特許第6115697号(P6115697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6115697鍵盤楽器の白鍵及び鍵盤楽器の白鍵の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115697
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】鍵盤楽器の白鍵及び鍵盤楽器の白鍵の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10B 3/12 20060101AFI20170410BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G10B3/12 100
   G10H1/34
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-117394(P2012-117394)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-246188(P2013-246188A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 賢一
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−047931(JP,A)
【文献】 特開2008−116758(JP,A)
【文献】 特開2012−058492(JP,A)
【文献】 米国特許第02706926(US,A)
【文献】 実開平04−011593(JP,U)
【文献】 特開昭62−187888(JP,A)
【文献】 特開2001−222277(JP,A)
【文献】 特開2011−197525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B 3/12
G10H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板部、前板部及び側板部を有する方形状の樹脂からなる鍵盤楽器の白鍵において、
鍵手前側の幅広部の側板部の外表面の少なくとも一部に、前記一部の面粗度を前記上板部の面粗度よりも粗くして、前記上板部から所定距離だけ離れた位置に凹凸部を設けたことを特徴とする鍵盤楽器の白鍵。
【請求項2】
前記凹凸部の近傍位置にて、前記上板部及び前板部に左右に張り出した張出し部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の白鍵。
【請求項3】
前記凹凸部はシボ模様により成形されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鍵盤楽器の白鍵。
【請求項4】
上板部、前板部及び側板部を有する方形状の樹脂からなる鍵盤楽器の白鍵において、
鍵手前側の幅広部の側板部の外表面の少なくとも一部に、前記上板部から所定距離だけ離れた位置から下方にいくに従って前記側板部の板厚が薄くなるような階段状の段差部を設けたことを特徴とする鍵盤楽器の白鍵。
【請求項5】
上板部、前板部及び側板部を有する方形状に形成し、製品上面側金型と製品下面側金型からなる金型を用いて樹脂により一体成型する鍵盤楽器の白鍵の製造方法において、
鍵手前側の幅広部の前記製品下面側金型により成形される側板部の外表面の少なくとも一部に、前記一部の面粗度を前記上板部の面粗度よりも粗くして、前記上板部から所定距離だけ離れた位置に凹凸部を形成するようにしたことを特徴とする鍵盤楽器の白鍵の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器の白鍵、及び金型を用いて樹脂により一体成型する鍵盤楽器の白鍵の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子ピアノ、電子オルガンなどの鍵盤楽器の白鍵10を金型を用いて樹脂により一体成形することはよく知られている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。白鍵10は、図9の斜視図に示すように、平板状の上板部11、上板部11の前端からぼぼ垂直に下方に延設された平板状の前板部12、及び上板部11の左右端からぼぼ垂直に下方にそれぞれ延設された一対の平板状の側板部13,13を備え、各板部11,12,13,13は所定の厚さに成形されていて、内部に方形状の空間を有する。また、白鍵10は、楽器に組み付けた状態では、黒鍵を間に配設する必要があるため、上板部11の前部は幅広に形成されるとともに、後部は幅狭に形成されており、側板部13,13は、幅の広い部分と幅の狭い部分の境界に角部14,14をそれぞれ有する。なお、本明細書においては、鍵盤楽器を演奏する演奏者から見て、手前側を前方と呼び、その反対側を後方と呼び、左側及び右側を左右方向と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−187888号公報
