(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記最大ずれ幅内の想定符号を含む想定符号列と、当該想定符号列内において前記想定符号と想定されなかった符号とを識別する識別情報とを生成する想定符号列生成手段を備え、
前記照合手段は、前記識別情報に基づいて前記想定符号と受信符号とを照合する
ことを特徴とする請求項1記載の衛星電波受信装置。
前記照合手段は、前記受信手段により一の受信符号が新たに同定されるごとに、前記一の受信符号の受信日時に対する前記最大ずれ幅内の前記想定符号と、当該一の受信符号とを照合することを特徴とする請求項1又は2記載の衛星電波受信装置。
前記現在日時を計数する計時手段の当該現在日時が直近に修正されてからの経過時間に基づいて前記最大ずれ幅を設定する最大ずれ幅設定手段を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
前記所定の合致条件は、同一のずれ量に係る想定符号と前記受信符号との間での照合回数に対する不一致符号数が所定の不一致許容条件を満たすこととされることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
前記所定の合致条件は、同一のずれ量に係る想定符号と前記受信符号との間での照合において、所定の基準照合回数以上連続して合致することであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
前記所定の基準照合回数は、当該基準照合回数連続して前記想定符号と合致する符号が出現する合致確率が、予め定められた基準値未満となるように定められることを特徴とする請求項6記載の衛星電波受信装置。
前記ずれ量検出手段は、前記信号指標値が所定の強度基準値以上に良好な値の場合には、同一のずれ量に係る想定符号と前記受信符号との間での照合において、所定の基準照合回数以上連続して合致することを前記所定の合致条件とし、
前記信号指標値が前記所定の強度基準値よりも良好ではない値の場合には、同一のずれ量に係る想定符号と前記受信符号との間での照合回数に対する不一致符号数が所定の不一致許容条件を満たすことを前記所定の条件とする
ことを特徴とする請求項9記載の衛星電波受信装置。
前記照合手段は、所定の上限照合時間以内に前記所定の合致条件を満たすずれ量が検出されなかった場合には、当該所定の合致条件を変更することを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
前記所定の不一致許容条件は、前記最大ずれ幅内の前記ずれ量ごとに所定回数ずつ実施された照合において、最も小さい不一致符号数の出現確率が、二番目に小さい不一致符号数の出現確率に比して所定の割合以下となることであることを特徴とする請求項5又は10記載の衛星電波受信装置。
前記所定の不一致許容条件を満たすか否かの判別は、前記衛星に応じた信号送信フォーマットに従って送信される符号列に係る所定の送信周期ごとに行われることを特徴とする請求項5、10、13、14の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の衛星電波受信装置及び電子時計の実施形態である電子時計1の機能構成を示すブロック図である。
【0012】
この電子時計1は、少なくとも米国のGPS(Global Positioning System)に係る測位衛星(以下、GPS衛星と記す)からの電波を受信して信号を復調し、日時情報を取得することが可能な電波時計である。
電子時計1は、ホストCPU41(Central Processing Unit)(日時修正手段)と、ROM42(Read Only Memory)と、RAM43(Random Access Memory)と、発振回路44と、分周回路45と、計時手段としての計時回路46と、表示手段としての表示部47と、表示ドライバ48と、操作部49と、電源部50と、衛星電波受信装置としての衛星電波受信処理部60と、アンテナANなどを備える。
【0013】
ホストCPU41は、各種演算処理を行い、電子時計1の全体動作を統括制御する。ホストCPU41は、ROM42から制御プログラムを読み出し、RAM43にロードして日時の表示や各種機能に係る演算制御や表示などの各種動作処理を行う。また、ホストCPU41は、衛星電波受信処理部60を動作させて測位衛星からの電波を受信させ、受信内容に基づいて求められた日時情報や位置情報を取得する。
【0014】
ROM42は、マスクROMや書き換え可能な不揮発性メモリなどであり、制御プログラムや初期設定データが記憶されている。制御プログラムの中には、測位衛星から各種情報を取得するための各種処理の制御に係るプログラム421が含まれる。
【0015】
RAM43は、SRAMやDRAMなどの揮発性のメモリであり、ホストCPU41に作業用のメモリ空間を提供して一時データを記憶すると共に、各種設定データを記憶する。各種設定データには、電子時計1のホーム都市設定や、日時の計数、表示における夏時間の適用可否に係る設定が含まれる。RAM43に記憶される各種設定データの一部又は全部は、不揮発性メモリに記憶されても良い。
【0016】
発振回路44は、予め定められた所定の周波数信号を生成して出力する。この発振回路44には、例えば、水晶発振器が用いられている。
【0017】
分周回路45は、発振回路44から入力された周波数信号を計時回路46やホストCPU41が利用する周波数の信号に分周して出力する。この出力信号の周波数は、ホストCPU41による設定に基づいて変更されることが可能であっても良い。
【0018】
計時回路46は、分周回路45から入力された所定の周波数信号(クロック信号)の入力回数を計数して初期値に加算することで現在の日時を計数する。計時回路46としては、ソフトウェア的にRAMに記憶させる値を変化させるものであっても良いし、或いは、専用のカウンタ回路を備えていても良い。計時回路46の計数する日時は、特には限られないが、所定のタイミングからの累積時間、UTC日時(協定世界時)、又は予め設定されたホーム都市の日時(地方時)などのうち何れかである。また、この計時回路46の計数する日時自体は、必ずしも年月日、時分秒の形式で保持される必要がない。分周回路45から計時回路46に入力されるクロック信号には、正確な時間経過とは若干のずれがあり、1日当たりのずれの大きさ(歩度)は、動作環境、例えば温度によって変化し、通常では、±0.5秒以内である。
【0019】
表示部47は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)や有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイなどの表示画面を備え、ドットマトリクス方式及びセグメント方式の何れか又はこれらの組み合わせにより日時や各種機能に係るデジタル表示動作を行う。
表示ドライバ48は、表示画面の種別に応じた駆動信号をホストCPU41からの制御信号に基づいて表示部47に出力して、表示画面上に表示を行わせる。
【0020】
操作部49は、ユーザからの入力操作を受け付けて、当該入力操作に応じた電気信号を入力信号としてホストCPU41に出力する。この操作部49には、例えば、押しボタンスイッチやりゅうずスイッチが含まれる。
或いは、表示部47の表示画面に重ねてタッチセンサが設けられ、当該タッチセンサによるユーザの接触動作に係る接触位置や接触態様の検出に応じた操作信号を出力するタッチパネルとして表示画面を機能させることで、表示部47と操作部49とが一体的に設けられても良い。
【0021】
電源部50は、バッテリを備え、電子時計1の動作に係る電力を所定の電圧で各部に供給する。電源部50のバッテリとしては、ここでは、ソーラパネルと二次電池が用いられている。ソーラパネルは、入射した光により起電力を生じてホストCPU41などの各部に電力供給を行うと共に、余剰電力が生じた場合には、当該電力を二次電池に蓄電する。一方、ソーラパネルへの外部からの入射光量により発電可能な電力が消費電力に対して不足している場合には、二次電池から電力が供給される。或いは、バッテリとしてボタン型などの一次電池が用いられても良い。
【0022】
衛星電波受信処理部60は、アンテナANを介して測位衛星からの電波に同調して各測位衛星に固有のC/Aコード(疑似ランダムノイズ)を同定、捕捉することで当該電波を受信し、測位衛星が送信する航法メッセージを復調、復号して必要な情報を取得する。衛星電波受信処理部60は、モジュールCPU61(照合手段、ずれ量検出手段、想定符号列生成手段、日時取得手段、最大ずれ幅設定手段)と、メモリ62と、記憶部63と、RF部64と、ベースバンド変換部65と、捕捉追尾部66などを備える。
【0023】
