(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機(21)、室外熱交換器(24)、流量調節弁(51a、51b)、室内熱交換器(53a、53b)が接続されることによって構成された冷媒回路(10)を有しており、前記圧縮機を運転することによって前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記流量調節弁、前記室内熱交換器の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式冷房運転と、前記圧縮機を停止した状態で前記室外熱交換器、前記流量調節弁、前記室内熱交換器の順に冷媒を循環させる自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことが可能な空気調和システムにおいて、
前記自然循環式冷房運転時において、前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間を接続する液冷媒管に存在するガス冷媒、及び/又は、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間を接続するガス冷媒管に存在する液冷媒を除去するために、一時的に前記圧縮機の運転を行う異相冷媒除去制御に切り換えるものであり、
前記室内熱交換器に室内空気を供給するための室内ファン(56a、56b)がさらに設けられており、
前記自然循環式冷房運転時において、所定時間内における室内温度又は前記室内熱交換器によって冷却された後の室内空気の温度の低下量が所定値以下である場合に、前記異相冷媒除去制御を行う、
空気調和システム(1)。
圧縮機(21)、室外熱交換器(24)、流量調節弁(51a、51b)、室内熱交換器(53a、53b)が接続されることによって構成された冷媒回路(10)を有しており、前記圧縮機を運転することによって前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記流量調節弁、前記室内熱交換器の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式冷房運転と、前記圧縮機を停止した状態で前記室外熱交換器、前記流量調節弁、前記室内熱交換器の順に冷媒を循環させる自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことが可能な空気調和システムにおいて、
前記自然循環式冷房運転時において、前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間を接続する液冷媒管に存在するガス冷媒、及び/又は、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間を接続するガス冷媒管に存在する液冷媒を除去するために、一時的に前記圧縮機の運転を行う異相冷媒除去制御に切り換えるものであり、
前記室内熱交換器に室内空気を供給するための室内ファン(56a、56b)がさらに設けられており、
前記自然循環式冷房運転時において、室内温度と前記室内熱交換器によって冷却された後の室内空気の温度との温度差が所定値以下である場合に、前記異相冷媒除去制御を行う、
空気調和システム(1)。
前記異相冷媒除去制御時における冷媒循環量が、前記蒸気圧縮式冷房運転時の油戻し運転における冷媒循環量以上になるように、前記圧縮機(21)及び前記流量調節弁(51a、51b)を制御する、
請求項1又は2に記載の空気調和システム(1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自然循環式冷房運転では、室外熱交換器と室内熱交換器との間を接続する液冷媒管に存在する液冷媒と、室内熱交換器と室外熱交換器との間を接続するガス冷媒管に存在するガス冷媒との密度差が冷媒循環の搬送力になっている。このため、周囲との熱損等によって、液冷媒管内にガス冷媒が発生する、及び/又は、ガス冷媒管内に液冷媒が発生すると、十分な冷媒循環の搬送力が得られにくくなる。これにより、冷媒循環の不良が発生して、冷房能力が低下するおそれがある。
【0004】
これに対して、上記従来の空気調和システムでは、ガス冷媒管の下部に液溜め部及びヒータを設けることによって、冷媒回路における冷媒循環の不良を発生しにくくする構成が採用されている。しかし、このような液溜め部及びヒータが設けることは、冷媒循環の不良を改善するための特別な機器の追加が発生することから好ましいものとはいえない。
【0005】
また、自然循環式冷房運転を行うことが可能な空気調和システムとして、冷房能力の範囲を拡大するために、圧縮機を運転する蒸気圧縮式冷房運転と自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことを可能にした構成を採用することも考えられる。すなわち、圧縮機をさらに設けた上で、圧縮機を運転することによって圧縮機、室外熱交換器、レシーバ、流量調節弁、室内熱交換器の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式冷房運転と自然循環式冷房運転とを切り換え可能な構成を採用するのである。しかし、このような蒸気圧縮式冷房運転と自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことが可能な空気調和システムにおいても、自然循環式冷房運転時には、冷媒循環の不良による冷房能力の低下が発生するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、蒸気圧縮式冷房運転と自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことが可能な空気調和システムにおいて、特別な機器を追加することなく、自然循環式冷房運転時の冷媒循環の不良による冷房能力の低下を抑えることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1
