(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料に酸化反応を起こさせるための酸化反応部を内部に有する反応管、前記反応管を収容して前記酸化反応部を加熱する加熱炉、前記反応管内に通じる開閉可能な空間からなる試料設置部、前記試料設置部と前記酸化反応部との間を移動可能な試料ボート及び前記試料ボートを前記試料設置部と前記酸化反応部との間で移動させる試料移動機構を備えた試料加熱装置と、
前記反応管の基端側から先端側へキャリアガスを一定流量で供給するキャリアガス供給部と、
前記反応管先端に接続され、前記反応管先端からのガス中の二酸化炭素を測定する検出器と、
前記試料移動機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、ユーザにより熱処理を実行する旨の入力がなされたときに、前記試料移動機構の駆動を制御して試料の設置されていない状態の前記試料ボートを、前記加熱炉により加熱されかつ前記キャリアガス供給部からキャリアガスが供給されている状態の前記酸化反応部に配置する熱処理を実行するように構成された熱処理手段と、前記熱処理を実行する時間を設定する熱処理時間設定手段、及びユーザにより設定された熱処理時間を記憶する設定時間記憶部と、を備えている炭素測定装置。
前記終了タイミング判定手段は、前記熱処理中に前記検出器の検出信号に現れたピークの信号強度が予め設定されたしきい値以下になる時間を前記終了タイミングとするように構成されている請求項3に記載の炭素測定装置。
前記終了タイミング判定手段は、前記熱処理中に前記検出器の検出信号に現れたピークの信号強度が予め設定されたしきい値以下となっている状態が所定時間維持されたときを前記終了タイミングとするように構成されている請求項3に記載の炭素測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試料を乗せる試料ボートを大気中に放置していると、時間の経過とともに待機中の炭素成分が試料ボートに付着する。炭素ボートに付着した炭素成分は、測定の際に試料中の炭素成分と同様にCO
2に変換され、CO
2量検出器により検出されることになる。したがって、CO
2量検出器により検出されるCO
2量には、測定試料中の炭素成分だけでなく試料ボートに付着していた炭素成分に由来するCO
2も含まれている。
【0007】
測定試料中の炭素成分濃度が大きい場合、試料ボートに付着していた炭素成分量はその炭素成分濃度に比べて微量であるため、測定結果に対する影響は小さいため問題にはならないが、測定試料中の炭素成分濃度が小さい場合には、試料ボートに付着していた炭素成分量が測定結果に与える影響は大きくなる。
【0008】
そこで、本発明は、試料ボートに付着していた炭素成分が測定に与える影響を小さくする機能を備えた炭素測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の炭素測定装置は試料加熱装置を備えている。試料加熱装置は、試料に酸化反応を起こさせるための酸化反応部を内部に有する反応管、反応管を収容して酸化反応部を加熱する加熱炉、反応管内に通じる開閉可能な空間からなる試料設置部、試料設置部と酸化反応部との間を移動可能な試料ボート及び試料ボートを試料設置部と酸化反応部との間で移動させる試料移動機構を備えたものである。さらに、炭素測定装置は、反応管の基端側から先端側へキャリアガスを一定流量で供給するキャリアガス供給部と、反応管先端に接続され、反応管先端からのガス中の二酸化炭素を測定する検出器と、試料移動機構を制御する制御部と、を備えている。制御部は、ユーザにより熱処理を実行する旨の入力がなされたときに、試料移動機構の駆動を制御して試料の設置されていない状態の試料ボートを、加熱炉により加熱されかつキャリアガス供給部からキャリアガスが供給されている状態の酸化反応部に配置する熱処理を実行するように構成された熱処理手段を備えている。
【0010】
試料加熱装置は、試料設置部と酸化反応部との間で加熱炉の外側に設けられた空間である冷却部及び該冷却部を冷却する冷却機構を備えていることが好ましい。その場合、熱処理手段は、酸化反応部で熱処理の施された試料ボートを冷却空間へ移動させて一定時間待機した後、該試料ボートを試料設置部まで戻すように構成されている。これにより、熱処理の施された試料ボートが効率よく冷却され、冷却された試料ボートが試料設置部に戻されるようになる。
