(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微小空間を構成する筐体と前記筐体が有する開口部を閉鎖可能なドアとを有し、被収容物が収容されるポッドの蓋を前記ドアが保持して前記ポッドの蓋を開閉することにより前記ポッドに対する前記被収容物の挿脱を可能とするロードポート装置であって、
前記開口部の外に配置されて前記ポッドを載置可能であって前記ポッドと前記開口部とを整列させる載置台と、
前記微小空間内に不活性ガスを供給すると共に供給量を変化可能なガス供給系と、
前記微小空間の内部の所定領域にて酸素濃度を測定する酸素濃度計と、
前記ポッド内又は前記ドアの前記微小空間側の前の空間に対して前記不活性ガスを供給するガスパージノズルと、
前記ポッドの位置情報を検出するポッド位置検出手段と、
前記ポッドの前記ロードポート装置への載置及び前記蓋の取り付け取り外しに関するポッド状態情報を検出するポッド状態検出手段と、
前記ポッド位置検出手段が検出した前記位置情報及び前記ポッド状態検出手段が検出したポッド状態情報に基づいて、前記ガス供給系から供給する前記不活性ガスの供給量及び前記ガスパージノズルから前記ポッド内又は前記前の空間に供給する前記不活性ガスの供給量を制御する制御手段と、を有することを特徴とするロードポート装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるロードポート装置の概略構成を示している。本実施形態に係るロードポート装置103は、筐体13、ガスパージノズル17、ドア19、載置台21、酸素濃度計23、ポッド搬送位置検出手段25、及び制御装置27を有する。筐体12は、内部において微小空間11を画定し、載置台21が配置される位置に対応して開口部15を有する。開口部15はドア19によって開閉可能とされており、ガスパージノズル17は該開口部15正面の空間と当該開口部15を介してのポッド1内部の空間とに不活性ガスを供給する。ポッド本体2と蓋3とから構成されるポッド1は、蓋3が開口部15と向かい合う方向で載置台21上に載置され、該蓋3はドア19によって保持が可能とされている。酸素濃度計23は、ガスパージノズル17と開口部15との間の空間である、微小空間11内の所定領域での酸素濃度が測定可能となる位置に配置される。
【0015】
ポッド1は、通常半導体製造工場に配置されるOHT(Overhead Hoist Transport:上部自動搬送装置)31によって各処理装置間を搬送される。なお、同図中において他の処理装置に付随するロードポート装置103について記載されている。ポッド搬送位置検出手段25は、OHT31によって搬送されているポッドの現在位置及び他のロードポート装置103に載置されているポッドが存在するか否かを検出する。また、ポッド1各々には現在その内部に収容されているウエハに応じたタグが付されており、位置検出された情報と同時に、当該検出情報が如何なるポッドに対応しているかもこのタグによって検出される。制御装置27は前述したドア19、載置台21、酸素濃度計23、及びポッド搬送位置検出手段25と接続されており、これらとの間での制御情報の受信及び制御指示の送信を行う。また、該制御装置27はガスパージノズル17に対して不活性ガスを供給する不図示の不活性ガス供給系とも接続されており、該ガスパージノズル17より微小空間11内であって開口部15前の空間に供給される不活性ガスの供給量が制御される。
【0016】
なお、本実施形態において、
図4にブロック図として示すように、制御装置27は、記憶手段33、選択手段35、及び比較手段37を有する。記憶手段33は、前述したタグに関する情報、後述する酸素濃度閾値に関する情報等を記憶している。酸素濃度閾値としては、本形態で例示する三種類等、複数の閾値が記憶されている。選択手段35は、接続されたポッド搬送位置検出手段25等と接続され、これらから出力された位置情報等の情報に基づいて前述した複数の閾値から最適な閾値を選択し、この閾値を比較手段37に伝える。比較手段37は酸素濃度計23と接続されており、後述するように該酸素濃度計23により計測された実際の酸素濃度と、選択手段35より伝えられた閾値とを比較する。制御装置27はこの比較結果等に基づいて不活性ガス供給系にたいして不活性ガスの供給の開始或いは停止、更には供給量についての指示を伝える。
