(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
既設トラスの内部空間に設置すべき新設トラスが、その長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく乗客コンベアのリニューアル工法であって、
前記複数のトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく過程で、搬送の対象とするトラスセグメントに、既設トラスの長手方向に延在する上面に配置することが可能な複数の搬送具を取り付けて、該複数の搬送具を前記上面に沿って移動させながら、各トラスセグメントを搬送し、前後のトラスセグメントどうしを互いに連結することにより、新設トラスを完成する工程
を有する乗客コンベアのリニューアル工法において、
前記搬送具は、各トラスセグメントに連結すべきベース部材と、既設トラスの長手方向に延在する上面に沿って移動可能な履体と、前記ベース部材がトラスセグメントに連結されると共に前記履体が前記既設トラスの上面に配置された状態で、既設トラスに対する該トラスセグメントの高さ位置を調整するための調整機構と、を具え、
前記ベース部材はトラスセグメントの上面と接触可能な取付け面を有すると共に、前記履体は既設トラスの上面と接触可能な踏面を有し、
前記調整機構は、前記ベース部材に設けられ、前記ベース部材がトラスセグメントに連結された状態で前記ベース部材の取付け面からトラスセグメントの上面までの距離を変化させるものであり、
トラスセグメントの搬送時若しくは設置時に、前記調整機構によって前記搬送具のベース部材の取付け面に対するトラスセグメントの高さ位置を調整することを特徴とする乗客コンベアのリニューアル工法。
既設トラスの内部空間に設置すべき新設トラスが、その長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく乗客コンベアのリニューアル工法に用いる搬送具において、
各トラスセグメントが連結される取付け面を有するベース部材と、
既設トラスの長手方向に延在する上面に沿って移動可能な履体と、
前記ベース部材に設けられ、ベース部材がトラスセグメントに連結された状態で該ベース部材の取付け面からトラスセグメントの上面までの距離を変化させるための第2調整機構と、
を具えていることを特徴とする、乗客コンベアのリニューアル工法に用いる搬送具。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータにおいて、既設トラスを撤去することなく、既設トラスの内部空間に新設トラスを設置し、既設トラスに新設トラスを合体させるリニューアル工法が知られている(特許文献1)。
係るリニューアル工法によれば、リニューアルの工期を短縮することが可能である。
【0003】
又、この様なリニューアル工法において、新設トラスをその長手方向に複数のトラスセグメントに分割し、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していくリニューアル工法が知られている(特許文献2)。
係るリニューアル工法によれば、既設トラスの内部空間を既設トラスに沿って移動させながら、全てのトラスセグメントを既設トラスの内部空間に設置して、これらのトラスセグメントを互いに連結することにより、既設トラスの内部空間に新設トラスを完成することが出来る。
【0004】
更に又、この様なリニューアル工法において、既設トラスに沿ってトラスセグメントを移動させる工程で、トラスセグメントの前後左右に、既設トラスの上面にて転動可能な車輪を具えた4つの搬送具を取り付け、該搬送具によってトラスセグメントを搬送することが提案されている(特許文献3)。
係るリニューアル工法によれば、新設トラスを構成すべき複数のトラスセグメントを既設トラスに沿って容易に搬送することが出来る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のリニューアル工法においては、搬送の対象とするトラスセグメントに4つの搬送具を取り付け、該トラスセグメントを所定位置まで搬送した後、該トラスセグメントをチェーンブロックで吊り上げた状態で、該トラスセグメントから4つの搬送具を取り外し、その後、チェーンブロックを用いて該トラスセグメントの高さ調整を行なうことにより、該トラスセグメントを既設トラスに対して所定の高さ位置に設定し、この状態で、該トラスセグメントを前方の設置済みのトラスセグメントと連結することが行なわれるため、搬送具を用いた搬送作業とは別に、チェーンブロックによる高さ調整を含む設置作業が必要となって、搬送作業から設置作業への段取り替えのために作業工数