【0011】
制御部は、熱処理時間を設定する熱処理時間設定手段、及びユーザにより設定された熱処理時間を記憶する設定時間記憶部を備えていることが好ましい。そうすれば、ユーザは測定試料の炭素成分濃度などの分析条件に応じて熱処理時間を任意に設定することができる。熱処理時間とは、熱処理として、試料ボートを酸化反応部に配置しておく時間をいう。この熱処理時間が長ければ、試料ボートに付着した炭素成分の除去が進む反面、試料ボートの熱処理に要する時間が長くなり、測定のスループットにも影響を与える。また、熱処理時間が短ければ、試料ボートの熱処理に要する時間が短縮される反面、試料ボートに付着した炭素成分の除去が不完全になることがある。測定試料の炭素成分濃度が高濃度であることがわかっている場合は、試料ボートに付着した炭素成分の影響は小さくなるため、熱処理時間を短く設定し、逆に、測定試料の炭素成分濃度が低濃度であることがわかっている場合は、試料ボートに付着した炭素成分の影響が大きくなるため、熱処理時間を長く設定するなど、ユーザが目的に応じて任意に熱処理時間を設定できるようにすることで、測定精度の向上やスループットの向上を図ることができる。
【0012】
また、制御部は、熱処理の際に、検出器の検出信号に基づいて熱処理の終了タイミングを判定する終了タイミング判定手段をさらに備え、熱処理手段は、終了タイミングで熱処理を終了させるように構成されていることが好ましい。そうすれば、装置が検出器の検出信号に基づいて自動的に熱処理の終了タイミングを判定するので、ユーザが熱処理設定時間を設定する必要がない。
【0013】
上記の好ましい実施態様では、終了タイミング判定手段は、熱処理中に検出器の検出信号に現れたピークの信号強度が予め設定されたしきい値以下になる時間を終了タイミングとするように構成されている。
【0014】
さらに好ましい実施態様では、終了タイミング判定手段は、熱処理中に検出器の検出信号に現れたピークの信号強度が予め設定されたしきい値以下となっている状態が所定時間維持されたときを終了タイミングとするように構成されている。これにより、検出信号が突発的にしきい値以下となったときに熱処理の終了タイミングとして誤認識されてしまうことを防止することができる。
【0015】
上記しきい値を任意に設定するしきい値設定手段をさらに備えていることが好ましい。そうすれば、ユーザが分析条件に応じたしきい値を任意に設定することができる。例えば、測定試料の炭素成分濃度が高いことがわかっている場合は、試料ボートの炭素成分が測定結果に与える影響が小さくなるので、しきい値を大きく設定して熱処理に要する時間の短縮化を図ることができる。また、測定試料の炭素成分濃度が低いことがわかっている場合は、試料ボートの炭素成分が測定結果に与える影響が大きいので、しきい値を小さく設定して試料ボートに残る炭素成分をより少なくして測定精度の向上を図ることができる。
【0016】
終了タイミング判定手段によって判定された終了タイミングを記憶する終了タイミング記憶部をさらに備え、熱処理時間として、終了タイミング記憶部に記憶されている終了タイミングを設定できるように構成されていることが好ましい。そうすれば、終了タイミング判定手段によって判定された終了タイミングを別の試料ボートの熱処理に設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の炭素測定装置では、試料移動機構を制御する制御部が、ユーザにより熱処理を実行する旨の入力がなされたときに、試料の設置されていない状態の試料ボートを、加熱炉により加熱されかつキャリアガス供給部からキャリアガスが供給されている状態の酸化反応部に配置する熱処理を実行するように構成された熱処理手段を備えているので、ユーザが熱処理を実行する旨の入力をし、試料ボートを試料設置部に設置するだけで、試料ボートの熱処理が自動的に実行され、測定結果に対する試料ボートの炭素成分による影響を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を用いて一実施例を説明する。この実施例は本発明の炭素測定装置をTC測定装置として構成した実施例である。
【0020】
TC測定用試料加熱装置1は反応管5を備えている。反応管5は例えば石英ガラス製であり、横向きに配置されている。反応管5の先端側の内部に酸化反応部19が設けられており、その酸化反応部19に酸化触媒が充填されている。酸化反応部19に充填されている酸化触媒は、試料内の全ての炭素成分をCO
