(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X線管と、前記X線管から照射され被検者を通過したX線を検出するX線検出器とを備え、前記被検者の体内に留置されたマーカを含む画像あるいは前記被検者の特定部位を含む画像を収集することにより、前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定するX線透視装置であって、
前記マーカまたは前記特定部位を含む画像を、テンプレート画像として記憶するテンプレート画像記憶部と、
連続して収集される画像に対して、前記テンプレート画像記憶部に記憶されたテンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを行うことにより、連続して収集される画像における前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定するテンプレートマッチング部と、
前記テンプレートマッチング部により特定した前記マーカまたは前記特定部位を含む画像をテンプレート画像として切り出し、前記テンプレート画像記憶部に記憶させるテンプレート切り出し部と、を備え、
前記テンプレートマッチング部は、X線透視により連続して収集される画像に対して、現在の画像と、現在の画像が収集される以前に収集された画像から切り出され、前記テンプレート画像記憶部に記憶されたテンプレート画像とを比較するテンプレートマッチングを、X線透視中に繰り返し実行することを特徴とするX線透視装置。
X線管から照射され被検者を通過したX線をX線検出器により検出し、前記被検者の体内に留置されたマーカを含む画像あるいは前記被検者の特定部位を含む画像を収集することにより、前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定するX線透視方法であって、
前記マーカまたは前記特定部位を含む画像を、第1テンプレート画像として記憶するテンプレート画像記憶工程と、
X線透視により連続して収集される画像に対して、前記第1テンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを行うことにより、連続して収集される画像における前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定する第1テンプレートマッチング工程と、
前記第1テンプレートマッチング工程において特定した前記マーカまたは前記特定部位を含む画像を切り出し、第2テンプレート画像として記憶するテンプレート切り出し工程と、
X線透視により連続して収集される画像に対して、前記第2テンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを行うことにより、前記連続して収集される画像における前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定する第2テンプレートマッチング工程と、を備え、
前記テンプレート切り出し工程と前記第2テンプレートマッチング工程とは、X線透視中に連続して収集される画像に対して繰り返し実行されることを特徴とするX線透視方法。
【背景技術】
【0002】
腫瘍などの患部に対してX線や電子線等の放射線を照射する放射線治療においては、放射線を患部に正確に照射する必要がある。しかしながら、被検者が体を動かしてしまう場合があるばかりではなく、患部自体に動きが生ずる場合がある。例えば、肺の近くの腫瘍は呼吸に基づき大きく移動する。このため、腫瘍のそばに金製のマーカを配置し、このマーカの位置をX線透視装置により検出して、治療放射線の照射を制御する構成を有する放射線治療装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この放射線治療装置においては、第1X線管と第1X線検出器から成る第1X線透視機構と、第2X線管と第2X線検出器から成る第2X線透視機構とを使用して体内に埋め込まれたマーカを検出して透視画像を収集し、第1X線透視機構による二次元の透視画像と第2X線透視機構による二次元の透視画像を利用して三次元の位置情報を得る。そして、連続してX線透視を行うことによって、リアルタイムでマーカの三次元の位置情報を演算することで、移動を伴う部位のマーカを高精度で検出することができ、このマーカの位置情報に基づいて治療放射線の照射を制御することで、腫瘍の動きに応じた高精度の放射線照射を実行することが可能となる。このマーカの位置情報を得るときには、テンプレート画像を利用したテンプレートマッチングが実行される。
