(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上方の構造体に設けられた天井および下方の構造体に設けられた床面とを有するクリーンルームの内部に設けられ、当該クリーンルームの内部に内部空間を形成する区画壁と、上記内部空間に設けられた作業台と、上記内部空間の上部に設けられて清浄空気を内部空間の上方から下方に向けて供給する供給用清浄フィルタと、上記作業台の作業面よりも下方に設けられて上記内部空間の空気を排出する排出口と、上記排出口と上記供給用清浄フィルタとを連通させる循環通路と、上記排出口より排出される空気を上記供給用清浄フィルタへと循環させる送風手段と、上記循環通路を流通する空気の一部を清浄化して外部に排出する排出用清浄フィルタと、上記排出用清浄フィルタから排出する空気の排出量を調節して上記内部空間を陰圧に制御する圧力制御手段とを備え、
上記区画壁をクリーンルームの天井から床面まで達するように設け、
また上記作業台の上方に作業空間を形成する仕切部材を設けるとともに、当該仕切部材の下端と上記作業台の作業面との間に隙間を形成し、
さらに上記区隔壁における、上記排出口よりも上方かつ上記作業台の作業面よりも下方に流入口を設け、
上記区画壁または上記供給用清浄フィルタまたは送風手段または排出用清浄フィルタの少なくともいずれか1つを、上記クリーンルームの天井側の構造体で支持することを特徴とするバイオハザード対策用清浄作業室。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について説明すると、
図1〜
図3はクリーンルーム1の内部に設置されたバイオハザード対策用清浄作業室2を示し、これら
図1、
図2は異なる方向からみた断面図を、
図3は平面図をそれぞれ示している。
このようなバイオハザード対策用清浄作業室2では、病原菌に感染した細胞等のバイオハザード対策が必要な細胞や組織を扱うことが可能となっており、作業者の安全確保、培養系間の相互汚染防止の観点から、内部に形成された内部空間Sの雰囲気が外部に流出しないように構成されている。
図3に示すように、クリーンルーム1の内部にはバイオハザード対策用清浄作業室2の他に、上記細胞を培養するための複数のインキュベータ3が設置され、さらにクリーンルーム1に隣接して作業者等がクリーンルーム1に入退室するための前室4が設けられている。
このような構成により、バイオハザード対策用清浄作業室2による病原菌等に感染した細胞や組織の処理を安全に行った後、このような細胞をクリーンルーム1の外部に持ち出すことなく、インキュベータ3により培養することが可能となっている。
図3に示すように、上記クリーンルーム1には、天井に複数のHEPAフィルタ5が設けられ、このHEPAフィルタ5には外部から空気を供給する空調手段6が接続されている。
またクリーンルーム1内の空気はクリーンルーム1に接続されたリターン通路7より排出された後、上記空調手段6によって上記HEPAフィルタ5へと循環され、再度清浄化されてクリーンルーム1内に供給されるようになっており、この空調手段6によりクリーンルーム1の内部は所定の陽圧に維持されるようになっている。なお、空気の一部は排気通路8から排気される。
【0009】
本実施例におけるクリーンルーム1は、例えば大学や病院、企業等の一般的な建築基準に基づいて建設されたビル等の建造物の内部に設けられているが、これらの建造物は重量物を載置することが考慮されていないため、床面の耐荷重が低く、重量物を載置できないものとなっている。
そして上記クリーンルーム1は、上方に形成された構造体CUの下方に設けられた天井1aと、下方に形成された構造体CLに図示しない床材を張った床面1bとを備えている。
上記天井1aは石膏ボードなどの天井ボードとなっており、上記上方の構造体CUの下面との間に所要の空間を形成するよう、ブラケット1cによって当該構造体CUの下方に固定されている。
【0010】
本実施例のバイオハザード対策用清浄作業室2は、複数の区画壁11によって区画された上記内部空間Sを形成しており、
