(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車室内において暖房をおこなう場合は、前記第1のブロアファンを稼働させるとともに前記流路切替手段によって前記空気の流路を前記第1の流路に切り替え、前記車室内において冷房をおこなう場合は、前記第1のブロアファンを稼働させるとともに前記流路切替手段によって前記空気の流路を前記第2の流路に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【背景技術】
【0002】
デシカント空調システムは、除湿剤であるデシカント材(デシカント部材)を用いて空調をおこなうシステムである。
図7は、従来技術にかかるデシカント空調システムの構成を示す説明図である。従来技術にかかるデシカント空調システム800には、屋外から導入された空気が通る空気導入流路810aと、空調対象室内から屋外へと空気が排出される空気排出通路810bとが設けられている。
【0003】
空気導入流路810aと再生用流路810bとには、屋外に近い方から順にデシカントローター801および顕熱交換ローター802が設けられている。デシカントローター801と顕熱交換ローター802とは常時回転し、空気導入流路810aを通過する空気および再生用流路810bを通過する空気と交互に接するようになっている。
【0004】
ブロアファン803aの作用によって屋外から導入された空気は、空気導入流路810aにおいてデシカントローター801と接して、空気中の湿度が除去される。除湿された空気は、顕熱交換ローター802と接して所望の温度に調整され、快適空気として空調対象室内に供給される。
【0005】
一方、空調対象室内からの還気は、ブロアファン803bの作用によって再生用流路810bに導入される。空調対象室内からの還気は、再生用流路810bにおいて顕熱交換ローター802と接して顕熱交換ローター802と熱交換をおこなう。熱交換された空気は、空気加熱器803によって加熱される。空気加熱器803は、各種の排熱や太陽熱などを熱源として利用することができる。空気加熱器803によって加熱された空気は、デシカントローター801と接してデシカントローター801内の水分を除去し(デシカントローターの再生をおこない)、屋外へと排出される。
【0006】
たとえば、下記特許文献1および2は、従来技術にかかるデシカント空調システムを車両用空調装置に適用したものであり、車室内への空気導入用となる空気導入径路と車外への空気排出用となる再生用径路とに跨って、吸湿ローターが回転可能に配設される。吸湿ローターは、表面に吸湿材が塗布されるとともに空気が通過可能とされている。第1ファンによって空気導入径路内に導入された空気が、吸湿ローターを通過するときに除湿され、この後冷却用熱交換器、暖房用熱交換器を通って適温とされた後、車室内に導入される。第2ファンによって再生用径路内に導入された空気が、加熱用熱交換器を通って加温され、この後吸湿ローターを通過するときに吸湿している水分を奪った後、車外に排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来技術にかかるデシカント空調システムは、デシカントローターの再生をおこなう必要があることから、空気導入流路および再生用流路の2つの流路が必要となる。また、この2つの流路は隣接して設けられる必要がある。このため、デシカント空調システムを車両用空調装置に適用しようとすると、車外から車内へと空気を導入する空気導入流路と、車内から車外へと空気を排出する空気排出流路とを隣接して設ける必要がある。
【0009】
しかしながら、このような構造を実現するためには、車両のHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)構造が複雑になるとともに、HVAC構造が大型となってしまうという問題点がある。車両のスペースは限られており、このような大型なHVAC構造の導入は現実的ではない。また、HVAC構造が複雑になると車両の製造コストが増大するため、やはりデシカント空調システムの車両用空調装置への適用が現実的ではなくなってしまう。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、再生流路を必要としないデシカント空調システムを適用した車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる車両用空調装置は、車外の
空気取り入れ口から空気を導入する空気導入流路と空調後の前記空気を車室内に排出する空気排出流路との間に設けられたハウジング内において、前記空気導入流路と前記空気排出流路とを連通する第1の流路と、前記空気導入流路と前記空気排出流路とを連通する前記第1の流路とは別の第2の流路と、を前記ハウジング内に選択的に形成する流路切替手段と、前記第1の流路に設けられた加温手段と、前記第1の流路および前記第2の流路の上流端に設けられたエバポレータと、前記第1の流路および前記第2の流路において、前記空気導入流路から前記空気排出流路に向かう空気の流れを作る第1のブロアファンと、を備える車両用空調装置であって、