モジュールCPU61は、ホストCPU41からの制御信号や設定データの入力に応じて衛星電波受信処理部60の動作を制御する。モジュールCPU61は、記憶部63から必要なプログラムや設定データを読み出して、RF部64、ベースバンド変換部65及び捕捉追尾部66を動作させ、受信された各測位衛星からの電波を受信、復調させて日時情報を取得する。このモジュールCPU61は、受信した電波を復号して日時情報を取得する他、復号せずに、復調された受信符号列を予め設定された比較照合用の符号列(照合符号列)と比較照合して一致検出を行うことが出来る。
【0024】
メモリ62は、衛星電波受信処理部60におけるモジュールCPU61に作業用のメモリ空間を提供するRAMである。また、メモリ62には、受信された符号列との比較照合用に生成された符号列データが一時記憶される。
記憶部63は、GPS測位に係る各種設定データや測位及び日時情報取得の履歴を記憶する。記憶部63には、フラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などの各種不揮発性メモリが用いられる。記憶部63に記憶されるデータには、各測位衛星の精密軌道情報(エフェメリス)、予測軌道情報(アルマナック)や前回の測位日時及び位置が含まれる。また、記憶部63には、世界各地のタイムゾーンや夏時間の実施情報に係るデータが時差テーブルとして記憶されている。測位が行われると、この時差テーブルが参照されて、得られた現在位置における標準時間での協定世界時(UTC)からの時差や夏時間実施情報などの地方時情報が特定される。
また、記憶部63には、測位を行ってこの地方時情報を特定するためのプログラムや、日時情報を受信して取得するためのプログラム631が記憶されており、モジュールCPU61により読み出されて実行される。
【0025】
RF部64は、L1帯(GPS衛星では、1.57542GHz)の衛星電波を受信して測位衛星からの信号を選択的に通過、増幅させ、中間周波数信号に変換する。RF部64には、LNA(低雑音増幅器)、BPF(帯域通過フィルタ)、局部発振器やミキサなどが含まれる。
【0026】
ベースバンド変換部65は、RF部64で得られた中間周波数信号に対して各測位衛星のC/Aコードを適用してベースバンド信号、即ち、航法メッセージ(所定のフォーマット)に係る符号列(受信符号列)を取得する。
捕捉追尾部66は、RF部64で得られた中間周波数信号に対して各測位衛星の各位相でのC/Aコードとの間で各々相関値を算出してそのピークを特定することで、受信されている測位衛星からの信号とその位相を同定する。また、捕捉追尾部66は、同定された測位衛星のC/Aコードとその位相により当該測位衛星からの航法メッセージに係る符号列を継続的に取得するために、ベースバンド変換部65に対して位相情報のフィードバックなどを行い、受信電波を復調して各符号(受信符号)を同定する。
これらRF部64、ベースバンド変換部65及び捕捉追尾部66により受信手段が構成される。
【0027】
この衛星電波受信処理部60は、電源部50から直接電力が供給され、そのオンオフがホストCPU41の制御信号により切り替えられる。即ち、衛星電波受信処理部60は、測位衛星からの電波受信及び日時取得や測位に係る算出動作が行われている期間以外には、常時動作しているホストCPU41などとは別個に電源がオフされる。
【0028】
次に、GPS衛星から送信される航法メッセージのフォーマットについて説明する。
GNSSでは、複数の測位衛星を複数の軌道上に分散配置させ、地上の各地点から同時に複数の異なる測位衛星の送信電波を受信可能とすることで、当該受信可能な測位衛星から送信されている当該測位衛星の現在位置に係る情報や日時情報を4機以上の測位衛星(地表面であるとの仮定の上では3機)から取得することで、これらの取得データと、取得タイミングのずれ、即ち、各測位衛星からの伝播時間(距離)の差と、に基づいて三次元空間における位置座標及び日時を決定することが出来る。また、1機の測位衛星からの日時情報が取得されることで、当該測位衛星からの伝播時間の誤差範囲(100msec未満程度)で現在日時を取得することが出来る。
【0029】
測位衛星からは、日時に係る情報と、衛星の位置に係る情報と、衛星の健康状態などのステータス情報などを示す符号列(航法メッセージ)がC/Aコード(疑似ランダムノイズ)により位相変調されることでスペクトラム拡散されて送信されている。これらの信号送信フォーマット(航法メッセージのフォーマット)は、測位システムごとに定められている。
【0030】
図2は、GPS衛星から送信されている航法メッセージのフォーマットを説明する図である。
GPSでは、各GPS衛星からそれぞれ30秒単位のフレームデータが合計25ページ送信されることで、12.5分周期で全てのデータが出力されている。GPSでは、GPS衛星ごとに固有のC/Aコードが用いられており、このC/Aコードは、1.023MHzで1023個の符号(チップ)が配列されて1msec周期で繰り返されている。このチップの先頭は、GPS衛星の内部時計と同期しているので、GPS衛星ごとにこの位相のずれを検出することで、伝播時間、即ち、GPS衛星から現在位置までの距離に応じた位相ずれ(疑似距離、距離指標値)が検出される。
【0031】
各フレームデータは、5つのサブフレーム(各6秒)で構成されている。更に、各サブフレームは10個のワード(各0.6秒、順番にWORD1〜WORD10)によって構成されている。各ワードは、それぞれ30ビットであり、即ち、毎秒50ビットの符号が送信されている。WORD1とWORD2のデータフォーマットは、全てのサブフレームで同一である。WORD1は、8ビットの固定符号列であるプリアンブル(Preamble)に続き、14ビットのテレメトリメッセージ(TLM Message)が含まれ、その後ろに1ビットのIntegrity status flagと1ビットの予備ビットを挟んで、6ビットのパリティデータが配される。WORD2は、週内経過時間を示す17ビットのTOW−Count(Zカウントともいう)に続き、Alert flagとAnti-spoof flagがそれぞれ1ビットずつで示されている。それから、サブフレームの番号(周期番号)を示すサブフレームID(Subframe-ID)が3ビットで示され、パリティデータの整合用2ビットを挟んで6ビットのパリティデータが配列される。
【0032】
WORD3以降のデータは、サブフレームによって異なる。サブフレーム1のWORD3には、先頭に10ビットのWN(週番号)が含まれる。サブフレーム2、3には、主に、エフェメリス(精密軌道情報)が含まれ、サブフレーム4の一部及びサブフレーム5では、アルマナック(予測軌道情報)が送信されている。
【0033】
ここで、GPS衛星で計数されている日時(GPS日時)は、うるう秒の実施によるずれを含んでいない。従って、GPS日時とUTC日時との間には、ずれが存在するので、GPS衛星からの電波受信により取得された日時は、UTC日時に換算されて出力される必要がある。また、計時回路46の計数する日時に基づいてGPS衛星からの電波受信タイミングを制御したり、受信される日時を推測したりする場合には、当該計時回路46の日時をGPS日時に換算して用いる必要がある。
【0034】
次に、本実施形態の電子時計1における日時情報の取得動作について説明する。
上述したように、電子時計1で計数されている日時(現在日時)のずれ量がサブフレームの長さ(6秒)と比較して短ければ、当該サブフレームやその前後のサブフレームにおいて送信されるTOW−Count、サブフレームIDや、サブフレーム1におけるWNは、当該日時に基づいて想定され得る。本実施形態の電子時計1では、このような想定可能な符号を用いて予め想定符号列を生成しておき、受信された符号(受信符号)と、各想定符号とを順次比較照合することで、受信符号と想定符号とが一致し続けるずれ量に基づいて当該想定符号列に応じた正確な日時に係る情報(日時情報)を取得する。また、このようにサブフレームごとに変化する符号が想定符号列に含まれることで、万が一計時回路46の計数する日時が後述のように見積もられた範囲よりも大きくずれていた場合に、誤って一致判定されることを防ぐことが出来る。
【0035】
この想定符号列には、上述の日時に応じて変化する符号列に加え、例えば、プリアンブルや予備ビットのように送信周期によらず一定の符号が含まれ得る。また、Alert flagやAnti-spoof flagのように、通常では「0」であり、「1」の場合には利用が好ましくない符号(送信状態に係る所定のフラグ)は、予測が可能な訳ではないが、「0」であると想定して想定符号列に加えられても良い。
【0036】
更に、直近の一又は複数回の衛星電波の受信の際に受信された符号配列とその受信日時(受信履歴)を記憶部63に記憶させておき、当該記憶された符号配列のうち、航法メッセージにおける符号位置(即ち、情報の種別)に応じて前回の受信からの変化が完全には予測出来ないが、前回の受信からの経過時間が短い場合には通常当該経過時間内に変化がしないと判断可能なもの、例えば、WORD1のテレメトリメッセージを想定符号列として利用しても良く、或いは、テレメトリメッセージの一部又は全部と上述の固定符号列や送信周期に応じて変化する符号列とを組み合わせて想定符号列としても良い。想定符号列に使用可能か否かの判断は、単純に前回の受信からの経過時間だけで行われる場合に限られず、複数回の受信で一度も変化していない符号を用いるなどの条件が追加されても良い。
