特許第6115490号(P6115490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000002
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000003
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000004
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000005
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000006
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000007
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000008
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000009
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000010
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000011
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000012
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000013
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000014
  • 特許6115490-乳房検査用画像撮影装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115490
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】乳房検査用画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   G01T1/161 A
   G01T1/161 C
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-23388(P2014-23388)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-152311(P2015-152311A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】大谷 篤
(72)【発明者】
【氏名】田中 和巳
(72)【発明者】
【氏名】水田 哲郎
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−271452(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/129433(WO,A1)
【文献】 特開2013−228251(JP,A)
【文献】 特開2013−215523(JP,A)
【文献】 特開平07−141523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の右乳房と左乳房とを個別に撮影する乳房検査用画像撮影装置であって、
放射線を検出する検出器が弧状に配列されて、被検体の右乳房と左乳房とを異なる時間帯で撮影するように構成される検出器リングと、
前記検出器リングの検出結果に基づいて右乳房および左乳房の放射性薬剤の分布のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房分布画像および左乳房分布画像を生成する分布画像生成手段と、
前記分布画像同士を合成することにより、被検体における両乳房の位置関係が放射性薬剤の分布で示された合成3次元画像を生成する分布画像合成手段とを備えることを特徴とする乳房検査用画像撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乳房検査用画像撮影装置において、
前記検出器リングの検出結果に基づいて右乳房および左乳房の形状のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房形状抽出画像および左乳房形状抽出画像を生成する形状抽出画像生成手段を備え、
前記分布画像合成手段が生成する合成3次元画像は、前記分布画像と前記形状抽出画像とを重ね合わせることにより、両乳房の形状に放射性薬剤の分布が重畳したフュージョン画像であることを特徴とする乳房検査用画像撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の乳房検査用画像撮影装置において、
被検体の乳房を除いた体幹部を模した3次元モデル像に前記形状抽出画像に写り込んだ右乳房像と左乳房像との各々を合成して、前記3次元モデル像に実測された乳房形状を付加した付加画像を生成する付加画像生成手段を備え、
前記分布画像合成手段は、前記付加画像を前記分布画像に重ね合わせて前記3次元モデル像に付加された乳房に放射性薬剤の分布が重畳させることにより、前記分布画像と前記形状抽出画像との重合を実行することを特徴とする乳房検査用画像撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の乳房検査用画像撮影装置において、
前記分布画像生成手段が生成する前記分布画像は、前記検出器リングが出力するエミッションデータに由来することを特徴とする乳房検査用画像撮影装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の乳房検査用画像撮影装置において、
