(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロック部材の前記凹部からの離脱用の作動流体を当該凹部に導入する導入路を前記固定壁面に対する凹部底側の位置に開口させることで前記対向面を形成してある請求項3記載の弁開閉時期制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロック部材が固定壁面あるいは規制壁面に摺動移動しながら凹部から引退する場合は、ロック部材と一方の壁面との間に作用する摺動抵抗の大きさと、ロック部材と他方の壁面との間の摺動抵抗の大きさとが異なっていると、ロック部材の引退動作が円滑なものとならない。
例えば、ロック部材が摺動抵抗の大きい側の壁面と当接する場合には、ロック部材の引退速度が大きく減速されたり、場合によってはロック部材の引退動作が停止するおそれもある。
【0005】
このため、ロック部材の固定壁面あるいは規制壁面に対する摺動移動の円滑化を図るために、離脱用の作動流体圧を大きく設定したり、或いは、付勢部材の付勢力を小さく設定することが考えられる。
離脱用の作動流体圧を大きく設定すると、内燃機関が始動してから作動流体圧が設定圧に達するまでに要する時間が長くなり、ロック部材をタイミング良く凹部から引退させることができない。
一方、付勢部材の付勢力を小さく設定すると、ロック部材が凹部に入り込んで固定壁面に当接するまでに要する時間が長くなり、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相をタイミング良くロック位相に固定することができない。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、凹部に対するロック部材の突出引退動作をタイミング良く行えるようにしながら、ロック部材の引退動作を円滑にし得る弁開閉時期制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による弁開閉時期制御装置の特徴構成は、内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、前記駆動側回転体に内包され、前記駆動側回転体の内側表面との間に進角室及び遅角室となる空間を形成しつつ、前記駆動側回転体と同芯状に弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体とを備えると共に、前記駆動側回転体及び前記従動側回転体の何れか一方に形成された凹部と、前記駆動側回転体及び前記従動側回転体の何れか他方に設けられ、前記凹部に対して係合・離脱するロック部材と、前記ロック部材を前記凹部に対する係合方向に付勢する付勢部材と、を備え、
前記凹部は、幅広溝部と前記幅広溝部よりも前記ロック部材の係合方向の奥側にあって前記幅広溝部よりも幅の狭い幅狭溝部とを有し、前記凹部が、
前記幅広溝部および前記幅狭溝部の隣接する側面に形成され、前記駆動側回転体と前記従動側回転体とのロック位相から離れる側への相対回転範囲を前記ロック部材との当接で規制する規制壁面と、
前記幅狭溝部の側面に形成され、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相を前記ロック部材との当接でロック位相に固定する固定壁面と
を有し、前記ロック部材と前記規制壁面との当接面積を、前記ロック部材と前記固定壁面との当接面積以下に設定してある点にある。
【0008】
本構成の弁開閉時期制御装置は、前記ロック部材と前記規制壁面との当接面積を、前記ロック部材と前記固定壁面との当接面積以下に設定してある。
このため、ロック部材と規制壁面との間に作用する静止摩擦力や動摩擦力などに起因する摺動抵抗の大きさを、ロック部材と固定壁面との間に作用する動摩擦力などに起因する摺動抵抗の大きさ以下にすることができる。
【0009】
その結果、離脱用の作動流体圧を大きく設定したり、付勢部材の付勢力を小さく設定したりすることなく、ロック部材が固定壁面に対して摺動移動した後、ロック部材の規制壁面に対する移動が停止したり、移動速度が低下する現象を防止することができる。
したがって、本構成の弁開閉時期制御装置であれば、ロック部材を凹部から引退させる動作も、駆動側回転体と従動側回転体とをロック位相に固定する動作も、タイミング良く行えるようにしながら、ロック部材の凹部からの引退動作の円滑化を図ることができる。
【0010】