前記ハウジング内における前記エバポレータの前記空気導入流路側に除湿部材が設けられ、前記第1の流路において、前記空気排出流路から前記空気導入流路に向かう空気の流れを作る第2のブロアファンが設けられ
、前記除湿部材の再生をおこなう場合は、前記第2のブロアファンを稼働させるとともに前記流路切替手段によって前記空気の流路を前記第1の流路に切り替え、前記空気排出流路と前記車室内を連通させ、前記空気排出流路から導入した前記車室内の空気は前記空気導入流路を通して前記空気取り入れ口から排出する、ことを特徴とする。
また、請求項2の発明にかかる車両用空調装置は、前記車室内において暖房をおこなう場合は、前記第1のブロアファンを稼働させるとともに前記流路切替手段によって前記空気の流路を前記第1の流路に切り替え、前記車室内において冷房をおこなう場合は、前記第1のブロアファンを稼働させるとともに前記流路切替手段によって前記空気の流路を前記第2の流路に切り替え
ることを特徴とする。
また、請求項3の発明にかかる車両用空調装置は、前記除湿部材の再生は、前記車両用空調装置が搭載された車両の停車中に行なわれることを特徴とする。
また、請求項4の発明にかかる車両用空調装置は、前記車両用空調装置が搭載された車両は、動力の少なくとも一部に電力を用いて走行する電動車であり、前記除湿部材の再生は、前記電動車の充電中に行なわれることを特徴とする。
また、請求項5の発明にかかる車両用空調装置は、前記流路切替手段は、前記ハウジング内に移動可能に配置されたエアミックスダンパーを含んで構成され、前記第1の流路と前記第2の流路とは、前記エアミックスダンパーの移動位置が切り替えられることにより前記ハウジング内に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハウジング内に第1の流路および第2の流路を選択的に形成する流路切替手段と、加温手段と、エバポレータと、第1のブロアファンと、を備える車両用空調装置において、エバポレータの上流側にデシカント部材を、第1の流路に第2のブロアファンを設けた。これにより、除湿部材によって除湿された空気を空調に用いることができ、車両用空調装置の空調効率を向上させることができる。
本発明によれば、暖房時、冷房時、除湿部材の再生時のいずれの状態にあるかによって、流路切替手段により形成される流路と、第1のブロアファンおよび第2のブロアファンの稼働状態を切り替える。これにより、除湿部材を用いた空調システムにおいて、再生用の流路を設ける必要がなくなり、設置スペースに限りがある車両用空調装置に対しても除湿部材を用いた空調システム(デシカント空調システム)が適用可能となる。
本発明によれば、車両用空調装置が搭載された車両の停車中に除湿部材の再生(再生運転)をおこなうので、ユーザが乗車していない可能性が高いときに再生運転をおこなうことができ、車両の走行中にデシカント部材の除湿能力が低下して空調能力が低下する可能性を低減することができる。
本発明によれば、車両用空調装置が搭載された車両が電動車である場合、再生運転は、電動車の充電中におこなう。充電終了までの時間は車両を使用しない可能性が高いので、ユーザが乗車していない可能性が高いときに再生運転をおこなうことができるとともに、再生運転に十分な時間が確保することができる。また、再生運転を車両の充電中におこなうことによって、再生運転に必要な電力を確保しやすくすることができる。
本発明によれば、第1の流路と第2の流路とは、エアミックスダンパーの移動位置が切り替えられることによりハウジング内に形成されるので、従来の車両の空調システムの構成を流用することができ、デシカント空調システムを車両用空調装置に適用するに際して、設計等の変更の度合いを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる車両用空調装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる車両用空調装置100の構成を示すブロック図である。実施の形態にかかる車両用空調装置100は、ブロアファン(第1のブロアファン)101、ヒーターコア(加温手段)102、エアミックスダンパー(流路切替手段)103、除湿部材(以下、「デシカント部材」と記載)104、エバポレータ(除湿手段)105、風向調整用ダンパー106、制御手段107、操作手段108、温度湿度計109、再生用ブロアファン(第2のブロアファン)110によって構成される。
【0016】
ブロアファン101、ヒーターコア102、エアミックスダンパー103、エバポレータ105、風向調整用ダンパー106、操作手段108、再生用ブロアファン110は、それぞれ制御手段107と接続されている。制御手段107は、操作手段108を介して入力された空調設定(たとえば温度設定など)および温度湿度計109によって測定された測定値に基づいて、ブロアファン101、ヒーターコア102、エアミックスダンパー103、エバポレータ105、風向調整用ダンパー106、再生用ブロアファン110を制御する。
