(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115422
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
H01M2/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-192092(P2013-192092)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-60653(P2015-60653A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
(72)【発明者】
【氏名】守作 直人
【審査官】
渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/121947(WO,A1)
【文献】
特開2003−346749(JP,A)
【文献】
特開2013−073915(JP,A)
【文献】
特開2010−211962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の電池セルを備えた電池モジュールであって、
前記電池セルを保持する電池ホルダには、配線を支持する支持部が固定され、
前記支持部は、前記電池ホルダにおける前記支持部が固定される固定面から立設する第1の支持部と第2の支持部とを含み、
前記電池ホルダは、前記第1の支持部が固定される第1の電池ホルダと、前記第2の支持部が固定される第2の電池ホルダとを含み、
前記第1の支持部と前記第2の支持部が固定される前記固定面は、前記電池セルから見て同じ方向に設けられ、
前記第1の支持部は、鉤状をなしており、前記固定面における前記電池セルの並設方向と直交する方向の両端部である第1端部と第2端部のうち、前記第1端部側に開放される第1の配線収容部を有し、
前記第2の支持部は、鉤状をなしており、前記第2端部側に開放される第2の配線収容部を有し、
前記第1の配線収容部では、前記第1端部側の少なくとも一部分が前記配線と対向するとともに、前記第2の配線収容部では、前記第2端部側の少なくとも一部分が前記配線と対向することを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記第1の支持部及び前記第2の支持部は、前記第1の配線収容部に支持される配線の位置が、前記第2の配線収容部に支持される配線の位置より、前記第1端部寄りとなるように固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記第1の支持部及び前記第2の支持部は、前記第1の配線収容部に支持される配線の位置と、前記第2の配線収容部に支持される配線の位置が、前記固定面における前記第1端部と前記第2端部との間で同じ位置となるように固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記第1の支持部及び前記第2の支持部は、前記固定面から立設する立設部と当該立設部から前記第1端部側又は前記第2端部側に延設する延設部とを有し、
前記延設部は、前記配線と対向することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを有する電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを並設した電池モジュールには、電池セルの電力を送電するためのパワー線や、電池セルの状態を制御装置に送信するための信号線が設けられる。特許文献1に記載の蓄電装置には、これらの配線を支持する支持部が設けられている。
【0003】
特許文献1に記載の蓄電装置は、複数の蓄電素子を有する蓄電モジュールと、複数の蓄電素子を電気的に接続するバスバーモジュールとを有している。バスバーモジュールには、高圧ケーブル(配線)を支持する複数の支持部が設けられている。支持部は、L字状に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−211962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電モジュールに振動などが加わると、支持部から配線が脱落するおそれがある。
本発明の目的は、配線の脱落を抑制することができる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電池モジュールは、並設された複数の電池セルを備えた電池モジュールであって、
前記電池セルを保持する電池
ホルダには、配線を支持する支持部
が固定され、前記支持部は、前記電池
ホルダにおける前記支持部が固定される固定面から立設す
る第1の支持部
と第2の支持部とを含み、
前記電池ホルダは、前記第1の支持部が固定される第1の電池ホルダと、前記第2の支持部が固定される第2の電池ホルダとを含み、前記第1の支持部と前記第2の支持部が固定される前記固定面は、前記電池セルから見て同じ方向に設けられ、前記第1の支持部は、
鉤状をなしており、前記固定面における前記電池セルの並設方向と直交する方向の両端部である第1端部と第2端部のうち、
前記第1端部側に開放される第1の配線収容部を有し、前記第2の支持部は、鉤状をなしており、前記第2端部側に開放される第2の配線収容部を有し、前記第1の配線収容部では、前記第1端部側の少なくとも一部分が前記配線と対向
するとともに、前記第2の配線収容部では、前記第2端部側の少なくとも一部分が前記配線と対向することを要旨とする。
【0007】
これによれば、第1の支持部と第2の支持部によって配線が支持される。第1の支持部は、第1端部側の少なくとも一部分が配線と対向し、第2の支持部は第2端部側の少なくとも一部分が配線と対向するため、配線が、第1端部及び第2端部のどちらに向けて移動しても第1の支持部及び第2の支持部から脱落しにくい。
【0008】