前記形状抽出画像生成手段が生成する前記形状抽出画像は、前記検出器リングが出力するトランスミッションデータに由来することを特徴とする乳房検査用画像撮影装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の乳房検査用画像撮影装置において、
前記分布画像合成手段が生成する合成3次元画像を回転させる画像回転手段を備えることを特徴とする乳房検査用画像撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の乳房検査用画像撮影装置において、
前記検出器リングは、被検体の右乳房の撮影と左乳房との撮影に共用されるように構成されることを特徴とする乳房検査用画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から放射される消滅放射線のペアを検出して、被検体内の放射線薬剤分布のイメージングを行う乳房検査用画像撮影装置に係り、特に、がん検診用の乳房検査用画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射性薬剤の分布をイメージングする放射線断層撮影装置が配備されている。この様な放射線断層撮影装置の具体的な構成について説明する。従来の放射線断層撮影装置は、放射線を検出する放射線検出器が円環状に並んで構成される検出器リングが備えられている。この検出器リングは、被検体内の放射性薬剤から照射される互いに反対方向となっている一対の放射線(消滅放射線のペア)を検出する(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0003】
この様な放射線断層撮影装置の一種として、乳房検査用の放射線断層撮影装置がある。この乳房検査用画像撮影装置について具体的に説明する。図14は、従来の乳房検査用画像撮影装置について説明する図である。従来の乳房検査用画像撮影装置51では、検査に際し、被検体Mの乳房Bの片側が検出器リング62に導入される。この状態で、検出器リング62は、被検体Mから照射される消滅放射線のペアを検出する。
【0004】
検出器リング62は、乳房Bから発せられた消滅放射線のペアの発生源を特定して、この位置情報を基に放射性薬剤の分布が生成される。放射性薬剤は、正常組織と比べがん組織により多く集積する性質があるので、放射性薬剤の分布図を診断すれば、乳がんの検診が行える。
【0005】
放射性薬剤の分布をイメージングするには、検出器リング62に被検体の左右の乳房の内の1つが導入される。被検体の右乳房についての放射性薬剤の分布を知りたければ、検出器リング62に被検体の右乳房が導入されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−10772号公報
【特許文献2】特開2008−99930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来構成の乳房検査用画像撮影装置は、以下のような問題点がある。
すなわち、従来装置によれば、乳房像を直感的に認識しにくい構成となっている。
【0008】
乳房検査用画像撮影装置では、撮影視野が被検体の乳房の片側が収まる程度の大きさとなっている。従って、被検体の両乳房の撮影を行う場合には、乳房は、片側ずつ2回に分けて撮影される。この様にして右乳房を写し込んだ画像と、左乳房を写し込んだ画像の2つの画像が撮影されることになる。これら画像は、いずれも3次元画像となっている。
【0009】
この様にして得られた2つの3次元画像には、被検体の右乳房と左乳房とが個別に写り込んでいる。このどちらの3次元画像にも同じような形状の乳房の立体像が写り込んでおり、一見してどちら合次元画像がどちらの乳房をイメージングしたものなのかが分かりにくい。
【0010】
また、3次元画像に写り込んでいる乳房の立体像は、ほぼ回転対称の形状をしているので、乳房がどの方向を向いて3次元画像に写り込んでいるか分かりにくい。例えば、乳房の立体像をモニタに映したとすると、モニタの右側が被検体の右肩に当たると考えるのが普通ではある。しかし、3次元画像をモニタに表示するとき、立体像を見る方向は自由に設定することができる。ということは、モニタの右側が被検体の右肩に相当するとは限らず、被検体の頭側かも、足側かも、または左肩側かもしれないのである。
【0011】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、乳房像を直感的に認識しやすい画像を生成できる乳房検査用画像撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る乳房検査用画像撮影装置は、被検体の右乳房と左乳房とを個別に撮影する乳房検査用画像撮影装置であって、放射線を検出する検出器が弧状に配列されて、被検体の右乳房と左乳房とを異なる時間帯で撮影するように構成される検出器リングと、検出器リングの検出結果に基づいて右乳房および左乳房の放射性薬剤の分布のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房分布画像および左乳房分布画像を生成する分布画像生成手段と、分布画像同士を合成することにより、被検体における両乳房の位置関係が放射性薬剤の分布で示された合成3次元画像を生成する分布画像合成手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]本発明によれば、乳房像を直感的に認識しやすい画像を生成できる乳房検査用画像撮影装置を提供することができる。すなわち、本発明に係る装置は、放射性薬剤の分布のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房分布画像および左乳房分布画像を合成することにより、被検体における両乳房の位置関係が放射性薬剤の分布で示された合成3次元画像を生成する分布画像合成手段を備えている。この様な構成とすれば、2つの乳房が写り込んだ合成3次元画像が得られるので、術者は、乳房の観察方向を容易に認識することができるようになる。
【0014】
