(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような連結ファスナーは、コイル状に巻かれた状態で保管されているため、連結材に巻き癖がついてしまう。連結材についた巻癖が強い場合には、連結ファスナー装填後の最初のファスナーを打ち込んだ後に連結材の先端部がノーズ部の排出口に誘導されなかったり、排出口に入らなかったりして送り不良を発生させることがあった(
図8参照)。特に、近年普及している鋼製束を留めるために使うコンクリートピンなどは、1コイル当たりの本数が少なくコイル先頭の曲率が大きいため、巻癖が強くなる傾向があり、連結材の排出不良となり易い問題があった。
【0005】
従来においては、このように連結材の巻癖が強い場合には、連結ファスナーを装填する前に連結材の先端部を逆方向に曲げるなどして巻癖を矯正する必要があった。しかしながら、手作業で巻癖を矯正しなければならないため余計な手間がかかり、しかも、このような手間をかけても確実に排出不良を解消できるわけではなかった。
【0006】
なお、ノーズ内径を小さくしたり、排出口の位置を変えたりすることでも連結材の排出不良を防ぐ効果は期待できる。しかしながら、ファスナーの姿勢制御等の機能的な形状を設けることによって、ノーズ内径や排出口の位置に制限が加えられるため、設計の自由度が失われてしまう。このため、ノーズ内径を小さくしたり、排出口の位置を変えたりすることなく、連結材の排出不良を防止できる対応策が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、連結材を排出方向に誘導することで、ノーズ内径を小さくしたり、排出口の位置を変えたりすることなく、連結材の排出不良を防止することができる打込み工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0009】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
すなわち、請求項1に記載の打込み工具は、複数のファスナーを連結材で連結してコイル状に巻回した連結ファスナーを使用可能な打込み工具であって、ファスナーの打込み動作に連動して進退かつ揺動することでファスナーを順次ノーズ部に供給するファスナー送り部材を備え、前記ファスナー送り部材は、ファスナーの軸部を送るための送り爪と、連結ファスナーの連結材の向きを制御するための規制部と、を備え
、前記規制部は、連結ファスナーの先頭ファスナーと先頭から2番目のファスナーとの間に入り込んで両者の間隔を規制する挿入片であることを特徴とする。
【0010】
【0011】
(請求項
2)
請求項
2に記載の発明は、上記した請求項
1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記挿入片は、連結ファスナーの先頭ファスナーを後方から支持することを特徴とする。
【0012】
(請求項
3)
請求項
3に記載の発明は、上記した請求項
1又は2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記挿入片は、ファスナーに取り付けられたスリーブの間に入り込むことを特徴とする。
【0013】
(請求項
4)
請求項
4に記載の発明は、上記した請求項
1又は2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、連結ファスナーの連結材は、ファスナーの軸部を保持するファスナー保持部を備え、前記挿入片は、前記ファスナー保持部の間に入り込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、ファスナー送り部材に連結ファスナーの連結材の向きを制御するための規制部を設けたので、コイル状に巻回した連結ファスナーの巻癖が強い場合でも、連結ファスナーの連結材の向きを制御して排出方向に誘導することができる。よって、巻癖の矯正作業をしなくても、連結材の排出不良を防止することができる。また、ノーズ内径を小さくしたり、排出口の位置を変えたりすることなく、連結材の排出不良を防止することができるので、ノーズ内径や排出口の部位に新規な形状を設けえる必要がなく設計の自由度を増すことができる。
【0015】
なお、規制部は揺動可能なファスナー送り部材に形成されている。このため、ファスナー送り部材が退避方向に揺動することで、規制部がファスナーの送り動作を妨げる問題が発生しない。
