特許第6115198号(P6115198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000002
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000003
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000004
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000005
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000006
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000007
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000008
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000009
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000010
  • 特許6115198-電磁継電器およびその製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115198
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】電磁継電器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/44 20060101AFI20170410BHJP
   H01H 49/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H01H50/44 R
   H01H49/00 L
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-47072(P2013-47072)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-175172(P2014-175172A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100103012
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】三村 義明
(72)【発明者】
【氏名】真田 博紀
(72)【発明者】
【氏名】山内 秀人
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−315448(JP,A)
【文献】 特開平08−287769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/44
H01H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石ブロックの励磁,消磁に基づいて回動する可動鉄片で可動接触片を回動し、前記可動接触片に設けた可動接点に対向する固定接点に、前記可動接点を接離する電磁継電器であって、
1つの前記固定接点を、前記電磁石ブロックのスプールに圧入するために固定接点端子から平行に延在した一対の圧入部の間に配置するとともに、
前記固定接点端子の圧入部を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入するときの圧入量によって動作特性を調整可能としたことを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記可動接点に対して、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入するときの圧入量によって動作特性を調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記可動接点を間にして対向する一対の固定接点のうち、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入するときの圧入量によって動作特性を調整可能としたことを特徴とする請求項2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記可動接点を間にして対向する一対の固定接点のうち、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を常閉固定接点とし、前記常閉固定接点を備えた常閉固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入し、位置決めしながら動作特性を調整できることを特徴とする請求項3に記載の電磁継電器の組立構造。
【請求項5】
前記可動接点に対して、前記電磁石ブロック側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入するときの圧入量によって動作特性を調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記可動接点を間にして対向する一対の固定接点のうち、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を常閉固定接点とし、前記常閉固定接点を備えた常閉固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入し、位置決めしながら動作特性を調整できることを特徴とする請求項5に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記可動接点を間にして対向する一対の固定接点のうち、前記電磁石ブロック側に位置する固定接点を常開固定接点とし、前記常開固定接点を備えた常開固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入し、位置決めしながら動作特性を調整できることを特徴とする請求項6に記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記固定接点端子が、両側縁部を同一方向に折り曲げて形成した角部から前記圧入部をそれぞれ切り出したことを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項9】