本発明の他の特徴構成は、前記ロック部材が前記駆動側回転体に設けられた板状の部材であり、前記凹部が前記従動側回転体に設けられており、前記規制壁面の面積を前記固定壁面の面積以下に設定してある点にある。
【0011】
本構成であれば、ロック部材の規制壁面に対する当接面の面積が、固定壁面に対する当接面の面積以下となるような特別な加工をロック部材に施すことなく、ロック部材と規制壁面との当接面積をロック部材と固定壁面との当接面積以下に設定することができる。
【0012】
本発明の他の特徴構成は、前記固定壁面の凹部底側に、前記固定壁面に当接している前記ロック部材が非接触で対向する対向面を形成してある点にある。
【0013】
本構成であれば、ロック部材と固定壁面との摺動抵抗の大きさが小さくなるように、ロック部材と固定壁面との当接面積を小さくしながら、ロック部材が凹部から不測に抜け出し難くなるように、ロック部材の凹部に対する入り込み深さを大きく確保して、ロック位相に安定的に維持することができる。
【0014】
本発明の他の特徴構成は、前記対向面を形成するのに、前記ロック部材の前記凹部からの離脱用の作動流体を当該凹部に導入する導入路を前記固定壁面に対する凹部底側の位置に開口させることができる。
【0015】
ロック部材を引退動作させるための導入路を凹部に形成する場合、この導入路の開口部にロック部材が当接することはない。よって、本構成のごとく、作動流体の導入路を固定壁面の底側に形成することで、ロック部材に非接触な対向面を固定壁面よりも凹部の底側に容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜
図5は、内燃機関Bに装備される本発明による弁開閉時期制御装置Aを示す。
弁開閉時期制御装置Aは、
図1〜
図3に示すように、内燃機関としての自動車用エンジンBのクランクシャフトB1と同期回転する駆動側回転体としての焼結金属やアルミ合金等の金属製のハウジング1と、ハウジング1に内包され、ハウジング1と同芯状に弁開閉用のカムシャフトB2と一体回転する従動側回転体としての焼結金属製のインナロータ2とを備えている。
【0018】
ハウジング1は、フロントプレート1aと、タイミングスプロケット1bを一体に備えているリアプレート1cと、それらの間に組み付けてあるアウタロータ1dとをねじ等で締結して一体化してある。
インナロータ2は、カムシャフトB2の先端部にボルト2aで一体に固定され、ハウジング1に対して一定の角度範囲内で相対回転可能に組み付けられている。
カムシャフトB2は、エンジンBの吸気弁の開閉を制御するカム(不図示)の回転軸であり、エンジンBのシリンダヘッド(不図示)に回転自在に組み付けられている。
【0019】
クランクシャフトB1が回転駆動すると、その回転駆動力が動力伝達部材B3を介してタイミングスプロケット1bに伝達され、ハウジング1が
図2〜
図5において矢印Sで示す回転方向に回転する。
ハウジング1の回転に伴い、インナロータ2が回転方向Sに従動回転してカムシャフトB2が回転し、カムシャフトB2に設けられたカムがエンジンBの吸気弁を開閉させる。
【0020】
ハウジング1の内側表面とインナロータ2の外周面との間に四つの流体圧室3を形成する空間が形成されている。流体圧室3は、アウタロータ1dの内周側に回転方向Sで互いに離間して径方向内側に突出するように形成した四つの突出部4により区画されている。
本実施形態においては、流体圧室3が四つとなるよう区画形成されているが、これに限られるものではない。
【0021】
夫々の流体圧室3に面するインナロータ2の外周部分にはベーン溝5aが形成され、これらのベーン溝5aにはベーン5が径方向に沿って摺動可能に装着されている。ベーン5は、ベーン溝5aの奥側に備えられたバネ(不図示)によって径方向外方に向けて付勢されている。
【0022】
流体圧室3は、ベーン5によって進角室3a及び遅角室3bとなる空間に仕切られている。進角室3aと遅角室3bはインナロータ2に形成してある進角流路6aと遅角流路6bに夫々接続されている。
進角流路6a及び遅角流路6bは、アウタロータ1dの厚さ方向中央位置において、アウタロータ1dの外周面に開口している。
【0023】
進角流路6a及び遅角流路6bを介して、進角室3aと遅角室3bに対する作動流体
(作動油)の供給・排出を行う流体給排機構7を設けてある。
したがって、進角流路6a及び遅角流路6bが、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相を制御するように進角室3a又は遅角室3bに作動流体を供給する位相変更用流路を構成している。