及び第2の観点にかかる空気調和システムは、圧縮機、室外熱交換器、流量調節弁、室内熱交換器が接続されることによって構成された冷媒回路を有しており、蒸気圧縮式冷房運転と自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことが可能である。蒸気圧縮式冷房運転は、圧縮機を運転することによって圧縮機、室外熱交換器、流量調節弁、室内熱交換器の順に冷媒を循環させる冷房運転である。自然循環式冷房運転は、圧縮機を停止した状態で室外熱交換器、流量調節弁、室内熱交換器の順に冷媒を循環させる冷房運転である。そして、ここでは、自然循環式冷房運転時において、室外熱交換器と室内熱交換器との間を接続する液冷媒管に存在するガス冷媒、及び/又は、室内熱交換器と室外熱交換器との間を接続するガス冷媒管に存在する液冷媒を除去するために、一時的に圧縮機の運転を行う異相冷媒除去制御に切り換える。
【0008】
ここでは、この空気調和システムが圧縮機を有する構成であることを利用して、上記のように、自然循環式冷房運転時において、一時的に圧縮機の運転を行う異相冷媒除去制御に切り換えるようにしている。このため、室外熱交換器と室内熱交換器との間を接続する液冷媒管に存在するガス冷媒は、圧縮機の運転による強制的な冷媒循環によって液冷媒管から除去される。また、室内熱交換器と室外熱交換器との間を接続するガス冷媒管に存在する液冷媒は、圧縮機の運転による強制的な冷媒循環によってガス冷媒管から除去される。そうすると、自然循環式冷房運転時における冷媒循環の不良が改善された状態になり、その後に、自然循環式冷房運転に復帰することができる。
【0009】
これにより、ここでは、特別な機器を追加することなく、自然循環式冷房運転時の冷媒循環の不良による冷房能力の低下を抑えることができる。
【0010】
しかも、ここでは、室内熱交換器に室内空気を供給するための室内ファンがさらに設けられている。そして、ここでは、自然循環式冷房運転時において、室内温度又は室内熱交換器によって冷却された後の室内空気の温度の変化に基づいて冷房能力の低下を検知した場合に、異相冷媒除去制御を行う。
【0011】
自然循環式冷房運転時において、冷媒循環の不良によって冷房能力が低下すると、室内温度や室内熱交換器によって冷却された後の室内空気の温度の低下速度が鈍ることになる。
【0012】
そこで、ここでは、上記のように、自然循環式冷房運転時において、室内温度又は室内熱交換器によって冷却された後の室内空気の温度の変化に基づいて冷房能力の低下を検知して、異相冷媒除去制御を行うようにしている。例えば、第1の観点にかかる空気調和装置のように、所定時間内における室内温度又は室内熱交換器によって冷却された後の室内空気の温度の低下量が所定量以下である場合に、冷房能力の低下が発生しているものとして、異相冷媒除去制御を行うことができる。また、第2の観点にかかる空気調和装置のように、室内温度と室内熱交換器によって冷却された後の室内空気の温度との温度差が所定値以下である場合に、冷房能力の低下が発生しているものとして、異相冷媒除去制御を行うことができる。
【0013】
これにより、ここでは、冷媒循環の不良による冷房能力の低下を適切に検知して、異相冷媒除去制御を行うことができる。
【0014】
第
3の観点にかかる空気調和システムは、
第1又は第2の観点にかかる空気調和システムにおいて、異相冷媒除去制御時における冷媒循環量が、蒸気圧縮式冷房運転時の油戻し運転における冷媒循環量以上になるように、圧縮機及び流量調節弁を制御する。
【0015】
ここでは、この空気調和システムが圧縮機を有する構成であることから、冷媒回路内には、圧縮機の潤滑のための冷凍機油が封入されている。このため、蒸気圧縮式冷房運転時には、蒸気圧縮式冷房運転を行うことによって冷媒回路内に分散した冷凍機油を圧縮機に戻すための油戻し運転が行われる。この油戻し運転では、冷媒回路内に分散した冷凍機油を冷媒で押し流すために、大きな冷媒循環量が得られるように圧縮機及び流量調節弁が制御される。
【0016】
そして、ここでは、異相冷媒除去制御時においても、上記の蒸気圧縮式冷房運転時に行われる油戻し運転以上の冷媒循環量になるように圧縮機及び流量調節弁を制御するようにしている。
【0017】
これにより、ここでは、室外熱交換器と室内熱交換器との間を接続する液冷媒管に存在するガス冷媒、及び/又は、室内熱交換器と室外熱交換器との間を接続するガス冷媒管に存在する液冷媒を短時間にかつ確実に除去することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0019】
第1
及び第2の観点にかかる空気調和システムでは、特別な機器を追加することなく、自然循環式冷房運転時の冷媒循環の不良による冷房能力の低下を抑えることができる。
しかも、冷媒循環の不良による冷房能力の低下を適切に検知して、異相冷媒除去制御を行うことができる。
【0020】
第
3の観点にかかる空気調和システムでは、室外熱交換器と室内熱交換器との間を接続する液冷媒管に存在するガス冷媒、及び/又は、室内熱交換器と室外熱交換器との間を接続するガス冷媒管に存在する液冷媒を短時間にかつ確実に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかる空気調和システムの実施形態及びその変形例について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和システムの具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0023】
(1)空気調和システムの構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和システム1の概略構成図である。
【0024】
