの負荷率が、第2上側通常運転ゾーンZ22に位置する場合に、燃焼させるボイラ20の台数を増加させる。また、制御部4は、負荷追従ボイラ20Aの負荷率が、第2下側通常運転ゾーンZ32に位置する場合に、燃焼させるボイラ20の台数を減少させる。
【0032】
具体的には、制御部4は、図4に示すように、負荷追従ボイラ20A(3号機ボイラ)の負荷率が第1上側通常運転ゾーンZ21の上限に到達する、つまり、第2上側通常運転ゾーンZ22の下限に到達すると、4号機ボイラの燃焼を開始させる。この場合、制御部4は、図5に示すように、3号機ボイラの設定をエコ運転ボイラ20Bに変更してエコ運転ポイントEPで燃焼させ、新たに燃焼を開始した4号機ボイラを負荷追従ボイラ20Bに設定する。
【0033】
また、制御部4は、図6に示すように、負荷追従ボイラ20A(3号機ボイラ)の負荷率が第1下側通常運転ゾーンZ32の下限に到達する、つまり、第2下側通常運転ゾーンZ31の上限に到達すると、3号機ボイラの燃焼を停止させる。この場合、制御部4は、図7に示すように、2号機ボイラの設定を負荷追従運転ボイラ20Aに変更してこの2号機ボイラの負荷率を上昇させる。
【0034】
また、制御部4は、要求負荷が急激に変動した場合、負荷追従ボイラ20Aの負荷率を変動させると共に、エコ運転ボイラ20Bの負荷率を、エコ運転ゾーンZ1の範囲内で変動させてもよい。具体的には、単位時間あたりの要求負荷の変動量が、負荷追従ボイラ20Aの単位時間あたりの負荷率の最大変動量を上回った場合、制御部4は、負荷追従ボイラ20Aの負荷率を最大変動量分変動させると共に、エコ運転ボイラ20Bの負荷率を、要求負荷の変動量と負荷追従ボイラ20Aの負荷率の最大変動量との差分変動させる。これにより、要求負荷が急激に変動した場合におけるボイラシステム1の負荷変動への追従性を向上させられる。
尚、この場合、制御部4は、エコ運転ボイラ20Bが複数台あれば、すべてのエコ運転ボイラ20Bが均等な負荷率となるように、負荷率を変動させる。
【0035】
次に、本実施形態のボイラシステム1の動作を実現するための処理の流れについて、図8を参照して説明する。図8は、ボイラシステム1の処理の流れを示すフローチャートである。
【0036】
初めに、処理の前準備として各ボイラ20に対して負荷追従ボイラ20Aの台数の設定(ステップST1)及び運転ゾーンの設定(ステップST2)を行い、記憶部5の所定の領域に記憶する。
【0037】
次いで、ステップST3において、制御部4は、負荷追従ボイラ20Aの負荷率が第2上側通常運転ゾーンZ22に位置するかを判定する。負荷追従ボイラ20Aの負荷率が第2上側通常運転ゾーンZ22に位置すると判定された場合、処理は、ステップST4に進む。負荷追従ボイラ20Aの負荷率が第2上側通常運転ゾーンZ22に位置しないと判定された場合、処理は、ステップST6に進む。
【0038】
ステップST4において、制御部4は、燃焼させるボイラを1台増加させ、処理は、ステップST5に進む。
ステップST5において、制御部4は、これまで負荷追従ボイラ20Aであったボイラをエコ運転ボイラ20Bに設定してこのボイラをエコ運転ポイントEPで燃焼させると共に、新たに燃焼を開始したボイラを負荷追従ボイラ20Aに設定し、処理は終了する。
【0039】
ステップST3において、制御部4により負荷追従ボイラ20Aの負荷率が第2上側通常運転ゾーンZ22に位置しないと判定された場合、ステップST6において、制御部4は、負荷追従ボイラ20Aの負荷率が第2下側通常運転ゾーンZ32に位置するかを判定する。負荷追従ボイラ20Aの負荷率が第2下側通常運転ゾーンZ32に位置すると判定された場合、処理は、ステップST7に進む。負荷追従ボイラ20Aの負荷率が第2下側通常運転ゾーンZ32に位置しないと判定された場合、処理は、ステップST3に戻る。
【0040】
ステップST7において、制御部4は、燃焼させるボイラを一台減少させ、処理は、ステップST8に進む。
ステップST8において、制御部4は、負荷追従ボイラ20Aの燃焼を停止すると共に、燃焼しているボイラのうち最も優先順位の低いボイラの設定をエコ運転ボイラ20Bから負荷追従ボイラ20Aに変更して、この負荷追従ボイラ20Aの負荷率を増加させ、処理は終了する。
