特許第6115301号(P6115301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115301
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】合成樹脂製の滑り軸受
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20170410BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   B62D3/12 503A
   F16C17/10 Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-102637(P2013-102637)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-223817(P2014-223817A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】中川 昇
(72)【発明者】
【氏名】明田 和彦
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−243653(JP,A)
【文献】 特開2006−076541(JP,A)
【文献】 特開2007−009962(JP,A)
【文献】 特開平04−210121(JP,A)
【文献】 特開2000−177606(JP,A)
【文献】 特開2007−187285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/12
F16C 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック軸をギアケース内で軸方向に移動自在に支承するべく、ギアケースの内周面に固定されてラック軸とギアケースとの間に介装されるようになっている合成樹脂製の滑り軸受であって、半円筒状の外周面でギアケースの内周面に接触するようになっていると共にラック軸のラック歯側に切欠き部を有した半円環状の軸受基部と、ギアケースの内周面に接触するようになっている円弧状の外周面を有すると共に軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている第一の軸受部と、この第一の軸受部を一対のスリットの夫々を介して軸心周りの方向で挟んで軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている一対の第二の軸受部と、この一対の第二の軸受部を一対の他のスリットの夫々を介して軸心周りの方向で挟んで軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている一対の円弧部とを具備しており、第一の軸受部は、ラック軸のラック歯側とは反対側の当該ラック軸の外周面に隙間をもって対面するようになっている第一の軸受面を有しており、第二の軸受部の夫々は、ラック軸の外周面に摺動自在に接触するようになっている第二の軸受面を有しており、一対の円弧部の夫々は、ギアケースの内周面に接触するようになっている外周面と、ラック軸の外周面に隙間をもって対面するようになっている内周面とを具備している滑り軸受。
【請求項2】
第一の軸受部は、ギアケースの内周面に接触するようになっている外周面と、第一の軸受面が設けられた内周面とを具備している請求項1に記載の滑り軸受。
【請求項3】
第二の軸受部の夫々は、ギアケースの内周面に隙間をもって対面するようになっている外周面と、ラック軸の外周面に摺動自在に接触するようになっている第二の軸受面が形成された内周面とを具備している請求項1又は2に記載の滑り軸受。
【請求項4】
第一の軸受部は、ギアケースの内周面に外周面で接触するようになっていると共に軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている円弧部と、ラック軸のラック歯側とは反対側の当該ラック軸の外周面に隙間をもって対峙するように、円弧部の内周面から径方向の内方に突出して当該円弧部の内周面に一体的に設けられていると共に突出端面に第一の軸受面が形成された突出部とを具備している請求項1から3のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項5】
一対の第二の軸受部の夫々は、外周面でギアケースの内周面に隙間をもって対峙するようになっていると共に軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている弾性的可撓性の円弧部と、この円弧部の内周面から径方向の内方に突出して一体的に設けられていると共に突出端面に第二の軸受面が形成された突出部とを具備している請求項1から4のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項6】