【0017】
図2は、実施の形態にかかる車両用空調装置100の構造を示す説明図である。
図2に示す車両用空調装置100のうち、デシカント部材104および再生用ブロアファン110以外の構成は、従来技術にかかる車両用空調装置と同様である。
車両用空調装置100は、車外の空気を導入する空気導入流路202と空調後の空気を車室内に排出する空気排出流路204との間に設けられたハウジングHを備える。
ハウジングHの入口(ハウジングHと空気導入流路202との境界付近)には、ブロアファン101が設けられている。ブロアファン101は、車外の空気をハウジングHを介して車室内に導入し、空気導入流路202から空気排出流路204に向かう空気の流れを作る。より詳細には、ブロアファン101は、羽を回転させることによって、ダクト内で車外方向から車室内方向へと空気の流れを発生させ、車両の外部に設けられた空気取り入れ口(図示なし)からハウジングH内へと空気を導入する。ハウジングH内へと導入された空気は、さらにブロアファン101によって発生された流れに沿って、車室内方向へと送られる。ブロアファン101の回転は、たとえば制御手段107(
図1参照)によって制御される。
【0018】
ハウジングH内には、流路切替手段であるエアミックスダンパー103が設けられる。エアミックスダンパー103は、空気導入流路202と空気排出流路204とを連通する第1の流路F1と、空気導入流路202と空気排出流路204とを連通する第1の流路F1とは別の第2の流路F2と、をハウジングH内に選択的に形成する。
すなわち、ハウジングHには、ブロアファン101によって導入された空気の流路を、空気導入流路202からヒーターコア102を経由して空気排出流路204に至らせ、外気を車室内に至らせる第1の流路F1と、空気導入流路202からヒーターコア102を経由せずに空気排出流路204に至らせ、外気を車室内に至らせる第2の流路F2とが形成される。
より詳細には、エアミックスダンパー103は、支軸103Xを中心として揺動可能で、
図4に示すように第1の流路F1を形成する際に第1の位置Sf1とされ、
図5に示すように第2の流路F2を形成する際に第2の位置Sf2とされる。エアミックスダンパー103を揺動させるアクチュエータとして、モータやソレノイドなどの従来公知の様々なアクチュエータが使用可能である。
【0019】
第1の流路F1には加温手段であるヒーターコア102および第2のブロアファンである再生用ブロアファン110が設けられている。ヒーターコア102は、空気を加温する。より詳細には、ヒーターコア102には、エンジンまたはヒーターなどで暖められた冷媒(または冷却水)が循環されている。ヒーターコア102では、この冷媒から、ブロアファン101の作用によってヒーターコア102内を通過する空気に対して熱を供給することによって空気を加温する。本実施の形態では、ヒーターコア102はハウジングHの上面の略中央部に設置されている。
【0020】
再生用ブロアファン110は、羽を回転させることによって、ダクト内で車室内方向から車外方向へと空気の流れを発生させ、ハウジングH内から車両の外部に設けられた空気取り入れ口(図示なし)へと空気を排出する。すなわち、再生用ブロアファン110は、空気排出流路204から空気導入流路202に向かう空気の流れを作る。再生用ブロアファン110の回転は、たとえば制御手段107(
図1参照)によって制御される。
【0021】
また、第1の流路F1および第2の流路F2の上流端、すなわちハウジングHと空気導入流路202との境界部近傍には、エバポレータ105が設けられており、エバポレータ105の空気導入流路202側にはデシカント部材104が設けられている。
【0022】
図3は、デシカント部材104の構造を示す説明図である。デシカント部材104は、ハニカム構造S内に空気が通過する際に、その空気から湿度(水蒸気)を除去する。空気から除去された湿度はデシカント部材104内に蓄積され、デシカント部材104の除湿性能は使用期間の経過とともに低下するが、後述する再生運転時に高温の空気がデシカント部材104内に供給される際に、デシカント部材104内に蓄積された湿度を奪うことによって、デシカント部材104の除湿性能は回復する。デシカント部材104は、たとえばシリカゲルやゼオライトなどの吸湿剤で形成されており、
図3に示すようなハニカム状の構造Sをしている。
【0023】
図2の説明に戻り、エバポレータ105は、エアミックスダンパー103の上流に設けられ、空気を除湿する。より詳細には、エバポレータ105は、冷媒の気化熱を利用して空気を冷却し、空気中に含まれる水蒸気を除去する。本実施の形態では、エバポレータ105はハウジングHの入口に設けられており、エアミックスダンパー103は、エバポレータ105によって除湿された空気の流路を第1の流路F1または第2の流路F2のいずれかに切り替える。なお、デシカント部材104の除湿性能が十分高い場合は、エバポレータ105を設けなくてもよい。
【0024】
