特許第6115172号(P6115172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115172
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20170410BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H01L23/28 K
   H01L25/04 C
   H01L23/50 Y
   H01L23/04 E
   H01L23/48 G
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-27960(P2013-27960)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-157925(P2014-157925A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】傳田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】関 知則
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠彦
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−022811(JP,A)
【文献】 特開2000−077602(JP,A)
【文献】 特開平11−204724(JP,A)
【文献】 実開平07−010947(JP,U)
【文献】 特開2008−252055(JP,A)
【文献】 特開2000−208655(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0213553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00 − 23/10
H01L 23/28 − 23/31
H01L 23/48
H01L 23/50
H01L 25/00 − 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一個の半導体素子が搭載された絶縁回路基板と、
該絶縁回路基板が取り付けられた底面部及び該底面部の周りを囲む側面部を有する樹脂ケースと、
該樹脂ケースと一体的に成型され、該樹脂ケース内の底面部の表面に位置するように該絶縁回路基板の周囲に並列に設けられるとともに該樹脂ケース内から樹脂ケース外へ前記側面部を貫通して延びるリードと、
該樹脂ケース内に充填された封止樹脂と、
を備え、
前記リードの上面と前記底面部の表面とが同一面になっており、前記底面部と前記側面部との境に沿って、該リードの両側に、それぞれ凹部が形成され、前記凹部に前記封止樹脂が入り込み、固化していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
少なくとも一個の半導体素子が搭載される絶縁回路基板と、
該絶縁回路基板が取り付けられる底面部及び該底面部の周りを囲む側面部を有する樹脂ケースと、
該樹脂ケースと一体的に成型され、該樹脂ケース内の底面部の表面と同一平面上に位置するように該絶縁回路基板の周囲に並列に設けられるとともに該樹脂ケース内から樹脂ケース外へ前記側面部を貫通して延びるリードと、
該樹脂ケース内に充填される封止樹脂と、
を備え、
前記リードの上面と前記底面部の表面とが同一面になっており、前記底面部と前記側面部との境に沿って、該リードの両側に、それぞれ凹部が形成され、前記凹部に前記封止樹脂が入り込み、固化していて、かつ、該凹部とは別の位置に該リードの延伸方向に沿って係止部材が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記係止部材が、前記リードの側部から該リードの上面にかけて形成された突起物である請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記係止部材が、前記樹脂ケースと同一材料からなり、該樹脂ケースと一体成型されてなる請求項2又は3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記樹脂ケース内の底面部の周縁に沿って設けられた凹部とは別の位置で、前記リードの延伸方向に沿って側部に凹部が形成されている請求項1〜4のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記リードの側部に形成された凹部が、並列に延びる複数のリードの延伸方向に沿って千鳥配置になる請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記リードの側部に形成された凹部が、成型金型のピン跡である請求項5記載の半導体装置。
【請求項8】