【特許文献2】特開2001−222277号公報
【特許文献3】特開2009−139467号公報
【0004】
この種の白鍵10を成形するためには、通常、図10に示すような金型20を用いる。図10は、図9の10−10線方向に対応した方向に沿って見た金型20の断面図である。金型20は、白鍵10の外側面形状に対応した方形状の凹部21aを有する製品上面側金型(製品外観側金型)21と、白鍵10の内側面形状に対応した方形状の凸部22aを有する製品下面側金型(製品非外観側金型)22とを備えている。
【発明の概要】
【0005】
上記のような金型20においては、白鍵10の外表面は滑らかであるので、白鍵10が製品上面側金型21の凹部21aの内面側に張り付き易く、また白鍵10の角部14の存在により、成形後の白鍵10を金型20を開いて取出す際には、白鍵10が製品上面側金型21に引っ張られ易い。このために、成形後の白鍵10を金型20を開いて取出す際には、白鍵10が変形したり、場合によっては、白鍵10が破損してしまうなどの成形上の不具合が生じたりする可能性もある。また、白鍵10の上板部11及び側板部13が接する製品上面側金型21の凹部21aの内表面は、通常鏡面加工処理が行われるが、奥まった部分の広い面積を磨くことになるために、製品上面側金型21の仕上げ加工処理が難しかった。
【0006】
また、一方では、白鍵10を上記のように樹脂のみで成形する場合、白鍵10の上板部11と側板部13の外表面は同じ加工であり、アコースティックピアノの白鍵のように側面に木の部分が無いため、図11に示すように、白鍵10の側板部13を上板部11とは別素材を使用して、側板部13に木質感を付与することも考えられてきたが、部品も増え、加工も複雑になり、普及価格帯の鍵盤製品に採用することは難しかった。
【0007】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、簡単かつ良質に製造できる鍵盤楽器の白鍵、及び簡単に良質な白鍵を製造できるようにした金型を用いた鍵盤楽器の白鍵の製造方法を提供することにある。また、木質感をも備えた鍵盤楽器の白鍵、及びその製造方法を提供することにもある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、この実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の構成上の特徴は、上板部(11)、前板部(12)及び側板部(13)を有する方形状の樹脂からなる鍵盤楽器の白鍵(10)において、
鍵手前側の幅広部の側板部の外表面の少なくとも一部に、前記一部の面粗度を上板部の面粗度よりも粗くして、上板部から所定距離だけ離れた位置に凹凸部(13A,13C,13D)を設けたことにある。
【0009】
上記のような白鍵は、通常、製品上面側金型と製品下面側金型からなる金型を用いて樹脂により一体成型される。この場合、金型を開いて成形された白鍵を取出す際には、側板部に設けた凹凸部が、白鍵を製品下面側金型側に引張るように作用するので、白鍵に角部が設けられていても、白鍵を製品上面側金型から取出し易くなり、白鍵が変形したり、破損したりする事態を避けることができる。また、製品下面側金型は白鍵の下部を成形するので、製品上面側金型の白鍵の上部を成形する凹部の面積が小さくなり、かつ同凹部が浅くなり、製品上面側金型の鏡面加工処理がし易くなって、白鍵の成形作業が簡単になる。また、側板部に設けた凹凸部により、製造コストを抑えたうえで、白鍵の側面に木部があるような雰囲気も実現できる。
【0010】
また、上記のような白鍵においては、凹凸部が上板部から所定距離だけ離れた位置に設けられているので、演奏者側から凹凸部が見えにくくなり、外観上好ましくなる。特に、上板部と側板部との境界に円弧状の角部が存在しても、凹凸部が見えにくくなり、外観上好ましい。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、凹凸部の近傍位置にて、上板部及び前板部に左右に張り出した張出し部(15,16)を設けたことにある。この特徴によれば、張出し部により、演奏者側から凹凸部が見えにくくなり、外観上好ましくなる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、凹凸部はシボ模様により成形されたことにある。