が多くなる問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、新設トラスがその長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく乗客コンベアのリニューアル工法において、従来よりも作業工数の少ないリニューアル工法、並びにこの工法に用いる搬送具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乗客コンベアのリニューアル工法は、既設トラスの内部空間に設置すべき新設トラスが、その長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していくものであって、
前記複数のトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく過程で、搬送の対象とするトラスセグメントに、既設トラスの長手方向に延在する上面に配置することが可能な複数の搬送具を取り付けて、該複数の搬送具を前記上面に沿って移動させながら、各トラスセグメントを搬送し、前後のトラスセグメントどうしを互いに連結することにより、新設トラスを完成する工程
を有し、
前記搬送具は、搬送の対象とするトラスセグメントに取り付けられた状態で既設トラスに対する該トラスセグメントの高さ位置を調整するための調整機構を具えている。
【0009】
上記リニューアル工法によれば、既設トラスに沿ってトラスセグメントを搬送する際、前記調整機構によって既設トラスに対するトラスセグメントの高さ位置を調整する。これによって、搬送時にトラスセグメントが既設トラスと干渉することを回避することが出来る。
その後、既設トラスに沿ってトラスセグメントを所定位置まで搬送した時点で、前記調整機構によって既設トラスに対するトラスセグメントの高さ位置を調整する。これによって、トラスセグメントが所定の高さ位置に設定され、前方の設置済みのトラスセグメントとの連結が可能となる。
【0010】
本発明に係る乗客コンベアのリニューアル工法に用いる搬送具は、
各トラスセグメントに連結すべきベース部材と、
既設トラスの長手方向に延在する上面に沿って移動可能な履体と、
前記ベース部材がトラスセグメントに連結されると共に前記履体が既設トラスの上面に配置された状態で既設トラスに対する該トラスセグメントの高さ位置を調整するための調整機構
とを具えている。
尚、前記履体としては、車輪やそり部材を採用することが出来る。
【0011】
上記搬送具によれば、既設トラスに沿ってトラスセグメントを搬送する際、前記調整機構によって既設トラスに対するトラスセグメントの高さ位置を調整した後、トラスセグメントが所定位置まで搬送された時点で、前記調整機構によって既設トラスに対するトラスセグメントの高さ位置を調整することが出来る。
【0012】
搬送具の具体的態様において、前記ベース部材はトラスセグメントの上面と接触可能な取付け面を有すると共に、前記履体は既設トラスの上面と接触可能な踏面を有し、前記調整機構は、
前記ベース部材と履体との間に介在し、ベース部材の取付け面と履体の踏面との間隔を変化させるための第1調整機構と、
前記ベース部材に設けられ、ベース部材がトラスセグメントに連結された状態で該ベース部材の取付け面からトラスセグメントの上面までの距離を変化させるための第2調整機構
とを具えている。
【0013】
尚、履体として車輪を採用した場合、該履体の踏面は車輪の外周面であり、履体としてそり部材を採用した場合、該履体の踏面はそり部材の滑動面である。
【0014】
該搬送具によれば、既設トラスに沿ってトラスセグメントを搬送する際、前記第1調整機構によって既設トラスに対するトラスセグメントの高さ位置を調整した後、トラスセグメントが所定位置まで搬送された時点で、前記第2調整機構によって既設トラスに対するトラスセグメントの高さ位置を調整することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る乗客コンベアのリニューアル工法及び該工法に用いる搬送具によれば、トラスセグメントに搬送具を取り付けたままで、該搬送具によって、トラスセグメントの搬送作業と、搬送後のトラスセグメントの高さ調整を含む設置作業とを実施することが出来るので、搬送作業から設置作業への段取り替えが不要であり、これによって、従来よりも少ない作業工数でリニューアルを完了することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明のリニューアル工法における第1工程を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、該リニューアル工