前記リードが制御回路チップが搭載される部分を含み、当該制御回路チップが搭載された部分のリードの幅よりも当該部分の間のリードの幅が狭い請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記リードが、延伸方向に垂直な断面において、上辺が下辺よりも小さい台形形状を有し、この上辺を樹脂ケースの底面部の表面に位置させてなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記樹脂ケースが、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂から選ばれる1種の樹脂よりなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記封止樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂またはウレタン樹脂からなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。特に半導体素子を収容する樹脂ケース内に、リードが当該樹脂ケースと一体的に設けられているものについて、信頼性を向上させた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等を制御する半導体装置として、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated GateBipolar Transistor)及びFWD(フリーホイーリングダイオード;FreeWheeling Diode)等の複数のパワー半導体素子が樹脂ケースに収容された半導体モジュールが知られている。
【0003】
この半導体モジュールの一例では、パワー半導体素子が、絶縁回路基板の表面の導電層により形成された電気回路に半田を介して電気的に接続されるとともに、樹脂ケース内にリードがトランスファー成型によって樹脂ケースと一体的に設けられている。このリードの一部は、樹脂ケースの側面部を通して樹脂ケースの外まで延出し、外部端子と接続している。樹脂ケース内に収容された絶縁回路基板の電気回路やパワー半導体素子が、樹脂ケース内においてボンディングワイヤを介してリードと電気的に接続される。また、ボンディングワイヤにより配線されている樹脂ケース内には、封止樹脂が注入されていて、この封止樹脂により、樹脂ケース内に水分等が浸入するのを防止し、パワー半導体素子等を保護している。
【0004】
樹脂ケースは、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、ポリアミド樹脂(PA樹脂)又はアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)等からなり、リードは銅等の導電性の薄板又はこれに金属めっきをしてなるものである。樹脂ケースの材質とリードの材質とを密着させるのは容易でない。したがって、トランスファー成型によって樹脂ケースと一体成型されたリードは、当該樹脂ケースとの間に微小な隙間が生じることがある。この隙間が、樹脂ケース内側から外側まで延出するリードに沿って形成されていると、外部から樹脂ケース内に水分が浸入するおそれがあり、半導体モジュールの信頼性の低下を招く。
【0005】
また、樹脂ケースとリードとを密着させることが容易でない故に、リードと樹脂ケースとの間に微小な隙間が生じていると、このリードにボンディングワイヤを超音波ツールによって接合する際に、良好な接合が難しくなる。
【0006】
従来の樹脂封止型半導体装置として、絶縁樹脂パッケージと金属支持板界面における隙間から水分が浸入をするのを防止するために、金属支持板に環状溝部が形成され、かつ、この環状溝部の入口が底辺部より短い形状である半導体装置がある(特許文献1)。また、リードフレームと封止樹脂との密着性を向上させるために、リードフレーム表面に、結晶凹凸が形成されるような銀めっき被膜を設けた半導体装置がある(特許文献2)。更に、樹脂ケースに設けられた内部端子の側面から上面にかけて、樹脂ケースと一体成形された突起部で挟みこんで当該内部端子を固定することにより、ボンディング時の信頼性を向上させた半導体装置がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−236048号公報
【特許文献2】特開2010−199166号公報
【特許文献3】特開2000−332179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された半導体装置は、半導体素子が搭載された金属支持板と絶縁樹脂パッケージとの間の界面の密着性を向上させようとするものであって、樹脂ケースに一体的に設けられたリードと当該樹脂ケースとの隙間からの水分浸入を防止するものではない。また、特許文献2に記載されたようにリードフレームの表面を粗面化めっきしても、樹脂ケースに一体的に設けられたリードと当該樹脂ケースとの隙間からの水分浸入を防止し、また、リードと樹脂ケースとの密着性を向上させることは難しかった。さらに、特許文献3に記載された半導体装置は、樹脂ケースに一体的に成型されたリードと当該樹脂ケースとの隙間からの水分浸入を防止することは容易でなかった。
【0009】
本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、樹脂ケースと一体的に成型されてリードが樹脂ケース内に設けられた半導体装置において、リードと樹脂ケースとの隙間からの水分浸入を防止して、これにより半導体装置の信頼性を向上させることのできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために以下のような半導体装置が提供される。