【0004】
図11は、従来のテンプレートマッチング動作を示す説明図である。
【0005】
テンプレートマッチングのためには、最初に、マーカMに対応するテンプレートを準備する。この場合においては、マーカMを含む被検者の画像70を撮影する。そして、この画像70からマーカM部分を抽出して、テンプレート画像71を得る。透視時においては、一定のフレームレートで収集した被検者の画像72におけるマーカMが存在する領域73に対して、テンプレート画像71を利用してテンプレートマッチングを行い、マーカMの位置を特定する。
【0006】
このような放射線治療装置において使用されるマーカMは、従来、その形状が球状のものが使用されている。すなわち、一定のフレームレートで収集された被検者の画像72に対して、テンプレート画像71を利用してテンプレートマッチングを実行するときには、球状のマーカMを使用することにより、マーカMをどの方向から撮影しても円形の画像となることから、テンプレート画像として円形のものだけを準備すればよく、テンプレートマッチングを効率的に実行することができるためである。
【0007】
一方、球状のマーカMは、被検者の体内に留置しにくいという問題がある。すなわち、球状のマーカMを使用した場合においては、その形状から、内臓に対して滑りやすく引っ掛かりにくい特性を有することから、一旦、体内に留置しても留置箇所から脱落しやすい。このため、脱落が生じることを予想して、予め多数個のマーカMを体内に留置し、脱落しなかったマーカMを利用することも行われている。しかしながら、この場合には、多数のマーカMを留置するために無駄な費用が発生し、また、留置のための施術時間が長くなることから、被検者に負担をかけるという問題も生ずる。
【0008】
このため、近年、コイル状など、非球形のマーカも提案されている(特許文献2および特許文献3参照)。これらの特許文献2および特許文献3に記載の装置においては、マーカを含む画像を利用してテンプレートマッチングを実行している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載されたように、例えば、コイル状のマーカを使用した場合には、このマーカを被検者の体内に安定して留置することが可能となる。しかしながら、コイル状等の非球形のマーカを使用した場合には、マーカの撮影角度により認識される形状が異なることから、マーカを撮影した画像を利用してテンプレートを作成しても、これをテンプレートマッチングに利用できないという問題が生ずる。
【0011】
これは、患者の腫瘍の領域などの特定部位をマーカのかわりに使用することで、マーカを省略するようにした場合においても、同様に生ずる問題である。
【0012】
また、上述した問題点とは別に、球形のマーカあるいは非球形のマーカのいずれを使用する場合であっても、マーカを含む画像を利用してテンプレート画像を作成する場合においては、被検者の体内構造物である骨部がマーカとともに撮影されたときに、テンプレートマッチングが正確に実行し得ないという問題が生ずる。すなわち、マーカとともに骨部が撮影された場合には、連続して収集される画像毎にマーカのコントラスト等が異なることになり、単一のマーカを使用してテンプレートマッチングを実行しても、マッチングが行えない場合が生ずる。
【0013】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、非球形のマーカを使用した場合や、マーカに変えて患者の特定部位を使用する場合、あるいは、マーカが骨部等の体内構造物と一緒に撮影される場合であっても、テンプレートマッチングによりマーカまたは特定部位を適確に認識することができ、マーカまたは特定部位の位置を正確に特定することが可能なX線透視装置およびX線透視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明では、X線管と、前記X線管から照射され被検者を通過したX線を検出するX線検出器とを備え、前記被検者の体内に留置されたマーカを含む画像あるいは前記被検者の特定部位を含む画像を収集することにより、前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定するX線透視装置であって、前記マーカまたは前記特定部位を含む