同様に、アルマナックデータなどの測位衛星の軌道に係るデータが取得されていて、次の更新までの時間が経過していない場合には、当該軌道に係るデータも想定符号列に含めることが出来る。
【0037】
各ワードの25〜30ビット目に配列されるパリティデータは、前のワードにおける29ビット目又は30ビット目のパリティ符号と、同一のワードにおける1〜24ビット目のうちそれぞれ必要なビットデータに基づいて算出される。従って、前のワードにおける29ビット目及び30ビット目のパリティ符号を想定するのが困難であり、本実施形態の電子時計1では、これらパリティデータは、想定符号列に含まれない。
【0038】
想定符号列は、全て連続している必要はなく、複数の異なる符号列部分に分割されていて良い。即ち、想定符号列は、WORD1の23ビット目である予備ビットと、WORD2の1〜17ビット目であるTOW−Countの間のパリティデータ6ビットを飛ばして生成することが出来る。このように想定符号列に含まれる想定可能な符号と、想定符号列に含まれない想定不可能な符号とは、各符号にそれぞれ対応して想定可否フラグ(識別情報)を設定することで識別可能となる。この想定可否フラグの配列は、想定符号列の生成時に併せて生成されれば良い。
【0039】
ここで、想定符号列と受信符号列の照合に際し、実際にGPS衛星から送信されている情報に応じた符号列は、ワードごとに一つ前のワードの最終ビット(30ビット目)のパリティデータ(反転符号)の符号に応じて1〜24ビット目の符号(パリティデータ以外の符号)が反転される。即ち、反転符号が「0」であった場合、次のワードの1〜24ビット目の符号は、送信情報に応じてそのまま送信されるのに対し、この反転符号が「1」であった場合、次のワードの1〜24ビット目の符号は、送信情報に応じた符号列が全て反転されたものとなる。従って、生成される想定符号列は、一通りではなく、各ワードの反転有無のパターンに応じた数が生成される。
【0040】
想定符号列と受信符号列との間には、計時回路46の計数する日時のずれの分だけ位相(符号)ずれが生じる。上述のように、計時回路46の歩度は、0.5秒/日(1/48[sec/h])であるので、直近の日時修正からの経過時間tp[h]に応じて計時回路46の計数する日時の正確な日時からのずれの最大値dt(最大ずれ幅の半分)がdt=tp/48と見積もられる。即ち、正確な日時tcは、計時回路46の計数する日時tに対してt−dt≦tc≦t+dtの範囲であると推測される。
【0041】
本実施形態の電子時計1では、計時回路46の計数する日時tに取得された受信符号r(t)に対して、t−dt≦tc≦t+dtの範囲内にあると想定される各符号をそれぞれ照合させ、複数の日時tに対して得られた照合結果を正確な日時tcからの差分量dcに応じた配列の各要素にそれぞれ積算することで、完全に合致する差分量dcを特定する。
【0042】
図3は、本実施形態の電子時計1における符号の照合について説明する図である。
図3(a)に示すように、前回の計時回路46の日時修正から4日(96時間)が経過した後に、UTC時刻におけるある時分の02秒に受信を開始する場合、正確な日時tcは、00秒から04秒の間と推測される。この時刻は、UTC日時とGPS日時との差が17秒の場合、GPS日時で17秒から21秒の間となる。更に、受信開始からGPS衛星からの電波が捕捉されて符号の取得が開始されるまでに2秒を要する場合、符号の取得開始は、GPS日時で19秒から23秒の間となる。この場合、生成される想定符号列は、GPS日時で19秒から23秒を含み、更に、最も遅い23秒から1サブフレーム分にあたる6秒間(送信周期)経過した29秒まで含ませることが出来る。また、想定符号列の生成後、19秒より前の符号は不要であるので、19秒の符号を先頭とする想定符号列のみ記憶保持させることが出来る。
【0043】
図3(b)に示すように、計時回路46の計数する日時t0(ここでは、19秒)における受信符号r(t0)が先ず取得されると、想定符号列において日時t0−dt(ここでは、17秒)に対応する想定可否フラグp(0)から日時t0+dt(ここでは、21秒)に対応する想定可否フラグp(100dt)までの201個の想定可否フラグp(i)が参照され、符号の想定が「可」であることを示す(例えば、p(i)=1である)配列番号iの想定符号c(i)と受信符号r(t0)とがそれぞれ比較される。
【0044】
想定可否フラグp(i)が符号を想定可能であることを示していて、照合が行われたものについては、照合数N(i)に1が加算される。ここでは、上述のように、想定可能の場合にp(i)=1、想定不可の場合にp(i)=0として、照合数N(i)にこのp(i)を加算する。また、照合の結果、合致していたものについては、合致数E(i)に1が加算される。
【0045】
上記の処理動作は、新たに受信された符号が1つ同定されるごとに繰り返される。上述のように、GPS衛星からは、毎秒50ビットの符号が送信されるので、間隔ε=20[msec]でこの処理動作が繰り返されることになる。
【0046】
図3(c)に示すように、新たに符号が同定されるごとに(即ち、間隔εが経過するごとに)1が加算されるカウント数kを用いて、日時t0+εkでは、k+1個目の受信符号r(t0+εk)が同定される。このとき想定符号列における日時tc0−dt+εkから想定符号列における日時t0+dt+εkまでの想定可否フラグp(k)〜p(100dt+k)が参照されて、各々N(0)〜N(100dt)に加算される。また、想定符号c(k)〜c(100dt+k)のうち、想定可能であるものが受信符号r(t0+εk)とそれぞれ照合されて、合致したものについては、それぞれ、想定符号cの配列番号iからkを減じた配列番号の合致数E(0)〜E(100dt)に1が加算される。
【0047】
なお、この
図3(c)では、想定可否フラグp(i)及び想定符号c(i)の配列番号iが時間の経過と共に単調に増加するように示しているが、照合された先頭の想定可否フラグp(k)及び想定符号c(k)のデータは、以後参照されないので消去することが出来る。ここでは、参照された各想定可否フラグp(i)及び対応する想定符号c(i)のうち、i≧1のもの(1≦i≦M;Mは生成済みの想定符号及び想定可否フラグに係る最後の配列番号)について、それぞれ配列番号iを一つずつ減少させて、それぞれp(i−1)、c(i−1)とされる。或いは、予め定められた最大配列数(100dt+1に所定のマージンを追加した値imax)の範囲で、新たに生成されたカウント数k番目の想定可否フラグや想定符号が、配列番号i=k mod imax(カウント数kを整数imaxで除した剰余の値)の配列位置にループ状に代入されていっても良い。
【0048】
この処理が繰り返されることで、想定符号列と受信符号列とが合致する位相ずれ(配列番号i)に対応する合致数E(i)が選択的に増加する。そして、他の位相ずれのタイミングでの合致数Eが偶然増加することで誤同定がなされる確率が十分に小さいと判断可能な合致数Eが得られた場合に、当該合致数Eと照合数Nとが一致していれば、想定符号列と受信符号列との間でE個(N個)の符号が完全に合致したことになり、当該合致数Eに対応するタイミングに基づいて正確な日時が取得される。
【0049】
誤同定の確率が十分に小さくなったと判定するための基準合致数Eth(基準照合回数)は、電子時計1に要求される誤同定の確率の上限値などに基づいて定められる。想定符号列と同一の符号列が想定外の位置に出現する確率(出現確率)、即ち、受信符号の配列との合致確率は、想定符号列が短いほど上がる。一方で、想定符号列が長くなるほど、必要な受信時間が長くなる。本実施形態の電子時計1では、各二値符号における「0」、「1」の出現確率が均等に1/2であると単純化して、電子時計1の製品寿命内における日時データの想定受信回数や頻度に比して、想定符号列の出現回数や合致確率が十分に小さくなるように当該出現回数や合致確率の基準値を定めて想定符号列の長さを設定することとする。
【0050】
即ち、ある一つのNビット符号列の出現確率は、(1/2)
Nとなるので、この出現確率が十分小さい符号列長であれば良い。例えば、出現確率を10
−8未満とするためには、N≧27となり、出現確率を10
−6未満とするためには、N≧20となる。電子時計1の製品寿命が20年であって1日に6回受信動作が行われるとすると、想定受信回数は、43830回となるので、N=20の場合、製品寿命の間に一度でも誤同定が生じる確率が約4.2%となり、N=27の場合、誤同定が生じる確率が約0.033%となる。
