(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115235
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】各輪独立駆動台車の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
B60L15/20 Y
B60L15/20 S
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-63638(P2013-63638)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-192920(P2014-192920A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇伸
(72)【発明者】
【氏名】只野 裕吾
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌克
【審査官】
久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−328993(JP,A)
【文献】
実開昭61−202107(JP,U)
【文献】
特開平08−242506(JP,A)
【文献】
特開平09−233613(JP,A)
【文献】
実開平02−026303(JP,U)
【文献】
特開平10−234108(JP,A)
【文献】
特開平05−276606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各車輪をそれぞれ独立して駆動制御する各輪独立駆動台車の制御装置であって、
前記制御装置は、
各車輪が空転・滑走しているか否かを判定し、
左右対の車輪の一方のみが空転・滑走している場合は、空転・滑走状態の車輪のトルクを車輪が再粘着するまで引き下げ、同時に空転・滑走状態の車輪と左右対の粘着状態の車輪のトルクに前記引き下げた分のトルクを重畳し、
左右対の車輪の両方が空転・滑走している場合は、両車輪のトルクを車輪が再粘着するまで引き下げることを特徴とする各輪独立駆動台車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪(4輪ないし複数輪)の各輪が独立して回転する各輪独立駆動台車に係り、特に、車輪が空転または滑走を検知した場合における空転・滑走再粘着制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動台車等の電気車においては低床化が求められており、この低床化を実現させるために輪軸を省いた各輪独立駆動台車が採用され始めている。前記各輪独立駆動台車は、それぞれの車輪(4輪ないし複数輪)に、電動機,インバータが設けられており、各車輪を独立して回転駆動制御するものである。
【0003】
各輪独立駆動台車は左右の車輪が輪軸で結ばれていないため、左右の車輪を別々に駆動することが可能である。そのため、左右対の車輪のどちらか一方だけ空転滑走した場合、空転・滑走状態の車輪にのみ空転・滑走再粘着制御(通常、トルクを絞る制御)を行うことが可能である。
【0004】
しかしながら、左右対の車輪の一方だけ空転・滑走再粘着制御を行った場合、左右でトルクアンバランスが生じ、このトルクアンバランスにより、予期せぬヨーイングトルクが発生する可能性がある。このトルクアンバランスを抑制する制御装置が特許文献1に開示されている。
【0005】
図6に、特許文献1における各輪独立駆動台車の構成図を示す。
図6に示す各輪独立駆動台車は、電力供給装置10から電動機の固定子2a,2bに電力を供給し、その電力を電子制御装置20によって、所定の条件に基づき左右各車輪を独立して制御している(詳しくは、特許文献1参照)。
【0006】
次に、
図7のフローチャートに基づき特許文献1における各輪独立駆動台車の動作を説明する。
【0007】
[動作の説明]
S11:まず、電力供給装置10で検出した電圧検出値Va,Vb,電流検出値ia,ib,回転角速度センサ8a,8bで検出した回転角速度検出値ω
ma,ω
