(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115262
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】センサ装置およびモニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20170410BHJP
H02M 3/156 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
H02M3/156
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-77103(P2013-77103)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-204511(P2014-204511A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 照起
(72)【発明者】
【氏名】今井 紘
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 裕
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 智博
【審査官】
杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−164550(JP,A)
【文献】
特開2005−253170(JP,A)
【文献】
特開2006−81369(JP,A)
【文献】
特開2006−353059(JP,A)
【文献】
特開2007−89372(JP,A)
【文献】
特開2012−98809(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2008−0089852(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0002102(KR,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0081086(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/058138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02M 3/156
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象を計測する第1センサ部と、電力供給経路を切り換える制御部と、第1センサ部および制御部に電力供給する電源と、電圧を変換するコンバータと、電圧を調整するレギュレータとを備えたセンサ装置であって、
前記第1センサ部の計測データを送信する通信部をさらに備え、
前記電源から前記第1センサ部および前記制御部への電力供給経路として、
前記第1センサ部が前記電源に直結されるか若しくは前記電源と導通されず、かつ、前記制御部が前記電源に直結される電力供給経路Aと、
前記電源、前記コンバータおよび前記レギュレータが直列に接続され、前記レギュレータの出力が前記第1センサ部に供給され、前記コンバータまたは前記レギュレータの出力が前記制御部に供給される電力供給経路Bと、
前記電源および前記コンバータが接続され、前記コンバータの出力が前記制御部および前記通信部に供給され、前記第1センサ部が電源と導通されない電力供給経路Cと、
を有し、
前記制御部は、前記第1センサ部または前記通信部の動作状態に応じて、前記電力供給経路A、前記電力供給経路Bおよび前記電力供給経路Cを切り換えることを特徴とする、センサ装置。
【請求項2】
前記電力供給経路Aにおいて、前記通信部が前記電源に直結され、前記電力供給経路Bにおいて、前記コンバータの出力が前記通信部および前記制御部に供給されることを特徴とする、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
計測対象を計測する第2センサ部をさらに備え
前記電力供給経路Aにおいて、前記第2センサ部が前記電源に直結され、
前記電力供給経路Bにおいて、前記コンバータの出力が前記制御部、前記通信部および前記第2センサ部に供給され、
前記電力供給経路Cにおいて、前記コンバータの出力が前記第2センサ部に供給されることを特徴とする、請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記通信部は、計測データを無線で送信することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記コンバータは昇圧型コンバータであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記コンバータは降圧型コンバータであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記コンバータは、前記電源の電圧が所定値以上の場合に降圧し、前記電源の電圧が所定値未満の場合に昇圧する昇降圧型コンバータであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
環境発電により得られる電力を前記電源として利用することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