この出現確率の基準値は、予め設定されていても良いし、操作部49へのユーザの設定入力操作に基づいて直接又は間接的に(例えば、「厳しく」、「普通」、「緩く」などの表現に対応付けられて各々異なる基準値が設定されても良い)設定可能であっても良い。
【0051】
図4は、本実施形態の電子時計1における日時取得処理のホストCPU41による制御手順を示すフローチャートである。
この日時取得処理は、ユーザによる操作部49への実行命令の入力操作が検出されるか、又は予め定められた受信時刻や受信タイミングなどの条件が満たされた場合に起動される。
【0052】
日時取得処理が開始されると、ホストCPU41は、衛星電波受信処理部60を起動する(ステップS101)。また、ホストCPU41は、衛星電波受信処理部60に対し、初期データとして取得対象が日時情報であることを示す設定及び計時回路46の計数する日時の情報を送信する(ステップS102)。この日時情報には、前回計時回路46の日時を修正してからの経過時間に基づくずれの最大値の情報が含まれる。それから、衛星電波受信処理部60からのデータ出力を待ち受ける。なお、この待ち受け中に、ホストCPU41は、表示部47に受信中である旨を示す表示を行わせても良い。
【0053】
ホストCPU41は、衛星電波受信処理部60からの信号を待ち受けて、日時データを取得する(ステップS103)。それから、ホストCPU41は、衛星電波受信処理部60を停止させると共に(ステップS104)、計時回路46の計数する日時を修正する(ステップS105)。また、ホストCPU41は、RAM43に記憶された受信履歴を更新する(ステップS106)。そして、ホストCPU41は、日時取得処理を終了する。
【0054】
図5は、本実施形態の電子時計1における日時情報受信処理のモジュールCPU61による制御手順を示すフローチャートである。
この日時情報受信処理は、ホストCPU41により衛星電波受信処理部60が起動され、ホストCPU41からステップS102の処理で出力された取得対象情報が日時情報である場合に起動される。
【0055】
日時情報受信処理が起動されると、モジュールCPU61は、メモリ領域の確保や割り当てなどの初期設定や動作チェックを行う(ステップS201)。モジュールCPU61は、ホストCPU41からステップS102の処理で出力された日時情報を取得して、取得されたUTC日時をGPS日時に換算し、また、誤差情報に基づいて正確な日時の範囲を推測する(ステップS202)。
【0056】
モジュールCPU61は、少なくとも推測された正確な日時の範囲で受信されると想定される符号を全て含む範囲の想定可否フラグp(i)の配列及び想定符号列c(i)を生成する(ステップS203)。モジュールCPU61は、GPS衛星からの電波受信を開始して(ステップS204)、受信可能なGPS衛星からの電波を捕捉する(ステップS205)。モジュールCPU61は、各GPS衛星のC/Aコードに対してそれぞれ受信電波から得られた信号の位相をずらしながら適用して逆スペクトラム拡散を試みることで、GPS衛星からの信号を検出、捕捉する。
【0057】
GPS衛星からの信号が捕捉されると、モジュールCPU61は、当該GPS衛星を捕捉された位相で追尾しながら受信データの各符号の同定を開始する(ステップS206)。また、モジュールCPU61は、カウント数kに初期値「0」を設定する。モジュールCPU61は、ステップS203の処理で想定符号列c(i)及び想定可否フラグp(i)が生成されたタイミングと当該符号の同定が実際に開始されたタイミングとのずれに基づいて、想定符号列の補正を行う(ステップS207)。
【0058】
モジュールCPU61は、1つの符号が同定されるごとに当該符号を取得する(ステップS208)。モジュールCPU61は、パターン照合処理を呼び出して実行し(ステップS209)、次いで、信頼性判定処理を呼び出して実行する(ステップS210)。モジュールCPU61は、ステップS210の処理で得られた判定結果により、信頼性がOKであるか否かを判別する(ステップS211)。OKではないと判別された場合には(ステップS211で“NO”)、モジュールCPU61は、GPS衛星からの電波受信を開始してからタイムアウト時間が経過したか否かを判別する(ステップS212)。経過したと判別された場合には(ステップS212で“YES”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS216に移行する。経過していないと判別された場合には(ステップS212で“NO”)、モジュールCPU61は、配列番号i≧1について、それぞれ想定符号列c(i)を想定符号列c(i−1)とし、また、想定可否フラグp(i)を想定可否フラグp(i−1)とすることで配列を1ビットずつずらす。また、モジュールCPU61は、必要に応じて想定符号列c(i)及び想定可否フラグp(i)を追加生成する(ステップS213)。それから、モジュールCPU61の処理は、ステップS208に戻る。
【0059】
ステップS211の判別処理で、信頼性OKであると判別された場合には(ステップS211で“YES”)、モジュールCPU61は、信頼性OKと判別された符号配列のタイミングと想定符号列が示す日時とに基づいて正確なGPS日時を取得し、更に、当該取得されたGPS日時をUTC日時に変換して、そのタイミングを設定する(ステップS214)。モジュールCPU61は、設定されたタイミングに合わせて日時情報をホストCPU41に出力する(ステップS215)。それから、モジュールCPU61の処理は、ステップS216に移行する。
【0060】
ステップS216の処理に移行すると、モジュールCPU61は、GPS衛星からの電波受信を終了する(ステップS216)。そして、モジュールCPU61は、日時情報受信処理を終了する。
【0061】
図6は、日時情報受信処理のステップS209で呼び出されるパターン照合処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0062】
パターン照合処理が呼び出されると、モジュールCPU61は、カウント数kに1を加算する(ステップS801)。モジュールCPU61は、配列番号iを初期値である「0」に設定し、また、照合される対象となる符号(照合符号)を想定符号c(i)に設定する(ステップS802)。
【0063】
モジュールCPU61は、想定可否フラグp(i)を参照して、想定符号c(i)が想定可能な符号であるか否かを判別する(ステップS803)。想定可能ではないと判別された場合には(ステップS803で“NO”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS808に移行する。
【0064】
想定符号c(i)が想定可能な符号であると判別された場合(ステップS803で“YES”)、モジュールCPU61は、照合数N(i)に「1」を加算し(ステップS804)、取得されている受信符号rと照合符号、即ち、想定符号c(i)とが等しいか否かを判別する(ステップS806)。等しくないと判別された場合には(ステップS806で“NO”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS808に移行する。
【0065】
受信符号rと照合符号とが等しいと判別された場合には(ステップS806で“YES”)、モジュールCPU61は、合致数E(i)に「1」を加算する(ステップS807)。それから、モジュールCPU61の処理は、ステップS808に移行する。
【0066】
ステップS808の処理に移行すると、モジュールCPU61は、配列番号iが100dt以上であるか否かを判別する(ステップS808)。即ち、モジュールCPU61は、想定符号c(100dt)まで比較照合が行われたか否かを判別する。配列番号iが100dt以上ではない、即ち、照合対象範囲の全てで比較照合が行われていないと判別された場合には(ステップS808で“NO”)、モジュールCPU61は、配列番号iに「1」を加算して、想定符号c(i)を照合符号として設定する(ステップS809)。それから、モジュールCPU61は、処理をステップS803に戻す。配列番号iが100dt以上である、即ち、想定符号c(100dt)までの照合対象範囲全てで比較照合が行われたと判別された場合には(ステップS808で“YES”)、モジュールCPU61は、パターン照合処理を終了して処理を日時情報受信処理に戻す。
【0067】
図7は、日時情報受信処理のステップS210で呼び出される信頼性判定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0068】
信頼性判定処理が呼び出されると、モジュールCPU61は、合致数E(i)の中で最大のものを最大合致数Emaxとして抽出する(ステップS901)。モジュールCPU61は、最大合致数Emaxが基準合致数Eth(ここでは、26)より大きいか(即ち27以上か)否かを判別する(ステップS902)。基準合致数Ethより大きくないと判別された場合には(ステップS902で“NO”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS906に移行する。