【0017】
次に、制御装置27によって行われるガスパージノズル17から供給される不活性ガスの供給方法について
図2に示すフローチャートを用いて説明する。まずステップS1において開口部15前の雰囲気の酸素濃度制御が開始される。続くステップS2では制御モードの選択を行い、酸素濃度の閾値、ガスパージノズル17から供給する不活性ガスの流量、及び当該モードの実行時間を決定する。ここで、本実施形態で選択される制御モードの一例について述べる。表1は制御モード詳細の一例を示している。
表1 制御モード例
【0018】
表1に示すアイドルモードは、ポッド1が現状載置台21上に存在せず、且つポッド1における蓋3の開閉操作も近々には行わない、ロードポート装置103における所謂待機状態で管理モードに対応する。当該アイドルモードでは酸素濃度を強制的に低下させる必要は無く、有る程度以下に維持できれば良い。従って当該モードでの酸素濃度の閾値1は他のモードと比較して高く設定されている。また、不活性ガスの流量についても、当該雰囲気における酸素濃度をある程度以下に抑制するための小流量の供給となる供給量1が選択される。また、ポッド1の移載に伴う状況の急変は考えられず、また同様にモードの変更が早急に求められる可能性も低い。このように雰囲気制御のフローを繰り返す必要性が低いことから、当該操作実行時間を規定するタイマも長めのタイマ1に設定される。
【0019】
ポッド搬入モードでは、ポッド1における蓋の開閉をロードポート装置103で行う直前であって、ドア19によって開口部15を開放した際に開口部15前の雰囲気における酸素濃度を予め低下させる操作が行われる。即ち、ポッド1を開放した場合に酸化性雰囲気がその内部に収容されたウエハに対して影響する恐れが低い低濃度が、酸素濃度の閾値2として選択される。なお、急激な不活性ガス供給を停止した場合に例えば気体が淀む空間等からの酸素の流出の恐れがあることから、この閾値2は実際に影響が無いとされる濃度よりもより低い値に設定される。また、雰囲気における酸素濃度を急激に低下させる必要があることから、不活性ガス流量は最も大きくなるように設定される。なお、このポッド搬入モードでは酸素濃度の細かく管理する必要があることから、当該操作の実行時間を規定するタイマは最も短いタイマ2に設定される。
【0020】
維持モードでは、ポッド搬入モードによって酸素濃度を抑制した雰囲気をその状態で維持し、蓋3を取り除いた開放状態のポッド1に対してのウエハの挿脱が常時実行可能な状態とする。この維持モードでは雰囲気の酸素濃度を急激に低下する必要が無いことから、閾値2と近い値であって実際にウエハ上の配線等において問題が生じず且つ比較的低い不活性ガス流量で維持可能な酸素濃度閾値3が設定される。また、不活性ガス流量は、この閾値3を酸素濃度が超えない範囲での可能な限り低い流量に設定される。また、この維持モードにおいては、当該モードが酸素濃度の変化が比較的生じないモードであることから、当該操作の実行時間を規定するタイマは、他のモードと比較して中程度の長さに設定される。
【0021】
図2に示すフローチャートにおいて、ステップS2においてこれらモードの選択によって、酸素濃度の閾値、不活性ガス流量、及びタイマの時間の決定が行われる。選択手段35が記憶手段33よりモードに基づいた閾値、対応する不活性ガス供給流量及びタイマ時間モードが選択される。選択された後、ステップS3において、実際に酸素濃度計23によって雰囲気の酸素濃度の測定が行われる。測定された酸素濃度は決定された閾値と比較され、測定酸素濃度が閾値以上の場合には不活性ガス、本形態では窒素ガスの供給が開始される(ステップS4)。また、測定酸素濃度が閾値よりも小さい場合には、不活性ガスの供給は停止する、或いは停止状態を維持する(ステップS5)。これらステップを経ることにより、不必要な不活性ガスの供給を抑制している。当該状態にてステップS6でディレイタイマによる時間の計測が行われ、設定されたタイマを経過するとステップS1に戻り再度フローが実行される。