この半導体装置は、少なくとも一個の半導体素子が搭載された絶縁回路基板と、該絶縁回路基板が取り付けられた底面部及び該底面部の周りを囲む側面部を有する樹脂ケースと、該樹脂ケースと一体的に成型され、該樹脂ケース内の底面部の表面に位置するように該絶縁回路基板の周囲に並列に設けられるとともに、該樹脂ケース内から樹脂ケース外へ前記側面部を貫通して延びるリードと、該樹脂ケース内に充填された封止樹脂と、を備え、前記リードの上面と前記底面部の表面とが同一面になっており、前記底面部と前記側面部との境に沿って、該リードの両側に、それぞれ凹部が形成され、前記凹部に前記封止樹脂が入り込み、固化している。
【0011】
この半導体装置の別の態様は、少なくとも一個の半導体素子が搭載される絶縁回路基板と、該絶縁回路基板が取り付けられる底面部及び該底面部の周りを囲む側面部を有する樹脂ケースと、該樹脂ケースと一体的に成型され、該樹脂ケース内の底面部の表面と同一平面上に位置するように該絶縁回路基板の周囲に並列に設けられるとともに、該樹脂ケース内から樹脂ケース外へ前記側面部を貫通して延びるリードと、該樹脂ケース内に充填される封止樹脂と、を備え、前記リードの上面と前記底面部の表面とが同一面になっており、前記底面部と前記側面部との境に沿って、該リードの両側に、それぞれ凹部が形成され、前記凹部に前記封止樹脂が入り込み、固化していて、かつ、該凹部とは別の位置に該リードの延伸方向に沿って係止部材が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂ケース内の底面部の周縁に沿って、リードの両側に、凹部が形成されていることから、この凹部に封止樹脂が入り込むことにより、樹脂ケースと封止樹脂との密着性を向上させることができる。これにより樹脂ケースの外部から内部へ、リードと樹脂ケースとの隙間を通して水分が浸入することを防止することができ、ひいては半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の半導体装置の一実施形態の平面図である。
図2図1のII‐II線で切断した断面図である。
図3図1の半導体装置に用いられる樹脂ケースとリードフレームの平面図である。
図4】係止部材の説明図である。
図5】係止部材の他の例の説明図である。
図6図1のVI部分の拡大図である。
図7図1のVII部分の拡大図である。
図8】リードの模式的な断面図である。
図9】リード及びその周囲の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の半導体装置の実施形態を、図面を用いて具体的に説明する。
本発明の一実施形態の半導体装置10を図1に平面図で、図2図1のII−II線で切断した断面図で示す。本発明の一実施形態の半導体装置10は、パワー半導体モジュールとして構成されたものであり、複数の半導体素子11A、11Bが、絶縁回路基板12上に搭載されている。半導体素子11A、11Bは、それぞれIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ;Insulated Gate Bipolar Transistor)及びFWD(フリーホイーリングダイオード;Free Wheeling Diode)である。
【0015】
絶縁回路基板12は、図2の断面図に示されるように絶縁層12aと、絶縁層12aの一方の面及び他方の面にそれぞれ形成された導体層12b、12cとからなる。半導体素子11A、11Bは、回路パターンが形成された導体層12bと半田で電気的に接続されて、インバータ回路の主回路として例えばU相、V相、W相のそれぞれ上アーム及び下アームを構成している。
【0016】
半導体素子11A、11Bが搭載された絶縁回路基板12は、樹脂ケース13に収容されている。樹脂ケース13内には、リード14が設けられている。このリード14に、半導体素子11A、11Bや絶縁回路基板12の導体層12bが、ボンディングワイヤによって電気的に接続されている。図1図2では、本発明の理解を容易にするために、ボンディングワイヤの記載を省略している。
このリード14は、金型を用いたトランスファー成型によって樹脂ケース13内の底面部13aの表面と同一平面上に位置するように樹脂ケース13と一体的に成型されている。図3に、リードフレーム15を一体成型された樹脂ケース13を示す。リードフレーム15のリード14の一部は樹脂ケース13の側面部13bを貫通して樹脂ケース13内から樹脂ケース13外まで延出している。リードフレーム15は金型にセットされ、トランスファー成型により樹脂ケース13と一体成型される。リードフレーム15のタイバー15aは、成型後に切除される。
【0017】
樹脂ケース13は、底面部13aと、この底面部13aの周りを囲む側面部13bとを有する概略直方体の箱型形状を有している。樹脂ケース13は、好適にはポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、ポリアミド樹脂(PA樹脂)及びアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)から選ばれる1種の樹脂よりなる。樹脂ケース13の底面部13aには開口部13cが設けられていて(図3参照)、この開口部13cに絶縁回路基板12が緊密に取り付けられている。