【0041】
以上説明した本実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0042】
(1)複数のボイラ20を、エコ運転ゾーンZ1、上側通常運転ゾーンZ2、及び下側通常運転ゾーンZ3に区分し、制御部4に、燃焼状態にあるボイラ20のうちの少なくとも1台を負荷追従ボイラ20Aに設定させ、この負荷追従ボイラ20A以外のボイラを、エコ運転ゾーンZ1で燃焼させるエコ運転ボイラ20Bに設定させた。これにより、要求負荷が変動した場合に、エコ運転ボイラ20Bをエコ運転ゾーンZ1で燃焼させつつ、負荷追従ボイラ20Aの負荷率を変動させることで、ボイラ群2による出力蒸気量を要求負荷の変動に追従させられる。よって、要求負荷の変動があった場合に複数台のボイラ20の燃焼状態が頻繁に変更されないので、出力される蒸気量の安定性を高めつつボイラ効率を高く保てる。
【0043】
(2)制御部4に、エコ運転ボイラ20Bをエコ運転ポイントEPで燃焼させた。これにより、エコ運転ボイラ20Bを最もボイラ効率のよい状態で燃焼させられるので、ボイラシステム1のボイラ効率をより向上させられる。
【0044】
(3)上側通常運転ゾーンZ2を、第1上側通常運転ゾーンZ21と、第2上側通常運転ゾーンZ22と、を含んで構成し、下側通常運転ゾーンZ3を、第1下側通常運転ゾーンZ31と、第2下側通常運転ゾーンZ32と、を含んで構成した。そして、制御部4に、負荷追従ボイラ20Aの負荷率が第2上側通常運転ゾーンZ22に位置する場合に、燃焼させるボイラ20の台数を増加させ、負荷追従ボイラ20Aの負荷率が第2下側通常運転ゾーンZ32に位置する場合に燃焼させるボイラ20の台数を減少させた。これにより、負荷追従ボイラ20Aがボイラ効率の低い状態で燃焼する場合に、燃焼させるボイラの台数を増加又は減少させることで、よりボイラ効率の高い状態で複数のボイラ20を燃焼させられる。よって、ボイラシステム1のボイラ効率を更に向上させられる。
【0045】
以上、本発明のボイラシステムの好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、ボイラ20を、5つの運転ゾーンに区分したが、これに限らない。即ち、ボイラは、少なくともエコ運転ゾーン、上側通常運転ゾーン及び下側通常運転ゾーンの3つの運転ゾーンに区分されていればよく、ボイラを6つ以上の運転ゾーンに区分してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、本発明を、5台のボイラ20からなるボイラ群2を備えるボイラシステム1に適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、6台以上のボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよく、また、2台のボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、ボイラ20を、燃焼停止状態S0と最小燃焼状態S1との間の燃焼状態の変更をボイラ20の燃焼をオン/オフすることで制御し、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては燃焼量を連続的に制御可能な比例制御ボイラ20により構成したが、これに限らない。即ち、ボイラを、燃焼停止状態から最大燃焼状態の範囲すべてにおいて、燃焼量を連続的に制御可能な比例制御ボイラにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ボイラシステム
2 ボイラ群
4 制御部
20 ボイラ
min 最小負荷率
Z1 エコ運転ゾーン
Z2 上側通常運転ゾーン
Z3 下側通常運転ゾーン
Z21 第1上側通常運転ゾーン
Z22 第2上側通常運転ゾーン
Z31 第1下側通常運転ゾーン
Z32 第2下側通常運転ゾーン
EP エコ運転ポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8