法における第2工程を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、該リニューアル工法における第3工程を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、該リニューアル工法における第4工程を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、該リニューアル工法における第5工程を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の搬送具を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、該搬送具による調整を説明する図である。
【
図12】
図12は、搬送具の更に他の構成例を示す側面図である。
【
図14】
図14は、搬送具の更に他の構成例を示す側面図である。
【
図16】
図16は、屈曲トラスセグメントの前後にそれぞれ搬送具を取り付けた状態を示す側面図である。
【
図17】
図17は、傾斜調整部材が装着された後方の搬送具の側面図である。
【
図18】
図18は、傾斜調整部材が装着された前方の搬送具の側面図である。
【
図19】
図19は、本発明のリニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第1の過程を示す一連の側面図である。
【
図20】
図20は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第2の過程を示す一連の側面図である。
【
図21】
図21は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第3の過程を示す一連の側面図である。
【
図22】
図22は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第4の過程を示す一連の側面図である。
【
図23】
図23は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第5の過程を示す一連の側面図である。
【
図24】
図24は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第6の過程を示す一連の側面図である。
【
図25】
図25は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第7の過程を示す一連の側面図である。
【
図27】
図27は、新設トラスを構成する複数のトラスセグメントを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をエスカレータのリニューアル工法に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。尚、以下の説明では、トラスの長手方向に沿って下階から上階へ向かう方向を「前方」、その逆方向を「後方」と称する。
【0018】
本発明の一実施形態であるエスカレータのリニューアル工法は、既設トラスを撤去することなく既設トラスの内部空間に新設トラスを設置するものであって、先ず、第1工程では、
図1及び
図26に示す如くエスカレータから既設トラス(1)以外の部品や機器(駆動装置、ステップ、手摺り駆動機構、制御機器等)を撤去し、既設トラス(1)のみを残す。
既設トラス(1)は、上階側水平部(11)、傾斜部(12)及び下階側水平部(13)から構成されており、上階側水平部(11)から傾斜部(12)を経て下階側水平部(13)まで延在する上面(1a)を有している。
【0019】
又、
図27に示す如く、新設トラス(3)をその長手方向に、上階側水平トラスセグメント(31)と、上階側屈曲トラスセグメント(32)と、複数の中間トラスセグメント(33)(33)と、下階側屈曲トラスセグメント(34)と、下階側水平トランスセグメント(35)に分割する。
【0020】
尚、これらのトラスセグメント(31)〜(35)には、エスカレータを構成すべき複数の部品や機器の内、予め搭載可能な複数の部品や機器(駆動装置、駆動輪、ガイドレール等)が搭載されている。
又、
図27は、新設トラス(3)の1つの分割例を示すものであって、新設トラス(3)の全長等に応じて適切な分割形態が採用される。
以下の説明においては、新設トラス(3)を構成するトラスセグメント(31)〜(35)を適宜、トラスセグメント(30)と総称する。
【0021】
次に、第2工程では、
図2に示す如く既設トラス(1)の下階側水平部(13)に門型揚重装置(2a)を設置すると共に、既設トラス(1)の上階側水平部(11)に門型揚重装置(2b)を設置する。