画像を、テンプレート画像として記憶するテンプレート画像記憶部と、連続して収集される画像に対して、前記テンプレート画像記憶部に記憶されたテンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを行うことにより、連続して収集される画像における前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定するテンプレートマッチング部と、前記テンプレートマッチング部により特定した前記マーカまたは前記特定部位を含む画像をテンプレート画像として切り出し、前記テンプレート画像記憶部に記憶させるテンプレート切り出し部と、を備え、前記テンプレートマッチング部は、
X線透視により連続して収集される画像に対して、
現在の画像と、現在の画像が収集される以前に収集された画像から切り出され、前記テンプレート画像記憶部に記憶されたテンプレート画像とを比較するテンプレートマッチングを
、X線透視中に繰り返し実行する。
【0015】
第2の発明では、前記テンプレートマッチング部は、連続して収集される画像に対して、その画像が収集される直前に収集された画像から切り出されたテンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを実行する。
【0016】
第3の発明では、前記テンプレート画像記憶部には、連続して収集される画像から切り出された複数のテンプレート画像が記憶されており、前記テンプレートマッチング部は、連続して収集される画像に対して、前記テンプレート画像記憶部に記憶された複数のテンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを実行する。
【0017】
第4の発明では、前記テンプレートマッチング部は、連続して収集される画像に対して、前記テンプレート画像記憶部に記憶された複数のテンプレート画像のうち、その画像の収集時期に近い時期に収集された画像から切り出されたテンプレート画像を優先的に利用してテンプレートマッチングを実行する。
【0018】
第5の発明では、X線管から照射され被検者を通過したX線をX線検出器により検出し、前記被検者の体内に留置されたマーカを含む画像あるいは前記被検者の特定部位を含む画像を収集することにより、前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定するX線透視方法であって、前記マーカまたは前記特定部位を含む画像を、第1テンプレート画像として記憶するテンプレート画像記憶工程と、
X線透視により連続して収集される画像に対して、前記第1テンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを行うことにより、連続して収集される画像における前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定する第1テンプレートマッチング工程と、前記第1テンプレートマッチング工程において特定した前記マーカまたは前記特定部位を含む画像を切り出し、第2テンプレート画像として記憶するテンプレート切り出し工程と、
X線透視により連続して収集される画像に対して、前記第2テンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを行うことにより、前記連続して収集される画像における前記マーカまたは前記特定部位の位置を特定する第2テンプレートマッチング工程と、を備え
、前記テンプレート切り出し工程と前記第2テンプレートマッチング工程とは、X線透視中に連続して収集される画像に対して繰り返し実行される。
【0019】
第6の発明では
、前記第2テンプレートマッチング工程においては、連続して収集される画像に対して、その画像が収集される直前に収集された画像から切り出された第2テンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを実行する。
【0020】
第7の発明では
、前記第2テンプレートマッチング工程においては、連続して収集される画像に対して、複数の第2テンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを実行する。
【0021】
第8の発明では、連続して収集される画像に対して、複数の第2テンプレート画像のうち、その画像の収集時期に近い時期に収集された画像から切り出された第2テンプレート画像を優先的に利用してテンプレートマッチングを実行する。