また、上述の乳房検査用画像撮影装置において、検出器リングの検出結果に基づいて右乳房および左乳房の形状のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房形状抽出画像および左乳房形状抽出画像を生成する形状抽出画像生成手段を備え、分布画像合成手段が生成する合成3次元画像は、分布画像と形状抽出画像とを重ね合わせることにより、両乳房の形状に放射性薬剤の分布が重畳したフュージョン画像であればより望ましい。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の装置をより具体的に表している。合成3次元画像が分布画像と形状抽出画像とを重ね合わせることにより、両乳房の形状に放射性薬剤の分布が重畳したフュージョン画像であれば、より乳房の形状を把握しやすい装置が提供できる。放射性薬剤の分布を表した分布画像は、乳房の形状をおぼろげに表しているに過ぎない。これに対し、乳房の形状が抽出された形状抽出画像を分布画像に重ね合わされたフュージョン画像を生成すれば、乳房の形状がよりはっきりと認識できるのである。
【0016】
また、上述の乳房検査用画像撮影装置において、被検体の乳房を除いた体幹部を模した3次元モデル像に形状抽出画像に写り込んだ右乳房像と左乳房像との各々を合成して、3次元モデル像に実測された乳房形状を付加した付加画像を生成する付加画像生成手段を備え、分布画像合成手段は、付加画像を分布画像に重ね合わせて3次元モデル像に付加された乳房に放射性薬剤の分布が重畳させることにより、分布画像と形状抽出画像との重合を実行すればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の装置をより具体的に表している。分布画像合成手段が付加画像を分布画像に重ね合わせて3次元モデル像に付加された乳房に放射性薬剤の分布が重畳させることにより、分布画像と形状抽出画像との重合を実行すれば、被検体の体幹部を含んでフュージョン画像が生成されるので、被検体の向きがより分かりやすくなる。
【0018】
[作用・効果]本発明によれば、乳房像を直感的に認識しやすい画像を生成できる乳房検査用画像撮影装置を提供することができる。すなわち、本発明に係る装置は、放射性薬剤の分布のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房分布画像および左乳房分布画像を合成することにより、被検体における両乳房の位置関係が放射性薬剤の分布で示された合成3次元画像を生成する分布画像合成手段を備えている。この様な構成とすれば、2つの乳房が写り込んだ合成3次元画像が得られるので、術者は、乳房の観察方向を容易に認識することができるようになる。
また、被検体の右乳房と左乳房とを異なる時間帯で撮影するように構成される検出器リングによって、右乳房の撮影後に左乳房の撮影を行う、あるいは左乳房の撮影後に右乳房の撮影を行うことで、撮影ごとに右乳房分布画像および左乳房分布画像がそれぞれ取得される。
【0019】
また、上述の乳房検査用画像撮影装置において、形状抽出画像生成手段が生成する形状抽出画像は、検出器リングが出力するトランスミッションデータに由来すればより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の装置をより具体的に表している。形状抽出画像がトランスミッションデータに由来すれば、確実に乳房の形状を表した形状抽出画像を生成することができる。
【0021】
また、上述の乳房検査用画像撮影装置において、分布画像合成手段が生成する合成3次元画像を回転させる画像回転手段を備えればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の装置をより具体的に表している。合成3次元画像を回転させる画像回転手段を備えれば、多様な方向から合成3次元画像を観察することができるようになる。この様な場合であっても、両乳房は単一の合成3次元画像に写り込んでいるので、合成3次元画像を回転させた後であっても両乳房の位置関係が分かりやすい。
また、上述の乳房検査用画像撮影装置において、検出器リングは、被検体の右乳房の撮影と左乳房との撮影に共用されるように構成されればより望ましい。
[作用・効果]上述の構成は、本発明の装置をより具体的に表している。被検体の右乳房の撮影と左乳房との撮影に検出器リングが共用されることにより、検出器リングには、被検体の右乳房か左乳房かのどちらかしか挿入できない構造となるので、検出器リングの数を1つにすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、乳房像を直感的に認識しやすい画像を生成できる乳房検査用画像撮影装置を提供することができる。すなわち、本発明に係る装置は、放射性薬剤の分布のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房分布画像および左乳房分布画像を合成することにより、被検体における両乳房の位置関係が放射性薬剤の分布で示された合成3次元画像を生成する分布画像合成手段を備えている。この様な構成とすれば、2つの乳房が写り込んだ合成3次元画像が得られるので、術者は、乳房の観察方向を容易に認識することができるようになる。
また、被検体の右乳房と左乳房とを異なる時間帯で撮影するように構成される検出器リングによって、右乳房の撮影後に左乳房の撮影を行う、あるいは左乳房の撮影後に右乳房の撮影を行うことで、撮影ごとに右乳房分布画像および左乳房分布画像がそれぞれ取得される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
図2】実施例1に係る検出器リングの構成を説明する平面図である。
図3】実施例1に係る放射線検出記の構成を説明する斜視図である。
図4】実施例1に係る分布画像を説明する模式図である。
図5】実施例1に係る分布画像合成部の動作を説明する模式図である。
図6】実施例1に係るトランスミッションデータの収集動作を説明する模式図である。
図7】実施例1に係る形状抽出部の動作を説明する模式図である。
図8】実施例1に係る分布画像合成部の動作を説明する模式図である。
図9】実施例1に係るモデル画像を説明する模式図である。