【0022】
続いて、第3工程では、
図3に示す如く下階側の門型揚重装置(2a)と上階側の門型揚重装置(2b)に設けられているチェーンブロック(20)を用いて、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の上面に沿って引き上げる。
ここで、トラスセグメント(30)には、前後左右の4箇所にそれぞれ、搬送具(4)が取り付けられており、該4つの搬送具(4)を既設トラス(1)の全長に亘って延在する上面に配置し、該上面に沿って移動させることにより、トラスセグメント(30)を搬送する。
【0023】
搬送具(4)は、
図6に示す如く、トラスセグメント(30)の上面に締結固定されるべき平板状のベース部材(41)と、既設トラス(1)の上面(1a)に沿って滑動可能なそり部材(43)と、ベース部材(41)とそり部材(43)の間に介在する伸縮機構(42)とを具えている。
【0024】
図8に示す如く、ベース部材(41)の裏面には、トラスセグメント(30)の上面に接触可能な取付け面(41a)が形成されている。
又、そり部材(43)は、
図7及び
図8に示す如く、伸縮機構(42)の下端部にアングル部材(46)を介して固定されている。
【0025】
そり部材(43)は、既設トラス(1)の上面に対向して、
図7に示す3つの滑動面(43a)(43b)(43b)を有し、中央の主滑動面(43a)の前後に2つの補助滑動面(43b)(43b)が形成されており、両補助滑動面(43b)(43b)はそれぞれ主滑動面(43a)に対して一定の後退角をもって傾斜している。
【0026】
搬送具(4)が既設トラス(1)の上面の平坦な領域を移動する過程では、そり部材(43)の主滑動面(43a)が既設トラス(1)の上面に摺接するが、搬送具(4)が既設トラス(1)の上面の凸部を乗り越える過程では、先ず、そり部材(43)の前方の補助滑動面(43b)が既設トラス(1)の凸部に摺接して、該凸部を乗り越え、その後、主滑動面(43a)が既設トラス(1)の凸部に摺接して、該凸部を乗り越え、最後に後方の補助滑動面(43b)が既設トラス(1)の凸部に摺接して、該凸部を乗り越えることになる。
【0027】
図7及び
図8に示す如く、伸縮機構(42)は、ベース部材(41)の裏面に連結された外筒(421)と、アングル部材(46)の上面に連結された内筒(422)とから構成され、外筒(421)と内筒(422)が筒軸方向に沿って互いに摺動可能に嵌合している。
又、外筒(421)には筒軸方向に長い長孔(48)が開設される一方、内筒(422)にはボルト(47)がねじ込まれ、該ボルト(47)の頭部が長孔(48)に嵌合して、外筒(421)に対する内筒(422)の摺動が案内され、且つ内筒(422)の脱落が防止されている。
【0028】
そして、ベース部材(41)には、第1調整ボルト(44)がねじ込まれ、該第1調整ボルト(44)の先端面が内筒(422)の端面に当接している。
従って、第1調整ボルト(44)をベース部材(41)に対してねじ込むことにより、該第1調整ボルト(44)の先端面が内筒(422)の端面を押圧し、これによって外筒(421)と内筒(422)とが互いに離間方向に相対移動して、伸縮機構(42)が伸長し、その長さAが大きくなる。
【0029】
逆に、第1調整ボルト(44)をねじ戻すことによって、外筒(421)と内筒(422)とが互いに接近方向に相対移動可能となり、トラスセグメント(30)の重量によって伸縮機構(42)が収縮し、その長さAが小さくなる。
【0030】
又、ベース部材(41)には第2調整ボルト(45)がねじ込まれ、ベース部材(41)を貫通した第2調整ボルト(45)の先端部にはナット(49)(49)が螺合している。
第2調整ボルト(45)は、
図9(a)に示す如くベース部材(41)がトラスセグメント(30)の上面に設置された状態で該トラスセグメント(30)を貫通し、その先端部のナット(49)(49)の締め付けによって、ベース部材(41)をトラスセグメント(30)に固定することが出来る。
【0031】
4つの搬送具(4)のベース部材(41)をそれぞれトラスセグメント(30)の前後左右に締結固定した状態で、4つの搬送具(4)のそり部材(43)を既設トラス(1)の上面に沿って滑動させる際には、第1調整ボルト(44)の操作によって
図9(a)に示す伸縮機構(42)の長さAを変化させることにより、既設トラス(1)の上面(1a)とトラスセグメント(30)の上面との間隔Bを調整する。
これによって、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)と干渉させることなく、既設トラス(1)の内部空間にてトラスセグメント(30)を搬送することが出来る。