2に変換するためのものであり、例えば白金酸化触媒を用いることができる。反応管5は横向きの筒状電気炉からなる加熱炉7内に先端側から収容されている。加熱炉7により反応管5の酸化反応部19は所定の温度、例えば900℃に加熱される。
【0021】
反応管5の基端部は加熱炉7の外部において試料導入部3と連結されている。試料導入部3は内部に反応管5の内部に通じる空間を有し、上面にその空間を開閉するカバー17が設けられている。試料導入部3内には、ユーザが試料及び試料ボート29の設置と取出しを行なうための空間である試料設置部15、及び反応管5と連結された試料導入部3が高温になるのを防止するための冷却部16が設けられている。冷却部16は、試料の測定及び後述する熱処理によって高温に加熱された試料ボート29を冷却するための空間でもある。冷却部16は試料設置部15と反応管5との間に位置する。この冷却部16の外側に、冷却部16を冷却するための冷却機構であるファン45が設けられている。
【0022】
カバー17は試料設置部15を開閉するものである。測定試料を設置する際は、ユーザによってカバー17が開けられ、試料設置部15内に試料が試料ボート29に保持された状態で設置される。試料設置部15内に試料が設置された後は、再びカバー17が閉じられ、試料設置部15への外気の侵入が遮断される。
【0023】
カバー17の近傍に、カバー17の開閉状態を検知する開閉センサ18が設けられている。開閉センサ18としては、カバー17の開閉状態を検知できるものであれば特に限定されない。例えば、ホトセンサ、磁気的なセンサ、マイクロスイッチなどを用いることができる。開閉センサ18はこの装置がカバー17の開閉状態を自動的に感知することを可能にし、カバー17が開いている状態で、後述する試料の測定や試料ボート29の熱処理が実行されることを防止するものである。このTC測定装置は、試料の測定とは別に、試料ボート29の熱処理を行なうことによって試料ボート29に付着した炭素成分を除去する機能を有している。
【0024】
なお、開閉センサ18は必ずしも設けられている必要はない。例えば、ユーザによってカバー17が閉じられていることが入力部76を介して入力されるまで、試料の測定や試料ボート29の熱処理が実行されないように構成されていれば、カバー17が開いている状態で試料の測定や試料ボート29の熱処理が実行されることを防止できる。
【0025】
試料導入部3内の試料設置部15に、反応管5とは反対側から試料ボート移動棒21が略水平に挿入されている。試料設置部15に挿入されている試料ボート移動棒21の先端に、試料ボート29を保持する試料ボートホルダ23が設けられている。試料ボート29は、例えばセラミック製である。
【0026】
試料導入部3と試料ボート移動棒21との間には内部試料設置部15の気密を維持するためにシール部材25が配置されている。シール部材25は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製Oリングである。
【0027】
試料ボート移動棒21は、先端の試料ボートホルダ23に載置された試料ボートを、試料設置部15と酸化反応部19との間で移動させるように、駆動機構74によって水平方向に駆動される。駆動機構74は駆動用のモータなどを備え、制御部48からの指示により試料ボート移動棒21を操作する。駆動機構74は、測定開始時には制御部48からの指示により試料ボート移動棒21を介して試料ボート29を反応管5内へ移動させ、測定終了後にも制御部48からの指示により試料ボート移動棒21を介して試料ボート29を反応管5内から引き出す。
【0028】
試料導入部3にキャリアガス供給部37が接続されている。キャリアガス供給部37は、キャリアガスが供給されるキャリアガス入口側から順に、供給されるキャリアガスの圧力を一定にする圧力調節弁60、流量を一定にするマスフローコントローラ62及び流量計64を備えており、圧力調節弁60とマスフローコントローラ62の間に圧力計66が接続されている。キャリアガス供給部37は、試料導入部3内の試料設置部15にキャリアガスを一定流量、例えば500mL/分で連続して供給するように設定される。キャリアガスは、例えば支燃ガスを兼ねる酸素である。
【0029】