【0024】
インナロータ2とフロントプレート1aとに亘ってトーションスプリング2bが設けられている。トーションスプリング2bの付勢力により、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相が、インナロータ2がハウジング1に対して矢印S1で示す方向に移動する進角方向(進角室3aの容積が大きくなる方向)になるように付勢されている。
なお、トーションスプリング2bは、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相が、インナロータ2がハウジング1に対して矢印S2で示す方向に移動する遅角方向(遅角室3bの容積が大きくなる方向)になるように付勢するものでもよい。
【0025】
弁開閉時期制御装置Aは、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相を、最進角位相(進角室3aの容積が最大になる位相)と最遅角位相(遅角室3bの容積が最大になる位相)との間の中間位相である中間ロック位相に固定するロック機構8を有している。
中間ロック位相は、エンジンBを始動するのに最適な所定の位相、若しくはエンジンBの始動が可能な範囲内で排ガスを低減するのに適した位相である。
【0026】
ロック機構8は、インナロータ2のハウジング1に対する進角方向S1への相対回転を規制する第1ロック部9と、インナロータ2のハウジング1に対する遅角方向S2への相対回転を規制する第2ロック部10と、中間ロック位相に固定するロック状態とその固定を解除するロック解除状態とに切換え自在な切換機構11とを備えている。
【0027】
ロック機構8は、インナロータ2のハウジング1に対する相対回転を第1ロック部9と第2ロック部10とによって規制することにより、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相を中間ロック位相に固定する。
第1ロック部9と第2ロック部10は、回転方向に間隔を隔てて、一つの共通の突出部4に第2ロック部10が第1ロック部9よりも回転方向Sの下手側に位置するように配設してある。
【0028】
第1ロック部9は、インナロータ(一方の回転体)2に形成された第1凹部9cと、アウタロータ1d(他方の回転体)に設けられ、第1凹部9cに対して係合・離脱する略長方形の平板状の第1ロック部材9bとを備えている。
第1ロック部材9bは、第1収容部9aに径方向内方側に向けて出退可能に収容され、先端部分が第1凹部9cに対して回転径方向から入り込んで係合するロック状態と、第1凹部9cに対して回転径方向から引退して係合を解除するロック解除状態とに切換えられる。
【0029】
第2ロック部10は、インナロータ(一方の回転体)2に形成された第2凹部10cと、アウタロータ(他方の回転体)1dに設けられ、第2凹部10cに対して係合・離脱する略長方形の平板状の第2ロック部材10bとを備えている。
第2ロック部材10bは、第2収容部10aに径方向内方側に向けて出退可能に収容され、先端部分が第2凹部10cに対して回転径方向から入り込んで係合するロック状態と、第2凹部10cに対して回転径方向から引退して係合を解除するロック解除状態とに切換えられる。
【0030】
第1ロック部9及び第2ロック部10の夫々は、対応する第1ロック部材9b又は第2ロック部材10bを凹部9c,10cに対する係合方向に突出付勢する弾性付勢部材としての圧縮コイルスプリング9d,10dを備えている。
第1凹部9c及び第2凹部10cの夫々の奥側底面には、インナロータ2に形成したロック解除用流路12が開口している。
ロック解除用流路12は、第1ロック部9及び第2ロック部10を対応する第1凹部9c又は第2凹部10cから引退させる作動流体を、第1凹部9c及び第2凹部10cに供給する。
【0031】
したがって、ロック機構8は、第1ロック部材9bが第1凹部9cに対して係合し、かつ、第2ロック部材10bが第2凹部10cに対して係合することにより、第1ロック部材9bと第2ロック部材10bとが第1凹部9c及び第2凹部10cに対して互いに離間する周方向に当接する状態で、インナロータ2のハウジング1に対する相対回転を規制して、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相を中間ロック位相に固定する。
【0032】