【0069】
最大合致数Emaxが基準合致数Ethより大きいと判別された場合(ステップS902で“YES”)、モジュールCPU61は、当該最大合致数Emaxに対応する配列番号iの照合数N(i)を取得する(ステップS903)。モジュールCPU61は、最大合致数Emaxと取得された照合数N(i)とが等しいか否かを判別する(ステップS904)。等しいと判別された場合には(ステップS904で“YES”)、モジュールCPU61は、信頼性OKであるとして(ステップS908)、信頼性判定処理を終了し、処理を日時情報受信処理に戻す。
【0070】
最大合致数Emaxと照合数N(i)とが等しくないと判別された場合には(ステップS904で“NO”)、モジュールCPU61は、当該最大合致数Emaxに対応する合致数E(i)と取得された照合数N(i)とをリセットして「0」に戻し、それから、処理をステップS906に移行させる。
【0071】
ステップS902又はステップS905の処理からステップS906の処理に移行すると、モジュールCPU61は、カウント数kを300(即ち、1サブフレーム分の符号数)で除した剰余が「0」であるか否かを判別する(ステップS906)。「0」であると判別された場合には(ステップS906で“YES”)、モジュールCPU61は、全ての配列番号iに対する照合数N(i)及び合致数E(i)を初期化して「0」に戻す(ステップS907)。それから、モジュールCPU61は、信頼性NGであるとする(ステップS909)。そして、モジュールCPU61は、信頼性判定処理を終了し、処理を日時情報受信処理に戻す。「0」でないと判別された場合には(ステップS906で“NO”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS909に移行する。
【0072】
以上のように、本実施形態の衛星電波受信処理部60は、測位衛星からの電波を受信して復調した信号の各受信符号を同定する受信手段としてのRF部64、ベースバンド変換部65及び捕捉追尾部66と、モジュールCPU61と、を備える。モジュールCPU61は、照合手段として、受信符号の受信タイミングとして計時回路46から取得された現在日時に対して設定される最大ずれ幅内での受信が想定される想定符号と同定された受信符号とを照合し、照合結果に係る情報を現在日時からのずれ量と対応付けて取得し、ずれ量検出手段として、複数の受信符号に対する照合結果が所定の合致条件を満たすずれ量を検出し、日時取得手段として、当該合致条件を満たすずれ量に基づいて日時情報を取得する。
これにより、電波の受信中に復号して日時情報を取得する動作が不要になるので、受信中の処理が簡素化されて負荷を分散させ、ピークを抑えることが出来る。また、受信開始から速やかに正確な日時情報を取得することが出来る。
【0073】
また、計時回路46の計数する日時に想定されるずれの範囲内であれば、サブフレームデータとの受信タイミングのずれにより正確な符号列の検出に失敗する可能性を排除出来るので、動作開始タイミングによらず容易且つより確実に日時情報を取得することが出来る。
【0074】
また、モジュールCPU61は、想定符号列生成手段として、計時回路46の計数する日時に対して見積もられる最大ずれ幅内の想定符号を含む想定符号列と、当該想定符号列内において想定符号と想定されなかった符号とを識別する想定可否フラグとを生成する。そして、モジュールCPU61は、照合手段として、想定可否フラグに基づいて照合可能な想定符号と受信符号とを照合する。
このように、想定符号列に含まれる照合不能な符号に対しては、単に照合をスキップするだけで良いので、単純なループ処理で正確な日時に対応するずれ量を検出することが出来る。また、最大ずれ幅内のずれ量に対して並列に照合が行われるので、受信開始タイミングの影響を受けづらくなる。
【0075】
また、モジュールCPU61は、照合手段として、受信手段(RF部64、ベースバンド変換部65及び捕捉追尾部66)により一の受信符号が新たに同定されるごとに、この一の受信符号の受信日時に対する最大ずれ幅内の想定符号と、当該一の受信符号とを照合する。このようにリアルタイムで一つの受信符号ずつ照合を行っていくことで、正確な日時に対応するずれ量が遅滞なく検出されて速やかに現在日時を出力することが出来る。
【0076】
また、モジュールCPU61は、最大ずれ幅設定手段として、現在日時を計数する計時回路46の当該現在日時が直近に修正されてからの経過時間に基づいて最大ずれ幅を設定するので、容易且つ適切に最大ずれ幅を設定し、必要以上に広いずれ幅の設定で処理内容を増やさない。
【0077】
また、同一のずれ量に係る想定符号と受信符号との間での照合において、基準合致数Eth以上連続して合致することで、正確な日時と現在日時とのずれ量を同定する。このように、同定される対象のずれ量に係る配列番号iでの合致数E(i)が選択的に増加するので、容易に適切なずれ量が同定される。
【0078】
また、基準合致数Ethは、当該基準合致数Ethの受信符号が連続して想定符号と合致する合致確率が、予め定められた基準値、例えば、10
−8未満となるように定められる。
この基準値が電子時計に要求される精度や製品寿命と、誤同定の発生頻度との対応関係に応じて定められることで、電子時計1を要求精度の範囲で容易且つ適切に正確な日時表示に保つことが出来る。
【0079】
また、各二値符号の出現確率をそれぞれ1/2とする、即ち、想定符号との合致確率が一回の照合当たり1/2であるとして求められることで、容易且つ概ね的確に電子時計1に求められる精度に沿った電力消費量や所要時間で正確な日時情報の取得を行うことが出来る。
【0080】
また、本実施形態の電子時計1は、上述の衛星電波受信処理部60と、現在日時を計数する計時回路46と、日時取得手段としての衛星電波受信処理部60により取得された日時により計時回路46の計数する日時を修正する日時修正手段としてのホストCPU41と、計時回路46により計数された日時を表示する表示部47などを備える。
従って、電力消費に係る制限の厳しい電子時計1、特に、腕時計などの軽量で携帯される電子時計において、負荷を抑えつつ適切な消費電力と所要時間で正確な日時を取得することが出来る。
【0081】
また、上述のモジュールCPU61による日時情報の取得方法により、測位衛星からの電波を受信可能な衛星電波受信装置において容易且つより確実に効率良く日時情報を取得することが出来る。
【0082】
また、上述の手順で日時情報を取得する処理を行うプログラム631を、受信手段としてのRF部64、ベースバンド変換部65及び捕捉追尾部66を備えたコンピュータにインストールして実行することで、当該コンピュータを備える各種電子機器において容易且つより確実に効率良く日時情報を取得することが出来る。
【0083】
[変形例]
次に、電子時計1で実行される日時情報受信処理の変形例について説明する。
本変形例の日時情報受信処理では、想定符号列と受信符号列との照合の際に、完全一致だけではなく、少数のエラーを含む不完全一致であっても、誤同定の確率が十分に抑えられる範囲で信頼性OKとすることで、測位衛星からの電波の受信強度が低く、S/N比(SNR)が低い場合であっても日時情報を取得可能とする。
【0084】
この電子時計1では、不完全な一致である場合に誤同定の確率が低く抑えられると判定する条件(不一致許容条件)は、受信符号列に対する各位相ずれを伴う想定符号列との不一致数(不一致符号数)の最小値(最小不一致数)に係る出現確率と、二番目に小さい不一致数(次点不一致数)に係る出現確率とに基づいて定められる。各符号における「0」と「1」の出現確率をそれぞれ1/2とすると、出現確率Pは、照合数N及び不一致数Eにより、P=
NC
E/2
Nで表すことが出来る。例えば、44ビット長の想定符号列との照合時に3ビットの不一致を伴う符号配列の出現確率は、
44C
3/2
44=7.53×10
−10である。また、28ビット長の想定符号列との照合時に1ビットの不一致を伴う符号配列の出現確率は、
28C
1/2
28=1.04×10
−7である。
なお、不一致数の最小値と合致数の最大値とは、確率上等価である。従って、後述のように、最大の合致数に係る出現確率と二番目に大きい合致数に係る出現確率とに基づいて行われる処理は、上述の処理と違いがなく、同じ結果が得られる。
【0085】