風向調整用ダンパー106(第1の風向調整用ダンパー106a、第2の風向調整用ダンパー106b)は、ハウジングH内における熱交換処理が行なわれた空気を、車室内の所望の箇所から排出するための手段である。風向調整用ダンパー106の移動方向は、搭乗者による空調設定などに合わせて制御手段107によって制御される。本実施の形態では、ハウジングHの空気排出流路204に、第1の風向調整用ダンパー106aと第2の風向調整用ダンパー106bとを設けている。また、ハウジングHの空気排出流路204には、車室内のフロントガラス周辺に曇り取り用の空調済み空気を供給する流路111a(DEF)、車室内の搭乗者の上半身付近に空調済み空気を供給する流路111b(FACE)、車室内の搭乗者の下半身付近に空調済み空気を供給する流路111c(FOOT)の3つの流路が設けられている。
【0025】
第1の風向調整用ダンパー106aが位置Sc1の位置に移動すると、流路111a(DEF)への空調済み空気の供給は中断され、車室内のフロントガラス周辺からは空調済み空気の排出が行なわれない。また、第1の風向調整用ダンパー106aが位置Sc2の位置に移動すると、流路111b(FACE)および流路111c(FOOT)への空調済み空気の供給は中断され、車室内の搭乗者の上半身付近および下半身付近には空調済み空気の排出が行なわれない。
【0026】
また、第2の風向調整用ダンパー106bが位置Se1の位置に移動すると、流路111b(FACE)への空調済み空気の供給は中断され、車室内の搭乗者の上半身付近には空調済み空気の排出が行なわれない。また、第2の風向調整用ダンパー106aが位置Se2の位置に移動すると、流路111c(FOOT)への空調済み空気の供給は中断され、車室内の搭乗者の下半身付近には空調済み空気の排出が行なわれない。
【0027】
なお、上述したエアミックスダンパー103、デシカント部材104、風向調整用ダンパー106の移動可能領域やハウジングHの形状等は一例であり、本願発明が目的とする空気の流れを実現することができれば、これに限られるものではない。
【0028】
制御手段107(
図1参照)は、ブロアファン101、ヒーターコア102、エアミックスダンパー103、エバポレータ105、風向調整用ダンパー106および再生用ブロアファン110の動作を制御する。
制御手段107は、たとえば、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるECU(図示なし)が、前記CPUにより前記制御プログラムを実行することによって実現する。
【0029】
より詳細には、制御手段107は、車室内において暖房をおこなう場合は、ブロアファン101を稼働させるとともに、エアミックスダンパー103によって空気の流路を第1の流路F1に切り替える。また、車室内において冷房をおこなう場合は、ブロアファン101を稼働させるとともにエアミックスダンパー103によって空気の流路を第2の流路F2に切り替える。さらに、デシカント部材104の再生をおこなう場合は、再生用ブロアファン110を稼働させるとともにエアミックスダンパー103によって空気の流路を第1の流路F1に切り替える。
【0030】
図4は、暖房時における車両用空調装置100の各構成の配置を示す説明図である。車室内において暖房をおこなう場合、制御手段107は、ブロアファン101を稼働させるとともに、空気の流路を第1の流路F1とするようにエアミックスダンパー103を切り替える。すなわち、制御手段107は、エアミックスダンパー103を第1の位置Sf1に位置させて、車外側から流れてきた空気をヒーターコア102側に送る。
【0031】
これにより、ブロアファン101の作用によって供給された空気が、デシカント部材104、エバポレータ105、ヒーターコア102の順に車両用空調装置100を通過する。デシカント部材104およびエバポレータ105で除湿された空気は、ヒーターコア102によって加温され、適温空気として車室内に供給される。なお、暖房時においては、エバポレータ105をオフにしてもよい。
【0032】
図5は、冷房時における車両用空調装置100の各構成の配置を示す説明図である。車室内において冷房をおこなう場合、制御手段107は、ブロアファン101を稼働させるとともに、空気の流路を第2の流路F2とするようにエアミックスダンパー103を切り替える。すなわち、制御手段107は、エアミックスダンパー103を第2の位置Sf2に位置させて、車外側から流れてきた空気をヒーターコア102側に送らないようにする。
【0033】
これにより、ブロアファン101の作用によって供給された空気が、デシカント部材104およびエバポレータ105の順に車両用空調装置100を通過する。デシカント部材104およびエバポレータ105で除湿され、体感温度が低くなった空気は、適温空気として車室内に供給される。
【0034】
なお、
図4に示した暖房時における配置および
図5に示した冷房時における配置は、それぞれ最も暖房または冷房の出力を上げているとき(いわゆるMAX_HOTやMAX_COOL)の配置であり、その時々に要求される出力に応じて、エアミックスダンパー103の角度が制御される。