図3に示すように区画壁11は平面視において4角形に配置されている。
そして、本実施例の区画壁11はその上部がクリーンルーム1の天井1aに支持されるとともに、クリーンルーム1の天井1aから床面1bまで達するように設けられ、上記内部空間Sはこれら区画壁11と天井1aと床面1bとによって区画された空間となっている。
上記内部空間Sの略中央には、上記区画壁11とは別体に設けられた作業台13が設置されており、換言すると作業台13と各区画壁11とは接しておらず、それらとの間に所定の間隔が設けられている。
また作業台13は上記クリーンルーム1の床面1bに設置されており、上記作業台13の重量をクリーンルーム1の床面1bを介して下方の構造体CLで直接支持するようになっている。
そして、本実施例においては作業台13の上面の作業面13aには処理手段としてロボット12が設置されており、ロボット12の駆動源等は上記作業面13aの下方に形成されたハウジング13b内に収容されている。
このように、本実施例のバイオハザード対策用清浄作業室2は、ロボット12を備えた作業台13を有しており、これら作業台13およびロボット12の合計した重量は、上記ロボット12の駆動源等を含め、大きなものとなっている。
【0011】
次に、バイオハザード対策用清浄作業室2は、上記内部空間Sの上部に設けられたHEPAユニット21と、上記内部空間Sの空気を排出する排出口22と、上記排出口22と上記HEPAユニット21とを連通させる循環通路23と、当該循環通路23に設けられて上記排出口22より排出される空気を上記HEPAユニット21へと循環させる送風手段としてのブロワ24と、上記区画壁11に形成されて上記クリーンルーム1と内部空間Sとを連通させる流入口25とを備えている。
上記HEPAユニット21は、清浄空気を内部空間Sの上方から下方に向けて供給する供給用清浄フィルタとしての供給用HEPAフィルタ26と、循環通路23を流通する空気の一部を清浄化して外部に排出する排出用清浄フィルタとしての排出用HEPAフィルタ27と、上記排出用HEPAフィルタ27からの空気の排出量を調節して上記内部空間Sを陰圧に制御する圧力制御手段としての開度調整バルブ28とから構成されている。
上記HEPAユニット21は天井1aと上方の構造体CUとの間に位置するとともに上記天井1aの上面に固定されており、当該HEPAユニット21の荷重は上記天井1aを介して構造体CUに支持されている。ここで、当該部分の天井1aはHEPAユニット21を支持できる程度に補強されている。また上記ブロワ24も上方の構造体CUにブラケット24aによって支持されている。
上記供給用HEPAフィルタ26は上記天井1aに形成した開口から上記内部空間Sに臨ませるように設けられ、上記循環通路23を流通する空気、すなわち内部空間Sを流通した空気を通過させ、その際空気中の粉塵や細菌等を除去することにより清浄空気を内部空間Sへと供給するようになっている。
上記HEPAユニット21の供給用HEPAフィルタ26と作業台13との間には、清浄空気を整流するための整流スクリーン29が設けられており、この整流スクリーン29は上記区画壁11によって区画された内部空間Sを上下に区画するよう、その全周が上記区画壁11に当接している。
上記整流スクリーン29は、例えば無数の貫通孔が穿設された金属板と所要の繊維とを積層させた構成を有しており、上記供給用HEPAフィルタ26から上記内部空間Sに供給される清浄空気は、この整流スクリーン29を通過することにより整流され、内部空間Sの上方から下方へと流通するラミナーフローを形成するようになっている。
【0012】
上記排出口22は、上記区画壁11の下端部近傍、少なくとも上記作業台13の作業面13aよりも下方に形成されており、ブロワ24の作用により上記排出口22より吸引された内部空間Sの空気が、循環通路23を流通して上記HEPAユニット21へと循環するようになっている。