図10】実施例1に係る付加画像生成部の動作を説明する模式図である。
図11】実施例1に係る分布画像合成部の動作を説明する模式図である。
図12】実施例1に係る画像回転部の動作を説明する模式図である。
図13】実施例1に係る装置の動作を説明するフローチャートである。
図14】従来構成の装置を説明する模式図である。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の実施例について図面を参照しながら説明する。実施例1におけるγ線は本発明の放射線の一例である。なお、実施例1の構成は、乳房検査用画像診断装置となっている。すなわち、実施例1の放射線断層撮影装置は、乳房Bに分布する放射性薬剤のイメージングを行って断層画像を生成する。そして、実施例1の装置は、被検体Mの右乳房と左乳房とを個別に撮影する構成となっている。
【0026】
<放射線断層撮影装置の全体構成>
図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の具体的構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る放射線断層撮影装置9は、被検体Mの乳房Bをz方向から導入させる開口部を備えたガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた被検体Mの乳房Bをz方向から導入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口部は、z方向に伸びた円筒形(正確には、正10角柱)となっている。したがって、検出器リング12自身もz方向に伸びている。なお、検出器リング12の開口部の領域が、放射線断層撮影装置9の断層画像が生成できる撮影視野となっている。z方向は、検出器リング12の中心軸の伸びる方向に沿っている。検出器リング12は、放射線を検出する後述の放射線検出器が弧状に配列されて構成される。
【0027】
天板10は、腹ばいの状態となった被検体Mを載置する目的で設けられている。天板10には、被検体Mの乳房Bを挿通する穴がz方向に貫通するように設けられており、乳房Bは、この穴を通じて乳房Bを検出器リング12の内部に導入される。ガントリ11の開口部は、鉛直上向きに設けられており、乳房Bは、この開口部に鉛直下向きの方向から導入されることになる。
【0028】
ガントリ11は、支持台38に載置されている。この支持台38は、被検体Mから見てガントリ11の裏側に位置している。遮蔽プレート13は、タングステンや鉛等で構成される(図1参照)。放射性薬剤は、被検体Mの乳房B以外の部分にも存在するので、そこからも消滅γ線ペアが発生している。この様な関心部位以外から発生する消滅γ線ペアが検出器リング12に入射すると、断層画像撮影の邪魔となる。そこで、検出器リング12のz方向における被検体Mに近い側の一端を覆うようにリング状でγ線を吸収する遮蔽プレート13が設けられているのである。遮蔽プレート13は、天板10と検出器リング12とに挟まれる位置に配置されている。
【0029】
検出器リング12の構成について説明する。検出器リング12は、10個の放射線検出器1がz方向(中心軸方向)に垂直な平面上の仮想円に配列されることで、1つの単位リング12aが形成される。この単位リング12aがz方向に3個配列されて検出器リング12が構成される(具体的には、図2参照)。
【0030】
放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図3は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図3に示すように放射線を光に変換するシンチレータ2と、光を検出する光電子増倍管から構成される光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0031】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶が3次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶は、Ceが拡散したLu2(1−X)2XSiO(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が光を発したかという光の発生位置を特定することができるようになっているとともに、光の強度や、光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0032】
同時計数部21(図1参照)には、検出器リング12から出力された検出信号Emが送られてきている。検出器リング12に同時に入射した2つのγ線は、被検体内の放射性薬剤に起因する消滅γ線ペアである。同時計数部21は、検出器リング12を構成するシンチレータ結晶のうちの2つの組み合わせ毎に消滅γ線ペアが検出された回数をカウントし、この結果を分布画像生成部22に送出する。同時計数部21による検出信号の同時性の判断は、クロックによって検出信号に付与された時刻情報が用いられる。同時計数部21に送出される検出信号Emは、被検体Mに投薬された放射性薬剤に由来する放射線の検出結果を示すものであり、エミッションデータとも呼ばれる。このエミッションデータは、後述の分布画像DR,DLの生成にも用いられるほか、後述の形状抽出画像SR,SLの生成にも用いられる。エミッションデータに似ているものとして後述のトランスミッションデータがあり、これは、同時計数を行うことなく得られるもので、被検体内の放射線吸収特性を表している。
【0033】
同時計数部21は、同時計数の結果に係るデータを分布画像生成部22に送出する。分布画像生成部22は、このデータに基づいて検出器リング12の内部に位置する撮影視野における放射性薬剤の分布を3次元的にイメージングして分布画像DR,DLを生成する。分布画像生成部22は、検出器リング12に被検体Mの右乳房が挿入された状態で得られる検出信号Em(エミッションデータ)に基づき右乳房分布画像DRを生成する。分布画像生成部22は、本発明の分布画像生成手段に相当する。
