(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、室内の空気の脱臭や除湿・加湿などを行う空調機器などに使用されるフィルターエレメントとしては、吸着剤や脱臭剤などを配合した紙、吸湿剤を含有させた加工紙、又は多孔質性樹脂フィルムなどのシート状材料が用いられている。
【0003】
これらのシート状材料は平板状あるいはプリーツ状に成形されて使用され、あるいは、以下に述べるようなハニカム状等の種々の形状に成形されて使用される。
【0004】
例えば、シート状材料はまずコルゲーターにより、波形(フルート)等の形状に成形され、次に、このシートと同一或いは異種の材料からなる平板状のライナーと、接着剤により固着され、一体化される。その後、単板状や円筒状に積層、裁断され、ハニカム状のフィルターエレメント(以下、ハニカムエレメントとも言う)が形成される。
【0005】
このようなハニカム状のエレメントでは、室内の湿気を帯びた空気は、フルートとライナーとに囲まれたセル内を、波型の畝に沿った方向に流れ、空気中の湿気がエレメント内で吸着されて除去された後、乾燥空気となって室内へと循環される。
【0006】
ハニカム状のフィルターエレメントは、圧力損失の上昇を伴わずに、上記積層体内のセルをできるだけ小さくし、セル密度を高めることが要求されている。これは、単位体積当たりの処理流体との接触を多くすることで、脱臭、除湿、加湿等の効率や熱交換効率を高くするためである。 そして、そのためには、シート厚さが薄いことが望ましい。
【0007】
脱臭、除湿等の空気調節器としての性能を満足させるためには、悪臭原因物質や水分子等を吸着したり、分解したりして除去する能力が必要である。
【0008】
従来の紙製フィルターエレメントは、活性炭粉末やゼオライトなどの機能性無機材料を繊維材料に混合した水系分散スラリーを、高分子凝集剤を用いて凝集させ、得られたフロックを抄網上で脱水し、プレス、乾燥することにより製造される。そのため、繊維が太く長くなったり、フロックが大きくなったりすると、堆積が不均一となり、粗密が顕著になる。
【0009】
また、紙よりなるフィルターエレメントの場合、薄葉化しようとするほど、高い通気性を有するようになるが、その一方で、室外に排出すべき煙草の煙等の粉塵はフィルターを通過して、空気の浄化ができなくなるという問題がある。逆に、フィルターを厚くすると、セルを小さくすることが困難になり、ライナー密度やセル密度を十分大きくできないので、所望の脱臭・除湿効率が得られないという問題も存する。
【0010】
一方、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリエチレン(PE)に代表される有孔フィルムは、多くの場合延伸法で製造され、小気孔が得られ易いので、通気性を小さくすることや薄葉化の点では優れている。しかし、機能性無機材料が多く配合されるとフィルム強度が低下するので、機能性無機材料を高率で配合できない。その結果、空気中の汚染物質や水分等の吸着・除去能力が不足し、空気の浄化が十分にできないという欠点を有する。
【0011】
以上のように従来の紙からなるフィルターエレメントは、機能性無機材料の高率での混合が容易であり、汚染物質等の吸着、除去が可能であるが、薄葉化に限界があり、厚くするとセル密度を高くできないため、脱臭、除湿等の効率の向上に限界がある。
一方、有孔フィルムからなるものは、小気孔で実質的に非通気性であり、かつ薄葉化が可能であるので、セル密度を高くすることによる処理気体の接触効率の向上の点では優れている。 しかしながら、有孔フィルムからなるものは、機能性無機材料を高率で配合できないので、汚染物質の吸着や分解、あるいは吸湿等が不十分になり、特に、脱臭、除湿器等の場合、目的が十分に達成されないという欠点を有する。
このように、処理気体の接触効率が高く、かつ単位面積当たりの処理能力も高いフィルターエレメントは得られていないのが現状である。
【0012】
また。上記の課題を解決するために、特許文献1には、機能性無機材料の固形分比を調節し、特定の平均孔径の連続気孔を有する多孔質膜又は多孔質層からなるフィルターエレメントも提案されている。