【0022】
制御装置27は、ポッド搬送位置検出手段25及び載置台21より得られるポッド1の搬送状態に関する情報に基づき、ステップS1におけるモードの選択を実行する。この選択操作は、前述した選択手段35により実行される。
図3に、実際に制御装置27が実行する、これらのモードを種々変化させた場合の開口部15前の空間の酸素濃度の変化を示す。通常の状態では不活性ガスの供給が為されていないため、初期段階では酸素濃度は最も高い状態にある。この状態より雰囲気制御の指示が不図示の外部入力装置等によって制御装置27に為されると、ステップS1の雰囲気制御が実行される。
【0023】
この段階では、ポッド搬送位置検出手段25及び載置台21からの出力より、制御装置27が対象とするロードポート装置103の載置台21に対してポッド1が早急に載置される状態ではないことが判定される。即ち、ポッド搬送位置検出手段25及び載置台21から成るポッド位置検知手段の検知結果に応じて、制御装置27は当該検知結果に応じたロードポート装置103の制御モードを選択する。制御装置27は該検知結果よりポッド1は載置されないと判断し、ロードポート装置103の制御モードとしてアイドルモードを選択する。アイドルモードでは、流量1(50L/min)の不活性ガスの供給がガスパージノズル17から行われる。雰囲気制御開始時では酸素濃度は閾値1(200ppm)よりも高いため、比較手段37によって示されるこの比較結果に基づいて、ステップS3にフローは移行し、不活性ガスの供給が実行される。不活性ガスの供給、停止は、設定されたタイマ(時間比5)において当該フローを繰り返し、ステップS3での比較結果に応じて実行される。
【0024】
次に、ポッド搬送位置検知手段25によって当該ロードポート装置103にて蓋の開閉が行われるポッド1が搬送され、所定時間内にて載置台21上に載置されることが検知される。これに伴って、制御装置27は酸素濃度を低下させる必要があると判定し、ステップS2にてポッド搬入モードを選択する。当該ポッド搬入モード選択当初においては、アイドルモードでの酸素濃度閾値に合わせて不活性ガスの供給が為されていることから、閾値2(90ppm)よりも実際の測定酸素濃度は高くなる。従って、ステップ3の比較結果に応じてフローはステップS4に移行し、当該ポッド搬入モードでの不活性ガス流量2である200L/minにて不活性ガスの供給が開始される。この酸素濃度と閾値2との比較と不活性ガスの供給開始(ステップS4)及び停止(ステップS5)の操作はタイマ2として設定された短時間の間隔にて繰り返される。
【0025】
前述した所定時間が経過したことが制御装置27により判定された後、若しくは載置台21からの出力によりポッド1が載置された状態にあることが制御装置27により判定された後、再度ステップS2におけるモードの選択が実行される。先のポッド搬入モードにおいて雰囲気中の酸素濃度は十分低く維持されていることから、ポッド1内部に対してのウエハの挿脱の環境として当該雰囲気は問題ないとし、ステップS2において維持モードが新たに選択される。維持モードではウエハの管理上問題の無い酸素濃度閾値3(100ppm)が設定され、不活性ガスの供給流量も当該酸素濃度を維持可能な小流量である流量3(100L/min)と設定される。続くステップS3では、先のポッド搬入モードにおいて酸素濃度を抑制していたことにより閾値3よりも実際の酸素濃度が低いと比較され、フローはステップS5に移行する。
【0026】
なお、本来はステップS6におけるディレイタイマでのタイマ経過に応じてステップ3での雰囲気酸素濃度の判定とステップS4或いはS5での不活性ガスの供給の開始或いは停止が繰り返される。しかし本形態では、蓋3の取り外しによるポッド1の開放後はポッド1内部の雰囲気を不活性ガスにて置換するために流量3(100L/min)による不活性ガスの供給が実行される。このため、測定される酸素濃度は閾値3を越えない状態を維持している。
【0027】