mb,車両速度センサ9で検出した車両速度検出値(車両全体を代表する並進速度)vbが入力インターフェース(I/F)25を介して電子制御装置20に読み込まれる。
【0008】
S12:電子制御装置20において、車輪が空転しているか否かを車両速度検出値vb<回転角速度rω
mに基づいてチェックする。なお、rは車輪径とする。
【0009】
S13:ステップS12において、YES(vb<rω
m)と判断された場合は、電子制御装置20において、空転異常として検出する。
【0010】
S14:空転が検知されると、出力インターフェース(I/F)27を介して出力信号を電子制御装置10の電力制御部12に送出し、空転状態の車輪のトルクと共に、粘着状態の車輪のトルクを下げるように制御する。すなわち、空転状態の車輪の空転が収まるまで、除々に空転状態の車輪のトルクを下げ、粘着状態の車輪も同様に、かつ、同時にトルクを下げる。
【0011】
S15:ステップS12において、No(vb≧rω
m)と判断された(空転が検知されなかった)場合には、前記データをCPU21で演算し、T=Pm/ω
mに基づき車輪4aおよび車輪4bのトルクの推定および車輪空転の推定を行う。
【0012】
S16:車輪4aと車輪4bのトルク差がRAM24に記憶されたトルク差閾値以上か否かをチェックする。
【0013】
S17:ステップS16でYES(トルク差がトルク差閾値以上)であると判断された場合は、それが所定時間(プログラマブル・タイマ22に予めセットされた時間:例えば、5秒)以上継続するか否かをチェックする。
【0014】
S18:ステップ17がYES(トルク差がトルク差閾値以上である時間が所定時間以上)であると判断された場合は、トルク差異常として検出する。
【0015】
S19:両側車輪4a,4bのトルクを共に「0」に制御する。
【0016】
このように、空転・滑走再粘着制御を行う際、トルクアンバランスが発生することを防ぐため、車輪4aと車輪4bのトルク差を常時監視している。そして、車輪4aと車輪4bのトルク差がトルク差閾値以上、かつ、所定の時間以上継続する場合、前記同一軸内の車輪4a,車輪4bの駆動または制動トルクを、電子制御装置20内のスイッチ(図示省略)をオフにすることにより、共に0に制御する。
【0017】
また、例えば車輪4aが空転を検知した場合には、空転の生じていない車輪4bのトルクも空転状態の車輪4aと同様にトルクを下げることにより、両側車輪4a,4bにおけるトルクのバランスをとり、安定走行へと移行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平11−8901号公報(段落[0017]〜[0025],[0034]〜[0040],第1図,第7図)
【特許文献2】特開2004−306865号公報
【特許文献3】特開平05−276606号公報
【特許文献4】特開2009―290954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
各輪独立駆動台車では、左右輪が独立して空転・滑走をする可能性がある。その場合、前述した特許文献1の制御方法では、片側の車輪だけ空転した場合でも、ヨーイングトルクの発生を防止するため、空転状態の車輪のトルクに伴い、粘着状態の車輪のトルクも絞る制御が行われる。しかし、この制御方法では、粘着状態の車輪の最大摩擦係数は十分大きいにも関わらずトルクを絞ることとなり、車両の加減速性能の低下を招くこととなる。
【0020】
以上示したようなことから、各輪独立駆動台車において、一部の車輪が空転滑走した際における車両の加減速性能の低下を抑制することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、各車輪をそれぞれ独立して駆動制御する各輪独立駆動台車の制御装置であって、前記制御装置は、各車輪が空転・滑走しているか否かを判定し、左右対の車輪の一方のみが空転・滑走している場合は、空転・滑走状態の車輪のトルクを車輪が再粘着するまで引き下げ、同時に粘着状態の車輪のトルクに前記引き下げた分のトルクを重畳し、左右対の車輪の両方が空転・滑走している場合は、両車輪のトルクを車輪が再粘着するまで引き下げることを特徴とする。
【0022】