第1ロック部材9b及び第2ロック部材10bは、板面が回転軸芯Xに沿う姿勢でハウジング1から径方向内側に突出して第1凹部9c又は第2凹部10cに係合するように出退可能に装着してある。第1凹部9c及び第2凹部10cは、回転軸芯Xと平行な溝状に形成してある。
第1ロック部材9b及び第2ロック部材10bの形状は、本実施形態に示されたプレート状の他にピン状などの形状を適宜採用することができる。
【0033】
第1凹部9cは、
図4,
図5に示すように、インナロータ2の外周面に開口する幅広溝部13aと、幅広溝部13aの奥側に開口する幅広溝部13aよりも溝幅が狭い幅狭溝部13bとを備えたラチェット機構を構成している。幅狭溝部13bは幅広溝部13aの遅角方向S2の側に寄せて形成してある。
【0034】
第2凹部10cは、
図4,
図5に示すように、インナロータ2の外周面に開口する幅広溝部22aと、幅広溝部22aの奥側に開口する幅広溝部22aよりも溝幅が狭い幅狭溝部22bとを備えたラチェット機構を構成している。幅狭溝部22bは幅広溝部22aの遅角方向S2の側に寄せて一方の溝側面どうしが互いに面一になるように形成してある。
【0035】
第1ロック部9は、ロック解除用流路12を通して第1凹部9cから作動流体が排出されているときに、ハウジング1とインナロータ2との相対回転により第1ロック部材9bが第1凹部9cに対向したタイミングで、コイルスプリング9dの付勢力により幅広溝部13a、幅狭溝部13bの順に第1凹部9cに入り込む。
【0036】
第2ロック部10は、ロック解除用流路12を通して第2凹部10cから作動流体が排出されているときに、ハウジング1とインナロータ2との相対回転により第2ロック部材10bが第2凹部10cに対向したタイミングで、コイルスプリング10dの付勢力により第2凹部10cに入り込む。
【0037】
第1凹部9cは、ハウジング1とインナロータ2との中間ロック位相から離れる側への相対回転範囲を第1ロック部材9bとの当接で規制する規制壁面16を有している。
規制壁面16は、第1凹部9cを形成している壁面のうちの、第2凹部10cから遠い側の壁面で構成してある。
規制壁面16はインナロータ2の外周面から垂直に延設してあり、規制壁面16の凹部底側に、規制壁面16に当接している第1ロック部材9bが非接触で対向する第1対向面15aを溝長さの全長に亘って一連に形成してある。
【0038】
第2凹部10cは、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相を第2ロック部材10bとの当接で中間ロック位相に固定する固定壁面14を有している。
固定壁面14は、幅狭溝部22bを形成している壁面のうちの、第1凹部9cから遠い側の壁面で構成してある。
固定壁面14の凹部底側に、固定壁面14に当接している第2ロック部材10bが非接触で対向する第2対向面15bを溝長さの全長に亘って一連に形成してある。
【0039】
固定壁面14は規制壁面16よりも凹部底側に位置するように有している。
第1ロック部材9bと規制壁面16との当接面積は、規制壁面16の面積を固定壁面14と同じ面積に設定して、第2ロック部材10bと固定壁面14との当接面積と同じ面積に設定してある。
【0040】
このように当接面積を設定することにより、第1ロック部材9bが規制壁面16に対して摺動しながら第1凹部9cから引退する際の、第1ロック部材9bと規制壁面16との間に作用する静止摩擦力や動摩擦力などに起因する摺動抵抗の大きさを、第2ロック部材10bが固定壁面14に対して摺動しながら幅狭溝部22bから引退する際の、第2ロック部材10bと固定壁面14との間に作用する動摩擦力などに起因する摺動抵抗の大きさと略同じ大きさ設定してある。
【0041】
なお、第1ロック部材9bと規制壁面16との当接面積を、規制壁面16の面積を固定壁面14の面積未満に設定して、第2ロック部材10bと固定壁面14との当接面積未満に設定してあってもよい。この場合は、第1ロック部材9bと規制壁面16との間に作用する摺動抵抗の大きさを、第2ロック部材10bと固定壁面14との間に作用する摺動抵抗の大きさ未満にすることができる。
【0042】
したがって、
図4に示すように、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相が中間ロック位相に固定されている状態では、第2ロック部材10bが固定壁面14に対して当接し、かつ、第1ロック部材9bが規制壁面16に対して当接している。
【0043】