この特徴によれば、凹凸部として均一な精度のよい粗い表面を比較的簡単に形成できる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、上板部(11)、前板部(12)及び側板部(13)を有する方形状の樹脂からなる鍵盤楽器の白鍵(10)において、鍵手前側の幅広部の側板部の外表面の少なくとも一部に、上板部から所定距離だけ離れた位置から下方にいくに従って側板部の板厚が薄くなるような階段状の段差部(13B)を設けたことにある。この本発明の他の特徴の場合も、段差部が、白鍵を製品下面側金型側に引張るように作用するので、白鍵を製品上面側金型から取出し易くなり、白鍵が変形したり、破損したりする事態を避けることができる。また、この場合も、製品下面側金型は白鍵の下部を成形するので、製品上面側金型の白鍵の上部を成形する凹部の面積が小さくなり、かつ同凹部が浅くなり、製品上面側金型の鏡面加工処理がし易くなって、白鍵の成形作業が簡単になる。さらに、段差部は木目のように見せる効果もあるので、この場合も、製造コストを抑えたうえで、白鍵の側面に木部があるような雰囲気も実現できる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、上板部(11)、前板部(12)及び側板部(13)を有する方形状に形成し、製品上面側金型(31,51,61)と製品下面側金型(32,52,62)からなる金型(30,50,60)を用いて樹脂により一体成型する鍵盤楽器の白鍵の製造方法において、鍵手前側の幅広部の製品下面側金型により成形される側板部の外表面の少なくとも一部に、前記一部の面粗度を上板部の面粗度よりも粗くして、上板部から所定距離だけ離れた位置に凹凸部(13A,13C,13D)を形成するようにしたことにある。これによっても、前記鍵盤楽器の白鍵の発明で説明した理由により、白鍵が変形したり、破損したりする事態を避けることができるとともに、白鍵の成形作業が簡単になる。また、製造された白鍵の側面に木部があるような雰囲気も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る白鍵の概略側面図であり、(B)は(A)のB−B線に沿って見た前記第2実施形態に係る白鍵の断面図である。
図2図1のB−B線方向に対応する方向に沿って見た前記第1実施形態に係る白鍵を製造するための金型の断面図である。
図3】(A)は本発明の第2実施形態に係る白鍵の概略側面図であり、(B)は(A)のB−B線に沿って見た前記第2実施形態に係る白鍵の断面図である。
図4図3のB−B線方向に対応する方向に沿って見た前記第2実施形態に係る白鍵を製造するための金型の断面図である。
図5】(A)は本発明の第3実施形態に係る白鍵の概略側面図であり、(B)は(A)のB−B線に沿って見た前記第3実施形態に係る白鍵の断面図である。
図6図5のB−B線方向に対応する方向に沿って見た前記第3実施形態に係る白鍵を製造するための金型の断面図である。
図7】(A)は本発明の第4実施形態に係る白鍵の概略側面図であり、(B)は(A)のB−B線に沿って見た前記第4実施形態に係る白鍵の断面図であり、(C)は(A)のC−C線に沿って見た前記第4実施形態に係る白鍵の断面図である。
図8図7のB−B線方向に対応する方向に沿って見た前記第4実施形態に係る白鍵を製造するための金型の断面図である。
図9】従来及び本発明の各実施形態に係る鍵盤楽器の白鍵の概略斜視図である。
図10図9の10−10線方向に対応する方向に沿って見た白鍵を製造するための従来の金型の断面図である。
図11】従来の他の例を示す白鍵の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態に係る白鍵10について図面を用いて説明する。図1(A)はこの第1実施形態に係る白鍵10の概略側面図であり、図1(B)は図1(A)のB−B線に沿って見た白鍵10の断面図である。この白鍵10は、上記背景技術の項で図9を用いて説明した上板部11、前板部12、側板部13,13及び角部14,14を有する形状の白鍵である。なお、上記背景技術の項でも省略したが、この白鍵10は、白鍵10の後端部に設けられて鍵盤楽器の鍵盤部に組み付けるための組み付け部、白鍵10の後端部に設けられて複数の白鍵10を連結する連結部、白鍵10の下端部に設けられてキースイッチを駆動するためのアクチュエータ、白鍵10の下端部に設けられて白鍵10の搖動を規制する規制部などを必要とする場合もあるが、これらの部分は本発明に直接関係しないので、図示省略している。
【0017】
この白鍵10の側板部13においては、上板部11における前部の幅広の部分に対応する部分であって、上板部11から所定距離だけ下方に隔てた位置から側板部13の下端までの部分の表面に、図示点模様で示すように、凹凸部13Aを設けている。この凹凸部13Aは、表面が他の部分に比べて、面粗度が粗い部分であり、単なる細かな凹凸模様でもよいが、木目のような模様であることが好ましい。
