(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記給電コイルへの電力供給が、停止状態又は間欠供給状態、第1の電力供給状態、又は、第2の電力供給状態であることを識別可能に報知する報知部を更に有する、請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
前記制御部は、前記給電コイルから前記受電コイルへの電力伝送効率として、前記電源部の入力電力と前記給電コイルに供給する交流電力との比率、又は、前記電源部の入力電流と前記給電コイルに供給する交流電流との比率を算出する、請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁気結合(電磁結合)の一種である電磁誘導作用を利用して、給電コイル(1次側巻線)から受電コイル(二次側巻線)へ非接触で電力伝送を行うワイヤレス電力伝送システム(無接点電力伝送装置)が開示されている。
【0003】
この種のワイヤレス電力伝送システムでは、給電コイル及び受電コイルのインダクタンスのばらつき、給電コイルと受電コイルとの相対距離の変化、給電コイル又は受電コイルの位置ずれ、及び、給電コイルと受電コイルとの間への異物侵入などに起因して、給電コイルと受電コイルとの結合状態が変化し(例えば、これらのコイルの相互インダクタンスがずれて)、電力伝送効率が低下してしまう。
【0004】
この点に関し、特許文献1には、給電コイルに交流電力又は電流を供給する手段と、給電コイルに供給する電力又は電流を検出する手段とを備え、給電コイルに供給する電力又は電流が最大となるように、交流電力又は電流の周波数を制御することが記載されている。これにより、電力伝送効率の低下を回避し、伝送効率を向上させることができるとしている。
【0005】
一方、特許文献2には、磁気結合(電磁結合)の一種である磁場共振現象(磁場共鳴現象)を利用して、ワイヤレス給電装置からワイヤレス受電装置へ非接触(無線)で電力伝送を行うワイヤレス電力伝送システムが開示されている。このワイヤレス電力伝送システムでは、ワイヤレス給電装置は、給電コイルと浮遊容量とを有する給電共振回路を備え、また、ワイヤレス受電装置も、受電コイルと浮遊容量とを有する受電共振回路を備える。
【0006】
この種のワイヤレス電力伝送システムでも、給電共振回路及び受電共振回路を構成する部品の特性ばらつき、給電コイルと受電コイルとの相対距離の変化、給電コイル又は受電コイルの位置ずれ、及び、給電コイルと受電コイルとの間への異物侵入などに起因して、給電共振回路と受電共振回路との結合状態が変化し(例えば、これらの共振回路の共振周波数がずれたり、これらの共振回路におけるコイルの相互インダクタンスがずれたりし)、電力伝送効率が低下してしまう。
【0007】
この点に関し、特許文献2に開示のワイヤレス電力伝送システムでも、給電共振回路における給電コイルに供給する交流電力又は電流の周波数を制御することによって、電力伝送効率の低下を回避し、伝送効率を向上させることができると考えられる。
【0008】
ところで、給電共振回路及び受電共振回路を構成する部品の特性ばらつき、給電コイルと受電コイルとの相対距離の変化、給電コイル又は受電コイルの位置ずれ、及び、給電コイルと受電コイルとの間への異物侵入などに起因して電力伝送効率が低下している場合に、電力伝送を継続すると、送受信システムの損失や不要輻射が増大し、これらの危険要因に起因して何らかの障害が発生する虞がある。
【0009】
この点に関し、特許文献2には、給電共振回路における給電コイルに供給する交流電力又は電流の周波数を所定の範囲で変化させた周波数プロファイル、すなわち、電力伝送状態の周波数依存性を示す周波数プロファイルを取得し、取得した周波数プロファイルを予め測定した正常時の周波数プロファイルと比較して、取得した周波数プロファイルが正常時の周波数プロファイルと一致しない場合には電力伝送を停止することが記載されている。これにより、電力伝送効率の低下に起因する障害の発生を回避することができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、この種のワイヤレス電力伝送システムでは、電力伝送効率が低下したとしても、ワイヤレス電力伝送システム固有の損失が小さく、不要輻射が法定基準以下であれば、電力伝送を継続することが可能である。しかしながら、特許文献2に開示のワイヤレス電力伝送システムでは、取得した周波数プロファイルが正常時の周波数プロファイルと一致しない場合には全て危険と判断されて、電力伝送を停止してしまう(ロバスト制御性が低い)。
【0012】
そこで、本発明は、電力伝送効率の低下に起因する障害の発生を回避しつつ、電力伝送効率が低下しても電力伝送を継続する(ロバスト制御性を高める)ことができるワイヤレス給電装置、及び、ワイヤレス電力伝送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のワイヤレス給電装置は、受電コイルを有するワイヤレス受電装置に非接触で電力供給を行うワイヤレス給電装置であって、給電コイルであって、前記給電コイルと前記受電コイルとの磁気結合に基づき、前記給電コイルから前記受電コイルに電力供給を行うための当該給電コイルと、前記給電コイルに交流電力を供給する電源部と、前記給電コイルから前記受電コイルへの電力伝送効率を算出し、当該電力伝送効率に基づいて前記電源部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電力伝送効率が第1の判断基準値よりも小さい場合には、前記給電コイルへの電力供給が停止状態又は間欠供給状態となるように前記電源部を制御し、前記電力伝送効率が前記第1の判断基準値以上であり、第2の判断基準値よりも小さい場合には、前記給電コイルへの電力供給が第1の電力供給状態となるように前記電源部を制御し、ここで、前記第2の判断基準値は前記第1の判断基準値より大きく、前記電力伝送効率が前記第2の判断基準値以上である場合には、前記給電コイルへの電力供給が第2の電力供給状態となるように前記電源部を制御する。
【0014】
このワイヤレス給電装置によれば、電力伝送効率が第1の判断基準値よりも小さい場合には、制御部によって、給電コイルへの電力供給を停止状態又は間欠供給状態とするので、電力伝送効率の低下に起因する障害の発生を回避することができる。
【0015】
また、このワイヤレス給電装置によれば、電力伝送効率が第1の判断基準値以上である場合には電力伝送を可能とすると共に、電力伝送効率が第2の判断基準値よりも小さい場合には、第2の判断基準値以上である場合の第2の電力供給状態とは異なる第1の電力供給状態とする。例えば、電力伝送状態が良好な第2の電力供給状態に対して、電力伝送状態が良好ではないが、障害の発生の可能性が低い第1の電力供給状態では、給電コイルへの供給電力を小さくする。これにより、電力伝送効率が低下してもワイヤレス電力伝送システム固有の損失や不要輻射を抑制しつつ電力伝送を継続する(ロバスト制御性を高める)ことができる。