電磁石ブロックの励磁,消磁に基づいて回動する可動鉄片で可動接触片を回動し、前記可動接触片に設けた可動接点に対向する固定接点に、前記可動接点を接離する電磁継電器の製造方法であって、
1つの前記固定接点を、前記電磁石ブロックのスプールに圧入するために固定接点端子から平行に延在した一対の圧入部の間に配置するとともに、
前記固定接点端子の圧入部を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入する時の圧入量によって動作特性を調整することを特徴とする電磁継電器の製造方法。
【請求項10】
前記可動接点に対して、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入する時の圧入量によって動作特性を調整することを特徴とする請求項9に記載の電磁継電器の製造方法。
【請求項11】
前記可動接点に対して、前記電磁石ブロック側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入する時の圧入量によって動作特性を調整することを特徴とする請求項9に記載の電磁継電器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁継電器、特に、固定接点端子の動作特性の調整作業を行うことができる電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁継電器としては、例えば、特許文献1の図1に示すように、両端に第1,第2フランジ12,13を有するコイル本体1のコイル管11に、芯16を側方から挿通するとともに、前記第1フランジ12側に第1,第2固定コンタクト支持部3,4を上方から組み付けた電磁継電器がある。そして、前述の電磁継電器では、前記芯16に吸着,開離する電機子22を介してコンタクトばね23が回動し、接点を開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−521273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の電磁継電器では、部品精度,組立精度のバラツキを解消するために行う動作特性の調整には、前記第1,第2固定コンタクト支持部3,4の上端部を塑性変形させる必要がある。このため、動作特性の調整に手間がかかり、生産性が低いだけでなく、製品の歩留まりが悪いという問題点がある。
本発明に係る電磁継電器は、前記問題点に鑑み、動作特性の調整が容易で生産性が高く、歩留まりの良い電磁継電器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電磁継電器は、前記課題を解決すべく、電磁石ブロックの励磁,消磁に基づいて回動する可動鉄片で可動接触片を回動し、前記可動接触片に設けた可動接点に対向する固定接点に、前記可動接点を接離する電磁継電器であって、
1つの前記固定接点を、前記電磁石ブロックのスプールに圧入するために固定接点端子から平行に延在した一対の圧入部の間に配置するとともに、
前記固定接点端子の圧入部を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入するときの圧入量によって動作特性を調整可能とした構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、固定接点端子の組立作業と動作特性の調整作業とを同一作業で進めることができるので、生産性が高いとともに、歩留まりの良い電磁継電器が得られる。なお、圧入量とは、圧入時の押し込み距離を意味する。
また、前記固定接点が一対の圧入部によって正確かつ強固に支持されるので、位置決め精度が高く、動作特性にバラツキのない電磁継電器が得られる。
【0007】
本発明の実施形態としては、前記可動接点に対して、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入するときの圧入量によって動作特性を調整可能とした構成としてもよい。
本実施形態によれば、電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点端子を電磁石ブロックのスプールに圧入することにより、固定接点端子の組立作業と動作特性の調整作業とを同一作業で進めることができ、生産性が高く歩留まりの良い電磁継電器が得られる。
【0008】
本発明の他の実施形態としては、前記可動接点を間にして対向する一対の固定接点のうち、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入するときの圧入量によって動作特性を調整可能とした構成としてもよい。
本実施形態によれば、前記固定接点端子を電磁石ブロックのスプールに圧入することにより、前記固定接点端子の組立作業と動作特性の調整作業とを同一作業で進めることができ、生産性が高く歩留まりの良い電磁継電器が得られる。
【0009】