流体給排機構7は、ロック解除用流路12を介して第1凹部9c及び第2凹部10cに対する作動流体の供給・排出を行うことにより、第1ロック部9及び第2ロック部10をロック状態とロック解除状態とに切換え自在な切換機構11として機能する。
【0044】
流体給排機構7について説明する。
図1に示すように、流体給排機構7は、エンジンBにより駆動されて作動流体の供給を行う機械式のオイルポンプ18と、進角流路6a及び遅角流路6bに対する作動流体の供給・排出を制御するスプール式のOCV(オイルコントロールバルブ)19と、ロック解除用流路12への作動流体の供給・排出を切り換えるスプール式のOSV(オイルスイッチングバルブ)20と、OCV19,OSV20及びオイルポンプ18の作動を制御するECU(エンジンコントロールユニット)21を備えている。
【0045】
ECU21は、OCV19に対する通電量を制御することによりスプール弁の位置を変化させて、作動流体の進角室3aへの供給及び遅角室3bからオイルパン15への排出を行う進角制御と、作動流体の遅角室3bへの供給及び進角室3aからオイルパン15への排出を行う遅角制御と、進角室3a及び遅角室3bへの作動流体の供給及び排出を遮断する制御とを実行する。
【0046】
本実施形態においては、OCV19への通電量が最大のときに進角制御が可能な作動流体経路が形成され、進角流路6aを介して作動流体が供給されることにより進角室3aの容積が増大して、インナロータ2のハウジング1に対する回転位相が進角方向S1に変位する。
通電が遮断されたときに遅角制御が可能な作動流体経路が形成され、遅角流路6bを介して作動流体が供給されることにより遅角室3bの容積が増大して相対回転位相が遅角方向S2に変位する。
【0047】
OSV20は、ECU21による通電・遮断の制御に基づくスプール弁の位置変更により、ロック解除用流路12を通した第1凹部9c,第2凹部10cへの作動流体の供給状態と、ロック解除用流路12を通した第1凹部9c,第2凹部10cからの作動流体の排出状態とに切り換える。
【0048】
エンジンBが停止している状態ではOSV20への通電が遮断されているので、
図1に示すようにOSV20は供給状態に切り換えられている。エンジンBの停止状態ではオイルポンプ18は駆動されていないので、第1凹部9c及び第2凹部10cには作動流体が供給されない。
したがって、エンジンBが停止している状態では、ロック機構8は、
図2,
図4に示すように、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相を中間ロック位相に固定するロック状態に切り換えられている。
【0049】
ECU21は、エンジンBが始動されるとOSV20に通電する。これにより、OSV20が排出状態に切り換えられて、オイルポンプ18の駆動に拘わらず、第1凹部9c及び第2凹部10cへの作動流体の供給が停止されている。
【0050】
エンジンBの回転が安定すると、ECU21はOSV20への通電を遮断して、OSV20を供給状態に切り換え、ロック切換流路12を通して第1凹部9c,第2凹部10cに作動流体が供給される。
これにより、
図3に示すように、第1ロック部材9bがコイルスプリング9dの付勢力に抗して第1凹部9cから引退すると共に、第2ロック部材10bがコイルスプリング10dの付勢力に抗して第2凹部10cから引退して、中間ロック位相の固定を解除するロック解除状態に切換えられる。
【0051】
ロック解除状態への切換え時に、第2ロック部材10bが固定壁面14に対して摺動移動して幅狭溝部22bから引退した後、
図5に示すように、第1ロック部材9bが更に規制壁面16に対して摺動移動しながら第1凹部9cから引退する場合がある。
【0052】
この場合は、第1ロック部材9bと規制壁面16との間に作用する摺動抵抗の大きさを、第2ロック部材10bと固定壁面14との間に作用する摺動抵抗の大きさと略同じ大きさにしてあるので、第1ロック部材9bの規制壁面16に対する移動が停止したり、移動速度が低下する現象を防止することができる。
【0053】
〔第2実施形態〕
図6は、第1実施形態の変形例を示す。
本実施形態では、第2ロック部材10bの第2凹部10cからの離脱用の作動流体を当該第2凹部10cに導入する導入路であるロック解除用流路12を、第2対向面15bに開口させてある。
【0054】
このように構成することで、このロック解除用流路12の開口部には第2ロック部材10bは当接しなくなる。よって、本構成であれば、本来形成することが必要なロック解除用流路12の開口部を用いて、第2ロック部材10bと当接しない部位を固定壁面14の底側に設けることができる。