【0016】
また、特許文献2に開示のワイヤレス電力伝送システムでは、例えば部品の特性ばらつきのために、製品ごとに正常時の周波数プロファイルを取得する必要があり、コストアップの可能性がある。しかしながら、本発明のワイヤレス給電装置によれば、製品ごとに判断基準を設定する必要がない。
【0017】
また、特許文献2に開示のワイヤレス電力伝送システムでは、周波数プロファイルを取得する際に所定の周波数範囲でのスイープが必要であり、判断に時間を要する。しかしながら、本発明のワイヤレス給電装置によれば、比較的短時間で判断が可能である。
【0018】
上記したワイヤレス給電装置では、前記第1の電力供給状態において前記給電コイルに供給する交流電力は、前記第2の電力供給状態において前記給電コイルに供給する交流電力よりも小さい。これにより、電力伝送効率が低下しても、ワイヤレス電力伝送システム固有の損失や不要輻射を抑制しつつ、電力伝送を継続する(ロバスト制御性を高める)ことができる。
【0019】
上記した制御部は、前記電力伝送効率が前記第1の判断基準値以上に上昇しても、前記給電コイルへの電力供給を開始せず、前記電力伝送効率が前記第2の判断基準値以上に上昇した場合に、前記給電コイルへの電力供給を開始するように、前記電源部を制御し、前記電力伝送効率が前記第2の判断基準値よりも小さく低下しても、前記給電コイルへの電力供給を停止せず、前記電力伝送効率が前記第1の判断基準値よりも小さく低下した場合に、前記給電コイルへの電力供給を停止するように、前記電源部を制御する。このヒステリシス動作特性により、電力伝送動作のON−OFFチャタリングを防止することができる。
【0020】
また、上記した制御部は、前記給電コイルに供給する交流電力の周波数を可変することによって、前記電力伝送効率を調整する。これにより、電力伝送効率の低下を抑制することができる。
【0021】
また、上記した制御部は、前記給電コイルのインピーダンスを可変することによって、前記電力伝送効率を調整する。これにより、電力伝送効率の低下を抑制することができる。
【0022】
また、上記した制御部は、前記第2の電力供給状態において前記給電コイルへ供給する交流電力の周波数の可変範囲が、前記第1の電力供給状態において前記給電コイルへ供給する交流電力の周波数の可変範囲よりも小さくなるように、前記電源部を制御する。これにより、第1の電力供給状態における制御動作時間に対して、第2の電力供給状態における制御動作時間を短縮することができる。
【0023】
また、上記した制御部は、前記第2の電力供給状態における前記給電コイルのインピーダンスの可変範囲が、前記第1の電力供給状態における前記給電コイルのインピーダンスの可変範囲よりも小さくなるように、前記電源部を制御する。これにより、第1の電力供給状態における制御動作時間に対して、第2の電力供給状態における制御動作時間を短縮することができる。
【0024】
上記したワイヤレス給電装置は、前記給電コイルへの電力供給が、停止状態又は間欠供給状態、第1の電力供給状態、又は、第2の電力供給状態であることを識別可能に報知する報知部を更に有する。報知部としては、例えば、LEDやディスプレイといった表示装置や、スピーカといった警報装置などが適用可能である。これによれば、ユーザは、電力伝送状態を認識することができ、例えば、好ましい動作状態になるように、ワイヤレス給電装置とワイヤレス受電装置との位置の調整や、ワイヤレス給電装置とワイヤレス受電装置との間の異物除去等を行うことができる。
【0025】
また、上記したワイヤレス給電装置では、前記第2の判断基準値は設定変更可能である。これにより、ユーザによって、障害の発生を回避するための第1の判断基準値以外の第2の判断基準値を任意に設定変更可能となり、ユーザフレンドリを実現することができる。
【0026】
また、上記したワイヤレス給電装置では、前記第1の判断基準値は、前記給電コイルに供給する交流電力に応じて変更可能である。例えば、低電力伝送動作時には、障害の発生を回避するための第1の判断基準値も小さく設定可能である。本発明のワイヤレス給電装置よれば、低電力伝送動作時には第1の判断基準値を小さく設定することができ、その結果、伝送距離を伸ばすことができる。
【0027】
また、上記した制御部は、前記給電コイルから前記受電コイルへの電力伝送効率として、前記電源部の入力電力と前記給電コイルに供給する交流電力との比率、又は、前記電源部の入力電流と前記給電コイルに供給する交流電流との比率を算出する。これは、給電コイルから受電コイルへの電力伝送効率に依存して、電源部の入力電力と給電コイルの入力電力との比率が変動することに基づくものである。
【0028】
本発明の別のワイヤレス給電装置は、受電コイルと受電コンデンサとを含む受電共振回路を有するワイヤレス受電装置に非接触で電力供給を行うワイヤレス給電装置であって、上記したワイヤレス給電装置において、給電コイルと給電コンデンサとを含み、給電コイルと受電コイルとの磁場共振現象に基づき、給電コイルから受電コイルに電力供給を行うための給電共振回路を更に有する。
【0029】
ここで、「給電コイルと受電コイルとの磁場共振現象」とは、給電コイルによって発生する交流磁場に基づく受電共振回路の共振現象を意味する。この磁場共振現象も磁気結合(電磁結合)の一種である。給電コイルに交流電流を供給すると、給電コイルによって交流磁場が発生する。これによって、給電コイルと受電コイルとが磁場結合し、受電共振回路が共振する。
【0030】
上記した制御部は、前記給電共振回路のインピーダンスを可変することによって、前記電力伝送効率を調整する。これにより、電力伝送効率の低下を抑制することができる。
【0031】
また、上記した制御部は、前記第2の電力供給状態における前記給電共振回路のインピーダンスの可変範囲が、前記第1の電力供給状態における前記給電共振回路のインピーダンスの可変範囲よりも小さくなるように、前記電源部を制御する。これにより、第1の電力供給状態における制御動作時間に対して、第2の電力供給状態における制御動作時間を短縮することができる。
【0032】
本発明の更に別のワイヤレス給電装置は、受電コイルと受電コンデンサとを含む受電共振回路を有するワイヤレス受電装置に非接触で電力供給を行うワイヤレス給電装置であって、上記したワイヤレス給電装置において、上記した給電コイルは、実質的に共振回路を構成せず、給電コイルと受電コイルとの磁場共振現象に基づき、給電コイルから受電コイルに電力供給を行う。
【0033】
ここで、「実質的に共振回路を構成しない」とは、受電共振回路の共振周波数を共振周波数とする共振回路を形成しないことを意味するものであり、給電コイルが何らかの回路要素と偶発的に共振することまでも排除する意味ではない。例えば、「実質的に共振回路を構成しない」とは、受電共振回路の共振周波数を共振周波数とする共振回路を形成するために、給電コイルに対して直列又は並列にコンデンサを設けることを行わないことを意味するものである。
