(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
略円筒状のシリンダ筒部の周囲に複数のフィンが形成されたシリンダと、冷却ファンが取り付けられた駆動軸と、を具備するエンジン本体と、前記シリンダを覆うシリンダカバーと、を具備し、前記冷却ファンによって生成された冷却風が前記シリンダカバー内で前記シリンダを冷却する構成とされ、前記シリンダカバーの内面と前記フィンとの間に前記冷却風の流れを規定する導風板が設置された空冷エンジンであって、
前記シリンダカバーの内部において、前記冷却風の上流側から見て、前記導風板と前記シリンダカバーの内面との間に形成された第1の小隙間の少なくとも一部を覆う導風部材を具備し、
前記導風部材は、前記シリンダの軸心よりも前記冷却風の上流側に設置され、前記シリンダの径方向外側であって前記軸心方向において前記複数のフィンを跨る範囲で、前記シリンダカバーの内面から前記軸心と交差する方向に沿って前記シリンダ側に突出するように延在することを特徴とする空冷エンジン。
前記導風部材は、前記冷却風の下流側において前記導風板の上流側端部と前記導風部材との間の間隔が1〜2mmの範囲となるように前記導風板に近接して設置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空冷エンジン。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態となる空冷エンジン(エンジン)の構成について説明する。ここで、この空冷エンジンとは、シリンダ、クランクケース等からなる2サイクルのエンジン本体と、シリンダ等を覆うシリンダカバーとを含んで構成されるものとする。このエンジン本体における駆動軸には冷却ファンが固定され、この冷却ファンが回転することによって生成された冷却風によってシリンダカバー内でシリンダが冷却される。また、シリンダにおいては、燃焼室が内部に形成された略円筒形状のシリンダ筒部の外周面に、放熱用の複数のフィンが形成されている。
【0014】
このエンジンは、例えば、刈払機、送風機、チェーンソー、パワーカッタ等、作業者が携帯して使用する携帯用作業機や、発電機等のエンジン作業機で使用され、上記の構造はエンジン作業機本体に搭載される。このため、実際には、エンジン作業機本体を駆動するための減速機等も駆動軸に接続され、かつこのエンジンをエンジン作業機本体(例えば
図9の刈払機本体310)に固定するための構造もエンジンに設けられる。しかしながら、これらのエンジン作業機本体との間の接続構造については本願発明とは直接の関係がなく、かつこれらについては従来から知られるものと同様であるため、以下ではこれらについての説明は省略し、主にエンジンの冷却に関わる構造、機能について説明する。
【0015】
図1は、このエンジン(空冷エンジン)100の構成を示す組立図である。
図1においては、図中左方向が実際の上方向、図中右方向が実際の下方向となっている。これに対応して、図中下側を左側、図中上側を右方向と呼称する。このエンジン100においては、クランクケース(
図1では図示されず)の上部に、内部にピストン等(
図1では図示されず)等を具備し、表面に冷却効率を高めるために複数のフィン12が上下方向に形成されたシリンダ1が設けられている(
図1においては、シリンダ筒部はフィン12によって隠されている)シリンダ1の上部には、シリンダ1内の混合気を点火するための点火プラグ2が設けられている。このエンジン100において駆動される駆動軸(
図1では図示されず)には冷却ファンが固定され、これによって冷却風が生成される。
【0016】
図1において、駆動軸は紙面向こう側(後方)から手前側(前方)に向かって延伸しており、その手前側に冷却ファンが固定されている。
図2は、このエンジン100の部分断面図であり、冷却ファン13のある箇所の駆動軸に垂直な断面及びこの断面からシリンダ側を見た構成を示している。ここで示された断面は、後述する
図3におけるD−D方向の断面である。以下、
図1、2に基づいてこの構造について説明する。
【0017】