尚、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0055】
〔第3実施形態〕
図7,
図8は、本発明の別実施形態を示す。
本実施形態では、ロック機構8が、インナロータ2のハウジング1に対する遅角方向S2への相対回転を規制する第1ロック部9と、インナロータ2のハウジング1に対する進角方向S1への相対回転を規制する第2ロック部10と、中間ロック位相に固定するロック状態とその固定を解除するロック解除状態とに切換え自在な切換機構11とを備えている。
【0056】
したがって、ロック機構8は、第1ロック部材9bが第1凹部9cに対して係合し、かつ、第2ロック部材10bが第2凹部10cに対して係合することにより、第1ロック部材9bと第2ロック部材10bとが第1凹部9c及び第2凹部10cに対して互いに近接する周方向に当接する状態で、インナロータ2のハウジング1に対する相対回転を規制して、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相を中間ロック位相に固定する。
【0057】
このため、第1凹部9cにおける幅狭溝部13bは幅広溝部13aの進角方向S1の側に寄せて形成してある。また、第2凹部10cにおける幅狭溝部22bは幅広溝部22aの進角方向S1の側に寄せて一方の溝側面どうしが互いに面一になるように形成してある。
固定壁面14は、幅狭溝部22bを形成している壁面のうちの、第1凹部9cに近い側の壁面で構成してある。
規制壁面16は、第1凹部9cにおける幅広溝部13aを形成している壁面のうちの、第2凹部10cに近い側の壁面で構成してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0058】
〔第4実施形態〕
図9,
図10は、本発明の別実施形態を示す。
図9,
図10は、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相を、ベーン5の一つが突出部4の進角室3aに臨む部分に形成した当たり部4aに対して当接している最遅角ロック位相に固定するロック機構8を示す。
【0059】
ロック機構8は、インナロータ2に形成した単一のロック凹部17と、ハウジング1に設けた単一のロック部材23とを備え、ロック部材23がロック凹部17に入り込んで係合することにより、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相を最遅角ロック位相に固定する。
ロック部材23はハウジング1に形成した収容部8aに収容され、ロック部材23をロック凹部17に対する係合方向に突出付勢する弾性付勢部材としての圧縮コイルスプリング8bを装着してある。
【0060】
ロック凹部17は、ハウジング1とインナロータ2との最遅角位相から離れる側への相対回転範囲をロック部材23との当接で規制する規制壁面16と、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相をロック部材23との当接で最遅角ロック位相に固定する固定壁面14とを有する。
【0061】
規制壁面16がインナロータ2の外周面から垂直に延設されて、固定壁面14が規制壁面16よりも凹部底側に位置するように有し、ロック部材23と規制壁面16との当接面積を、ロック部材23と固定壁面14との当接面積以下に設定してある。
このように当接面積を設定することにより、ロック部材23が規制壁面16に対して摺動しながら引退する際の、ロック部材23と規制壁面16との間に作用する摺動抵抗の大きさを、ロック部材23が固定壁面14に対して摺動しながらロック凹部17から抜け出す際の、ロック部材23と固定壁面14との間に作用する摺動抵抗の大きさと略同じ大きさ設定してある。
【0062】
図9に示すように固定壁面14に当接して最遅角ロック位相に固定しているロック部材23は、ロック解除用流路12に作動流体を供給することにより、固定壁面14に対して摺動しながら引退する。
【0063】
そして、更に、
図10に示すように規制壁面16に対して摺動しながらロック凹部17から引退するときは、ロック部材23と規制壁面16との間に作用する摺動抵抗の大きさを、ロック部材23と固定壁面14との間に作用する摺動抵抗の大きさと略同じ大きさにしてあるので、第2ロック部材10bの規制壁面16に対する移動が停止したり、移動速度が低下する現象を防止することができる。
【0064】