キャリアガス供給部37から供給されるキャリアガスは、試料導入部3内の試料設置部15を経て反応管5の基端側から先端側へ流れ、反応管5の先端に接続された配管を通って検出器43へ流れる。反応管5の下流に、反応管5で発生した水を凝縮させる除湿部としてのコイル状冷却管39が配置されている。冷却管39は冷却用のファン47によって冷却されるようになっている。冷却管39のさらに下流に、遅延部として遅延チューブ42が配置されている。遅延チューブ42の下流には遅延チューブ42を経たガス中のCO
2を測定する検出器43が接続されている。検出器43は、例えば非分散形赤外線ガス分析計(NDIR)である。
【0030】
遅延チューブ42等の遅延部を設ける理由は次のようなものである。測定の際、試料を反応管5に導入すると試料中の炭素成分の急激な燃焼や試料に含まれる水分の急激な蒸発によってキャリアガスの圧力と流量が一時的に乱れる。検出器43がこの乱れの影響を受けている間にCO
2測定を行うと、測定精度が低下したり、試料濃度と検出出力との間の直線性が低下したりするなどの悪影響がでる。このような影響を防ぐために、十分な容量をもったチューブや容器を接続することによって意図的に時間遅れを作り出すのが遅延部である。この作用により、キャリアガスが安定した後にCO
2が検出器43に流入して正確な測定を行うことができるようになる。
【0031】
試料ボート移動棒21を駆動する駆動機構74は制御部48によって制御される。制御部48には演算制御装置78が接続されており、ユーザは演算制御装置78を介してこのTC測定装置1の動作管理を行なうようになっている。演算制御装置78には、ユーザが情報入力を行なうための入力部76と、演算制御装置78においてなされた演算結果や演算制御装置78に格納されている情報などを表示する表示部80が接続されている。
【0032】
演算制御装置78は、例えば汎用のパーソナルコンピュータ又は専用のコンピュータにより実現される。制御部48は演算制御装置78からの命令を受けてそれに応じた電力を駆動機構74に供給する制御回路である。開閉センサ18の検知信号や検出器43の検出信号は制御部48を介して演算制御装置78に取り込まれるようになっている。演算制御装置78は、開閉センサ18によってカバー17の開閉状態を監視し、カバー17が空いている状態では、試料の測定や試料ボートの熱処理を実行しないように構成されている。
【0033】
この実施例が有する機能について
図2のブロック図を用いて説明する。
【0034】
このTC測定装置の動作管理を行なう演算制御装置78は、測定手段82、熱処理手段84、演算手段86、熱処理時間設定手段87、終了タイミング判定手段88、しきい値設定手段90、設定時間記憶部92、しきい値記憶部94及び終了タイミング記憶部96を備えている。このTC測定装置は、これらの手段及び記憶部により、試料の測定動作と試料ボート29の熱処理動作を、ユーザからの要求に応じて実行することができる。
【0035】
測定手段82、熱処理手段84、演算手段86、熱処理時間設定手段87、終了タイミング判定手段88及びしきい値設定手段90は、演算制御装置78内に格納されたプログラムとそのプログラムを実行する演算部(CPU)によって実現される機能である。また、設定時間記憶部92、しきい値記憶部94及び終了タイミング記憶部96は、演算制御装置78に設けられているHDD(ハードディスクドライブ)や不揮発性メモリなどの記憶装置内に設けられた記憶領域によって実現される機能である。
【0036】
測定手段82は、ユーザにより測定開始の指示があったときに、試料の測定動作を実行するように構成されたものである。試料の測定動作では、ユーザが試料を保持した試料ボート29を試料設置部15に設置してカバー17を閉じると、カバー17が閉じられたことを開閉センサ18が感知し、所定の待機時間が経過した後で、試料ボート29を反応管5内の酸化反応部19に移動させ、測定を開始する。このとき、検出器43で得られた検出信号は制御部48を介して演算制御装置78に取り込まれる。カバー17が閉じられてからすぐに測定を開始しないのは、試料設置部15から検出器43までの系内に存在する空気に含まれる炭素成分によって検出器43の検出信号のベースラインが安定しないため、この系内の空気がキャリアガスで置換されるまで待機する必要があるからである。
【0037】
演算手段86は検出器43からの検出信号に基づいてCO
2濃度を求めるなどの演算処理を行なうように構成されている。演算手段86の演算結果は表示部80に表示される。