【0034】
同様に、分布画像生成部22は、検出器リング12に被検体Mの左乳房が挿入された状態で得られる検出信号Em(エミッションデータ)に基づき左乳房分布画像DLを生成する。このように、検出器リング12には、被検体Mの右乳房か左乳房かのどちらかしか挿入できない。したがって、被検体Mの両乳房について分布画像を生成したければ、検出器リング12に右乳房を挿入して撮影を行った後、左乳房を挿入して撮影を行わなければならない。すなわち、本発明に係る装置によれば、両乳房について分布画像を取得したければ、撮影を2回行う必要がある。
【0035】
このように本発明に係る分布画像生成部22は、検出器リング12の検出結果に基づいて右乳房および左乳房の放射性薬剤の分布のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房分布画像DRおよび左乳房分布画像DLを生成する。本発明の装置は、片乳房だけ撮影を行うように動作させることもできるが、以降の説明では右乳房分布画像DRと左乳房分布画像DLとの両方を撮影する場合について説明する。
【0036】
図4は、分布画像生成部22が生成する右乳房分布画像DRを表している。右乳房分布画像DRは、ボクセルが縦横高さ方向に配列した3次元データで構成され、放射性薬剤の分布状況を保持している。右乳房分布画像DRは、薬剤の蓄積濃度を色分けがなされたカラー画像であり、乳房の形状がおぼろげながら現れた画像となっている。この右乳房分布画像DRをモニタに表示させたとしても画像に写り込んでいるのがどちらの乳房なのかが分かりづらく、乳房をどちらの方向から視認しているのかも分かりづらい。
【0037】
分布画像生成部22が生成する左乳房分布画像DLも、図4で説明した右乳房分布画像DRと同様の画像である。このように、分布画像生成部22は、分布画像DR,DLを個別に生成するわけである。
【0038】
分布画像DR,DLは、分布画像合成部23に送出される。分布画像合成部23は、分布画像DR,DLをつなぎ合わせて単一の合成3次元画像を生成する。図5は、このときの動作を模式的に表したものとなっている。分布画像合成部23は、右乳房分布画像DRに写り込んだ右乳房像を合成3次元画像の右側に配置するとともに、左乳房分布画像DLに写り込んだ左乳房像を合成3次元画像の左側に配置して合成3次元画像を生成する。分布画像合成部23は、本発明の分布画像合成手段に相当する。
【0039】
分布画像DR,DLのそれぞれには、検出器リング12の方向に関するデータが盛り込まれており、どの方向が被検体Mの体幹部側でどの方向が被検体Mの頭部側であるかが明示されている。分布画像合成部23は、分布画像DR,DLにおける体幹部側を示す方向と頭部側を示す方向とを一致させつつ所定の距離だけ離間するように両乳房を画像上に貼り付けることにより合成3次元画像を合成する。乳房像を離間させる距離は、複数の被検体Mについて実測した乳房離間距離の平均に設定することができる。また、分布画像合成部23は、被検体Mの足側を示す方向に基づいて画像の合成を行ってもよい。
【0040】
この様にして分布画像合成部23が分布画像DR,DL同士を合成することにより得られた合成3次元画像は、2つの乳房像ともが写り込んだ画像となっており、図5に示すように、被検体Mにおける両乳房の位置関係が放射性薬剤の分布で示された画像となっている。したがって、合成3次元画像は、どちらが右乳房でどちらが左乳房であるかが分かりやすい画像と言える。そして、3次元像を回転させると、それに伴って2つの乳房像が傾斜していくので、乳房をどちらの方向から視認しているのかも分かりやすい。
【0041】
ただし、この様にして生成される合成3次元画像は、放射性薬剤の分布を表したものに過ぎず、乳房の形状を直接的に表したものではない。そこで、分布画像合成部23は、分布画像DR,DLを合成する際に被検体Mの形状も重合させて合成3次元画像を合成するようにしている。
【0042】
被検体Mの形状を実測するには、分布画像DR,DLを生成する際の吸収補正を目的として取得されるトランスミッションデータが利用される。このトランスミッションデータについて説明する。
【0043】
図6は、トランスミッションデータ収集時の検出器リング12を表している。このときの検出器リング12の内側には、放射線を照射する点線源19が配置される。この点線源19は、検出器リング12に挿入された乳房を検出器リング12の中心軸周りに一周するように移動される。点線源19から生じた放射線は、乳房を横切って検出器リング12に検出されることになる。このとき放射線の一部は乳房内部で吸収される。点線源19を移動させながら放射線を検出していけば、CT装置と同じような原理で乳房の内部構造が3次元的にイメージングできる。こうして得られた吸収補正画像AbR,AbLは、乳房における放射線の通しにくさをマッピングしたものと見ることができる。
【0044】
実際の吸収補正画像AbR,AbLは、トランスミッション収集時の検出器リング12から送出した検出信号Trに基づいて吸収補正画像生成部24により生成される。トランスミッションデータの収集もエミッションデータの収集と同様に被検体Mの両乳房について同時にできない。したがって、トランスミッションデータの収集は被検体Mの右乳房と左乳房の2回に分けて行われ、吸収補正画像生成部24は、右乳房に係る右乳房吸収補正画像AbRと、左乳房に係る左乳房吸収補正画像AbLとを個別に生成する。
【0045】
放射性薬剤を被検体Mに投与して消滅放射線のペアを検出するエミッションデータ収集を行う場合を考える。このときは消滅放射線のペアの検出を確実に行う為に、点線源19が検出器リング12から取り外される事が好ましいが、同時に収集しても構わない。
【0046】
乳房内部で発生した放射性薬剤由来の放射線は、すべて検出されるとは限らない。一部は、検出器リング12に到達する前に乳房に吸収されるはずである。しかも放射線の吸収のしやすさは乳房の中で一様ではなくムラがある。このムラこそが乳房における放射線の通しにくさをマッピングした吸収補正画像AbR,AbLに示されているわけである。この様な事情からトランスミッション収集に係る点線源19の実現には、放射性薬剤と同じ放射性核種を用いる事が好ましいが、その場合はエミッション収集とトランスミッション収集を同時に収集する事が困難になる為、別の放射性核種を用いても良い。