【発明の効果】
【0022】
第1および第5の発明によれば、非球形のマーカを使用した場合や患者の特定部位を使用した場合、あるいは、マーカが体内構造物と一緒に撮影される場合であっても、テンプレートマッチングによりマーカまたは特定部位を適確に認識することができ、マーカまたは特定部位の位置を正確に特定することが可能となる。
【0023】
第2および第6の発明によれば、収集された画像と近似すると考えられる直前に収集された画像から切り出されたテンプレート画像を利用することから、テンプレートマッチングを正確かつ迅速に実行することが可能となる。
【0024】
第3および第7の発明によれば、複数のテンプレート画像を利用することから、テンプレートマッチング時のマッチングミスが生ずる可能性を低減することが可能となる。
【0025】
第4および第8の発明によれば、収集時期が近い時期の画像から切り出されたテンプレート画像を優先して利用することから、テンプレートマッチングを迅速かつ効率的に実行することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係るX線透視装置を適用した放射線治療装置の斜視図である。また、
図2は、放射線治療装置におけるヘッド55およびヘッド支持部54の揺動動作を示す説明図である。
【0028】
この放射線治療装置は、撮影台56上で横たわった被検者57の患部に対してX線や電子線等の放射線を照射して放射線治療を行うためのものであり、治療室の床面51上に設置されたガントリー53と、このガントリー53に対して水平方向を向く軸を中心として揺動するヘッド支持部54と、このヘッド支持部54に支持され、被検者57に向けて放射線を照射するためのヘッド55とを備える。ヘッド支持部54の揺動動作により、ヘッド55は、被検者57の患部に対して、様々な角度から放射線を照射することが可能となる。
【0029】
放射線治療時においては、放射線を患部に正確に照射する必要がある。このため、患部付近には、マーカが設置される。そして、第1X線透視機構と第2X線透視機構とを使用して体内に埋め込まれたマーカを連続的に透視して、第1X線透視機構と第2X線透視機構により得た二次元の透視画像からマーカの三次元の位置情報を演算することで、マーカを高精度で検出する構成となっている。
【0030】
このような透視を実行するためのこの発明に係るX線透視装置は、第1X線管1aと第1X線検出器2aとから成る第1X線透視機構と、第2X線管1bと第2X線検出器2bとから成る第2X線透視機構と、これらの第1X線管1aと第1X線検出器2aとを互いに対向配置される後述する第1透視位置および第2透視位置に移動させるとともに、第2X線管1bと第2X線検出器2bとを互いに対向配置される第1透視位置および第2透視位置に移動させる移動機構とを備える。なお、第1X線検出器2aおよび第2X線検出器2bとしては、例えば、イメージインテンシファイア(I.I.)やフラットパネルディテクタ(FPD)が使用される。
【0031】
第1X線管1aは、X線管用第1台座3aに支持されている。また、第2X線管1bは、X線管用第2台座3bに支持されている。撮影室の床面51に形成された凹部の底面52には、二つの直線部を円弧部を含む連結部により接続した略U字状のX線管用の第1レール21と、このX線管用の第1レール21と同様二つの直線部を円弧部を含む連結部により接続した略U字状のX線管用の第2レール22とが配設されている。これらのX線管用の第1レール21およびX線管用の第2レール22は、互いに平行に配置されている。そして、X線管用第1台座3aおよびX線管用第2台座3bは、これらのX線管用の第1レール21および第2レール22により案内されて、後述する第1透視位置および第2透視位置に移動する。
【0032】
同様に、第1X線検出器2aは、X線検出器用第1台座4aに支持されている。また、第2X線検出器2bは、X線検出器用第2台座4bに支持されている。撮影室の天井からは、二つの直線部を円弧部を含む連結部により接続した略U字状のX線検出器用の第1レール11と、このX線検出器用の第1レール11と同様二つの直線部を円弧部を含む連結部により接続した略U字状のX線検出器用の第2レール12とが吊下されている。これらのX線検出器用の第1レール11およびX線検出器用の第2レール12は、互いに平行に配置されている。そして、X線検出器用第1台座4aおよびX線検出器用第2台座4bは、これらのX線検出器用の第1レール11および第2レール12により案内されて、後述する第1透視位置および第2透視位置に移動する。