一対の第二の軸受部は、軸受基部を支点として径方向の内外方向に弾性的に撓み得るようになっている請求項1から5のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項7】
第一の軸受面は、軸方向と直交すると共にラック軸のラック歯側からラック軸のラック歯側とは反対側に向かう方向の一定量を超えるラック軸の変位で、当該ラック軸の外周面に接触するようになっている請求項1から6のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項8】
一対の第二の軸受面は、締め代をもってラック軸の外周面に接触するようになっている請求項1から7のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項9】
第一の軸受面並びに一対の第二の軸受面のうちの少なくとも一つの軸受面は、ラック軸の外周面の曲率半径と実質的に同一の曲率半径をもった円弧凹面からなる請求項1から8のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項10】
第一の軸受面並びに一対の第二の軸受面のうちの少なくとも一つの軸受面は、ラック軸の外周面の曲率半径よりも大きな曲率半径をもった円弧凹面からなる請求項1から9のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項11】
第一の軸受面並びに一対の第二の軸受面のうちの少なくとも一つの軸受面は、円弧凸面からなる請求項1から10のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項12】
第一の軸受面並びに一対の第二の軸受面のうちの少なくとも一つの軸受面は、平坦面からなる請求項1から11のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項13】
一対の第二の軸受部は、ラック軸の外周面に接触するその第二の軸受面の軸心周りの方向での両中央点の第一の軸受部を挟む中心角が180°以下の角度を有するように、軸心周りの方向で第一の軸受部を間にして互いに離間して軸受基部に一体的に形成されている請求項1から12のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の滑り軸受、特に自動車のステアリング機構におけるラック軸を摺動自在に支承するために用いて好適な合成樹脂製の滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輌におけるラック−ピニオン式操舵装置は、操舵輪(ハンドル)の回転によってこれに連なるピニオン軸を回転させ、このピニオン軸と噛合するラック軸をギアケース内で左右方向に移動させ、これに連繋する操向輪の操向を行うようになっている。
【0003】
斯かるラック−ピニオン式操舵装置において、ピニオンの歯に噛み合うラック歯を有したラック軸は、未舗装の路面等を走行する車輌の場合には、過大な荷重を路面から受けるために、ピニオンに近い位置で軸受を介してギアケースに移動自在に支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7784804号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、合成樹脂製の軸受は、ラック軸との間での打音を生じさせなく、ラック軸にラジアル方向の力が作用した状態での操舵操作においてもラック軸と軸受との間の円滑な操舵操作を可能とするものであるが、特許文献1に記載のように、隙間をもってラック軸を支持するようになっている軸受では、ラック軸が過大な荷重を路面から受けると、ラトル音、歯打ち音等の異音の発生の問題が生る。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、支持力を低下させることなしにラック軸を円滑に軸方向に移動自在に支持でき、しかも、過大な荷重をラック軸が路面から受ける場合においても、ラトル音、歯打ち音等の異音の発生を低減できる合成樹脂製の滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ラック軸をギアケース内で軸方向に移動自在に支承するべく、ギアケースの内周面に固定されてラック軸とギアケースとの間に介装されるようになっている本発明による合成樹脂製の滑り軸受は、ラック軸のラック歯側に切欠き部を有した半円環状の軸受基部と、ギアケースの内周面に接触するようになっている円弧状の外周面を有していると共に軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている第一の軸受部と、この第一の軸受部をスリットを介して軸心周りの方向で挟んで軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている一対の第二の軸受部とを具備しており、第一の軸受部は、ラック軸のラック歯側とは反対側の当該ラック軸の外周面に隙間をもって対面するようになっている第一の軸受面を有しており、第二の軸受部の夫々は、ラック軸の外周面に摺動自在に接触するようになっている第二の軸受面を有している。