また、電池ホルダに電池セルに加えて、配線も支持させることができる。
上記電池モジュールについて、前記第1の支持部及び前記第2の支持部は、前記第1の配線収容部に支持される配線の位置が、前記第2の配線収容部に支持される配線の位置より、前記第1端部寄りとなるように固定されていることが好ましい。
上記電池モジュールについて、前記第1の支持部及び前記第2の支持部は、前記第1の配線収容部に支持される配線の位置と、前記第2の配線収容部に支持される配線の位置が、前記固定面における前記第1端部と前記第2端部との間で同じ位置となるように固定されていることが好ましい。
【0009】
上記電池モジュールについて、前記第1の支持部及び前記第2の支持部は、前記固定面から立設する立設部と当該立設部から前記第1端部側又は前記第2端部側に延設する延設部とを有し、前記延設部は、前記配線と対向することが好ましい。
【0010】
これによれば、第1の支持部、第2の支持部及び立設部によって配線の脱落が抑制され
るため、配線が脱落することを更に適切に抑制することができる
。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配線の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態における電池モジュールを示す斜視図。
【
図2】実施形態における電池モジュールを示す
図1の2−2線断面図。
【
図3】(a)は実施形態における第1の電池ホルダを示す斜視図、(b)は実施形態における第2の電池ホルダを示す斜視図。
【
図4】実施形態における電池モジュールを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2に示すように、電池モジュール10は、電池ホルダ21,41に保持された電池セル11(例えば、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素蓄電池などの二次電池)が複数並設されている。電池ホルダ21,41に保持された電池セル11は、並設されている。つまり、電池セル11の並設方向と電池ホルダ21,41の並設方向は同一方向となっている。電池モジュール10における電池セル11の並設方向の両端には、エンドプレート12が設けられている。
【0014】
図3(a)に示すように、第1の電池ホルダ21は、矩形平板状の第1の被覆部22を有している。第1の被覆部22の長手方向両端には、第1の被覆部22の厚み方向に延びる矩形平板状の第2の被覆部23及び第3の被覆部24が設けられている。第2の被覆部23の長手方向第1端部23a(第1の被覆部22が設けられる端部とは反対側の端部)と、第3の被覆部24の長手方向第1端部24a(第1の被覆部22が設けられる端部とは反対側の端部)には、各被覆部23,24の短手方向第1端部23b、24bの間で延びる矩形平板状の第4の被覆部25が設けられている。第1の被覆部22、第2の被覆部23及び第3の被覆部24に囲まれる領域は、電池セル11が収容される収容部Sとなっている。
【0015】
第2の被覆部23及び第3の被覆部24の長手方向第1端部23a,24aには、各被覆部23,24と連設され、各被覆部23,24の長手方向に延びる矩形平板状の保持部26がそれぞれ設けられている。第2の被覆部23及び第3の被覆部24の長手方向第2端部23c,24cには、柱状の脚部27がそれぞれ設けられている。
【0016】
第3の被覆部24の厚み方向の面において、収容部Sとは反対側の面30には、第3の被覆部24の厚み方向に突出する第1の支持部33が固定されている。第1の支持部33は、鉤状をなしており、面30から第3の被覆部24の厚み方向に立設する矩形板状の第1の立設部31を有している。第1の立設部31の先端(第1の立設部31における第3の被覆部24側の端部とは反対側の端部)には、第3の被覆部24の長手方向第1端部24aに側に延設する第1の延設部32が設けられている。
【0017】
図3(b)に示すように、第2の電池ホルダ41は、第2の支持部44の構成を除いて第1の電池ホルダ21と同一の構造を有する。このため、第1の電池ホルダ21と同一の構成については第1の電池ホルダ21と同一符号を付してその説明を省略する。
【0018】
第2の電池ホルダ41の第3の被覆部24の厚み方向の面において、収容部Sとは反対側の面30には、第3の被覆部24の厚み方向に突出する第2の支持部44が固定されている。第2の支持部44は、鉤状をなしており、面30から第3の被覆部24の厚み方向に立設する矩形板状の第2の立設部42を有している。第1の立設部31と第2の立設部42は、第3の被覆部24の長手方向に若干ずれて設けられている。第2の立設部42の先端(第2の立設部42における第3の被覆部24側の端部とは反対側の端部)には、第3の被覆部24の長手方向第2端部24c側に延設する第2の延設部43が設けられている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、第1の電池ホルダ21及び第2の電池ホルダ41は、載置板51を保持している。載置板51は、保持部26に挟まれるように設けられている。載置板51上には、電池モジュール10の制御を行う制御装置52が設けられている。制御装置52には、電池セル11の状態を他の制御装置や、上位の制御装置に伝送するための配線61(信号線)が設けられている。
【0020】
図4に示すように、第1の電池ホルダ21と第2の電池ホルダ41は、交互に並設されている。第1の電池ホルダ21と第2の電池ホルダ41は、並設方向(電池セル11の並設方向)が第3の被覆部24の短手方向と一致するように並設されている。電池モジュール10において、支持部33,44が固定されている第3の被覆部24の面30が、固定面となる。また、第3の被覆部24の面30と連設されている面も固定面と捉えると、第3の被覆部24と連設される保持部26において、面30と連設される面38及び第3の被覆部24と連設される脚部27において、面30と連設される面39も固定面となる。