【0016】
また、
前記規制部は、連結ファスナーの先頭ファスナーと先頭から2番目のファスナーとの間に入り込んで両者の間隔を規制する挿入片である。このため、コイル状に巻回した連結ファスナーの巻癖が強い場合でも、先頭ファスナーを巻癖に抗して押し上げて矯正するので、連結材を排出方向に誘導することができる。
【0017】
また、請求項
2に記載の発明は上記の通りであり、前記挿入片は、連結ファスナーの先頭ファスナーを後方から支持するようになっている。すなわち、挿入片によって、連結材を排出方向に誘導できるのみならず、打込み前の先頭ファスナーの姿勢を安定させることができる。
【0018】
また、請求項
3に記載の発明は上記の通りであり、前記挿入片は、ファスナーに取り付けられたスリーブの間に入り込んで先頭ファスナーと先頭から2番目のファスナーとの距離を広げるようになっている。すなわち、挿入片を軸部よりも大径のスリーブに係合させることで先頭ファスナーを押し上げるようになっているので、挿入片を大きく突出させる必要がない。よって、挿入片が送り動作を極力妨げないようにすることができる。
【0019】
また、請求項
4に記載の発明は上記の通りであり、前記挿入片は、ファスナー保持部の間に入り込んで先頭ファスナーと先頭から2番目のファスナーとの距離を広げるようになっている。すなわち、挿入片を軸部よりも大径のファスナー保持部に係合させることで先頭ファスナーを押し上げるようになっているので、挿入片を大きく突出させる必要がない。よって、挿入片が送り動作を極力妨げないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる打込み工具10は、圧縮空気を利用してファスナー51を打ち込む空気圧式打込み工具であり、
図1に示すように、ノーズ部13を備えた工具本体11と、ノーズ部13の側方において工具本体11に連設されたマガジン30と、を備えている。
【0022】
工具本体11は、ボデーハウジング12とグリップハウジング16とが略直角に連設されて構成されている。ボデーハウジング12の内部には、特に図示しないが、打撃シリンダが配置されており、この打撃シリンダ内には打撃ピストンが摺動自在に収容されている。打撃ピストンの下面にはファスナー51を打撃するためのドライバが結合して設けられており、打撃ピストンが作動したときにドライバでファスナー51を打ち込むことができるようになっている。
【0023】
ボデーハウジング12の下方先端にはファスナー51を射出するためのノーズ部13が設けられており、前記したドライバはノーズ部13の方向へと摺働可能に案内されている。なお、ノーズ部13の後方にはファスナー供給機構が設けられている。このファスナー供給機構は、
図2に示すように、ファスナー51を順次ノーズ部13に供給するファスナー送り部材20を備えている。
【0024】
このファスナー送り部材20は、
図3及び
図4に示すように、ファスナー51の軸部に当接して、または、ファスナー51の軸部を掴んで、ファスナー51を送るための送り爪21と、連結ファスナー50の連結材52の向きを制御するための規制部と、図示しない軸部を挿入するための軸孔23と、を備えている。
【0025】
規制部は、本実施形態においては、
図3及び
図4に示すような挿入片22として設けられている。この挿入片22は、連結ファスナー50の先頭ファスナーAと先頭から2番目のファスナーBとの間に入り込んで両者の間隔を規制する部位である。この挿入片22については、後ほど詳述する。
【0026】
軸孔23は、ファスナー送り部材20を揺動可能に軸支する軸部(図示せず)を挿入するためのものである。ファスナー送り部材20は、この軸孔23に挿入された軸部を介して、ファスナー供給機構に揺動可能に支持されている。なお、ファスナー供給機構はファスナー51を打込むときのエアを利用して打込み動作に連動して進退動作するようになっており、これにより、ファスナー送り部材20も打込み動作に連動して進退動作するようになっている。
【0027】
なお、
図4等に示すように、上記した軸孔23は後方に偏った位置に設けられているため、ファスナー送り部材20が後退する際に送り爪21がファスナー51に当たると、ファスナー送り部材20が退避方向に揺動するようになっている。一方、ファスナー送り部材20が前進する際には、送り爪21がファスナー51に当たっても退避方向には揺動せず、そのまま送り爪21がファスナー51を掴んで前方に送るようになっている。このような動作を繰り返すことで、ファスナー送り部材20は、マガジン30内の連結ファスナー50を順次ノーズ部13内へと供給する送り動作を実行する。