クランクケースの下側には、燃料が内部に溜められた燃料タンク10が設置される。シリンダ1の右側には、この燃料と空気とが混合された混合気をシリンダ1内に導入するための吸気口5が設けられている。吸気口5には、右側から導風板15を介して吸気管7がネジ材33を用いて固定される。導風板15は、吸気口5と吸気管7の間のガスケットとしての役割を果たすが、
図1に示されるように、吸気口5、吸気管7よりも大きく広がっている。後述するように、この広がった部分が冷却風でシリンダ1を効率的に冷却することに寄与する。
【0018】
吸気管7の右側には、ガスケット32A、ブラケット47、ガスケット32Bを介して、混合気を生成する気化器8が、更にその右側には、気化器8に導入される空気中の埃等を除去するためにエアクリーナ9(9A、9B)が、ネジ材34を用いて固定される。エアクリーナ9A、9Bは、埃等を除去するフィルタエレメント(図示省略)をこれらの間に収容した状態でノブ46によって固定される。気化器8と燃料タンク10とは燃料通路(図示せず)によって接続され、燃料が気化器に供給される。燃料タンク10への燃料の供給は、給油口に取り付けられたタンクキャップ27を取り外して行われる。
【0019】
また、シリンダ1の排気口4はシリンダ1の左側に設けられており、この排気口4には、排気ガスの浄化や消音のためにマフラ6が仕切り板38を介して接続され、排気ガスはマフラ6を介して外部に放出される。仕切り板38は、マフラ6と排気口4の間のガスケットとしての役割を果たすが、排気口4よりも大きく広がっている。この広がった部分が、後述するように、冷却風でシリンダ1を効率的に冷却することに寄与する。この点については、前記の導風板15と同様である。
【0020】
上記の構成において、動作時にシリンダ1、マフラ6等は高温となる。このために、シリンダ1を覆うシリンダカバー102がネジ材(図示せず)等を用いてエンジン本体に固定される。また、マフラ6を覆うマフラカバー104がネジ材35によってエンジン本体に固定される。この際、
図2に示されるように、仕切り板38が排気口4とマフラ6の間に設けられている。このため、高温となるシリンダ1の周囲は、シリンダカバー102、導風板15、仕切り板38で覆われており、冷却ファン13で生成された冷却風はシリンダ1とこれらの間の空間を流れる。
【0021】
なお、シリンダカバー102、マフラカバー104は、所望の形状に成形加工された樹脂材料で構成されるため、その耐熱性は低く、高温となるシリンダ1等にこれらが直接接しない構造とされる。一方、単純な平板形状である導風板15、仕切り板38は、ガスケットとしての役割を果たすため、ガスケット32A、32Bと同様に、シール性、耐熱性のある材料で構成され、これらがシリンダ1等の発熱によって劣化することはない。
【0022】
また、冷却ファン13はファンケース103内に設けられ、冷却ファン13の回転によって効率的に冷却風が生成される。
図1に示されるように、ファンケース103は、冷却ファン13の中心(駆動軸の軸心)からの距離がシリンダ側に向かって徐々に大きくなるボリュート形状とされる。
図2において駆動軸(冷却ファン13)が反時計回りに回転する場合、
図2に示されるように、冷却ファン13側の右側から上側のシリンダ1側に冷却風CAが流れる。
【0023】
ファンケース103からシリンダカバー102にかけては、前方側からシリンダ側に近づく方向にこれらの内面から突出して形成された導風リブ14が設けられている。導風リブ14は、ファンケース103又はシリンダカバー102と一体にその内面において板状に形成される。導風リブ14は、冷却風CAが点火装置11の周囲を流れ冷却ファン13の回転方向に沿って排気口4側(ボリュート形状の始点側)にそのまま向かう流れに対向するように形成され、この流れを抑制することによって、冷却風CAが漏れなくシリンダ1に向かうようガイドする。このような構成とすることで、冷却ファン13により生成された冷却風CAにおいて、シリンダ1の冷却に使用されない成分を抑制し、有効な冷却風CAの風量を確保することができる。このため、導風リブ14の下端の位置は、シリンダ1の軸線方向において、点火装置11のシリンダ1への取り付けボス等が形成される上端位置よりも下死点側に位置することが望ましい。こうした構成とした場合、点火装置11の周囲の空間が点火装置11の側壁と協働してラビリンス状に構成されることで、この部分を流れる冷却風CAの流れに対しての抵抗となるため、この部分に冷却風CAが周り込み難くなる。