また、半導体素子11A、11Bにより構成される主回路を制御するための制御回路チップ16A、16Bがリード14上に設けられている。
【0018】
また、ボンディングワイヤが配線された後の樹脂ケース13内に、図2の断面図に示すようにエポキシ樹脂、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等からなる封止樹脂17が注入、固化されて、この樹脂ケース13内の半導体チップ11A、11B、リード14や制御回路チップ16A、16B等を保護している。なお、図1では、本発明の理解を容易にするために、封止樹脂17を除いた樹脂ケース13の内部を図示している。
【0019】
本実施形態の半導体装置10は、樹脂ケース13内の底面部13aの周縁に沿って、リード14の少なくとも一方の側、好ましくは両側に、凹部18が形成されている。この凹部18は、トランスファー成型によって樹脂ケース13とリード14とを一体的に成型する際に用いられる金型に、当該凹部に対応する凸部を設けることで形成することができる。
【0020】
樹脂ケース13内の底面部13aの周縁、好ましくは底面部13aと側面部13bの境に沿って、リード14の両側に、凹部18が形成されていることにより、リード14と樹脂ケース13との間の隙間を小さくすることができる。この理由を説明すると、リード14と樹脂ケース13とを密着させることは容易でないのに対して、樹脂ケース13と封止樹脂17とは、密着性が良好である。そこで、リード14の表面と同一平面になるように成型された、樹脂ケース13の底面部13aにおいて、リード14の両側に凹部18を形成することにより、樹脂ケース13と封止樹脂17との接触面積が、凹部18を形成しない場合に比べて増加するため、両者が強固に密着する。特にリード14の両側に凹部を形成しているため、このリード14の両側部の密着性が向上することから、リード14と樹脂ケース13との隙間を減少させることができる。更に、凹部18が、樹脂ケース13内の底面部の周縁に沿って形成されていることにより、樹脂ケース内13内の絶縁回路基板12から離れた位置で水分の浸入を防止することができる。
【0021】
以上のことから、樹脂ケース13とリード14との隙間を通して樹脂ケース13の外部から樹脂ケース13内に水分が浸入するのを効果的に防止することができる。
【0022】
凹部18の深さは、樹脂ケース13の大きさ等にもよるが、一例では0.3〜0.5mm程度とすることができる。凹部18の幅は、1.0mm程度とすることができる。
【0023】
次に本発明の半導体装置の別の実施形態について説明する。本実施形態では、リード14に沿って前述した凹部18を具備するとともに、図1〜3に示すように、凹部18とは別の位置に、リード14の係止部材19が設けられている。この係止部材19の拡大平面図を図4(a)に、拡大側面図を図4(b)に示す。係止部材19は、図4に示した例では、リード14の側部からリード14の上面にかけて形成された突起物であり、リード14を側面から挟むようにしてリード14を係止する。係止部材19は、樹脂ケース13と同一材料からなり、樹脂ケース13の底面部13aと一体的に形成されている。係止部材19は、樹脂ケース13とリード14とをトランスファー成型によって一体的に形成する際に用いられる金型に、当該係止部材19に対応する凹部を設けることによって、当該トランスファー成型によって形成することができる。
【0024】
係止部材19が設けられる位置は、リード14の浮きを防止する観点からは、リード14の延伸方向先端の近くに設けることが好ましいが、リード14にボンディングワイヤを接合する際に用いられる超音波ツールと干渉しない位置とするのが好ましい。また、係止部材19は概略円柱形状であって、その円柱の径及びリード表面からの高さは、リード14の幅や厚さ、リード14の間隔等にもよるが、それぞれ1mm以下程度とすることができる。
【0025】
係止部材19は、一つのリード14の両側に、一つずつが設けられる例に限られない。一つのリード14の延伸方向に沿って、複数個の係止部材19を設けることができる。
【0026】
係止部材の変形例を図5に平面図で示す。図5(a)に示した係止部材19Aは、リード14の幅方向にわたって覆うように形成されてなる係止部材である。図5(b)に示した係止部材19Bは、複数のリード14の幅方向にわたって覆うように形成されてなる係止部材である。
【0027】
上述の係止部材19、19A、19Bにより、リード14を樹脂ケース13の底面部13aに密着させることができ、よって半導体装置の信頼性を高めることができる。また、ワイヤボンディング時にリード14の浮きを防止し、ひいては、ボンディング時の信頼性(ワイヤボンディング性)を向上させることができる。
【0028】
次に本発明の半導体装置の別の実施形態について説明する。本実施形態では、図1、3に示すように、樹脂ケース13内の底面部13aの周縁に沿って設けられた凹部18とは別の位置で、具体的には、リード14の延伸方向の中間地点やリードの先端部に、リード14の側部に沿って凹部20が設けられている。凹部20は、トランスファー成型によって樹脂ケース13とリード14とを一体的に成型する際に用いられる金型に、当該凹部20に対応する凸部を形成しておくことで形成することができる。