また、本発明の別の実施形態としては、前記可動接点を間にして対向する一対の固定接点のうち、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を常閉固定接点とし、前記常閉固定接点を備えた常閉固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入し、位置決めしながら動作特性を調整できる構成としてもよい。
本実施形態によれば、前記常閉固定接点端子を電磁石ブロックのスプールに圧入することにより、前記常閉固定接点端子の組立作業と動作特性の調整作業とを同一作業で進めることができ、生産性が高く歩留まりの良い電磁継電器が得られる。
【0010】
本発明の実施形態としては、前記可動接点に対して、前記電磁石ブロック側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入するときの圧入量によって動作特性を調整可能とした構成としてもよい。
本実施形態によれば、前記固定接点端子を電磁石ブロックのスプールに圧入することにより、前記固定接点端子の組立作業と動作特性の調整作業とを同一作業で進めることができ、生産性が高く歩留まりの良い電磁継電器が得られる。
【0011】
また、本発明の他の実施形態としては、前記可動接点を間にして対向する一対の固定接点のうち、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を常閉固定接点とし、前記常閉固定接点を備えた常閉固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入し、位置決めしながら動作特性を調整できる構成としてもよい。
本実施形態によれば、前記常閉固定接点端子を電磁石ブロックのスプールに圧入することにより、前記常閉固定接点端子の組立作業と動作特性の調整作業とを同一作業で進めることができ、生産性が高く歩留まりの良い電磁継電器が得られる。
【0012】
さらに、本発明の別の実施形態としては、前記可動接点を間にして対向する一対の固定接点のうち、前記電磁石ブロック側に位置する固定接点を常開固定接点とし、前記常開固定接点を備えた常開固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入し、位置決めしながら動作特性を調整できる構成としてもよい。
本実施形態によれば、前記常開固定接点端子を電磁石ブロックのスプールに圧入することにより、前記常開固定接点端子の組立作業と動作特性の調整作業とを同一作業で進めることができ、生産性が高く歩留まりの良い電磁継電器が得られる。
【0013】
本発明の異なる実施形態としては、前記固定接点端子が、両側縁部を同一方向に折り曲げて形成した角部から前記圧入部をそれぞれ切り出してもよい。
【0014】
本実施形態によれば、前記固定接点端子の両側縁部を折り曲げて形成した角部から圧入部を切り出してある。このため、材料の歩留まりが良いだけでなく、前記固定接点端子の剛性が高く、弾性変形しにくいので、支持強度、位置決め精度が高く、動作特性にバラツキのない電磁継電器が得られる。
【0015】
本発明に係る電磁継電器の製造方法は、前記課題を解決すべく、電磁石ブロックの励磁,消磁に基づいて回動する可動鉄片で可動接触片を回動し、前記可動接触片に設けた可動接点に対向する固定接点に、前記可動接点を接離する電磁継電器の製造方法であって、
1つの前記固定接点を、前記電磁石ブロックのスプールに圧入するために固定接点端子から平行に延在した一対の圧入部の間に配置するとともに、
前記固定接点端子の圧入部を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入する時の圧入量によって動作特性を調整する工程としてある。
本発明によれば、前記固定接点端子を電磁石ブロックのスプールに圧入することにより、前記固定接点端子の組立作業と動作特性の調整作業とを同一作業で進めることができ、生産性が高いとともに、歩留まりの良い電磁継電器の製造方法が得られる。
【0016】
本発明に係る実施形態としては、前記可動接点に対して、前記電磁石ブロックと反対側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入する時の圧入量によって動作特性を調整する工程としてもよい。
また、本発明に係る他の実施形態としては、前記可動接点に対して、前記電磁石ブロック側に位置する固定接点を備えた固定接点端子を、前記電磁石ブロックのスプールに前記可動接点の移動方向に沿って圧入する時の圧入量によって動作特性を調整する工程であってもよい。
本実施形態によれば、前記固定接点端子を電磁石ブロックのスプールに圧入することにより、前記固定接点端子の組立作業と動作特性の調整作業とを同一作業で進めることができ、生産性が高く歩留まりの良い電磁継電器の製造方法が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図A,Bは本発明に係る電磁継電器の第1実施形態を示す斜視図および異なる角度から視た斜視図である。
図2図1Aで示した電磁継電器の分解斜視図である。
図3図1Bで示した電磁継電器の分解斜視図である。
図4図A,Bは図1で示した電磁継電器の縦断面図および部分横断面図である。
図5図A,Bは図1で示したケースの組み付け状態を示す縦断面図である。
図6図A,Bは図1で示した電磁継電器の動作前後を示す縦断面図である。
図7図A,Bは図2,3で示したベースの斜視図および異なる角度から視た斜視図である。
図8図A,Bは図2,3で示したスプールの斜視図および異なる角度から視た斜視図である。
図9図2,3で示した常開固定接点端子および常閉固定接点端子の斜視図である。
図10図A,Bは図2,3で示したケースの底面図および縦断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る電磁継電器の実施形態を図1ないし図10の添付図面に従って説明する。