電池を前記電源として利用することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記第1センサ部は、アナログ信号を出力するセンサであり、
前記制御部は、前記レギュレータの出力電圧を参照電圧とし、前記第1センサ部から出力されたアナログ信号と参照電圧とを比較することで、計測対象の計測デジタル値を出力することを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項11】
構造物に搭載されるセンサ装置であって、
前記第1センサ部は、前記構造物の振動を計測することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のセンサ装置と、
前記センサ装置が有する前記第1センサ部の計測データを当該センサ装置から受信する受信装置とを備えることを特徴とする、モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度や湿度など様々な計測対象を計測するセンサ装置およびモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
我々の周辺環境には、多種多様なセンサが設置されており、センサによる計測データをサーバ装置(あるいは本体装置)に送信し、サーバ装置にて解析することが行われている。そして、この解析結果により、周辺環境に設置された機器類を制御することが行われている。
【0003】
センサでの計測及びデータ送信が多くなると、当然消費電力も多くなる。例えば、センサを電池で動作させる場合、計測及びデータ送信が多くなると、電池の寿命が短くなり、電池を頻繁に交換する必要がある。例えば、特許文献1は、消費電力を低減することが可能なセンサ装置を開示している。
【0004】
具体的には、センサ部、制御部を有するセンサ装置であって、電源からセンサ部および制御部への電力供給経路を複数有し、これらの電力供給経路を上記センサ部の動作状態によって切り替え可能であるセンサ装置が開示されている。また、上記電力供給経路は、消費電流が比較的大きくなる動作モード時にはDCコンバータを介して電力供給を行う経路とされ、消費電流が比較的小さくなる動作モード時には電源が負荷に直結されて電力供給を行う経路とされるような電力供給経路の切り替えが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−98809号公報(2012年5月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術は、DCコンバータのスイッチングにより発生するノイズにより変動した電圧がDCコンバータからセンサ部に出力される。この電圧の変動が影響して、センサ部による計測の精度が低下するといった問題がある。特に微小な物理量の変化を計測するセンサ部において問題となる。また、電池を電源として使用する場合には、使用とともに電圧が下がることにより電池電圧が変動するという問題点がある。さらに、外部からの電力を蓄電する二次電池や電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイス等を電源として使用する場合には、内部の電圧変動も大きいという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、動作状態が変化しうる場合においても、消費電力の低減と高精度な計測が可能なセンサ装置およびモニタリングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のセンサ装置は、計測対象を計測する第1センサ部と、電力供給経路を切り換える制御部と、第1センサ部および制御部に電力供給する電源と、電圧を変換するコンバータと、電圧を調整するレギュレータとを備えたセンサ装置であって、前記電源から前記第1センサ部および前記制御部への電力供給経路として、前記第1センサ部が前記電源に直結されるか若しくは前記電源と導通されず、かつ、前記制御部が前記電源に直結される電力供給経路Aと、前記電源、前記コンバータおよび前記レギュレータが直列に接続され、前記レギュレータの出力が前記第1センサ部に供給され、前記コンバータまたは前記レギュレータの出力が前記制御部に供給される電力供給経路Bとを有し、前記制御部は、前記第1センサ部の動作状態に応じて、前記電力供給経路Aおよび前記電力供給経路Bを切り換える。
【0009】
上記の構成によれば、第1センサ部の動作状態に応じて電力供給経路を切り換えるので、最適な電力供給経路を選択し、低消費電力化を図ることができる。例えば、第1センサ部が計測動作を行わない待機モードのときに電力供給経路Aを選択し、第1センサ部が計測動作を行うセンシングモードのときに電力供給経路Bを選択すればよい。待機モードでは制御部で消費される電力が小さいため、電源を制御部に直結することで、コンバータにおける消費電力を削減できる。一方、センシングモードでは第1センサ部で消費される電力が大きいため、コンバータを介して電源と第1センサ部および制御部とを接続することで、電流変換効率が大きい状態でコンバータを駆動させることできる。
【0010】
また、電力供給経路Bに切り換えられているとき、コンバータにより変換された電圧変動が不安定な電圧がレギュレータによって一定の電圧に調整されるので、第1センサ部には電圧変動の少ない安定した電力が供給される。
【0011】