【0032】
トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の上面(1a)に沿って所定の位置まで搬送した後、ベース部材(41)に対するトラスセグメント(30)の締結を緩めると共に、
図9(b)に示す第2調整ボルト(45)を操作して、ベース部材(41)に対するねじ込み量を増減させることによって、既設トラス(1)の内部空間にてトラスセグメント(30)を昇降させ、既設トラス(1)の上面(1a)とトラスセグメント(30)の上面との間隔B′を調整する。この際、第1調整ボルト(44)を操作して、既設トラス(1)の上面(1a)とトラスセグメント(30)の上面との間隔B′を調整することも可能である。
【0033】
これによって、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の内部空間にて所定の高さ位置に設定することが出来る。
この結果、トラスセグメント(30)を前方の設置済みのトラスセグメント(30)と連結することが可能となる。
【0034】
上述の如く、搬送対象となるトラスセグメント(30)に4つの搬送具(4)を取り付け、これら4つの搬送具(4)を既設トラス(1)の上面に沿って移動させながら、各トラスセグメント(30)を搬送し、前後のトラスセグメント(30)(30)どうしを互いに連結することにより、
図4に示す如く、既設トラス(1)の内部空間に新設トラス(3)を完成する。
【0035】
最後に、第4工程では、
図5の如く既設トラス(1)から下階側門型揚重装置(2a)及び上階側門型揚重装置(2b)を撤去した後、新設トラス(3)に対して必要な部品や機器(ステップ、手摺り、制御機器等)を取り付けることにより、エスカレータのリニューアルを完了する。
【0036】
図19〜
図25は、下階側門型揚重装置(2a)及び上階側門型揚重装置(2b)を用いて、複数のトラスセグメント(30)を順次、既設トラス(1)の上面に沿って移動させて、新設トラス(3)を完成するまでの一連の引き上げ及び設置作業を示している。
【0037】
即ち、
図19(a)〜
図20(c)は、上階側水平トラスセグメント(31)の搬送及び設置作業を示し、
図20(c)〜
図21(c)は、上階側屈曲トラスセグメント(32)の搬送及び設置作業を示し、
図22(a)〜(d)は、1つ目の中間トラスセグメント(33)の搬送及び設置作業を示し、
図23(a)〜(c)は、2つ目の中間トラスセグメント(33)の搬送及び設置作業を示し、
図24(a)〜(d)は、下階側屈曲トラスセグメント(34)の設置作業を示し、
図25(a)〜(c)は、下階側水平トランスセグメント(35)の設置作業を示している。
【0038】
この過程で、トラスセグメント(30)を引き上げる度に該トラスセグメント(30)の高さ調整を行なった後、該トラスセグメント(30)を前方の設置済みのトラスセグメント(30)と連結すると共に、必要に応じて該トラスセグメント(30)を既設トラス(1)と連結する。
【0039】
そして、トラスセグメント(30)の引き上げ及び設置が終了する度に、又は、トラスセグメント(30)の引き上げ及び設置が全て完了した後、トラスセグメント(30)に取り付けられている4つの搬送具(4)を取り外す。
この際、搬送具(4)の伸縮機構(42)を収縮させれば、搬送具(4)は容易に取り外すことが出来る。
【0040】
上記エスカレータのリニューアル工法によれば、トラスセグメント(30)に4つの搬送具(4)を取り付けて、該搬送具(4)のそり部材(43)を既設トラス(1)の上面に沿って滑動させることにより、トラスセグメント(30)を移動させることが出来るので、トラスセグメント(30)の搬送は容易なものとなる。
又、搬送具(4)において、そり部材(43)はベース部材(41)に対して一体的に設けられているので、トラスセグメント(30)の搬送時に大きな負荷が作用したとしても、搬送具(4)が破損する虞は殆どなく、メンテナンスも容易である。
【0041】
更に又、トラスセグメント(30)に搬送具(4)を取り付けたままで、該搬送具(4)によって、トラスセグメント(30)の搬送作業と、搬送後のトラスセグメント(30)の高さ調整を含む設置作業とを実施することが出来るので、搬送作業から設置作業への段取り替えが不要であり、これによって、従来よりも少ない作業工数でリニューアルを完了することが出来る。
【0042】
図10及び
図11は、搬送具(4)の他の構成例を示している。