【0028】
ノーズ部13の先端には、ノーズ部13に対して上下動可能に配置されて被打ち込み材に押し付けられるコンタクトノーズ14が配置されている。このコンタクトノーズ14は、ノーズ部13の先端に摺動可能に取り付けられている。このコンタクトノーズ14は、打込み工具10の安全装置を構成するコンタクトアームに連結されており、コンタクトノーズ14が被打ち込み材に押し付けられて摺動すると、一体的にコンタクトアームが上動するようになっている。コンタクトアームが上動することで、トリガ17の操作が有効となるように形成されている。
【0029】
具体的には、コンタクトノーズ14を被打ち込み材に押し付けた状態でトリガ17を操作すると(またはトリガ17を操作した状態でコンタクトノーズ14を被打ち込み材に押し付けると)、グリップハウジング16後端のエンドキャップ部18に接続されたエアコンプレッサ等のエア供給源から供給された圧縮空気が打撃シリンダ内へ供給され、この圧縮空気が打撃ピストンに作用して打撃ピストンが駆動し、打撃ピストンに結合されたドライバが先頭ファスナーAを打撃する。このとき、ドライバ及びファスナー51はコンタクトノーズ14内部の射出経路によって姿勢を安定的にガイドされており、コンタクトノーズ14の先端に開口した射出口15からファスナー51が打ち出される。
【0030】
マガジン30は、複数のファスナー51をコイル状に巻回した連結ファスナー50を収納するものである。このマガジン30の前部には、
図1に示すように、連結ファスナー50を引き出すための開口30aが形成されている。この開口30aから引き出された連結ファスナー50は、ノーズ部13の方向へと案内され、ファスナー送り部材20の送り爪21によって保持されてセットされる。具体的には、送り爪21が先頭から2番目のファスナーBを掴むことで、先頭ファスナーAがドライバの直下の射出路13aに位置するように保持される(
図7参照)。
【0031】
なお、本実施形態に係る連結ファスナー50は、
図6に示すように、合成樹脂製の帯状の連結材52で複数のファスナー51を連結したものである。ファスナー51を連結する連結材52は、ファスナー51の軸部を保持するファスナー保持部52aと、ファスナー保持部52aを互いに連結する帯部52bと、を備えている。また、各ファスナー51には、ファスナー保持部52aよりも足先側に、筒状に形成されたスリーブ53が取り付けられている。このスリーブ53は、ファスナー51と一緒に被打ち込み材に打ち込まれることで、ファスナー51と被打ち込み材との間に水などが入り込まないようにするための合成樹脂製またはゴム製の止水用のパッキン等である。
【0032】
ところで、前述したように、本実施形態のファスナー送り部材20には、連結ファスナー50の連結材52の向きを制御するための挿入片22が設けられている。この挿入片22は、
図3等に示すように、連結ファスナー50と係合するように突出形成されている。この挿入片22は、送り爪21よりも突出度が小さく(ファスナー送り部材20の上面からファスナー51の軸心までの高さ程度で)形成されており、また、ファスナー51を後方から前方に押し出す爪(送り爪21における後送り爪21bに相当)を備えていないため、連結ファスナー50の送り動作には影響しない。
【0033】
この挿入片22は、
図5及び
図6に示すように、連結ファスナー50の先頭ファスナーAと先頭から2番目のファスナーBとの間に入り込むようになっている。具体的には、この挿入片22は、ファスナー51に取り付けられたスリーブ53の間に入り込むことで、先頭ファスナーAと先頭から2番目のファスナーBとの間隔を規制するようになっている。
【0034】
図7は、連結ファスナー50の連結材52が排出される様子を示す説明図である。この
図7が示すように、挿入片22がスリーブ53の間に入り込むことで、仮に連結材52に強く巻癖がついていた場合でも、連結材52の排出方向を誘導することができる。また、連結材52に強く巻癖がついていないとしても、排出口13bの位置によっては排出不良が発生する場合がある。例えば、