これにより、第1センサ部は、高精度に計測することができる。したがって、動作状態が変化しうる場合においても、消費電力の低減と高精度な計測が可能なセンサ装置を提供することができる。
【0012】
また、本発明のセンサ装置は、前記第1センサ部の計測データを送信する通信部を備え、前記電力供給経路Aにおいて、前記通信部が前記電源に直結されるか若しくは前記電源と導通されず、前記電力供給経路Bにおいて、前記コンバータの出力が前記通信部および前記制御部に供給され、前記電力供給経路として、前記電力供給経路Aおよび前記電力供給経路Bに加えて、前記電源および前記コンバータが接続され、前記コンバータの出力が前記制御部および前記通信部に供給され、前記第1センサ部が電源と導通されない電力供給経路Cを有し、前記制御部は、前記第1センサ部または前記通信部の動作状態に応じて、前記電力供給経路A,前記電力供給経路Bおよび前記電力供給経路Cを切り換える構成とすることができる。
【0013】
上記の構成によれば、通信部により計測データを送信させる送信モードのときに電力供給経路Cを選択すればよい。通信部が計測データを送信する際、比較的大きな電力が必要なるが、コンバータを介して通信部に電力が供給されるため、電流変換効率が大きい状態でコンバータを駆動させることできる。また、このときレギュレータを駆動させため、レギュレータにおける動作電力を削減できる。
【0014】
また、本発明のセンサ装置は、計測対象を計測する第2センサ部をさらに備え、前記電力供給経路Aにおいて、前記第2センサ部が前記電源に直結され、前記電力供給経路Bにおいて、前記コンバータの出力が前記制御部、前記通信部および前記第2センサ部に供給され、前記電力供給経路Cにおいて、前記コンバータの出力が前記第2センサ部に供給される。
【0015】
上記の構成によれば、第2センサ部は、第1センサ部と比べて電圧変動が大きい電力が供給されるので、高精度に計測する必要がない計測対象に対する計測に利用することができる。したがって、高精度に計測する必要がある計測対象と、高精度に計測する必要がない計測対象それぞれについて、センサを使い分けることが可能となる。
【0016】
また、本発明のセンサ装置は、前記第1センサ部の計測データを送信する通信部を備え、前記電力供給経路Aにおいて、前記通信部および前記第1センサ部が前記電源に直結され、前記電力供給経路Bにおいて、前記レギュレータの出力が前記制御部および前記通信部に供給される構成とすることができる。
【0017】
また、本発明のセンサ装置において、前記通信部は、計測データを無線で送信する構成とすることができる。
【0018】
例えば、前記コンバータは昇圧型コンバータまたは降圧型コンバータである。また、前記コンバータは、前記電源の電圧が所定値以上の場合に降圧し、前記電源の電圧が所定値未満の場合に昇圧する昇降圧型コンバータであってもよい。
【0019】
また、本発明のセンサ装置において、環境発電により得られる電力を前記電源として利用したり、電池を前記電源として利用することができる。
【0020】
また、本発明のセンサ装置において、前記第1センサ部は、アナログ信号を出力するセンサであり、前記制御部は、前記レギュレータの出力電圧を参照電圧とし、前記第1センサ部から出力されたアナログ信号と参照電圧とを比較することで、計測対象の計測デジタル値を出力する。
【0021】
上記の構成によれば、制御部と第1センサ部それぞれにおける電圧が異なるが、制御部は、第1センサ部が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する際、レギュレータの出力電圧を参照電圧として用いることで、電圧誤差をなくすことできる。
【0022】
また、本発明のセンサ装置は、構造物に搭載されるセンサ装置であって、前記第1センサ部は、前記構造物の振動を計測する。
【0023】
上記の構成によれば、構造物に生じる振動に対して高精度な計測が可能となる。
【0024】
また、上記課題を解決するために、本発明のモニタリングシステムは、前記センサ装置と、前記センサ装置が有する前記第1センサ部の計測により生成する計測データを当該センサ装置から受信する受信装置とを備える。
【0025】
上記の構成によれば、設置環境等に応じて動作状態が変化しうる場合においても、消費電力の低減と高精度な計測が可能なモニタリングシステムを提供することができる。
【0026】
本発明の各態様に係るセンサ装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記センサ装置が備える各手段として動作させることにより上記センサ装置をコンピュータにて実現させるセンサ装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、動作状態が変化しうる場合においても、消費電力の低減と高精度な計測ができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施の形態におけるセンサ装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】DCコンバータおよびレギュレータそれぞれの出力電圧の波形を示すイメージ図である。
【
図3】DCコンバータおよびレギュレータそれぞれの出力電圧の計測結果を示す図である。
【
図4】測定・送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】電源に環境発電を利用した形態のセンサ装置の一例を示すブロック図である。
【
図6】第2の実施の形態におけるセンサ装置の一例を示すブロック図である。