ロック解除用流路12は、進角流路6aを兼用している。
したがって、ロック部材23がロック凹部17から引退してロック解除状態に切り換えられると、インナロータ2に形成した連通溝12aを通して進角室3aに作動流体が供給され、インナロータ2のハウジング1に対する回転位相が進角方向S1に変位する。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0065】
〔第5実施形態〕
図11〜
図13は、本発明の別実施形態を示す。
本実施形態では、インナロータ2のハウジング1に対する相対位相を中間ロック位相に固定するロック機構8が、インナロータ2とリアプレート1cとに亘って回転軸芯Xの方向に出退する断面円形の単一の軸状ロック部材23を備えている。
尚、流体圧室3は、インナロータ2に一体形成された仕切部2cで進角室3aと遅角室3bとに仕切られている。
【0066】
図12,
図13に示すように、ロック部材23は、インナロータ2に一体形成した仕切部2cの一つに回転軸芯Xの方向に沿って形成したロック部材収容孔25に、リアプレート1cに向けて出退可能に収容してある。
【0067】
ロック部材23は、円柱状のロック軸部26と、ロック軸部26よりも大径の基軸部27とを備え、ロック軸部26と基軸部27との段部と、ロック部材収容孔25との間に環状空間28を形成してある。
インナロータ2には、環状空間28に連通するロック解除用流路12を形成してある。
【0068】
リアプレート1cには、ロック部材収容孔25から突出したロック軸部26が入り込む単一のロック凹部17を設けてある。
ロック凹部17は、インナロータ2の側に円弧状に開口する長溝部29と、長溝部29の溝底面に開口する、長溝部29の溝幅と同じ直径で開口する円形孔部30を備えたラチェット機構を構成している。円形孔部30は、長溝部29の一端側に開口している。
【0069】
ロック凹部17は、ハウジング1とインナロータ2との中間ロック位相から離れる側への相対回転範囲をロック部材23との当接で規制する規制壁面16と、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相をロック部材23との当接で中間ロック位相に固定する固定壁面14とを、固定壁面14が規制壁面16よりも凹部底側に位置するように有し、ロック部材23と規制壁面16との当接面積を、ロック部材23と固定壁面14との当接面積以下に設定してある。
【0070】
流体給排機構7は、ロック解除用流路12を介して、環状空間28に対して作動流体の供給・排出を行うことにより、ロック機構8をロック状態とロック解除状態とに切換え自在な切換機構11として機能する。
【0071】
基軸部27の後端側とフロントプレート1aとの間に亘って、ロック部材23をリアプレート1cの側に向けて突出するように付勢する付勢部材としてのコイルスプリング31を装着してある。
【0072】
ロック機構8は、環状空間28からロック解除用流路12を通して作動流体が排出されているときに、ロック部材23がコイルスプリング31の付勢力で突出し、円形孔部30の固定壁面14に当接して係合することにより、
図12に示すように、中間ロック位相に固定するロック状態に切換える。
【0073】
また、ロック状態において、ロック解除用流路12を通して環状空間28に作動流体を供給することにより、円形孔部30に入り込んでいるロック部材23が固定壁面14に対して摺動しながら、
図13に示すように長溝部29に入り込む。
【0074】
長溝部29に入り込んだロック部材23が、規制壁面16に対して摺動しながらロック凹部17から引退してロック解除状態に切り換わるときは、ロック部材23と規制壁面16との間に作用する摺動抵抗の大きさを、ロック部材23と固定壁面14との間に作用する摺動抵抗の大きさと略同じ大きさにしてあるので、第2ロック部材10bの規制壁面16に対する移動が停止したり、移動速度が低下する現象を防止することができる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0075】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による弁開閉時期制御装置は、ロック部材側の規制壁面に対する当接部分の面積(当接面積)が、ロック部材側の固定壁面に対する当接部分の面積(当接面積)以下になるように、ロック部材を加工してあってもよい。
2.本発明による弁開閉時期制御装置は、自動車その他の各種内燃機関の弁開閉時期制御装置に利用可能である。