【0034】
ところで、本願発明者らは、給電共振回路と受電共振回路との2つの共振回路を備えるシステムにおいて、伝送電力の力率が1となる周波数が2つ存在し、これらの周波数は、共振コイル間距離が少し変化しただけで変動してしまうことを発見した。これより、特許文献2に開示のワイヤレス電力伝送システムでは、共振コイル間距離が少し変化しただけで周波数プロファイルが変化してしまい、障害の発生の可能性が低い状態にも電力伝送を停止してしまうことが予想される(ロバスト制御性が低い)。しかしながら、本発明のワイヤレス給電装置によれば、共振コイル間距離の変動に起因して、電力伝送を不要に停止してしまうことがない(ロバスト制御性が高い)。
【0035】
本発明のワイヤレス電力伝送システムは、上記したワイヤレス給電装置と、受電コイルを有するワイヤレス受電装置との間で非接触で電力伝送を行うワイヤレス電力伝送システムであって、前記ワイヤレス給電装置における給電コイルと前記ワイヤレス受電装置における受電コイルとの磁気結合に基づき、前記給電コイルから前記受電コイルに電力伝送を行う。
【0036】
また、本発明のワイヤレス電力伝送システムは、上記した別のワイヤレス給電装置と、受電コイルと受電コンデンサとを含む受電共振回路を有するワイヤレス受電装置との間で非接触で電力伝送を行うワイヤレス電力伝送システムであって、前記ワイヤレス給電装置における給電コイルと前記ワイヤレス受電装置における受電コイルとの磁場共振現象に基づき、前記給電コイルから前記受電コイルに電力伝送を行う。
【0037】
このワイヤレス電力伝送システムによれば、上記したワイヤレス給電装置を備えているので、電力伝送効率の低下に起因する障害の発生を回避することができると共に、電力伝送効率が低下してもワイヤレス電力伝送システム固有の損失や不要輻射を抑制しつつ電力伝送を継続する(ロバスト制御性を高める)ことができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、電力伝送効率の低下に起因する障害の発生を回避しつつ、電力伝送効率が低下しても電力伝送を継続する(ロバスト制御性を高める)ことができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0041】
図1は、本発明の実施形態のワイヤレス電力伝送システムの構成の一例を示す回路ブロック図である。このワイヤレス電力伝送システム1は、ワイヤレス給電装置100とワイヤレス受電装置200とを備え、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200へ非接触で電力伝送を行うものである。
【0042】
ワイヤレス給電装置100は、給電コイル111と給電コンデンサ112とを含む給電共振回路110を有する。一方、ワイヤレス受電装置200は、受電コイル211と受電コンデンサ212とを含む受電共振回路210を有する。本実施形態では、給電共振回路110は、給電コイル111と電磁結合するエキサイトコイル113を有し、受電共振回路210は、受電コイル211と電磁結合するロードコイル213を有する。
【0043】
ワイヤレス給電装置100では、給電共振回路110に交流電流(例えば、方形波または正弦波の電流)を供給することによって、給電コイル111と受電コイル211との磁場共振現象に基づき、給電コイル111から受電コイル211に電力供給が行われる。ここで、「給電コイル111と受電コイル211との磁場共振現象」とは、給電コイル111によって発生する交流磁場に基づく受電共振回路210の共振現象を意味する。給電共振回路110に交流電流を供給すると、エキサイトコイル113に交流電流が流れ、エキサイトコイル113と給電コイル111との電磁誘導作用によって給電コイル111と給電コンデンサ112との共振回路に交流電流が流れ、給電コイル111によって交流磁場が発生する。これによって、給電コイル111と受電コイル211とが磁場結合し、受電共振回路210が共振する。すると、受電コイル211と受電コンデンサ212との共振回路に交流電流が流れ、受電コイル211とロードコイル213との電磁誘導作用によってロードコイル213に交流電流が流れる。その際、給電共振回路110の共振周波数と受電共振回路210の共振周波数とを一致させると、伝送電力の力率を1とすることができ、高効率な電力伝送を行うことが可能となる。あるいは、給電コイル111に供給する交流電流の周波数と受電共振回路210の共振周波数とを一致させると、伝送電力の力率を1とすることができ、高効率な電力伝送を行うことが可能となる。
【0044】
次に、ワイヤレス給電装置100及びワイヤレス受電装置200それぞれについて詳細に説明する。
【0045】
まず、ワイヤレス給電装置100は、給電共振回路110と、電源部120と、平滑部122と、整合回路130と、電力検出部140,142と、信号処理部150と、制御部160と、表示部170と、記憶部180と、通信部190とを備える。なお、本実施形態では、信号処理部150と制御部160とが、請求の範囲に記載した制御部として機能し、表示部170が、請求の範囲に記載した報知部として機能する。
【0046】
電源部120は、平滑部122によって平滑化された入力電力を受けて、給電共振回路110に供給するための交流電力(すなわち、上述した交流電流)を生成する。電源部120は、制御部160からの制御信号に応じて、交流電力の大きさを変更することが可能となっている。また、電源部120は、制御部160からの制御信号に応じて、交流電力の周波数を変更することが可能となっている。電源部120には、例えば、スイッチングコンバータ、スイッチングインバータ等のスイッチング電源が適用される。
【0047】
整合回路130は、給電共振回路110に設けられている。整合回路130は、制御部160からの制御信号に応じて、自身のインピーダンスを変更することによって、給電共振回路110のインピーダンス(すなわち、上述した給電共振回路110の共振周波数)を変更する。
【0048】
図3に、整合回路130の一例を示す。
図3に示すように、整合回路130は、インダクタLと、キャパシタC1,C2と、スイッチSW1,SW2とから構成される。スイッチSW1,SW2によって、整合回路130には様々な回路構成が適用される。例えば、整合回路130には、インダクタLとキャパシタC1,C2とからなるπ型のLCフィルタ構成が適用されてもよいし、インダクタLと、キャパシタC1又はキャパシタC2とからなるL型のLCフィルタ構成が適用されてもよい。
【0049】