本実施形態に係る電磁継電器は、図2に示すように、ベース10と、前記ベース10に並設される一対の電磁石ブロック20と、前記ベース10および前記電磁石ブロック20に組み付けられる接点機構部40と、ケース60とから構成されている。
【0019】
前記ベース10は、図7Aに示すように、その上面中央部に突設された仕切り部11を間にして一対の位置決め用凹部12,12が形成されている。また、前記ベース10は、対向する両側縁部のうち、一方側の縁部に、後述するスプール21のシール止め用リブ23bを嵌合する一対の切り欠き部13,13を並設する。また、前記ベース10は、その他方側の縁部に、後述する常開固定接点端子50の端子部53および常閉固定接点端子55の端子部58を嵌合する切り欠き部14,15を交互に並設してある。さらに、前記ベース10は、図7Bに示すように、その裏面の外周縁部に沿って連続するテーパ面16を形成してある。
【0020】
前記電磁石ブロック20は、図2に示すように、スプール21の胴部22にコイル30を巻回するとともに、前記胴部22の貫通孔22aに断面略T字形状の鉄芯31を挿入し、突出する一端部を磁極部32とする一方、突出する他端部33を略L字形状のヨーク34の垂直部35にカシメ固定したものである。前記垂直部35は、その外向面にシール止め用突部35aを突設してあるとともに、その下端縁部から面取部36a(図4,5)を備えた可動接点用端子部36を下方側に延在している。
【0021】
特に、前記スプール21は、図8に示すように、前記胴部22の両端に鍔部23,24を有し、一方の鍔部23の外向面に前記ヨーク34を嵌合する凹部23aを形成するとともに、その下端縁部にシール止め用リブ23bを延在してある(図8B)。また、前記鍔部23の側端面にはコイル端子37を圧入できる圧入溝23cを設けてある(図4A)。さらに、前記スプール21は、図8Aに示すように、他方の鍔部24の外向面の両側縁部に圧入孔24a,24bを上下に設けてある。また、前記鍔部24は、その側端縁部のうち、前記圧入孔24aに隣接する位置からシール止め用リブ24cを側方に延在してある。そして、前記鍔部23,24の対向面の上方角部には係合用受け部23d,24dをそれぞれ設けてある。
【0022】
接点機構部40は、図2に示すように、可動接触片41と、常開固定接点端子50と、常閉固定接点端子55とから構成されている。
前記可動接触片41は、略L字形状に屈曲した導電性板バネからなり、その一端部に可動接点42を有しているとともに、その垂直部に可動鉄片43をカシメ固定してある。そして、前記可動接触片41は、その他端部を前記ヨーク34の水平部にカシメ固定することにより、前記ヨーク34の水平部の先端縁部を支点として前記可動鉄片43および前記可動接触片41が回動可能に支持される。
【0023】
前記常開固定接点端子50は、図9に示すように、カシメ固定した常開固定接点51の両側に位置する両側縁部を平行に屈曲して平面略C字形状とし、その角部から圧入部52を切り出すとともに、その一方側の縁部から端子部53を下方側に延在してある。前記圧入部52は、前記スプール21の圧入孔24aに圧接する圧入受け部52aを上下に有するとともに、前記圧入受け部52aの基部に、前記圧入孔24aからの切り屑の迫り出しを防止する迫り出し防止用リブ52bを設けてある。また、前記圧入部52は、その両側面に圧入作業を容易にするためのテーパ面52cを形成してある。
【0024】
前記常閉固定接点端子55は、カシメ固定した常閉固定接点56の両側に位置する上方角部から一対の圧入部57を水平方向に平行に延在するとともに、その下方縁部の角部から端子部58を下方側に延在してある。前記圧入部57は、前記スプール21の圧入孔24bに圧接する圧入受け部57aを上下に有するとともに、前記圧入受け部57aの基部に、前記圧入孔24bからの切り屑の迫り出しを防止する迫り出し防止用リブ57bを設けてある。また、前記圧入部57は、その両側面に圧入作業を容易にするためのテーパ面57cを形成してある。
【0025】
前記ケース60は、図2に示すように、前記電磁石ブロック20および接点機構部40を組み込んだベース10に嵌合可能な箱形状を有しており、その上面隅部にガス抜き孔61を有している。また、前記ケース60は、図10に示すように、その対向する内側面の中央部に絶縁用リブ62を突設するとともに、前記絶縁用リブ62の基部に位置規制用突部63を設けてある。さらに、前記ケース60は、その天井面の対向する縁部に位置規制用突部である位置規制用突条64をそれぞれ突設してある。
【0026】
次に、前述の構成部品の組立て手順について説明する。
まず、スプール21の胴部22にコイル30を巻回するとともに、その引出線を前記鍔部23の圧入溝23cに圧入固定したコイル端子37のからげ部38にからげて半田付けした後、前記からげ部38を内側に折り曲げる。そして、前記スプール21の胴部22に設けた貫通孔22aに鉄芯31を挿入し、突出する他端部を前記ヨーク34の垂直部35にカシメ固定することにより、電磁石ブロック20が完成する。そして、前記ヨーク34の水平部に、可動鉄片43をカシメ固定した可動接触片41の他端部をカシメ固定する。さらに、前記電磁石ブロック20の前記鍔部24の外向面縁部に設けた圧入孔24aに常開固定接点端子50の圧入部52を鉄芯31の軸心に沿って圧入し、可動接点42を常開固定接点51に接離可能に配置する。このとき、圧入部52の圧入量によって常開固定接点端子50の常開固定接点51と可動接点42との接点間距離を調整できるので、動作電圧および復帰電圧などの動作特性を調整することが可能になる。
【0027】