空気調和システム1は、圧縮機21(後述)を運転して行う蒸気圧縮式冷房運転と圧縮機21を停止した状態で行う自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことが可能な装置である。また、ここでは、空気調和システム1は、圧縮機21を運転して行う蒸気圧縮式暖房運転によって室内の暖房を行うことが可能な装置でもある。空気調和システム1は、主として、室外ユニット2と、室外ユニット2よりも下方に配置された複数(ここでは、2台)の室内ユニット5a、5bとが接続されることによって構成されている。例えば、室外ユニット2は、建物の屋上等に配置されており、室内ユニット5a、5bは、建物の室内等に配置されている。ここで、室外ユニット2と室内ユニット5a、5bとは、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7を介して接続されている。すなわち、空気調和システム1の冷媒回路10は、室外ユニット2と、室内ユニット5a、5bとが冷媒連絡管6、7を介して接続されることによって構成されている。また、冷媒回路10には、冷媒とともに、圧縮機21の潤滑のための冷凍機油が封入されている。
【0025】
<室内ユニット>
室内ユニット5a、5bは、上記のように、建物の室内等に設置されている。室内ユニット5a、5bは、冷媒連絡管6、7を介して、互いが並列に接続されるとともに室外ユニット2に接続されており、室外ユニット2との間で冷媒回路10を構成している。尚、ここでは、室内ユニット5a、5bが2台であるが、3台以上の室内ユニットが並列に接続されていてもよい。
【0026】
次に、室内ユニット5a、5bの構成について説明する。尚、室内ユニット5aと室内ユニット5bとは同様の構成であるため、ここでは、室内ユニット5aの構成だけを説明し、室内ユニット5bの構成については、室内ユニット5aの各部を示す添字「a」を「b」に読み替えるものとして、説明を省略する。
【0027】
室内ユニット5aは、主として、室内流量調節弁51aと、室内熱交換器53aとを有している。
【0028】
−室内流量調節弁−
室内流量調節弁51aは、開度調節されることで室内熱交換器53aを流れる冷媒の流量を調節する流量調節弁である。室内流量調節弁51aは、室内熱交換器53aの液側の端部に接続された室内ユニット液冷媒管54aに設けられている。そして、室内ユニット5aは、室内ユニット液冷媒管54aの室内流量調節弁51aの液側の端部に近い側の端部が、液冷媒連絡管6に接続されている。
【0029】
−室内熱交換器−
室内熱交換器53aは、蒸気圧縮式暖房運転時には圧縮機21によって圧縮された冷媒を放熱させ、蒸気圧縮式冷房運転時及び自然循環式冷房運転時には室内流量調節弁51aによって流量調節された冷媒を蒸発させる熱交換器である。室内熱交換器53aは、空調対象となる空間の室内空気を加熱源又は冷却源として、冷媒の蒸発又は放熱を行うようになっている。室内熱交換器53aの液側の端部は、上記のように、室内ユニット液冷媒管54aに接続されており、室内熱交換器53aのガス側の端部は、室内ユニットガス冷媒管55aに接続されている。室内ユニット5aは、室内ユニットガス冷媒管55aの室内熱交換器53aのガス側の端部から遠い側の端部が、ガス冷媒連絡管7に接続されている。
【0030】
そして、室内熱交換器53aの加熱源又は冷却源としての室内空気は、室内ファン56aによって供給されるようになっている。室内ファン56aは、ここでは、室内ファン用モータ57aによって回転駆動される遠心ファンや多翼ファン等である。
【0031】
−室内側制御部等−
また、室内ユニット5aには、各種のセンサが設けられている。具体的には、室内ユニット5aには、室内ユニット5aが空調対象とする室内空間における室内空気の温度を検出する室内温度センサ63aと、室内熱交換器53aによって冷却又は加熱された後の室内空気の温度を検出する室内吹出温度センサ64aとが設けられている。
【0032】
また、室内ユニット5aは、室内ユニット5aを構成する各部の動作を制御する室内側制御部58aを有している。そして、室内側制御部58aは、室内ユニット5aの制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有している。これにより、室内側制御部58aは、室内ユニット5aを個別に操作するためのリモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行ったり、他の室内ユニット5b及び室外ユニット2との間で伝送線81を介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0033】
<室外ユニット>
室外ユニット2は、上記のように、建物の屋上等に設置されている。室外ユニット2は、冷媒連絡管6、7を介して、室内ユニット5a、5bに接続されており、室内ユニット5a、5bとの間で冷媒回路10を構成している。尚、ここでは、室外ユニット2が1台であるが、2台以上の室外ユニットが並列に接続されていてもよい。
【0034】
室外ユニット2は、主として、圧縮機21と、冷暖切換機構23と、室外熱交換器24と、レシーバ25と、室外流量調節弁26と、圧縮機バイパス機構27とを有している。
【0035】
−圧縮機、圧縮機バイパス機構−
圧縮機21は、蒸気圧縮式暖房運転時及び蒸気圧縮式冷房運転時に冷媒を圧縮する機構である。ここでは、圧縮機21は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)を圧縮機用モータ22によって回転駆動する密閉式構造になっている。圧縮機21は、吸入側に吸入冷媒管28が接続されており、吐出側に吐出冷媒管29が接続されている。ここで、吸入冷媒管28は、圧縮機21の吸入側と冷暖切換機構23とを接続する冷媒管である。吐出冷媒管29は、圧縮機21の吐出側と冷暖切換機構23とを接続する冷媒管である。
【0036】