このように、上記排出口22を作業面13aよりも下方に設けているので、内部空間Sの清浄空気は作業面13a上から作業台13の周囲へと作業面13aよりも下方へと流れるようになっており、上記作業面13aの上方でのラミナーフローを維持して粉塵や細菌の舞い上がりを可及的に抑えるようになっている。
【0013】
上記循環通路23を流通する空気の一部は、上記HEPAユニット21において天井1aより上方の空間、すなわち天井1aと構造体CUとの間の空間へと排出されるようになっており、その際空気中の粉塵や細菌等は上記排出用HEPAフィルタ27によって除去されるようになっている。
上記排出用HEPAフィルタ27には、上記開度調整バルブ28が設けられた排出通路30が接続されており、上記開度調整バルブ28は図示しない制御手段によって制御されて、上記排出通路30より排出される空気の流量を調節するようになっている。
また、上記流入口25は上記区画壁11に形成されており、上記排出口22よりも上方、かつ上記作業台13の作業面13aよりも下方に形成されている。
【0014】
上記構成により、ブロワ24を作動させて内部空間Sの空気を吸引し、併せて排出通路30から循環通路23を流通する空気の一部を排出させることにより、内部空間Sは陰圧となる。
このようにして内部空間Sが陰圧となることで、クリーンルーム1と内部空間Sとの間に差圧が生じ、これにより上記流入口25よりクリーンルーム1の空気が内部空間Sへと流入することで、内部空間Sを適度な陰圧に保つようになっている。
また、上記流入口25を上記作業台13の作業面13aよりも下方に形成しているので、当該流入口25より流入した空気による作業面13aの上方でのラミナーフローの乱れが防止される。
【0015】
また本実施例のバイオハザード対策用清浄作業室2は、上記内部空間Sを複数枚の仕切部材14によって上記作業台13の上方に形成された作業空間Saと、当該作業空間Saの側方に形成されて操作者の立ち入りを許容する操作空間Sbとに区画している。
具体的には、複数枚の仕切部材14がそれぞれ
図1に示すように作業空間Saを挟んで作業台13の上方に設けられており、その上端が整流スクリーン29の下面に固定されている。
また、仕切部材14の下端は上記作業台13の作業面13aとの間に若干の隙間が形成されるように設けられている。
【0016】
このような構成により、上記整流スクリーン29を通過した清浄空気は上記仕切部材14によって区画された作業空間Saおよび操作空間Sbに流入して下方へと流通する。
このため、上記作業空間Saにおいて細胞や組織から病原菌が飛散しても、この病原菌は作業空間Saを上方から下方へと流通する清浄空気によって下方に流動する。
その後、この病原菌は上記仕切部材14の下端と上記作業面13aとの間に形成された隙間から操作空間Sbに流動されるが、この病原菌は操作空間Sbを上方から下方へと流通する清浄空気によって下方に流動するため、この病原菌が上記隙間より上方に舞い上がることはない。
つまり、上記操作空間Sbに立ち入った作業者は、上記隙間より上方に顔を位置させておけば、少なくとも吸引による感染を防止することができ、例えば操作空間Sbから上記隙間より手を挿入して作業台13a上で作業を行うことが可能となる。
【0017】
さらに本実施例のバイオハザード対策用清浄作業室2は、上記区画壁11に
図2に示すような作業開口31を備え、またこれを覆って上下にスライドして開閉可能な作業扉31aが設けられている。
この作業扉31aを開放することにより、作業空間Saに細胞や組織を収容した収容容器やその他の器具を搬入することが可能となっている。
また上記作業扉31aには作業者が装着して作業台13上の器具等を操作するためのグローブ32が設けられており、必要に応じて所要の操作を行うことが可能となっている。
上記作業開口31は上記作業台13の作業面13aよりも上方に設けられており、クリーンルーム1から流入する外部雰囲気は区画壁11と作業台13との隙間より作業台13の下方に流動するため、外部雰囲気による汚染を防止することができる。
一方では、細胞から発生した病原菌も上記隙間より作業台13の下方に流動するため、病原菌が作業開口31からクリーンルーム1へと流出してしまうことを防止することができる。