ついで、前記ベース10の一対の位置決め用凹部12,12に、前記電磁石ブロック20,20を前記ベース10の上面に鉄芯31の軸心が平行となるようにそれぞれ位置決めする。そして、前記ベース10の切り欠き部13にスプール21のシール止め用リブ23bを嵌合するとともに、切り欠き部14,15に常開固定接点端子50および常閉固定接点端子55の端子部53,58をそれぞれ嵌合する(図1図4)。
【0028】
さらに、前記鍔部24の圧入孔24bに常閉固定接点端子55の圧入部57を鉄芯31の軸心に沿って圧入する。このときの前記圧入部57の圧入量によって、常閉固定接点端子55の常閉固定接点56と可動接点42との接点間距離を調整できるので、動作電圧および復帰電圧などの動作特性を調整することが可能となる。
【0029】
本実施形態によれば、スプール21の圧入孔24bに常閉固定接点端子55の圧入部57を圧入しつつ、動作特性を正確に調整できるので、組立作業,調整作業が容易になり、生産性および歩留まりが向上する。このため、内部構成部品に高い寸法精度を必要とせず、内部構成部品の製造が容易になる。なお、内部構成部品とは、スプールに巻回したコイル、鉄芯、ヨーク等の電磁石ブロックを構成する部品および可動接触片や固定接触片等の接点機構部を構成する部品をいう。
また、前記鍔部24の両側縁部に沿って上下に配置した圧入孔24a,24bに、圧入部52,57をそれぞれ圧入するので、常開固定接点端子50および常閉固定接点端子55の設置スペースを節約でき、床面積、特に横幅寸法の小さい電磁継電器が得られる。
なお、本実施形態では、電磁石ブロック20に近い側より、常開固定接点51、可動接点42、常閉固定接点56の順に接点を配置した構成としている(図6参照)が、常開固定接点と常閉固定接点との順序は入れ替えてもよく、また、いずれか一方の固定接点を省略してもよい。
【0030】
そして、前記ベース10にケース60を嵌合することにより、絶縁用リブ62で一対の電磁石ブロック20,20を仕切るとともに(図4B)、前記ケース60に設けた位置規制用突部63および位置規制用突条64が、前記鍔部23,24の係合用受け部23d,24dに係合し、位置規制する(図5)。
【0031】
本実施形態によれば、ベース10に電磁石ブロック20,20が所定の位置に正確に位置決めでき、動作特性のバラつきが小さい電磁継電器が得られる。
また、本実施形態によれば、図5Bに示すように、係合用受け部23d,24dが左右非対称となっており、不正な組立を防止できる構造となっている。
【0032】
なお、本実施形態では、前記鍔部23,24に計4ヶ所の係合受け部23d,24dを設ける場合について説明したが、少なくとも1ヶ所あればよく、2ヶ所あるいは3ヶ所であってもよい。特に、2ヶ所の係合受け部を設ける場合には、対角線上に配置することが好ましい。
【0033】
最後に、図1Bに示す前記ベース10の底面の周囲縁部に沿って設けたテーパ面16を介してシール材を注入,固化してシールする。
【0034】
本実施形態によれば、ベース10とケース60との隙間を、前記鍔部23,24に設けたシール止め用リブ23b,24cで封鎖している。また、ヨーク34の外向面に設けたシール止め用突部35aが前記ケース60の内側面に当接している。このため、シール材のケース60内への侵入を阻止でき、シール材が可動接触片41等の内部構成部品に付着することを防止できる。
【0035】
次に、本実施形態に係る電磁継電器の動作について説明する。
すなわち、図6Aに示すように、電磁石ブロック20のコイル30に電圧を印加する前には、可動接触片41のバネ力で可動接点42が常閉固定接点56に接触している。
そして、前記コイル30に電圧を印加して励磁することにより、前記可動接触片41のバネ力に抗し、可動鉄片43が鉄芯31の磁極部32に吸引されて回動する。このため、前記可動接点42が常閉固定接点56から開離して常開固定接点51に接触した後、前記可動鉄片43が前記鉄芯31の磁極部32に吸着する(図6B)。
ついで、前記コイル30に対する励磁を解除(消磁)すると、前記可動接触片41のバネ力によって可動接点42が常開固定接点51から開離し、可動鉄片43が逆方向に回動するとともに、可動接点42が常閉固定接点56に当接し、元の状態に復帰する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
前述の実施形態では、常開固定接点端子および常閉固定接点端子を備えた電磁継電器について説明したが、常開固定接点端子および常閉固定接点端子のいずれか一方を有する電磁継電器に適用してもよい。
また、一対の電磁石ブロックを設ける場合に限らず、1個の電磁石ブロックを設ける場合に適用してもよい。
さらに、前記電磁石ブロックの軸心は、前記ベースの上面に直交するように配置した電磁継電器に適用してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10:ベース
11:仕切り部
12:位置決め用凹部
13:切り欠き部
14,15:切り欠き部
16:テーパ面
20:電磁石ブロック
21:スプール
22:胴部
23,24:鍔部
23a:凹部
23b:シール止め用リブ
23c:圧入溝
23d:係合用受け部
24a,24b:圧入孔
24c:シール止め用リブ
24d:係合用受け部
30:コイル
31:鉄芯
32:磁極部
34:ヨーク
35:垂直部
35a:シール止め用突部
36:可動接点用端子部
40:接点機構部
41:可動接触片
42:可動接点
43:可動鉄片
50:常開固定接点端子
51:常開固定接点
52:圧入部
52a:圧入受け部
52b:迫り出し防止用リブ
52c:テーパ面
53:端子部
55:常閉固定接点端子
56:常閉固定接点
57:圧入部
57a:圧入受け部
57b:迫り出し防止用リブ
57c:テーパ面
58:端子部
60:ケース
61:ガス抜き孔
62:絶縁用リブ
63:位置規制用突部
64:位置規制用突条(位置規制用突部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10