【0033】
図3、
図4および
図5は、第1X線管1a、第2X線管1b、第1X線検出器2a、第2X線検出器2bが、各々、第1透視位置および第2透視位置に配置された状態を示す説明図である。
【0034】
このX線透視装置は、予め設定された三つのポジションにおいて、被検者57を互いに異なる二方向から透視する構成を有する。
図3は、第1X線管1a、第2X線管1b、第1X線検出器2a、第2X線検出器2bが、第1のポジションにおいて、被検者57を互いに異なる二方向から透視する状態を示し、
図4は、第1X線管1a、第2X線管1b、第1X線検出器2a、第2X線検出器2bが、第2のポジションにおいて、被検者57を互いに異なる二方向から透視する状態を示し、
図5は、第1X線管1a、第2X線管1b、第1X線検出器2a、第2X線検出器2bが、第3のポジションにおいて、被検者57を互いに異なる二方向から透視する状態を示している。
【0035】
このように、このX線透視装置は、三つのポジションにおいて被検者57を互いに異なる二方向から透視する構成であることから、
図2に示すように、放射線治療装置におけるヘッド55が、被検者57に対して様々な角度から放射線を照射する場合においても、ヘッド55の移動に支障を来すことなくX線透視を実行することが可能となる。そして、このような三つのポジションにおいては、第1X線管1aと第2X線管1b、また、第1X線検出器2aおよび第2X線検出器2bは、予め設定された第1透視位置または第2透視位置のいずれかの一方の位置に配置されることになる。
【0036】
なお、
図3に示す第1のポジションにおいては、第1X線管1aは第1透視位置に、第2X線管1bは第1透視位置に、第1X線検出器2aは第1透視位置に、第2X線検出器2bは第1透視位置に、各々、配置される。
図4に示す第2のポジションにおいては、第1X線管1aは第2透視位置に、第2X線管1bは第1透視位置に、第1X線検出器2aは第2透視位置に、第2X線検出器2bは第1透視位置に、各々、配置される。
図5に示す第3のポジションにおいては、第1X線管1aは第2透視位置に、第2X線管1bは第2透視位置に、第1X線検出器2aは第2透視位置に、第2X線検出器2bは第2透視位置に、各々、配置される。
【0037】
X線管用第1台座3aおよびX線管用第2台座3bが、X線管用の第1レール21および第2レール22により構成される移動経路20に沿って移動することにより、第1X線管1aおよび第2X線管1bが、各々、第1透視位置および第2透視位置に配置される。また、X線検出器用第1台座4aおよびX線検出器用第2台座4bが、X線検出器用の第1レール11および第2レール12により構成される移動経路10に沿って移動することにより、第1X線検出器2aおよび第2X線検出器2bが、各々、第1透視位置および第2透視位置に配置される。
【0038】
図6は、この発明に係るX線透視装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【0039】
このX線透視装置は、装置全体を制御する制御部61を有する。この制御部61は、後述するように、一定時間毎に連続して収集される被検者57の画像に対して、第1テンプレート画像および第2テンプレート画像を利用してテンプレートマッチングを行うことにより、一定時間毎に連続して収集される被検者57の画像におけるマーカまたは腫瘍の位置をリアルタイムで特定するテンプレートマッチング部62を備える。また、この制御部61は、テンプレートマッチング部62により特定したマーカまたは腫瘍を含む画像を第2テンプレート画像として切り出して記憶させるテンプレート切り出し部63を備える。また、この制御部61は、透視画像を表示するための液晶表示パネル等からなる表示部66と接続されている。また、この制御部61は、記憶部64とも接続されている。この記憶部64は、第1テンプレート画像および第2テンプレート画像を記憶するテンプレート画像記憶部65を含む。
【0040】
制御部61は、上述した第1X線管1a、第2X線管1b、第1X線検出器2a、第2X線検出器2bと接続されている。また、この制御部61は、上述したX線管用第1台座3a、X線管用第2台座3b、X線検出器用第1台座4aおよびX線検出器用第2台座4bを駆動するための図示しない駆動部と接続されている。さらに、この制御部61は、