【0024】
図3は、
図2におけるB−B方向の断面図であり、駆動軸に沿った上下方向の断面を示している。
図4は、
図2におけるC−C方向の断面図であり、
図3の断面と平行でありかつその左側の断面構造を示している。なお、以下の説明では
図3、4における左側(ファンケース103が設けられた側)を前方、右側(始動装置25が設けられた側)を後方とする。
図3、4では、シリンダ1とクランクケース等で構成されたエンジン本体101の内部構造が示されている。このエンジン本体101は、シリンダ1と、クランクケース3A、クランクケース3Bがネジ材(図示せず)で固定されて構成される。シリンダ1は、略円筒形状のシリンダ筒部17を具備し、シリンダ筒部17の外周における上下方向には、放熱のために板状の複数のフィン12が形成されている。シリンダ筒部17の内部に形成された燃焼室にはピストン21が収容されており、このピストン21の上下運動は、ピストンピン20を介してピストン21に接続されたコンロッド22に伝わり、コンロッド22は、クランクピン24を介して駆動軸23に接続される。この構成により、ピストン21の往復運動が駆動軸23の回転運動と連動する。点火プラグ2の下端に設けられた着火部は燃焼室内に配置され、これにより、燃焼室内でピストン21で圧縮された混合気が点火される。シリンダ1よりも上側に位置する点火プラグ2の上端部にはプラグキャップ30が接続され、プラグキャップ30を介して点火プラグ2に高電圧が供給される。この高電圧は、高圧コード(図示せず)を介して、
図1、2に示されるようにシリンダ1の側面に取り付けられた点火装置11で生成される。以上の構成によって、このエンジン100における駆動軸23が回転する。
【0025】
図3において、駆動軸23の後方側には、始動装置25が取り付けられる。このエンジン100が停止している際に、始動装置25に設けられた始動ハンドル(図示せず)を作業者が操作することで、強制的に駆動軸23を回転させることができ、このエンジン100を始動させることができる。始動装置25は通常知られる手動スタータであり、始動時においてのみ操作され、始動後の動作とは無関係である。
【0026】
図3における駆動軸23の前端部には、冷却ファン13が固定され、冷却ファン13は、クランクケース3Aとファンケース103によって囲まれた領域内に収容されている。この際、冷却ファン13が回転すると、クランクケース3Aに形成された開口部39から空気が導入されて冷却風CAが生成される。シリンダカバー102内において、冷却風CAは
図3中に示されるように冷却ファン13側からシリンダ1側に流れ、シリンダ1が冷却される。その後、冷却風CAは、シリンダカバー102の後方に設けられた風窓28を通って、シリンダカバー102の外部に流れる。
【0027】
以下に、この冷却風の水平方向における流れについて説明する。
図5は、
図3におけるA−A方向の断面周辺の構造を示す図であり、シリンダカバー102内のシリンダ1とその周辺における、上下方向に隣接するフィン12の間における断面に対応した水平方向の構造を示している。
図5において、シリンダ筒部17の外側に形成されたフィン12の間には空隙が形成されているため、冷却風がこの空隙を流れることによって、効率的にシリンダ1(シリンダ筒部17)が冷却される。この冷却風の流れは、前記の導風板15、仕切り板38の影響を大きく受ける。
【0028】
図5においては、冷却ファン13によってシリンダ1の前方左側(
図5における左下側)から送られた冷却風CA3は、フィン12の間を通りシリンダ筒部17に当たり、シリンダ筒部17の左側(
図5における上側)を流れる冷却風CA1と、シリンダ筒部17の右側(
図5における下側)を流れる冷却風CA2に分岐される。どちらも最終的には風窓28を通りシリンダカバー102の外部に流れる。この際、冷却風CA1、CA2がシリンダ筒部17近くを流れ、シリンダ筒部17における最上流部(最も前方:
図5における左側の箇所)であるシリンダ筒部冷却ファン側端部171から、シリンダ筒部17における最下流部(最も後方:
図5における右側の箇所)であるシリンダ筒部排気側端部172までが冷却されれば、特に高い冷却効率が得られる。
【0029】
図5において、シリンダ筒部17の左側(
図5における上側)には、前後方向において冷却ファン13がある箇所近くまで延伸した仕切り板38が設けられている。このため、シリンダ筒部17の左側における冷却風CA1の流れは、この仕切り板38で制限される。このため、冷却風CA1は、仕切り板38よりも左側(
図5における上側)を流れることはなく、その流れはシリンダ筒部17近傍に制限される。このため、冷却風CA1によって、シリンダ1を効率的に冷却することができる。この際、仕切り板38は、耐熱性の高い材料で構成されるため、仕切り板38がシリンダ1(フィン12)に近接しても、仕切り板38が劣化することはない。また、仕切り板38はシリンダカバー102とは別体であるために、シリンダカバー102に大きな振動が発生することもない。
【0030】
また、
図5において風窓28が右側(
図5における下側)まで広がっている場合には、冷却風CA2は、特に風窓28の近く(下流側)においてシリンダ筒部17の右側(
図5における下側)の離れた箇所を通過しやすくなる。この流れを制限するために、案内部40がシリンダカバー102に設けられている。風窓28の右側は案内部40によって遮られるため、冷却風CA2は、風窓28の近くにおいても、
図5に示されるようにシリンダ筒部17近くを流れる。
【0031】
一方、この上流側においては、冷却風CA2は、左側における仕切り板38と同様に、右側の導風板15で制限される。このために、上流側においては、冷却風CA2の経路は導風板15によって制限され、この経路をシリンダ筒部17近傍に制限することができる。この際、前記の仕切り板38と同様に、導風板15がシリンダ1(フィン12)に近接しても、導風板15が劣化することはない。
【0032】
しかしながら、この場合において、導風板15をフィン12に近接させた場合には、導風板15の右側(
図5における下側)とその右側において近接するシリンダカバー102の内面との間の隙間(
図5における第1の小隙間S1)が広くなる。このため、冷却風CA2の一部はこの第1の小隙間S1を流れ、この第1の小隙間S1を流れる冷却風CA2は、シリンダ1の冷却には寄与しない。このため、第1の小隙間S1を流れる冷却風CA2を遮りこれを
図5における導風板15の左側(
図5における上側)に導くことによって、冷却風CA2による冷却効率を高めることができる。
【0033】
このため、
図5において、上流側(前方側)から見て第1の小隙間S1を塞ぐように、シリンダカバー102側からシリンダ1側に延在する導風部材16Aが設けられている。ここでは、この導風部材16Aは、シリンダカバー102の内面の突起部として設けられている。導風部材16Aは耐熱性の低いシリンダカバー102側に形成されるため、高温となるフィン12に導風部材16Aが接触しないように設定される。このため、
図5においては、導風部材16Aは、導風板15よりも左側(
図5における上側)には突出しない構成とされる。同様に、導風部材16Aが導風板15に接することも好ましくない。このため、導風部材16Aと導風板冷却ファン側端部151の間には、
図5に示される空隙Dを設けることが好ましい。空隙Dは、例えば1〜2mm程度とされる。このように空隙Dが設けられても、この空隙Dは冷却風CA2の流れ方向と平行であるため、空隙Dを介して冷却風CA2が第1の小隙間S1を流れる可能性は低い。
【0034】
この際、導風板15の上流側端部(
図5における導風板冷却ファン側端部151)及び導風部材16Aが、シリンダ筒部17よりも上流側(
図5中左側)に位置した場合には、シリンダ筒部17に直接向かう冷却風CA3の流れが阻害される。このため、導風板冷却ファン側端部41、導風部材16Aは、シリンダ筒部冷却ファン側端部171よりも下流側(後方)にあることが好ましい。
【0035】
図6は、実際に導風部材16Aが内面に設けられたシリンダカバー102を内側から見た斜視図である。第1の小隙間S1は、導風板15の形状、大きさに応じて上下方向(