以上の構成からなるロードポート装置103を用いることによって、ポッド1が載置台21上に載置される前段階で開口部15周辺の雰囲気の酸素濃度が低下されることとなり、ポッド1載置から蓋3の開放に至る時間を短縮することが可能となる。また、常時大量の不活性ガスの供給を行った場合、コスト面ばかりでなく、例えば作業者の窒息等の懸念を払拭するための当該不活性ガスの処理も問題となる恐れがある。本発明によれば用いる不活性ガス量を必要最小限と抑制することが可能となり、付加製ガスの使用にともなるコスト面のメリットのみならず、該不活性ガスの処理に要するコストも削減することが可能となる。
【0028】
なお、位置情報に関しては自動搬送装置31等におけるポッドの位置として上記形態で述べているが、実際の工程においては現時点でのポッドの搬送位置から該ポッドが載置台上に載置されたポッドの開放操作が開示されるまでに要する経過時間としても良い。また、本実施形態では、一台のロードポート装置103に対して制御装置27等が各々付随する構成を示している。しかし、当該制御装置27は、単一のロードポート装置103ではなく複数のロードポート装置を単体にて担う構成とすることも可能である。
【0029】
次に、前述したロードポート装置103を用いた本発明の一実施形態であるEFEMシステムについて、以下に図面を参照して説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係るEFEMシステム100の外観を示すものであって、
図5(a)は該EFEMシステムを正面から見た状態を、(b)は左側面から見た状態を、(c)は右側面図から見た状態を、(d)上面からこれを見た状態を各々示している。また、
図6は、
図1(d)に示される断面A−Aにおいて見られるEFEM部の内部構造を模式的に示す図である。
図7は当該EFEMシステム100の主要な回路構成を示すブロック図である。なお、以下の実施形態では、不活性ガスとして窒素を用いることとして詳述する。
【0030】
本形態におけるEFEMシステム100は、主たる構成としてEFEM部101(先の実施形態における微小空間)、ロードポート装置103及び制御部105(
図4における制御装置27を含む。)を有する。EFEM部101は、前述したように、ポッド1内の収容物であるウエハに各種処理を行う処理室に対して該ウエハを搬送する搬送機構が内部に配置されている。制御部105は、EFEM部101及びロードポート装置103に付いて後述する各駆動要素等の動作を制御する。ロードポート装置103は、前述したドア19と載置台21とを動作する構成として有する。ドア19の開閉及び当該ドア19によるポッドの蓋3の保持開放の動作はドア駆動機構322により行われる。ポッド1が載置され且つその状態で該ポッド1の開口部15に対する接近及び離間を行う載置台21の動作は載置台駆動機構326により行われる。制御部105はこれら駆動機構の動作を制御するCPU511を有すると共に、後述するこれら動作の同期を為すための同期制御手段513も有する。また、CPU511は、ドア19によるポッド1の蓋の取り外しの作業の開始、終了、後述するタイマ516により取り外し後の経過時間を含め、ポッド1の状態をドア19の動作により検出するポッド状態検出手段としても機能する。このポッド状態検出手段が検出した情報は、ポッド状態情報としてCPU511に保持される。
【0031】
CPU511は、同時にEFEM部101における後述する窒素供給等に関する制御も実行する。制御部105には、判定手段521、切換手段523及びタイマ516が配置される。EFEM部11内の酸素濃度を測定する酸素濃度計515及び圧力計517の計測結果は、制御部5内に包含される判定手段521に送られ、予め設定されている複数の閾値と比較される。判定手段521での比較結果は後段の切換手段523に送られ、該切換手段523は前述した閾値に応じて流量制御器519において設定されている流量にて窒素が流されるようにその設定を切り換える。或いは、後述する各種制御モードの実行及び切換を指示する。即ち、CPU511は、ガスパージノズル17から不活性ガスを供給するパージモードを複数有するとともに、ガス供給系である窒素供給部123から不活性ガスを供給するガス供給モードを複数有している。