【0018】
次に、前記第1実施形態に係る白鍵10を成形するための金型30について説明する。図2は、図1(A)のB−B線方向に対応する方向に沿って見た前記第1実施形態に係る白鍵10を成形するための金型30の断面図である。金型30も、製品上面側金型(製品外観側金型)31と、製品下面側金型(製品非外観側金型)32とを備えている。製品上面側金型31には、下面から上方に方形状の空間を形成する凹部31aが設けられている。この凹部31aの内側面と、製品下面側金型32に設けられてその上面から上方に方形状に突出した凸部32aの外側面との間に形成された空間により、白鍵10の上部(すなわち、白鍵10の上板部11、並びに白鍵10の前板部12及び側板部13の上部)が成形される。また、製品下面側金型32の凸部32aの外周面には、その上面から下方に溝状に延びた方形状の凹部32bが設けられており、この凹部32bにより、白鍵10の下部(すなわち、白鍵10の前板部12及び側板部13の下部)が成形される。
【0019】
この凹部32bであって、白鍵10の側板部13の凹凸部13Aに対応する部分には、シボ柄の模様(凹凸模様)が描かれるように加工処理されている。これにより、金型30を用いて白鍵10が樹脂成型された際には、側板部13の凹凸部13Aには、シボ加工による凹凸が形成される。この凹凸模様は、単純な模様の単なる凹凸でもよいが、木目のような模様であることが好ましい。また、この側板部13の凹凸部13Aの上側の境界線は、製品下面側金型32の上面に対応しており、成形後の白鍵10を金型30から取り出す際には、製品上面側金型31と製品下面側金型32からなる金型30のパーティングラインと一致している。さらに、この金型30を用いて白鍵10を樹脂成型する際には、白鍵10の上部外表面及び前板部12の外表面に対応する金型30の内表面、特に製品上面側金型31の凹部31aの内表面は、成形後の白鍵10の外観上の見栄えをよくするために、白鍵10の成形ごとに鏡面仕上げ加工処理がなされる。
【0020】
上記のように構成した白鍵10においては、金型30を開いて成形された白鍵10を取出す際には、側板部13に設けた凹凸部13A(製品下面側金型32の凹部32bに設けたシボ柄の模様)が、白鍵10を製品下面側金型32側に引張るように作用するので、白鍵10に角部14が設けられていても、白鍵10を製品上面側金型31から取出し易くなり、白鍵10が変形したり、破損したりする事態を避けることができる。また、製品下面側金型32に凹部32bを設けることにより、製品上面側金型31の凹部31aの鏡面加工処理が必要な面積が小さくなり、かつ凹部31aの深さも浅くなって鏡面加工処理がし易くなり、白鍵10の成形作業が簡単になる。
【0021】
さらに、外観的には、白鍵10の側板部13に凹凸部13Aを設けるようにしたので、製造コストを抑えたうえで、白鍵10の側面に木部があるような雰囲気も実現できる。特に、凹凸部13Aの模様を木目調にすることにより、木質感を充分に達成できる。そして、この凹凸部13Aはシボ加工処理により実現されるので、白鍵10の幅広の部分における側板部13の下部に均一な精度のよい粗い表面を比較的簡単に形成できる。また、凹凸部13Aの一部である上端を金型30のパーティングラインに対応させたので、仕上げ面の異なる部分同士が製品上面側金型31及び製品下面側金型32の両金型に同時に存在する場合に、境界面の仕上げが難しくなるという問題も解決され、金型30の製造及び加工の手間、並びに金型30のメンテナンスを簡素化できる。
【0022】
なお、上記第1実施形態においては、表面の凹凸部13Aを白鍵10の幅広の部分における側板部13の下部のみに設けたが、白鍵10の幅狭の部分における側板部13の下部にも凹凸部(表面の粗い部分)を設けてもよい。この場合の凹凸部も、シボ加工により形成されるとともに、凹凸部の上端を金型のパーティングラインに合わせるとよい。
【0023】
また、白鍵10の後部において幅が狭くなる部分が無く、また音高B−C間及び音高E−C間のように一方の側壁に幅が狭くなる部分が無くて、角部14が存在しない場合でも、成形後の白鍵10を製品下面側金型32側に引っ張るという点では同様な効果が期待されるので、その種の白鍵10の側板部13においても凹凸部13Aを設けるとよい。
【0024】
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る白鍵10について図面を用いて説明する。図3(A)はこの第2実施形態に係る白鍵10の概略側面図であり、図3(B)は図3(A)のB−B線に沿って見た白鍵10の断面図である。この白鍵10も、上板部11、前板部12、側板部13,13及び角部14,14を有する形状の白鍵である。なお、この第2実施形態に係る白鍵10は下記特徴事項を除いて上記第1実施形態と同様に構成されているので、同一部分に関しては、上記第1実施形態の場合と同様な符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0025】