また、自動車の車室の様に、人の呼気等により定常的に湿気が持ち込まれる閉鎖空間で使用される空気調節機器では、長時間にわたって除湿を行う必要がある。 電動のエアコンで除湿を行う方法は、電力の供給があれば連続的に除湿を行うことが出来るが、電気自動車などに搭載する場合には走行距離を縮めてしまうという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のフィルターエレメントは、気体中の粉塵、悪臭原因物質、その他各種汚染物質を除去するフィルターエレメントであって、高吸水性ポリマーよりなる高吸水性繊維および熱融着性繊維を含有する乾式不織布よりなることを特徴とする。
【0022】
(高吸水性繊維)
本発明に使用される高吸水性繊維としては、必ずしも限定するものではないが、でんぷんグラフト系や、ポリアクリル酸系、ポリビニルアルコール系等のポリマーを架橋することによって得られる高吸水性ポリマーや、ポリアルキレンオキシド単位を含む熱可塑性吸水性ポリマーなどの高吸水性ポリマーから紡糸された高吸水性繊維などを例示することが出来る。 高吸水性ポリマーは自重の数百倍から約千倍までの水を吸収、保持できる。特に、アクリル酸の重合体はカルボキシル基を多数持つために非常に親水性が高く、さらに網目構造に架橋させナトリウム塩の形とすると高い吸水性を持つゲルとなり、優れた特性を示すことが知られている。
【0023】
本発明に用いられる乾式不織布に含有される高吸水性繊維は高吸水性ポリマーを含有し、繊維としての機能と高吸水性ポリマーの機能を併せ持つ吸水膨潤性を有する繊維である。
高吸水性ポリマーを含有する乾式不織布に湿気を含んだ空気に接触させると、空気中の湿気を吸収して高吸水性ポリマーが膨潤することにより、空気中の湿気は除湿される。空気中の湿気を吸収して膨潤した乾式不織布を低湿度の空気に接触させると、徐々に放湿して定常の水分量に戻り、再び吸湿できるようになる。
従来、除湿用フィルターとしてはシリカゲルなどの無機吸湿材が検討されてきた。シリカゲルを添加した紙や不織布も、湿気を含んだ空気に接触させると、空気中の湿気を吸収し、低湿度の空気に接触させると、徐々に放湿して定常の水分量に戻り再び吸湿できる様になる。
しかしながら、本発明者等は、シリカゲルを含有させた乾式不織布に比べ、高吸水性ポリマーを含有させた乾式不織布の放湿性は極めて優れることを見出した。 この理由は必ずしも定かではないが、吸水性ポリマーの吸放湿の機構が、無機顔料の吸脱着とは異なるためであろうと推定される。
本発明のフィルターエレメントには高吸水性ポリマーより形成された高吸水性繊維を採用しているため、湿気を含んだ空気に接触させると、空気中の湿気を吸収して高吸水性ポリマーが膨潤し、不織布中を空気が通過する際の圧力損失が増加する傾向がある。
しかしながら、高吸水性ポリマーが粒子状で不織布中に分散されている場合に比べ、高吸水性ポリマーが繊維の形状を保った状態で不織布を構成していると、高吸水性ポリマーが膨潤した状態でも繊維間の空隙は保たれ易いと考えられる。
【0024】
(捲縮合成繊維)
本発明のフィルターエレメントを形成する乾式不織布には、さらに捲縮合成繊維が含有される。不織布を形成する繊維が捲縮されていることにより、嵩高の不織布を形成することが出来る。嵩高の不織布は不織布を構成する繊維の間隔が大きく、高吸水性繊維が吸湿して膨潤しても、空気の通過を妨げ難く、フィルターの圧力損失増大を防止することが出来ることから好ましい。また、熱処理により捲縮が顕在化する潜在捲縮合成繊維を用いることも出来る。このような潜在捲縮合成繊維は、例えば、熱処理による加熱時の収縮率が異なる樹脂を複合化させて得られるサイドバイサイド型構造、偏心芯鞘型構造の潜在捲縮合成繊維(PET/PET複合繊維、PE/PE複合繊維、PP/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、PE/PP複合繊維)などが挙げられる。 本発明において使用される乾式不織布には、高吸水性繊維および捲縮合成繊維が含有され、熱融着繊維によって繊維が結合された乾式不織布が使用される。 この捲縮合成繊維は、同時に熱融着性繊維であっても、熱融着性繊維以外に添加される合成繊維であってもよい。熱融着性繊維として捲縮していない熱融着性合成繊維を用いた場合には、高吸水性繊維と熱融着性繊維以外の合成繊維成分として捲縮合成繊維を含有することで、嵩高の不織布を形成することが出来る。