この整合回路130では、インダクタLのインダクタンス、及び、キャパシタC1,C2のキャパシタンスのうちの少なくとも何れかを変更することによって、自身のインピーダンスを変更する。例えば、キャパシタC1,C2には、電圧制御によって容量を可変することができるバラクタダイオードが適用可能である。一方、インダクタLには、例えば、スイッチでインダクタの段数を選択することによってインダクタンスを可変することができるスイッチ切り替え型インダクタが適用可能である。
【0050】
電源部120の入力側及び出力側それぞれには、電力検出部140,142が設けられている。電力検出部140は、電源部120の入力電力を検出する。一方、電力検出部142は、電源部120の出力電力、すなわち、給電共振回路110に供給される電力を検出する。なお、電力検出部142は、給電共振回路110に設けられている。
【0051】
信号処理部150は、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送効率を求める。具体的には、信号処理部150は、電力検出部140によって検出された電源部120の入力電力と、電力検出部142によって検出された給電共振回路110の入力電力との比率を、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送効率として算出する。これは、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送効率に依存して、電源部120の入力電力と給電共振回路110の入力電力との比率が変動することに基づくものである。これにより、ワイヤレス給電装置100の起動時など、ワイヤレス受電装置200の存在が確認できていない状態でも、電力伝送効率を予想することが可能となる。
【0052】
一方、ワイヤレス受電装置200の存在が確認でき、後述する通信部190によってワイヤレス受電装置200の電力情報を取得できる場合には、信号処理部150は、通信部190によって取得したワイヤレス受電装置200の電力と、電力検出部140によって検出された電源部120の入力電力との比率、すなわち、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送効率そのものを算出してもよい。
【0053】
信号処理部150は、算出した電力伝送効率に基づいて、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送状態の判断を行う。具体的には、信号処理部150は、求めた電力伝送効率を、予め設定された3つの判断基準値と比較し、4つの電力伝送状態に区分する。
【0054】
図2に、3つの判断基準値と4つの電力伝送状態を示す。第1の判断基準値は、電力伝送を許容できる電力伝送効率の下限レベルであり、例えば、電力伝送効率60%である。電力伝送効率がこの第1の判断基準値より小さくなると、電力伝送状態はエラー状態、すなわち、ワイヤレス電力伝送システム固有の損失が増大し過ぎる虞があり、また、不要輻射が法定基準を超える虞がある状態であると判断される。次に、第2の判断基準値は、電力伝送を略安全に許容できる電力伝送効率の下限レベルであり、例えば、電力伝送効率80%である。電力伝送効率がこの第2の判断基準値より小さくなると、電力伝送状態は警告状態、すなわち、電力伝送は許容できるが、状態変化によりエラー状態になる可能性がある状態であると判断される。次に、第3の判断基準値は、電力伝送を良好に行うことができる電力伝送効率の下限レベルであり、例えば、電力伝送効率90%である。電力伝送効率がこの第3の判断基準値以上になると、電力伝送状態は正常状態、すなわち、電力伝送を良好に行うことができる状態であると判断される。一方、電力伝送効率がこの第3の判断基準値より小さくなると、電力伝送状態は準正常状態、すなわち、電力伝送が良好ではないが、電力伝送を略安全に行い、許容できる状態であると判断される。
【0055】
制御部160は、信号処理部150の判断結果、すなわち電力伝送状態に基づいて、電源部120による電力供給を制御する。具体的には、制御部160は、エラー状態の場合には電力供給を停止させる。一方、制御部160は、正常状態の場合には供給電力を制限させず、準正常状態の場合には正常状態の場合よりも供給電力を制限させ(第2の電力供給状態)、警告状態の場合には準正常状態の場合よりも更に供給電力を制限させる(第1の電力供給状態)。より具体的には、電源部120では、スイッチング電源のスイッチング動作のデューティ比を制御することによって、電力供給の制御を行うことができる、すなわち、電力供給状態を変化させることができる。スイッチング電源のスイッチング制御方式としては、パルス幅を可変するPWM方式、パルスの位相を可変するフェーズシフト方式等の様々な方式が適用可能である。
【0056】
また、制御部160は、信号処理部150の判断結果、すなわち電力伝送状態に基づいて、電源部120及び整合回路130のうちの何れかを制御し、電力伝送効率の最適化を行う。具体的には、制御部160は、正常状態以外の場合に、電力伝送効率が最大になるように、電源部120の出力電力の周波数(すなわち、給電共振回路110に供給する交流電力の周波数)、及び、整合回路130のインピーダンス(すなわち、給電共振回路110のインピーダンス)のうちの何れかを変更する。電力伝送効率の最適化は、予め設定された周波数可変範囲において所定ステップで、又は、予め設定されたインピーダンス可変範囲において所定ステップで行われる。
【0057】
制御部160は、電力伝送効率の最適化における周波数可変範囲又はインピーダンス可変範囲を、電力伝送状態に応じて変更する。例えば、制御部160は、エラー状態、警告状態、準正常状態の場合に、それぞれ、周波数可変範囲又はインピーダンス可変範囲を第1、第2、第3の可変範囲に設定する。第1の可変範囲は、電力伝送効率が非常に悪いところから第1の判断基準値以上になる程度まで調整できる範囲であって、比較的に広い。第1の可変範囲は、この第1の可変範囲における所定ステップの1〜数点、好ましくは1〜3点において、電力伝送効率が第1の判断基準値以上になるように設定される。次に、第2の可変範囲は、電力伝送効率が第1の判断基準値以上から第2の判断基準値以上になる程度まで調整できる範囲であって、第1の可変範囲に比べて狭い。第2の可変範囲も同様に、この第2の可変範囲における所定ステップの1〜数点、好ましくは1〜3点において、電力伝送効率が第2の判断基準値以上になるように設定される。次に、第3の可変範囲は、電力伝送効率が第2の判断基準値以上から第3の判断基準値以上になる程度まで調整できる範囲であって、第2の可変範囲に比べて更に狭い。第3の可変範囲も同様に、この第3の可変範囲における所定ステップの1〜数点、好ましくは1〜3点において、電力伝送効率が第3の判断基準値以上になるように設定される。
【0058】