そして、吸入冷媒管28には、圧縮機バイパス機構27を構成する圧縮機バイパス管30の一端が接続されており、吐出冷媒管29には、圧縮機バイパス冷媒管30の他端が接続されている。圧縮機バイパス機構27は、自然循環式冷房運転時に圧縮機21をバイパスして吸入冷媒管28から吐出冷媒管29に冷媒を送るための機構である。圧縮機バイパス冷媒管30には、圧縮機21の停止時に圧縮機21をバイパスして吸入冷媒管28側から吐出冷媒管29側に冷媒を流すための圧縮機バイパス弁31が設けられている。ここでは、圧縮機バイパス弁31として、吐出冷媒管29側の冷媒の圧力よりも吸入冷媒管28側の冷媒の圧力が高い場合に吸入冷媒管28側から吐出冷媒管29側への冷媒の流れを許容し、吸入冷媒管28側の冷媒の圧力よりも吐出冷媒管29側の冷媒の圧力が高い場合に吐出冷媒管29側から吸入冷媒管28側への冷媒の流れを遮断する逆止弁が使用されている。尚、圧縮機バイパス弁31は、逆止弁に限定されるものではなく、電磁弁等であってもよい。
【0037】
−冷暖切換機構−
冷暖切換機構23は、冷媒回路10内における冷媒の流れの方向を切り換えるための機構である。冷暖切換機構23は、蒸気圧縮式冷房運転時及び自然循環式冷房運転時には、室外熱交換器24を冷媒の放熱器として、かつ、室内熱交換器53a、53bを室外熱交換器24において放熱した冷媒の蒸発器として機能させる冷房運転状態への切り換えを行うことができる。すなわち、冷暖切換機構23は、吐出冷媒管29と室外熱交換器24のガス側の端部とを接続するとともに、吸入冷媒管28と室内熱交換器53a、53bのガス側の端部とを接続することができる(
図1の冷暖切換機構23の実線を参照)。また、冷暖切換機構23は、蒸気圧縮式暖房運転時には、室内熱交換器53a、53bを冷媒の放熱器として、かつ、室外熱交換器24を室内熱交換器53a、53bにおいて放熱した冷媒の蒸発器として機能させる暖房運転状態への切り換えを行うことができる。すなわち、冷暖切換機構23は、吐出冷媒管29と室内熱交換器53a、53bのガス側の端部とを接続するとともに、吸入冷媒管28と室外熱交換器24のガス側の端部とを接続することができる(
図1の冷暖切換機構23の破線を参照)。冷暖切換機構23は、ここでは、吸入冷媒管28、吐出冷媒管29、室外ユニット第1ガス冷媒管32、及び、室外ユニット第2ガス冷媒管33に接続された四路切換弁からなる。ここで、室外ユニット第1ガス冷媒管32は、冷暖切換機構23と室外熱交換器24のガス側の端部とを接続する冷媒管である。室外ユニット第2ガス冷媒管33は、ガス冷媒連絡管7及び室内ユニットガス冷媒管55a、55bを介して、冷暖切換機構23と室内熱交換器53a、53bのガス側の端部とを接続する冷媒管である。尚、冷暖切換機構23は、四路切換弁に限定されるものではなく、例えば、複数の電磁弁を組み合わせる等によって、上記と同様の冷媒の流れの方向を切り換える機能を有するように構成したものであってもよい。
【0038】
−室外熱交換器−
室外熱交換器24は、蒸気圧縮式暖房運転時には室外流量調節弁26によって減圧された冷媒を蒸発させ、蒸気圧縮式冷房運転時には圧縮機21によって圧縮された冷媒を放熱させ、自然循環式冷房運転時には圧縮機バイパス機構27によって圧縮機21をバイパスした冷媒を放熱させる熱交換器である。室外熱交換器24は、室外ユニット2が配置された空間の室外空気を加熱源又は冷却源として、冷媒の蒸発又は放熱を行うようになっている。ここで、室外熱交換器24は、室外ユニット2が室内ユニット5a、5bよりも上方に配置されているため、室内熱交換器53a、53bよりも上方に配置されていることになる。すなわち、室内熱交換器53a、53bは、室外熱交換器24よりも下方に配置されている。室外熱交換器24の液側の端部は、室外ユニット液冷媒管34に接続されており、室内熱交換器53aのガス側の端部は、上記のように、室外ユニット第1ガス冷媒管32に接続されている。ここで、室外ユニット液冷媒管34は、液冷媒連絡管6、及び、室内流量調節弁51a、51bを含む室内ユニット液冷媒管54a、54bを介して、室外熱交換器24の液側の端部と室内熱交換器53a、53bの液側の端部とを接続する冷媒管である。
【0039】
そして、室外熱交換器24の加熱源又は冷却源としての室外空気は、室外ファン35によって供給されるようになっている。室外ファン35は、ここでは、室外ファン用モータ36によって回転駆動される遠心ファンや多翼ファン等である。
【0040】
−レシーバ−
レシーバ25は、冷媒回路10において発生する余剰冷媒を溜めることができるように室外ユニット液冷媒管34に設けられた容器である。レシーバ25の出入口のうち蒸気圧縮式冷房運転時及び自然循環式冷房運転時の入口は、室外ユニット液冷媒管34のうち室外熱交換器24の液側の端部に近い側の室外ユニット第1液冷媒管34aに接続されており、レシーバ25の出入口のうち蒸気圧縮式冷房運転時及び自然循環式冷房運転時の出口は、室外ユニット液冷媒管34のうち液冷媒連絡管6に近い側の室外ユニット第2液冷媒管34bに接続されている。
【0041】
−室外流量調節弁−
室外流量調節弁26は、ここでは、室外ユニット液冷媒管34のうちレシーバ25の蒸気圧縮式冷房運転時及び自然循環式冷房運転時の出口側の部分に位置する室外ユニット第2液冷媒管34bに設けられている。
【0042】
−室外側制御部等−
また、室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する各部の動作を制御する室外側制御部37を有している。そして、室外側制御部37は、室外ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有している。これにより、室外側制御部37は、室内側制御部58a、58bとの間で伝送線81を介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0043】
<冷媒連絡管>
冷媒連絡管6、7は、空気調和システム1を建物等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管であり、設置場所や室外ユニットと室内ユニットとの組み合わせ等の設置条件に応じて種々の長さや管径を有するものが使用される。
【0044】