【0008】
斯かる本発明の合成樹脂製の滑り軸受によれば、一対の第二の軸受部が第一の軸受部をスリットを介して軸心周りの方向で挟んで軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びていると共にラック軸の外周面に摺動自在に接触するようになっている第二の軸受面を有しているために、ラック軸を第二の軸受面で二方向から支持できる結果、ラック軸に対する支持力の低下をなくし得てラック軸を円滑に軸方向に移動自在に支持でき、しかも、一対の第二の軸受部にスリットを介して軸心周りの方向で挟まれた第一の軸受部がラック軸のラック歯側とは反対側の当該ラック軸の外周面に隙間をもって対面するようになっている第一の軸受面を有しているために、過大な荷重をラック軸が路面から受けてラック軸が大きく変位した場合においても、一対の第二の軸受部で支持された状態でラック軸が第一の軸受面でも支持される結果、ラトル音、歯打ち音等の異音の発生を低減できるようになる。
【0009】
本発明では、第一の軸受部は、ギアケースの内周面に接触するようになっている外周面と、第一の軸受面が設けられた内周面とを具備していてもよく、第二の軸受部の夫々は、ギアケースの内周面に隙間をもって対面するようになっている外周面と、ラック軸の外周面に摺動自在に接触するようになっている第一の軸受面が設けられた内周面とを具備していてもよい。
【0010】
本発明の好ましい例では、第一の軸受部は、ギアケースの内周面に外周面で接触するようになっていると共に軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている円弧部と、ラック軸のラック歯側とは反対側の当該ラック軸の外周面に隙間をもって対峙するように、円弧部の内周面から径方向の内方に突出して当該円弧部の内周面に一体的に設けられていると共に突出端面に第一の軸受面が形成された突出部とを具備しており、本発明の好ましい他の例では、一対の第二の軸受部の夫々は、外周面でギアケースの内周面に隙間をもって対峙するようになっていると共に軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている弾性的可撓性の円弧部と、この円弧部の内周面から径方向の内方に突出して一体的に設けられていると共に突出端面に第二の軸受面が形成された突出部とを具備している。
【0011】
これらの例では、突出部の突出端面の夫々に第一の軸受面及び第二の軸受面の夫々が形成され形成されているために、ラック軸に対する支持面を局限化できる結果、ラック軸の軸方向の移動に対する摩擦抵抗を低減できて軸方向に移動するラック軸を少ない抵抗力で支持でき、また、特に後者の例では、弾性的可撓性の円弧部に設けられている突出部に第二の軸受面が形成されているために、ラック軸の径方向の変位に対応して円弧部を弾性的に撓ませることができる結果、これによっても、ラック軸の軸方向の移動に対する摩擦抵抗を低減できて軸方向に移動するラック軸を少ない抵抗力で支持できる。
【0012】
本発明の好ましい更に他の例では、一対の第二の軸受部は、軸受基部を支点として径方向の内外方向に弾性的に撓み得るようになっている。
【0013】
斯かる例においても、ラック軸の軸方向の移動に対する摩擦抵抗を低減できて軸方向に移動するラック軸を少ない抵抗力で支持できる。
【0014】
また、本発明の好ましい更に他の例では、第一の軸受面は、軸方向と直交すると共にラック軸のラック歯側からラック軸のラック歯側とは反対側に向かう方向の一定量を超えるラック軸の変位で、当該ラック軸の外周面に接触するようになっており、この例では、ラック軸の当該方向の大きな変位を制限できる。
【0015】
本発明では、一対の第二の軸受面は、単に、ラック軸の外周面に接触するようになっていてもよいが、ラック軸をしっかりと支持するために、ラック軸を締め代をもってラック軸の外周面に接触するようになっているとよい。
【0016】
本発明では、第一の軸受面並びに一対の第二の軸受面のうちの少なくとも一つの軸受面は、ラック軸の外周面の曲率半径と実質的に同一の曲率半径をもった円弧凹面からなっていてもよく、また、ラック軸の外周面の曲率半径よりも大きな曲率半径をもった円弧凹面からなっていてもよく、更には、円弧凸面又は平坦面からなっていてもよい。