【0047】
分布画像生成部22は、吸収補正画像AbR,AbLに基づきエミッションデータ由来の画像を吸収補正して分布画像DR,DLを生成する。こうして分布画像生成部22は、乳房の放射線吸収の影響が分布画像DR,DLに現れるのを防止しているわけである。
【0048】
一方、この吸収補正画像AbR,AbLは、分布画像DR,DLと比べて被検体Mの形状をよりはっきりと表したものとなってもいる。放射線の吸収は、多少のムラはありながらも乳房の中で一様に起こるからである。とはいえ、被検体Mの形状を知りたい場合、吸収補正画像AbR,AbLが有している放射線の吸収のムラを示す情報は必要ない。
【0049】
そこで本発明の構成では、形状抽出部25が備えられている。形状抽出部25は、吸収補正画像AbR,AbLに写り込んだ乳房像を構成するボクセルの画素値を平均値A_RLを取得して、乳房像を構成するボクセルの画素値を当該平均値A_RLに置換する。この平均値A_RLは、吸収補正画像AbR,AbLに分かれて写り込む2つの乳房像を一緒にしたときに得られる平均値となっており、形状抽出部25が吸収補正画像AbR,AbLに基づいて算出する。形状抽出部25は、本発明の形状抽出画像生成手段に相当する。
【0050】
図7は、形状抽出部25の動作を表している。図7に示すように形状抽出部25は、右乳房吸収補正画像AbRに写り込む乳房像を構成する各ボクセルの画素値を両乳房像を構成する画素の平均値A_RLに置き換える。こうして、形状抽出部25は、右乳房吸収補正画像AbRに基づき右乳房形状抽出画像SRを生成する。同様に形状抽出部25は、左乳房吸収補正画像AbLに基づき左乳房形状抽出画像SLを生成する。このように、形状抽出部25は、検出器リング12の検出結果の一種であるトランスミッションデータに基づいて右乳房および左乳房の形状のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房形状抽出画像SRおよび左乳房形状抽出画像SLを生成する。このときの形状抽出部25の動作は、右乳房形状抽出画像SRの生成動作と同様である。形状抽出画像SR,SLは、いずれも乳房の形状を示すグレー画像となっている。
【0051】
形状抽出部25が生成した形状抽出画像SR,SLは、分布画像合成部23に送出される。分布画像合成部23は、図8に示すように、分布画像生成部22より送出された分布画像DR,DLと形状抽出画像SR,SLとを合成して乳房の機能画像と形態画像とが重合したフュージョン画像Fを生成する。分布画像合成部23が分布画像DR,DLと形状抽出画像SR,SLとを重ね合わせることにより生成されたフュージョン画像Fは、両乳房の形状に放射性薬剤の分布が重畳した合成3次元画像の一種である。
【0052】
形状抽出画像SR,SLのそれぞれには、検出器リング12の方向に関するデータが盛り込まれており、どの方向が被検体Mの体幹部側でどの方向が被検体Mの頭部側であるかが明示されている。分布画像合成部23は、形状抽出画像SR,SLにおける体幹部側を示す方向と頭部側を示す方向とを一致させつつ所定の距離だけ離間するように両乳房を図5で説明した合成3次元画像上に貼り付けることによりフュージョン画像Fを合成する。乳房像を離間させる距離は、図5で説明した分布画像DR,DLを合成したときの乳房像の離間距離を同じとすることができる。また、分布画像合成部23は、被検体Mの足側を示す方向に基づいて画像の合成を行ってもよい。
【0053】
上述の説明では、分布画像DR,DLを合成した合成3次元画像に形状抽出画像SR,SLを合成する手順となっているが、分布画像合成部23が分布画像DR,DLと形状抽出画像SR,SLとを合成する際の動作の順番は自由に変更できる。
【0054】
分布画像合成部23は、右乳房分布画像DRに写り込む検出器リング12の中心点と、右乳房形状抽出画像SRに写り込む検出器リング12の中心点とが互いに重なり合うようにしてフュージョン画像Fを生成する。同様に、分布画像合成部23は、左乳房分布画像DLに写り込む検出器リング12の中心点と、左乳房形状抽出画像SLに写り込む検出器リング12の中心点とが互いに重なり合うようにしてフュージョン画像Fを生成する。この様にして合成されたフュージョン画像Fは、2つの乳房像ともが写り込んだ画像となっており、図8に示すように、被検体Mにおける両乳房の位置関係が放射性薬剤の分布で示された画像となっている。
【0055】
このようにして生成されたフュージョン画像Fは、同じ被検体Mの乳房像が2重に写り込んでいる画像となっているはずである。重ね合わされた画像のうち分布画像DR,DLは薬剤分布を表しているから、乳房をおぼろげに写し込んだ画像となっている。そして、形状抽出画像SR,SLは、乳房の形状を表した画像となっている。したがって、生成されるフュージョン画像Fは、乳房の形状を表したグレー色の3Dモデルに、カラー表示された薬剤分布がマッピングされたような画像となっている。したがって、この様なフュージョン画像Fは、図5で説明した様な合成3次元画像とは異なり、乳房の形状をはっきり表したものとなっているので、放射性薬剤の分布が乳房においてどのようになっているかを把握しやすい。
【0056】
しかも、フュージョン画像Fに写り込む乳房形状は、同じ濃度の灰色で表されている。フュージョン画像Fに重畳されている形状抽出画像SR,SLに係る両乳房像を構成するボクセルの画素値は、予め単一の平均値A_RLに統一されているからである。これにより、フュージョン画像Fにおける乳房間の画素値の差は、すべて薬剤分布に由来することが保証され、放射性薬剤の分布が乳房においてどのようになっているかを把握しやすくなる。
【0057】
ただし、この様にして生成されるフュージョン画像Fは、乳房しか写しだしておらず、被検体全体を直接的に表したものではない。したがって、この様なフュージョン画像Fは被検体Mの全体像を捉えるには不向きである。そこで、分布画像合成部23は、フュージョン画像Fを合成する際に被検体Mの体幹部の形状も重合させて合成3次元画像を合成することもできるようにしている。