以上のように、室外ユニット2と、室内ユニット5a、5bと、冷媒連絡管6、7とが接続されることによって、空気調和システム1の冷媒回路10が構成されている。空気調和システム1は、上記のように、主として、圧縮機21、室外熱交換器24、室内流量調節弁51a、51b、室内熱交換器53a、53bが接続されることによって構成された冷媒回路10を有しており、蒸気圧縮式冷房運転と自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことが可能である。蒸気圧縮式冷房運転は、圧縮機21を運転することによって圧縮機21、室外熱交換器24、室内流量調節弁51a、51b、室内熱交換器53a、53bの順に冷媒を循環させる冷房運転である。自然循環式冷房運転は、圧縮機21を停止した状態で室外熱交換器24、室内流量調節弁51a、51b、室内熱交換器53a、53bの順に冷媒を循環させる冷房運転である。
【0045】
<制御部>
空気調和システム1は、室内側制御部58a、58bと室外側制御部37とから構成される制御部8によって、室外ユニット2及び室内ユニット5a、5bの各機器の制御を行うことができるようになっている。すなわち、室内側制御部58a、58bと室外側制御部37との間を接続する伝送線81とによって、上記の蒸気圧縮式冷房運転や自然循環式冷房運転等を含む空気調和システム1全体の運転制御を行う制御部8が構成されている。
【0046】
制御部8は、
図2に示すように、各種センサ63a、63b、64a、64b等の検出信号を受けることができるように接続されるとともに、これらの検出信号等に基づいて各種機器及び弁22、23、26、36、51a、51b、57a、57b等を制御することができるように接続されている。
【0047】
(2)空気調和システムの動作
次に、空気調和システム1の動作について、
図3〜
図5を用いて説明する。空気調和システム1は、室内の暖房を行う運転として、蒸気圧縮式暖房運転を行うことが可能である。また、空気調和システム1は、室内の冷房を行う運転として、蒸気圧縮式冷房運転及び自然循環式冷房運転を切り換えて行うことが可能である。さらに、空気調和システム1は、蒸気圧縮式冷房運転時において、蒸気圧縮式冷房運転を行うことによって冷媒回路10内に分散した冷凍機油を圧縮機21に戻すための油戻し運転を行うようになっている。
【0048】
<蒸気圧縮式暖房運転>
蒸気圧縮式暖房運転時には、
図3に示すように、冷暖切換機構23が暖房運転状態に切り換えられる。また、蒸気圧縮式暖房運転時には、室内流量調節弁51a、51bが室内熱交換器53a、53bを流れる冷媒の流量を調節するために使用される。
【0049】
このような冷媒回路10において、低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、高圧になるまで圧縮された後に吐出される。尚、ここでは、圧縮機21の運転が行われることによって吐出冷媒管29側の冷媒の圧力が吸入冷媒管28側の冷媒の圧力よりも高くなっているため、圧縮機バイパス機構27の圧縮機バイパス弁31が冷媒の流れを遮断している。このため、圧縮機バイパス機構27の圧縮機バイパス冷媒管30を通じて冷媒が流れることがない状態になっている。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、冷暖切換機構23及びガス冷媒連絡管7を通じて、室外ユニット2から室内ユニット5a、5bに送られる。
【0050】
室内ユニット5a、5bに送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器53a、53bに送られる。このとき、室内熱交換器53a、53bに送られる高圧のガス冷媒は、室内流量調節弁51a、51bの開度調節によって、流量が調節されている。そして、室内熱交換器53a、53bに送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器53a、53bにおいて、室内ファン56a、56bによって冷却源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。これにより、室内空気は加熱され、その後に、室内に供給されることで室内の暖房が行われる。室内熱交換器53a、53bで放熱した高圧の液冷媒は、室内流量調節弁51a、51bを通過した後に、液冷媒連絡管6を通じて、室内ユニット5a、5bから室外ユニット2に送られる。
【0051】
室外ユニット2に送られた液冷媒は、室外流量調節弁26に送られる。室外流量調節弁26に送られた液冷媒は、室外流量調節弁26によって低圧まで減圧される。室外流量調節弁26で減圧された低圧の冷媒は、レシーバ25で一時的に溜められた後に、室外熱交換器24に送られる。室外熱交換器24に送られた低圧の冷媒は、室外熱交換器24において、室外ファン35によって加熱源として供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。室外熱交換器24で蒸発した低圧の冷媒は、冷暖切換機構23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0052】
<蒸気圧縮式冷房運転、油戻し運転>
蒸気圧縮式冷房運転時には、
図4に示すように、冷暖切換機構23が冷房運転状態に切り換えられる。また、蒸気圧縮式冷房運転時には、室内流量調節弁51a、51bが室内熱交換器53a、53bを流れる冷媒の流量を調節するために使用される。
【0053】