この第2実施形態に係る白鍵10の特徴は、上板部11における前部の幅広の部分に対応する側板部13であって、上板部11から所定距離だけ下方に隔てた位置から側板部13の下端までの部分の表面に、複数の段差部13Bを設けたことである。段差部13Bは、側板部13の下方にいくに従って、板厚が薄くなるよう階段状に形成され、横方向には段差ごとに均一の板厚で延設されている。なお、図1(B)では段差部13Bを誇張して描いており、実際には段差の高さは極めて小さい(例えば、0.1mm程度である)。この段差部13Bが側板部13の表面の凹凸を構成するもので、本発明の凹凸部に対応する。
【0026】
次に、前記第2実施形態に係る白鍵10を成形するための金型40について説明する。図4は、図3(A)のB−B線方向に対応する方向に沿って見た前記第2実施形態に係る白鍵10を成形するための金型40の断面図である。金型40も、製品上面側金型(製品外観側金型)41と、製品下面側金型(製品非外観側金型)42とを備えている。製品上面側金型41には、下面から上方に方形状の空間を形成する凹部41aが設けられている。この凹部41aの内側面と、製品下面側金型42の上面との間に形成された空間により、白鍵10の上部(すなわち、白鍵10の上板部11、並びに白鍵10の前板部12及び側板部13の上部)が成形される。
【0027】
製品下面側金型42には、その上面から下方に溝状に延びた方形状の凹部42aが設けられており、この凹部42aにより、白鍵10の下部(すなわち、白鍵10の前板部12及び側板部13の下部)が成形される。この凹部42aにおいては、白鍵10の側板部13の段差部13Bに対応する部分には、段差部13Bに対応した上下方向に段差が設けられている。また、この側板部13の段差部13Bの上側の境界線は、製品下面側金型42の上面に対応しており、成形後の白鍵10を金型40から取り出す際には、製品上面側金型41と製品下面側金型42からなる金型40のパーティングラインと一致している。また、この場合も、この金型40を用いて白鍵10を樹脂成型する際には、白鍵10の上部外表面及び前板部12の外表面に対応する金型30の内表面、特に製品上面側金型41の凹部41aの内表面は、成形後の白鍵10の外観上の見栄えをよくするために、白鍵10の成形ごとに鏡面仕上げ加工処理がなされる。
【0028】
上記のように構成した白鍵10においても、金型30を開いて成形された白鍵10を取出す際には、側板部13に設けた段差部13Bが、白鍵10を製品下面側金型42側に引張るように作用するので、白鍵10に角部14が設けられていても、白鍵10を製品上面側金型41から取出し易くなり、白鍵10が変形したり、破損したりする事態を避けることができる。また、製品下面側金型42に凹部42aを設けることにより、製品上面側金型41の凹部41aの鏡面加工処理が必要な面積が小さくなり、かつ凹部41aの深さも浅くなって鏡面加工処理がし易くなり、白鍵10の成形作業が簡単になる。
【0029】
さらに、外観的には、白鍵10の側板部13に段差部13Bを設け、この段差部13Bは木目のように見せる効果もあるので、製造コストを抑えたうえで、白鍵10の側面に木部があるような雰囲気も実現できる。また、段差部13Bの一部である上端を金型30のパーティングラインに対応させたので、仕上げ面の異なる部分同士が製品上面側金型41及び製品下面側金型42の両金型に同時に存在する場合に、境界面の仕上げが難しくなるという問題も解決され、金型40の製造及び加工の手間、並びに金型40のメンテナンスを簡素化できる。
【0030】
なお、上記第2実施形態においては、段差部13Bの段差は直線的に横方向に延設されるようにしたが、この段差部13Bの段差が湾曲して横方向に延設されるようにしてもよい。これによれば、側板部13の外観上の木目感がより増強される。また、上記第2実施形態においては、製品下面側金型42の上面に上記第1実施形態の凸部32aのような凸部を設けるようにしなかったが、この第2実施形態においても、製品上面側金型41の凹部41aの深さを少し増加させるとともに、製品下面側金型42の上面に前記凸部を設けるようにしてもよい。これによれば、側板部13の上部における段差部13Bのない部分が増加し、段差部13Bは上下方向の長さが短くなるが、上記効果とほぼ同様な効果が期待される。
【0031】
さらに、この第2実施形態においても、白鍵10の後部において幅が狭くなる部分が無く、また音高B−C間及び音高E−C間のように一方の側壁に幅が狭くなる部分が無くて、角部14が存在しない場合でも、成形後の白鍵10を製品下面側金型42側に引っ張るという点では同様な効果が期待されるので、その種の白鍵10の側板部13においても段差部13Bを設けるとよい。