表示部170は、信号処理部150による判断結果、すなわち電力伝送状態を識別可能に表示する。表示部170としては、例えば、LEDやディスプレイなどが適用可能である。表示部170がLEDで構成される場合、電力伝送状態ごとに異なる色、異なる点灯個数で表示すればよい。例えば、電力伝送状態を色で表示する場合、エラー状態では赤LEDを、警告状態では黄色LEDを、準正常状態及び正常状態では緑色LEDを点灯すればよい。
【0059】
記憶部180は、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送状態の判断を行うための第1〜第3の判断基準値や、電力伝送状態に対応した所望の電力供給量等を予め記憶している。また、記憶部180は、電力伝送効率の最適化のための周波数可変範囲(第1〜第3の可変範囲)及びその可変ステップデータや、電力伝送効率の最適化のためのインピーダンス可変範囲(第1〜第3の可変範囲)及びその可変ステップデータ等を予め記憶している。また、記憶部180には、算出した電力伝送効率情報データや、判断した電力伝送状態情報データ等が記憶される。
【0060】
図4に、整合回路130のインダクタンス及びキャパシタンスと、電力伝送効率(すなわち、第1〜第3の判断基準値)との関係を示す。電力伝送効率の最適化のためのインピーダンス可変ステップデータは、
図4を考慮して予め設定したインダクタンスとキャパシタンスとの組み合わせデータであればよい。
【0061】
通信部190は、ワイヤレス受電装置200における通信部270と通信を行い、情報の送受信を行う。例えば、通信部190は、通信部270からワイヤレス受電装置200の電力情報を取得する。
【0062】
次に、ワイヤレス受電装置200は、受電共振回路210と、整流部220と、平滑部222と、電力検出部230と、信号処理部240と、表示部250と、記憶部260と、通信部270とを備える。
【0063】
整流部220は、受電共振回路210によって受信した交流電力を整流する。整流された電力は、平滑部222によって平滑化されて、負荷300に供給される。電力検出部230は、負荷300に供給される電力を検出する。
【0064】
信号処理部240は、信号処理部150と同様に、通信部270によって取得された電源部120の入力電力と、電力検出部230によって検出された負荷300の入力電力との比率を、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送効率として算出する。そして、信号処理部240は、信号処理部150と同様に、算出した電力伝送効率に基づいて、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送状態の判断を行う。
【0065】
表示部250は、表示部170と同様に、信号処理部240の判断結果、すなわち電力伝送状態を識別可能に表示する。
【0066】
記憶部260は、記憶部180と同様に、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送状態の判断を行うための第1〜第3の判断基準値等を予め記憶している。また、記憶部260には、算出した電力伝送効率情報データや、判断した電力伝送状態情報データ等が記憶される。
【0067】
通信部270は、ワイヤレス給電装置100における通信部190と通信を行い、ワイヤレス給電装置100の電力情報を取得する。
【0068】
次に、本実施形態のワイヤレス給電装置100の動作を説明する。
1.給電共振回路の駆動周波数及びインピーダンスのうちの何れか一方のみを調整して、電力伝送効率の最適化を行う場合
【0069】
図5〜8は、起動時に給電共振回路の駆動周波数及びインピーダンスのうちの何れか一方のみを調整して、電力伝送効率の最適化を行う場合のワイヤレス給電装置の動作の一例を示すフローチャートであり、
図9〜11は、電力伝送時に給電共振回路の駆動周波数及びインピーダンスのうちの何れか一方のみを調整して、電力伝送効率の最適化を行う場合のワイヤレス給電装置の動作の一例を示すフローチャートである。
1.1.ワイヤレス給電装置起動時
【0070】
図5に示すように、ワイヤレス給電装置100の起動時には、まず、給電共振回路110の駆動周波数(すなわち、電源部120の出力電力の周波数)f0、及び、給電共振回路110のインピーダンス(すなわち、整合回路130のインダクタンスL0、キャパシタンスC0)を初期値に設定する(イニシャライズ)(ステップS100)。
【0071】
次に、ワイヤレス給電装置100からワイヤレス受電装置200への電力伝送効率の最適化を行う。具体的には、信号処理部150及び制御部160によって、電力伝送効率が最大となるように、給電共振回路110の駆動周波数(すなわち、電源部120の出力電力の周波数)、又は、給電共振回路110のインピーダンス(すなわち、整合回路130のインダクタンス及びキャパシタンスの組)を調整する(ステップS200)。
【0072】
次に、信号処理部150によって、最適化後の電力伝送状態の判断を行う(ステップS300)。電力伝送状態がエラー状態以外の状態である場合には(ステップS400)、その電力伝送状態を表示部170に表示すると共に(ステップS500)、制御部160によって給電共振回路110の駆動周波数又はインピーダンスを最適化した周波数又はインピーダンスに設定し(ステップS600)、伝送電力を電力伝送状態に対応した所望の電力に設定して(ステップS700)、電力伝送を開始する。一方、電力伝送状態がエラー状態である場合には(ステップS400)、制御部160によって、エラー処理を行い(ステップS800)、ステップS200へ戻る。
【0073】
次に、周波数又はインピーダンス調整処理S200、電力伝送状態判断処理S300、エラー処理S800について説明する。
(周波数又はインピーダンス調整処理)
【0074】
周波数又はインピーダンス調整処理S200では、
図6に示すように、信号処理部150及び制御部160によって、まず、処理フラグを1に設定し(ステップS201)、周波数又はインピーダンスの可変範囲を比較的広い第1の可変範囲に設定し(ステップS202)、定常状態に比べて十分に小さい電力で給電を開始し(ステップS203)、電力検知を行う(ステップS204)。このように、低電力によって周波数又はインピーダンス調整処理を行うことによって、電力伝送効率の最適化の際にもEMC対策や電源保護を行うことができる。
【0075】
この電力検知が所定回数N回行われた後(ステップS205)、最も出現頻度が多い電力値から効率を算出する(ステップS206)。すなわち、多数回測定による平均値に対応する効率を算出する。その後、算出した効率と記憶部180に記憶されている前回の効率とを比較し、良いほうの効率情報を記憶部180に格納する(ステップS207)。このように、複数回の電力検知に基づいて効率を求めることによって、ノイズに起因する電力伝送効率の誤検出を抑制することができる。
【0076】