このような冷媒回路10において、低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、高圧になるまで圧縮された後に吐出される。尚、ここでは、圧縮機21の運転が行われることによって吐出冷媒管29側の冷媒の圧力が吸入冷媒管28側の冷媒の圧力よりも高くなっているため、圧縮機バイパス機構27の圧縮機バイパス弁31が冷媒の流れを遮断している。このため、圧縮機バイパス機構27の圧縮機バイパス冷媒管30を通じて冷媒が流れることがない状態になっている。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、冷暖切換機構23を通じて、室外熱交換器24に送られる。室外熱交換器24に送られた高圧のガス冷媒は、室外熱交換器24において、室外ファン35によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。室外熱交換器24で放熱した高圧の液冷媒は、レシーバ25で一時的に溜められた後に、室外流量調節弁26及び液冷媒連絡管6を通じて、室外ユニット2から室内ユニット5a、5bに送られる。
【0054】
室内ユニット5a、5bに送られた高圧の液冷媒は、室内流量調節弁51a、51bの開度調節によって、流量が調節されるとともに低圧まで減圧される。そして、室内流量調節弁51a、51bによって流量が調節された低圧の冷媒は、室内熱交換器53a、53bに送られる。室内熱交換器53a、53bに送られた低圧の冷媒は、室内熱交換器53a、53bにおいて、室内ファン56a、56bによって加熱源として供給される室内空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。これにより、室内空気は冷却され、その後に、室内に供給されることで室内の冷房が行われる。室内熱交換器53a、53bで蒸発した低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管7を通じて、室内ユニット5a、5bから室外ユニット2に送られる。
【0055】
室外ユニット2に送られた低圧のガス冷媒は、冷暖切換機構23を通じて、再び、圧縮機に吸入される。
【0056】
また、蒸気圧縮式冷房運転時には、定期的に油戻し運転が行われる。ここで、油戻し運転時には、冷媒回路10内に分散した冷凍機油を冷媒で押し流すために、大きな冷媒循環量が得られるように圧縮機21、室外流量調節弁26及び室内流量調節弁51a、51bが制御される。例えば、圧縮機21については、インバータ制御等によって圧縮機用モータ22の回転数を最大回転数近くまで増加させる。そして、室外流量調節弁26及び室内流量調節弁51a、51bについては、全開近くまで開ける。これにより、蒸気圧縮式冷房運転時に冷媒回路10内に分散した冷凍機油が圧縮機21に戻ることになる。
【0057】
<自然循環式冷房運転>
自然循環式冷房運転時には、
図5に示すように、冷暖切換機構23が冷房運転状態に切り換えられる。また、自然循環式冷房運転時には、室内流量調節弁51a、51bが室内熱交換器53a、53bを流れる冷媒の流量を調節するために使用される。
【0058】
このような冷媒回路10において、圧縮機21を停止した状態にして圧縮機バイパス機構27の圧縮機バイパス冷媒管30及び圧縮機バイパス弁31を通じて冷媒が圧縮機21をバイパスして吸入冷媒管28側から吐出冷媒管29側に流れるようにする。すると、低圧の冷媒は、室外熱交換器24において、室外ファン35によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、低圧の液冷媒になる。室外熱交換器24で放熱した低圧の液冷媒は、レシーバ25で一時的に溜められた後に、室外流量調節弁26及び液冷媒連絡管6を通じて、重力によって下降して、室外ユニット2から室内ユニット5a、5bに送られる。
【0059】
室内ユニット5a、5bに送られた低圧の液冷媒は、室内流量調節弁51a、51bの開度調節によって、流量が調節される。そして、室内流量調節弁51a、51bによって流量が調節された低圧の冷媒は、室内熱交換器53a、53bに送られる。室内熱交換器53a、53bに送られた低圧の冷媒は、室内熱交換器53a、53bにおいて、室内ファン56a、56bによって加熱源として供給される室内空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。これにより、室内空気は冷却され、その後に、室内に供給されることで室内の冷房が行われる。室内熱交換器53a、53bで蒸発した低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管7を通じて、室内熱交換器53a、53bの入口側(ここでは、液冷媒連絡管6側)に存在する液冷媒との密度差によって上昇して、室内ユニット5a、5bから室外ユニット2に送られる。
【0060】
室外ユニット2に送られた低圧のガス冷媒は、冷暖切換機構23及び圧縮機バイパス機構27を通じて、再び、室外熱交換器24に送られる。
【0061】
(3)自然循環式冷房運転時における異相冷媒除去制御
上記の自然循環式冷房運転では、室外熱交換器24と室内熱交換器53a、53bとの間を接続する液冷媒管に存在する液冷媒と、室内熱交換器53a、53bと室外熱交換器24との間を接続するガス冷媒管に存在するガス冷媒との密度差が冷媒循環の搬送力になっている。尚、ここでは、室外熱交換器24と室内熱交換器53a、53bとの間を接続する液冷媒管とは、室外ユニット液冷媒管34から液冷媒連絡管6を通じて室内ユニット液冷媒管54a、54bに至るまでの冷媒管である。また、室内熱交換器53a、53bと室外熱交換器24との間を接続するガス冷媒管とは、室内ユニットガス冷媒管55a、55bからガス冷媒連絡管7等を通じて室外ユニットガス冷媒管32に至るまでの冷媒管である。このため、周囲との熱損等によって、液冷媒管内にガス冷媒が発生する、及び/又は、ガス冷媒管内に液冷媒が発生すると、十分な冷媒循環の搬送力が得られにくくなる。これにより、冷媒循環の不良が発生して、冷房能力が低下するおそれがある。
【0062】
そこで、ここでは、自然循環式冷房運転時において、室外熱交換器24と室内熱交換器53a、53bとの間を接続する液冷媒管に存在するガス冷媒、及び/又は、室内熱交換器53a、53bと室外熱交換器24との間を接続するガス冷媒管に存在する液冷媒を除去するために、一時的に圧縮機21の運転を行う異相冷媒除去制御に切り換えるようにしている。
【0063】
次に、自然循環式冷房運転時における異相冷媒除去制御について、