ここで、上述のように、最小不一致数に係る出現確率のみを基準として誤同定の可能性を排除しても良い。しかしながら、不完全一致の場合には、実際の受信符号列中で偶然に想定符号列に類似した符号列が出現する可能性も増加するので、このような類似符号列の出現が排除出来る条件設定がより好ましい。例えば、TOW−Countが0(TOW−Countの全ての符号が「0」)付近の場合や、TOW−Countの略全ての符号が「1」の場合に、これらの符号列を想定符号列の一部又は全部として用いると、想定符号列と受信符号列とが僅かな位相ずれの場合にもこれらの重複部分では符号が一致する。また、TOW−Countなどが周期的な符号列の場合(例えば、「0」と「1」が交互に配列されている場合など)には、当該周期分の位相ずれでは、符号が一致する。従って、この場合には、通常の位相ずれの状態と比較して、不一致数が小さくなり、ノイズ(電波受信強度)などによって誤同定が生じる確率が上昇する。
【0086】
先ず、計時回路46の歩度に基づいて見積もられた日時の最大ずれ量に応じて設定された想定符号列の位相ずれ設定範囲内でそれぞれサブフレーム1周期分の長さ(300ビット)に亘って各々照合がなされる。それから、当該位相ずれ設定範囲内で最小の不一致数である最小不一致数Ebminと二番目に小さい不一致数である次点不一致数Ebmin2とを用い、最小不一致数Ebminに係る出現確率P1の次点不一致数Ebmin2に係る出現確率P2に対する割合を危険度Pdとして算出する。この危険度Pd=P1/P2が所定の基準値以下である(出現確率P1が出現確率P2に対して所定の割合以下である)場合に、誤同定の確率が十分に小さいと判断される。最小不一致数Ebmin及び次点不一致数Ebmin2の代わりに最大合致数に係る出現確率及び二番目に大きい合致数である次点合致数に係る出現確率が用いられても同一の結果が得られる。
【0087】
危険度Pdと比較される基準値Pmは、製品寿命内の想定受信回数と製品に要求される精度とに応じて適切に定められれば良く、ここでは、例えば、Pm=10
−8とされる。
【0088】
この場合、上述のように、想定符号列の位相をずらしてもあまり不完全一致数が増加しない場合には、想定符号列と完全に一致する受信符号列が取得されていた場合(不一致数が「0」)であっても合致タイミングと判定されない場合が生じ得る。そこで、不一致数が「0」の場合には、その出現確率P0を「0」として危険度Pdを算出することで、危険度Pdが基準値Pm以下となるようにすることが出来る。
【0089】
本実施形態の電子時計1では、SNRに応じて受信状態が良好な場合には上述の完全一致による信頼性判定を行い、受信状態が良好ではない場合には、この不完全な一致の場合の誤同定回避に係る信頼性の判定を行う。また、完全一致による信頼性判定で所定時間(上限照合時間)、例えば、1サブフレーム分の6秒が経過しても信頼性OKとならない場合には、不完全一致における誤同定回避に係る信頼性の判定に移行する。
【0090】
図8は、本変形例の日時情報受信処理で呼び出されるパターン照合処理の制御手順を示すフローチャートである。
このパターン照合処理は、
図6に示した上記実施形態のパターン照合処理に対してステップS805、S806aの処理が追加され、ステップS807の処理がステップS807aの処理に置き換えられた点を除き同一であり、同一の処理内容については詳しい説明を省略する。
【0091】
ステップS804の処理で照合数N(i)が加算された後、モジュールCPU61は、符号同定が開始されたタイミング付近における受信電波のSNR(信号指標値)が所定の強度基準値Sth未満であるか否かを判別する(ステップS805)。強度基準値Sthは、二値符号の同定アルゴリズムなどに応じて同定にミスが生じ得るレベルに基づいて定められ、ここでは、例えば、30dBなどに定められる。
【0092】
SNRが強度基準値Sth未満ではないと判別された場合には(ステップS805で“NO”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS806に移行する。モジュールCPU61は、受信符号rと想定符号c(i)とが合致するか否かを判別する(ステップS806)。合致すると判別された場合には(ステップS806で“YES”)、モジュールCPU61は、加算値Eb(i)に「1」を加算し(ステップS807a)、それから、処理をステップS808に移行させる。合致しないと判別された場合には(ステップS806で“NO”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS808に移行する。
【0093】
一方、ステップS805の判別処理で、SNRが強度基準値Sth未満であると判別された場合には(ステップS805で“YES”)、モジュールCPU61は、受信符号rと想定符号c(i)とが合致しないか否かを判別する(ステップS806a)。そして、合致しないと判別された場合には(ステップS806aで“YES”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS807aに移行し、合致すると判別された場合には(ステップS806aで“NO”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS808に移行する。
【0094】
即ち、初回のSNRが強度基準値Sth以上の場合には、上記実施形態と同様に受信符号rと想定符号c(i)との一致を検出して加算するのに対し、初回SNRが強度基準値Sth未満の場合には、受信符号rと想定符号c(i)との不一致を検出して加算する。
【0095】
図9及び
図10は、変形例の日時情報受信処理で呼び出される信頼性判定処理の制御手順を示すフローチャートである。この信頼性判定処理は、
図7で示した信頼性判定処理に対して、ステップS911、S912の処理、ステップS921〜S926の各処理、及びステップS931〜S934の処理が追加され、ステップS905〜S907の処理が削除されている。その他の同一の処理内容については、詳しい説明を省略する。
【0096】
信頼性判定処理が呼び出されると、モジュールCPU61は、初回の符号同定時におけるSNRが強度基準値Sth未満であるか否かを判別する(ステップS911)。強度基準値Sth未満であると判別された場合には(ステップS911で“YES”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS931に移行する。
【0097】
強度基準値Sth未満ではないと判別された場合には(ステップS911で“NO”)、モジュールCPU61は、カウント数kが300未満であるか否かを判別する(ステップS912)。300未満ではないと判別された場合には(ステップS912で“NO”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS921に移行する。
【0098】
カウント数kが300未満であると判別された場合には(ステップS912で“YES”)、モジュールCPU61の処理は、ステップS901に移行する。その後、ステップS902の判別処理で“NO”に分岐した場合、及びステップS904の判別処理で“NO”に分岐した場合、モジュールCPU61の処理は、ステップS909に移行する。
なお、本変形例では、ステップS905の処理に係る信頼性NGの加算値Eb(i)及び対応する照合数N(i)がリセットされないので、次回以降の信頼性判定処理におけるステップS901の処理で再度同一の加算値Eb(i)が最大値Ebmaxとして抽出され得る。即ち、正確な位相に対応する加算値Eb(i)は、この最大値Ebmaxの値を超える必要があるので、事実上、基準合致数Ethが初期値(ここでは27)より大きく変更されたのと同等になる。
【0099】
ステップS912の判別処理で“NO”に分岐した場合、モジュールCPU61は、
図10に示すように、カウント数kを300で除した剰余が「0」であるか否かを判別する(ステップS921)。剰余が「0」ではないと判別された場合には(ステップS921で“NO”)、モジュールCPU61は、信頼性NGとして(ステップS927)、信頼性判定処理を終了し、処理を日時情報受信処理に戻す。
【0100】
剰余が「0」であると判別された場合(ステップS921で“YES”)、モジュールCPU61は、得られている加算値Eb(i)の中から最大加算値Ebmax及び2番目に大きい次点加算値Ebmax2を抽出する(ステップS922)。また、モジュールCPU61は、これら最大加算値Ebmax及び次点加算値Ebmax2となる加算値Eb(i1)、Eb(i2)に応じた照合数N(i1)、N(i2)を取得する(ステップS923)。
【0101】
モジュールCPU61は、最大加算値Ebmax及び照合数N(i1)に基づいて出現確率P1を算出し、次点加算値Ebmax2及び照合数N(i2)に基づいて出現確率P2を算出する。モジュールCPU61は、これら出現確率P1、P2から危険度Pd=P1/P2を算出する(ステップS924)。それから、モジュールCPU61の処理は、ステップS925に移行する。
【0102】