また、これらの捲縮繊維として、繊度の大きい繊維や、中空繊維などの太い捲縮繊維を使用すると、反発性のある不織布とする事が出来る。このような反発性のある不織布は、変形に対する抵抗があるため、高吸水性繊維の吸湿・膨潤に伴って不織布が変形して空隙が低下するのを防止することが出来る。
【0025】
(熱融着性繊維)
上記、高吸水性繊維は、併用する熱融着性繊維によって、フィルターを形成する乾式不織布に担持される。
この熱融着性繊維は、不織布への加工工程での熱処理により、少なくとも一部が溶融し、バインダーとして作用するものであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)およびポリプロピレン(PP)からなる群より選ばれる1種以上の樹脂からなるものが好ましく用いられる。
また、熱融着性繊維としては、融点の異なる2種類の樹脂を複合化させて得られ、繊維の表面のみが溶融する芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維が好ましい。
芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維は、融点の高い樹脂からなる芯の外周上に、融点の低い樹脂からなる鞘が形成された構造を有し、具体的には、融点が異なる2種の樹脂を組み合わせた形態(PET/PET複合繊維、PE/PE複合繊維、PP/PP複合繊維、EVA/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、PE/PP複合繊維)が挙げられる。
これらのなかでは、PE/PET複合繊維や、高重合度のPETからなる芯の外周上に、このPETよりも融点の低い低重合度のPETからなる鞘が形成されたPET/PET複合繊維などが好適である。 本発明に使用する乾式不織布を構成する熱融着性繊維としては、捲縮(クリンプ、カール、スパイラル)している熱融着性繊維を用いることが好ましい。
【0026】
(その他の繊維成分)
本発明のフィルターエレメントを形成する乾式不織布には、高吸水性繊維、捲縮合成繊維およびこれらの繊維を結合させる熱融着性繊維以外にも、本発明の効果を損なわない範囲でその他の繊維成分を含有することも出来る。
このような、その他の繊維成分としては、PET、ポリカーボネート、ナイロン、ポリフェニレンスルフィドなどの熱融着性でない合成繊維、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維などの無機繊維、レーヨン、植物パルプ等のセルロース繊維などを挙げることができる。
高吸水性繊維を含有する不織布層に併用できる他の繊維成分としては、親水性繊維であっても、疎水性繊維であってもよい。一般的な親水性繊維は、高吸水性繊維とは吸・放湿の機構が異なり、高吸水性繊維のような速やかな吸・放湿挙動は示さない。高吸水性繊維を含有する不織布層に他の親水性繊維が併用されている場合、不織布の吸収する水分は、高吸水性繊維と共に親水性繊維にも保持されることになるが、同じ不織布中に共存させる場合には、高吸水性繊維による速やかな吸・放湿挙動を阻害する可能性があるため注意が必要である。また、親水性繊維は吸湿して軟化し、不織布の形態が崩れ易くなる可能性もある。
【0027】
(併用できるその他の材料)
本発明のフィルターエレメントには、更に必要に応じて各種機能材料を併用する事が出来る。そのような機能材料としては、活性炭、ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩型モレキュラーシーブ、シリカゲル、珪藻土、パリゴスカイト、セピオライトなどの粒子内に微孔を有する多孔質無機粒子や、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイト、バーミキュライト、カネマイトなどの粘土化合物等、酸化チタン、マンガン酸化物などの触媒活性を有する粒子、ゾノトライト族などの珪酸カルシウム、粒子表面が疎水化されたシリカ等の無機粉体などの粒子状形態を有するものを挙げることができる。
また、前記、高吸水性繊維と同様の材料からなる高吸水性ポリマー粒子も併用する事が出来る。 無機粉体などの各種機能材料粒子や高吸水性ポリマー粒子も、前記の併用する熱融着性繊維によって、フィルターを形成する乾式不織布に担持される。
【0028】
本発明のフィルターエレメントには、更に必要に応じて他の添加物を使用することもできる。