図7に示すように、連結材52をやや反り返らせないと排出口13bから排出できないような場合がある。このような場合でも、挿入片22で連結ファスナー50を誘導することで、連結材52を確実に排出口13bから排出させることができる。
【0035】
一方、挿入片22を備えない従来の構造では、
図8に示すように、連結材52に強く巻癖がついていた場合や、排出不良が発生しやすい位置に排出口13bが設けられている場合には、連結材52が意図した方向に排出されず、排出不良が発生する。
【0036】
なお、上記した挿入片22は、連結材52の排出方向を誘導するのみならず、先頭ファスナーAの姿勢を安定させるものでもある。すなわち、
図7に示すように、挿入片22によって、連結ファスナー50の先頭ファスナーAが後方から支持されているため、先頭ファスナーAを射出路13aの略中央に安定して支持することができる。特に、連結材52に巻癖がついている場合には、巻癖によって連結ファスナー50が挿入片22に押し付けられるため、より安定して先頭ファスナーAを支持することができる。
【0037】
また、ファスナー送り部材20が後退する際には、送り爪21を退避させるためにファスナー送り部材20が揺動するため、同時に挿入片22も退避方向に変位する。よって、挿入片22がファスナー送り部材20の後退を妨げることはない。
【0038】
なお、本実施形態においては、挿入片22がスリーブ53に係合するように配置されている。よって、連結ファスナー50がスリーブ53を備えていない場合には、挿入片22は連結ファスナー50に係合しない。この場合には、挿入片22が設けられていることによる積極的な影響はなく、従来のファスナー送り部材20と同様に作用する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、ファスナー送り部材20に連結ファスナー50の連結材52の向きを制御するための規制部22を設けたので、コイル状に巻回した連結ファスナー50の巻癖が強い場合でも、連結ファスナー50の連結材52の向きを制御して排出方向に誘導することができる。よって、巻癖の矯正作業をしなくても、連結材52の排出不良を防止することができる。また、ノーズ内径を小さくしたり、排出口13bの位置を変えたりすることなく、連結材52の排出不良を防止することができるので、ノーズ内径や排出口の部位に新規な形状を設ける必要がなく、設計の自由度を増すことができる。
【0040】
なお、規制部22は揺動可能なファスナー送り部材20に形成されている。このため、ファスナー送り部材20が退避方向に揺動することで、規制部22がファスナー51の送り動作を妨げる問題が発生しない。
【0041】
また、前記規制部22は、連結ファスナー50の先頭ファスナーAと先頭から2番目のファスナーBとの間に入り込んで両者の間隔を規制する挿入片22である。このため、コイル状に巻回した連結ファスナー50の巻癖が強い場合でも、先頭ファスナーAを巻癖に抗して押し上げて矯正するので、連結材52を排出方向に誘導することができる。
【0042】
また、前記挿入片22は、連結ファスナー50の先頭ファスナーAを後方から支持するようになっている。すなわち、挿入片22によって、連結材52を排出方向に誘導できるのみならず、打込み前の先頭ファスナーAの姿勢を安定させることができる。
【0043】
また、前記挿入片22は、ファスナー51に取り付けられたスリーブ53の間に入り込んで先頭ファスナーAと先頭から2番目のファスナーBとの距離を広げるようになっている。すなわち、挿入片22を軸部よりも大径のスリーブ53に係合させることで先頭ファスナーAを押し上げるようになっているので、挿入片22を大きく突出させる必要がない。よって、挿入片22が送り動作を極力妨げないようにすることができる。
【0044】
なお、上記した実施形態においては、挿入片22はスリーブ53の間に入り込むこととしたが、本発明の実施形態としてはこれに限らない。例えば、挿入片22がファスナー保持部52aの間に入り込むようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。また、挿入片22がファスナー51の軸部の間に入り込むようにしてもよい。ただし、ファスナー51の軸部の間に入り込むようにした場合は、上記した実施形態と比較して挿入片22を大きくしなければならない可能性がある。また、ファスナー51の間に入り込むのではなく、連結ファスナー50の側部に当接して連結ファスナー50の連結材52の向きを制御するようにしてもよい。