【0032】
EFEM部101は、窒素循環路と該循環路に含まれる略密閉された空間である受渡しゾーン111とを有し、窒素供給部123よりこれら空間に対して窒素が供給される。窒素はマスフローコントローラ等の流量制御器519により供給量が制御され、該EFEM部101の内部空間における酸素濃度を、その使用状況に応じて制御する。当該窒素供給部123は、本発明においてEFEM部101内に所定のガスを供給すると共にその供給量が可変であるガス供給系として機能する。具体的には、EFEM部101に対してポッド1が何等供給されておらず、且つウエハ等の搬入予定も無い状態の場合、アイドルモードとして酸素濃度の上限の閾値としてのEFEM上限閾値1を例えば200ppmが設定される制御モードにて制御が為される。このとき、ロードポート装置103に関しては、ガスパージノズル17より供給される窒素の流量は例えば50L/minとされる。また、酸素濃度の測定も、頻繁に行なう必要が無いことから、タイマ516にてカウントされて5分間隔で行なわれる。同時に、EFEM部101に対する窒素供給部123からの窒素供給の流量も50L/minとされる。なお、ここで述べる上限の閾値を実際に測定される酸素濃度が超えた場合、窒素供給量は一時的に後述するポッド搬入モード等に移行し、酸素濃度が当該閾値以下となるようにモードの移行制御が実行される。
【0033】
ポッド1が供給されることがOHT31を制御する不図示のOHT制御機構より報知されると、制御部105はアイドルモードをポッド搬入モードに移行させる。ポッド搬入モードでは、開口部15の周辺空間を早急に低酸素状態とするために、窒素供給の流量を200L/minとする。また、酸素濃度の閾値としては上限閾値2として90ppmが設定され、且つこの状態が好適に維持されることを目的としてその測定も1分間隔で行なわれる。同時にEFEM部101の内部も同様の低酸素の状態とする必要があることから、窒素供給部123からの窒素供給の流量は300L/minとされる。この。EFEM部101内部を急速に低酸素濃度化するモードは、ここでは加速置換モードと称する。なお、EFEM部101内部の容積は開口部15周辺の要酸素濃度管理空間と比較して大きく、且つ気体循環によりパーティクル等の管理も行なっている関係上、酸素濃度の上限閾値2としてここでは100ppmの設定が為される。
【0034】
前述したポッド搬入モード及び加速置換モード各々単体の実施或いは併用により所要の空間の酸素濃度が目標とする閾値を大きく下回ったと確認された、或いは下回ると推測された場合、制御モードは維持モードへと移行する。維持モードにおいて、ロードポート装置103では、流量100L/min、下限閾値3として100ppm、測定間隔3分と設定される。また、EFEM部101では、流量40L/min、下限閾値3として80ppm、測定間隔3分と設定される。ロードポート装置103ではポッド1内部への所謂パージ操作の際のポッド開口−開口部15間への大気流入を考慮する必要がある。これに対してEFEM部101では、ウエハが搬送ロボット121により直接搬送されることからより低酸素濃度の空間として維持されることが好ましい。以上に鑑みてこれら閾値の設定が為されている。なお、ここで述べる下限の閾値を実際に測定される酸素濃度が下回った場合、窒素供給量は一時的に後述するアイドルモード等に移行する、或いはアイドルモード時の窒素供給量とする等を行い、窒素使用量の抑制が実行される。
【0035】
即ち、ポッド位置検出手段が得た位置情報、ポッド状態検出手段が検出したポッド状態情報、及び酸素濃度計が検出した酸素濃度に少なくとも一つの情報応じて、CPU511は、パージモード及びガス供給モードの各々について少なくとも一つのモードを選択し実行させる。なお、参照する情報を複数あることが好ましいが、例えばポッド1内部をガスパージする場合等の場合、少なくとも蓋を取り外した直後或いは蓋の取り付け直前にこれが行なわれることが好ましいことから、パージモードの変更は当該情報のみに基づくこととしても良い。また、同様にこの場合にはパージモードのみが変更されれば良い。しかしながら、窒素供給量の削減、或いは酸素濃度のより低い値での維持を目的として、これら情報及びモードを複数組み合わせることとしても良い。