また本発明の別の態様は、各車輪をそれぞれ独立して駆動制御する各輪独立駆動台車の制御装置であって、前記制御装置は、1台車枠内の各車輪が空転・滑走しているか否かを判定し、1台車枠内の車輪の一部のみが空転・滑走している場合は、空転・滑走状態の車輪のトルクを車輪が再粘着するまで引き下げ、同時に粘着状態の車輪のトルクに前記引き下げた分のトルクを分配して重畳し、1台車枠内の車輪の全てが空転・滑走している場合は、全車輪のトルクを車輪が再粘着するまで引き下げることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の別の態様は、各車輪をそれぞれ独立して駆動制御する各輪独立駆動台車の制御装置であって、前記制御装置は、1編成内の各車輪が空転・滑走しているか否かを判定し、1編成内の車輪の一部のみが空転・滑走している場合は、空転・滑走状態の車輪のトルクを車輪が再粘着するまで引き下げ、同時に粘着状態の車輪のトルクに前記引き下げた分のトルクを分配して重畳し、1編成内の車輪の全てが空転・滑走している場合は、全車輪のトルクを車輪が再粘着するまで引き下げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、各輪独立駆動台車において、一部の車輪が空転滑走した際における車両の加減速性能の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態1における各輪独立駆動台車の制御装置のブロック図である。
【
図2】実施形態1における各輪独立駆動台車の動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態2における各輪独立駆動台車の制御装置のブロック図である。
【
図5】実施形態2における各輪独立駆動台車の動作を示すフローチャートである。
【
図6】従来における各輪独立駆動台車のブロック図である。
【
図7】従来における各輪独立駆動台車の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態1,2における各輪独立駆動台車の制御装置を図面等に基づいて詳細に説明する。
【0027】
[実施形態1]
電気車は車輪・レール間に働く粘着力によって加減速を行い、引張力/軸重比が粘着係数以下の範囲であれば粘着走行がなされるが、粘着係数を超えた場合には空転・滑走が発生する。空転・滑走が発生した場合には、電動機の発生トルクを引き下げて粘着走行に復帰させる「再粘着制御」が行われる。また、本実施形態1で適用される各輪独立駆動台車は、各車輪の駆動モータを独立して駆動制御している。
【0028】
本実施形態1における各輪独立駆動台車の制御装置のブロック図を
図1に示す。本実施形態1における各輪独立駆動台車の制御装置30は、再粘着制御部40と、電力制御部50と、を有する。
【0029】
再粘着制御部40は、それぞれ各車輪4a,4bで検出された駆動モータMaの回転角速度ωa,駆動モータMbの回転角速度ωbを入力し、各車輪4a,4bの回転角速度ωa,ωbと車両速度情報Vから各車輪の空転・滑走状態を判定する。そして、前記車輪が空転滑走状態であった場合には再粘着制御トルク指令Tslip_a,Tslip_bを電力制御部50へ出力する。
【0030】
電力制御部50では、左右輪の駆動モータMa,Mbへ、それぞれモータ駆動トルクTa,Tbを出力する。
【0031】
なお、再粘着制御部40の内部構成は、特許文献1の電子制御装置20と同様の構成でも良い。また、電力制御部50は、特許文献1の電力供給装置10と同様の構成でも良い。
【0032】
次に、本実施形態1における各輪独立駆動台車の動作を
図2のフローチャートに基づき説明する。
【0033】
S21:電力制御部50で検出された電圧検出値Va,Vb,電流検出値ia,ibおよび回転角速度検出値(例えば、回転角速度センサ等で検出された回転角速度検出値)ωa,ωb,車両速度情報(例えば、車両速度センサで検出した車両速度検出値)Vが入力インターフェース等(図示省略)を介して再粘着制御部40に読み込まれる。
【0034】