【
図7】第3の実施の形態におけるセンサ装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるセンサ装置の一例を示すブロック図である。
図1に示されるセンサ装置1は、様々な物に設置され、その周囲の物理量(例えば、加速度、変位量、歪み、振動周波数、温度、湿度、圧力、赤外線量、音量、照度、風速など)を計測する。特に、本実施形態のセンサ装置1は、微小な変化を示す物理量、つまり高精度が必要とされる物理量を計測するのに適した装置である。このような微小な変化を示す物理量とは、例えば、構造物における振動に関する物理量(振動周波数、加速度、変位量など)が考えられる。そのため、本実施形態に係るセンサ装置1は、例えば、構造物に設置され、当該構造物の振動に関する物理量などを計測するのに適している。
【0030】
なお、上記構造物の種類は特に限定されるものではなく、例えば、建物、橋梁、トンネル、住宅、車両、プラント設備、パイプライン、電線、電柱、ガス供給設備、上下水道設備、遺跡など、多様な構造物に適用できる。
【0031】
図1に示されるように、センサ装置1は、センサ装置1全体を制御する制御IC(制御部)10と、DCコンバータ20と、降圧型のレギュレータ30と、センサ部(第1センサ部)40と、無線通信機(通信部)50と、直流電源60と、スイッチSW1〜SW3とを備える。
【0032】
DCコンバータ20は、スイッチSW1を介して、DCコンバータ20の入力線が直流電源60に接続される。DCコンバータ20は、制御IC10によって制御される複数のスイッチング素子を含み、スイッチング素子のスイッチングを制御して、直流電源60の電圧を昇圧または降圧することにより所定の第1電圧値に変換する。直流電源60は、例えば電池等の有限の電力供給源である。また、DCコンバータ20の出力線には無線通信機50が接続され、DCコンバータ20と無線通信機50とを接続する接続線には、制御IC10が接続される。電池は一次電池もしくは外部からの電力を蓄電する二次電池や電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイス等のいずれを使用しても良い。
【0033】
なお、DCコンバータ20は、昇圧型、降圧型または昇降圧型のいずれであってもよいが、電源の電圧の大きさに応じて使い分けることが可能である。電源が例えば2.4〜3.0V程度の低い電圧である場合、昇圧型を使用し、例えば4.5〜6.0V程度の高い電圧の場合、降圧型を使用し、
図5に示すように環境発電を電源として使用する場合、昇降圧型を使用する。環境発電は、例えば太陽光、振動、温度、電磁波または風力を利用することにより得られる。環境発電からの出力を直接電源として使用してもよいし、環境発電の出力をいったん電池に蓄電し、これを電源として使用してもかまわない。
【0034】
無線通信機50は、制御IC10により制御され、サーバ装置(受信装置)2などと通信する。具体的には、センサ部40が生成する計測データをサーバ装置2に送信する。
【0035】
また、スイッチSW2は、一端が直流電源60に接続され、他端がDCコンバータ20と制御IC10に接続され、スイッチSW3は、一端が電源電圧ラインVccに接続され、他端がレギュレータ30に接続される。
【0036】
レギュレータ30は、入力電圧を所定電圧に調整して電圧を安定化する。レギュレータ30は、センサ部40と接続され、DCコンバータ20が出力する電圧を第1電圧値よりも低い第2電圧値に調整した電力をセンサ部40に出力する。
【0037】
センサ部40は、例えば温度センサ、加速度センサ、ひずみセンサ、圧力センサ、湿度センサ、赤外線センサ、音センサまたは振動センサであり、制御IC10からの指示に応じて計測対象を計測する。センサ部40は、計測により計測結果を示す計測データを生成し、生成された計測データを制御IC10に出力する。センサ部40は、アナログ式のセンサまたはデジタル式のセンサのいずれでもよい。センサ部40をアナログ式のセンサとする場合、制御IC10はレギュレータ30が出力する電圧をリファレンス電圧として用いて、デジタル信号に変換する。これにより、AD変換の際、センサ部40と制御ICとにおける電圧誤差をなくすことができる。
【0038】
制御IC10は、スイッチSW1〜SW3を制御して、センサ装置1のモードに応じてオン/オフを切り替える。センサ装置1は、スリープモード、センシングモードおよび送信モードの3つのモードを有している。
【0039】
スリープモードは、センサ部40および無線通信機50が動作しないモードである。制御IC10は、スリープモードの場合、スイッチSW2をオン、スイッチSW1,SW3をオフにする。
【0040】
センシングモードは、センサ部40を動作させ、センシングさせるモードである。制御IC10は、センシングモードの場合、スイッチSW1,SW3をオン、スイッチSW2をオフにする。
【0041】
送信モードは、センシングモードにおいてセンサ部40により生成された計測データを送信するモードである。制御IC10は、送信モードの場合、スイッチSW1をオン、スイッチSW2,SW3をオフにする。
【0042】
制御IC10は、計測時刻になるとセンサ部40に計測を指示する。具体的には、計測時刻を検出すると、スリープモードからセンシングモードにモードを遷移させ、センサ部40に計測を指示する。計測時刻は、例えば前回の計測時刻から所定時間経過した時刻であり、制御ICが計時する。
【0043】