【0017】
本発明の好ましい例では、一対の第二の軸受部は、ラック軸の外周面に接触するその第二の軸受面の軸心周りの方向での両中央点の第一の軸受部を挟む中心角が180°以下の角度、より好ましい例では、120°から70°の角度、更により好ましい例では、100°から80°の角度を有するように、軸心周りの方向で第一の軸受部を間にして互いに離間して軸受基部に一体的に形成されている。
【0018】
本発明の滑り軸受は、一対の第二の軸受部を一対の他のスリットを介して軸心周りの方向で挟んで軸受基部の軸方向の一方の半円環状の端面から軸方向に一体的に伸びている一対の円弧部を更に具備していてもよく、この場合、斯かる一対の円弧部の夫々は、ギアケースの内周面に接触するようになっている外周面と、ラック軸の外周面に隙間をもって対面するようになっている内周面とを具備しているとよい。
【0019】
本発明の滑り軸受を形成する合成樹脂としては、耐摩耗性に優れて低摩擦特性を有し、しかも、所定の撓み性と剛性とを有すると共に熱伸縮の少ないものが好ましく、具体的には、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、支持力を低下させることなしにラック軸を円滑に軸方向に移動自在に支持でき、しかも、過大な荷重をラック軸が路面から受ける場合においても、ラトル音、歯打ち音等の異音の発生を低減できる合成樹脂製の滑り軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態の好ましい例の正面説明図である。
図2図2は、図1に示す例の左側面説明図である。
図3図3は、図1に示す例の右側面説明図である。
図4図4は、図3に示すIV−IV線矢視断面説明図である。
図5図5は、図1に示す例の平面説明図である。
図6図6は、図2に示すVI−VI線矢視断面説明図である。
図7図7は、図1に示すVII−VII線矢視断面説明図である。
図8図8は、図1に示す例の使用例の断面説明図である。
図9図9は、図8に示すIX−IX線矢視断面説明図である。
図10図10は、図8に示すX−X線矢視断面説明図である。
図11図11は、本発明の実施の形態の好ましい他の例の一部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態の例を、図に示す例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明は、これら例に何等限定されないのである。
【0023】
図1から図10において、ラック軸1をギアケース2内で軸方向Xに移動自在に支承するべく、ギアケース2の円筒状の内周面3に固定されてラック軸1とギアケース2との間に介装されるようになっている本例の合成樹脂製の滑り軸受4は、ピニオン軸5の歯6と噛合するラック軸1のラック歯7側に切欠き部8を有した半円環状の軸受基部9と、ギアケース2の内周面3に接触するようになっている円弧状の外周面10を有すると共に軸受基部9の軸方向Xの一方の半円環状の端面11から軸方向Xに一体的に伸びている軸受部12と、軸受部12を一対のスリット13の夫々を介して軸心Oの周りの方向Rで挟んで軸受基部9の端面11から軸方向Xであって軸受部12の伸びる方向と同方向に一体的に伸びている一対の軸受部14と、一対の軸受部14を一対のスリット15の夫々を介して軸心周りの方向Rで挟んで軸受基部9の端面11から軸方向Xであって軸受部12及び14の伸びる方向と同方向に一体的に伸びている一対の円弧部17と、軸受部12に対して径方向に対応して軸受基部9の半円筒状の外周面18に一体的に形成された半円形の突起19と、一対の円弧部17の夫々に対して径方向に対応して軸受基部9の外周面18に一体的に形成された一対の円弧状の突起20とを具備している。
【0024】
ラック軸1は、ラック歯7が形成された平坦面25と、ラック歯7が形成された平坦面25の両端に両端で連接する半円筒状の外周面26とを有しており、ギアケース2は、その軸方向Xの円筒状の端面27において、突起19及び20の夫々を嵌合、受容する凹所28及び29の夫々をその内周面3に有している。
【0025】
半円筒状の外周面18でギアケース2の内周面3に接触するようになっていると共に端面11を有した軸受基部9は、端面11及び外周面18に加えて、平坦面25に対向してラック軸1のラック歯7側に配されたその切欠き部8により弾性的に縮径可能となっていると共にラック軸1の外周面26に対して隙間31をもってラック軸1を囲繞した半円筒状の内周面32と、軸方向Xの他方の半円環状の端面33と、方向Rにおいて切欠き部8を規定して当該方向Rにおいて互いに対面していると共にテーパー面を含んだ一対の側面34と有している。
【0026】