S22:再粘着制御部40において、各車輪4a,4bの空転検知を行う。空転検知の方法としては、特許文献1と同様に車両速度(車両全体を代表する並進速度の推定値)情報Vと回転角速度rωa(または、rωb)とを比較して回転角速度rωa(または、rωb)の方が大きい場合空転として検知する方法や、車両速度情報Vと回転角速度rωa(または、rωb)との差を回転角速度rωa(または、rωb)で除算してすべり率を算出し、このすべり率が所定の閾値以上、所定時間以上継続した場合、空転として検知する方法等が挙げられる。
【0035】
S23:S22で空転が検知された場合は、空転状態の車輪と左右対の車輪(例えば、車輪4aが空転状態と判断された場合は左右対の車輪4b)が空転しているか否かを再粘着制御部40において判定する。ここで、空転しているか否かの判定はS22で例示した方法と同様の方法でなされるものとする。
【0036】
S24:S23で空転状態の車輪と左右対の車輪が粘着状態と判定された場合は、S22で空転状態が検知された車輪に再粘着制御(トルクをT引き下げる制御)を行う。そして、同時に、空転状態の車輪と左右対のもう一方の車輪(粘着状態の車輪)のトルクをT引き上げる。
【0037】
例えば、車輪4aが空転状態,車輪4bが粘着状態と判断された場合は、再粘着制御部40から電力制御部50に再粘着制御トルク指令Tslip_a,Tslip_bが出力され、電力制御部50から駆動モータMaへ出力されるモータトルク指令TaがT引き下げられ、同時に駆動モータMbへ出力されるモータトルク指令TbがT引き上げられる。ここで、駆動モータMaで引き下げられるモータ駆動トルクTと駆動モータMbで引き上げられるモータ駆動トルクTは同じ値とする。
【0038】
S25:一方、S23で両車輪4a,4bが空転状態と判断された場合は、左右対の両車輪4a,4bに対して再粘着制御(トルクの引き下げ)を行う。
【0039】
具体的には、両車輪4a,4bが空転状態と判断された場合は、再粘着制御部40から電力制御部50に再粘着制御トルク指令Tslip_a,Tslip_bを出力し、粘着走行に復帰するまで電力制御部50から駆動モータMa,Mbへ出力されるモータトルク指令Ta,Tbが引き下げられる。ここで、両車輪4a,4bの駆動モータMa,Mbで引き下げられるモータ駆動トルク指令は同じ値とする。
【0040】
なお、
図2に示すフローチャートは、空転時の説明となっている。滑走時においては、適宜読み替える必要があるが、動作フローは同じである。
【0041】
[ヨーイングトルクを問題としない理由]
ここで、
図3に基づきヨーイングトルクについて説明する。本実施形態1は各輪独立駆動台車であるため、車輪4aと車輪4bではレール7a,7bと車輪のなす角(以下、アタック角と称する)θが異なるが、ほぼ等しいと仮定して説明する。
【0042】
台車がレール7a,7bに対してなす角をθ´とすると、アタック角θ≒θ´となる。
図3に示すように、ヨーイングトルクは左右車輪4a,4bのトルク差のsinθ´成分である。鉄道では、車輪の路面形状とレール形状によりレール7a,7bと車輪4a,4bのなす角θ≒0であり、ヨーイングトルクは脱線等の異常状態(事故)が起こるほど大きくならないと予測される。
【0043】
本願発明における各輪独立駆動台車では、ヨーイングトルクの発生を避けられないが、車両の加減速性能とヨーイングトルクの問題はトレードオフである。しかし、前述したように、各輪独立駆動台車において、左右車輪4a,4bで異なる駆動トルクが発生した場合でも、脱線等の危険状態に至ることはない。そのため、本願発明ではヨーイングトルク発生の防止ではなく、加減速性能を重視した制御方式を提案している。 本実施形態1における各輪独立駆動台車の制御装置は、各輪独立駆動台車が左右車輪4a,4bに対して、それぞれ異なったトルクを入力することが可能であるため実現できるものである。
【0044】
以上示したように、本実施形態1における各輪独立駆動台車の制御装置30によれば、空転状態の車輪が再粘着制御で絞るトルクT分、粘着状態の車輪における駆動トルクをトルクT分同時に引き上げるため、車両の加減速性能の低下を抑制することが可能である。
【0045】
すなわち、加減速における駆動トルク分を左右の車輪4a,4bの車輪における平均値で維持するように再粘着制御を行うことにより、車両の加減速に影響を与えずに、空転・滑走再粘着制御が可能となる。