【0032】
c.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態に係る白鍵10について図面を用いて説明する。図5(A)はこの第3実施形態に係る白鍵10の概略側面図であり、図5(B)は図5(A)のB−B線に沿って見た白鍵10の断面図である。この白鍵10も、上板部11、前板部12、側板部13,13及び角部14,14を有する形状の白鍵である。なお、この第3実施形態に係る白鍵10も下記特徴事項を除いて上記第1実施形態と同様に構成されているので、同一部分に関しては、上記第1実施形態の場合と同様な符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0033】
この第3実施形態に係る白鍵10の特徴は、上板部11における前部の幅広の部分に対応する側板部13であって、上板部11から所定距離だけ下方に隔てた位置から側板部13の下端まで、かつ前板部12から所定距離だけ後方に隔てた位置から側板部13の角部14までの部分の表面に、凹凸部13Cを設けたことにある。この凹凸部13Cは、上記第1実施形態と同様に、シボ加工による簡単な凹凸模様又は木目模様である。なお、この第3実施形態においては、上板部11と側板部13の境界には円弧状に形成した角部15が形成されている。この角部15は、白鍵10において、よく行われる加工形状である。
【0034】
次に、前記第3実施形態に係る白鍵10を成形するための金型50について説明する。図6は、図5(A)のB−B線方向に対応する方向に沿って見た前記第3実施形態に係る白鍵10を成形するための金型50の断面図である。金型50も、製品上面側金型(製品外観側金型)51と、製品下面側金型(製品非外観側金型)52とを備えている。製品上面側金型51には、下面から上方に方形状の空間を形成する凹部51aが設けられている。この凹部51aの内側面と、製品下面側金型52の上面との間に形成された空間により、白鍵10の上部(すなわち、白鍵10の上板部11、並びに白鍵10の前板部12及び側板部13の上部)が成形される。
【0035】
製品下面側金型52には、その上面から下方に溝状に延びた方形状の凹部52aが設けられており、この凹部52aにより、白鍵10の下部(すなわち、白鍵10の前板部12及び側板部13の下部)が成形される。この凹部42aにおいては、白鍵10の側板部13の凹凸部13Cに対応する部分は、シボ柄の模様(凹凸模様)が描かれるように加工処理されている。また、この側板部13の凹凸部13Cの上側の境界線は、製品下面側金型52の上面に対応しており、成形後の白鍵10を金型50から取り出す際には、製品上面側金型51と製品下面側金型52からなる金型50のパーティングラインと一致している。また、この場合も、この金型50を用いて白鍵10を樹脂成型する際には、白鍵10の上部外表面及び前板部12の外表面に対応する金型50の内表面、特に製品上面側金型41の凹部51aの内表面は、成形後の白鍵10の外観上の見栄えをよくするために、白鍵10の成形ごとに鏡面仕上げ加工処理がなされる。
【0036】
上記のように構成した白鍵10においても、金型50を開いて成形された白鍵10を取出す際には、側板部13に設けた凹凸部13Cが、白鍵10を製品下面側金型52側に引張るように作用するので、白鍵10に角部14が設けられていても、白鍵10を製品上面側金型51から取出し易くなり、白鍵10が変形したり、破損したりする事態を避けることができる。また、製品下面側金型52に凹部52aを設けることにより、製品上面側金型51の凹部51aの鏡面加工処理が必要な面積が小さくなり、かつ凹部51aの深さも浅くなって鏡面加工処理がし易くなり、白鍵10の成形作業が簡単になる。
【0037】
さらに、外観的には、白鍵10の側板部13に凹凸部13Cを設け、この段差部13Cは木目のように見せる効果もあるので、製造コストを抑えたうえで、白鍵10の側面に木部があるような雰囲気も実現できる。また、この第3実施形態においては、凹凸部13Cを上板部11及び前板部12から所定距離だけ隔てて側板部13に設けるようにしたので、演奏者側から凹凸部13Cが見えにくくなり、外観上好ましくなる。特に、上板部11と側板部13との境界に円弧状の角部15が存在しても、凹凸部13Cが見えにくくなり、外観上好ましい。また、この場合も、凹凸部13Cの一部である上端を金型50のパーティングラインに対応させたので、仕上げ面の異なる部分同士が製品上面側金型51及び製品下面側金型52の両金型に同時に存在する場合に、境界面の仕上げが難しくなるという問題も解決され、金型50の製造及び加工の手間、並びに金型50のメンテナンスを簡素化できる。
【0038】