制御IC10は、センサ部40が計測により生成した計測データをセンシングモードにおいて取得すると、取得した計測データを図示しないメモリに記憶する。また、制御IC10は、センサ部40が計測により生成した計測データを取得すると、センシングモードから送信モードにモードを遷移させ、無線通信機50を制御して、メモリに記憶された計測データをサーバ装置2に送信する。
【0044】
具体的に、送信モードに遷移すると、制御IC10は、サーバ装置2との通信を確立させる指示を無線通信機50に出力するので、その指示を受けて無線通信機50は、サーバ装置2との間で通信を確立する。無線通信機50は、サーバ装置2との間で通信を確立すると、その旨を示す信号を制御IC10に出力するので、その信号を受けて制御IC10は、メモリに記憶された計測データを無線通信機50に送信させる。一方、無線通信機50はサーバ装置2との間で通信を確立できない場合、その旨の信号を制御IC10に出力するので、その信号を受けて制御IC10は、送信モードからスリープモードに遷移させる。また、制御IC10は、無線通信機50により計測データが送信されたことが通知されると、その通知を受けて、送信モードからスリープモードに遷移させる。
【0045】
上述したように、センシングモードにおいて、DCコンバータ20により第1電圧値に変換された後、レギュレータ30により第2電圧値に調整された電力がセンサ部40に供給される。これにより、例えば
図2に示されるように、直流電源60としての電池とDCコンバータ(昇圧型または降圧型)20とレギュレータ30とが直列に接続されている電力ラインにおいて、電池電圧がDCコンバータ20により3.3Vに変換される。このとき、DCコンバータ20の変換により出力電圧が変動してしまう。
図3(a)は実際にDCコンバータ(降圧型)20の出力電圧を示した計測結果であり、出力電圧が変動していることがわかる。
【0046】
そして、DCコンバータ20が変換した出力電圧をレギュレータ30により調整して3.0Vの一定とする。これにより、電圧変動のない一定の電圧を出力させることができる。
図3(b)は実際にレギュレータ30の出力電圧を示した計測結果であり、出力電圧が安定していることがわかる。したがって、センサ部40には、電圧の変動が少ない安定した電力が供給される。これにより、センサ部40は、高精度に計測することができる。また、DCコンバータ20が昇降圧型である場合、直流電源60として環境発電を用いて出力電圧が変動したとしても、DCコンバータ20は、直流電源60からの出力電圧が所定値(例えば3.3V)以上のときに降圧して第1電圧値の電圧を出力し、直流電源60からの出力電圧が所定値未満の場合に昇圧して第1電圧値の電圧を出力するので、効率的に一定の電圧を出力することができる。したがって、効率的かつ高精度な計測が可能となる。
【0047】
また、スリープモードでは、センサ部40および無線通信機50が動作する必要がないため、消費電力が小さくなる。また、DCコンバータ20およびレギュレータ30が停止しているので、消費電力を削減することができる。
【0048】
また、送信モードでは、センサ部40およびレギュレータ30に電力が供給されないので、センサ部40およびレギュレータ30による消費電力を削減することができる。
【0049】
したがって、計測および計測データの送信が必要でない場合にスリープモードに遷移させ、計測する場合にセンシングモードに遷移させ、計測データを送信する場合に送信モードに遷移させることにより直流電源60を高効率的に利用することができる。
【0050】
図4は、測定・送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。測定・送信処理は、制御IC10が測定・送信プログラムを実行することにより、制御IC10により実行される処理である。制御IC10は、スイッチSW1〜SW3をオフにする(ステップS01)。これにより、DCコンバータ20は停止し、制御IC10および無線通信機50には、直流電源60から直接電力が供給される。
【0051】
ステップS02において、制御IC10は、スリープモードに遷移させる。そして、計測待機状態および計測スタート条件が満たされているか否かを判断する(ステップS03)。計測待機状態および計測スタート条件が満たされているならば処理をステップS04に進めるが、そうでなければ処理をステップS02に戻す。
【0052】
ステップS04において、制御IC10は、スイッチSW1をオン、スイッチSW2,SW3をオフにする。これにより、DCコンバータ20は動作し、制御IC10および無線通信機50に電力が供給される。
【0053】
次のステップ05において、制御IC10は、スイッチSW1,SW3をオン、スイッチSW2をオフにする。これにより、さらにレギュレータ30が動作し、制御IC10および無線通信機50に加えてセンサ部40に電力が供給される。このとき、センサ部40には、DCコンバータ20が変換して出力した電力がレギュレータ30により調整されるので、電圧変動の少ない安定した電力が供給される。これにより、高精度な計測が可能となる。
【0054】
次のステップS06において、制御IC10は、ステップS05においてセンサ部40が計測することにより生成した計測データを取得する。そして、スイッチSW1をオン、スイッチSW2,SW3をオフにする(ステップS07)。そして、ステップS06において取得された計測データをメモリに記憶する(ステップS08)。
【0055】