【0046】
例えば、右レール7b(車輪4b)が空転しやすい場合に、左右対の車輪4a,4bでのトルク配分(車輪4bのトルクを引き下げ、車輪4aのトルクを引き上げ)を行うことにより、左右のレール7a,7bそれぞれにおける摩擦係数変化による空転・滑走に対し確実に再粘着しつつ、ノッチ入力トルク相当の加速が可能となる。
【0047】
なお、左右両側の車輪4a,4bが空転してしまった場合には両車輪4a,4bのトルクを絞ることとなるが、従来技術においては少なくとも一方の車輪で空転を検知した場合には両車輪のトルクを引き下げていたため、従来技術と比較して劣ることはない。
【0048】
[実施形態2]
本実施形態2における各輪独立駆動台車の制御装置のブロック図を
図4に示す。
図4に示す各輪独立駆動台車は、台車枠60内に車輪がn個あり、それぞれを独立して駆動制御するものである。また、本実施形態2における各輪独立駆動台車の制御装置30は、再粘着制御部40と、電力制御部50と、を有する。
【0049】
再粘着制御部40は、各車輪4a〜4nで検出された駆動モータMa〜Mnの回転角速度ωa〜ωnを入力し、各車輪4a〜4nの回転角速度ωa〜ωnと車両速度情報Vから各車輪の空転・滑走状態を判定する。そして、前記車輪が空転・滑走状態であった場合には、再粘着トルク指令Tslip_a〜Tslip_nを電力制御部50へ出力する。
【0050】
電力制御部50では台車枠60内の駆動モータMa〜Mnへ、それぞれモータ駆動トルクTa〜Tnを出力する。
【0051】
次に、本実施形態2における各輪独立駆動台車の動作を
図5のフローチャートに基づき説明する。なお、実施形態1と同様の箇所については、詳細な説明は省略する。
【0052】
S31〜S32:実施形態1におけるS21〜S22と同様である。
【0053】
S33:S32で空転が検知された場合は、台車枠60内の全ての車輪が空転しているか否かを再粘着制御部40において判定する。
【0054】
S34: 全ての車輪が空転していないと判定された場合には、空転状態の車輪をトルクT引き下げ、各粘着状態の車輪をトルクU引き上げる。このトルクUは下記(1)式により算出される。
【0056】
すなわち、空転状態の車輪で引き下げた分のトルクを、台車枠60内の粘着状態の車輪に均等に分配して重畳させる。
S35:一方、S33で全ての車輪が空転状態と判定された場合は、全ての車輪に対して再粘着制御(トルクを引き下げる制御)を行う。
【0057】
なお、動作フローの説明は、空転時の説明となっている。滑走時においては適宜読み替える必要があるが、動作フローは同様である。
【0058】
以上示したように、本実施形態2における各輪独立駆動台車の制御装置30によれば、空転状態の車輪が再粘着制御で引き下げたトルクを、台車枠60内における粘着状態の車輪のトルクに重畳することによって、台車枠60内における各車輪4a〜4nの駆動トルクの平均値は空転前と空転後で変わらないまま保つことができ、車両の加減速性能を保つことが可能である。
【0059】
すなわち、加減速に関係するノッチ入力トルクを台車枠60内の全ての車輪で維持するように再粘着制御を行うことにより、車両の加減速に影響を与えずに、空転・滑走再粘着制御が可能となる。
【0060】
例えば、車輪4a〜4nの路面状態などにより、台車枠60内で一つの車輪だけ空転・滑走しやすい場合には、他の粘着状態の車輪にトルクを分配して重畳することにより、台車枠60内の車輪とレールとの摩擦係数変化による空転・滑走に対し確実に再粘着しつつ、ノッチ入力相当の加速が可能となる。
【0061】
なお、粘着状態の車輪がトルクを上昇したことによって全車輪が空転してしまった場合には、全車輪のトルクを絞ることとなるが、従来技術においては左右輪のうち少なくとも一方の車輪で空転を検知した場合には左右両車輪のトルクを引き下げていたため、従来技術と比較して劣ることはない。
【0062】
また、本実施形態2では、台車枠60内で説明しているが、電車編成内に拡大してもよい。
【符号の説明】
【0063】
4a,4b…車輪
7a,7b…レール
Ma〜Mn…駆動モータ
30…制御装置
40…再粘着制御部
50…電力制御部
60…台車枠