該搬送具(4)においては、伸縮機構(42)とアングル部材(46)との間に、揺動機構(400)が介在している。該揺動機構(400)は、伸縮機構(42)の内筒(422)の下端面に下向きに突設された第1軸部(401)と、アングル部材(46)の上面に上向きに突設された第2軸部(402)と、両軸部(401)(402)を互いに連結する枢軸(403)とから構成され、ベース部材(41)に対してそり部材(43)を前後方向に揺動させるものである。
【0043】
該搬送具(4)によれば、既設トラス(1)の上面に凸部が存在する場合に、該凸部を通過する過程でそり部材(43)が前後に揺動することにより、凸部を更に容易に乗り越えることが出来る。
【0044】
又、
図12及び
図13は、搬送具(4)の更に他の構成例を示している。
該搬送具(4)においては、伸縮機構(42)とアングル部材(46)との間に、揺動機構(400)が介在すると共に、該揺動機構(400)の前後にバネ(404)(404)が介在している。
【0045】
該搬送具(4)によれば、既設トラス(1)の上面に存在する凸部を通過する過程でそり部材(43)が揺動したとき、前後のバネ(404)(404)の弾性反発力によってそり部材(43)の姿勢が元の姿勢に迅速に復帰することになる。
【0046】
図14及び
図15に示す搬送具(40)は、上述のそり部材(43)に代えて車輪(411)を具えたものであって、アングル部材(46)の垂直壁部に車軸(410)が水平に突設され、該車軸(410)に軸受け(図示省略)を介して車輪(411)が取り付けられている。
又、ベース部材(41)とアングル部材(46)との間には、上述の伸縮機構(42)が介在し、ベース部材(41)には、上述の第1調整ボルト(44)と第2調整ボルト(45)がねじ込まれている。
【0047】
この様な搬送具(40)においても、トラスセグメント(30)の搬送及び設置時に第1調整ボルト(44)と第2調整ボルト(45)を操作することにより、既設トラス(1)に対するトラスセグメント(30)の高さ位置を調整することが可能である。
【0048】
ところで、
図20(c)〜
図21(c)に示す如く上階側屈曲トラスセグメント(32)を搬送する場合には、
図16に示す如く、前方の搬送具(4)に第1の傾斜調整部材(431)を装着すると共に、後方の搬送具(4)に第2の傾斜調整部材(441)を装着する。
【0049】
後方の搬送具(4)に装着すべき傾斜調整部材(441)は、
図17に示す如く搬送具(4)のベース部材(41)の裏面(取付け面)に取り付けられ、この状態で、上階側屈曲トラスセグメント(32)の上面に接触すべき斜面(440)が形成される。
【0050】
又、前方の搬送具(4)に装着すべき傾斜調整部材(431)は、
図18に示す如く搬送具(4)のベース部材(41)の裏面(取付け面)に支持フレーム(433)を介して取り付けられ、この状態で、上階側屈曲トラスセグメント(32)の上面に接触すべき斜面(430)が形成される。
該傾斜調整部材(431)には、トラスセグメント(30)と締結すべき一対のフランジ部材(432)(432)が突設されている。
【0051】
図16に示す如く、上階側屈曲トラスセグメント(32)の前後に、第1の傾斜調整部材(431)を具えた搬送具(4)と、第2の傾斜調整部材(441)を具えた搬送具(4)とを取り付けた状態で、両搬送具(4)(4)のそり部材(43)(43)は、既設トラス(1)に対して同じ姿勢となり、両そり部材(43)(43)の主滑動面が既設トラス(1)の上面に同時に摺接することが可能となる。
従って、上階側屈曲トラスセグメント(32)を既設トラス(1)の上面に沿ってスムーズに搬送することが出来る。
【0052】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、既設トラスに対するトラスセグメントの高さ位置を調整するために伸縮機構(42)やねじ機構を採用しているが、これに限らず、周知の種々の機構を採用することが出来る。
【0053】
又、上記実施形態では、既設トラス(1)に沿って新設トラス(3)の各トラスセグメント(30)を順次、下から上へ引き上げているが、各トラスセグメント(30)を順次、上から下へ降ろしていく工法を採用することも可能である。
【0054】
又、上記実施形態では、工場にて新設トラス(3)を完成させた後、該新設トラス(3)を複数のトラスセグメント(30)に分割し、これらのトラスセグメント(30)をリニューアル工事の現場に搬入することとしているが、新設トラス(3)を構成すべき複数のトラスセグメント(30)を工場にて別々に製造した後、工場ではこれらのトラスセグメント(30)を組み立てることなく、リニューアル工事の現場に搬入することも可能である。
【0055】
更に本発明は、エスカレータに限らず、動く歩道の如く水平方向に乗客を搬送する乗客コンベアに実施することも可能である。