軸受部12は、外周面18と面一であるその外周面10でギアケース2の内周面3に接触するようになっていると共に軸受基部9の軸方向Xの一方の半円環状の端面11から軸方向Xに一体的に伸びている円弧部41と、ラック軸1のラック歯7側とは反対側の当該ラック軸1の外周面26に隙間42をもって対峙するように、内周面32と面一である円弧部41の内周面43から径方向の内方に突出して当該円弧部41の内周面43に一体的に設けられていると共に突出端面44に軸受面45が形成された突出部46とを具備しており、こうして、ラック軸1のラック歯7側とは反対側の当該ラック軸1の外周面26に隙間42をもって対面するようになっている軸受面45を有した軸受部12は、ギアケース2の内周面3の全面に接触するように、ギアケース2の内周面3の曲率半径と実質的に同一の曲率半径をもった円弧凸面からなっている外周面10と、軸受面45が設けられた内周面43とを具備しており、ラック軸1の外周面26の曲率半径と実質的に同一の曲率半径をもった円弧凹面からなる軸受面45は、軸方向Xと直交すると共にラック軸1のラック歯7側からラック軸1のラック歯7側とは反対側に向かう方向の一定量を超えるラック軸1の変位、即ち、隙間42の径方向の幅を超えるラック軸1の変位で、当該ラック軸1の外周面26に接触するようになっている。
【0027】
外周面18と面一の円弧状の外周面10を有した円弧部41は、当該外周面10及び内周面43に加えて、軸方向Xの端面47と、端面47に直交すると共に互いに平行であって方向Rにおいて互いに対向する一対の側面48とを有しており、突出部46は、端面47に連接した傾斜面49と、内周面43に連接した湾曲凸面50とを有しており、軸受面45は、傾斜面49及び湾曲凸面50に連接して当該傾斜面49及び湾曲凸面50に囲繞されている。
【0028】
軸受部12に対して方向Rに関して対称に形成された一対の軸受部14の夫々は、湾曲凹面51を介して外周面18に連接された外周面52でギアケース2の内周面3に隙間53をもって対峙するようになっていると共に軸受基部9の軸方向の一方の半円環状の端面11から軸方向Xに一体的に伸びている弾性的可撓性の円弧部54と、円弧部54の内周面55から径方向の内方に突出して一体的に設けられていると共に突出端面56に軸受面57が形成された突出部58とを具備しており、こうして、軸受部14の夫々は、ギアケース2の内周面3に隙間53をもって対面するようになっている外周面52と、ラック軸1の外周面26に摺動自在に接触するようになっている軸受面57が設けられた内周面55とを具備している。
【0029】
隙間31は、隙間53の径方向の幅よりも大きな径方向の幅を有しており、隙間53は、隙間42の径方向の幅よりも大きな径方向の幅を有しており、ラック軸1の外周面26に摺動自在に接触するようになっている軸受面57を有している軸受部14の夫々の円弧部54は、軸受基部9を支点として径方向の内外方向に弾性的に撓み得るようになっており、軸受部14の夫々は、軸受面57で締め代をもってラック軸1の外周面26に接触するようになっていると共に、ラック軸1の外周面26に接触する軸受面57の軸心周りの方向Rでの両中央点の軸受部12を挟む中心角が略90°の角度を有するように、軸心周りの方向Rで軸受部12を間にして互いに離間して軸受基部9に一体的に形成されており、軸受部14の夫々の軸受面57は、ラック軸1の外周面26の曲率半径と実質的に同一の曲率半径をもった円弧凹面からなっており、外周面52の夫々は、ギアケース2の内周面3の曲率半径と実質的に同一の曲率半径をもった円弧凸面からなっている。
【0030】
内周面32と面一の円弧状の内周面55及びギアケース2の内周面3に隙間53をもって対面するようになっている外周面52を有している円弧部54の夫々は、当該内周面55及び外周面52に加えて、軸方向Xにおいて端面47と同位置に配された軸方向Xの端面61と、端面61に直交すると共に互いに平行であって且つ側面48に対しても平行であって方向Rにおいて互いに対向する一対の側面62とを有しており、突出部58は、端面61に連接した傾斜面63と、内周面55に連接した湾曲凸面64とを有しており、軸受面57は、傾斜面63及び湾曲凸面64に連接して当該傾斜面63及び湾曲凸面64に囲繞されている。
【0031】
軸受部12に対して方向Rに関して対称に形成されたスリット13の夫々は、側面48と側面62とで規定されている共に軸方向Xの一端では開放されている一方、軸方向Xの他端では湾曲凹状の軸受基部9の端面11で閉塞されている。
【0032】
一対の円弧部17の夫々は、軸受基部9の外周面18と面一であってギアケース2の内周面3に接触する円弧状の外周面71と、軸受基部9の内周面32と面一であってギアケース2の内周面3に隙間31をもってラック軸1の外周面26に対面する円弧状の内周面72と、軸方向Xにおいて端面47と同位置に配されている軸方向Xの半円環状の端面73と、径方向において、一方では内周面72に、他方では内周面72に夫々連接する半円環状のテーパー面74と、端面73及び61に直交すると共に側面62と協働してスリット15を規定する側面75と、側面34と面一であって方向Rにおいて切欠き部8を規定するテーパー面を含んだ側面76とを有している。