【0038】
熱処理手段84は、ユーザから熱処理の開始の指示があったときに、試料ボート29の熱処理動作を実行するように構成されたものである。試料ボート29の熱処理とは、約900℃に加熱されキャリアガスが供給されている状態の酸化反応部19に、試料を保持していない試料ボート29を所定時間配置し、試料ボート29に付着した炭素成分を酸化分解してCO
2に変換して検出器43側へ搬送することで、試料ボート29から炭素成分を除去する処理である。熱処理手段84は、酸化反応部19において試料ボート29の熱処理が終了した後、試料ボート29を冷却部16に一定時間配置してから、試料設置部15に戻すようになっている。
【0039】
熱処理の際に、試料ボート29を酸化反応部19に配置しておく時間(以下、熱処理時間)は、ユーザが任意に設定することも、装置が自動的に設定することもできる。ユーザは熱処理時間の設定を手動で行なうか自動で行なうかを選択することができる。
【0040】
熱処理時間設定手段87は、ユーザが手動で熱処理時間を設定することを選択したときに、ユーザに熱処理時間を設定させるように構成されている。ユーザの設定した熱処理時間(設定時間)は設定時間記憶部92に記憶される。ユーザによって以前に設定された熱処理時間が設定時間記憶部92に記憶されている場合や、後述する終了タイミング判定手段88によって検出された終了タイミングが終了タイミング記憶部96に記憶されている場合に、ユーザはそれらを選択することによって熱処理時間を設定することもできるようになっている。熱処理手段84は、ユーザの設定した熱処理時間に基づいて熱処理を実行する。
【0041】
終了タイミング判定手段88は、熱処理の終了時間(終了タイミング:熱処理開始からの経過時間)を熱処理中の検出器43の検出信号に基づいて自動的に判定するように構成されている。熱処理を実行すると、検出器43の検出信号に試料ボート29に付着した炭素成分由来のピークが出現する。このピークが検出されると、試料ボート29の炭素成分が除去されていることがわかる。したがって、終了タイミングの判定は、検出信号43の検出信号に出現するピークの検出後、信号強度が所定のしきい値以下になったか否かにより行なう。
【0042】
終了タイミングの判定に用いられるしきい値はしきい値記憶部94に予め用意されているが、ユーザがしきい値を設定することもできる。しきい値設定手段90は、ユーザにしきい値を設定させるように構成されている。ユーザが設定したしきい値はしきい値記憶部94に記憶され、その後のしきい値設定の際にその設定値を利用することができる。
【0043】
終了タイミング判定手段88により判定された終了タイミングは終了タイミング記憶部96に記憶される。終了タイミング記憶部96に記憶された終了タイミングは、上述のように、ユーザが熱処理時間を設定する際に参照され、熱処理時間として設定することができる。
【0044】
次に、試料ボート29の熱処理を実行するモードについて説明する。熱処理を実行するモードは、ユーザが試料ボート29の熱処理開始の指示を入力することにより実行される。ユーザが試料ボート29の熱処理開始の指示を入力すると、
図3のフローチャートに示されているように、まず熱処理動作を選択する画面が表示され、ユーザは熱処理時間の設定を手動で行なうか、熱処理の終了タイミングを装置に自動で判断させるかを選択する。
【0045】
熱処理時間の設定を手動で行なうことを選択した場合は、ユーザが熱処理時間を手動で設定してその設定時間を設定時間記憶部92(
図2参照)に記憶させ、後述する熱処理動作1を開始する。熱処理の終了タイミングを装置に自動で判断させることを選択した場合は、ユーザがその終了タイミングの判断に用いるしきい値を設定してしきい値記憶部90(
図2参照)に記憶させ、後述する熱処理動作2を開始する。
【0046】
(熱処理動作1)
ユーザが手動で設定した熱処理時間を用いて熱処理を行なう動作が熱処理動作1である。熱処理動作1については
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0047】
ユーザが空の(試料を保持していない)試料ボート29を試料設置部15(試料ボート移動棒21の先端の試料ボートホルダ23)に設置してカバー17を閉じると、それを開閉センサ18が検知し、試料ボート移動棒21が駆動機構74によって先端が反応管5内へ挿入される方向(