その後、処理フラグが1であるか否かを判断する(ステップS208)。処理フラグが1である場合、格納した効率情報が第1の判断基準値以上であるか否かを判断する(ステップS209)。格納した効率情報が第1の判断基準値より小さい場合には、周波数又はインピーダンス調整処理を終了するか否かを判断し(ステップS210)、例えば、本ステップへの移行回数が所定回数以上である場合には、何らかの原因により電力伝送効率が低下していると判断して、周波数又はインピーダンス調整処理を終了する。周波数又はインピーダンス調整処理を終了しない場合には、初期値を中心とした周波数可変範囲又はインピーダンス可変範囲(ステップS202で設定された第1の可変範囲)における次の可変ステップの周波数又はインピーダンスを順次に設定し(ステップS213)、ステップS203へ戻って、周波数又はインピーダンス調整処理を繰り返す。
【0077】
ステップS209において、第1の判断基準値以上である場合には、処理フラグを2に設定し(ステップS211)、周波数可変範囲又はインピーダンス可変範囲を第1の範囲よりも狭い第2の範囲に設定し(ステップS212)、ステップS213及びステップS203〜S208を経由してステップS214へ移行する。
【0078】
ステップS214において、処理フラグが2であるか否かを判断する。処理フラグが2である場合、格納した効率情報が第2の判断基準値以上であるか否かを判断する(ステップS215)。格納した効率情報が第2の判断基準値より小さい場合には、周波数又はインピーダンス調整処理を終了するか否かを判断し(ステップS216)、例えば、本ステップへの移行回数が所定回数以上である場合には、何らかの原因により電力伝送効率が低下していると判断して、周波数又はインピーダンス調整処理を終了する。周波数又はインピーダンス調整処理を終了しない場合には、ステップS213へ移行し、周波数又はインピーダンス調整処理を繰り返す。
【0079】
ステップS215において、第2の判断基準値以上である場合には、処理フラグを3に設定し(ステップS217)、周波数可変範囲又はインピーダンス可変範囲を第2の範囲よりも狭い第3の範囲に設定し(ステップS218)、ステップS213、ステップS203〜S208、ステップS214を経由してステップS219へ移行する。
【0080】
ステップS219において、処理フラグが3であるか否かを判断する。処理フラグが3である場合、格納した効率情報が第3の判断基準値以上であるか否かを判断する(ステップS220)。格納した効率情報が第3の判断基準値より小さい場合には、周波数又はインピーダンス調整処理を終了するか否かを判断し(ステップS221)、例えば、本ステップへの移行回数が所定回数以上である場合には、何らかの原因により電力伝送効率が低下していると判断して、周波数又はインピーダンス調整処理を終了する。周波数又はインピーダンス調整処理を終了しない場合には、ステップS213へ移行し、周波数又はインピーダンス調整処理を繰り返す。
【0081】
また、ステップS220において第3の判断基準値以上である場合にも、周波数又はインピーダンス調整処理を終了する。また、ステップS219において処理フラグが3でない場合にも周波数又はインピーダンス調整処理を終了する。
(電力伝送状態判断処理)
【0082】
次に、電力伝送状態判断処理S300では、
図7に示すように、信号処理部150によって、まず、最適化した電力伝送効率が第3の判断基準値以上であるか否かを判断する(ステップS301)。最適化した電力伝送効率が第3の判断基準値以上である場合には、電力伝送が良好な正常状態であると判断して、この正常状態情報を記憶部180に格納する(ステップS302)。
【0083】
一方、最適化した電力伝送効率が第3の判断基準値より小さい場合には、最適化した電力伝送効率が第2の判断基準値以上であるか否かを判断する(ステップS303)。最適化した電力伝送効率が第2の判断基準値以上である場合には、電力伝送が良好ではないが、電力伝送を略安全に行い、許容できる準正常状態であると判断して、この準正常状態情報を記憶部180に格納する(ステップS304)。
【0084】
一方、最適化した電力伝送効率が第2の判断基準値より小さい場合には、最適化した電力伝送効率が第1の判断基準値以上であるか否かを判断する(ステップS305)。最適化した電力伝送効率が第1の判断基準値以上である場合には、電力伝送は許容できるが、状態変化によりエラー状態になる可能性がある警告状態であると判断して、この警告状態情報を記憶部180に格納する(ステップS306)。
【0085】
一方、最適化した電力伝送効率が第1の判断基準値より小さい場合には、損失増大に起因して給電装置が破損する危険性があり、また、不要輻射が法定基準を超える危険性があるエラー状態であると判断して、このエラー状態情報を記憶部180に格納する(ステップS307)。
【0086】
これらの記憶部180に格納された電力伝送状態情報に基づいて、
図5のステップS500において電力伝送状態が表示部170に表示されることとなる。
【0087】
なお、ステップS400では、電力伝送状態が警告状態ではステップS500以降の処理へ移行せず、準正常状態になってからステップS500以降の処理へ移行する。すなわち、電力伝送効率が第1の判断基準値以上に上昇しても、給電共振回路110への電力供給を開始せず、電力伝送効率が第2の判断基準値以上に上昇した場合に、給電共振回路110への電力供給を開始する。一方、電力伝送効率が第2の判断基準値よりも小さく低下しても、給電共振回路110への電力供給を停止せず、電力伝送効率が第1の判断基準値よりも小さく低下した場合に、給電共振回路110への電力供給を停止する。このヒステリシス動作特性により、電力伝送動作のON−OFFチャタリングを防止することができる。
(エラー処理)
【0088】
次に、エラー処理S800では、
図8に示すように、制御部160によって、まず、電源部120による給電共振回路110への電力供給を停止し(ステップS801)、エラー状態を表示部170に表示する(ステップS802)。その後、給電共振回路110の駆動周波数及びインピーダンスを初期値にリセットし(ステップS803)、伝送電力を低電力にリセットし(ステップS804)、待機する(ステップS805)。
1.2.ワイヤレス給電装置電力伝送時
【0089】
次に、電力伝送を開始した後の処理を説明する。
図9に示すように、信号処理部150及び制御部160によって、電力伝送効率の監視を定期的に繰り返し、電力伝送効率が変化した場合に、その効率情報を格納すると共に(ステップS1100)、周波数又はインピーダンス調整処理を行うことによって、電力伝送効率の最適化を行う(ステップS1200)。そして、最適化後の電力伝送状態の判断を行い(ステップS300)、電力伝送状態がエラー状態以外の状態である場合には(ステップS400)、その電力伝送状態を表示部170に表示すると共に(ステップS500)、給電共振回路110の駆動周波数又はインピーダンスを最適化した周波数又はインピーダンスに設定し(ステップS600)、伝送電力を電力伝送状態に対応した所望の電力に設定して(ステップS700)、この周波数又はインピーダンス調整処理によって効率が向上したか否かの判断を行う(ステップS1300)。効率が向上した場合には、ステップS1100の電力伝送効率監視処理へ戻る。一方、ステップS1300において効率が向上しない場合には、ステップS1100において記憶した効率情報を、周波数又はインピーダンス調整処理による調整後の効率情報に書き換え(ステップS1400)、ステップS1200の周波数又はインピーダンス調整処理を継続する。