【0036】
なお、これらモードには窒素を供給しないモードも組まれる。より詳細には、CPU511は、ポッド状態検出手段がポッド1から蓋をとし外したことを意味するポッド状態情報を検出したことに応じて、パージモードの窒素供給のモードを実行させる。また、ポッド状態検出手段がポッド1から蓋を取り外したことを意味するポッド状態情報を検出したことに応じて、CPU511はガスパージノズル17からの窒素の供給量を増加させた加速置換モードを実行させる。なお、過剰供給された窒素はリリース弁25によって排出される。即ち、本発明において、窒素等に例示されるガス供給を為すガス供給手段(本実施形態では窒素供給部23)は、酸素濃度を低下させるための大流量と低酸素濃度状態を維持するための小流量との、少なくとも2種類の流量で逃す供給が可能となっている。なお、この流量は、EFEM部1の内部空間の酸素濃度を効果的に抑制するために、後述する酸素濃度の測定結果に応じてより細かくガス供給を行なえるように、より細分化する或いは可変とすることも可能である。
【0037】
EFEM部1に供給された窒素は窒素循環路に配置されるFFU(ファンフィルタユニット、以下FFUと称する。)113によって吸引されて、該窒素循環路を構成する第一の通路115及び第二の通路117を経て当該FFU113に至る。該FFU113によって塵等が排除された状態の窒素は、該FFU113によりダウンフローの様式にて受渡しゾーン111に向けて送り出され、更にイオナイザ127を経ることによって静電除去されて受渡しゾーン111の清浄度の維持に用いられる。なお、本実施形態では窒素を用いることとしているが、酸素濃度を低下させ且つ配線等の金属に影響を及ぼさない所謂不活性ガスであれば種々のものが使用可能である。また、本実施形態ではイオナイザ127を用いる態様を例示しているが、要求されるクリーン度等に応じてこれを無くすることも可能である。なお、ポッド1より搬送ロボット121にて取出された不図示のウエハは、処理室側インターフェース119を介して不図示の処理装置に移載される。
【0038】
次に、EFEMシステム100に対して実際にポッド1を載置してこれに収容されるウエハを取出す工程について、各々の工程での装置状態を模式的に示す
図8を用いて説明する。
図8は、
図5に示したEFEMシステム100について、EFEM部101及び3台のロードポート装置103からなる構成において3個のポッド1を開放する操作の各々の工程を簡略化して示している。
図8Aは、ポッド1はまだ搬送されてきておらず、EFEM部101は上限閾値1を選択した前述したアイドルモードにあり、且つロードポート装置103におけるガスパージは停止された状態にある。この状態ではアイドルモードによりEFEM部101内での酸素濃度が所定の濃度範囲内となるように窒素流量の制御が為され、酸素濃度が低下して閾値以下となったことにより下限閾値3を用いる維持モードに移行する。この状態からポッド1の載置−蓋の取り外しによる開放、が実行される。
【0039】
図8Bでは、ロードポート装置103の1台に対してポッド1の搬送、載置が為される、この段階ではEFEM部101内の酸素濃度は変化していないため、本実施形態ではEFEM部101では維持モードが選択されており、且つロードポート装置103によるガスパージも停止されている。なお、ポッド1の内部は大気中での管理により内部に大気の侵入がおきており、内部の酸素濃度はEFEM部101内部の酸素濃度よりも高くなっている。
図8Cでは、このポッド1の蓋3が取り外され、EFEM部101に対してポッド1内部が開放される。これによりEFEM部101内部では酸素濃度が上昇し、これに伴って上限閾値2が選択されて制御モードが加速置換モードに移行する。なお、この段階ではポッド1内部の酸素濃度を急激に低下させる必要性は低いことから、ガスパージはまだ行なわれない。
【0040】