図5における紙面垂直方向)にわたり形成されている。このため、この導風部材16Aは、シリンダカバー102の内面において長手方向において第1の小隙間S1を塞ぐように、第1の小隙間S1に対応した長さで細長く形成されている。このシリンダカバー102は、導風部材16Aを含んだ形態で、樹脂材料を成型することによって製造することができる。なお、
図6における切欠部43は吸気管7がある箇所に対応し、プラグキャップ取付穴31は点火プラグ2がある箇所に対応している。
【0036】
上記の通り、導風板15が用いられた構成において、シリンダカバー102に上記の構成の導風部材16Aを設けることによって、シリンダ1の冷却効率を高めることができる。
【0037】
ただし、上記のように、シリンダ1の冷却に寄与しない冷却風の流れを遮ることによって冷却効率を高めるために、上記と異なる構成を用いることもできる。
【0038】
図7は、
図5の構成の第1の変形例となる構造を示す図であり、
図5に対応した構造を示している。この構造においては、前記の導風部材16Aの代わりに、これよりも小さな突起部である小突起45が、シリンダカバー102の内面における前記の導風部材16Aと同じ位置に形成されている。一方、導風板15の形状が
図5の導風板15,仕切り板38のような単純な平板状ではなく、上流側において右側(近接したシリンダカバー102の内面側)に屈曲した箇所が導風部材16Bとされている。この構成においても、第1の小隙間S1を流れる冷却風CA2が遮られることは明らかである。小突起45は、前記の導風部材16Aと同様にシリンダカバー102に形成することができるが、小突起45は前記の導風部材16Aよりも小さい。このため、これのみによって第1の小隙間S1を流れる冷却風CA2を遮ることはできず、代わりに、導風板15に設けられた導風部材16Bによって、第1の小隙間S1を流れる冷却風CA2が遮られる。この構成においては、導風板15の最端部である導風部材16Bが小突起45に係止されて固定される。
【0039】
このように、導風板15の一部を導風部材16Bとして用いることによっても、第1の小隙間S1を流れる冷却風CA2を遮り、冷却効率を高めることができる。この構成の場合には、
図5の構成とは異なり、高温となる導風板15がシリンダカバー102と接するが、シリンダカバー102と接するのは導風板15の最端部であり、かつその接触面積は非常に小さくなるため、これによってシリンダカバー102が溶損することはない。
【0040】
なお、この構成においては小突起45がシリンダカバー102側に設けられたが、導風部材16B(導風板15)を安定して係止させ保持できる限りにおいて、シリンダカバー102側の構成は任意である。例えば、小突起45の代わりに凹部を設けてもよい。
【0041】
前記の通り、導風板15は吸気口5と吸気管7との間のガスケットとしての役割も果たすため、適度な柔軟性のあるシール材を用いて構成される。この場合、
図7に示されるように端部が導風部材16Bとされた導風板15をシール材のみを用いて形成することは困難である場合もある。こうした場合には、例えばこうしたシール材と金属との積層構造をその材料として用いることができる。
【0042】
図8は、第2の変形例となる構造の断面図であり、
図5に対応した構造を示している。この構造においては、第1の小隙間S1だけでなく、フィン12の外側における更に広い範囲における冷却風の流れが抑制され、その代わりにフィン12の間に流れる冷却風が増強される。この構造においては、
図5における導風部材16Aの代わりに、これよりも長く、かつ設置された位置が限定された導風部材16Cがシリンダカバー102に形成されている。
【0043】
前記の通り、
図5、7の構成においては、冷却風CA2は、導風板15よりも左側(
図5、7における上側)を流れる。この導風板15よりも左側の領域は、
図8において、フィン12の間の領域(
図8におけるシリンダ筒部17の外側でフィン12と重複する領域)と、フィン12と導風板15の間の第2の小隙間S2に区分される。このうち、シリンダ1の冷却に最も大きく寄与するのは、シリンダ筒部17に近いフィン12の間の領域を流れる冷却風CA2である。このため、第2の変形例においては、導風部材16Cを流れに垂直な方向でより長くし、冷却風CA2が第2の小隙間S2を流れることも抑制し、この流れをシリンダ筒部17に近いフィン12の間の領域に導いている。すなわち、この構造においては、冷却風をシリンダ筒部17により近い領域に限定して流している。