次のステップ09において、制御IC10は、通信待機状態およびデータ送信条件を満たしているか否かを判断する。通信待機状態およびデータ送信条件を満たしているならば処理をステップS10に進めるが、そうでなければ処理をステップS01に戻す。
【0056】
ステップS10において、制御IC10は、無線通信機50を制御して、メモリに記憶された計測データをサーバ装置2に送信する。そして、送信完了か否かを判断する(ステップS11)。送信完了であれば処理を測定・送信処理を終了するが、そうでなければ処理をステップS01に戻す。
【0057】
以上説明したように、本発明のセンサ装置1は、計測対象を計測するセンサ部40と、電力供給経路を切り換える制御IC10と、センサ部40および制御IC10に電力供給する直流電源60と、電圧を変換するDCコンバータ20と、電圧を調整するレギュレータ30と、センサ部40の計測データを送信する無線通信機50とを備えたセンサ装置であって、直流電源60からセンサ部40および制御IC10への電力供給経路として、センサ部40が直流電源60と導通されず、かつ、制御IC10および無線通信機50が直流電源60に直結される電力供給経路Aと、直流電源60、DCコンバータ20およびレギュレータ30が直列に接続され、レギュレータ30の出力がセンサ部40に供給され、DCコンバータ20の出力が制御IC10および無線通信機50に供給される電力供給経路Bと、直流電源60およびDCコンバータ20が接続され、DCコンバータ20の出力が制御IC10および無線通信機50に供給され、センサ部40が直流電源60と導通されない電力供給経路Cとを有し、制御IC10は、センサ部40または無線通信機50の動作状態に応じて、電力供給経路A,電力供給経路Bおよび電力供給経路Cを切り換える。
【0058】
このため、センサ部40の動作状態に応じて電力供給経路を切り換えるので、最適な電力供給経路を選択し、低消費電力化を図ることができる。電力供給経路Bに切り換えられているとき、DCコンバータ20により変換された電圧変動が不安定な電圧がレギュレータ30によって調整されて一定の電圧に調整されるので、センサ部40には電圧変動の少ない安定した電力が供給される。したがって、設置環境等に応じて動作状態が変化しうる場合においても、消費電力の低減と高精度な計測ができる。
【0059】
<第2の実施の形態>
図6は、第2の実施の形態におけるセンサ装置の一例を示すブロック図である。
図6に示すセンサ装置1Aがセンサ装置1と異なる点は、第2センサ部70が追加された点である。他の構成はセンサ装置1と同じであるので、ここではセンサ装置1と異なる点について主に説明する。なお、第1センサ部40は、
図1に示すセンサ部40に対応する。
【0060】
第2センサ部70は、制御IC10によって制御され、制御IC10と無線通信機50とを接続する電源電圧ラインVccに接続される。このため、センシングモードにおいて、DCコンバータ20が出力する電力が供給される。第2センサ部70には第1センサ部40と比べて電圧変動が大きい電源が供給されるが、高精度に計測する必要がない計測対象に対する計測に利用することができる。なお、第2センサ部70は、例えば温度センサ、加速度センサ、ひずみセンサ、圧力センサ、湿度センサ、赤外線センサ、音センサまたは振動センサである。
【0061】
<第3の実施の形態>
図7は、第3の実施の形態におけるセンサ装置の一例を示すブロック図である。
図7に示されるように、センサ装置1Bは、センサ装置1と同様に制御IC10、DCコンバータ20、レギュレータ30、センサ部40、無線通信機50および直流電源60を備え、スイッチSW1,SW2を備える。
【0062】
DCコンバータ20は、スイッチSW1を介して、DCコンバータ20の入力線が直流電源60に接続され、出力線にレギュレータ30が接続される。レギュレータ30の出力線には制御IC10とセンサ部40と無線通信機50とが直列に接続される。また、DCコンバータ20、レギュレータ30およびスイッチSW1と並列にスイッチSW2が接続される。
【0063】
制御IC10は、センサ装置1Bのモードに応じてスイッチSW1,SW2のオン/オフを切り換える。具体的には、スリープモードの場合、スイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンにする。センシングモードおよび送信モードの場合、スイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフにする。
【0064】
なお、本実施の形態において、直流電源60が電池の場合を例に説明したが本発明はこれに限定されない。直流電源60が電池の場合、電池の長寿命化といった目的に大きく寄与するが、直流電源60が有限の電力供給源でなくても本発明では消費電力の削減効果が得られる。
【0065】
〔ソフトウェアによる実現例〕
センサ装置1,1A,1Bの制御ブロック(特に制御IC10)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0066】
後者の場合、センサ装置1,1A,1Bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0067】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1,1A,1B センサ装置
10 制御IC(制御部)
20 DCコンバータ
30 レギュレータ
40,70 センサ部
50 無線通信機(通信部)
60 直流電源