【0033】
軸受部12に対して方向Rに関して対称に形成されたスリット15の夫々は、側面62と側面75とで規定されている共に、スリット13と同様に軸方向Xの一端では開放されている一方、軸方向Xの他端では湾曲凹状の軸受基部9の端面11で閉塞されている。
【0034】
突起19を凹所28に嵌合してギアケース2に対する軸方向Xの抜け止めをなし、突起20を凹所29に嵌合してギアケース2に対する方向Rに関する回り止めをなして、ギアケース2の内周面3に固定されてラック軸1とギアケース2との間に介装される以上の滑り軸受4においては、切欠き部8により弾性的に縮径可能となっている軸受基部9を有しているため、ギアケース2の内周面3への装着性を向上し得、また、一対の軸受部14が軸受部12をスリット13を介して方向Rで挟んで軸受基部9の軸方向Xの一方の半円環状の端面11から軸方向Xに一体的に伸びていると共にラック軸1の外周面26に摺動自在に接触するようになっている軸受面57を有しているために、ラック軸1を軸受面57で二方向から支持できる結果、ラック軸1に対する支持力の低下をなくし得てラック軸1を円滑に軸方向Xに移動自在に支持でき、しかも、一対の軸受部14にスリット13を介して方向Rで挟まれた軸受部12がラック軸1のラック歯側とは反対側の当該ラック軸1の外周面26に隙間42をもって対面するようになっている軸受面45を有しているために、過大な荷重をラック軸1が路面から受けてラック軸1が大きく変位した場合においても、一対の軸受部14で支持された状態でラック軸1が軸受面45でも支持される結果、ラトル音、歯打ち音等の異音の発生を低減できるようになる。
【0035】
また、ラック軸1の外周面26への接触面である軸受面45の方向Rの中央点と軸心Oとを結ぶ線であって平坦面25に直交する線に関して方向Rにおいて対称に形成されている滑り軸受4においては、突出部46及び58の突出端面44及び56の夫々に軸受面45及び57の夫々が形成され形成されているために、ラック軸1に対する支持面を局限化できる結果、ラック軸1の軸方向Xの移動に対する摩擦抵抗を低減できて軸方向Xに移動するラック軸1を少ない抵抗力で支持でき、また、弾性的可撓性の円弧部54に設けられている突出部58に軸受面57が形成されているために、ラック軸1の径方向の変位に対応して円弧部54を軸受基部9を支点として弾性的に撓ませることができる結果、これによっても、ラック軸1の軸方向Xの移動に対する摩擦抵抗を低減できて軸方向Xに移動するラック軸1を少ない抵抗力で支持できる。
【0036】
また、滑り軸受4においては、軸受面45は、軸方向Xと直交すると共にラック軸1のラック歯7側からラック軸1のラック歯側とは反対側に向かう方向の一定量を超えるラック軸1の変位で、当該ラック軸1の外周面26に接触してラック軸1を支持するようになっている結果、ラック軸1の当該方向の大きな変位を制限できる。
【0037】
上記の滑り軸受4では、軸受面45及び57の夫々は、ラック軸1の外周面26の曲率半径と実質的に同一の曲率半径をもった円弧凹面からなっているが、これに代えて、軸受面45及び57のうちの少なくとも一つの軸受面、例えば、軸受面57は、図11の(A)に示すように、ラック軸1の外周面26の曲率半径よりも大きな曲率半径をもった円弧凹面からなっていても、図11の(B)に示すように、円弧凸面からなっていても、図11の(C)に示すように、平坦面からなっていてもよく、斯かる例では、軸受面57とラック軸1の外周面26との接触を略線接触にできる結果、ラック軸1の軸方向Xの移動に対する摩擦抵抗を低減できて軸方向Xに移動するラック軸1を更に少ない抵抗力で支持できる。図11の(A)、(B)及び(C)の例では、ラック軸1の外周面26に接触する軸受面57の軸心周りの方向Rでの中央点は、ラック軸1の外周面26との略線接触点となる。
【0038】
また、上記の滑り軸受4は、一対の軸受部14を有しているが、本発明は、これに限定されず、一対の軸受部14と同様に形成された少なくとも他の一対の軸受部を軸心Oの周りの方向Rにおいて一対の軸受部14と一対の円弧部17との間に更に有していてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ラック軸
2 ギアケース
3 内周面
4 滑り軸受
5 ピニオン軸
6 歯
7 ラック歯
8 切欠き部
9 軸受基部
10 外周面
11 端面
12、14 軸受部
13、15 スリット
17 円弧部
18 外周面
19、20 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11