【0029】
これらの凹部20が形成されることにより、樹脂ケース13と封止樹脂17との接触面積が、凹部20を形成しない場合に比べて増加するため、リード14の近傍で樹脂ケース13と封止樹脂17とが強固に密着することから、凹部20に近接する部分のリード14と樹脂ケース13との隙間を減少させることができる。ひいては、その位置における水分の浸入を防止することができる。つまり、凹部18と凹部20とが形成されることにより、二重に水分の浸入を防止することが可能になる。
【0030】
凹部20が設けられる位置の好適例として、図1のVI部分近傍の拡大図を図6に示す。図6では、樹脂ケース13の底面部13a上で複数のリード14が並列に延びている。これらのリード14の近傍に設ける凹部20は、リード14の幅方向に揃えた配置とせず、千鳥配置にしている。千鳥配置にすることにより、リード14と樹脂ケース13との密着性を、より向上させることができる。
【0031】
凹部20は、トランスファー成型で樹脂ケース13を成型する際に、リード14を位置合わせするために金型に設けられるピンの跡として樹脂ケース13内に形成される凹部を、そのまま用いることができる。この場合は、金型に、凹部20を設けるための凸部を通常のピンとは別に形成する手間、コストを要しない。
【0032】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
図7に、図1のVII部分の拡大図を示す。リード14上に、複数の制御回路チップ16Aが隣接して設けられている場合に、これらの制御回路チップ16の間の部分のリード14の幅は、制御回路チップ16が搭載されている部分のリード14の幅よりも狭くなっている。制御回路チップ16間のリード14の幅が狭くなっていることにより、リード14の幅を狭くしない場合に比べて、樹脂ケース13の底面部13aとリード14との密着性を向上させることができ、ひいては半導体装置10の信頼性を向上させることができる。
【0033】
次に、本発明の別の実施形態について、図8を用いて説明する。
図8は、リード14の延伸方向に垂直な方向で切断した模式的な断面図である。リード14は金属箔を打ち抜き加工することによって製造される。この打ち抜き加工によって、リード14は台形断面を有している。上辺が下辺よりも小さい台形断面のリード14の上辺を樹脂ケース13の底面部13aの表面に位置させている。このことによりリード14が樹脂ケース13の底面部13aから抜け難くなり、リード14と樹脂ケース13との密着性を向上させることができる。
また、図9は、樹脂ケース13内の底面部13aの周縁に沿って形成した凹部18を含むように、リード14の延伸方向に垂直な方向で切断した模式的な断面図である。リード14は同様に台形断面を有している。
図9(a)に示すように、リード14の両側の傾斜面はリード14と凹部18の間の樹脂ケース13により覆われている。樹脂ケース13の樹脂を挟んで、封止樹脂17をリード14の側面に密着させることにより、リード14と樹脂ケース13のすき間を通した水分の侵入をさらに防止できる。封止樹脂17とリード14の密着性が小さいときに効果的である。なお、図9(a)では、一つのリード14の両側に接するように2つの凹部18が形成され、隣り合うリード14との間で一方の凹部18を共用している。図9(b)に示すように、リード14ごとに、リード14の両側に接するように凹部18を形成し、リード14の間に複数の凹部18が配置されるようにしてもよい。隣り合うリード14が離れている場合に、樹脂ケース13と封止樹脂17の密着性を向上させることができる。また、図9では、凹部18はリード14の両側に接するように形成されているが、リード14の少なくとも一方の側にのみ接するように配置されてもよい。
【実施例】
【0034】
図1、2に示した半導体装置10(本発明例)と、凹部18及び係止部材19を有しない以外は半導体装置10と同一構成になる半導体装置(比較例)とについて樹脂密着性評価及びワイヤボンディング性を調べた。樹脂密着性評価は、半導体装置10についてプレッシャーブッカーテストを130℃、湿度85%、圧力0.23MPaの試験条件で96時間行い、この時間経過後に、樹脂剥離の有無によって評価した。この樹脂剥離の有無は、超音波探傷法により、樹脂界面の密着状態を評価した。また、ワイヤボンディング性は、リード14にワイヤボンディングを行った後のワイヤ接合が良好な製品の割合によって評価した。
【0035】
樹脂密着性評価の結果、樹脂ケース13内の底面部13aの周縁に沿って、リード14の両側に、凹部18を形成した本発明例は、樹脂剥離がなかったのに対して、凹部18を形成しなかった比較例は、樹脂剥離が見られた。
【0036】
ワイヤボンディング性の評価の結果、係止部材19を有する本発明例は、ワイヤ接合が良好な製品の割合が100%であったのに対して、係止部材19を有しない比較例は、ワイヤ接合が良好な製品の割合が95%であった。
【符号の説明】
【0037】
10 半導体装置
11A、11B 半導体素子
12 絶縁回路基板
13 樹脂ケース
14 リード
15 リードフレーム
16A、16B 制御回路チップ
17 封止樹脂
18、20 凹部
19 係止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9