一方、ステップS911の判別処理で“YES”に分岐した場合、モジュールCPU61は、カウント数kを300で除した剰余が「0」であるか否かを判別する(ステップS931)。剰余が「0」ではないと判別された場合には(ステップS931で“NO”)、モジュールCPU61は、信頼性NGとして(ステップS927)、信頼性判定処理を終了し、処理を日時情報受信処理に戻す。
【0103】
剰余が「0」であると判別された場合(ステップS931で“YES”)、モジュールCPU61は、得られている加算値Eb(i)の中から最小加算値Ebmin及び2番目に小さい次点加算値Ebmin2を抽出する(ステップS932)。また、モジュールCPU61は、これら最小加算値Ebmin及び次点加算値Ebmin2となる加算値Eb(i1)、Eb(i2)に応じた照合数N(i1)、N(i2)を取得する(ステップS933)。
【0104】
モジュールCPU61は、最小加算値Ebmin及び照合数N(i1)に基づいて出現確率P1を算出し、次点加算値Ebmin2及び照合数N(i2)に基づいて出現確率P2を算出する。モジュールCPU61は、これら出現確率P1、P2から危険度Pd=P1/P2を算出する(ステップS934)。それから、モジュールCPU61の処理は、ステップS925に移行する。
【0105】
ステップS925の処理に移行すると、モジュールCPU61は、危険度Pdの対数log(Pd)が−8以下であるか否かを判別する(ステップS925)。−8以下であると判別された場合には(ステップS925で“YES”)、モジュールCPU61は、信頼性OKとして(ステップS926)、信頼性判定処理を終了し、処理を日時情報受信処理に戻す。−8以下ではないと判別された場合には(ステップS925で“NO”)、モジュールCPU61は、信頼性NGとして(ステップS927)、信頼性判定処理を終了し、処理を日時情報受信処理に戻す。
【0106】
以上のように、変形例の日時情報受信処理では、同一のずれ量に係る想定符号と受信符号との間での照合回数において、不一致となる符号数が、想定外の符号列部分を誤同定する確率を低く抑えられると判定するための所定の不一致許容条件を満たす場合に当該条件を満たすずれ量を正確な日時に対するずれ量として同定する。従って、電波受信強度が弱かったり、ノイズが大きかったりなどでSNRが低く、全ての受信符号を正確に同定するのが難しい場合であっても電波受信時間を大きく増加させずに効率良く正確な日時情報を取得しやすい。これにより、電力消費の増大を抑えることが出来る。
【0107】
また、受信手段としての捕捉追尾部66は、符号の同定開始時といった所定のタイミングで測位衛星からの受信電波のSNRを取得し、モジュールCPU61は、ずれ量検出手段として、SNRに応じてずれ量の信頼性OK判定基準を変更する。これにより、受信状況の良い場合に受信時間を不必要に伸ばしたり、受信状況が悪い場合に無理に厳しい基準で判定を行ったりというような状況を避けて柔軟且つ的確に日時情報を取得することが出来る。
【0108】
また、モジュールCPU61は、ずれ量検出手段として、SNRが所定の基準値以上の場合には、同一のずれ量に係る想定符号と受信符号との間での照合において、の基準合致数Eth以上連続して合致することを信頼性OKの判定条件とし、SNRが当該基準値よりも低い場合には、同一のずれ量に係る想定符号と受信符号との間での照合回数において不一致となる符号数の割合が上述の不一致許容条件を満たすことを信頼性OKの判定条件とする。
従って、受信状況が良い場合には、完全一致の検出で速やかに日時情報を取得することが出来、受信状況があまり良くない場合には、不完全の一致であっても確率的に誤同定の可能性が十分低ければ日時の取得を可能とすることで、適切な判定基準に応じた受信時間や電力消費量での正確な日時情報の取得が可能となる。
【0109】
また、S/N比(SNR)を用いて完全一致で日時情報を取得するか否かを決定するので、容易且つ適切に各符号の誤同定の発生可能性に応じて適切な日時情報の取得方法を選択するので、上述のように柔軟に適切な電力消費量や受信時間で日時の取得が行われる。
【0110】
また、モジュールCPU61は、照合手段として、所定の上限照合時間(例えば、1サブフレーム分6秒)以内に信頼性OKとなるための条件を満たすずれ量が検出されなかった場合には、当該所定の合致条件を変更する。
即ち、当初は受信状況が良かったが、途中でビルの陰などで急激に状況が悪くなった又は一時的に状況が悪くなった場合などで、完全一致での検出が適切ではない場合などに、不必要に受信時間を延長して同じ判定条件で判定しようとせずに柔軟に判定条件を変更することで、効率良く正確な日時を取得することが出来る。
【0111】
また、計時回路46の計数する日時に対する最大ずれ幅内のずれ量ごとに所定回数(ここでは、サブフレーム1周期分300ビット中に含まれる想定符号の数と同一回数)ずつ実施された照合において、最も小さい不一致符号数の出現確率P1が、二番目に小さい不一致符号数の出現確率P2に比して所定の割合以下となる、即ち、危険度Pd=P1/P2が所定の基準値Pm以下の場合に、想定外の符号列を誤同定する確率を低く抑えられると判定するための上記不一致許容条件を満たして信頼性OKであると判定する。
従って、誤同定を生じやすい受信符号列が実際に存在する場合でも、当該誤同定を生じやすい受信符号列と正しい受信符号列との混同を確実に避けて、正確な日時情報を取得することが出来る。
【0112】
また、出現確率P1、P2は、全ての符号において二値がそれぞれ1/2の確率で出現するものとして求められるので、計算を複雑化して処理負荷を上げたり処理時間を余計に必要とさせたりせず、簡便な処理で容易且つ概ね正確に誤同定の可能性を見積もりながら正確な日時情報を取得することが出来る。
【0113】
また、上述の不一致となる符号数の数に基づく信頼性判定は、GPS衛星の航法メッセージに従ってサブフレームの送信周期である6秒ごとに行われるので、受信を開始したタイミングによらず、各ずれ量で照合数を揃えて適切に信頼性の判定を行うことが出来る。
【0114】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、何れかのタイミングで信頼性OKが出るまで現在日時から最大ずれ幅の範囲内で全て照合を行わせることとしたが、不一致数と一致数がほぼ等しい場合など、明らかに異なるずれ量のものについては、中途で照合を中止させても良い。
【0115】
また、上記実施の形態では、1つの符号が同定されるごとに当該符号との照合が行われたが、これに限られない。例えば、基準合致数Eth程度の符号が同定されてからまとめて照合が行われても良く、また、その後所定の複数の符号が同定されてから当該複数の符号に対してまとめて照合が行われても良い。
【0116】
また、上記実施の形態では、最大ずれ幅を計数されている日時に対して前後均等に定めたが、ずれに方向がある場合には、当該ずれを考慮して最大ずれ幅を定めても良い。また、単純に直近の日時修正からの経過時間からだけではなく、温度条件などに応じて最大ずれ幅を見積もっても良い。或いは、反対に、前回の受信から6日以内であれば一律に±3秒の最大ずれ幅を設定するというようなより単純な処理を行っても良い。
【0117】
また、上記実施の形態では、モジュールCPU61の処理により照合数N(i)及び合致数E(i)の計数を行ったが、照合数N(i)及び合致数E(i)の計数に論理回路を用いることも出来る。
【0118】
また、上記実施の形態において、完全一致の場合のみ信頼性OKとする場合、変形例と同様に、
図7のステップS905の処理を省略しても良い。或いは、合致数E(i)は、連続して想定符号列と合致した場合のみ加算されて、一つでも受信符号rと照合符号とが合致しなかった場合には、その時点で合致数E(i)を「0」に戻すこととしても良い。これにより、照合数N(i)を計数、保持しなくて良いことになる。
【0119】
また、上記実施の形態では、1サブフレーム分の300符号が照合されても信頼性OKとなる配列番号iが得られない場合に、リセットさせたり完全一致による判断から誤同定を含む信頼性判断に移行させたりしたが、1サブフレーム分に限られない。例えば、全ての配列番号iに対して照合数N(i)が所定の数、例えば、基準合致数Eth以上となった時点で信頼性判定方法を変更させても良い。
【0120】
また、信頼性判定の選択条件に用いられるS/N比に代えて、信号指標値として受信強度自体など、他のものが用いられても良い。
【0121】
或いは、信頼性判定方法の選択や切替タイミングの設定は、ユーザの操作部49への入力操作などにより手動でなされても良い。また、想定符号列内に確実に一致するとは断定出来ない符号、例えば、直近に受信されてテレメトリメッセージなどを含む場合には、完全一致とせずに初めから誤同定を含む信頼性判断を行っても良い。また、この場合、誤同定されてはならない箇所を定めた条件を追加しても良い。
【0122】
また、上記実施の形態では、前回衛星電波受信手段による日時修正からの経過時間に基いて最大ずれ幅を見積もったが、他の修正方法、例えば、長波長帯の標準電波による日時修正が併用可能な場合には、当該日時修正も含めた直近の日時修正からの経過時間に基づいて見積もることが出来る。