図1に示す放射線治療装置とも接続されている。
【0041】
次に、この発明の特徴部分であるテンプレートマッチング動作について説明する。
図7は、この発明のX線透視装置による第1実施形態に係るテンプレートマッチング動作を示すフローチャートである。また、
図8は、この発明のX線透視装置による第1実施形態に係るテンプレートマッチング動作を示す説明図である。なお、この第1実施形態においては、マーカMとして非球形のものを使用している。
【0042】
テンプレートマッチングを行うためには、最初に、マーカMに対応するテンプレートを作成する。この場合においては、
図3、
図4、
図5に示すいずれかのポジションに第1X線管1a、第2X線管1b、第1X線検出器2a、第2X線検出器2bを配置して、被検者57を撮影することにより、マーカMを含む画像80を取得する(ステップS1)。そして、このマーカMを含む画像80から、マーカM部分を切り出して、第1テンプレート画像85aを得る(ステップS2)。この第1テンプレート画像85aは、
図6に示すテンプレート画像記憶部65に記憶される(ステップS3)。なお、この工程は、
図11に示す従来のテンプレートマッチングと同様である。
【0043】
以上の準備が完了すれば、透視を開始し(ステップS4)、被検者57に対する治療を行う。このときには、この発明に係るX線透視装置によりマーカMの位置を検出し、このマーカMの位置に基づいて、被検者57の患部に対して照射する放射線の位置を調整する。
【0044】
このときには、30fps程度のフレームレートでマーカMを含む領域に対して透視を行う。そして、
図8に示すように、一定時間毎に連続して収集される画像81から、マーカMを含む画像を取得する(ステップS5)。しかる後、
図6に示すテンプレートマッチング部62により、このマーカMを含む画像に対して、テンプレート画像記憶部65に予め記憶された第1テンプレート画像85aを利用してテンプレートマッチングを行う(ステップS6)。
【0045】
なお、画像81は、上述したように、30fps程度のフレームレートで一定時間毎に連続して収集される。透視を実行しているときにこのフレームレートが変更となった場合には、画像81を連続して収集する時間間隔が変更される。
【0046】
最初のテンプレートマッチングが完了すれば、
図6に示すテンプレート切り出し部63により、テンプレートマッチング部62により特定したパターンマッチング後のマーカMを含む画像を第2テンプレート画像85bとして切り出し(ステップS7)、テンプレート画像記憶部65に記憶させる(ステップS8)。
【0047】
治療を継続する場合においては(ステップS9)、ステップS5に戻り、一定時間毎に連続して収集される次の画像82から、マーカMを含む画像を取得する(ステップS5)。しかる後、
図6に示すテンプレートマッチング部62により、このマーカMを含む画像に対して、その直前にテンプレート画像記憶部65に記憶された第2テンプレート画像85bを利用して、テンプレートマッチングを行う(ステップS6)。
【0048】
2回目のテンプレートマッチングが完了すれば、
図6に示すテンプレート切り出し部63により、テンプレートマッチング部62により特定したパターンマッチング後のマーカMを含む画像を、次の第2テンプレート画像として切り出し(ステップS7)、テンプレート画像記憶部65に記憶させる(ステップS8)。次のテンプレートマッチングには、2回目のテンプレートマッチングを実行した後に新たに記憶された第2テンプレート画像が利用される。同様に、3回目のテンプレートマッチングが完了した後には、このテンプレートマッチング後に作成され、記憶された第2テンプレート画像が、次のテンプレートマッチングに使用される。それ以降についても、これらと同様の動作が繰り返して実行される。
【0049】
このような動作を繰り返し、必要な治療が終了すれば(ステップS9)、処理を終了する。
【0050】
なお、上述したステップS5〜ステップS8を繰り返し実行した場合には、第2テンプレート画像が、その繰り返し回数に応じた数だけ作成され、テンプレート画像記憶部65に記憶される。上述した実施形態においては、テンプレート画像記憶部65に記憶される複数の第2テンプレート画像のうち、マーカを含む画像が収集された直前に収集された画像から切り出された第2テンプレート画像を、テンプレートマッチングに利用している。これは、直前に収集されたマーカMの画像は、その直後に収集されたマーカMの画像と、最も類似すると考えられるためである。