【0035】
図6は、再生運転時における車両用空調装置100の各構成の配置を示す説明図である。上述のように、デシカント部材104は、空気から除去した湿度を蓄積するため、使用期間の経過とともに除湿性能が低下する。再生運転では、高温の空気をデシカント部材104内に供給して、デシカント部材104内に蓄積された湿度を奪うことによって、デシカント部材104の除湿性能を回復させる。
【0036】
再生運転をおこなう場合、制御手段107は、再生用ブロアファン110を稼働させるとともに、空気の流路を第1の流路F1とするようにエアミックスダンパー103を切り替える。すなわち、制御手段107は、エアミックスダンパー103を第1の位置Sf1に位置させて、車内側から流れてきた空気をヒーターコア102およびデシカント部材104側に送る。
【0037】
これにより、再生用ブロアファン110の作用によって供給された空気が、ヒーターコア102、エバポレータ105、デシカント部材104の順に車両用空調装置100を通過する。ヒーターコア102によって加温された空気がデシカント部材104を通過することによって、デシカント部材104内に蓄積された湿度が奪われ、デシカント部材104の除湿性能が回復する。
【0038】
なお、デシカント部材104を通過した空気は、デシカント部材104に蓄積されていた湿度を大量に含んだ多湿空気である。この多湿空気は、空気導入流路202を通り空気取り入れ口(図示なし)から排出される。
【0039】
また、デシカント部材104の再生(再生運転)は、たとえば車両用空調装置100が搭載された車両の停車中におこなうようにする。車両の停車中、すなわちユーザが乗車していないときに再生運転をおこなうことによって、車両の走行中は車両用空調装置100による空調を定常的に使用することができる。また、たとえばユーザがあらかじめ車両の走行開始時間を指定して、その時間までに車内を所望の空調状態にしておく、いわゆる「お迎え空調機能」を有する車両においては、お迎え空調機能の稼働中(または稼働開始前)に再生運転をおこなってもよい。これにより、ユーザが確実に乗車していない時間帯に再生運転をおこなうことができる。
【0040】
また、車両用空調装置100が搭載された車両が、動力の少なくとも一部に電力を用いて走行する電動車である場合、再生運転は、電動車の充電中におこなうようにしてもよい。充電中であれば、充電終了までの時間は車両を使用しない可能性が高く、再生運転に十分な時間が確保できる可能性が高いためである。また、再生運転を車両の充電中におこなうようにすれば、再生運転に必要な電力を確保しやすくすることができる。充電終了予定時間に合わせて、再生運転をおこなってもよい。
【0041】
以上説明したように、実施の形態にかかる車両用空調装置100によれば、ハウジングH内に第1の流路F1および第2の流路F2を選択的に形成するエアミックスダンパー103と、ブロアファン101と、ヒーターコア102と、エバポレータ105とを備える車両用空調装置、すなわち従来技術にかかる車両用空調装置において、エバポレータ105の上流側にデシカント部材104(除湿部材)を、第1の流路F1に再生用ブロアファン110を設けた。これにより、デシカント部材104によって除湿された空気を空調に用いることができ、車両用空調装置100の空調効率を向上させることができる。
【0042】
また、車両用空調装置100によれば、暖房時、冷房時、デシカント部材104の再生時のいずれの状態にあるかによって、エアミックスダンパー103により形成される流路と、ブロアファン101および再生用ブロアファン110の稼働状態を切り替える。これにより、デシカント部材104を用いた空調システムにおいて、再生用の流路を設ける必要がなくなり、設置スペースに限りがある車両用空調装置に対しても除湿部材を用いた空調システム(デシカント空調システム)が適用可能となる。
【0043】
また、車両用空調装置100によれば、車両用空調装置100が搭載された車両の停車中に除湿部材の再生(再生運転)をおこなうので、ユーザが乗車していない可能性が高いときに再生運転をおこなうことができ、車両の走行中にデシカント部材104の除湿能力が低下して空調能力が低下する可能性を低減することができる。
【0044】
また、車両用空調装置100によれば、車両用空調装置100が搭載された車両が電動車である場合、再生運転は、電動車の充電中におこなう。充電終了までの時間は車両を使用しない可能性が高いので、ユーザが乗車していない可能性が高いときに再生運転をおこなうことができるとともに、再生運転に十分な時間が確保することができる。また、再生運転を車両の充電中におこなうことによって、再生運転に必要な電力を確保しやすくすることができる。
【0045】
また、車両用空調装置100によれば、第1の流路F1と第2の流路F2とは、エアミックスダンパー103の移動位置が切り替えられることによりハウジングH内に形成されるので、従来の車両の空調システムの構成を流用することができ、デシカント空調システムを車両用空調装置に適用するに際して、設計等の変更の度合いを低減することができる。