その例としては、黒鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、金属酸化物、短繊維状の鉱滓繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、活性炭素繊維などの無機繊維、シリコーン系、フルオロカーボン系、長鎖脂肪酸塩系、長鎖アミン塩系などの撥水及び/又は撥油剤、界面活性剤、金属塩類、銀系などの抗菌剤、防かび剤などが挙げられる。
【0029】
乾式不織布の製造方法としては、特に限定するものではなく、スパンボンド法、メルトブローン法といった紡糸と同時にウェブ形成を行う方法や、カード機を用いて綿状の繊維を梳りながらウェブを形成するカーディング法、気流中でほぐした繊維を金網上に堆積させてウェブを形成するエアレイド法など、各種公知のウェブ形成法を採用することが出来る。
本発明のフィルターを形成する乾式不織布は、含有する熱融着繊維の融点以上の温度で処理され、該熱融着繊維により繊維が互いに接着されて(サーマルボンド法)シート状に固定される。
【0030】
上記のウェブ形成法の中で、エアレイド法によって形成されたウェブは、繊維がウェブの厚み方向にも配向し、均一性が高く、嵩高であると共に通気性に優れた性質があり、圧力損失の小さいフィルターを得られるため特に好適に用いられる。
本発明の乾式不織布中に含有される高吸水繊維の割合は、フィルターエレメントの設計などにもよるが、乾式不織布全体の5〜95質量%で調節されることが好ましく、より好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。
即ち、5質量%未満では充分な除湿性能を得難く、95質量%を越えると、結果的に熱融着性繊維の含有量が減少し、シート化することが困難になる。
エアレイド法は、比較的短い繊維によって均一性の高いウェブを形成することが出来る。
本発明に用いられる高吸水性繊維や熱融着繊維は、エアレイド法による不織布への加工性の点から、加重平均繊維長は0.5〜20mmの範囲のものが好ましく、より好ましくは2〜10mmの範囲が用いられる。
また、これらの繊維の好ましい繊度は0.5~50dtex程度の範囲が好ましく、より好ましくは1~20dtexの範囲が用いられる。
【0031】
本発明の高吸水性繊維を含有する不織布シートから形成されるフィルターとしては、不織布シートをプリーツ付の構造体にすることにより、フィルターとしての有効面積を大きくすることが出来る。これは、フィルターの効果を向上することが出来るため好ましいフィルターエレメントの態様である。
また、フィルターをハニカムエレメントとする事により、圧力損失の上昇を伴わずに、単位体積当たりの処理流体との接触を多くすることが出来るため好ましい態様である。
すなわち、湿気を帯びた空気は、フルートとライナーとに囲まれたセル内を、波型の畝に沿った方向に流れ、空気中の湿気がエレメント内で吸着されて除去された後、乾燥空気となって室内へと循環される。
このようなハニカムエレメントは、例えば、次のような方法で製造することが出来る。
先ず、シート状の不織布をまずコルゲーターにより、波形(フルート)等の形状に成形し、次に、このシートと同一或いは異種の材料からなる平板状のライナーと、接着剤により固着し、一体化する。 その後、単板状や円筒状に積層、裁断され、ハニカム状のフィルターエレメントを形成するといった方法により製造することが出来る。
また、プリーツ付き構造体とハニカム構造体のフィルターを積層してフィルターエレメント全体の厚みとする事も出来る。
この場合、プリーツ付き構造体とハニカム構造体は、フィルターエレメントの設計によって、相互に接着されていても良いし、夫々の構造体を単に積層して用いることも出来る。また、プリーツ付き構造体を気体の入口側に、ハニカム構造体気体の出口側に配して積層することも、 ハニカム構造体を気体の入口側に、プリーツ付き構造体を気体の出口側に配して積層することも出来る。 夫々の構造体の積層構成は、フィルターエレメントが組み込まれる脱臭器、除湿、加湿器等の各種空気調節機器、調湿材料の特性に合せた構成を選択することが好ましい。
【0032】
高吸水性繊維を含む不織布は、吸湿が進むと高吸水性繊維が膨潤して表面がヌルヌルとした状態になり、取り扱い性に劣る場合がある。そこで、高吸水性繊維を含有する不織布層の少なくとも一方の表面に、異なる不織布よりなる表面層を設けた不織布積層体として取り扱い性を改善する事が出来る。