【0058】
被検体Mの体幹部がどのような形状をしているか、実施例1に係る装置では実測することができないことには注意が必要である。本発明に係る装置は、被検体Mの体幹部を検出器リング12に導入するわけにいかず、被検体Mの体幹部の形状を実測することができないのである。そこで、本発明に係る装置は、図9に示すような被検体Mの乳房を除いた体幹部を模した3次元モデル像を用意している。この3次元モデル像は、モデル画像Tに表された像であり、被検体Mの代表的な体格に基づいて予め生成されている。この3次元モデル像は、被検体Mの形状そのものを実測したものとは言えないが、それでも体幹部と乳房との位置関係を把握するには十分である。モデル画像Tは、記憶部37に記憶されている。
【0059】
この3次元モデル像には、乳房が描写されていない。被検体Mの乳房の形状はトランスミッションデータ収集により実測できるから、予め用意しておく必要がないのである。この乳房なき3次元モデル像は、形状抽出画像SR,SLに写り込む乳房像が付加され、撮影に係る被検体Mを表す形状に整形される。この様な乳房の付加処理を行うのが付加画像生成部26である。付加画像生成部26は、本発明の付加画像生成手段に相当する。
【0060】
形状抽出部25が生成した形状抽出画像SR,SLは、付加画像生成部26に送出される。付加画像生成部26は、図10に示すように、モデル画像T上の3次元モデル像に形状抽出画像SR,SLに写り込んだ右乳房像と左乳房像との各々を合成して、3次元モデル像に実測された乳房形状を付加した付加画像TGを生成する。このとき、形状抽出部25は、二値画像となっているモデル画像Tの3次元モデル像を構成するボクセルの画素値を形状抽出画像SR,SLを生成する際に用いた平均値A_RLに変換した後、乳房の付加動作を行う。この様にすることにより、生成される付加画像TGに写り込んだ3次元モデル像において、乳房とそれ以外の部分で画素値の差が発生しない。
【0061】
また、モデル画像Tには、予め右乳房撮影時における検出器リング12の中心点の位置と、左乳房撮影時における検出器リング12の中心点の位置とが決められている。付加画像生成部26は、モデル画像T上における右乳房撮影に係る中心点の位置と、右乳房形状抽出画像SRにおける検出器リング12の中心点の位置とを一致させるようにしてモデル画像Tに右乳房形状抽出画像SRを合成する。同様に、付加画像生成部26は、モデル画像T上における左乳房撮影に係る中心点の位置と、左乳房形状抽出画像SLにおける検出器リング12の中心点の位置とを一致させるようにしてモデル画像Tに左乳房形状抽出画像SLを合成する。
【0062】
こうして生成された付加画像TGには、被検体Mの胸部の形状を模した乳房付きの3次元モデル像を写し込んでいる。3次元モデル像のうち被検体Mの体幹部は実測されたものではない。一方、3次元モデル像のうち被検体Mの乳房部は、実測に基づいたものであり、被検体Mの乳房形状を正確に表している。付加画像TGは、3次元モデル像を写し込んだグレー画像となっている。このように、付加画像生成部26は、被検体Mの乳房を除いた体幹部を模した3次元モデル像に形状抽出画像SR,SLに写り込んだ右乳房像と左乳房像との各々を合成して、3次元モデル像に実測された乳房形状を付加した付加画像TGを生成する。
【0063】
このような付加画像TGは、分布画像合成部23に送出される。分布画像合成部23は、図11に示すように、付加画像TGに分布画像DR,DLを合成して体幹部付きのフュージョン画像Fを生成する。分布画像合成部23が各画像を合成するときの位置合わせは、付加画像生成部26と同様の動作で行われる。すなわち、付加画像TGには、予め右乳房撮影時における検出器リング12の中心点の位置と、左乳房撮影時における検出器リング12の中心点の位置とが決められている。
【0064】
同様に、分布画像合成部23は、付加画像TG上における右乳房撮影に係る中心点の位置と、右乳房分布画像DRにおける検出器リング12の中心点の位置とを一致させるようにして付加画像TGに右乳房分布画像DRを合成する。さらに、分布画像合成部23は、付加画像TG上における左乳房撮影に係る中心点の位置と、左乳房分布画像DLにおける検出器リング12の中心点の位置とを一致させるようにして付加画像TGに左乳房形状抽出画像SLを合成する。こうして、分布画像合成部23は、体幹部付きのフュージョン画像Fを生成する。
【0065】
このような付加画像生成部26の動作と分布画像合成部23の動作を1まとめにして考えれば、モデル画像T上における右乳房撮影に係る中心点の位置と、両画像DR,SRにおける検出器リング12の中心点の位置とを一致させるようにしてモデル画像Tに両画像DR,SRが合成される。同様にモデル画像T上における左乳房撮影に係る中心点の位置と、両画像DL,SLにおける検出器リング12の中心点の位置とを一致させるようにしてモデル画像Tに両画像DL,SLが合成される。こうして体幹部付きフュージョン画像Fが生成されるわけである。このように、分布画像合成部23は、付加画像TGを分布画像DR,DLに重ね合わせて3次元モデル像に付加された乳房に放射性薬剤の分布が重畳させることにより、分布画像DR,DLと形状抽出画像SR,SLとの重合を実行する。
【0066】
このようにして生成されるフュージョン画像Fは、図11に示すように体幹部(正確には体幹部の一部)を含めて被検体Mの乳房の形状を表したグレー色の3Dモデルに、薬剤分布が乳房の部分だけカラー表示でマッピングされたような画像となっている。この様なフュージョン画像Fは、図5で説明した様な合成3次元画像とは異なり、乳房の形状をはっきり表したものとなっているので、放射性薬剤の分布が乳房においてどのようになっているかを把握しやすい。
【0067】