【0090】
なお、この電力伝送を開始した後の処理においては、ステップS400において電力伝送状態がエラー状態である場合には、エラー処理を行い(ステップS800)、
図5に示すステップS200の起動時の周波数又はインピーダンス調整処理へ移行する。
【0091】
次に、電力伝送効率監視処理S1100、周波数又はインピーダンス調整処理S1200について説明する。
(電力伝送効率監視処理)
【0092】
電力伝送効率監視処理S1100では、
図10に示すように、信号処理部150及び制御部160によって、まず、所望の電力にて電力伝送を継続し(ステップS1101)、電力検知を行う(ステップS204)。この電力検知が所定回数N回行われた後(ステップS205)、最も出現頻度が多い電力値から効率を算出する(ステップS206)。その後、算出した効率が、記憶部180に記憶した最良の効率と略同じであるか否かを判断し(ステップS1102)、電力伝送効率が変化した場合にこの効率情報を記憶部180に記憶する(ステップS1103)。なお、電力伝送効率が変化していない場合には、ステップS204に戻り、電力検知を繰り返す。
(周波数又はインピーダンス調整処理)
【0093】
次に、周波数又はインピーダンス調整処理S1200について説明する。
図11に示すように、信号処理部150及び制御部160によって、まず、その時点での最良値を中心とした周波数可変範囲又はインピーダンス可変範囲における次の可変ステップの周波数又はインピーダンスを順次に設定し(ステップS1201)、所望の電力にて電力伝送を継続し(ステップS1202)、電力検知を行う(ステップS204)。この電力検知が所定回数N回行われた後(ステップS205)、最も出現頻度が多い電力値から効率を算出する(ステップS206)。その後、算出した効率と記憶部180に記憶した前回の効率とを比較し、良いほうの効率情報を記憶部180に格納する(ステップS207)。その後、周波数又はインピーダンス調整処理を終了するか否かを判断し(ステップS1203)、例えば、本ステップへの移行回数が所定回数以上である場合には、周波数又はインピーダンス調整処理を終了する。周波数又はインピーダンス調整処理を終了しない場合には、ステップS1201へ戻って、周波数又はインピーダンス調整処理を繰り返す。
2.給電共振回路の駆動周波数及びインピーダンスのうちの両方を調整して、電力伝送効率の最適化を行う場合
【0094】
図12は、起動時に給電共振回路の駆動周波数及びインピーダンスのうちの両方を調整して、電力伝送効率の最適化を行う場合のワイヤレス給電装置の動作の一例を示すフローチャートであり、
図13は、電力伝送時に給電共振回路の駆動周波数及びインピーダンスのうちの両方を調整して、電力伝送効率の最適化を行う場合のワイヤレス給電装置の動作の一例を示すフローチャートである。
2.1.ワイヤレス給電装置起動時
【0095】
図12に示すように、ワイヤレス給電装置100の起動時、給電共振回路110の駆動周波数及びインピーダンスのうちの両方を調整して、電力伝送効率の最適化を行う場合、信号処理部150及び制御部160によって、最初に給電共振回路110のインピーダンス(すなわち、整合回路130のインダクタンス及びキャパシタンスの組)の調整(ステップS200)、及び、電力伝送状態の判断を行い(ステップS300)、調整後のインピーダンスを設定した状態で、給電共振回路110の駆動周波数(すなわち、電源部120の出力電力の周波数)の調整(ステップS200)、及び、電力伝送状態の判断を行う(ステップS300)。
【0096】
なお、ステップS600Aでは、給電共振回路110の駆動周波数及びインピーダンスを最適化した周波数及びインピーダンスに設定する。
2.2.ワイヤレス給電装置電力伝送時
【0097】
同様に、
図13に示すように、電力伝送を開始した後、給電共振回路110の駆動周波数及びインピーダンスのうちの両方を調整して、電力伝送効率の最適化を行う場合、信号処理部150及び制御部160によって、最初に給電共振回路110のインピーダンス(すなわち、整合回路130のインダクタンス及びキャパシタンスの組)の調整(ステップS1200)、及び、電力伝送状態の判断を行い(ステップS300)、調整後のインピーダンスを設定した状態で、給電共振回路110の駆動周波数(すなわち、電源部120の出力電力の周波数)の調整(ステップS1200)、及び、電力伝送状態の判断を行う(ステップS300)。
【0098】
ところで、ワイヤレス電力伝送システム1では、給電共振回路110及び受電共振回路210を構成する部品の特性ばらつき、給電コイル111と受電コイル211との相対距離の変化、給電コイル111又は受電コイル211の位置ずれ、及び、給電コイル111と受電コイル211との間への異物侵入などに起因して電力伝送効率が低下している場合に、電力伝送を継続すると、ワイヤレス電力伝送システム固有の損失や不要輻射が増大し、これらの危険要因に起因して何らかの障害が発生する虞がある。
【0099】
本実施形態のワイヤレス給電装置100及びワイヤレス電力伝送システム1によれば、信号処理部150及び制御部160によって、電力伝送効率が第1の判断基準値よりも小さいエラー状態の場合には、電源部120による給電共振回路110への電力供給を停止するので、電力伝送効率の低下に起因する障害の発生を回避することができる。
【0100】
また、本実施形態のワイヤレス給電装置100及びワイヤレス電力伝送システム1によれば、制御部160によって、電力伝送効率が第3の判断基準値よりも小さい準正常状態の場合には、電力伝送効率が第3の判断基準値以上である正常状態の場合よりも給電電力を制限し、また、電力伝送効率が第2の判断基準値よりも小さい警告状態の場合には、準正常状態の場合よりも給電電力を更に制限するので、電力伝送効率が低下してもワイヤレス電力伝送システム固有の損失や不要輻射を抑制しつつ電力伝送を継続する(ロバスト制御性を高める)ことができる。
【0101】
また、本実施形態のワイヤレス給電装置100及びワイヤレス電力伝送システム1によれば、制御部160によって、電力伝送状態に応じて、給電共振回路110の駆動周波数及びインピーダンスのうちの何れかを調整することによって、電力伝送効率の最適化を行うので、電力伝送効率の低下を抑制することができる。例えば、ワイヤレス給電装置100の起動時、ワイヤレス受電装置200が不適切な位置に存在する場合、又は、ワイヤレス受電装置200の存在が確認できない場合などに、電力伝送効率が所定の判断基準内に到達するように調整することができる。