本発明の表面層となる不織布としては、PEやPPあるいはPETなど、親水性のない合成繊維よりなる不織布であっても、レーヨンあるいは植物パルプ繊維などのセルロース系繊維のような親水性を有する繊維よりなる不織布であってもよく、目的に応じて適宜選択することが出来る。 また、合成繊維よりなるスパンボンド不織布やスパンレース不織布、あるいはニードルパンチ不織布やエアレイド不織布等、適宜選択することが出来る。
本発明において表面層を有する不織布積層体は、高吸水性繊維を含有する乾式不織布層の表面に、表面層の不織布が、熱融着性接着剤を介して接着されていることが好ましい。 これは、表面層の不織布に、必ずしも熱融着性繊維や熱融着性接着剤を含有する必要がなく、ハニカム加工や、プリーツ加工の際に熱ロールへの貼りつきのない加工性に優れた不織布積層体とする事が出来るためである。
上記本発明のフィルターエレメントに使用する乾式不織布の厚さは特に限定されるものではないが、プリーツ、コルゲートなどの種々の形状に加工して、セル密度の増加により、汚染物質や湿気等の吸着率を向上させようとする点から、表面層を設ける場合でも好ましくは4mm以下、より好ましくは2mm以下である。
本発明のフィルターエレメントを用いて、空気中の湿気を除去する場合、フィルターに使用される吸水性繊維の量が多いほど、湿気の除去能力は向上する傾向にある。
一方、フィルターに使用する高吸水性繊維の量を多くするために不織布の坪量を増加することは、加工性の低下や、セル密度の増加を制限し、またフィルターの圧力損失増加を起こす。
フィルターエレメントに使用する乾式不織布の坪量は特に限定するものではないが、20〜1000g/m
2の範囲で調節され、好ましくは50〜500g/m
2、更に好ましくは80〜300g/m
2の範囲である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 尚、文章中、特にことわりなく用いた「部」、「%」は、夫々「質量部」、「質量%」を意味するものとする。
【0034】
[不織布Aの製造]
コンベアに装着されて走行するメッシュ状無端ベルト上に、表面層として、エアレイド法により製造されたパルプ不織布(商品名:キノクロスKS40、王子キノクロス株式会社製、坪量40g/m
2)を繰り出した。次いで、この表面層上に、接着剤となるPE粉体の8g/m2を散布してから、エアレイド法のウェブフォーミング機を用いて、ポリアクリル酸ナトリウム系高吸水性繊維(商品名:ベルオアシス、繊度10dtex、繊維長51mm、帝人株式会社製)67質量部と熱融着性繊維(商品名:ETC325、繊度2.2dtex、繊維長5mm、ESファイバービジョンズ製 PE/PET捲縮複合繊維)17質量部を、解繊機を用いて空気中で混合した。
混合した上記の繊維を、メッシュ状無端ベルト側に吸気流とともに下降させて表面層上に落下堆積させ、エアレイドウェブを表面層上に形成した。その後、エアレイドウェブ上に先に用いたものと同じ接着剤の8g/m
2を散布してから、表面層として、先に用いたものと同じパルプ不織布を積層し、エアレイドウェブの両面に、パルプ不織布からなる表面層が設けられた積層ウェブを得た。
この積層ウェブを、周面
が通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアドライヤーを通過させて熱処理し、高吸水繊維を400g/m
2の割合で含有する、坪量590g/m
2、厚さ2.9mmの乾式不織布を得た。
【0035】
[実施例1]
100mm×3000mmに断裁した不織布Aを10mmに交互に折り曲げてプリーツ加工し、100mm×100mmの枠に固定し、厚さ10mm、100mm×100mmのプリーツ付き構造体よりなるフィルターエレメントを得た。
【0036】
[実施例2]
不織布Aをピッチ10mm山高5mmのコルゲータで波付けし、同一組成のライナーにエポキシ系接着剤により接着して一体化し、高さ100mmとなる様にこれを積層した。さらに厚さ10mmに断裁し、高さ100mm、幅100mm、厚さ10mmのハニカム構造体よりなるフィルターエレメントを得た。
【0037】
[実施例3]