なお、上記第3実施形態においては、製品下面側金型52の上面に上記第1実施形態の凸部32aのような凸部を設けるようにしなかったが、この第3実施形態においても、製品上面側金型51の凹部51aの深さを少し増加させるとともに、製品下面側金型52の上面に前記凸部を設けるようにしてもよい。これによれば、側板部13の上部における凹凸部13Cのない部分が増加し、凹凸部13Cは上下方向の長さが短くなるが、上記効果とほぼ同様な効果が期待される。
【0039】
また、上記第3実施形態においては、シボに成形された凹凸部13Cを側板部13に設けるようにした。しかし、これに代えて、この凹凸部13Cの位置に、上記第2実施形態の段差部13Bと同様な段差部を設けるようにしてもよい。これによっても、第2実施形態と同様な効果が期待されるとともに、前述したように、演奏者側から段差部が見えにくくなり、外観上好ましくなる。
【0040】
さらに、この第3実施形態においても、白鍵10の後部において幅が狭くなる部分が無く、また音高B−C間及び音高E−C間のように一方の側壁に幅が狭くなる部分が無くて、角部14が存在しない場合でも、成形後の白鍵10を製品下面側金型52側に引っ張るという点では同様な効果が期待されるので、その種の白鍵10の側板部13においても凹凸部13Cを設けるとよい。
【0041】
d.第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態に係る白鍵10について図面を用いて説明する。図7(A)はこの第4実施形態に係る白鍵10の概略側面図であり、図7(B)は図7(A)のB−B線に沿って見た白鍵10の断面図であり、図7(C)は図7(A)のC−C線に沿って見た白鍵10の断面図である。この白鍵10は、上記第3実施形態に係る白鍵10を次にように変更したものであるので、同一部分に関しては、上記第3実施形態の場合と同様な符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0042】
この第4実施形態に係る白鍵10は、上記第3実施形態の白鍵10に対して、凹凸部13Dの上方位置にて、上板部11に左右両端にて側板部13よりも左右方向に張り出させた張出し部16,16を設けている。また、凹凸部13Dの前方位置にて、前板部12に左右両端にて側板部13よりも左右方向に張り出させた張出し部17,17を設けている。なお、凹凸部13Dは、上記第2実施形態の凹凸部13Cと同じである。
【0043】
次に、前記第4実施形態に係る白鍵10を成形するための金型60について説明する。図8は、図7(A)のB−B線方向に対応する方向に沿って見た前記第4実施形態に係る白鍵10を成形するための金型60の断面図である。この金型60も、凹部61aを有する製品上面側金型(製品外観側金型)61と、凹部62aを有する製品下面側金型(製品非外観側金型)62とを備えている。製品上面側金型61及び製品下面側金型62は、前記白鍵10の張出し部16,17を形成するための形状が上記第3実施形態の白鍵10を成形するための金型50と異なるだけである。
【0044】
上記のように構成した白鍵10においても、上記第3実施形態に係る白鍵10の場合と同様な効果が期待できる。また、この第4実施形態に係る白鍵10によれば、凹凸部13Dの上方及び前方に張出し部16,17を設けるようにしたので、上記第3実施形態の場合に比べて、演奏者側から凹凸部13Dがさらに見えにくくなり、外観上より好ましくなる。
【0045】
なお、上記第4実施形態においても、上記第3実施形態の場合と同様に、製品上面側金型51の凹部51aの深さを少し増加させるとともに、製品下面側金型52の上面に前記凸部を設けるようにして、側板部13の上部における凹凸部13Cのない部分を増加させるようにしてもよい。また、後部において幅が狭くなる部分が無い、又は音高B−C間及び音高E−C間のように一方の側壁に幅が狭くなる部分が無い白鍵10に対しても、その側板部13に凹凸部13Dを設けるとよい。
【0046】
また、上記第4実施形態においても、シボに成形された凹凸部13Dを側板部13に設けるようにした。しかし、これに代えて、この凹凸部13Dの位置に、上記第2実施形態の段差部13Bと同様な段差部を設けるようにしてもよい。これによっても、第2実施形態と同様な効果が期待されるとともに、前述したように、演奏者側から段差部が見えにくくなり、外観上好ましくなる。
【0047】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10…白鍵、11…上板部、12…前板部、13…側板部、13A、13C,13D…凹凸部、13B…段差部、14…角部、16,17…張出し部、20,30,40,50,60…金型、21,31,41,51,61…製品上面側金型、22,32,42,52,62…製品下面側金型
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