【0102】
また、本実施形態のワイヤレス給電装置100及びワイヤレス電力伝送システム1によれば、電力伝送効率の最適化の際に、電力伝送状態に応じて周波数可変範囲又はインピーダンス可変範囲を変更する、具体的には、警告状態の場合にはエラー状態の場合よりも可変範囲を狭め、準正常状態の場合には警告状態よりも可変範囲を更に狭めるので、電力伝送効率の最適化のための処理時間を短縮することができる。
【0103】
また、本実施形態のワイヤレス給電装置100及びワイヤレス電力伝送システム1によれば、表示部170によって電力伝送状態を表示するので、ユーザは、電力伝送状態を認識することができ、例えば、好ましい動作状態になるように、ワイヤレス給電装置とワイヤレス受電装置との位置の調整や、ワイヤレス給電装置とワイヤレス受電装置との間の異物除去等を行うことができる。
【0104】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。本実施形態では、3つの判断基準値を用いて4つの電力伝送状態を判断したがこれに限らない。例えば、少なくとも2つ以上の判断基準値を用いて少なくとも3つの電力伝送状態を判断してもよい。
【0105】
また、本実施形態では、3つの判断基準値のうち、障害の発生を回避するための第1の判断基準値以外の第2及び第3の判断基準値を、ユーザによって任意に設定変更可能にしてもよい。これにより、使用状況に応じてユーザの使い勝手を向上することができ、ユーザフレンドリを実現することができる。
【0106】
また、本実施形態では、第1の判断基準値は、給電共振回路110に供給する交流電力の大きさに応じて変更されてもよい。例えば、低電力伝送動作時には、障害の発生を回避するための第1の判断基準値も小さく設定可能である。低電力伝送動作時に第1の判断基準値を小さく設定すると、伝送距離を伸ばすことができ、また、コイル同士の対向角度の自由度を上げることができる。
【0107】
また、本実施形態では、電力伝送状態がエラー状態である場合に、電力供給を停止したがこれに限らない。例えば、電力供給を間欠動作させてもよい。
【0108】
また、本実施形態では、電力伝送効率として電力比率を算出したがこれに限らない。例えば、電力伝送効率として電流比率を算出してもよい。
【0109】
また、本実施形態では、電力検出部142は、給電共振回路110に設けられていたがこれに限らない。例えば、電源部120と整合回路130との間に設けられていてもよい。
【0110】
また、本実施形態では、整合回路130は、給電側共振回路110に設けられていたがこれに限らない。例えば、周波数調整処理のみを行う場合には整合回路を設けなくてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、ワイヤレス給電装置100における給電共振回路110は、エキサイトコイル113を介して、給電コイル111と給電コンデンサ112との共振回路に交流電流を供給したがこれに限らない。例えば、
図14に示すように、給電共振回路110は、エキサイトコイルを介さずに、給電コイル111と給電コンデンサ112との共振回路に直接交流電流を供給してもよい。
【0112】
更に、例えば
図15に示すように、本実施形態では、ワイヤレス給電装置100における給電コイル111は、実質的に共振回路を構成せず、給電コイル111と受電コイル211との磁場共振現象に基づき、給電コイル111から受電コイル211に電力供給を行ってもよい。ここで、「実質的に共振回路を構成しない」とは、受電共振回路210の共振周波数を共振周波数とする共振回路を形成しないことを意味するものであり、給電コイル111が何らかの回路要素と偶発的に共振することまでも排除する意味ではない。例えば、「実質的に共振回路を構成しない」とは、受電共振回路210の共振周波数を共振周波数とする共振回路を形成するために、給電コイル111に対して直列又は並列にコンデンサを設けることを行わないことを意味するものである。
【0113】
このワイヤレス給電装置100では、給電コイル111と受電コイル211との磁場結合が強くなればなるほど受電共振回路210の共振周波数に影響が及ぶ。すなわち、給電コイル111と受電コイル211とを十分に磁場結合できる程度に近づけた状態での受電共振回路210の共振周波数は、給電コイル111と受電コイル211との磁場結合を無視できるほど両者が充分に離れた状態における受電共振回路210単独での共振周波数に対してずれていく。受電共振回路210の共振周波数近傍の周波数の交流電流を給電コイル111に供給することにより、磁場共振型のワイヤレス給電が実現可能となる。
【0114】
また、本実施形態では、少なくともワイヤレス受電装置が受電コイル211と受電コンデンサ212とからなる受電共振回路210を有し、給電コイル111と受電コイル211との磁場共振現象に基づき、給電コイル111から受電コイル211に電力伝送を行うワイヤレス電力伝送システムを例示したが、本発明の特徴は、ワイヤレス給電装置及びワイヤレス受電装置が共振回路を備えず、給電コイル111と受電コイル211との電磁誘導作用に基づき、給電コイル111から受電コイル211に電力伝送を行うワイヤレス電力伝送システムにも適用可能である。この場合、受電共振回路210の共振電流の周波数に代えて受電コイル211に流れる電流の周波数に、給電コイル111の交流電流の周波数を一致させればよい。
【0115】
また、本実施形態では、報知部として表示部170を例示したが、報知部としてはスピーカといった警報部が用いられてもよい。この場合、電力伝送状態を警報の種類や大きさで報知することが可能である。
【0116】
また、本発明の特徴は、電力伝送のみならず、信号伝送においても適用可能である。例えば、磁場共振現象を利用して、アナログ信号やデジタル信号を非接触で伝送する場合にも、本発明のワイヤレス電力伝送システムを適用可能である。
【0117】
なお、本発明は、TVなどの高負荷(ハイパワー)に非接触で給電を行う非接触給電や、充電池の充放電を非接触で行う非接触充放電の分野に適用可能である。
【0118】
なお、本明細書では、磁場共振現象のための素子を「コイル」と称したが、関連の技術分野によっては、「トランスミッタ」や「アンテナ」等と称することもある。
【0119】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置及び詳細において変更され得ることができることは、当業者によって認識される。本発明は実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲及びその精神の範囲から来るすべての修正及び変更に権利を請求する。