図6を用いて説明する。ここで、
図6は、自然循環式冷房運転時における異相冷媒除去制御のフローチャートである。尚、以下に説明する異相冷媒除去制御は、蒸気圧縮式暖房運転、蒸気圧縮式冷房運転、油戻し運転及び自然循環式冷房運転と同様、制御部8が行う。
【0064】
<ステップST1>
まず、ステップST1において、制御部8は、自然循環式冷房運転中であるかどうかを判定する。そして、自然循環式冷房運転中である場合には、ステップST2の処理に移行する。
【0065】
<ステップST2>
次に、ステップST2において、制御部8は、自然循環式冷房運転時において、冷媒循環の不良によって冷房能力が低下しているかどうかを判定する。ここで、自然循環式冷房運転時において、冷媒循環の不良によって冷房能力が低下すると、室内温度センサ63a、63bによって検出される室内温度Trや室内吹出温度センサ64a、64bによって検出される室内熱交換器53a、53bによって冷却された後の室内空気の温度Trdの低下速度が鈍ることになる。そこで、ここでは、自然循環式冷房運転時において、室内温度Tr又は室内熱交換器53a、53bによって冷却された後の室内空気の温度Trdの変化に基づいて冷房能力の低下を検知するようにしている。例えば、所定時間内における室内温度Tr又は室内熱交換器53a、53bによって冷却された後の室内空気の温度Trdの変化量ΔTr又はΔTrdが所定量ΔTrs又はΔTrds以下である場合には、冷房能力の低下が発生しているものとすることができる。また、温度Trdと温度Trとの温度差が所定量以下である場合に冷房能力の低下が発生しているものと判定してもよい。このように、冷房能力の変化が現れやすい室内温度Tr等に基づいて冷房能力の低下の有無を判定するものであればよい。そして、室内温度Tr等に基づいて冷房能力の低下が発生していると判定された場合には、ステップST3の処理に移行する。
【0066】
このように、ここでは、室内温度Tr等の変化に基づいて冷媒循環の不良による冷房能力の低下を適切に検知することができる。
【0067】
<ステップST3、ST4>
次に、ステップST3において、制御部8は、異相冷媒除去制御を行う。ここでは、空気調和システム1が圧縮機21を有する構成であることを利用して、自然循環式冷房運転時において、一時的に圧縮機21の運転を行うものである。これにより、冷媒は、
図4に示される蒸気圧縮式冷房運転と同様の流れで冷媒回路10を循環するようになり、室外熱交換器24と室内熱交換器53a、53bとの間を接続する液冷媒管に存在するガス冷媒は、圧縮機21の運転による強制的な冷媒循環によって液冷媒管から除去される。また、室内熱交換器53a、53bと室外熱交換器24との間を接続するガス冷媒管に存在する液冷媒は、圧縮機21の運転による強制的な冷媒循環によってガス冷媒管から除去される。そうすると、自然循環式冷房運転時における冷媒循環の不良が改善された状態になり、その後に、ステップST4の処理に移行して、自然循環式冷房運転に復帰することができる。尚、この異相冷媒除去制御は、上記の液冷媒管からのガス冷媒の除去やガス冷媒管からの液冷媒の除去を行う効果が得られる時間であればよく、長くても10分以内、好ましくは3分以内の時間だけ行われる。
【0068】
このように、ここでは、特別な機器を追加することなく、自然循環式冷房運転時の冷媒循環の不良による冷房能力の低下を抑えることができる。
【0069】
しかも、ここでは、異相冷媒除去制御時における冷媒循環量が蒸気圧縮式冷房運転時の油戻し運転における冷媒循環量以上になるように、圧縮機21、室外流量調節弁26及び室内流量調節弁51a、51bを制御するようにしている。例えば、異相冷媒除去制御においても、圧縮機21については、インバータ制御等によって圧縮機用モータ22の回転数を油戻し運転以上の回転数まで増加させ、室外流量調節弁26及び室内流量調節弁51a、51bについては、油戻し運転以上の開度まで開けるようにする。
【0070】
これにより、ここでは、室外熱交換器24と室内熱交換器53a、53bとの間を接続する液冷媒管に存在するガス冷媒、及び/又は、室内熱交換器53a、53bと室外熱交換器24との間を接続するガス冷媒管に存在する液冷媒を短時間にかつ確実に除去することができる。
【0071】
(4)変形例1
上記の実施形態においては、圧縮機21を運転して行う蒸気圧縮式冷房運転と圧縮機21を停止した状態で行う自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことが可能な空気調和システムの例として、
図1〜
図6に示す空気調和システム1を挙げて説明した。
【0072】
しかし、蒸気圧縮式冷房運転と自然循環式冷房運転とを切り換えて室内の冷房を行うことが可能な空気調和システムは、上記の空気調和システム1の構成に限定されるものではない。
【0073】
例えば、
図7及び
図8に示す空気調和システム1のように、自然循環式冷房運転時における冷媒回路10内における冷媒の循環を補助するために、液ポンプ39を設けるようにしてもよい。ここでは、自然循環式冷房運転時におけるレシーバ25の出口側に位置する室外流量調節弁26をバイパスする調節弁バイパス冷媒管38を室外ユニット第2液冷媒管34bから分岐接続し、調節弁バイパス冷媒管38に液ポンプ39を設けている。液ポンプ39は、室外熱交換器24において放熱した液冷媒を搬送する機構である。液ポンプ39は、遠心式や容積式のポンプ要素(図示せず)を液ポンプ用モータ40によって回転駆動する構造になっている。
【0074】
これにより、
図9に示すように、自然循環式冷房運転時において、液ポンプ39を運転することによって、液冷媒とガス冷媒との密度差による冷媒の搬送力に加えて、液ポンプ39による搬送力が作用するようになる。すなわち、この場合には、液ポンプ39を運転することによって、室外熱交換器24、液ポンプ39、室内流量調節弁51a、51b、室内熱交換器53a、53bの順に冷媒を循環させる液ポンプ39の運転を伴う自然循環式冷房運転が行われることになる。そして、冷媒回路10内における冷媒の循環を一層安定的に行うことができる。