【0021】
支持部33,44が設けられている第3の被覆部24の面30において、電池セル11の並設方向(第3の被覆部24の短手方向)と直交する方向が第3の被覆部24の長手方向となる。したがって、固定面における電池セル11の並設方向と直交する方向の両端部とは、第3の被覆部24の長手方向第1端部24a及び長手方向第2端部24cであり、長手方向第1端部24aが第1端部となり、長手方向第2端部24cが第2端部となっている。また、面30、面38及び面39が固定面とすると、面30、面38及び面39において、電池セル11の並設方向と直交する方向の両端部26a,27aのうち、保持部26側の端部26aが第1端部となり、脚部27側の端部27aが第2端部となる。支持部33,44を基準とすると、第3の被覆部24の長手方向第1端部24aと端部26aは同一方向に位置し、第3の被覆部24の長手方向第2端部24cと端部27aは同一方向に位置している。
【0022】
第1の立設部31と第2の立設部42は、配線61を支持している。第1の立設部31において、第3の被覆部24の長手方向第1端部24a側の面31aは、配線61と対向している。第2の立設部42において、第3の被覆部24の長手方向第2端部24c側の面42aは、配線61と対向している。したがって、第1の支持部33における第3の被覆部24の長手方向第1端部24a側の一部分が配線61と対向し、第2の支持部44における第3の被覆部24の長手方向第2端部24c側の一部分が配線61と対向している。
【0023】
また、
図2に示すように、第1の延設部32及び第2の延設部43は、面30と対向する面32a,43aが、配線61と対向している。第1の立設部31と第2の立設部42に支持される配線61は、屈曲して設けられている。
【0024】
次に、本実施形態の電池モジュール10の作用について説明する。
電池モジュール10に振動などが加わり、配線61が移動しようとすると、第3の被覆部24、第1の立設部31、第2の立設部42、第1の延設部32及び第2の延設部43によって配線61の移動が抑制される。このため、第1の立設部31と第2の立設部42から配線が脱落しにくい。
【0025】
また、配線61が屈曲しているため、配線61には、元の形状である直線状に復元しようとする力が働く。すると、配線61と第1の立設部31との間、配線61と第2の立設部42との間には、摩擦力が生じる。この摩擦力によって、配線61が軸方向に移動しにくい。
【0026】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1の立設部31は、第3の被覆部24の長手方向第1端部24a側の面31aが配線61と対向し、第2の立設部42は、第3の被覆部24の長手方向第2端部24c側の面42aが配線61と対向している。このため、配線61が、第3の被覆部24の長手方向両端部のどちらに向けて移動しても、第1の立設部31及び第2の立設部42によって移動が規制され、第1の支持部33及び第2の支持部44から脱落しにくい。
【0027】
(2)第1の支持部33及び第2の支持部44は、電池ホルダ21,41に設けられている。電池ホルダ21,41に支持部33,44を設けることで、電池ホルダ21,41に電池セル11に加えて、配線61も保持させることができる。
【0028】
(3)第1の立設部31に第1の延設部32を設けて、第2の立設部42に第2の延設部43を設けている。このため、第1の延設部32及び第2の延設部43によって、配線61が、第3の被覆部24の面30と対向する方向に移動することが抑制される。このため、配線61が脱落することが更に抑制される。
【0029】
(4)配線61は屈曲しているため、配線61と第1の立設部31との間及び配線61と第2の立設部42との間には摩擦力が生じ、配線61が軸方向に移動することが抑制される。このため、配線61と支持部33,44が擦れ合うことが抑制され、配線61が破損しにくい。
【0030】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図5に示すように。第1の立設部71は、第3の被覆部24の長手方向第1端部24a側に延び、かつ、面30に対して傾斜していてもよい。同様に、第2の立設部72は、第3の被覆部24の長手方向第2端部24c側に延び、かつ、面30に対して傾斜していてもよい。この場合、第1の延設部32及び第2の延設部43がない場合でも、配線61が第3の被覆部24の面30と対向する方向に移動することを抑制することができる。
【0031】
○ 第1の電池ホルダ21と第2の電池ホルダ41は、交互に並設されていなくてもよい。例えば、
図6に示すように、2個一組の第1の電池ホルダ21と2個一組の第2の電池ホルダ41が、一組ずつ交互に並設されていてもよい。また、電池モジュール10は、少なくとも一つの第1の電池ホルダ21と少なくとも一つの第2の電池ホルダ41を有していればよく、第1の電池ホルダ21と第2の電池ホルダ41の位置は、どのような態様でもよい。
【0032】
○
図7に示すように、配線61は屈曲していなくてもよい。この場合、配線61を屈曲させる場合に比べて、配線61の長さを短くできる。
○ 延設部を設ける場合、第1の延設部32及び第2の延設部43は、少なくともいずれか一方が設けられていればよい。
【0033】
○ 配線61は、電池セル11の電力を伝送するパワー線であってもよい。
○ 第1の支持部33及び第2の支持部44は、電池セル11や、載置板51などに設けられていてもよい。
【0034】
○ 複数の電池セル11を保持する単一の電池ホルダに第1の支持部33及び第2の支持部44を設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…電池モジュール、11…電池セル、21…第1の電池ホルダ、31,71…第1の立設部、32…第1の延設部、33…第1の支持部、41…第2の電池ホルダ、42,72…第2の立設部、43…第2の延設部、44…第2の支持部。