【0051】
このとき、他の実施形態として、一定時間毎に連続して収集される画像81、82、83・・・に対して、テンプレート画像記憶部65に記憶される複数の第2テンプレート画像を順次マッチングさせることにより、テンプレートマッチングを実行するようにしてもよい。この場合においては、複数の第2テンプレート画像のいずれかが一定時間毎に収集された画像のマーカMの画像とマッチングする可能性が高いことから、テンプレートマッチング時のマッチングミスが生ずる可能性を低減することが可能となる。
【0052】
このようにテンプレート画像記憶部65に記憶される複数の第2テンプレート画像を順次マッチングさせる場合においては、テンプレート画像記憶部65に記憶された複数の第2テンプレート画像のうち、対象となる画像の収集時期に近い時期に収集された画像から切り出された第2テンプレート画像を優先的に利用してテンプレートマッチングを実行することが好ましい。このような構成を採用することにより、撮影されたマーカMの形状が類似する可能性が高い収集時期が近い時期の画像から切り出されたテンプレート画像を優先して利用することから、テンプレートマッチングを迅速かつ効率的に実行することが可能となる。
【0053】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。
図9は、この発明のX線透視装置による第2実施形態に係るテンプレートマッチング動作を示す説明図である。なお、この実施形態においては、マーカMとして球形のものを使用している。ただし、第1実施形態と同様、非球形のマーカMを使用してもよい。
【0054】
この第2実施形態においては、マーカMに対応するテンプレートを作成するときに、マーカMと、被検者57における体内構造物である骨部Bとを同時に撮影する。この場合においては、
図3、
図4、
図5に示すいずれかのポジションに第1X線管1a、第2X線管1b、第1X線検出器2a、第2X線検出器2bを配置して、被検者57を撮影することにより、マーカMを含む画像90を取得する(ステップS1)。そして、このマーカMを含む画像90から、マーカM部分を切り出して、第1テンプレート画像95aを得る(ステップS2)。この第1テンプレート画像95aは、
図6に示すテンプレート画像記憶部65に記憶される(ステップS3)。
【0055】
以上の準備が完了すれば、透視を開始し(ステップS4)、被検者57に対する治療を行う。このときには、この発明に係るX線透視装置によりマーカMの位置を検出し、このマーカMの位置に基づいて、被検者57の患部に対して照射する放射線の位置を調整する。
【0056】
このときには、30fps程度のフレームレートでマーカMを含む領域に対して透視を行う。そして、
図9に示すように、一定時間毎に連続して収集される画像91から、マーカMと骨部Bとを含む画像を取得する(ステップS5)。しかる後、
図6に示すテンプレートマッチング部62により、このマーカMを含む画像に対して、テンプレート画像記憶部65に予め記憶された第1テンプレート画像95aを利用してテンプレートマッチングを行う(ステップS6)。
【0057】
最初のテンプレートマッチングが完了すれば、
図6に示すテンプレート切り出し部63により、テンプレートマッチング部62により特定したパターンマッチング後のマーカMと骨部Bとを含む画像を第2テンプレート画像95bとして切り出し(ステップS7)、テンプレート画像記憶部65に記憶させる(ステップS8)。
【0058】
治療を継続する場合においては(ステップS9)、ステップS5に戻り、一定時間毎に連続して収集される次の画像92から、マーカMと骨部Bとを含む画像を取得する(ステップS5)。しかる後、
図6に示すテンプレートマッチング部62により、このマーカMと骨部Bとを含む画像に対して、その直前にテンプレート画像記憶部65に記憶された第2テンプレート画像95bを利用して、テンプレートマッチングを行う(ステップS6)。
【0059】
2回目のテンプレートマッチングが完了すれば、
図6に示すテンプレート切り出し部63により、テンプレートマッチング部62により特定したパターンマッチング後のマーカMと骨部Bとを含む画像を、次の第2テンプレート画像として切り出し(ステップS7)、テンプレート画像記憶部65に記憶させる(ステップS8)。次のテンプレートマッチングには、新たに記憶された第2テンプレート画像が利用される。
【0060】