【0075】
また、このような液ポンプ39の運転を伴う自然循環式冷房運転時においても、上記の実施形態と同様に、
図6に示すように、室内温度Tr等に基づいて冷房能力の低下を検知した場合に、異相冷媒除去制御を行うことによって、特別な機器を追加することなく、自然循環式冷房運転時の冷媒循環の不良による冷房能力の低下を抑えることができる。
【0076】
また、液ポンプ39の運転を伴う自然循環式冷房運転時には、液冷媒とガス冷媒との密度差による冷媒の搬送力のみで自然循環式冷房運転を行っている場合とは異なり、
図10に示すように、液ポンプ39の消費電力Wpの変化に基づいて冷房能力の低下を検知した場合に、異相冷媒除去制御を行うことも可能である。
【0077】
すなわち、自然循環式冷房運転時において、冷媒循環の不良によって冷房能力が低下すると、冷媒回路10内における流路抵抗が増加してくることになる。そして、液ポンプ39の運転を伴う自然循環式冷房運転時においては、このような流路抵抗の増加は、液ポンプ39の消費電力Wpの増加として現れることになる。
【0078】
そこで、ここでは、上記のように、液ポンプ39の運転を伴う自然循環式冷房運転時において、液ポンプ39の消費電力Wpの変化に基づいて冷房能力の低下を検知して、異相冷媒除去制御を行うようにしている。例えば、
図10のステップST12において、所定時間内における液ポンプ39の消費電力Wpの増加量ΔWpが所定量ΔWps以上である場合には、冷房能力の低下が発生しているものとすることができる。
【0079】
このように、ここでは、液ポンプ39の運転を伴う自然循環式冷房運転時においては、流路抵抗の変化が現れやすい液ポンプ39の消費電力Wpの変化に基づいて冷媒循環の不良による冷房能力の低下を適切に検知して、異相冷媒除去制御を行うことができる。
【0080】
(5)変形例2
上記の実施形態及び変形例1では、
図6及び
図10に示すように、室内温度Tr等や液ポンプ39の消費電力に基づいて冷房能力の低下を検知した場合に、異相冷媒除去制御を行うようにしているため、異相冷媒除去制御を行う頻度を最小限に抑えることができる。すなわち、上記の実施形態及び変形例1における異相冷媒除去制御では、少しではあるが、冷媒循環の不良の発生及びこれによる冷房能力の低下を許容することになる。
【0081】
これに対して、冷媒循環の不良の発生を未然に防ぐためには、上記の実施形態及び変形例1のステップST2、ST12とは異なり、冷房能力の低下が発生するよりも前に異相冷媒除去制御を行う必要がある。
【0082】
そこで、ここでは、
図11のフローチャートのステップST13に示すように、自然循環式冷房運転時において、所定時間tsが経過する毎に、ステップST3の異相冷媒除去制御を行うようにしている。ここで、所定時間tsは、冷媒循環の不良が発生しない程度の短い時間に設定される。
【0083】
これにより、ここでは、冷房能力の低下が発生していることを検知したときに異相冷媒除去制御を行う場合に比べて、異相冷媒除去制御を行う頻度が多くなるが、冷媒循環の不良が発生することを未然に防ぐことができる。
【0084】
(6)変形例3
<A>
上記の実施形態及び変形例1、2の構成において、例えば、
図12及び
図13に示す空気調和システム1のように、液冷媒連絡管6を通じて室外ユニット2から室内ユニット5a、5bに液冷媒を送る際の液冷媒連絡管6内の液シール状態を良好に保つために、過冷却熱交換器41及び過冷却バイパス冷媒管42を設けるようにしてもよい。ここでは、過冷却熱交換器41は、蒸気圧縮式冷房運転時におけるレシーバ25の出口側に位置する室外ユニット第2液冷媒管34bの室外流量調節弁26と液冷媒連絡管6との間の部分に設けられており、液冷媒を液冷媒連絡管6に送る前にさらに放熱させる熱交換器である。過冷却熱交換器41は、ここでは、二重管型熱交換器やプレート型熱交換器からなり、放熱側流路41aを流れる冷媒と蒸発側流路41bを流れる冷媒とが熱交換するようになっている。放熱側流路41aには、室外ユニット第2液冷媒管34bを流れる冷媒が流れるようになっている。蒸発側流路41bには、過冷却バイパス冷媒管42を流れる冷媒が流れるようになっている。すなわち、過冷却熱交換器41は、過冷却バイパス冷媒管42を流れる冷媒によって室外ユニット第2液冷媒管34bを流れる冷媒の放熱を行わせる熱交換器となっている。過冷却バイパス冷媒管42は、室外ユニット第2液冷媒管34bを流れる冷媒の一部を分岐して吸入冷媒管28に送るための冷媒管である。そして、過冷却バイパス冷媒管42には、過冷却熱交換器41の蒸発側流路41bの入口寄りの部分に、過冷却流量調節弁43が設けられている。過冷却流量調節弁43は、過冷却バイパス冷媒管42を流れる冷媒の流量を調節する弁である。
【0085】
これにより、蒸気圧縮式冷房運転時において、過冷却流量調節弁43の開度制御を行うことによって、室外ユニット第2液冷媒管34bを流れる液冷媒をさらに冷却した後に液冷媒連絡管6に送ることができる。そして、液冷媒連絡管6内の液シール状態を良好に保ちつつ、液冷媒連絡管6を通じて、室外ユニット2から室内ユニット5a、5bに液冷媒を送ることができる。
【0086】
また、この場合においても、上記の実施形態及び変形例1、2と同様に、自然循環式冷房運転時において、異相冷媒除去制御を行うことによって、特別な機器を追加することなく、自然循環式冷房運転時の冷媒循環の不良による冷房能力の低下を抑えることができる。
【0087】
<B>
また、例えば、ここでは図示しないが、冷暖切換機構23を省略して、吐出冷媒管29と室外ユニット第1ガス冷媒管32とを接続し、かつ、室外ユニット第2ガス冷媒管33と吸入冷媒管28とを接続することによって、冷房専用の空気調和システムにしてもよい。
【0088】
この場合においても、上記の実施形態及び変形例1、2と同様に、自然循環式冷房運転時において、異相冷媒除去制御を行うことによって、特別な機器を追加することなく、自然循環式冷房運転時の冷媒循環の不良による冷房能力の低下を抑えることができる。