【0044】
ただし、この場合には、導風部材16Cは前記の導風部材16Aと同様にシリンダカバー102側に形成され、前記と同様に、導風部材16Cがフィン12と接することは好ましくない。このため、
図8の構成においては、導風部材16Cは、フィン12のフィン切り欠き部121がある箇所に設けられている。通常、シリンダ1は、シリンダヘッド等がボルトを用いて固定されて構成されており、分解組立時には、このボルトを脱着する作業が必要となる。この際、フィン12が存在すると、この作業が不可能となる場合があるため、通常はフィン12におけるこのボルトに対応した箇所にフィン切り欠き部121が形成されている。導風部材16Cをこのフィン切り欠き部121に対応した箇所に設けることにより、第2の小隙間S2が塞がれる程度に導風部材16Cを長くしても、導風部材16Cがフィン12と接触しない構成とすることができる。なお、この場合に、導風板15は、上流側において導風部材16Cに近接するまで延伸することは
図5の場合と同様である。
【0045】
すなわち、第2の変形例によれば、フィン12にフィン切り欠き部121が形成された場合において、導風部材16Cを用いて更にシリンダ1の冷却効率を高くすることができる。なお、第1の変形例においては、
図7の導風板15において、例えば、シリンダカバー102側に曲げた部分(導風板16B)と共にシリンダ1側にも曲げた部分も形成することによって、第2の変形例と同様の機能を実現することができる。
【0046】
なお、上記の構成において、実際には、第1の小隙間S1は導風板15の形状、大きさに応じて上下方向(
図5、7、8における紙面垂直方向)にわたり形成されている。上記の導風部材16A、16B、16Cは、この上下方向において第1の小隙間S1を全て覆う必要はなく、部分的に覆った場合でも、シリンダ1の冷却効率を高めることができることは明らかである。また、第2の小隙間S2もフィン12と導風板15に応じて上下方向に形成されているため、導風部材16Cと第2の小隙間S2との関係、これによる作用についても同様である。
【0047】
また、上記の構成においては、
図5、7、8の上流側(図における左側)から見た場合に、第1の小隙間S1は、導風部材16A、16B、16Cで全て覆われている。しかしながら、第1の小隙間S1がこれらで全て覆われず、部分的に覆われた場合でも、一定の効果が得られることは明らかである。すなわち、導風部材16A、16B、16Cは、第1の小隙間S1の少なくとも一部を覆えばよい。
【0048】
すなわち、第1の小隙間S1に入り込む冷却風を減少させることができる限りにおいて、冷却効率を高めることができることは明らかであるため、こうした作用が得られる限りにおいて、導風部材の構成は任意である。
【0049】
また、上記の構成では、吸気口5と吸気管7との間のガスケットとして用いられる部材が導風板15としても機能していた。しかしながら、この部分のガスケットとは別体とされ、シリンダカバーの中で上記と同様に冷却風の流れを規定する導風板に対しても、上記と同様の機能をもつ導風部材を用いることによって同様の効果を奏することは明らかである。
【0050】
また、上記の構成では、シリンダカバー102内における冷却風の入口が右側に設けられ、これに近い側(右側)に導風板15が、遠い側(左側)に仕切り板38が設けられ、導風板15の側に導風部材が設けられた。しかしながら、シリンダカバーにおける冷却風の入口の場所に応じ、冷却効率を高めることができるように、上記の構成の導風板と導風部材を設ける箇所を適宜設定することができる。例えば、左右両側に上記の構成の導風板と導風部材を設けることもできる。
【0051】
また、上記のエンジンにおいては、シリンダカバー内の構造に特徴がある。このため、エンジン作業機本体側の構成は従来通りとしたままでこのエンジンをエンジン作業機本体に搭載することができる。このため、シリンダカバーを具備する小型の空冷エンジンが用いられる全てのエンジン作業機において、上記の構成のエンジンは有効である。