100mm×3000mmに断裁した不織布Aを5mmに交互に折り曲げてプリーツ加工し、100mm×100mmの枠に固定し、厚さ5mm、100mm×100mmのプリーツ付き構造体a1を得た。 次に、不織布Aをピッチ10mm山高5mmのコルゲータで波付けし、同一組成のライナーにエポキシ系接着剤により接着して一体化し、高さ100mmとなる様にこれを積層した。さらに厚さ5mmに断裁し、高さ100mm、幅100mm、厚さ5mmのハニカム構造体a2を得た。
エポキシ系接着剤を用いて、得られたプリーツ付き構造体a1上に、ハニカム構造体a2を積層して接着し、プリーツ付き構造体とハニカム構造体が積層されたフィルターエレメントを得た。
【0038】
[不織布Bの製造]
エアレイド法のウェブフォーミング機を用いて、シリカゲル(商品名:アートソーブ、富士シリシア化学製)60質量部、熱融着性繊維(商品名:ETC325、ESファイバービジョンズ製)27質量部を、解繊機を用いて空気中で混合した以外は実施例1と同様にして、エアレイドウェブの両面に、パルプ不織布からなる表面層が設けられた積層ウェブを得た。
この積層ウェブを、周面
が通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアドライヤーを通過させて熱処理し、シリカゲルを400g/m
2の割合で含有する、坪量665g/m
2、厚さ1.5mmの乾式不織布を得た。
【0039】
[比較例1]
100mm×3000mmに断裁した不織布Bを10mmに交互に折り曲げてプリーツ加工し、100mm×100mmの枠に固定し、厚さ10mm、100mm×100mmのプリーツ付き構造体よりなるフィルターエレメントを得た。
【0040】
[比較例2]
不織布Bをピッチ10mm山高5mmのコルゲータで波付けし、同一組成のライナーにエポキシ系接着剤により接着して一体化し、高さ100mmとなる様にこれを積層した。さらに厚さ10mmに断裁し、高さ100mm、幅100mm、厚さ10mmのハニカム構造体よりなるフィルターエレメントを得た。
【0041】
[比較例3]
100mm×3000mmに断裁した不織布Bを5mmに交互に折り曲げてプリーツ加工し、100mm×100mmの枠に固定し、厚さ5mm、100mm×100mmのプリーツ付き構造体b1を得た。 次に、不織布Bをピッチ10mm山高5mmのコルゲータで波付けし、同一組成のライナーにエポキシ系接着剤により接着して一体化し、高さ100mmとなる様にこれを積層した。さらに厚さ5mmに断裁し、高さ100mm、幅100mm、厚さ5mmのハニカム構造体b2を得た。
エポキシ系接着剤を用いて、得られたプリーツ付き構造体b1上に、ハニカム構造体b2を積層して接着し、プリーツ付き構造体とハニカム構造体が積層されたフィルターエレメントを得た。
【0042】
[吸湿性評価]
・試料調製
(1)試料寸法:不織布100mm×100mm相当分。
(2)フィルターエレメントから、所定の面積の不織布試料相当分を断裁する。
(3)断裁した不織布試料を105℃で恒量まで乾燥し、絶乾で25℃まで除冷する。
・吸湿試験
(1)試験環境:25℃、90%RH
(2)試験環境に不織布試料をおき、時間の経過による試料重量の変化を測定する。
・評価
(1)吸湿開始後120分までの吸湿量で評価する。
○ 200g/m
2以上
△ 100g/m
2以上
× 50g/m
2未満
【0043】
[放湿性評価]
・試料調製
(1)試料寸法: 不織布100mm×100mm相当分。
(2)フィルターエレメントから、所定の面積の不織布試料相当分を断裁する。
(3)25℃、90%RHの環境下で平衡まで吸湿させ、質量を測定する。
・放湿試験
(1)試験環境:15℃、35%RH
(2)試験環境に不織布試料をおき、時間の経過による試料重量の変化を測定する。
・評価
(1)放湿開始後120分までの放湿量で評価する。
○ 200g/m
2以上
△ 100g/m
2以上
× 50g/m
2未満
【0044】
得られた実施例1および比較例1のフィルターエレメント試料について、吸湿性および放湿性を評価した。結果を表に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
以上の評価より、本発明のフィルターエレメントは、優れた吸湿性を示すのみならず、優れた放湿性も有するものであり、除湿効率が優れるのみならず、放湿効率も優れて吸湿性能を速やかに回復させることが出来るフィルターエレメントを提供することが出来る。