図1において右方向)に駆動され、試料ボート29が酸化反応部19に配置される。
【0048】
制御部48又は演算制御装置78のいずれかに、試料ボート29が酸化反応部19に配置されてからの経過時間を計時する機能が設けられており、その経過時間がユーザの設定時間になるまで試料ボート29が酸化反応部19に配置された状態で維持される。設定時間が経過すると、試料ボート移動棒29が駆動機構74によって先端が反応管5から引き抜かれる方向(図において左方向)に駆動され、試料ボート29が冷却部16に配置される。試料ボート29が冷却部16に配置される時間(冷却時間)は予め装置側に設定されている。
【0049】
試料ボート29の冷却が完了した後、試料ボート移動棒29は駆動機構74によってさらに反応管5とは反対側(図において左側)へ駆動され、試料ボート29が試料設置部15に戻される。引き続いて試料の測定を実行する場合、ユーザはカバー17が空けて熱処理の完了した試料ボート29上に試料を載置してカバー17を閉じ、分析開始の指示を入力することにより試料の測定を実行することができる。また、引き続いて別の試料ボート29の熱処理を実行する場合、ユーザはカバー17を空けて熱処理の完了した試料ボート29を新たな試料ボート29に交換してカバー17を閉じ、熱処理開始の指示を入力することにより、次の試料ボート29に対する熱処理を実行することができる。
【0050】
(熱処理動作2)
熱処理を終了するタイミングを装置側で自動的に判断させる熱処理動作が熱処理動作2である。熱処理動作2については
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
熱処理動作1と同様に、ユーザが空の(試料を保持していない)試料ボート29を試料設置部15(試料ボート移動棒21の先端の試料ボートホルダ23)に設置してカバー17を閉じると、それを開閉センサ18が検知し、試料ボート移動棒21が駆動機構74によって先端が反応管5内へ挿入される方向(
図1において右方向)に駆動され、試料ボート29が酸化反応部19に配置される。
【0052】
検出器43ではこの熱処理中に検出器43に流入するガス中のCO
2量をモニタしており、
図7に示されているように、試料ボート29に付着していた炭素成分に由来するCO
2量はピークとして現れる。このピークの出現時間t1が例えば検出信号の傾きなどから検知され、ピーク出現後の検出信号と予め設定されたしきい値とが逐次比較される。そして、検出信号がしきい値以下となる時間t2が検知され、その時間t2が熱処理の終了タイミングとして判定される。
【0053】
熱処理の終了タイミングとして判定された時間t2は終了タイミング記憶部96(
図2参照)に記憶され、別の熱処理動作についての熱処理時間をユーザが設定する際に、その終了タイミングt2を熱処理時間として利用することができる。
【0054】
終了タイミングになると、試料ボート移動棒29が駆動機構74によって先端が反応管5から引き抜かれる方向(
図1において左方向)に駆動され、試料ボート29が冷却部16に配置される。試料ボート29が冷却部16に配置される時間(冷却時間)は予め装置側に設定されている。
【0055】
試料ボート29の冷却が完了した後、試料ボート移動棒29は駆動機構74によってさらに反応管5とは反対側(
図1において左側)へ駆動され、試料ボート29が試料設置部15に戻される。
【0056】
また、
図6のフローチャートに示されているように、検出信号がしきい値以下になっている状態が所定時間維持されたときの時間t3(
図7参照)を熱処理の終了タイミングとしてもよい。このようにすることで、検出器の検出信号が突発的にしきい値以下になったときに熱処理終了のタイミングと誤認識してしまうことを防止できる。
【0057】
以上において説明した実施例は、TC測定用試料加熱装置1のみを備えた炭素測定装置(TC測定装置)に本発明を適用したものであるが、本発明はこれに限定されるものでなく、IC測定用試料加熱装置を備えた炭素測定装置(非特許文献1の
図1参照。)に対しても適用することができる。IC測定用の試料加熱装置は、基本的には、TC測定用の試料加熱装置1と同じ構成をもつが、IC測定用の試料加熱装置の反応管は内部に酸化触媒は備えていない単なる石英管である。IC測定用の試料加熱装置の反応管はTC測定用の反応管5よりも加熱温度が低く、酸化触媒を備えていないため、試料ボート29の熱処理はIC測定用試料加熱装置では実行されない。