加速置換モードの実行によりEFEM部101内の酸素濃度が再び低下して上限閾値2以下の値となったことより制御モードは維持モードに移行する。ポッド1からのウエハの取出し等は、
図8Dに示すこの状態で行なわれることが好ましい。蓋3の開放済みのポッド1からのウエハ取出しがある程度進行すると、次のポッド1が搬送、移載される。
図8Eに示すこの状態では、ガスパージノズル17によるロードポート装置103でのポッド1内のパージ操作が実行される。ロードポート装置103ではロードポート装置用の下限閾値3を考慮した維持モードが、EFEM部101ではEFEM部用の下限閾値3を考慮した維持モードが実行され、EFEM部101内では低酸素濃度状態が維持される。
【0041】
続いて、
図8Fに示すように、酸素濃度の高い次のポッド1の蓋3の取り外し操作が実行される。EFEM部101内部では酸素濃度が上昇し、これに伴って上限閾値2が選択されて制御モードが加速置換モードに移行する。また、先のポッド1は開放状態にあることから、その内部の酸素濃度の上昇を抑制する必要性があることから、ロードポート装置103側でのパージ操作に関してもポッド搬入モードに移行して窒素供給量を増加させる。EFEM部101内及びロードポート装置103での酸素濃度が各々上限閾値2を下回ると、ロードポート装置103でのガスパージノズル17からの窒素供給は停止し、EFEM部101では再度維持モードに移行する。新たに開放されたポッド1からのウエハの取出し等は、
図8Gに示すこの状態で行なわれることが好ましい。
【0042】
続いて、更なるポッド1の搬送、移載が
図8Eに示した場合と同様の工程を経て
図8Hに示すように行われる。以下、
図8F及び8Gにて行われた工程が更なるポッド1の場合についても同様に実行される。以上の工程を行なうことによって、ポッド1内部、及びEFEM部101内部を低酸素濃度状態に維持しつつ、ウエハの搬送を行うことが可能となる。また、通常ポッド1から搬出されたウエハは不図示の処理装置によって各種薄膜の形成、パターニング、等の処理が施される。当該処理により酸化に対してより留意することが求められる処理済ウエハをポッド1内に搬入する際においても、これを低酸素濃度雰囲気下で実行することが可能となる。
【0043】
次に、制御部105によって行われる窒素の供給の様式について
図9に示すフローチャートを用いて説明する。まずステップS101においてEFEM部101内の酸素濃度制御が開始される。続くステップS102では制御モードの選択を行い、酸素濃度の閾値、流量制御器519により制御される窒素の流量、及び当該モードの実行時間を決定する。ここで、本実施形態で選択される制御モードの一例について述べる。表2は制御モード詳細の一例を示している。また、同表2には、本実施形態にて同時に実行されるロードポート装置側での制御モードについても共に示す。
表2 制御モード例
【0044】
ステップS102においてこれらモードの選択によって、酸素濃度の閾値、不活性ガス流量、及びタイマの時間の決定が行われる。制御部105において
図4に示す構成と同様の選択手段35が記憶手段33よりモードに基づいた閾値、対応する不活性ガス供給流量及びタイマ時間モードが選択される。選択された後、ステップS103において、実際に酸素濃度計515によってEFEM部101内の酸素濃度の測定が行われる。測定された酸素濃度は決定された閾値と比較され、測定酸素濃度が閾値以上の場合には窒素の流量が増加される(ステップS104)。また、測定酸素濃度が閾値よりも小さい場合には、窒素流量を低下させる、或いは低流量状態を維持する(ステップS105)。これらステップを経ることにより、不必要な不活性ガスの供給を抑制している。当該状態にてステップS106でディレイタイマによる時間の計測が行われ、設定されたタイマを経過するとステップS101に戻り再度フローが実行される。
【0045】
図10に、実際に制御部105が実行する、これらのモードを種々変化させた場合のEFEM部101内の空間の酸素濃度の変化を示す。通常の状態では不活性ガスの供給が為されていないため、初期段階では酸素濃度は最も高い状態にある。この状態より雰囲気制御の指示が不図示の外部入力装置等によって制御部105に為されると、ステップS101からの酸素濃度制御が実行される。