【0018】
本実施例によるバイオハザード対策用清浄作業室2によれば、特許文献1のバイオハザード対策用清浄作業室と同様、供給用HEPAフィルタ26によって内部空間Sに清浄空気を供給し、排出口22より排出された空気を循環通路23によって内部空間Sへと循環させることで、病原菌等の有害物質がクリーンルーム1に飛散することを防止している。
これに併せて、上記循環通路23を流通する空気の一部を排出用HEPAフィルタ27によって清浄化して排出して内部空間Sを陰圧とすることでも、有害物質がクリーンルーム1に飛散することを防止している。
【0019】
本実施例では、上記HEPAユニット21およびブロワ24を、天井1a側の構造物CUによって支持することで、これらの荷重を床面1bに作用させず、また上記区画壁11の上部を天井1aに固定することで、その重量の一部を上記天井1aを介して構造物CUによって支持させるようになっている。
また本実施例では作業台13にロボット12を備えることで、細胞や組織を自動的かつ大量に処理することが可能となっているが、作業台13にロボット12を設けることでこれらの荷重が大きくなってしまうが、この作業台13を区画壁11と別体に設けたことで、作業台13およびロボット12だけの荷重が床面1bに作用することとなり、床面1bの耐荷重が低くてもこれを支持することが可能となる。
以上のことから、耐荷重の低い一般的な建築基準で建設された大学や病院、企業等のビルの床であっても、本実施例にかかるバイオハザード対策用清浄作業室2を設置可能である。
【0020】
図4は第2実施例にかかるバイオハザード対策用清浄作業室2を示し、以下の説明において、第1実施例のバイオハザード対策用清浄作業室2と共通する要素については説明を省略するものとする。
本実施例のバイオハザード対策用清浄作業室2は、下方の構造体CLに設置した補強部材41aと、当該補強部材41aに支持された上床41bとからなる二重床41を備えている。
ここで、上記作業台13は上記上床41bに設置されているが、本実施例のバイオハザード対策用清浄作業室2は上記作業台13にロボット12等の処理手段を設けておらず、作業台13は上記第1実施例に比べて軽量となっている。
そして本実施例のバイオハザード対策用清浄作業室2では、内部空間Sを複数枚の仕切部材14によって上記作業台13の上方に形成された作業空間Saと、その側方に形成された操作空間Sbとに区画し、作業者は操作空間Sbから作業台13上の組織や細胞を操作するようになっている。
本実施例におけるバイオハザード対策用清浄作業室2によれば、二重床41とすることで耐荷重の低い上床41bに設置することとなるが、軽量な作業台13であれば設置可能であり、また第1実施例と同様、HEPAユニット21やブロア24の重量は天井側の構造体CUによって支持し、また区画壁11もその重量の一部が天井1aを介して天井側の構造体CUによって支持されているため、上述した二重床41の構造を採用することが可能となっている。
【0021】
さらに本実施例では、二重床41とすることで上床41bと下方の構造体CLとの間に空間が形成されるため、上記排出口22を上記内部空間Sに面した上床41bに設けて、上記循環通路23の一部をこの上床41bの下方に配設することが可能となっている。
このように、上記排出口22を上床41bに形成することにより、下方への吸引力を生じさせることができ、上方から下方に向かう清浄空気のラミナーフローをより均一に形成することが可能となり、側方の区画壁11に設けた場合に比べ排気効率を良好にすることが可能となっている。
【0022】
なお上記第1、第2実施例において、上記区画壁11については、上記内部空間Sを形成することができればよく、例えば上記実施例における四方の区画壁11のうち、一枚の区画壁11をクリーンルーム1の壁面で代用することも可能である。
また、クリーンルーム1に複数の清浄作業室2を設けることも可能であり、天井側に予めHEPAユニット21やブロワ24を設置しておけば、清浄作業室2の増減も容易に行うことができる。