また、このようにして合成された体幹部付きフュージョン画像Fは、被検体Mの体幹部の形状を正確に表しているとはいえない。そうであっても、被検体Mの向きを知るには十分である。例えば、図8のフュージョン画像Fだけでは、画像の上側が被検体Mの頭部に当たるのかそれとも足先に当たるのか分かりにくい。それに比べて図10のフュージョン画像Fでは被検体Mの頭部側が画像のどちら側に当たるのか一目瞭然となっている。
【0068】
分布画像合成部23により生成された画像は、画像回転部27に送出される。画像回転部27では、図12に示すように分布画像合成部23が生成する合成3次元画像を体軸周りに回転させたり、乳房の配列方向に伸びる軸周りに回転させたりすることができる。なお、図12は合成3次元画像の一例として図11に係る体幹部付きのフュージョン画像Fが描かれている。画像回転部27が回転する画像としては、図5で説明した合成3次元画像、図8図11で説明したフュージョン画像Fがある。以降、これらのうち、図11に係るフュージョン画像Fについて行われる処理について説明する。画像回転部27は、本発明の画像回転手段に相当する。
【0069】
回転処理されたフュージョン画像Fは、断層画像生成部28に送出され、そこで断層画像が生成される。この様な処理により、フュージョン画像Fは、被検体Mのモデル像に放射性薬剤の分布状況が重なった状態のまま断層画像に変換される。こうして得られた断層画像には、被検体Mの形状の断面を示す灰色の像に放射性薬剤の分布の断面を示すカラー像が重畳している。生成された断層画像は、表示部36により表示される。
【0070】
なお、放射線断層撮影装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41を備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部21,22,23,22,24,25,26,27,28を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。操作卓35は、術者が行う各種指示を入力させる目的で設けられている。表示部36は、断層画像生成部28が生成した断層画像を表示する目的で設けられている。記憶部37は、モデル画像Tなど、装置の動作に必要なデータの一切を記憶する。
【0071】
<放射線断層撮影装置の動作>
続いて放射線断層撮影装置の動作について図13を参照しながら説明する。本発明に係る装置で被検体Mの乳房のイメージングを行うには、まず、被検体Mが天板10に載置される(被検体載置ステップS1)。そして、被検体Mの右乳房および左乳房を順番に検出器リング12に導入して、トランスミッションデータの収集と、形状抽出画像SR,SLの生成を両乳房について個別に行う(右乳房トランスミッションデータ収集ステップS2,右乳房形状画像生成ステップS3,左乳房トランスミッションデータ収集ステップS4,左乳房形状画像生成ステップS5)。
【0072】
その後、放射性薬剤が被検体Mに投与され(放射性薬剤投与ステップS6),再び被検体Mの右乳房および左乳房を順番に検出器リング12に導入して、エミッションデータの収集と、分布画像DR,DLの生成を両乳房について個別に行う(右乳房エミッションデータ収集ステップS7,右乳房分布画像生成ステップS8,左乳房エミッションデータ収集ステップS9,左乳房分布画像生成ステップS10)。最後に、各画像が合成されてフュージョン画像Fが生成される(画像合成ステップS11)。生成されたフュージョン画像Fは、断層画像の生成の元になる合成3次元画像である。
【0073】
以上のように、本発明によれば、乳房像を直感的に認識しやすい画像を生成できる乳房検査用画像撮影装置を提供することができる。すなわち、本発明に係る装置は、放射性薬剤の分布のそれぞれを3次元的にイメージングした右乳房分布画像DRおよび左乳房分布画像DLを合成することにより、被検体Mにおける両乳房の位置関係が放射性薬剤の分布で示された合成3次元画像を生成する分布画像合成部23を備えている。この様な構成とすれば、2つの乳房が写り込んだ合成3次元画像が得られるので、術者は、乳房の観察方向を容易に認識することができるようになる。
【0074】
また、上述の構成は、合成3次元画像が分布画像DR,DLと形状抽出画像SR,SLとを重ね合わせることにより、両乳房の形状に放射性薬剤の分布が重畳したフュージョン画像Fとなっている。このようにすれば、より乳房の形状を把握しやすい装置が提供できる。放射性薬剤の分布を示す分布画像DR,DLは、乳房の形状をおぼろげに表しているに過ぎない。これに対し、乳房の形状が抽出された形状抽出画像SR,SLを分布画像DR,DLに重ね合わされたフュージョン画像Fを生成すれば、乳房の形状がよりはっきりと認識できるのである。
【0075】
さらに、上述の構成は、分布画像合成部23が付加画像TGを分布画像に重ね合わせて3次元モデル像に付加された乳房に放射性薬剤の分布が重畳させ、分布画像DR,DLと形状抽出画像SR,SLとの重合を実行する構成となっている。このようにすれば、被検体Mの体幹部を含んでフュージョン画像Fが生成されるので、被検体Mの向きがより分かりやすくなる。
【0076】
本発明の構成は、下記の様に変形実施することもできる。
【0077】
(1)上述の実施例によれば、図11に係るフュージョン画像Fを回転処理し、断層画像を生成するような構成となっていたが、本発明はこの様な構成に限らず、図5に係る合成3次元画像または図8に係るフュージョン画像Fに対しても同様の動作を行うこともできる。
【0078】
(2)上述の実施例によれば、フュージョン画像Fより断層画像を生成するような構成となっていたが、本発明はこの構成に限らず、フュージョン画像FよりMIP画像など他の種類の2次元画像を生成するようにしてもよい。また、同様の動作は、図5に係る合成3次元画像または図8に係るフュージョン画像Fに対しても行うこともできる。
【符号の説明】
【0079】
12 検出器リング
22 分布画像生成部(分布画像生成手段)
23 分布画像合成部(分布画像合成手段)
25 形状抽出部(形状抽出画像生成手段)
26 付加画像生成部(付加画像生成手段)
27 画像回転部(画像回転手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14