【0046】
この段階では、ポッド搬送位置検出手段25及び載置台21からの出力より、制御装置27が対象とするロードポート装置103の載置台21に対してポッド1が早急に載置される状態ではないことが判定される。即ち、ポッド搬送位置検出手段25及び載置台21から成るポッド位置検知手段の検知結果に応じて、制御部105は当該検知結果に応じたEFEM部1内での制御モードを選択する。制御部105は該検知結果よりポッド1は載置されないと判断し、EFEM部101内の制御モードとしてアイドルモードを選択する。アイドルモードでは、流量1(50L/min)の窒素の供給が窒素供給部23から行われる。雰囲気制御開始時では酸素濃度は上限閾値1(200ppm)よりも高いため、比較手段37によって示されるこの比較結果に基づいて、ステップS103にフローは移行し、窒素の供給が実行される。窒素の供給量の制御は、設定されたタイマ(時間比5)において当該フローを繰り返し、ステップS103での比較結果に応じて実行される。
【0047】
次に、ポッド搬送位置検知手段25によって当該ロードポート装置103にて蓋の開閉が行われるポッド1が搬送され、所定時間内にて載置台21上に載置されることが検知される。これに伴って、制御部105は酸素濃度を低下させる必要があると判定し、ステップS102にて加速置換モードを選択する。当該加速置換モード選択当初においては、アイドルモードでの酸素濃度閾値に合わせて窒素の供給が為されていることから、上限閾値2(100ppm)よりも実際の測定酸素濃度は高くなる。従って、ステップ103の比較結果に応じてフローはステップS104に移行し、当該加速置換モードでの窒素流量2である300L/minにて窒素の供給が開始される。この酸素濃度と上限閾値2との比較と窒素の供給量の増加(ステップS104)及び減少(ステップS5)の操作はタイマ2として設定された短時間の間隔にて繰り返される。
【0048】
前述した所定時間が経過したことが制御部105により判定された後、若しくは載置台21からの出力によりポッド1が載置された状態にあることが制御部105により判定された後、再度ステップS102におけるモードの選択が実行される。先のポッド搬入モードにおいて雰囲気中の酸素濃度は十分低く維持されていることから、ポッド1内部に対してのウエハの挿脱の環境として当該雰囲気は問題ないとし、ステップS102において維持モードが新たに選択される。維持モードではウエハの管理上問題の無い酸素濃度下限閾値3(80ppm)が設定され、窒素の供給流量も当該酸素濃度を維持可能な小流量である流量3(100L/min)と設定される。続くステップS103では、先のポッド搬入モードにおいて酸素濃度を抑制していたことにより下限閾値3よりも実際の酸素濃度が低いと比較され、フローはステップS105に移行する。
【0049】
なお、本来はステップS106におけるディレイタイマでのタイマ経過に応じてステップ103での雰囲気酸素濃度の判定とステップS104或いはS105での窒素流量の増加或いは減少が繰り返される。しかし本形態では、蓋3の取り外しによるポッド1の開放後はポッド1内部の雰囲気を不活性ガスにて置換するためにガスパージノズル17からの流量3(100L/min)による窒素の供給も併せて実行される。このため、測定される酸素濃度は閾値3を越えない状態を維持している。
【0050】
以上の構成からなるEFEMシステム100を用いることによって、ポッド1が載置台21上に載置される前段階で開口部15周辺を含めたEFEM部101内部の酸素濃度が低下されることとなり、ポッド1載置から蓋3の開放に至る時間の短縮と、微小空間の低酸素濃度化とが可能となる。また、常時大量の不活性ガスの供給を行った場合、コスト面ばかりでなく、例えば作業者の窒息等の懸念を払拭するための当該不活性ガスの処理も問題となる恐れがある。本発明によれば用いる不活性ガス量を必要最小限と抑制することが可能となり、付加製ガスの使用にともなるコスト面のメリットのみならず、該不活性ガスの処理に要するコストも削減することが可能となる。