このような動作を繰り返し、必要な治療が終了すれば(ステップS9)、処理を終了する。
【0061】
なお、この第2実施形態においては、骨部BをマーカMとともに撮影する場合について説明したが、骨部Bのかわりに、横隔膜等の他の体内構造物をマーカMとともに撮影してもよい。
【0062】
次に、この発明のさらに他の実施形態について説明する。
図10は、この発明のX線透視装置による第3実施形態に係るテンプレートマッチング動作を示す説明図である。
【0063】
上述した第1実施形態および第2実施形態においては、球形または非球形のマーカMを利用し、マーカMを含む画像をテンプレートとして使用しているのに対し、この第3実施形態においては、マーカMのかわりに、被検者57の特定部位を含む画像をテンプレート画像として使用する構成を採用している。ここで、被検者57の特定部位としては、例えば、被検者57における腫瘍の領域などを利用することができる。
【0064】
この第3実施形態においては、テンプレートマッチングを行うために、最初に、被検者57の特定部位である腫瘍Cに対応するテンプレートを作成する。この場合においては、
図3、
図4、
図5に示すいずれかのポジションに第1X線管1a、第2X線管1b、第1X線検出器2a、第2X線検出器2bを配置して、被検者57を撮影することにより、腫瘍Cを含む画像100を取得する(ステップS1)。そして、この腫瘍Cを含む画像100から、腫瘍C部分を切り出して、第1テンプレート画像105aを得る(ステップS2)。この第1テンプレート画像105aは、
図6に示すテンプレート画像記憶部65に記憶される(ステップS3)。
【0065】
以上の準備が完了すれば、透視を開始し(ステップS4)、被検者57に対する治療を行う。このときには、この発明に係るX線透視装置により腫瘍Cの位置を検出し、この腫瘍Cの位置に基づいて、被検者57の患部に対して照射する放射線の位置を調整する。
【0066】
このときには、30fps程度のフレームレートで腫瘍Cを含む領域に対して透視を行う。そして、
図10に示すように、一定時間毎に連続して収集される画像101から、腫瘍Cを含む画像を取得する(ステップS5)。しかる後、
図6に示すテンプレートマッチング部62により、この腫瘍Cを含む画像に対して、テンプレート画像記憶部65に予め記憶された第1テンプレート画像105aを利用してテンプレートマッチングを行う(ステップS6)。
【0067】
最初のテンプレートマッチングが完了すれば、
図6に示すテンプレート切り出し部63により、テンプレートマッチング部62により特定したパターンマッチング後の腫瘍Cを含む画像を第2テンプレート画像105bとして切り出し(ステップS7)、テンプレート画像記憶部65に記憶させる(ステップS8)。
【0068】
治療を継続する場合においては(ステップS9)、ステップS5に戻り、一定時間毎に連続して収集される次の画像102から、腫瘍Cを含む画像を取得する(ステップS5)。しかる後、
図6に示すテンプレートマッチング部62により、この腫瘍Cを含む画像に対して、その直前にテンプレート画像記憶部65に記憶された第2テンプレート画像105bを利用して、テンプレートマッチングを行う(ステップS6)。
【0069】
2回目のテンプレートマッチングが完了すれば、
図6に示すテンプレート切り出し部63により、テンプレートマッチング部62により特定したパターンマッチング後の腫瘍Cを含む画像を、次の第2テンプレート画像として切り出し(ステップS7)、テンプレート画像記憶部65に記憶させる(ステップS8)。次のテンプレートマッチングには、新たに記憶された第2テンプレート画像が利用される。
【0070】
このような動作を繰り返し、必要な治療が終了すれば(ステップS9)、処理を終了する。
【0071】
このように、この発明の第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態に係るX線透視装置によれば、テンプレートマッチングを実行して特定したマーカMまたは腫瘍Cを含む画像をテンプレート画像として切り出し、切り出された画像をそれ以降のテンプレートマッチング時にテンプレートとして使用する構成であることから、非球形のマーカMを使用した場合や、患者の特定部位である腫瘍Cを使用した場合、あるいは、マーカMが体内構造物である骨部Bと一緒に撮影される場合であっても、テンプレートマッチングによりマーカMまたは腫瘍Cを適確に認識することができ、マーカMまたは腫瘍Cの位置を正確に特定することが可能となる。