【0123】
また、変形例の信頼性判定処理では、最大合致数や最小不一致数を用いた信頼性の判定をサブフレーム周期ごとに行うこととしたが、各ずれ量のいずれにおいても必要な数の照合数N(i)に達した場合には、サブフレーム一周期分のデータが取得される前に信頼性判別を行っても良い。この場合、照合数N(i)が全てのずれ量に対して同一でなくても良い。
【0124】
また、上記実施の形態では、GPS衛星からの受信電波を例に挙げて説明したが、その他の測位衛星、例えば、GLONASSやGalileoからの受信電波を利用しても良い。
【0125】
また、上記実施の形態では、日時情報受信処理においてステップS201〜S203の処理が終了し次第GPS衛星からの電波受信を開始させたが、最大ずれ幅内に想定可能な符号の無い期間にステップS206の処理へ移行することが見込まれる場合には、ステップS204の処理の開始タイミングを調整するなどしても良い。
【0126】
また、上記実施の形態では、衛星電波受信処理部60のモジュールCPU61が計時回路46の計数する日時に基づいて衛星電波の受信及び日時の情報取得に係る動作制御を行ったが、これに限られない。これらの動作制御のうち一部又は全部をホストCPU41が行っても良い。また、衛星電波受信処理部60が別個に計時回路やRTC(Real Time Clock)などを有していても良い。
【0127】
また、上記実施の形態では、各符号の偶然出現確率を1/2としたが、これに限られない。符号の想定位置や、直近の受信状況などに応じて変更されても良い。
【0128】
また、本実施形態の衛星電波受信装置は、専用の電子時計に用いられるものに限られない。各種用途の電子機器に用いられても良い。
【0129】
また、以上の説明では、本発明に係るモジュールCPU61の処理動作に係る日時情報受信処理などの動作処理プログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体として不揮発性メモリからなる記憶部63を例に挙げて説明したが、これに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、HDD(Hard Disk Drive)や、CD−ROMやDVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、動作の内容や手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0131】
[付記]
<請求項1>
衛星からの電波を受信して復調した信号の各受信符号を同定する受信手段と、
前記受信符号の受信タイミングとして取得された現在日時に対して設定される最大ずれ幅内での受信が想定される想定符号と、前記同定された受信符号とを照合し、照合結果に係る情報を前記現在日時からのずれ量と対応付けて取得する照合手段と、
複数の前記受信符号に対する前記照合結果が所定の合致条件を満たす前記ずれ量を検出するずれ量検出手段と、
検出された前記所定の合致条件を満たすずれ量に基づいて日時情報を取得する日時取得手段と、
を備えることを特徴とする衛星電波受信装置。
<請求項2>
前記最大ずれ幅内の想定符号を含む想定符号列と、当該想定符号列内において前記想定符号と想定されなかった符号とを識別する識別情報とを生成する想定符号列生成手段を備え、
前記照合手段は、前記識別情報に基づいて前記想定符号と受信符号とを照合する
ことを特徴とする請求項1記載の衛星電波受信装置。
<請求項3>
前記照合手段は、前記受信手段により一の受信符号が新たに同定されるごとに、前記一の受信符号の受信日時に対する前記最大ずれ幅内の前記想定符号と、当該一の受信符号とを照合することを特徴とする請求項1又は2記載の衛星電波受信装置。
<請求項4>
前記現在日時を計数する計時手段の当該現在日時が直近に修正されてからの経過時間に基づいて前記最大ずれ幅を設定する最大ずれ幅設定手段を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項5>
前記所定の合致条件は、同一のずれ量に係る想定符号と前記受信符号との間での照合回数に対する不一致符号数が所定の不一致許容条件を満たすこととされることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項6>
前記所定の合致条件は、同一のずれ量に係る想定符号と前記受信符号との間での照合において、所定の基準照合回数以上連続して合致することであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項7>
前記所定の基準照合回数は、当該基準照合回数連続して前記想定符号と合致する符号が出現する合致確率が、予め定められた基準値未満となるように定められることを特徴とする請求項6記載の衛星電波受信装置。
<請求項8>
前記合致確率は、一回の照合当たり1/2であるとして求められることを特徴とする請求項7記載の衛星電波受信装置。
<請求項9>
前記受信手段は、所定のタイミングで前記衛星からの電波の受信強度に係る信号指標値を取得し、
前記ずれ量検出手段は、当該信号指標値に応じて前記所定の合致条件を変更することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項10>
前記ずれ量検出手段は、前記信号指標値が所定の強度基準値以上に良好な値の場合には、同一のずれ量に係る想定符号と前記受信符号との間での照合において、所定の基準照合回数以上連続して合致することを前記所定の合致条件とし、
前記信号指標値が前記所定の強度基準値よりも良好ではない値の場合には、同一のずれ量に係る想定符号と前記受信符号との間での照合回数に対する不一致符号数が所定の不一致許容条件を満たすことを前記所定の条件とする
ことを特徴とする請求項9記載の衛星電波受信装置。
<請求項11>
前記信号指標値は、S/N比であることを特徴とする請求項9又は10記載の衛星電波受信装置。
<請求項12>
前記照合手段は、所定の上限照合時間以内に前記所定の合致条件を満たすずれ量が検出されなかった場合には、当該所定の合致条件を変更することを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項13>
前記所定の不一致許容条件は、前記最大ずれ幅内の前記ずれ量ごとに所定回数ずつ実施された照合において、最も小さい不一致符号数の出現確率が、二番目に小さい不一致符号数の出現確率に比して所定の割合以下となることであることを特徴とする請求項5又は10記載の衛星電波受信装置。
<請求項14>
前記出現確率は、全ての符号において二値がそれぞれ1/2の確率で出現するものとして求められることを特徴とする請求項13記載の衛星電波受信装置。
<請求項15>
前記所定の不一致許容条件を満たすか否かの判別は、前記衛星に応じた信号送信フォーマットに従って送信される符号列に係る所定の送信周期ごとに行われることを特徴とする請求項5、10、13、14の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項16>
請求項1〜15の何れか一項に記載の衛星電波受信装置と、
現在日時を計数する計時手段と、
前記日時取得手段により取得された日時により前記計時手段の計数する日時を修正する日時修正手段と、
前記計時手段により計数された日時を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする電子時計。
<請求項17>
衛星からの電波を受信して復調した信号の各受信符号を同定する受信手段を備える衛星電波受信装置の日時情報取得方法であって、
前記受信符号の受信タイミングとして取得された現在日時に対して見積もられる最大ずれ幅内での受信が想定される想定符号と、前記同定された受信符号とを照合し、照合結果に係る情報を前記現在日時からのずれ量と対応付けて取得する照合ステップ、
複数の前記受信符号に対する前記照合結果が所定の合致条件を満たす前記ずれ量を検出するずれ量検出ステップ、
検出された前記ずれ量に基づいて日時情報を取得する日時取得ステップ、
を含むことを特徴とする日時情報取得方法。
<請求項18>
衛星からの電波を受信して復調した信号の各受信符号を同定する受信手段を備える衛星電波受信装置のコンピュータを、
前記受信符号の受信タイミングとして取得された現在日時に対して見積もられる最大ずれ幅内での受信が想定される想定符号と、前記同定された受信符号とを照合し、照合結果に係る情報を前記現在日時からのずれ量と対応付けて取得する照合手段、
複数の前記受信符号に対する前記照合結果が所定の合致条件を満たす前記ずれ量を検出するずれ量検出手段、
検出された前記ずれ量に基づいて日時情報を取得する日時取得手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。